2008年9月13日土曜日

教師力08(11)社会で役立つ「聞く力」

(読売 9月9日)

社会に出てから役立つ国語力をつけさせようと、工夫する教師がいる。

机がコの字形に並んだ東京都小平市立小平第五小学校の教室。
2学期最初の国語の授業で、松野泰子教諭(31)の問いかけに、
児童が次々と立ち上がって発言。
同時に立ち上がってしまった時は、うまく譲り合って発言がとぎれない。

「それでは少し交流しましょう」。
児童は一斉に立ち上がると、2、3人ずつ集まってノートを見せ合い、
詩を読んだ感想や疑問点を話し合い始めた。
「へぇ~。おもしろい意見だな」、「私も不思議に思った。同じだね」。
全員の前で発言できなかった子も、友達同士で話し合ううち、
自信がついた様子。その後の授業は、ますます活気づいた。

松野教諭が目指すのは、他人の意見を聞く姿勢を育てる授業。
コの字形は、お互いの表情を見ながら
自分の考えを深めてほしいと取り入れた。
「自分の考えを持つには、他人の考えを的確に知ることが必要」。
その考えの根っこには、企業社会での経験がある。

大学を卒業したのは、「就職氷河期」。
卒業前に「なぜ働くのか」、「自分にとって仕事とは何か」を真剣に考えた。
漠然と教員にはなりたいと思いながらも、
「なぜ、教員でなくてはならないのか」という答えを見つけられなかった。
「大学を卒業して、すぐに教壇に立つ教員は世間知らず」と批判。
「一度は企業に勤めてみよう。どうしても教員になりたくなったら、目指せばいい」
と気持ちを切り替えた。

入社した人材派遣会社で、社内のシステム管理や営業まで
幅広く仕事を任された。
仕事に必要な予備知識が何かは、自分で考え、学んでおくのが当然
という業界の厳しさを学んだ。
営業に行くときには、相手の会社の状況を調べて、会話の糸口を必死に探った。
自然にメモを取る習慣が付き、短時間の会議では、
相手の発言の趣旨を素早く理解することや、
資料を読んですぐ自分の考えが求められることを思い知った。

「やっぱり教師になりたい」と思ったのは、入社から数か月後、
臨時でパソコン教室のインストラクターを務めた時。
「真剣に学ぶ姿、喜ぶ姿を見て、思いが込みあげてきた」。
それからは働きながら猛勉強し、社会人になって2年後、教員に採用。

今は、東京都教育委員会が若手の授業力向上のために行っている
長期研修「東京教師道場」にも通う。
「少しでも多くのことを学び、自分らしい授業を作りたい」

最近は、人の意見の趣旨を書き出す力をつける授業にも熱心。
新聞のコラムなどを読み上げ、内容を個条書きにメモさせる。
中学進学の準備という側面もあるが、一番の理由は
「将来、仕事をして生きていくのに必要な力だと思うから」だ。

「小学校だからこそ、総合的な国語力をつけさせたい」。
視線の先には、10年後、20年後の子供たちの姿が映っている。

◆新規採用教員の年齢

3年ごとに実施される文部科学省の学校教員統計によると、
2003年度中に全国で採用された国公私立の小中高校教諭
1万9392人のうち、24歳以下は36.7%。
平均年齢は小学校27.5歳、中学校28.6歳、高校30歳。
人材確保のため、受験資格年齢の引き上げや撤廃、
社会人特別選考制度を設ける教育委員会が増えている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080909-OYT8T00230.htm

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 廣瀬通孝氏インタビュー

(日経 8月24日)

廣瀬通孝・東京大学教授

―今春、少子高齢化社会にはロボットの活用が有効との報告書。

金鉱掘りの話だと思ってほしい。
少子高齢化による人手不足対策として、移民の受け入れが議論。
工場だったら、ロボットに置き換えればよいという発想になるように、
看護や介護などのサービス分野でも、ロボットで代替できないかと
発想するのは自然だ。
技術的には、ヒューマノイドとか家全体をロボットにするとか、
様々な手段があるだろう。
粗削りながら想定される需要とサービスの可能性をまとめ、
頑張って掘れば、1兆円のマーケットがあるかもしれないよ、
といった道標を示した。

―ロボットの普及にはどんな思考が必要か?

システム工学の考え方だろう。
アポロ計画では、月に行くと目標を立てた後、
システム工学の思考でどうやって1番安く行けるかと考えた。
技術だけを追い求めると、社会の需要を見間違える場合がある。
国鉄時代の末期に、莫大な費用をかけて全自動化操車場を作った。
当時の最高技術の粋を集めたものだったが、
後の宅急便の時代に巨大な負の遺産に。

ロボットでいえば、ヒューマノイド技術の追求は、
「F1カー」のように技術者を鼓舞する意味ではよい。
だが、ふと気がついたら国鉄の操作場のように、
役に立たなくなっているというリスクもある。

―ロボットは社会にどんな効果をもたらすか?

大きく分けると、3つ。
1つ目は、労働力の代替。
2つ目は、退職した人が寝たきりなどになってゼロになる分が、
ロボットの支えでプラスになる。
3つ目は、介護などで家に縛られていた人が、
ロボットの支援で外部活動に参加できるようになる。

2025年時点で352万人の労働力を補い、社会保障費を
2兆1200億円抑制できると試算。

人の移動を支えるロボットであれば、自動車会社が強い。
IT(情報技術)家電がロボットになるかもしれない。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)が、祖業である白熱電球から撤退するように、
技術は時代とともに移り変わることを忘れてはならない。

<廣瀬通孝氏 略歴>
1982年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。
同工学部教授、同先端科学技術研究センター教授を経て、
現在、同大学院情報理工学系研究科教授。
ヴァーチャルリアリティ研究などで知られる。
ITとロボット技術を融合する「IRT基盤創出プロジェクト」で主導的な役割。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2009022082008

症候性心不全の死亡率低下 n-3PUFAsの新研究

(共同通信社 2008年9月4日)

精製n-3多価不飽和脂肪酸(n-3PUFAs)の新たな画期的試験の結果を、
ルイジ・タバッツィ教授(GISSI-HF)が報告、
n-3PUFAsで症候性心不全患者の心臓病起因の
死亡、入院が減少したことが明らかに。
2008年8月31日のESC会議で報告。

GISSI-HFは、6975人の患者を対象とした3・9年間の
プロスペクティブ、マルチセンター、ダブルブラインド、偽薬方式の研究。
最適勧告療法(ORT:ACE阻害剤、ベータ遮断剤、利尿剤、
ジギタリス、スピロノラクトン)のバックグラウンドに対する偽薬との比較で、
毎日1gの投与量でn-3PUFAsはすべての原因による死亡を9%、
死亡と心臓病が原因の入院の合計を8%減少させた。

〈スタート表〉
▽主要到達目標   n-3PUFAs対偽薬(ORT)の改善率
 すべての原因による死亡      9%(p=0・041)*
 すべての原因による死亡か     8%(p=0・009)*
 心臓病が原因の入院
▽副次到達目標   n-3PUFAs対偽薬(ORT)の改善率
 心臓病による死亡        10%(p=0・045)*
 心臓病による死亡か        6%(p=0・043)*
 心不全などの理由による入院
 心臓病が原因の入院        7%(p=0・026)*
 心臓病による急死         7%(p=0・333)
 すべての原因による入院      6%(p=0・049)
 うっ血性心不全による入院     6%(p=0・147)
 心筋梗塞            18%(p=0・121)
 脳卒中            -16%(p=0・271)
 *グループ間で統計的に意味のある相違(注1から採用した調整分析)

心筋梗塞後の左心室機能不全がある患者のサブグループが、
n-3PUFAsによってすべての原因による死亡と入院の減少を示した
GISSI-予防試験(編集者注参照)の事後分析の結果が良好、
GISSIグループはGISSI-HF試験を立案、設計、実施した(2)。

GISSI-HF試験の主要目的は、n-3PUFAs、ロスバスタチンが
すべての原因の死亡、心臓病が原因の入院を減少させるかどうか。
参加患者は、n-3PUFAs投与患者と偽薬(ORT)投与患者に無作為で分類。
研究参加患者の一部は、さらにロスバスタチン投与と偽薬投与に無作為分類。

n-3PUFAsの心臓病での結果、2番目に大規模なGISSI-HFは、
心筋梗塞後の患者での心臓病に対する効果がGISSI予防試験で確立された
n-3PUFAsの安全性を確認し、サポートする(3)。

したがって、n-3PUFAsの現在の適応症は
心筋梗塞後患者の2次予防とトリグリセリド過剰血症(高脂血症)の治療。

ほかの心臓病への適応に関するn-3PUFAsの継続中の研究で、
心臓病患者にとっての追加的な利点が明らかに。
ドイツのミュンヘン大学予防心臓学科主任の
クレメンス・フォン・シャッキー教授は、GISSI-HFの試験結果についても検討、
2008年ESCのソルベイ後援シンポジウムで臨床行為に対して
こうした試験結果が持つ意味を報告。

「さまざまなアプローチを使った一連のうっ血性心不全の
大規模な試験では、中立的か否定的だった。
GISSI-HFは、綿密に実施された試験であり、
この患者層でn-3PUFAsの安全性と効果を報告。
うっ血性心不全の確立された治療法に、
この治療法を追加するための証拠がガイドライン医院かに提供された」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79512

2008年9月12日金曜日

教師力08(10)一緒に考え心を育てる

(読売 9月6日)

長期研修で学んだ教師は子供との距離を縮めた。

夏休み初日の京都府長岡京市立神足小学校。
6年2組の教室で補習中の男子2人が言い争いを始め、
騒ぎは教室全体に広がった。

2人の間に割って入った担任の阿部隆教諭(33)は補習後、
教壇に呼んで言い分を聞き始めた。
目を見つめ、穏やかに相づちを打つ。
「宿題は終わらせた?」、「余計なお世話!」。
そんなやり取りがきっかけで始まった騒ぎを、約1時間かけて振り返らせると、
2人ともすっきりした顔になって、「ほな帰ろか」。
教壇を囲んでいた男子数人と一緒に教室を出て行った。

後ろ姿に手を振りながら、「とにかく、話を聞く。子供を待てるようになりました」。
阿部さんは、京都府の研修の成果をかみしめる。
日本道徳教育学会会長の横山利弘・関西学院大教授(65)の元で
道徳を学んだ。

