2008年2月9日土曜日

エボラウイルスを無毒化 薬とワクチン開発へ前進 東大チームが世界初

(共同通信社 2008年1月22日)

感染すると致死率が50-90%と高く、ワクチンも治療薬もない
エボラ出血熱の原因であるエボラウイルスを
遺伝子操作で無毒化し、実験用の特殊な人工細胞の中でしか
増えないようにすることに、東京大医科学研究所の河岡義裕教授、
海老原秀喜・助教らが世界で初めて成功。

ウイルスの危険性が研究のネックだったが、
この無毒化ウイルスを使えば、治療薬探しなどの研究が進むと期待。
このウイルスを、ワクチンとして使う道も考えられる。

チームは、遺伝子からウイルスを合成する「リバースジェネティクス
という手法を使い、エボラウイルスが持つ8個の遺伝子のうち、
増殖に欠かせない「VP30」という遺伝子だけを取り除いたウイルスを作製。

できたウイルスは、通常の細胞の中では増えず、毒性を発揮しないが、
VP30遺伝子を組み込んだサルの細胞の中でだけ増殖。
それ以外の見た目や性質は、本物のエボラウイルスと変わらず、
治療薬探しなどの実験に使えることを確認。

エボラウイルスを使った研究は、感染事故を防止するため、
宇宙服のような防護服を着用するなど、厳重な封じ込め措置が取られた
「P4」と呼ばれる研究施設でしかできない。

河岡教授は、「無毒化ウイルスは、通常の実験室でも扱えるため、
エボラウイルスの解明が大きく進むと期待できる」。

▽エボラ出血熱
エボラウイルスが原因の急性感染症。
重症化すると吐血、鼻出血などを伴う。
ワクチンや治療法はなく、感染者の致死率は50-90%。
1976年のザイール(現コンゴ)での集団発生が初の記録。
動物のウイルスが人の世界で広がった新興感染症の代表例、
保有動物は特定されていない。
ウイルスが、生物兵器テロに利用される恐れも指摘。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=66188

ポストドクター本当に多すぎるのか

(サイエンスポータル 2008年2月5日)

ポスドク問題に関する議論があちこちで交わされている。
大学院生に、年額最高240万円を支給する研究奨励金制度の発足を
東京農工大学が公表。
東京大学、東京工業大学も、大学院生支援策を打ち出している。
いい学生が集まらないと大学の存立基盤を揺るがしかねない
少子化、国際化の時代だ。

問題は、「大学院は出たけれど」の方だろう。
「今、求められる研究者像と人材育成」という
産業技術総合研究所主催のシンポジウムが開かれた。
日立製作所会長で経団連副会長や総合科学技術会議議員を務めた
経験も持つ庄山悦彦氏が、講演者の1人として経団連産業技術委員会の提言
「イノベーション創出を担う理工系博士の育成と活用を目指して」に触れた。

「入口」、「研究教育」、「出口」の3段階に分け、
大学、政府、企業がやるべき人材育成策が掲げられている。
「出口」のところの提言は次のよう。
大学に対して「博士号取得者に対する就職支援の充実」、
政府には「ポスドク等が活躍できる産学協同の場の提供」、
企業には「優秀な博士課程取得者を積極的に活用」が求められている。

「優秀な人材が博士課程に進学しない」→「博士人材の付加価値が不明確」→
「企業が博士人材の採用に消極的」という悪循環。
経団連産業技術委員会のそんな現状認識に基づく提言。

問題になるのは、「優秀な人材」とは何か。
大学、政府、企業がそれぞれ全く別の「優秀な人材」像を描いていたら、
この提言はおそらく効果が期待できない。

日経新聞4日朝刊「教育面」に、
坂東昌子・日本物理学会キャリア支援センター長(愛知大学教授)の
「基礎科学復権へ活用を―ポストドクター本当に多すぎるか」という寄稿。
結論は、次のようだ。
「真のイノベーションを創生するには、基礎力が問われる。
基礎科学の復権こそ、科学技術立国を目指す日本の喫緊の課題であり、
そのためにポストドクターはもっと有効に活用されてしかるべき」

坂東氏は、途中で「物理学に限って論じてみたい」と断っているが、
「昨今の高等教育政策の流れは、基礎重視から応用重視へと大きくシフト」し、
「戦後の日本の高い科学水準を支えたのは、
基礎力のある学生を育てたことだったのに、その伝統は消えてしまった」
という批判にたった主張であることは明白。

