2010年7月10日土曜日

水技術開発でシンガポール公益事業と覚書

(サイエンスポータル 2010年7月1日)

新エネルギー・産業技術総合開発機構とシンガポール公益事業は、
水分野技術で協力する覚書を取り交わした。

シンガポール公益事業は、シンガポールの水事業を
一貫して担う政府機関。
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、この覚書により、
熱帯環境での水技術開発の機会を日本企業に提供することで、
今後、水需要が高まるとみられる中近東・アジア諸国などへの
展開を支援し、世界的な水問題の解決に貢献したい。

人口増加や都市化に地球温暖化が加わり、
世界的な水需給の逼迫が懸念。
日本企業は、水処理膜で世界市場の6割を占めているなど、
水処理に関する技術で世界をリードしているほか、
自治体が運用する上下水道システムも世界に誇るものを持つ。

最近、官民が一体となり、欧米企業に水をあけられている
水ビジネスの世界展開を目指そうという動きがようやく活発化。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1007/1007011.html

血液1滴からiPS細胞 世界最速25日間、慶応大

(2010年7月2日 共同通信社)

人間の血液1滴から、さまざまな細胞になる能力がある
人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作製することに成功したと、
福田恵一慶応大教授らが1日付の
米科学誌セル・ステム・セル電子版に発表。

皮膚細胞を採取し、iPS細胞を作製する従来の方法は、
60~70日間程度かかっていたが、今回の方法は
採血から25日間と大幅に短縮し、「世界最速」。

福田教授は、「女性や子どもから、皮膚を採取するのは難しかったが、
この方法は検査で採取した血液を利用できる」

福田教授らは、血液中に豊富に含まれるリンパ球の一種、
T細胞に注目、0・1mlの血液からT細胞を取り出した。

このT細胞に、iPS細胞作製に必要な特定の4遺伝子を導入するため、
"運び屋"にセンダイウイルスを使った。

このウイルスは、細胞に感染しても細胞質にとどまり、
核の中には入らないため、細胞のDNAを傷つけず、
がん化する恐れが低い利点。

できたiPS細胞から、センダイウイルスは検出されず、
さまざまな体細胞に分化することを確認。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/2/122339/

鳥コラーゲン商品化 大船渡のアマタケが開発

(岩手日報 7月3日)

大船渡市のアマタケ(甘竹秀企社長)は、自社ブランド鶏
「南部どり」100%のコラーゲンの顆粒スティック商品を開発、
今月から同社ホームページ(HP)で販売を始めた。

コラーゲンは、ブタや魚類から抽出したものが多いが、
100%鳥から抽出した商品は全国初。
美容に良いとされ、人気がある成分の商品を通して、
広く南部どりの魅力を伝えたい考え。

商品は、釜でじっくり煮込んだ南部どりから、
コラーゲンエキスを100%抽出。
噴霧凍結して顆粒状にし、手軽に使用できるスティック包装とした。

臭みがないのが特長。
ドレッシングやたれ、スープ、いため物や煮物など、あらゆる食事に
スパイスのようにふりかけて使用できる。

同社は、難しかった純度100%での抽出に成功。
コラーゲンは、肌の張りやみずみずしさと関係するとされ、
関連商品は幅広い年代の女性を中心に人気。

南部どりは、全飼育期間で抗生物質や合成抗菌剤を使わず、
安全とおいしさが売り。
同社は、コラーゲン商品もスーパーの肉売り場に陳列し、
南部どりの魅力と価値を伝えたい考え。

村上守弘常務は、「鶏のコラーゲンだけを商品化したのは初めて。
1羽すべてに付加価値を付けたかった。
南部どりのうまさを知ってもらえるきっかけになれば

市販品は、1包当たり1000mgのスティック12包入りで400円。
HPのほか、7月中旬以降はスーパーでも販売する予定。

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e201007/e1007031.html

子どもと図書館(5)母親たちの運動で復活

(読売 7月1日)

「のりものえほん」、「やぎ」、「ねずみ」、「とり」……。
テーマごとに分類された絵本が、表紙が見えるように
置かれている。
木の机で絵本を広げる親子が、動物を指さして、
「大きいねー」と喜ぶ。
静岡県沼津市の「沼津こども図書室」。
JR沼津駅前にある市の子育て支援施設の一角を改装し、
今年2月にオープン。

絵本と児童書約5000冊を収蔵する施設の設立を主導したのは、
母親たちの運動だった。
きっかけは昨年9月、イトーヨーカドー沼津店に併設されていた
「子ども図書館」の閉鎖。
選書が充実し、利用しやすい自由な雰囲気を何とか残そうと、
利用者の山田由美子さん(46)らが、
「沼津子ども図書館応援団」を設立。