大学在学中から7年間、契約社員として東京ディズニーランドのショーに出演。
将来への不安が募り、通信教育で小学校教員免許を取得、
2003年、京都府に採用。

人を楽しませることには自信があった。
授業を盛り上げることが不可欠と、受けを狙ってしゃべり続けた。
盛り上げにくい道徳は苦手、発散できる体育が得意。
だが、常に騒がしいクラスや自分自身のどなり声に、
教師としての力量不足を痛感していた。

研修に期待していたのは、教材や小道具の使い方など授業のノウハウだった。
そのために講義を受け、専門書を読みあさった。
横山さんに、何度も質問をぶつけた。
その度に「道徳の目的は、子供の言葉や行動を教師の望む通りに
変えることではない。その根底にある心を育てることだ
しまいには、「子供に小手先の技術は通用しない。
君は、子供の内面まで探ろうとしたのか」

振り返ると、強圧的な自分の姿が見えた。
「学ばせる」ことが教育現場での「サービス」と信じ、教え込むことに必死だった。
子供の言動に一喜一憂しても、その根底にある心の声を聞いていただろうか。
重くたれ込めた空に、晴れ間が見えたように感じた。

神足小学校で待っていたのは、担任が転出し、
クラス替えはないまま進級した6年生。
事前に聞かされていた通り、落ち着きに欠けるクラスだった。

受け狙いを捨て、道徳に力を注いだ。
子供が話すまで待つ。出てきた言葉をしっかり聞く。
初夏にはその手応えを感じた。
約束の大切さを考える授業で、「守れない時もある」といった狙いから
はずれる意見が出ても、子供たちと一緒に考え込んだ。

そんな姿勢から、どんな発言も受け止めてもらえることを、
子供が体感したようだ。
岡花秀樹校長(57)も、「学級が一つになった。自分を表現できるようになって、
子供の顔つきも変わった」と喜ぶ。
真剣に学び直した教師と子供の信頼関係は、確かな実りをもたらしつつある。

◆京都府の教員研修

1972年度から始まった。期間は2か月から1年。
これまでに1077人が九州大、鳥取大など全国各地の大学や企業など
81か所で学んでいる。
教科指導や職業教育などに力点を置いた取り組みで、
対象教員は市町村教育委員会や学校からの推薦で選ばれる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080906-OYT8T00194.htm

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 西澤潤一氏インタビュー

(日経 8月24日)

西澤潤一・首都大学東京学長

―注目する技術はなにか?

光よりやや波長が長い、テラヘルツ波が面白い。
有機物の検知に活用できるので、がんを発見する医療機器に使える。
がんの発見や、薬を飲んだときに、
体の中でどのような化学物質に変化するかを調べることができる。
テラヘルツ研究所が先端の研究を進めている。

―エネルギー問題にも関心がある。

二酸化炭素(CO2)を出さない水力発電の利用が理想的。
水力で発電した電力を長距離で運ぶには、直流送電が必要で、
特殊な半導体を使えば直流から交流に変換できる。
直流送電は、スウェーデンが進めようとしているほか、
中国の三峡ダムから上海までも直流送電。
日本では、関西電力が瀬戸内海で直流送電の実験、
10年間無事故と実績が積み上がってきた。
日本でこれ以上ダムを増やすのは難しいとしても、
直流送電なら地球の裏側からでも送電できる。
国では、CO2を集めて地底に圧入する方針のようだが、
岩盤の小さな穴から35年後にガスが噴出してしまうという人もいる。
CO2を出して圧入するという不確実な方法より、
ガスを出さない水力発電と直流送電の利用のほうが望ましい。

エネルギーの量は少ないが、バイオマスも注目。
製紙産業で発生するリグニンを発酵させてアルコールにするなど、
非食料の廃棄物をうまく利用する技術に注目。

―日本では独創的な技術が生まれにくいのか?

独創的な研究や発見に理解を示す人が少ない。
私が発明した半導体レーザーでアイディア特許を出した時、
日本では理解されず資金がつかなかった。
米国で、軍の研究費の配分を決める人にちらっと話をしたら、
米国で瞬く間に半導体レーザーが出来上がった。

私が発明した光ファイバーの活用にも、米国がいち早く取り込んだ。
米統合参謀本部からブラッドレー氏が、
米国の不景気脱出のアイディアを探しに来た際に、
椎名素夫さんに呼び出されて、三島の淡島ホテルで、
米国は新製品開発をすべきだと話した。
お付きの人から具体的に何をやればいいかと問われ、
情報通信をやったらいいと話したら、2週間後にゴア副大統領が
マルチメディアスーパーハイウェー構想を打ち出した。

後に加藤紘一政調会長(当時)に呼ばれ、同じことを言ったら、
日本では携帯電話の普及につながったが、
空前の大景気を迎えた米国からは遅れを取った。
独創技術を生み出すには、教育から変えないと難しい。
戦後の悪平等教育をやめて、戦前の旧制高校の復活が望まれる。

<西澤潤一氏 略歴>
1926年生まれ。48年東北大学工卒、東北大学電気通信研究所教授、
同所長、東北大総長を経て、現在は首都大学東京学長。
PINダイオード、半導体レーザー、光ファイバーを発明するなど
独創的な研究で知られる。文化勲章、勲一等瑞宝章受章。工学博士。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2011022082008

大分・西別府病院のスポーツ外来拡充 気づきにくい課題もケア

(毎日新聞社 2008年9月4日)

別府市鶴見の国立病院機構西別府病院が、
スポーツに関する外来診療を拡充。
02年、脳スポーツ外来とスポーツ心理学外来を開設、
今年7月にはスポーツ皮膚科も開設、8科体制に。

◆懸命なのに

女性スポーツ外来担当の松田貴雄・婦人科医長(45)は、
北京五輪で健闘したサッカー女子代表・なでしこジャパンのチームドクター。
「女子選手は、『小さな男性アスリート』ではないことを理解してほしい」。

高校生など成長期の女子選手には、貧血を持つ選手が多い。
貧血というと、細身で青白くあまり運動をしない子を思い浮かべがちだが、
「筋力トレーニングなどで筋肉がつく時に、鉄分を取られるので、
たくましい体の選手でも、鉄分欠乏症が多い」。

中学生まではすばしっこい動きだったのに、
高校生になってから動きが鈍くなる。
周囲からは、「さぼっているのでは」と見られがちだが、
その中には貧血の選手もいる。

◆無月経も危険

激しいトレーニングで体脂肪が減り、無月経になる場合も危険。
女性ホルモンの分泌量が減っているから。
「『まだ月経は止まっていないのか』と言う、古いタイプの指導者がまだいる」。
この状態はいわば、年齢を重ねて更年期を迎えた女性と同じ状態。
数年も続けば、骨粗しょう症の状態になり、疲労骨折が増える。

体重制限の厳しい競技で拒食症になる選手には、
ホルモン補充で劇的に症状が改善するケースもある。
「かつては女性ならではの苦労を乗り越えた選手だけがトップ選手になった。
ちょっとした悩みを解決するだけで、今まで埋もれていた選手が
トップ選手になる可能性も秘めている」。

◆イボも悩み?

スポーツ皮膚科を担当する村山淳子医師(32)は、
皮膚科の分野から選手をサポートしようと意欲を燃やしている。
例えば、足の裏にできるマメ。
多くの選手は削ってみるなど、自己治療で治そうとするが、
「中にはウイルス性のイボもあり、いじればいじるほど増える」。
体重がかかる場所にできたイボが治らないため、
「足を踏ん張れない。テニスができない」などの悩みを持つ。

定番の悩みとして、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性皮膚疾患も。
「汗をかくと、真っ赤になる選手も。それで、集中力が落ちる場合もある」。
皮膚トラブルを治療し、スポーツを楽しんでもらうのが村山医師の願い。
トップ級選手だけではなく、「今まで、皮膚トラブルを気にして
スポーツを避けていた人たちにも、楽しく健康づくりに取り組んでほしい」

◆各科の協力で

西別府病院のスポーツ外来は、スポーツ整形外科、スポーツ栄養、
障害者スポーツ、スポーツ歯科がある。
日本代表の担当医師は松田医長のほか、卓球2人、ラグビー(U18)1人。
日本卓球協会のチームドクターで、その他の各種競技でも
メンタルトレーニングなどに取り組む森照明院長(65)は、
「選手がベストパフォーマンスを出すためには、
精神的なトレーニングだけではなく、体の状態も大事だ」。

7月の皮膚科開設で、各科の医師が協力しながら、
スポーツがからむすべての相談に応じる体制がほぼ整った。
森院長は、「世界に通用する選手になる前に、
『経験と根性』に価値を求める指導で
つぶれてしまわないように役立ちたい

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79522

米国の10代の若者の自殺率が微減 2005年、10万人に4・5人

(共同通信社 2008年9月4日)

米国の10代の若者の自殺率は、2005年に10万人当たり4・5人、
2004年の同4・7人から5%減とわずかに減ったが、
依然高率が続いている。
この調査結果は、米医療協会ジャーナルに掲載。

米国の10-19歳の自殺率は、1996年以降減少傾向が続いていたが、
2004年に前年比18%増と急増。

研究者は、2004年以降の自殺増加と米食品医薬品局(FDA)が
同年に出した抗うつ剤に関する警告との関連を懸念。
FDAは、抗うつ剤の使用が自殺志向の危険性を高めている
可能性があるとの報告書を基に、抗うつ剤の使用を控えるよう警告。

バーモント大学のファスラー教授(心理学)は、警告後、
10代の若者が抗うつ剤使用を恐れるようになり、
これが若者の自殺増加につながっている可能性がある。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79501

遺伝子の“鍵”を解明 がん治療への応用も

(共同通信社 2008年9月4日)

細胞分裂時に不要な遺伝子が働いて異常が起きないよう、
DNAに化学変化を与えて“鍵”をかけておく仕組みを、
京都大の白川昌宏教授らのチームが解明、
英科学誌ネイチャー電子版に発表。

こうした仕組みは「メチル化」と呼ばれ、巧みな生命現象として注目。
遺伝子が正しくメチル化されていないと、分裂細胞ががん化したり、
多様な組織に成長する幹細胞に似た状態に戻ったりする。

白川教授は、「この鍵を自由に開閉できるようになれば、
がん治療や人工多能性幹細胞(iPS細胞)づくりなど、
広い範囲に応用できそうだ」

チームは、細胞分裂時のDNA複製にかかわるタンパク質「UHRF1」に着目。
メチル化されたDNA領域をこのタンパク質が検知し、
複製したDNAの同じ領域に化学変化を与えて、
遺伝子が働かないようにしているのを突き止めた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79505