坂東氏にとっては、基礎科学の力を十分身につけた人間こそ、
「優秀な人材」ということだろう。
これが政府、企業の期待する「優秀な人材」像と一致するなら、
ポスドク問題の解決も心配することはないように見えるのだが…。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0802/0802051.html

2008年2月8日金曜日

エボラウイルスを無毒化 東大チームが世界初

(共同通信社 1月22日)

感染すると致死率が50-90%と高く、ワクチンも治療薬もない
エボラ出血熱の原因であるエボラウイルスを遺伝子操作で無毒化し、
実験用の特殊な人工細胞の中でしか増えないようにすることに、
東京大医科学研究所の河岡義裕教授、海老原秀喜助教らが世界で初めて成功。

ウイルスの危険性が研究のネックだったが、
この無毒化ウイルスを使えば、治療薬探しなどの研究が進むと期待。
このウイルスを、ワクチンとして使う道も考えられる。

遺伝子からウイルスを合成する「リバースジェネティクス」という手法を使い、
エボラウイルスが持つ8個の遺伝子のうち、増殖に欠かせない
「VP30」という遺伝子だけを取り除いたウイルスを作製。

できたウイルスは、通常の細胞の中では増えず、毒性を発揮しないが、
VP30遺伝子を組み込んだサルの細胞の中でだけ増殖。
それ以外の見た目や性質は、本物のエボラウイルスと変わらず、
治療薬探しなどの実験に使えることを確認。

http://www.47news.jp/CN/200801/CN2008012201000015.html

インターネット公開授業9割が歓迎

(サイエンスポータル 2008年2月7日)

大学がインターネットで授業を無償公開する試みについて、
9割以上の人々が高く評価していることが、
慶應義塾大学とNTTレゾナントの調査で明らかに。

高等教育機関が提供する講義、関連情報をインターネットで
無償公開する「オープンコースウェア」活動を援助、普及する目的で、
日本オープンコースウェア・コンソーシアム(JOCW) が、2006年に設立。
設立時のメンバーは、大阪大学、京都大学、慶應義塾大学、東京工業大学、
東京大学、早稲田大学の6大学だったが、その後、参加メンバーも増え、
授業内容をインターネット上で公開する大学は15校。
慶應大学は、JOCWの初代事務局。

「gooリサーチ」の登録モニター1,000人を対象に行った調査の結果、
大学が講義内容をインターネット上で公開することに対し、
「非常によいと思う」と答えた人が33.2%、「よいと思う」人が60.6%と、
93.8%の人が肯定的な評価。
実際に利用してみたいと答えた人も83.9%。

見たい講義は、経済学、情報科学、経営学・マーケティング、
文学、医学が上位を占めた。
現在、インターネット上で講義を公開している大学名を
すべてあるいは一部知っているという人は22.1%。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0802/0802071.html

2008年2月7日木曜日

産総研の新しい試み

(サイエンスポータル 2008年1月28日)

産業技術総合研究所の新しい試みが関心を集めそう。
新しい学術ジャーナル「Synthesiology-構成学」の創刊と、
「産総研イノベーション上級大学院」の設立
「Synthesiology-構成学」は1月に創刊号が発行、
「産総研イノベーション上級大学院」は4月開校の予定。

社会のためになる科学技術を目指すなら、
研究論文になりにくい努力の方がむしろ重要。
産総研のようなところこそ、率先してそうした取り組みをすべきだ―。

吉川理事長の主張を簡潔に表現すれば、このようになるだろうか。
この主張を実行に移すため、産総研では「本格研究」という
基本的な研究開発の意義付け、枠組みが明確に。
大学などの研究者たちの多くが取り組む研究と、
商品価値を持つ製品を生み出す研究との間には、
「死の谷」とも呼ばれる大変な壁。

企業の技術開発にあたる人々は、日常的にいやでも直面せざるを得ない
現実である一方、大学や公的研究機関で研究に従事する研究者たちは、
突き詰めて考えようとしなければしないでも済んできた根本的課題。

産総研の「本格研究」において、重要な位置を与えられているのは
「第2種基礎研究」と名づけられている領域。
伝統的な基礎研究を「第1種基礎研究」と定義し直し、
その枠内に収まらない基礎研究を指す。
「未知現象より新たな知識の発見・解明を目指す研究」(第1種基礎研究)に対し、
「経済・社会ニーズへ対応するために異なる分野の知識を幅広く選択、
融合・適用する研究」(第2種基礎研究)という仕分け。

「本格研究」というのは次のように説明。
「知識・技術の発見・発明から製品化の間に横たわる
『悪夢(死の谷)』を乗り越え、研究成果を迅速に市場へと展開させるため、
幅広い知識・技術を選択し、融合・適用することにより
新たな成果を生み出す『第2種基礎研究』を軸に、
『第1種基礎研究』から『製品化研究』までを連続的・同時的に展開する
産総研独自の研究方法」

なぜ、「Synthesiology-構成学」なる新しい学術ジャーナルを、
一独立行政法人が刊行しなければならないのか。
伝統的基礎研究の枠に収まらない「第2種基礎研究」に、
いくら力を入れても研究成果(論文)を受理してくれそうな
学術誌が見当たらないから、ということのようだ。
そもそも、Synthesiology(構成学)も造語。
「研究成果を社会に活かそうとする研究活動」(第2種基礎研究)の成果を
「知として蓄積することを目的とする」のが新しい学術ジャーナルで、
「研究活動の目標の設定と社会的価値を含めて、
具体的なシナリオや研究手順、要素技術の構成・統合のプロセスが
記述された論文を掲載する」。

一方、「産総研イノベーション上級大学院」は、
任期付き雇用形態を含む研究所の若手研究者らを、
従来の狭い意味での基礎研究の枠にとどまらず将来、研究機関、企業
いずれの場でも活躍できる人材に育てるのが狙い。
成果は、「Synthesiology-構成学」に投稿、きちんと評価を受けさせる。
創刊された学術ジャーナルとは補完関係にある。

「SCIENCE」、「NATURE」に代表される欧米科学誌に
論文が掲載されることをまず願う。
これが大方の日本人研究者の姿に見える。
産総研の新しい試みは、果たして日本の研究開発のありようを
変えることができるだろうか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0801/0801281.html

社交家「肥満」多く、心配性「やせ」 東北大が3万人を調査

(毎日新聞社 2008年1月19日)

社交的な人や自己中心的な人ほど肥満が多く、
心配性の程度が強いほどやせの人が増える傾向にあることが、
約3万人を対象にした辻一郎・東北大教授(公衆衛生学)らの調査で分かった。
性格と肥満の関係は、十分な根拠がないまま議論されることが多く、
1万人以上を対象に調べた研究は世界的にも例がない。
国際心身医学会誌に掲載。

宮城県内の40-64歳の男女を対象に調査。
身長や体重、生活習慣などに加え、
「話し好きか」、「人が何を考えているか気になるか」など
48項目を尋ねる性格検査を実施。
▽外向的(社交性、陽気さ)
▽神経症的(心配性、緊張しやすい)
▽非協調性(攻撃性、自己中心性)
▽社会的望ましさ(律義さ、虚栄心)
の各傾向について、程度別に4グループに分けて
体格指数(BMI)との関係を調べた。

飲酒量や運動習慣などを考慮して分析した結果、
「外向的傾向」が強いほど、「肥満」とされるBMI25以上の割合が増えた。
最も外向的なグループの肥満の割合は、最も内向的なグループに比べ、
男性で1・73倍、女性で1・53倍。
「非協調性」が強い場合も、肥満が増えた。

「神経症的傾向」が強いと、BMI18・5未満の「やせ」が増えた。
神経症的傾向が最も強いグループのやせの割合は、
最も弱いグループの2倍以上。

研究チームの同大大学院生、柿崎真沙子さん(心理疫学)によると、
因果関係は明確でないが、性格と関連する神経伝達物質の一部が
食欲にも関係していることが背景に。
柿崎さんは、「肥満改善指導で外向的な人には指導回数を増やすなど、
効果的な健康教育プログラムの開発につながる可能性がある」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=66086

2008年2月6日水曜日

動物のゲップ:メタン除去技術を開発 帯広畜産大

(毎日 1月22日)

牛や羊などの反すう動物のゲップとともに吐き出される、
温室効果ガスのメタンについて、
帯広畜産大の高橋潤一教授(循環型畜産学)らの研究チームは、
体内から除去する技術を開発。

牛などのゲップから出るメタンは、温室効果ガス全体の約5%を占め、
地球温暖化の防止対策として注目。
反すう動物の家畜は、世界で約30億頭が飼育。
メタンは、胃の中で植物の繊維を微生物が分解・発酵する過程で発生。

高橋教授は、硝酸塩が含まれる飼料を食べた家畜の中毒症状について
研究する過程で、多量の硝酸塩が含まれた牧草を食べた
乳牛のゲップにメタンがほとんど含まれていないことを発見。
さらに、硝酸塩とともにアミノ酸の一種「システイン」を加えると、
中毒を抑えられることが分かった。生乳の品質には影響がない。

高橋教授らは、日本、米国、カナダなど5カ国で技術の特許取得。
酪農国の豪州やニュージーランドなどが関心。

メタンは、同じく温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の
約20倍の温室効果。
06年度、国内のメタンの排出量はCO2換算で約2380万トン、
このうち牛からの排出量は約678万トン。

高橋教授らは、北海道洞爺湖サミットを機に、帯広市で国際シンポジウムを開く。
「温暖化防止のため、二酸化炭素だけでなく、メタンにも関心を持ってほしい。
温暖化への課題を解決する方法を紹介しながら、議論していきたい」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080123k0000m040139000c.html

脂っこい食事でも平気? 神戸大、肥満遺伝子特定

(共同通信社 2008年1月21日)

脂肪分が多い食事をした時に働いて、細胞内に脂肪をため込むのを
促す作用がある遺伝子を、神戸大の春日雅人教授らが
マウス実験で特定し、ネイチャーメディシン電子版に発表。

この遺伝子の働きを抑えると、
マウスに脂っこい餌を与えてもあまり太らなかった。
春日教授は、「人に応用できれば、新たな肥満治療薬につながるかもしれない」。

春日教授らは、内臓肥満の主な原因となる白色脂肪細胞で、
インスリン伝達にかかわるDok1と呼ばれる遺伝子が
肥満時に強く働いているのに着目。

Dok1が別の肥満関連遺伝子に働き掛け、
脂肪細胞内に脂肪をため込むのを促進する作用があることを確かめた。

Dok1が働かないようにしたマウスと正常なマウスで比較すると、
通常の食事では太り方に差がないが、
脂肪分が多い食事を与えた場合、
Dok1が働かないマウスの体重が20%以上軽くなった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=66148

2008年2月5日火曜日

女性は閉経時のストレスを歩いて減らせる可能性あり

(WebMD 1月3日)

身体を動かして、もう一度元気になろう。
女性が閉経に移行する時のストレスを減らせるのである。
閉経前、閉経期、および閉経後の女性のストレスと身体活動に関する
新規研究の最も重要な知見は次のとおり。

1)身体活動度の高い女性は、活動度の低い女性よりもストレスが少ない。
2)閉経後、身体活動度の高い女性は活動度の低い女性よりもストレス、
不安および抑うつが少ない。
3)研究者らの助言:活動的な人はその調子で続けよう。

活動的でない人はこれから始めよう。

テンプル大学のDeborah Nelsonらは、
「閉経移行期および閉経後の身体活動を維持または増やすことが、
不安、ストレス、抑うつを含む多様な精神的症状の軽減に役立つ可能性を示唆」

Nelson博士のチームは、380例の女性について8年間研究を行った。
研究開始時の女性の平均年齢は、42歳。
研究開始時には、被験者の女性は閉経前。
研究期間中に、被験者は血液検体を提供し、ストレス、不安、抑うつ、
更年期症状(のぼせ、膣の乾燥、または性欲減退など)を10回報告し、
2年おきに身体活動度を記録。
激しい運動から、ほんの少しの活動(本人が運動とみなさないような、
階段を上ることや数街区歩くこと)も、すべて計算に入れた。
研究終了時までに、20%の女性が閉経に達し(1年以上月経なし)、
18%が閉経に近かった。
一部の女性は、他の女性よりも活動度が高かった。

燃焼カロリーを、1時間に4マイル(6.4km)のペースのウォーキングに換算。
1)活動度が最も高い女性は、1.5時間のウォーキングを週5回
2)活動度が中程度の女性は、38分間のウォーキングを週5回
3)活動度が最も低い女性は、16分間のウォーキングを週5回
身体活動は、ストレス管理の点で良い結果を生んだ。