応援団は、利用者ら約2500人に新しい立地希望などについて
アンケート調査を実施、昨年11月に栗原裕康市長に直談判。
市は蔵書の引き受けとともに、子育て支援施設の改装を決めた。
本棚や机、貸し出しシステム、装飾のぬいぐるみまで引き継いだ。

母親たちの要望で、施設の愛称は、詩集の名前から
「パタポン」と付けられた。
支援団体「パタポン友の会」も設立、読み聞かせ会が月に2回開催。
「良い本を子どもに手渡す場所が引き継げたことを生かしたい」
と山田さん。
今後は、絵本を紹介する広報紙の発行も検討。

沼津の閉館と同日、全国7か所のイトーヨーカドー併設図書館も
一斉に姿を消した。
各地で、同じく“復活”に向けた取り組みが起こっている。

福島県郡山市の母親たちも、「子ども図書館応援団」を作った。
代表の蛭田恭子さん(37)らが、再興を求める2622人の
署名を市に提出。
蔵書は、今年4月に市に寄贈されたが、一括して引き受ける
施設はなく、市内各施設に分散配置される方向。

応援団は、「当時の自由な雰囲気を伝えたい」と、
月に1回、雰囲気を再現した企画を実施。
会場には、母親たちが絵本を持ち寄って自由に読める形で並べ、
従来の図書館の写真も壁に飾る。

そうした熱心な活動を知った市は、蔵書の受け入れ先の
図書室の運営に、応援団の力を借りることにした。
まず、選書作業を手伝う。
「子どもたちの感性で、興味を持った何の本でも手に取れる
図書室をつくりたい」と蛭田さん。
「母親パワー」による、手作りの子ども図書館づくりが
始まろうとしている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100701-OYT8T00200.htm

2010年7月9日金曜日

骨粗鬆症の原因物質、血管硬化起こす 阪大教授ら研究

(2010年7月2日 毎日新聞社)

高齢女性に多い骨粗鬆症を引き起こすたんぱく質が、
血管を硬くする「石灰化」も引き起こしていることが、
大阪大大学院の森下竜一教授(老年医学)らの研究で分かった。

この物質の働きを薬などによって抑えれば、
心筋梗塞などの危険が増す動脈硬化の予防が期待。
2日、米心臓病学会発行のサーキュレーション・リサーチに掲載。

骨粗鬆症の要因となる破骨細胞の増加は、たんぱく質の一種、
RANKLが活性化することが原因、
女性ホルモンが減少すると、RANKLが活性化する。

この物質の働きを抑える骨粗鬆症治療薬は現在治験中で、
森下教授は、「血管への効果も期待できる」

森下教授らは、骨粗鬆症患者の多くに血管が石灰化する現象が
見られ、血管細胞からRANKLが見つかることに着目。
ヒトの血管の平滑筋細胞をシャーレで培養し、
RANKLを加えたところ、石灰化が起こった。

遺伝子を改変して、人工的に動脈硬化にしたマウスに、
女性ホルモンを与えたところ、石灰化は抑制され、
RANKLが石灰化にかかわっていることが確認。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/2/122382/

三陸町と気仙川流域の水質 良好または改善進む

(東海新報 7月3日)

森と川と海の保全に取り組んでいる
「三陸町地域の美しい水環境をつくり守る協議会」
(会長・中嶋久吉越喜来漁協組合長)と、
「気仙川流域基本計画推進協議会」
(会長・佐々木英一陸前高田市森林組合長)は、
平成21年度の取り組み実績を報告。

活動の成果が実り、両地域の主要河川や海域の水質は
改善が進んだり、良好な状態が保たれている。

三陸町地域の美しい水環境をつくり守る協議会。
中嶋会長が、「美しい自然環境を次の世代に継ぐため、
何をする必要があるのかを考えていきたい」、
河川や海域の水質状況、本年度の実施計画などについて協議。

水質状況は、吉浜川のBOD(生物化学的酸素要求量)が
環境基準を達成、吉浜湾、越喜来湾、綾里湾のCOD
(化学的酸素要求量)も水質が良好に保全。
吉浜海水浴場も水質Aが保たれた。

綾里地区で実施した生活排水対策事業「綾織の里」健全な水
環境プロジェクトは、各家庭がエコライフを実践した結果、
綾里川の支流で、CODと全窒素が減少し取り組みの効果が
あったことも報告。