2008年9月11日木曜日

水生生物調査の参加者ダウン 07年度の県内

(岩手日報 9月4日)

「環境教育の元祖」ともいえる河川の水生生物調査への参加者が減少。
2007年度の県内の参加団体、参加者数は、ピーク時より約20%減。
都道府県別でも全国トップの座を譲った。
授業に取り入れられることで、子どもが身近な自然を学ぶ機会となっているが、
総合学習の多様化や学力向上路線などが減少につながった。
県は、調査への参加呼び掛けを強化する方針。

水生生物調査は、河川に生息するサワガニや、カワゲラなどの
成育状況を調べる全国共通調査。
すむ生物を指標に、水質を「きれいな水」から「汚い水」までの4段階で判定。

07年度の本県の参加団体は、201で5年連続減。
延べ参加人数も、6178人と2年連続で減った。
参加人数は、1996年まで全国トップだったが、97年に2位に転落。
06年には3位に順位を落としている。

背景には、小学校など学校の参加減少がある。
調査方法が簡単なことから、対象は児童生徒が中心。
07年度は小学校63・9%、中学校10・7%、子ども会9・1%など
小中学校での実施が大半を占めた。

同調査を、「環境と地域を考える優れた教材」と認める
県教委の佐々木修一学校教育室長は、参加者減少について
「学校五日制なども影響しているかもしれない」と推測。

担当する県環境保全課は、
▽総合学習の多様化、
▽地球温暖化やごみ減量など環境教育の多様化、
▽キャリア教育、福祉教育など総合学習への社会ニーズの変化、
を減少の要因と分析。

多くの参加があることは、河川全体の水質も経年変化で見ることができる。
手軽な調査だが、水質環境を把握する貴重なデータにもなっている。

同課の吉田茂総括課長は、
「身近な河川を調べることで地域が分かり、環境への意識啓発にもつながる。
難しい調査ではないので、子どもたちを中心に参加を呼び掛けていきたい」
とPRに力を入れる構えだ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080904_14

教師力08(9)子供の心「じっくり聞く」

(読売 9月5日)

大学院で、震災後の子供たちを追跡調査した教師がいる。

神戸市北区にある市立小部小学校の通級指導教室。
近隣の小学校を含む通常の学級に通う発達障害や情緒障害の
子供たち約40人が、週に数回、必要な支援を受けに訪れる。
指導にあたる4人の教員のうちの1人が、古川香世教諭(44)。
3年前から担当している。

子供たちと1対1で接することもあれば、指導教室の隣にある
専用の“職員室”で、電話での教育相談にのることもある。
じっくり、ゆっくり話を聞き、それぞれにあった対応を考える。
早合点して、型にはまった判断をしないようにするため。
「以前は、教室に行きたがらない子を、問答無用で『甘えるな~!』って、
引きずってでも、教室に連れて行くタイプだったんです」と苦笑いする。

小学校の免許も持っていたが、長く中学校の社会科教師として過ごした。
2003年度から2年間、兵庫教育大大学院で臨床心理学を学び、
修了後に臨床心理士の資格も取得。

進学のきっかけは、様々な問題を抱える子供たちの心を
理解したいと思ったからだ。
ずっと気になっていたことがあった。
阪神大震災で被災した、元教え子たちのその後だ。
大学院では、その追跡調査に取り組んだ。

震災が起きた1995年当時、神戸市灘区の市立鷹匠中学校で
1年生の担任だった。
受け持ったクラスの教え子1人が亡くなり、残された36人の生徒も被災。
避難所や引っ越し先で暮らす生徒に学級通信を届けるなど、
精いっぱいのことをしたつもりだった。

面接のため、9年ぶりに元教え子26人と再会。
すっかり成長した姿に、時には涙を流しながら、震災でつらかったことや、
してほしかったことを聞き取った。
「友達が死んだのに泣けなかった」、「悲惨な光景にわくわくしてしまった」と
自分を責めたり、「転居先でのケアがつらく、元の学校の先生と話したかった」
と話したり。思いもよらなかった内面を知った。

「みんな悲しいだろう、つらいだろう」、
「被災地から離れた子はひとまず安心だ」と思い込んでいた
自分を振り返り、無力感に襲われた。

衝撃的な出来事に直面すると、感情のマヒが起きるのは正常な反応であると伝え、
一斉指導よりも個別指導で必要な言葉をかけていれば、
もっと早く心を軽くしてあげられた。
大学院で学んだ臨床心理の知識と研究のおかげで、
子供の心を知ろうとする気持ちはさらに強くなった。

災害や事件が起きるたびに、巻き込まれた子供たちのことを思う。
「それぞれに必要なモノが分かるのは、一番身近にいる担任。
どうかたくさん話を聞いてあげてほしい」

現在、担当する通級指導教室の子供によく手紙を渡す。
「昨日は、ふざけてばかりいたからしかっちゃったけど、
理由があったんだってね。知らなくてごめんね」。
お互いの気持ちを通わすために、手間は惜しまない。

◆臨床心理士

財団法人日本臨床心理士資格認定協会が、1988年から認定試験を実施。
受験資格は、原則として協会が指定する大学院の修士課程を
修了した人に限られる。
5年ごとに研修を受けるなどした上で、資格の更新が必要。
2007年現在、1万6732人が認定を受けている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080905-OYT8T00222.htm

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 軽部征夫氏インタビュー

(日経 8月24日)

軽部征夫・東京工科大学長

―バイオ関連の研究開発で、今後どんな分野が伸びるか?

テーラーメードの医薬品と医療は、バイオで期待できる分野。
遺伝子から個人差を調べれば、高血圧になりやすいなどの傾向が分かり、
本人に最適な医療ができ予防に生かせる。
治療や予防の効率が高まるので、膨れあがった医療費を抑える効果も。
広く普及するには、リスク遺伝子の情報が漏れプライバシーの侵害が
生じるという懸念が、大きな壁。

テーラーメード医療の研究は、米国で進んでおり、
リスクを取って研究開発に取り組むベンチャー企業に資金が集まっている。
日本企業も米国の企業に投資しているが、
目ぼしい企業は既に抑えられており、もう手遅れな状況。
様々な細胞を作れる新型万能細胞(iPS細胞)も、
一種の臓器ビジネスの市場につながり、テーラーメード医療の一環。

―医療以外にもバイオ研究が花開く方向はあるか?

食料分野で、「加速農業」が重要。
植物や生物、土の力を科学的に調整して生命の成長過程を加速させ、
1年に5~6回収穫できるようにする。
世界的な食糧不足に対応し、国内では農業に携わる人が少なくなる中で、
ロボットと組み合わせて効率的に生産できるようになるかもしれない。
デジタル技術との連携も重要。
その一環として、サカタのタネと組んで、土壌の病害を診断する土の
バイオセンサーを開発したこともある。

食の安全という面では、ICタグもポイント。
価格が1~2円と安価になり、タグにセンサーをつければ、
食材が移動中でも温度や品質を管理できる。
ICタグは日立製作所が強いし、センサー技術は
国内の半導体関連企業ならどこでも優れている。

―知財管理という観点から、日本の大学や企業に必要なものは?

大学の研究者は、知財の関心が薄く、かつては優れた研究でも、
特許申請より先に学会発表することが多かった。
本来は、軸となる特許とそれを商品化するために必要な数多くの特許の
全体像を頭の中に描き、そこから提携できる企業を探せば、
大学・企業ともに有効な連携となる。

もうひとつ、特許とは別に「標準化」という点にも注意すべき。
日本企業は、技術に優れ特許を抑えることはできるが、
それとは別に、例えば米国ではブルーレイの次の技術として、
業界で何を標準とするかという議論が相当前から進んでいる。
技術的に優れているからといって、必ずしも標準になれるとは限らない。
いったん標準の仕組みが決まってしまうと、
(グループに入っていない企業は)商品化する場合にカネを払う必要。
米国は標準化の発想が進んでいるが、
日本のメーカーは戦略がないように感じる。

<軽部征夫氏 略歴>
1942年生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科博士課程を修了。
バイオセンサーなど生物学と工学を融合したバイオニクスを専門。
東工大と東大で教授を務め2008年から現職。
日本知財学会会長も務め、知財管理にも詳しい。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2010022082008

科学技術外交のカード

(サイエンスポータル 2008年9月3日)

地球規模の課題解決のために、日本の科学技術を活用し、
開発途上国の人材開発を支援、日本の海外発信機能の強化も
図ろうという「科学技術外交」が、政策課題の一つに浮上。

その具体策となる、政府開発援助(ODA)との連携による
国際共同研究課題を科学技術振興機構が選定し、公表。
「環境・エネルギー」、「防災」、「感染症」の3分野から12の研究課題が採択、

共同研究の対象となる相手国は東南アジア、南西アジア、アフリカなど
ODAの技術協力の対象となっている国から選ばれている。
研究期間は3-5年で、年間1,000万-5,000万円の研究費が投じられる。

これらの研究課題・研究相手国の中には、
既にバイオエタノールの開発、利用で数十年の実績を持つブラジルのような
例もあるが、共同研究課題は相手国で深刻な問題になっているものばかり。

「海面上昇に対するツバル国の生態工学的維持」の研究代表者、
茅根創・東京大学大学院教授は、6月19日の
「太平洋島嶼国の環境と支援を考える国際シンポジウム」で、
「ツバルで起きていることは、海面上昇による水没という単純なものではなく、
ローカルとグローバルな問題が複合的にかかわっている」と報告。

ツバルは、標高が1-3メートルしかないサンゴ環礁からなる島国で、
首都のあるフナフティ島は100年前には100人ほどが住み、
標高が比較的高いラグーン側だけ。
中央部の低地は、100年前に英王立協会が作成した地質図に、
海水がわき上がっているという記載があり、マングローブも生えていた。
もともと高潮時には水没するような区域だった。

なぜ、最近になって問題になっているかといえば、
太平洋戦争時に飛行場が造られた結果、湿地の位置が分からなくなり、
1980年以降の人口急増で、湿地帯だった区域にも人が住むようになった。
フナフティの人口は、百年前の100人から現在、4,000人に増えている。

