2008年9月11日木曜日

「博士が選ぶ有望技術」連動記事 軽部征夫氏インタビュー

(日経 8月24日)

軽部征夫・東京工科大学長

―バイオ関連の研究開発で、今後どんな分野が伸びるか?

テーラーメードの医薬品と医療は、バイオで期待できる分野。
遺伝子から個人差を調べれば、高血圧になりやすいなどの傾向が分かり、
本人に最適な医療ができ予防に生かせる。
治療や予防の効率が高まるので、膨れあがった医療費を抑える効果も。
広く普及するには、リスク遺伝子の情報が漏れプライバシーの侵害が
生じるという懸念が、大きな壁。

テーラーメード医療の研究は、米国で進んでおり、
リスクを取って研究開発に取り組むベンチャー企業に資金が集まっている。
日本企業も米国の企業に投資しているが、
目ぼしい企業は既に抑えられており、もう手遅れな状況。
様々な細胞を作れる新型万能細胞(iPS細胞)も、
一種の臓器ビジネスの市場につながり、テーラーメード医療の一環。

―医療以外にもバイオ研究が花開く方向はあるか?

食料分野で、「加速農業」が重要。
植物や生物、土の力を科学的に調整して生命の成長過程を加速させ、
1年に5~6回収穫できるようにする。
世界的な食糧不足に対応し、国内では農業に携わる人が少なくなる中で、
ロボットと組み合わせて効率的に生産できるようになるかもしれない。
デジタル技術との連携も重要。
その一環として、サカタのタネと組んで、土壌の病害を診断する土の
バイオセンサーを開発したこともある。

食の安全という面では、ICタグもポイント。
価格が1~2円と安価になり、タグにセンサーをつければ、
食材が移動中でも温度や品質を管理できる。
ICタグは日立製作所が強いし、センサー技術は
国内の半導体関連企業ならどこでも優れている。

―知財管理という観点から、日本の大学や企業に必要なものは?

大学の研究者は、知財の関心が薄く、かつては優れた研究でも、
特許申請より先に学会発表することが多かった。
本来は、軸となる特許とそれを商品化するために必要な数多くの特許の
全体像を頭の中に描き、そこから提携できる企業を探せば、
大学・企業ともに有効な連携となる。

もうひとつ、特許とは別に「標準化」という点にも注意すべき。
日本企業は、技術に優れ特許を抑えることはできるが、
それとは別に、例えば米国ではブルーレイの次の技術として、
業界で何を標準とするかという議論が相当前から進んでいる。
技術的に優れているからといって、必ずしも標準になれるとは限らない。
いったん標準の仕組みが決まってしまうと、
(グループに入っていない企業は)商品化する場合にカネを払う必要。
米国は標準化の発想が進んでいるが、
日本のメーカーは戦略がないように感じる。

<軽部征夫氏 略歴>
1942年生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科博士課程を修了。
バイオセンサーなど生物学と工学を融合したバイオニクスを専門。
東工大と東大で教授を務め2008年から現職。
日本知財学会会長も務め、知財管理にも詳しい。

http://veritas.nikkei.co.jp/features/12.aspx?id=MMVEw2010022082008

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