重点施策では、浄化槽設置が目標値を下回ったが、
15指標の達成率は85~93%。

同協議会は、県の流域基本計画の推進組織で、
現行の三陸町地域流域計画が本年度で終了、
年内に新計画の策定作業に入る。
空席の協議会副会長に、村上禎太郎綾里地区公民館長を選任。

気仙川流域基本計画推進協議会では、
昨年度実施した水質調査結果が報告。

気仙川、矢作川、長部川は、BODが環境基準または類型Aを達成、
良好に保全され、市街地を流れる川原川も環境基準(類型A)を
満足する程度まで水質が改善。

広田湾は、検査3地点(長部沖、矢の浦沖、湾中央)のCODが
環境基準を達成し、水質がおおむね良好に保全。
海水浴場の高田松原と広田は水質Aで、良好な水質が保たれた。

重点施策の取り組み実績は、53指標の達成率が72~79%。
水質調査について、住田町内の気仙川のデータも入れてほしい、
という会員の要望に対し、事務局の県沿岸広域振興局では、
町で実施している水質検査のデータをもらって載せる方向。

http://www.tohkaishimpo.com/

唾液で高精度のがん検査 慶応大が技術開発

(2010年6月29日 共同通信社)

慶応大先端生命科学研究所(鶴岡市)は、
唾液検査で口腔がんや乳がん、膵臓がんを
高精度で発見する技術を開発したと発表。
米カリフォルニア大との共同研究。

唾液は血液などと違い、体に負担をかけずに採取できるのが利点、
今後は実用化に向けて、より安価で簡便に検査できる
機器の開発に取り組むとしている。

慶応大の杉本昌弘特別研究講師(計算生物学)らは、
がん細胞が正常な細胞に比べ、速く増殖する影響で、
唾液中の物質が変化することに注目。

比較的早期のがんと診断された患者と健常者ら計215人の
唾液を採取し、唾液中の約500種類の物質から、
患者と健常者で濃度に大きな違いが出る物質として、
アミノ酸など54種類を特定。

これらを組み合わせて分析すると、
口腔がんは80%、乳がんは95%、膵臓がんは99%の
高精度で、患者を見分けられた。

今回特定した物質とがんの関係は年齢や性別、人種には
大きく影響されないことも確認。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/29/122185/

子どもと図書館(4)調べ物 シールで楽しく

(読売 6月26日)

「じゃ、すべての都道府県名を2時間で覚えちゃおう」
愛知県西尾市の同市立三和小学校で行われた
5年生の社会科の授業。
児童文学評論家の赤木かん子さんが、児童74人に
大きな声で語りかけた。

赤木さんは、子どもの頃に読んで題名を忘れた本を探し出す
「本の探偵」として知られ、子ども向け図書室のアドバイザー。

「え~、そんなのできるかなあ」
首をかしげる子どもたちに、赤木さんが配ったのは、
県境のみが書かれた日本の白地図、シール、
近くの図書館から借りてきた地理の本。
シールは1枚親指ほどの大きさで、47枚1セット。
都道府県と同じ数。

ハイビスカスに納豆、平和祈念像……。
1枚1枚には、そんな各県の特徴がコミカルなイラストで
描かれているが、県名が書かれているのは3分の1だけ。
子どもたちは、慣れない手つきで地理の本をめくって
各県の特徴を調べ、所在地にあうシールを張っていった。

子どもたちの反応はいい。
藤田芙柚伽さん(10)は、「シールを張るのは面白い。
どんどん頭に入るから不思議」とうれしそう。

調べ学習の基礎を身につけるための授業。
調べることの楽しさを知ることが、図書館を楽しく利用することに
つながるのです」と赤木さん。
図書室改装へのアドバイスと並行し、出前授業を全国で実施。

赤木さんを招いてこの授業を企画したのは、
同市立図書館の山本紀英子館長。
「今後、市内のほかの小学校でもこうした授業をやれれば」と期待。
同小の内木純子教諭は、「人数分の参考資料をそろえるなど、
図書館の協力なしではできない試み。ありがたい」

同図書館は昨年、赤木さんのアドバイスをもとに、
1階の児童コーナーを改装。
目玉は、本の分類を子ども目線に切り替えたこと。
本の背表紙に、顕微鏡(理科)、おばけ(ホラー)など
イラストのシールを張り、一目でジャンルがわかるよう工夫。

訪れた小学4年の加藤珠基さん(9)は、
「改装する前は、並んでいる本を見ても、どんな内容かわかりづらかった。
今は、イラストでとってもわかりやすい。
もっと図書館に来たいです」