ツバルが直面しているのは、地球温暖化による海面上昇と
ローカルな問題の複合的な現象であり、
グローバルな地球温暖化対策に加え、高潮対策というツバル固有の課題。

茅根教授たちのやろうとしていることも、高潮の最初の防波堤である
サンゴと有孔虫による砂の生産、堆積速度を見積もり、生態系の修復や、
堤防の構築など人為的補助で砂の堆積量がどのように促進されるかを評価し、
海岸浸食対策や海岸管理計画の策定を支援すること。

最新式の機器を提供して、現地の人々が使いこなせずに終わってしまう
海外援助では意味がない。
新たに選ばれた12の共同研究は、政府が進めようとしている
科学技術外交のよい先例、カードになるだろうか。

「海面上昇に対するツバル国の生態工学的維持」以外の研究課題と
相手国は、次の通り(かっこ内は研究代表者)

◆環境・エネルギー分野

「気候変動に対する水分野の適応策立案・実施システムの構築」
タイ(沖大幹・東京大学 生産技術研究所 教授)
「サトウキビ廃棄物からのエタノール生産研究」
ブラジル(坂西欣也・産業技術総合研究所 バイオマス研究センター長)
「インドネシアの泥炭における火災と炭素管理」
インドネシア(大崎満・北海道大学大学院農学研究院 教授)
「熱帯地域に適した水再利用技術の研究開発」
タイ(山本和夫・東京大学 環境安全研究センター 教授)
「熱帯林の生物多様性保全および野生生物と人間との共生」
ガボン(山極壽一・京都大学大学院 理学研究科 教授)
「ナイル流域における食糧・燃料の持続的生産」
カイロ(佐藤政良・筑波大学大学院 生命環境科学研究科 教授)

◆防災分野

「ブータンヒマラヤにおける氷河湖決壊洪水に関する研究」
ブータン(西村浩一・名古屋大学大学院 環境学研究科 教授)
「インドネシアにおける地震火山の総合防災策」
インドネシア(佐竹健治・東京大学 地震研究所 教授)
「クロアチア土砂・洪水災害軽減基本計画構築」
クロアチア(丸井英明・新潟大学 災害復興科学センター 教授)

◆感染症分野

「デング出血熱などに対するヒト型抗体による治療法の開発と
新規薬剤候補物質の探索」
タイ(生田和良・大阪大学 微生物病研究所 教授)
「結核およびトリパノソーマ症の新規診断法・治療法の開発」
ザンビア(鈴木定彦・北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター 教授)

http://www.scienceportal.jp/news/review/0809/0809031.html

森さんに環境省表彰 岩手山の自然守り14年

(岩手日報 9月4日)

八幡平市大更の自然公園指導員森佐一さん(57)は、
本年度の環境省自然環境局長表彰を受けた。
指導員として14年間、岩手山での自然保護啓発などの実績が認められた
森さんは、「岩手山の自然を守り、安全な登山を楽しむための力になりたい」

森さんは、1994年7月に自然公園指導員となり、
主に岩手山の焼走り、上坊登山道で活動。
登山者への植物や地形の説明、登山道の安全確保などに尽力。

焼走り登山道は、コマクサの群生地としても知られている。
森さんは、「国内でも誇れる分布。ここ10年で訪れる人がものすごく増えた。
登山道の柵を越えないなど、コマクサを守るためのマナーを
気に掛けてほしい」。

平舘高山岳部で初めて岩手山に登り、市職員の傍ら岩手山と向き合ってきた。
県山岳協会指導委員会理事、市山岳協会理事、
八幡平遭難対策委員会捜索救助隊副隊長も務める。

森さんは、「岩手山を通し多くの仲間に出会い、支えられてきた。
私以外の自然公園指導員、先輩や仲間と一緒に受けた受賞」と感謝。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080904_9

2008年9月10日水曜日

教師力08(8)理科の授業は感動から

(読売 9月4日)

長期の教員研修で鍛えた理科の授業の力を、若い教師に伝える。

千葉県東金市の県立東金高校で、県の小学校教員初任者研修
「理科観察・実験実習講座」が開かれた。
最初に壇上に上がったのは、茂原市立茂原中学校の保川浩基教諭(46)。

保川教諭のテーマは、「顕微鏡の使用法」。
しかし、最初は手近なものを50~100倍に拡大して画面に映し出す
「マイクロスコープ」を使い、雑誌の表紙や皮膚、チョウの羽、
セミのぬけがらなどを次々と見せる。
チョウの羽の細かい模様などに、若い教師から「おーっ」と声が上がる。

「ミクロの世界で見ると、見慣れたものに、まったく違う世界が広がる。
子供が『なぜだろう』、と考えるきっかけになります」

続いて顕微鏡を使い、植物などを観察する。
最初はレンズの扱いに慣れずに戸惑っていた教師も、
ピントが合うと「きれいだ」、「すごい」と子供のように感動する。

大学は、教師には数少ない工学部出身。
機械相手の勉強で、技術者をめざしたが、教育実習に参加して
「人間形成にかかわるのも面白い」と感じ、中学教師になった。

理科の教員研修には進んで参加し、2~3年で講座を受け尽くした。
生徒と接する時間が多くなるよう、部活動や生徒会活動の指導にも
積極的にかかわった。
生徒との触れあいは楽しかったが、自信や余裕があったわけではない。

「工学部は、専門領域を深く狭く追求する勉強が主で、
人間関係を作る勉強が遅れているという意識があった。
教育学部などで専門に学んだ教師に比べ、劣等感があった」。

授業を良くするために、実験や観察を大切にしてきた。
「理科好きになって欲しい。生徒の関心をどう引くか」と考え、工夫してきた。
10年ほど前、学校に理科教員の後輩が入り、初めて、
自分の培った授業技術を、若い教員に伝えることを意識した。

茂原市立南中に勤めていた2004年、地域の教師のリーダーとなる
人材を育成する中堅教師向けの長期研修に参加。
県総合教育センターで指導主事らの指導を受けながら、
年間約100人が1年かけて教科研究などに取り組む。

この研修で、生徒に科学的な考え方を培う授業を強く意識するように。
「教師は知識量が広いほど、生徒の様々な期待に応えられる。
自分の知識の少なさや、授業方法が今のままで良いのかを、
見つめ直す機会になった

昨年からは、理科の授業力を買われ、
県教委のサテライト研究員の1人に選ばれた。
若手教師の研修は、大事な活動の一つ。

「若い教師自身が理科に感動し、好きになることが、
よい理科授業を作る出発点。
次に教員自身が努力して、自分の力を上げること。
生徒は先生を見て、努力して向上することを学びます」

指導する立場になっても、授業力を上げるための意欲は衰えない。
その姿が、生徒と若い教員の模範となる。

◆サテライト研究員

子供の理科離れを食い止める狙いで、千葉県が昨年から
小中高校のリーダー的な教師に委嘱。
小学校の初任教員に必修とした「理科観察・実験実習講座」の講師のほか、
学校の枠を超えて地域で理科授業の活性化策を検討し、
実践事例集をまとめる役割もある。
今年度は43人が研究員に選ばれている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080904-OYT8T00209.htm

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 平尾一之氏インタビュー

(日経 8月24日)

平尾一之・京都大教授

―微細加工ができるレーザーを用いてガラスを加工。
ガラスにどんな機能が加わるのか?

フェムト秒レーザーを用い、ガラスの濁りとなる泡を
消したり割れにくくしている。
薄くても耐久性が増し、3メートル角の平面パネルが製造できる。
フェムト秒とは1000兆分の1秒を意味し、この装置はごく短時間だけ
レーザーを照射することで、1マイクロメートルから数百ナノメートル、
極論すれば10ナノメートル級の加工ができる。

これまで加工に時間とコストがかかったが、
浜松ホトニクスなどとの共同研究で、従来の100倍の速さで
加工できるようになった。立体的な加工もコストが抑えられる。
ガラスの内部に光の通り道を作り、現在の集積回路に代わる
3次元集積回路も製造が可能に。
実現すれば、ガラスで大量の情報を高速で流せるようになる。

ナノテクで加工したガラス(ナノガラス)の薄膜をDVDの表層に作り、
青色レーザーの屈折率を変えることで、
記録密度を5倍に高められる技術も研究が進んでいる。
日立製作所などが実際に取り組んでいる。

―技術を普及させるには大学と企業との連携も重要。

民間企業は市場のニーズを知っていても、
高価なレーザーを購入するのは容易ではない。
そこで、研究開発がしやすいように大学の設備を民間企業に開放。
大学の周囲に、ベンチャー企業が入所できる施設があり、
中小企業が大学と連携することで技術開発の死の谷
(基礎研究と民間企業の応用研究の間のギャップ)を超えつつある。

ただし、中小企業だけでは実用化までが遠い。
村田製作所やオムロンなど地元の大手企業にも施設に入所してもらい、
大企業と組んだり技術を移転したりして、
世の中に技術が流通するよう試みている。

―ガラスなどの無機化学より有機化学への注目が高い。
ガラス利用の余地はまだ大きいのか?

ガラスの原料となるケイ素は、地球上に無尽蔵にある。
ガラスには、透明で自由に加工でき、どんな物質も内部に含ませられる特徴。
脱炭素時代となり、資源や機能の面からは
これからも利用価値は大きいだろう。
ただ、ガラスは製造にエネルギーが必要。
環境への意識が高まると、エネルギーを消費しないよう、
性能を満たした上でいかに小さく薄くするかが重要。

例えば、ガラスメーカーのなかには太陽電池パネルの覆いとして
ガラス需要の拡大を見込む企業もある。
ガラスの内部を加工して3次元の集積回路を作り、
ガラス自体を太陽電池にすることも将来はありうるだろう。

<平尾一之氏 略歴>
1951年生まれ。京都大学大学院工学研究科博士課程修了。98年から現職。
ナノガラス研究のけん引役として、科学技術振興機構(JST)や
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で研究リーダーを歴任。
地元企業との振興にも力を入れ、京都市イノベーションセンター長も務める。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2008022082008

「学習意欲」、本能かかわる脳中枢に 大阪市大など解明

(朝日 2008年9月3日)

人は達成感があると、学習意欲がわく。
この心の動きは脳のどこで生まれるのか?
答えは意外にも、言語や理解など高度な知性を受け持つ
大脳皮質ではなく、より原始的な本能にかかわる脳の奥深くの線条体
達成感がなければ、この中枢は働かない。
意欲を育む教育法開発に、脳科学が一役買いそうだ。

