(2010年7月25日 毎日新聞社)
医師不足による病床削減が見込まれる中、
がん患者の在宅医療の重要性が、県内でも高まっている。
訪問診療や介護の支援態勢に加え、患者・家族を手伝い、
話し相手になるボランティアも含めた複合的な制度構築が求められる。
各機関の連携を主導する組織がないなど、
県内の支援態勢づくりは遅れている。
患者の家族らの団体がボランティア育成を始め、
態勢整備を促す動きも出始めた。
北上市は94年、県内で先駆けて在宅での緩和ケア事業を始めた。
ホスピス建設を予算の都合で断念し、切り替えた。
県立北上病院(現中部病院)と、市内診療所が協力する
「北上方式」を編み出した。
現在、市内の13診療所が病院から終末期の患者を受け入れ、
訪問診療を行う。
03年、ベッドや車いすなど介護用品購入費補助や
ボランティア制度も盛り込み、複合的態勢を強化した。
介護保険制度で届かない用具提供や精神的な支援も求められた。
年間約50人が利用し、ボランティアは03年度以降延べ14人に派遣。
同市の緩和ケアボランティアの会副会長、小原節子さん(56)は3年前、
77歳で他界した父の遠藤誠司さんの希望で在宅医療を選択。
肺がん判明から亡くなるまで、約8カ月利用。
医師やホームヘルパーは、治療や介護に専念し、
ボランティアは話し相手や買い物に付き添った。
ボランティアは、同居の弟夫婦が仕事でいないこともあり、希望した。
当初見知らぬボランティアを自宅に入れることに反対した誠司さんも
打ち解け、訪問は計49回に上った。
小原さんは、「他人だから、話せることもあったみたい」
厚生労働省の人口動態統計によると、県内の対10万人あたりの
がん死亡率は08年が301・3、07年296・4に比べ、増加傾向。
岩手ホスピスの会によると、県内の緩和ケア病棟は
4病院計80床にとどまる。
入院待機者もある。
県は、11年度末までに療養病床を計1060床削減、
県医療局も県立病院など、計396床減らす計画を進め、
在宅医療の重要性が高まる。
がん死亡者のうち、在宅死の割合は、同市は08年21・4%、
県の7・0%や国の7・3%を上回った。
八幡平市など、7市町村が0%。
県は、08年3月策定の「がん対策推進計画」に、
在宅での緩和ケア推進を盛り込んだ。
具体的な数値目標はなく、動きは低調だ。
盛岡市、訪問診療専門の「もりおか往診クリニック」を開く
木村幸博医師は、医療、看護、介護、ボランティアが
チームで取り組む必要がある。
在宅移行後も、患者の容体が急変した際に受け入れる入院施設が
必要なことを挙げ、「病院と診療所間の連携が十分でない地域で
進んでいない。行政が、それぞれを結びつける役割を担わないといけない」
岩手ホスピスの会は5月15日、初めて在宅医療を受ける
がん患者の緩和ケアをテーマに、ボランティア養成講座を開いた。
ボランティアの支援態勢づくりを進めることで、
行政に在宅緩和ケアの態勢整備を促す考え。
同会の川守田裕司代表は、
「患者や家族のニーズは高い。
ボランティアと結びつける仕組みをつくりたい」
http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/26/123228/
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