子どもが変わり、子どもに合わせて図書館も変わる。
ちょっとした工夫とアイデアが、子どもたちを図書館に呼び込ぶ
決め手になる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100626-OYT8T00285.htm

2010年7月8日木曜日

高速ネットで遠隔がん診断…岩手医大など

(2010年7月1日 読売新聞)

岩手、沖縄、東京3都県の大学病院を、
人工衛星の超高速インターネット回線で結び、
精密な画像を使ってがんの病理診断を行う実験が行われた。

がん治療では、がん化した細胞を調べる病理医の診断が
欠かせないが、専門医の数は不足し、遠隔地での病理診断が
可能になれば、がん治療の地域格差の是正にもつながりそう。

実験は、岩手医大と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同で実施、
琉球大医学部と国際医療福祉大三田病院が参加。

2008年、打ち上げられた衛星「きずな」の
超高速インターネット回線を使い、参加病院が互いに
皮膚がんや乳がんなどの画像を交換するとともに、
医師同士が音声で会話しながら診断にあたった。

日本病理学会などによると、病理専門医は全国に2052人、
医師全体の0・7%にすぎず、多くが都市部の病院に集中。

岩手医大の沢井高志教授(62)は、
「手術中に、迅速な診断が必要な場合にも役立つ。
衛星回線を使うことで、光ファイバーなどの高速通信網がない
地域でも利用できる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/7/1/122335/

ツタンカーメン死因で議論 きょうだい婚で王朝衰退か

(2010年6月30日 共同通信社)

黄金のマスクで知られる古代エジプト第18王朝後期の
ツタンカーメン王の死因をめぐり、新たな論議が活発化。

従来の暗殺説を完全否定するマラリア感染と
足の骨折が重なったとの説や、遺伝性の血液疾患との説が登場。
「きょうだい婚」が王の病気を誘発し、
王朝衰退のきっかけとなったとの見方も。

約3300年前の古代エジプト王、ツタンカーメンが育った
ナイル川中流域の都テル・エル・アマルナをつくった
アクエンアテン(アメンホテプ4世)は、多神教だったエジプトに
唯一神信仰を導入した「異端の王」。
エジプト考古最高評議会などの国際研究グループは、
DNA鑑定でツタンカーメンの父親だったと発表。

当時、アクエンアテンの急激な改革に対して、
神職らの反発が続いていた。
ツタンカーメンが19歳で急逝、頭蓋骨に陥没の跡も
見つかっていたことから、後継者に対する臣下の憎悪が
暗殺を引き起こした、との見方が消えなかった。

DNA鑑定は、ツタンカーメンの母がアクエンアテンの姉妹のうち
1人であったと解明、「きょうだい婚」だったと結論付けた。
当時の王族で近親婚は一般的で、評議会のザヒ・ハワス事務局長は、
「王族は、近親婚をしていた神々と自らを同一視していた」

研究グループは、ツタンカーメンには近親婚の影響とみられる
遺伝的な骨疾患があり、足が内側に曲がる「内反足」を
患っていたと分析。
つえを手放せず、マラリア感染に骨折が重なり死亡した。

ドイツの研究者らは6月末、足の骨の調査などから、
ツタンカーメンはアフリカなどで多くみられる遺伝性の血液疾患
「鎌状赤血球症」で死亡したとの説を発表。
最終的な死因には議論があるものの、暗殺説は完全に否定。

ツタンカーメンの死後は、高齢の部下が王位を継承、
王朝の血統は途絶えていく。
エジプト学で知られる早稲田大客員教授の吉村作治氏は、
「王朝が政変でなく、生物学的な『自己崩壊』でも
衰退することが分かった」

ツタンカーメン自身、異母姉とされるアンケセナーメンと結婚。
王墓からは、馬車を操る勇猛な王の姿が描かれた木箱も見つかった。
「英雄ではなく、病に苦しんでいた少年だった」
(国際研究グループの遺伝学者)実像が浮かぶ。

吉村氏が、「アクエンアテンが引き起こした宗教改革は、
ツタンカーメンを暗殺しなければならないほど
過激でなかった可能性がある」と分析、
古代のパワーゲームに対する見方も変わりつつある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/30/122264/

「PC医科大学の設立を」 日本プライマリ・ケア連合学会・学術大会 前沢理事長

(2010年6月30日 Japan Medicine(じほう))

4月に発足した日本プライマリ・ケア連合学会は、
初の学術大会を東京国際フォーラムで開いた。

前沢政次・学会理事長(北海道大名誉教授)は、
家庭医の育成に関する長期的な課題として、
<1>プライマリ・ケア医科大学の設立、
<2>家庭医・総合医に対する新しい保険制度の試用-を提唱。

