2010年8月2日月曜日

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/1

(毎日 7月20日)

高校スポーツの祭典「全国高校総合体育大会」
(全国高校体育連盟、毎日新聞社など主催)が、
28日から沖縄県を舞台に始まる。

大会では29競技が実施、全国の頂点を目指す戦いの陰で、
さまざまな取り組みが進んでいる。
伸び盛りの高校生アスリートたちをどう育てていくか?
インターハイの開幕を前に、各地の現状を探ってみた。

◇的絞った「食育」指導

浜松市の浜松日体高校の陸上部は今年、男子1500mの
木村慎(2年)と5000mの島田直輝(3年)が全国高校総体に出場。
1963年創部の同部で、男子の複数選手が出場するのは初めて。

その背景には、体づくりに欠かせない「食育」への取り組み。
07年。この年は、2年ぶりにインターハイの出場者がゼロ。
陸上部は「強化部」に指定、男子バレー部とともに
重点的に力を入れてきた。

指導歴12年の鈴木博之監督は、「我々指導者に与えられた時間は、
1日のうちわずか2時間くらい。
強くなるためには、家庭にも協力を仰がなければ」と危機感を強めた。

庄内俊司副顧問が探してきたスポーツ栄養士の古旗照美さん
保護者会に招き、「スポーツ栄養セミナー」を開いた。

松村優樹主将(3年)は、1年生の時のセミナーをよく覚えている。
「レース前に食べていいのは、肉まん?あんまん?」
「パワーが付きそう」と肉まんを選んだが、間違い。
古旗さんは、「あんまんは糖分が多く、すぐにエネルギーになるが、
肉は消化に時間がかかる」と説明。
松村主将は、「中学校の時、何も気にせずに食べていたが、
自宅の食事も変わり、メニューも増えた」

古旗さんの指導は、今年で4年目。
陸上部は、冬の全国高校駅伝大会への2年連続出場を目指し、
部員たちに食の「理論」を反復。

◇誤った食生活

「強くなりたいなら丼めし」、「お金の貯金より骨貯金」。
古旗さんが、セミナーで生徒に唱和させる合言葉。

高校時代、バスケットボールの強豪校にいた古旗さん。
「経験を生かしたい」と、スポーツ栄養の世界に飛び込んだ。
そこで見たのは、「強くなりたい」と願う子供たちほど、
テレビなどの断片的な情報で誤った食生活をしている現実。

「プロテインの取り過ぎで痛風になったり、チョコレートの
ポリフェノール効果を信じて、試合前に板チョコを
1人で1~2枚食べていたチームもあった」

食事ごとにご飯、おかず、野菜、汁物、乳製品、果物の6品を取り、
ご飯は丼で量を確保する--。
丼めし以外は「普通の食事」だが、
古旗さんは「ポパイのホウレンソウのように、特定のものを取って
強くなることはない」と王道を説く。

◇成長期こそ重要

古旗さんがメーンの肩書に使っている「スポーツ栄養士」は、
日本栄養士会と日本体育協会の認定資格。
09年10月、第1号の16人が誕生。

養成の中心メンバー、日本女子体育大の田口素子准教授は、
「日本代表選手に、今さらスポーツ栄養を説いても意味は薄い。
(体と心の)成長期の子供たちに行うことが重要」と力説。

05年、食育基本法が成立、「食育」という考え方は急速に普及。
田口さんは、「消費カロリーが多いスポーツ選手には
向いていなかった」と、ターゲットを絞った食育の必要性を感じた。
スポーツ栄養士たちは、大学などの研究者と、
学校給食などを充実させる管理栄養士の間を埋める役割を担う。

「将来のトップアスリート育成のために始まった『スポーツ食育』だが、
意識の高い指導者は、今を勝ち抜く手段でもあることを自覚」
高校部活動の分野でも、その重要性は増すばかりだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100720ddm035050028000c.html

0 件のコメント: