2010年8月3日火曜日

インサイド:高校スポーツを育てる インターハイを前に/2

(毎日 7月21日)

全国で約1000人。
小学生から社会人まで、日本体操協会に登録する
男子新体操の競技人口。

国体では、08年大分を最後に、休止種目となるなど、
存続も危ぶまれるマイナースポーツの一つ。

佐賀県神埼市の県立神埼清明高。
今年の全国高校総体に、28年連続で出場する新体操部の
中山智浩監督は、部員たちの練習を見つめながら笑った。
「私が現役のころ、新体操をやっているとは自分からは言わなかった」

理由は分かりやすい。
「必ず『リボン回してるの?』とか聞かれ、説明するのが大変だったから」

◇部員集めに奔走

男子新体操は、日本発祥のスポーツ。
団体徒手体操」として、1947年石川国体から正式採用。

女子との大きな違いは、「タンブリング」と呼ばれる宙返りや
バック転などが許されていること。
団体種目では、6人が音楽に合わせて宙返りや倒立を繰り返す。
迫力ある演技にファンも増えつつあるが、競技人口増加には結びつかない。

最大の要因は、国内だけの競技で、「その先がないこと」(中山監督)。
国際化を目指して海外普及も図ったが、日本体操協会の
千葉末次・新体操副委員長は、「指導者もおらず、根付かない。

各国の体操協会からも、『五輪、世界大会がないなら、お手伝いできない』
と言われる」と漏らす。
競技人口の半数を占める高校でも、部員集めに苦労する。

中山監督は、92年新体操体験教室から始め、ジュニアクラブを設立。
自作のポスターを手に近隣の小学校を回り、参加者を募った。
現在、神埼清明高の部員19人のうち、半数以上がジュニアクラブ出身。
新体操部があるのは、県内で同校のみ。

「チーム数を増やさないと、すそ野は広がらない」、
他校に異動し、一からチームを作ることも考えている。

◇新たな道も模索

行き詰まりを感じて、新しい道を模索する指導者も。
昨年の全国高校総体で、10回目の団体優勝を達成した
強豪・青森山田高の荒川栄監督は、同校在学時代から国体など
全国大会で3冠を達成、国士大では全日本学生選手権の個人総合3連覇。

新体操界のトップを走り続けたが、
「大学を出て、新体操とかかわるには指導者の道しかなかった」

母校の監督に就任すると、ダンスの要素を強めた演技を取り入れ、
イベントなどにも積極的に出演。
選手たちが、卒業後に新体操を生かして活躍できる道を開拓するため。

その結果、清涼飲料水のCMに出演したり、
歌手・浜崎あゆみさんのバックダンサーなど、
新体操のプロとして活躍する卒業生も現れた。

協会関係者から批判を受けることもあるが、
「子供たちが一生懸命取り組んでも、先がなければ普及しない。
新体操の可能性を広げられれば注目度が上がり、すそ野は広がる

テレビのバラエティー番組でも取り上げられ、
今春にはドラマ「タンブリング」(TBS)も放送。
認知度が高まり、協会内には「チャンス」ととらえる向きもあるが、
それをどう競技普及につなげられるか。

「今注目されているのは、競技の面白さというより、
珍しさの方が大きいだろうが、この機を逃せば、
あと50年たっても発展しないのでは、との危機感もある」と荒川監督。
単なるブームに終わらせないための工夫に、頭を悩ませる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100721ddm035050068000c.html

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