プライマリ・ケア医科大学の設立について、
前沢理事長は、「既存の大学による定員増や地域枠設置で
良い芽が出てきているが、みんな(医師育成に)悪戦苦闘。
若い人たちが、プライマリ・ケアの充実のため
頑張ろうとしているので、この力を結集して、大学をつくれるよう、
文部科学省や厚生労働省に訴えていってはどうか」

新しい保険制度の試用について、学会が現在模索している
専門医・認定医制度を念頭に、
「新しい家庭医、総合医、病院総合医に限って、
新しい保険制度を試してみてはどうか。
(この発言が)日本医師会からおしかりを受けるのは
重々承知しているが、新しく何かを変えていかなくてはならない」

この提唱の前、前沢理事長は現在の医療保険制度に
懐疑的な見方を示し、「医療保険の出来高払いで
日本は進んできたが、本当にこのままでいいのか。
医療費抑制策で診療報酬を縛ろうとすると、
(医療関係者は)あの手この手で抜け道を探る。
医療費を抑制しようとすると、かえって医療費が上がってしまう、
というパラドックスが成り立っているのかも

前沢理事長は、「(地域医療の担い手を育てる)自治医科大学では、
専門医が中心になって学生を教えている。
プライマリ・ケアを実際に手掛けている人が、中心になって教える
大学があってもいいのでは」、
医師養成機関を新たに設けることに肯定的。

初の学術大会開催について、
「3つの学会がまとまるのは大変だという思いがあったが、
学術大会には学生や研修医など若い人の参加が目立ち、
上の世代に良い刺激になったのでは。
若い人たちに世代交代していく中、地域医療を支えるモデルも
変えていきたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/30/122275/

子どもと図書館(3)「エキナカ」交流拠点に

(読売 6月25日)

ホームに降り立ち駅舎の看板を眺めると、駅名に並んで
「村立図書館」の文字が目に飛び込んできた。
富山県舟橋村の富山地方鉄道・越中舟橋駅。
改札を抜けると、開放的な図書館の玄関が迎え、
中では親子が至るところで絵本を広げていた。

1998年、オープンした駅一体型の「エキナカ図書館」
鉄筋コンクリート3階建て、延べ床面積約1500平方メートル、
蔵書数は約6万4000冊。
面積3・47平方キロ・メートルと、全国で最も小さい自治体の
シンボルになっている。

駅に加え、広大な駐車場を備える利便性から、
人口3022人の村に、利用登録者は約1万5000人。
通学途中の中高生など、村民以外の利用が多いためで、
昨年度の貸し出し冊数は約12万6000冊、
この規模の図書館としては突出して多い。

1階が子ども向け、2階が一般向けのフロア。
子ども向けフロアには、子どもの絵本や漫画、DVDなど、
母親向けに料理や家事などの実用書も並べてある。
ボランティアの手も借り、子ども向け読み聞かせ会も
週1回開かれている。
「子どもが自由に本を楽しめる雰囲気を作りたかった」、
設立準備から携わる同図書館司書係長の高野良子さん(56)。

7歳、3歳の娘2人と来ていた富山市の主婦稲垣久美さん(36)は、
「本が子どもの目の高さにあり、手に取りやすい。
多少騒いでも、気にならないところがいい」

計画当時、村職員だった金森勝雄村長(66)は、
「日常生活の中の文化的シンボルが欲しかった。
児童保育にも役立つと考えた」
予算10億円の村で、総工費6億円の図書館を建設することに、
当初は村民の反発もあった。

今では、住宅情報誌に「図書館の街」として取り上げられる。
村の人口は、この10年間で約1・5倍増。
高野さんは、「図書館が村内外の人の交流拠点になっており、
村の活性化に一役買っている」と自信を深める。

読み聞かせ会では、村職員も読み手となる。
5月、自ら読み手となった金森村長は、
「村全体で子どもを育てたいという精神がある。
職員が子どもや地域にとけこむのに一番いい場所」

同様の「エキナカ図書館」は、隣の立山町にも来年度、
開館する予定。
小さな村のユニークな取り組みは、子どもと社会とをつなぐ
「心の交差点」として評価が高まっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100625-OYT8T00255.htm

2010年7月7日水曜日

広域観光に手応え きらめき大学 3学部連携で気仙探訪

(東海新報 7月2日)

ケセンきらめき大学(田村満学長)は、3学部連携の
「気仙見どころ探訪」を実施。
陸前高田市矢作町から住田町の種山に抜けるコースで、
広域観光の設定に手応えを感じていた。