大阪市大と生理学研究所の研究グループの成果で、
国際疲労学会で発表。

大学生14人に、パソコンで数字を使ったテストをさせ、
脳の動きを特殊な装置で調べた。
学生には、事前に「知能の検査です」と告げた。
正解するたびに画面上のマス目が埋まり、
自分がどれだけ正しく答えたのか分かる。
マス目が埋まっていくことで、学生は達成感を得、好成績をあげることで
「自分は頭がいい」と実感する仕組み。

達成感を与えるマス目を表示せずに、同様のテストをしたときと比べると、
脳の記憶や計算に関係する部分はどちらも同じように働いていたが、
線条体は「マス目あり」のテストの時だけ活発に働いていた。
さらに、14人それぞれの日頃の学習意欲を調べると、
日頃の学習意欲が高い人ほど、線条体は活発に動いていた。

線条体は、卵をつぶさないようにそっと握るなど、
細かな運動にかかわっていることが知られている。
実験をした水野敬・科学技術振興機構研究員は、
「学習意欲という複雑な心の動きが、
脳の特定の1カ所に集約されていたのは意外」

http://www.asahi.com/science/update/0903/OSK200809030026.html

男性の“離婚遺伝子”発見、「破たん」か「危機」が2倍

(岩手日報 9月2日)

男性の結婚生活の成否に影響を与える遺伝子が、
スウェーデン・カロリンスカ研究所などの研究で見つかった。

この遺伝子には様々な型があり、うち1種類を持つ男性は、
結婚が危機にひんした経験のある人が多かった。
この成果は、近く米科学アカデミー紀要に発表。

この遺伝子「AVPR1A」は、バソプレッシンというホルモンを
脳内で受け止める物質をつくる。

スウェーデンで成人約2000人について調べた結果、
この遺伝子が「334」という型の男性は、
妻に不満を持たれている割合が高く、
過去1年間に離婚など結婚生活が破たんしたか、
その恐れのあった人の割合が、他の型の男性の2倍以上。
女性は、遺伝子型の影響がみられなかった。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080902-OYT1T00527.htm

脳細胞増えないと「方向音痴」?京大教授ら解明

(読売 9月1日)

道順などの記憶には、脳細胞の一部が新しく作られ続ける
必要があることを、京都大の影山龍一郎教授らがマウス実験で突き止めた。
記憶障害の仕組み解明につながる成果で、
科学誌ネイチャー・ニューロサイエンスに発表。

脳細胞は、減り続けるだけと考えられていたが、
近年、大人でも新しい細胞ができることが分かってきた。

影山教授らは、生後2か月以降のマウスの脳で、
新しくできた細胞を検知する技術を開発。
新しく脳細胞を作れなくする操作も使って、影響を調べた。

その結果、空間認識など複雑な記憶の中枢とされる
海馬の歯状回では、8か月間で細胞数が約15%増えることが判明。
新しい細胞を作れなくすると、1週間後には一度覚えた道順をたどれなくなった。
においを感じる脳前部の嗅球は、1年間で6~7割の細胞が
入れ替わっていた。

新しい細胞を作れなくすると3か月後、組織に空洞ができた。
ただ、においの記憶は残っており、道順などの記憶とは仕組みが違うらしい。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080831-OYT1T00646.htm

2008年9月9日火曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 牧本次生氏インタビュー

(日経 8月24日)

牧本次生・元日立製作所専務

―注目する科学技術は何か?

半導体だ。
半導体は、直接的には国内総生産(GDP)の1%産業だが、
波及効果も含めるとGDPの4割を占める。
金融分野では、非接触型のICカード、Suicaなどの電子マネーの普及で
硬貨の流通量が減少するなど、世の中に大きな影響を与えている。
テレビ、DVD、自動車も半導体抜きには語れない。
流通分野でも、ICタグをつけて物流を管理し始めた。
技術革新の原動力は、すべて半導体が支えている。

―半導体は1980年代前半は日本が席巻していた。

世界の52%の市場シェアを占めていた時代もあった。
だが、貿易摩擦が生じ、日米半導体協定が結ばれてからは管理貿易となり、
日本の半導体の力は落ちてしまった。
その間に米国が復権し、韓国や台湾、シンガポールが躍進した。
韓国や台湾、シンガポール、欧米の政治家のトップは、
半導体の技術力が国の盛衰を左右するとの意識を持ち、
新工場の竣工式などにも足を運ぶ。
日本の政治家は、貿易摩擦のトラウマがあるようだが、
国として重要性を再認識する必要がある。

―巻き返しは可能か?

パソコンの普及期の1990年代は、日本は完敗だった。
これからは、日本が復権するチャンスだ。
テレビやビデオは、アナログからデジタルに変わるし、
あらゆる家電製品やカーナビもデジタルに変わる。
半導体技術を用いて、日本の電機会社が得意な
デジタルコンシューマー製品を、世界中で販売できるかが巻き返しのカギ。
任天堂やソニーなど、ゲーム分野では既に成功している。
ブルーレイなどDVDも、日本企業の活躍の場だろう。
携帯電話端末は、機能は世界一だが、海外では売れていない。
ドメスティック(自国)志向なためで、世界を志向しない企業に将来性はない。

―半導体技術はどこまで微細化が進むか?

微細化技術は、いずれ量子力学の壁があるとみられているが、
まだ10年から15年程度は微細化のトレンドが続く。
半導体は微細化とともに、多様化の方向性もある。
半導体は、電気製品などハイテク部品としてだけではなく、
さまざまな利用方法がある。
例えば、発光ダイオード(LED)は信号機で採用され始めた。
省エネ対策として、照明を白熱灯からLEDに切り替える需要も出てくる。
自動車で常に後部視界を確保するセンサーや、カメラのCCD、
CMOSセンサーとしての用途も広がるだろう。

―日本の半導体メーカーは生き残れるか?

微細技術がナノ単位となり、1つの最新の生産ラインの設備投資が
3000億円単位になりつつある。
エルビーダメモリと東芝は別として、規模が中途半端だと
新規投資が難しくなり、世界中から半導体の生産の委託を受けて、
規模のメリットを生かす台湾などのファウンドリーに
生産を頼まざるを得なくなるかもしれない。
そうなると、日本の強みである半導体の露光装置や表面実装機などの
メーカーも衰退し、半導体の先端技術が日本からなくなる。

国内の半導体メーカーがまとまって最新の生産ラインを作り、
共同利用することが1つの戦略だが、総論賛成・各論反対でなかなか進まない。

<牧本次生氏 略歴>
1937年鹿児島県生まれ。59年東大工卒、同年日立製作所入社後
一貫して半導体の道を歩む。89年半導体設計開発センター長、97年専務、
2000年退社。同年執行役員専務としてソニー入社、01年顧問。
半導体産業の標準化とカスタム化のサイクル現象を指摘、
91年に英紙から「牧本ウエーブ」と名付けられた。
現在はテクノビジョン代表。工学博士。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2007022082008

ハエたたき、0.2秒の勝負 逃げられる仕組み解明

(朝日 2008年9月3日)

ハエたたきに失敗が多いのは、ハエが逃げるための
「離陸準備」を、コンマ2秒という素早さでできるから。

そんな論文を、米カリフォルニア工科大のチームが
米専門誌カレントバイオロジー(電子版)に発表。

同大のマイケル・ディキンソン教授らは、
1秒間に5400コマ録画できる高解像度・高速度カメラを使い、
ほぼ360度の視野がある目を持っているショウジョウバエを、
ハエたたきで狙う実験を撮影・分析。

その結果、ハエは飛び上がる前に脚を使って体の重心を微妙に移動させ、
ハエたたきが来る方向とは反対に飛べるように準備することがわかった。
この動きには、0.2秒ほどしかかかっていなかった。

これは、ハエの神経系に、危険が迫る方向と、脚や体の適切な動きを
即座に結びつける「対応表」のような仕組みがあることを示す。

同教授は、「ハエたたきのコツは、ハエが今いるところを狙うのではなく、
逃げる方向を先回りすること」とアドバイス。

http://www.asahi.com/science/update/0903/TKY200809030039.html

教師力08(7)「映像作り」思考力養う

(読売 9月3日)

情報機器を使った授業の効果を研究する教師がいる。

東京・新宿の高層ビルのフロアを、ビデオやカメラを手にした
教師が行き交っていた。
パソコンメーカーが主催して8月上旬に4日間にわたって開いた
メディア機器の活用法の研修会。
北海道から沖縄県まで全国から集まった50人の教師の中から、
3日目は熊本市立飽田東小学校の前田康裕教諭(46)が指導役に。

自らが取り組んでいる「映像作り」の授業を、
1日がかりで体験させるため、4~6人のグループごとに、
教員向けの指導用ビデオを作らせる。
必要な映像や写真に付けるナレーションやセリフは、
お互いの案を見比べて推敲を重ねる。
「こっちのセリフの方がわかりやすいよ」。
各グループの議論はたちまち白熱した。

参加者の様子を見て、前田教諭は
「ビデオの操作とか編集の技術とかは二の次。
重要なのは、つたない言葉でもいいから自分の意見を伝え、
ほかの人の意見に耳を傾けながら、結論を出していくこと」。

2004年度から2年間、岐阜大学インターネット型大学院で
教育工学を学んだ。
1年目は熊本大学付属小学校、2年目は飽田東小学校で
教べんを取りながらの勉強。
進学できたのは、現職教師の学びを応援しようという熊本県教委の
働きかけに応じた岐阜大学が、熊本市内にサテライト教室を開いたおかげ。
当時は、総合的な学習の時間の情報教育や英語活動の授業計画を
作る役を任され、「とても学校を離れられる状況ではなかった」。

週2回、午後6時から大学院で始まる講義を、
市内の県立高校の一室でスクリーンを見ながら受講、
ゼミには自宅からテレビ電話で参加。
研究テーマは、自分が学校で実践してきた「映像作り」の授業法。
研究は大学院修了後も続け、授業が子供たちの学習意欲や興味を向上させ、
経済協力開発機構(OECD)の国際学習到達度調査(PISA)で
求められている論理的思考力を育てることを実証。

普段の授業では様々な教科に、映像作りを取り入れている。
テレビなどの映像の仕組みを記した国語の説明文を読んだ後、
実際にカメラで学校内を撮影して作品を作る。
英語活動では、英会話番組を作ろうという課題を出し、
子供たちに知恵を絞らせる。
子供たちが必死に考え抜くまで、「合格点」は与えない。

授業の原型は1999年、総合的な学習の授業づくりを通じて知り合った
米国在住の教育関係者に誘われ、サンフランシスコまで
自費で行って受けた研修。
自分が経験したことのない学習スタイルに、日米の教育の違いを見た。

これ以来、「教科書の内容を覚えさせるのではなく、
自分の意見を発信する力を育てる。それが日本の教育には欠けていた」。

次世代を担う子供たちに、世界で通用する力を付けるため、
研究は続けていくつもりだ。

◆サテライト教室

学生の便宜を図るため、本来のキャンパスとは別に設ける教室。
現職教諭向けには、通学に便利な駅前などに、
兵庫教育大や京都教育大なども設けている。
大学の教員が赴く場合とテレビ会議システムなどを使う場合があり、
岐阜大は後者。2002年に岐阜県内で始めた。
06年から、インターネットでどこでも受講できる形に変わった。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080903-OYT8T00232.htm

熱中症の死者、過去最多 07年は904人で倍増 大半が高齢者、対策急務

(共同通信社 2008年9月4日)

記録的猛暑だった2007年に熱中症で死亡した人は、
全国で904人に上ったことが、
厚生労働省の人口動態統計(確定数)で分かった。

前年の393人に比べ2倍以上で、
現在の死因などの分類法で統計を取り始めた1995年以降で最多。
大半が高齢者で、対策が急務となっている。

死者の男女別は男性442人、女性462人。
年齢別では、60歳以上が734人、全体の8割以上を占めた。
10歳未満と10代がそれぞれ4人、20代が7人、30代が27人、
40代が40人、50代が87人、年齢不明が1人。

都道府県別では、東京都が123人で最も多く、埼玉県94人、大阪府56人、
千葉県45人、兵庫県41人など。
死者数は例年、500人以下で推移、これまでは04年の432人が最多。

気象庁によると、07年は8月16日に国内最高気温の40.9度が、
埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で観測、各地で最高気温を更新。
気温35度以上の「猛暑日」や、30度以上の「真夏日」も記録的に多かった。

熱中症に詳しい国立環境研究所総合影響評価研究室の小野雅司室長は、
「年ごとに増減はあるが、ヒートアイランド現象や地球温暖化などを
考慮すれば、長期的には熱中症の増加傾向が続くだろう。
高齢者への情報提供を強化したり、学生の体育や部活動の時間帯を
日中からずらすなど、きめ細かい対策を進めるべきだ」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79493

疲労感じる原因たんぱく質を発見 慈恵医大教授ら

(朝日 2008年9月4日)

疲れを感じる原因となるたんぱく質を、
東京慈恵会医科大がマウスを使った研究で突き止めた。
このたんぱく質は、徹夜や運動の直後に心臓や肝臓、脳などで
急激に増え、休むと減る。
元気なマウスに注射すると、急に疲れた。
疲労の謎を解く鍵として、科学的な疲労回復法の開発につながりそうだ。

近藤一博教授と大学院生の小林伸行さんは、
人が疲れると体内で増殖するヘルペスウイルスに関係するたんぱく質に注目
疲労因子を意味する英語からFFと名付けた。

水があると眠れないマウスを、底に1センチほど水を張った水槽に
一晩入れて徹夜状態にし、その直後に臓器を取り出し、FFの量を調べた。

その結果、睡眠をとったマウスに比べ、徹夜マウスでは、
FFが脳、膵臓、血液で3~5倍、心臓と肝臓では10倍以上増。
2時間泳がせた場合も、同様に変化した。
どちらも休息後は平常値に戻った。

FFを元気なマウスに注射すると、
大好きな車輪回し運動をほとんどしなくなった。
疲れの程度に応じて増減し、外から与えると疲れが出現するという
「疲労原因物質」の二つの条件を満たした。

FFは、細胞に対する毒性が強い。
心臓、肝臓で特に増えるため、過労に陥ると心不全や肝障害が起きやすくなる、
という現象に関係している可能性が高い。

人が疲れを感じる仕組みは、まだ十分解明されていない。
運動疲労の原因とされていた乳酸は、運動すると筋肉中に増えるが、
疲労の程度とは関係せず、筋肉に注射しても疲れが出現しないため、
原因物質ではないことが数年前に実証。

近藤教授は、「FFは、疲労が起きるとすぐに反応するため、
疲労に対し最初に働く回路だろう。
正確な疲労の測定装置や、科学的な疲労回復法の開発につながる」

http://www.asahi.com/science/update/0903/OSK200809030091.html

2008年9月8日月曜日

トレーナー養成へ 岩手国体強化本部

(岩手日報 9月7日)

2016年の岩手国体に向けた県選手強化本部(本部長・達増知事)は、
選手のけが予防やコンディションを整えるトレーナーを
独自に認定する「いわて認定アスレチックトレーナー養成事業」を始める。

本年度は、医療関係者らを中心に10人程度を10月から公募。
12月から始まる講習会などで、2年かけてスポーツ医学や選手の
特性に合わせたトレーニングメニューの作り方などを学ぶ。
最終的に、国体実施40競技すべてに配置する体制を整える。

アスレチックトレーナーは、選手一人一人の体のバランスや
筋肉のつき方に合ったトレーニングメニューの作成、けが予防、応急処置、
コンディショニングなどを行う。
技術指導や作戦づくりに重点を置くのが監督やコーチとすれば、
トレーナーは選手の体づくりを支える。

埼玉インターハイの陸上男子1600メートルリレーで6位入賞した
盛岡南高陸上部は、3年前から県体育協会のトレーナー派遣を受ける。
同校陸上部の千田俊一監督は、
「練習段階から、選手のコンディションを整えてもらった。
大会では、食事や水分補給の指導、体調管理を任せ、
自分は戦略づくりに専念できた。
専門知識を備えたトレーナーの存在は大きい」。

日本体育協会(日体協)の公認制度があり、養成講習も行われるが、
受講者は全国から年間80人程度に限られ、
都道府県体協の推薦が必要。
講習会場も都市部に限られる。
本県で公認資格を持つのは現在5人だけで、
強化対象の学校や競技をかけもちしている状態。

同強化本部は、「天皇杯獲得(総合優勝)には、各競技まんべんなく
サポートが必要」という考えで、国体実施全競技に配置する計画。

昨年国体を行った秋田も独自の認定で、
ほぼすべての競技にトレーナーを置いた。
2年後、国体を控える千葉県は06年度から講習を行い、
これまで500人を養成。

同強化本部は、県内で日体協とほぼ同じカリキュラムの講習を行い、
質の高いトレーナーを育てる。
初年度は、一定の医療知識を備えた看護師や理学療法士、
柔道整復師らを中心に選考する予定。

同強化本部事務局の県教委スポーツ健康課の川口仁志総括課長は、
「選手の資質、能力を最大限引き出すために不可欠だが、
絶対数が足りない。
知識や技術を身に付けたトレーナーを県内レベルで育て、
サポート体制を整えたい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080907_3

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 井村裕夫氏インタビュー

(日経 8月24日)

井村裕夫・先端医療振興財団理事長

―どんな技術分野に注目?

ナノテクノロジーを用いて、生命科学を研究するナノバイオロジーに着目。
日本は、伝統的に化学の技術に強みがあるが、化学分野にとどまらず、
バイオや環境など他分野にどう結び付けていけるかがカギ。

ヒトゲノムに個人差があることがわかったが、病気との関係など、
さらに詳しく調べるには、技術開発が重要。
技術的には数年以内に、1人の人間の30億ある塩基配列を読んでしまう。
1人1人が自分の遺伝子を知って、病気の予防や治療をすることが可能に。

京都大学の山中伸弥教授が作製に成功したiPS細胞を活用して、
再生医療を施せば、薬では治らない病気が治るかもしれない。
実現には技術開発が必要で、iPS細胞を効率よく作る方法を、
ナノテクを使って研究することが不可欠。

機器・材料開発も重要で、この分野の実用化には企業が役割を担う。
三菱化学などの化学会社、東レや帝人など繊維会社も取り組んでいる。
東レは、透析に使う膜といった医療材料、
海水を淡水にするイオン交換樹脂などが強く、砂漠地域の需要は高い。
日本の製薬会社も、もともと化学分野は強い。
天然資源を持たない日本は、常にハイテクを進化させないといけない。

―iPS細胞の研究はどんな企業が進めるのか?

日本の大手製薬会社は、iPS細胞を今すぐ再生医療に役立てるという
視点よりも、病気の原因究明に用いて、薬の開発に使おうとする。
例えば、筋萎縮性側索硬化症の発症原因はほとんどわかっていない。
患者の皮膚からiPS細胞を作って神経線維に分化させれば、
どこに異常があるのかわかり、治療につながる。
再生医療は、まずベンチャー企業が先鞭をつけて、
大きな市場が見込めそうになった段階で、
大手製薬会社が乗り出してくる構図。

―医療機器分野は日本が遅れている。

内視鏡や超音波など一部を除いて、血管に入れる管であるカテーテルや、
血管を広げるステント、心臓ペースメーカーなどはすべて輸入に頼っている。
1つは、規制の問題。
3つの医療部品が薬事法を通るのに1年半かかるなど、
5週間で通過する米国と差がある。

もう1点は、安全性に対する一般の人の意識の差。
医療事故が起こると、医療機関や医療機器を作った会社は
集中砲火を浴びる。
技術力は十分あるのに、会社のイメージダウンにつながるのを
恐れて手掛けない。
日本人の30%がガン、40%は心臓病や脳血管の病気で死亡する。
放射線、粒子線、カテーテルなどの医療機器は、
需要の面からも開発が求められている。

―iPS細胞を使って不老不死は可能か?

大阪の経済界での講演後に、財界人から200歳まで生きられませんかと
聞かれた。可能かもしれないが、
「会社に行ったら、歴代社長が相談役として30人座っていて、
家に帰ると6代くらい前からのおじいさんとおばあさんが
座っているところで生きたいですか?」と問い返したら、大笑いに。
生物は、生きていくと体が老化して機能が落ちてくるため、
次の世代を作る。
死んでいかないと食べ物がなくなるので、次の世代が生きられない。
ある所でバトンタッチしないと、いけないのだ。

むやみに寿命を延ばす医療は医療費がかさむだけで、目指さない方がいい。
痛みの軽減や、麻痺で動けない人向けの補助器具開発といった
QOL(生活の質)向上を志向すべき。

<井村裕夫氏 略歴>
1954年京都大学医学部医学科卒。医学博士。神戸大、京大医学部教授、
同学部長、総長を経て、現在は先端医療振興財団理事長。
科学技術振興機構研究開発戦略センターの主席フェローとして、
最先端の生命科学技術を、迅速に臨床に応用できるための
新たな仕組みを提言。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2006022082008

教師力08(6)脱「自己流」道場の教え

(読売 9月2日)

“道場”で授業力を磨いた1期生は、誰からも積極的に技を学ぶ。

「さん、に、いち、9分経過」。
ストップウオッチを見ながら、吉田清史教諭(38)が読み上げる。
東京都小金井市立小金井第一中学校の2年生20人が、
手にした線香を方眼紙の目盛りに合わせてそっと置く。
方眼紙には、線香の先の丸い焦げ跡がつく。
夏休み直前の一次関数の授業。
作業を1分ごとに繰り返すと、線香が短くなっていく様子を表す
グラフができあがった。

線香の長さと経過時間の関係に、気づき始める生徒が出てくる。
「きれいな直線になってる」。
満面の笑みを浮かべる生徒に、
「何分後に線香が燃え尽きるか、予想できそうかな?」。
まだまだグラフ作りに夢中の生徒には、
「次はどれぐらい短くなると思う?」。
時間を計りながら、それぞれに助言する。
授業終了時には、全員が一次関数の意味を理解した様子。

数学が得意な生徒も、苦手な生徒もみんなが楽しめ、
個別指導の時間も確保できる。
新しい単元に入る時には、できる限りそんな教材を用意する。
仕入れ先は、本やインターネット、先輩や他校の知り合い。
自分のクラスに合うようアレンジを加える。
「線香」は、同中の先輩教師に教えてもらった。
「どんどん聞いて試してみる。それが大切だと思います」

吉田教諭は、東京都教委の東京教師道場の1期生。
月1回開かれる学習会に2年間通い、情報交換できる仲間もたくさんできた。
同中の山本修司校長(58)は、「以前は、一生懸命さが空回りして、
生徒がついていけなかった。見違えるほどの成長です」

東大大学院で生物環境工学を学んだ。
大手食品会社の技術職を経て、中学校の教壇に立ったのは31歳。
幼いころから、数学は大好き。
高校生の時には、「カリスマ」と言われる予備校講師の参考書を見て、
「もっと、美しく、エレガントな解法はないかなあ」と思いを巡らせた。

最初の年、意気揚々と授業に臨んだ。
自己流で文字を多用し、数学の魅力を思い切り語った。
だが、反応は今ひとつ。
教室を出た瞬間、「わかんね~」とぼやく生徒の言葉が耳に届いた。
簡単なことを聞いたつもりなのに、生徒が泣き出してしまったことも。
教えたいことがあれもこれも出てきて、つい、しゃべりすぎてしまう。
自分の授業をそう分析し、反省した。

それからは、以前にもまして、校内の教員に教えを請うようになった。
一生懸命な姿を見て、応援してくれる保護者も現れた。
“道場”が開設されると聞いて、手をあげたのは、
支えてくれた人たちのためにも少しでも早く、多くのことを勉強したい。

“道場”は今春で修了したが、「もっともっと学びたい」と、
上級の東京教師道場錬成講座に通っている。
自己流はしばらくお預けだ。

◆東京教師道場

東京都教委が2006年度から、経験5~10年目の教員を対象に、
授業力向上を目指して始めた。
定員は毎年400人。
教科ごとに4人一組で、ベテラン教員らの助言を受けながら学習会に参加、
互いの授業も見学し合う。
今年3月に、1期生375人が修了。
うち125人が、さらに上級編の東京教師道場錬成講座(3年間)に参加。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080902-OYT8T00285.htm

地球温暖化対策:実行計画、市町村53%策定せず

(毎日 9月3日)

全国の市区町村の過半数が、地球温暖化対策推進法(99年施行)で
自治体に策定が義務付けられた「実行計画」を
まだ策定していないことが、環境省の調査で分かった。
策定していないのは53%、同省は未策定の自治体名を初めて
公表するとともに、最低限盛り込むべき内容を示した簡易マニュアルを作成、
早期策定による対策推進を求めている。

同省は、実行計画の策定状況を全自治体に尋ねた。
都道府県の策定率は100%だったが、東京23区を含む
全1821自治体のうち、策定済みは849自治体(47%)にとどまった。
前回調査(06年)時は、36%(1843自治体中663自治体)で、
大幅に増加したものの、まだ半数に届かなかった。
都道府県別では、大阪府内の策定率が最も高く88%。
最も低いのは沖縄県の10%。

市区町村のうち、政令指定都市、中核市、特例市に限ると
策定率は100%。
同省地球温暖化対策課によると、小規模の自治体では
温暖化対策の担当者が他の業務を兼ねていることが多く、
実行計画を策定する余裕がないことなどが背景にある。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080903ddm003040145000c.html

中心市街地再生へ始動 国認定の盛岡市基本計画

(岩手日報 9月3日)

盛岡市の中心市街地活性化基本計画は、
国の認定を受けて、2012年度まで
5年間の取り組みがスタート。
国の支援を得て、計画面積218ヘクタールで64事業を展開し、
衰退が進む中心市街地の再生を目指す。
総事業費は約230億円。
一方、同市は郊外で盛南開発を推進しており、
相乗効果を出すには互いの役割の明確化が必要。盛岡のまちづくりビジョンをどう描くか、官民協働の取り組みが求められている。

同計画は7月、補助率のかさ上げなどにつながる国の認定を受けた。
道路整備など市関連の42事業と、中ノ橋通1丁目の盛岡バスセンターや
中三百貨店の建て替え、大通3丁目の商業ビル建設など
民間の22事業を行う。

認定までの道のりは険しかった。
問題は、1994年度から続く盛南開発
(約313・5ヘクタール、事業費784億円)との整合性。

中心市街地の衰退は、盛南開発に伴って進出した
大型店の影響も否定できない。
郊外と中心市街地の開発を同時進行する同市の計画は、
互いに効果を打ち消し合う恐れもある。

同市などは関係省庁と粘り強く交渉を重ね、
「中心市街地、盛南地区とも、それぞれの地域特性を生かして機能分担し、
連続的な都心形成を図る」として認定を勝ち取った。

同市商工課の時舘公親商業係長は、
「盛南は車交通を中心とし、産業拠点を含むまちづくりを図る。
中心市街地は、高齢者でも歩いて回れる、盛岡の歴史や文化が
感じられるまちを目指す」。

しかし、個々の事業についてはそれぞれ国に計画を示して補助申請し、
認められなければならない。

盛岡バスセンター再開発に携わる盛岡まちづくり会社の玉山哲社長は、
「中心市街地が目指す方向性とマッチした開発とする必要があり、
官民一体で地域の長期ビジョンを描くことが大切。
今後2年間に、どの程度議論を深められるかが計画の成否を分ける」。

盛南開発連絡協議会の菅原吉男会長は、
「限られた予算の中で、相反する2つの開発を同時に行うのは困難が伴う。
盛南と中心市街地の連続性が保たれるよう、特に配慮してほしい」。
谷藤裕明市長は、「皆で知恵を出し合い、中心市街地と郊外が
相乗効果を出して共存するモデルケースを目指したい」。

中心市街地活性化基本計画とは 盛岡市中心部の約218ヘクタールを指定。
「にぎわいあふれる中心市街地」「訪れたくなる中心市街地」を目標に、
64事業を行う。

12年度末までに、中心市街地の小売年間販売額869億3900万円
(07年度816億5900万円)、1日当たり歩行者・自転車通行量5万1千人
(同5万260人)、年間観光客入り込み数372万人(同365万人)の実現。

2008年9月7日日曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 江崎浩氏インタビュー

(日経 8月24日)

江崎浩・東京大学教授

―どんな技術が有望か?

インターネットのIPv6(インターネットプロトコルバージョン6)の技術。
現在はIPv4で、ネットの住所にあたるアドレスは
全体の15%程度しか残っておらず、2011年にも枯渇。
証券会社や銀行は、ネットサービスのユーザーの認証の際にIPアドレスを使い、
グローバルなアドレスが取れなくなれば大きな支障が出る。

インターネットは、いろいろな情報を低コストで流通する基盤を提供。
グーグルなどネット関連企業ばかりでなく、
銀行や証券など古くからある産業もコスト削減や効率化の点で恩恵を受けた。
情報ネットワークが整備されていなかった分野では、
8割のサービスはコストに合わず、2割で収益を上げていた。
情報網が整備されると、採算がとれなかった8割に商機が生まれる。
インターネットが起こした現象。

―これからどんなネットワークができるのか?

どこでもコンピューターの情報処理能力が使えるユビキタスネットワーク。
ロボットとか微小な装置がネットワークにつながることでも、
世の中は変わるだろう。
自動車はガソリンから電気になり、
10年後にはエンジンがなくなってもおかしくない。
輸送システムのパラダイムシフトが起これば、車椅子や義手、義足を
作る会社が化けるかもしれない。
義足にタイヤをつければ、車になる。
移動しなくても、電子メールでコミュニケーションがとれるようになったように、
人々の動線も変わる。

―世の中が変わるのですね。

車同士がコミュニケーションを始めると、人は運転しなくて済む。
機械が運転すれば、ものすごく速くなる。
面白いアイデアを、トヨタ自動車が持っている。
1人乗りの車ができ、椅子に座っているとスーっとやってきて、
窓から外に飛んでいって、目的地で下ろすということが可能になるかも。
移動時間が減り、車の中で仕事をしたりワインを飲んだりできる。

脳の動きも、かなり把握され始めた。
手を動かすとき、どの神経が動いているということがわかれば、
脳の動きから手の動きを遠隔で再現できる。
最終的には、脳の動きをすべてコピーし、脳自体をネットワークに
つないでしまうことが目標になるが、
まずは周辺のデバイス、手足や目や耳が外部に出て行くだろう。
究極的には、人が動かなくていい仕組みになるかもしれない。
人やモノの移動に伴う二酸化炭素(CO2)排出量が莫大だけに、
環境問題の解決にも合致する。

―柔軟な発想はどこで生まれるのか?