活動度が最も高い群および中程度の群の女性は、
活動度が最も低い女性よりも、ストレスが少なかった。
閉経後、身体活動によって不安、抑うつも減少。
身体活動は、女性ののぼせ、他の閉経期の身体症状には影響しない。

Nelson, D. Medicine & Science in Sports & Exercise, Dec. 4, 2007; advance online edition.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=66169

ES細胞で筋ジス治療 米チーム、マウスで成功

(共同通信社 2008年1月21日)

筋肉の力が徐々に失われる遺伝性疾患の筋ジストロフィーの
症状を示すマウスに、遺伝子操作した胚性幹細胞(ES細胞)を注射して、
筋肉の機能を一部回復させることに成功したと、
米テキサス大の研究チームがネイチャーメディシン電子版に発表。

筋ジストロフィーのマウスを、あらゆる細胞に分化する能力を持つ
ES細胞の移植で治療したのは初めて。
遺伝子を操作するため、すぐには人への応用はできない。

筋ジストロフィーのうち、患者の多いデュシェンヌ型は、
筋細胞の形を保つタンパク質「ジストロフィン」が遺伝子変異のため作られず、
筋力の低下や筋委縮が起きる。

マウスのES細胞を培養し、筋細胞への分化を促進する遺伝子「Pax3」
人工的に導入。筋細胞になるよう分化し始めたものだけを取り出した。
これを病気のマウスの大動脈に注射したところ、
1カ月後には筋細胞になって筋肉に定着し、ジストロフィンも作られていた。
通常のマウスほど強くないが、ある程度筋力が回復。

ES細胞を注入する治療では、無限に増殖するがん化が懸念されるが、
筋細胞に分化するものだけを厳選した結果、
3カ月後にもがんは起きなかった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=66147

2008年2月4日月曜日

スポーツ21世紀:新しい波/258 陸上・実業団選手登録/2

(毎日 1月26日)

陸上女子の小林祐梨子(豊田自動織機)は、
母校の須磨学園高で練習し、岡山大へ通う。
会社の一般的な仕事はしていない。

豊田織機の平林監督は、
「会社の仕事をせず、陸上に専念する選手は他にも多い」と主張し、
小林だけが実業団登録を認められないのは不当だと訴える。

日本実業団陸上競技連合は、東京都内で小林の問題について会見。
弁護士でもある鈴木利広監事は、実業団と学生の区別の重要性を示した。
企業に所属しながら陸上に専念するプロ的な選手は増えているとはいえ、
大学生の扱いは慎重であるべきだとの姿勢。

陸上は野球やサッカーと違い、プロの団体や試合はない。
鈴木監事は、「実業団とプロ的選手の関係はファジー(柔軟)でも問題ない」と、
登録に支障がない理由を説明する。

だが、学生陸上界には日本学生陸上競技連合がある。
両団体は過剰な奪い合いや登録の重複を避けるため、長年議論してきた。
学業が本分である大学生を、実業団が不用意に受け入れられない、
という考え方もある。
鈴木監事は、「実業団スポーツのあり方にもかかわる。
学生との境目は軽々に判断できない」。

小林について審議した結果、大学入学を前提とした入社であり、
豊田織機のチームの拠点である千葉県から離れて
高校の監督に指導を受けているため、
「実業団が単に経済支援をしている学生」と判断したと説明。

平林監督は、「岡山大からも理解を得ている。産学連携のモデルにもなる」と、
大学との良好な関係を強調する。
代理人の望月浩一郎弁護士は、「陸上界全体にかかわること。
日本陸上競技連盟にも早期解決へ協力してほしい」と、
日本陸連の仲介にも期待する。

日本陸連も実業団連合に対し、所属形態の多様化なども考慮した
登録規程の整備を要望。
だが、下部組織ではない実業団連合の判断を変える権限はない。
学生連合の関岡康雄専務理事も、
「本人が学生登録を希望しない以上、我々からは何もできない」と
静観の構えでいる。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

解説:環境債務明示 企業価値明らかに 国際競争力に直結も

(毎日 1月21日)

環境債務開示を義務づける今回の基準は、
債務の「見える化(可視化)」で真の企業価値を明らかにする目的。
有害物質対策を進めれば債務は減り、財務体質は強化される。
地球温暖化対策など、環境規制の動向によっては
計上すべき環境債務の変化も予想される。
環境技術の高さを掲げる日本企業にとって、対応は国際競争力に直結しそう。