官民問わない気仙3市町有志で組織する同大学。
観光と食文化、地元学の3学部協力による初の催しとなった
探訪には、山口康文副学長はじめ各学部長と部員ら7人が参加。
大学事務局のある東海新報社前から2台の車に分乗、
旧高田町役場に立ち寄った。

本丸公園入り口にある建物は、昭和25年の建設。
廃屋で解体の運命にあったが、レトロな景観を惜しんで
観光学部の冨山勝敏副学部長が取得して活用を図る。

冨山副学部長から、今後の活用計画などを聞いた一行は
この後、矢作町内の仙婆岩、大滝・小滝、白糸の滝、閑薫院、
「岩手の名水」清水の湧口、ホロタイの里を順次見学。
原台山腹を抜けて、住田町世田米に入り、
種山高原まで足を延ばした。

現地では、観光学部の新沼岳志学部長が案内役を務め、
仙婆岩では意地悪な母親の伝説を紹介。
「跡継ぎを決めるため、自分の子は真綿で大切にくるみ、
継子は茅でくるんで投げ落としたが、助かるはずの実子は死んで
継子は助かったことから、母親はその後改心したという話と、
ショックで自分も岩の上から身を投げたという二つの話が伝わる」

大滝・小滝や白糸の滝では、木々の緑の中の風情を堪能。
閑薫院では、元和4年(1618)に悪疫退散を祈願、
21日間の断食後に入寂した閑薫院宥健法印の足跡を偲び、
六角堂の扇垂木など気仙匠の技も見学。

種山の遊林ランドでは、現前に広がる高原を眺めながら
名物のジンギスカン料理を味わい、特に地元特産ウインナーには
参加者全員が「おいしい」を連発。

今回の探訪は、観光学部が進める
気仙の周遊コース設定事業の一環。
食文化学部が地産の「食」で、地元学部が歴史や伝承で
肉付けしようと、隠れた見どころをチェック。

探訪の感想では、「せっかく美しい景観や面白い伝説があるのに、
案内板や説明が不足」、
「矢作から種山に抜けるだけで1日コース。
ガイドが付けば、気仙観光は2日でも3日でも滞在できる奥行きがある」、
「食事や土産品には、もっと地産地消にこだわりたい」などと総括。
今後もコースを変えながら、広域観光のあり方を探る。

http://www.tohkaishimpo.com/

老年医学シンポ 日慢協・武久会長 医学教育における老年医学の重要性を強調

(2010年6月30日 Japan Medicine(じほう))

神戸市で開かれた第52回日本老年医学会学術集会で、
「高齢者医療の行方と老年医学会の役割」をテーマに、
シンポジウムが開かれた。

日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、
高齢者の患者が急性期病院で臓器別専門医の治療を受けた後、
低栄養や脱水などの身体環境を悪化させているケースが。
医学教育の中で、高齢者の特性に配慮する老年医学への
理解をさらに徹底するように要望。

武久会長は、「療養病床でも重症患者を受け入れている
ケースがあり、ここ3年の間に医療区分1が減り、
より重症な医療区分2、3が確実に増えている」

急性期病院のすべての診療科で、治療を終えた患者を
受け入れる慢性期病院は、「結局、すべての科目を
知らなければならない」との見方も示し、
慢性期病院全体がレベルアップを図る必要性を強調。

日慢協で慢性期医療認定講座をつくり、慢性期医療のノウハウに
基づくサービス提供に向けて、研鑽を積んでいることをアピール。

急性期医療の問題点について、特に多剤投与が依然多いことを
あらためて指摘。
18種類の薬剤が投与されていた実例を紹介、
20種類以上のケースもあると問題視。

日慢協がモデル事業として、3次救急病院で治療する
必要性が低い軽症患者らを、慢性期病院が受け入れる
緊急連携ネットワークの構築に取り組んでいることも紹介。

大阪におけるモデル事業では、3次救急病院の在院日数が
減少する一方、新規入院患者が増えたというデータも。

厚生労働省が現在行っている医療施設と介護施設の
横断調査の結果に注目する考えも強調、
「結果次第では、高齢者を支える医療・介護の在り方が
大胆に変わる可能性がある」

調査対象の施設は、7月7日までに回答することが求められ、
武久会長は「この結果が出るのは8月末」と見通し。

シンポジウムでは、日本医師会の三上裕司常任理事が、
「生活を支える医療を目指して」と題した日医介護保険委員会の
答申内容を解説。
日医は、「在宅医療支援のための医師研修会」を開催する際、
テキスト作成で日本老年医学会などの協力を得たことも紹介。