かつては企業の中央研究所で、活発に自由な発想や研究がなされていた。
企業も国際競争の中で、研究者を自由に遊ばせておく余裕が
乏しくなっており、その役割は大学が担うようになっている。

<江崎浩氏 略歴>
1963年生まれ。85年九州大工卒、東芝などを経て、
現在は東大大学院情報理工学系研究科教授。
10年前からネット上のアドレスの枯渇問題を指摘、
IPv6の普及に向け活動。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2005022082008

子宮体がん予防、コーヒーが効果? 厚労省研究班が調査

(日経 9月1日)

コーヒーを1日3杯以上飲む女性は、ほとんど飲まない女性に比べ、
子宮がんの一種「子宮体がん」にかかるリスクが約6割低いとする
大規模疫学調査の結果を、
厚生労働省研究班(津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)が公表。

コーヒーを飲むと、女性ホルモンなどの濃度が下がり、
子宮体がんを予防する可能性がある。

全国の40―69歳の女性約5万4000人を、
2005年まで最長で15年にわたって追跡調査。
この間、117人が、子宮の袋状の部分にできる「子宮体がん」になった。

コーヒー摂取の頻度によって、「週に2日以下」、「週に3―4日」、
「毎日1―2杯」、「毎日3杯以上」の4つのグループに分けて
発症リスクを調べたところ、「週に2日以下」のグループと比べ、
「毎日1―2杯」は39%、「毎日3杯以上」は62%発症リスクが低かった。

http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20080901AT1G0100I01092008.html

エコマジネーション・GEが考える環境と経営 「グリーン・オリンピック」の遺産

(日経 9月1日)

◆ゼネラル・エレクトリック

トーマス・エジソンを創業者とし、時価総額は42兆円超の世界最大の複合企業。
世界中に約30万人の従業員を擁し、テクノロジー、メディア、金融サービスまで
幅広い事業を100カ国以上で展開。
環境問題への取組みで、経営上の成長戦略でもある「エコマジネーション」
グローバルに推進

史上最多となる205の国と地域の選手たちが熱戦を繰り広げた北京オリンピック。
「グリーン・オリンピック」としても、大きな成果を上げた。

国際オリンピック委員会(IOC)のロゲ会長は、北京オリンピックが
中国に及ぼした影響について、大衆のスポーツ参加熱が生まれたこととともに、
中国人の環境への意識の高まりを強調。

GEは、エコマジネーションを通して大会をサポート。
中国の環境問題への取り組み、特に再生可能エネルギー分野への努力は、
これからも続いていく。

GEは、北京オリンピックのワールドワイド・パートナーとして、
北京周辺の多数のクリーン・エネルギー・プロジェクトにソリューションを提供。
北京周辺地域に電気を供給したのは、
北京の北部にある張北と尚義に作られた風力発電所。

GEは、風力タービン120基を提供。
北京、天津、唐山地域に、180メガワットという平均家庭40万世帯分もの
年間所要電力を供給。
二酸化炭素排出量を年間40万トン削減し、オリンピック後も、
この地域に持続的にクリーンなエネルギーを供給し続けることができる。

オリンピックを契機とした北京での水処理プロジェクトとして、
GEは北京東方の華北平原にある唐山市南堡汚水処理場にも、
逆浸透膜技術を提供。
汚水処理場では、毎日9万3千トン余りの水が浄化され、
きれいになった水は唐山市南堡経済開発区の工場で使用。
GEの水濾過技術は、清河汚水処理場にも使用、
オリンピック施設の景観保持にも役立った。

GEウォーター&プロセス・テクノロジーでは、
東莞市に2つの最新鋭の水処理施設を寄贈。
東莞市とその周辺村落の住民約6万人に、清潔な飲料水を提供。
きれいな飲み水を通じて、住民の健康増進にも寄与する。
同市には、移動式の水処理プラントも供給。
市の中心部から水を引けない地域のためのもので、
移動式の水処理システムは、中国では初めて。

◆環境意識の向上

中国の環境意識を高めたという側面では、
オリンピック・グリーン(オリンピック公園)のスポンサー村に建てた
「イマジネーション・センター」が挙げられる。

会場を訪れた人に、GEが提案する新たな時代とその道標を体験。
万物は、「木」、「火」、「土」、「金」、「水」の5元素から成るという
中国の五行説の考え方を根底に、
エナジー、ウォーター、ヘルスケア、トランスポーテーション、ライティングなど
数々のGEの事業が、環境に配慮した革新的な技術で、
北京大会のインフラ構築に貢献。

◆「エコマジネーション」とオリンピック・マーケティング

GEは、オリンピックというイベントの成功のためだけでなく、
地域の発展や環境問題への対応を長期的な視点から考え、
インフラ整備を政府と共に進めてきた。

北京オリンピックに関連するGEの売上げは、目標を上回る17億ドル。
半分以上は、全米でのオリンピック放送権をもつNBCの広告関連収入、
北京および北京周辺での合計400件にものぼる
インフラストラクチャー分野のプロジェクト受注により、7億ドルもの売上げ。

GEのダニエル・ヘンソン(マーケティング担当副社長)は、
「オリンピックは、GEの技術力を見せるショーケースであり、
増益をはかる好機でもある」
各国の政府、団体、企業は、あらゆる側面で「環境に配慮する姿勢」が
今後ますます求められる。

GEは、ソリューションを提供し、環境への取り組みを支援、
自社の成長を加速できるという手ごたえ。
より高次元の環境関連ソリューションの開発へと、
理想的なサイクルを描き出せる。

◆「グリーン・オリンピック」の遺産

聖火リレーにも参加した国連環境計画(UNEP)の
アヒム・シュタイナー事務局長は、「メディアが懸念している
『五輪期間中のみの環境保護』問題については、なんの心配もない。
中国の人たちは、クリーンな空気や良好な環境は自分たちの権利であり、
こうした権利は自分や国の努力を通じて実現できる」。
「これこそが、今回のオリンピックが中国に残す『遺産』だ」、
北京オリンピックの意義について述べた。

エコマジネーションを通じて、「グリーン・オリンピック」をサポートした
GEにとっても、嬉しい一言。
イベントから、日常生活へ。
北京オリンピックにはじまった中国のグリーン・エネルギー化への努力は、
これからも続く。
GEは、これからも革新的な技術でサポートしていく。

http://eco.nikkei.co.jp/column/ge/article.aspx?id=MMECcl000030082008&page=1

教師力08(5)全員参加 声出す数学

(読売 8月30日)

全員参加の数学授業をめざして腕を磨く教師がいる。

宮崎県立都城泉ヶ丘高校で、一番大きな総合教室は、
同高を含む市内の県立高校3校の3年生72人でいっぱい。
宮崎県教委の「宮崎授業力リーダー養成塾・高校数学」で学ぶ
1期生の教師5人が、腕前を披露する学習会。
県内各地から集まった数学教師が廊下まであふれた。

学習会は、塾長を務める県立宮崎工業高校の内田信昭教諭(48)
の提案で、県教委が企画。
初対面の生徒の心をどれだけつかめるか、
習熟度がバラバラの生徒にどれだけ柔軟に対応できるかなど、
高度な力が必要。
生徒にとっても、指導力が高いとされる若手教員の授業は刺激となるはず。

学習会のチラシには、「生徒が満足できる内容です」。
県教委の自信のほどがうかがえる。
2日間にわたる学習会のトリを務めたのが、
県立延岡星雲高校の那須俊哉教諭(32)。
「僕の授業では、声を出してもらいますからね」。
那須教諭は、眠たげな生徒に「せーの」とかけ声をかけ、
まず公式を唱えさせた。
問題解説の途中には、「なんで、こうなるのかな。隣の人とじゃんけんして、
負けた方が勝った方に説明しよう」と指示を出す。
めざすのは、「全員参加で、国語や英語のように生徒が発言する授業」。

生徒の話す内容に耳を傾けて理解度を探り、
この日は演習よりも説明に重点をおいた。
参加者の1人、県立都城西高校の冨森慧子さん(18)は
「経験したことのない授業。あっという間だった」と感心。

広島大学理学部数学科で学んでいた那須教諭が、教員を目指したのは
「地元、宮崎に帰りたい」という気持ち。
当初は、「公務員だし、あくせく働かなくても、勤め上げられるのではないか」
という甘い気持ちも。

だが、教育実習で教壇に立った瞬間、考えが180度変わった。
生徒は、一生に一度しかない貴重な時間を割いて、目の前に座っている。
毎年、生徒の思い出に残るような授業をしたい」

初任地は、生徒のほとんどが就職する工業高校。
生徒が何を求めているかを考え抜いた末、教科書通りの授業だけでなく、
授業前には危険物取扱者の資格取得の勉強もさせた。

普通高校に移ってからは、受験数学をモノにするため、
高校生向けの通信添削に取り組み、
夏は浪人生に交じって予備校の講習をうけた。

予備校の講義は、ほとんどが、講師1人で問題を解説し、話し続ける。
そんな予備校の講義を、手本とする教員も多い。
だが、それでは聞く気のある生徒にしか届かないと気づいた。
「教室の生徒と全員が、考えなければならないような、
対話のある授業を心がけよう」と決めた。

「分からない」。そう決めつけて、授業を聞かない生徒が出やすい数学。
そのイメージを打破するために研さんを重ねる。

◆宮崎授業力リーダー養成塾

小学校の国語と算数、中学校の数学と理科、高校の数学の5教科で
宮崎県教委が昨秋開設。
対象は、5~10年目の教員で各5人ずつ選抜し、期間は2年。
ベテラン教員が塾長としてノウハウを伝授する。
お互いの授業を見学して討論を繰り返し、東京都内の進学校の授業や
大手予備校の講義も視察。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080830-OYT8T00212.htm

ボルトの速さの秘密? ヤムイモに運動効果

(共同通信社 2008年9月4日)

ボルトの速さはヤムイモのおかげ?
滋養強壮作用があるとされるヤムイモの一種に、
脂肪の代謝を良くして運動機能を高める効果があるとする研究結果を、
大津市の医薬品企業タカラバイオが発表。

北京五輪の陸上短距離で、3つの世界新記録を打ち立てた
ジャマイカのウサイン・ボルト選手も、普段からヤムイモを食べている。

同社が研究したのは、ジャマイカのヤムイモと異なる種類だが、
似た成分は含まれており、
「ボルト選手の驚異的な速さの秘密に関係しているかも」。

同社は、沖縄などで育つヤムイモの一種トゲドコロに着目。
少し混ぜた餌をマウスに与え、週1回の水泳運動を2カ月続けると、
普通の餌を食べたマウスより水泳時間が10-20%長く続く。
体脂肪の量も減少。
肝臓を調べると、脂肪を燃やしてエネルギーに変える酵素をつくる
遺伝子の活性が高まっていた。

トゲドコロは、アジア原産で粘りや甘みが強いのが特徴で、
国内生産量が年数トンという希少品種。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=79504