将来負担すべきコストを各会計年度に計上する例としては、
電力会社が将来の原発解体にかかる処理費用を計上する解体引当金がある。
しかし、環境債務の全体像を開示する考え方は、日本ではなじみがない。

米国では、土壌汚染問題をきっかけに、90年代から環境債務の計上が制度化。
欧州でも取り組みが進んでいる。
国際的な企業の合併・買収(M&A)の急増もあり、
先行する欧米諸国と同様の対応を迫られた形。

みずほ情報総研の光成美樹・環境・資源エネルギー部チーフコンサルタントは、
国内のアスベストや土壌汚染の処理費用は、10兆~20兆円に上る可能性。
光成さんは、「今回の基準では、合理的な見積もりができなければ、
債務を数値として計上しないこともできる。

この点を考慮し適切に計上しても、日本企業の環境債務は
少なくとも数千億円になるのでは」。
株価への影響も懸念されるが、藤井良広・上智大教授は、
「全体像を開示することが、投資家の信頼につながる」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080121ddm002040054000c.html

2008年2月3日日曜日

科学技術の関心度、インターネットで初調査

(サイエンスポータル 2008年1月17日)

科学技術政策研究所は、初めての試みとしてインターネットを利用した
科学技術に対する意識調査を実施、その結果を公表。

「科学技術関連問題」と「その他諸問題」に対する関心に、
大きな差は見られなかった。
「関心がある」、「やや関心がある」という答えを合わせると、
「科学技術関連問題」は、「その他諸問題」とほぼ同じ約8割。

しかし、実際に「科学技術問題」での会話頻度を聞くと、
「頻繁に話す」と「ときどき話す」を合わせた答えが、
「その他諸問題」については53.9%あったのが、45.0%と明らかに低い。

男女別で見ると、科学技術関連問題に関心があるとする答えでは
男性が86.2%に対し、女性は74.1%と差が見られ、
会話頻度になると、男46.2%、女43.8%と男女差は縮まる。
「地球温暖化」、「環境汚染」、「新しい医学的発見」については、
女性の方が会話頻度は高かった。
「高齢者」や「少子化」といった社会問題に対しても、女性の方が会話は多い。

中学生のころ、理科好きだったと答えた男性は、
20~60代まで60~70%と、ほぼ横ばいで世代による違いは目立たない。
しかし、女性は30代以降こそ36%前後でほとんど変わらないものの、
20代は45.7%と高く、若い世代の女性に関しては科学技術に関する関心が
30代以降の女性とは異なる結果。

インターネットによる調査は、調査対象者が高学歴者に偏るという問題点がある。
2000年の国勢調査に比べ、18.3%だった最終学歴中学卒の割合が、
今回の調査対象者では1.8%しかない。
こうした問題点があるものの、機動的に世論を把握するなど
調査の目的や調査結果の活用によってはインターネットによる調査は有効、
と科学技術政策研究所は言っている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0801/0801171.html

コラーゲン:皮膚傷つけず画像化に成功 シワの仕組み、解明に有効--筑波大など

(毎日 1月21日)

弱いレーザー光線を使い、人の皮膚を傷つけることなく
皮膚の内部構造を三次元画像化することに、
筑波大とカネボウ化粧品の共同研究チームが成功。

皮膚の弾力性を維持するコラーゲンの構造も観察。
加齢によるシワの変化とコラーゲン構造との関係を調べたり、
化粧品の開発に有効。

人の皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層で構成。
コラーゲンは、真皮の7割以上を占める繊維状のたんぱく質で、
シワが増えるなど皮膚の老化も、コラーゲンの新陳代謝の衰えが原因の一つ。

光がコラーゲンを透過時に、二つの光線に分かれる複屈折という性質に注目。
筑波大が開発し、複屈折の強さを三次元的に計測できる
光干渉断層計(OCT)を使い、コラーゲンの構造を画像化

70代と20代の皮膚を比べた結果、70代の真皮のコラーゲンは、
20代に比べて複屈折性が3分の2に低下。
紫外線を含む日光にさらされたことが原因。
目尻のシワが大きいほど、複屈折性が弱くなることも分かった。
日光を浴びない上腕の内側の皮膚では、加齢に伴う複屈折性の変化はない。

カネボウ化粧品の酒井進吾主席研究員は、
「データを詳細に検討し、シワができるメカニズムに迫りたい」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080121dde041040024000c.html