全国老人保健施設協会の川合秀治会長は、
自公政権時代の介護職員処遇改善交付金による
介護従事者の処遇改善策について、職種による取り扱いの違いを
施設内で生じさせたとあらためて批判。
老健施設が、一定の裁量権を確保できる施策を求めた。

全国在宅療養支援診療所連絡会の太田秀樹事務局長は、
医療サービスの在り方は、治療重視の疾病モデルから
生活重視の生活モデルに移るパラダイムシフトが起こっている。
在宅医療の重要性が増していることに理解を求めた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/30/122279/

高脂血症の人、脳卒中で死亡率半分 東海大、4万8000人分析

(2010年6月29日 毎日新聞社)

コレステロール値が高く、「高脂血症」と診断された人は、
高脂血症ではない人に比べ、脳卒中で入院した際の死亡率が
約半分と低かったとの分析結果を、
大櫛陽一・東海大医学部教授(医療統計学)らが28日発表。

日本脳卒中学会の機関誌に論文が掲載。
社団法人「日本脳卒中協会」のデータを利用。
98~07年までに、脳卒中で入院した患者約4万8000人について、
高脂血症の有無と入院中の死亡率を分析。

脳卒中の一種の脳梗塞では、高脂血症のない約9900人の
約5・5%が死亡した一方、入院時に高脂血症と診断されていた
約2300人の死亡率は約2・4%。

脳内出血では、高脂血症のない約2800人の死亡率13・4%、
高脂血症の約440人は6・3%。
クモ膜下出血では、高脂血症のない約1300人の死亡率は約17・3%、
高脂血症の約110人は6・3%と約3分の1。

日本動脈硬化学会の高脂血症の診断基準は、
「LDLコレステロールが、血液1dL中140mg以上」など。
大櫛教授は、「コレステロールは血管の材料になるので、
高い方が血管の状態がよかったのだろう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/29/122208/

子どもと図書館(2)司書体験で楽しさ学ぶ

(読売 6月24日)

「好きな歴史上の人物について調べてみよう」
栃木県小山市の同市立中央図書館。
会議室に集まった児童20人に、講師の男性司書が指示。

今年度から同市で始まった
「元気アップ子ども司書養成セミナー」の一コマ。

対象は、市内の5、6年生。
本の分類やパソコンによる検索などを覚えるほか、
絵本の読み聞かせ、窓口での貸し出し・返却なども実習。
5~10月の10回講座のうち、8講座以上に出席、
読んでほしい本の紹介文や講座の感想文など課題を提出すれば、
子ども司書に認定される。

菊地きよ子館長(61)は、「読書活動のリーダーに育て、
あまり読まない子に、読書の楽しさを伝えてもらうのが狙い」

3回目となるこの日のテーマは、「上手な本の使い方」
数人ずつのグループに分かれた児童たちは、
好きな歴史上の人物について、日本十進分類法(NDC)で、
どの分類に当たるかを調べた。

次に、その人物の名前を検索端末に打ち込んで蔵書をチェック。
分類番号に照らしながら本棚で本を探し、見つけた本で、
その人物の生年月日や没年を調べてワークシートに記入、
最後にグループの代表者がみんなの前で発表。

「資料を探すイロハを身につけるのが目標。
これができれば、調べ学習や大学に入ってからの
卒業論文もこわくないよ」、
講師を務めた同館司書の渡会充訓さん(40)。

大好きな坂本龍馬について調べた5年の大西里奈さん(10)は、
「本の探し方のいい勉強になりました。
調べ学習の宿題にもいかせそうです」と笑顔。

子ども司書の養成は、全国からの寄付で蔵書を集めた
福島県矢祭町の「矢祭もったいない図書館」が先駆け、
小山市はそれに続いた形。

背景には、本を読む子とそうでない子が二極化している現状。
2009年度の全国学力テストに合わせて実施された
生活習慣調査によると、1日の読書時間が「30分以上」の
児童は35%。
「10分未満」は39%、そのうち「ゼロ」は22%。

子どもから子どもへ、読書の喜びを伝えていく。
読書離れに歯止めがかかった時、学力向上の基礎が固まる。

◆日本十進分類法(NDC)

あらゆる知識を0~9の10分野に分け、各分野を10の区分に
細分化して分類する仕組み。
例えば「211」は、「2歴史」、「1日本」、「1北海道」、
北海道の歴史を表す。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100624-OYT8T00189.htm

2010年7月6日火曜日

名人戦のもてなし感謝 遠野市に将棋三段免状

(岩手日報 6月29日)

日本将棋連盟(米長邦雄会長)は、4月の名人戦開催で
将棋の普及に貢献したとして、遠野市に三段の免状を贈った。

タイトル戦開催のお礼に、市町村へ免状を出すのは
極めてまれなケース。
県内初開催の大一番を支えた地域の熱意と、
きめ細かな運営が評価された。

免状は、本田敏秋市長名。
同連盟の島朗九段と臼井宏遠野支部長、小島常明同支部幹事長が
市役所を訪問、島九段が米長会長、羽生善治名人、
渡辺明竜王自筆の署名が入った免状を本田市長に手渡した。

同市では4月20、21の両日、同市新町のあえりあ遠野で、
第68期名人戦第2局が行われ、羽生名人(39)が挑戦者の
三浦弘行八段(36)を下した。
市民らでつくる実行委が、歓迎行事などを企画。
両棋士を、郷土芸能しし踊りで出迎えるなど、遠野ならではの運営で
棋界最高峰の戦いを盛り上げた。

羽生名人は、4連勝で防衛に成功。
島九段は、「遠野の素晴らしい環境で連勝できた。
2局目が名人戦のキーだった。心に伝わるもてなしを受けた」と、
羽生名人の伝言を紹介、本田市長は、
「開催地に選ばれるだけでも大変な栄誉で、免状は市民の財産。
気持ちよく対局していただき、本当に良かった」と喜んだ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100629_6

脳卒中リハビリにWii 豪、過疎地治療に期待

(2010年6月29日 共同通信社)

オーストラリア政府は、任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」を活用し、
脳卒中患者のリハビリに取り組む計画を明らかに。

広大な国土のオーストラリアで、特に過疎地でのリハビリに
役立つことが期待。

政府が構築中の光ファイバーによる全土高速通信網と
連動させることで、都市部の療法士がWiiを使用している
遠隔地の患者の様子を見ながら指示を出すことができ、
治療効果が期待できる。

高速通信網は、全国の企業や家庭の9割を結び、
最大毎秒100メガビットのインターネット接続サービスを提供、
来月から一部の州で運用が始まる。

Wiiを使ったリハビリは、通信網の拡大を待ち、
来年早期に南東部ニューサウスウェールズ州の患者50人を
対象に、試験運用を行う予定。

患者が特別なセンサーを身体に装着し、Wiiのスポーツゲームで
手足を動かすと、その映像や運動機能の数値などが
療法士の元へ送られる。

同国の神経科学研究所は、Wii使用により
「たった2週間で、手足の動きが大きく改善することが確認できた」

米心臓協会も、Wiiを活用して米国人の健康増進の取り組みを
進める計画を明らかにしている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/29/122184/

がん転移の仕組み解明 京大大学院がマウス実験 大腸から肝臓、抑制薬も

(2010年6月29日 毎日新聞社)

京都大大学院の武藤誠教授(遺伝薬理学)らのグループが、
がんの中でも数が多い大腸から肝臓への転移の仕組みを、
マウス実験で解明、転移を防ぐ薬を見つけた。
米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載。

大腸から肝臓へは、多くの血液が流れ込むため、
がんが転移するケースが多い。

グループは、大腸がんを転移させたマウスの肝臓を観察。
がん細胞が分泌する「ケモカイン」というたんぱく質が、
周辺の組織を破壊する酵素を出す免疫系細胞の一種
「未分化骨髄球」を引き寄せ、転移を促していることを突き止めた。

骨髄球が、ケモカインと結合する受容体を持たない
遺伝子改変マウスでは、転移が抑制されたため、
グループは多発性硬化症の治療を目指して開発された
受容体阻害薬をがんが転移したマウスに投与。
その結果、転移が抑えられ、約2倍長生きできることを確認。

武藤教授は、「今回の薬は、人間に副作用が少なく、
新たな治療法の開発につながる可能性がある」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/29/122224/

子どもと図書館(1)「島まるごと」本好きに

(読売 6月23日)

日本海に浮かぶ隠岐諸島・中ノ島にある島根県海士町。
6月上旬の日曜日、島中心部にある海士中学校の図書室を訪れた。

この日は一般開放の日、室内は親子連れでにぎわっている。
「読書って楽しいね」
近くの小学4年村尾美海さん(9)が、ライオンキングの絵本を手に、
顔をほころばせていた。

海士中を出て、近くにある港のターミナルに向かう。
待合室に置かれた本棚の前で、本とにらめっこする女の子の姿。

人口約2400人の小さな町で、本好きの子どもたちが増えている。
「かつては、子どもにとって読書の習慣を身につけるのが
難しい環境でした」
町教育委員会の司書、磯谷奈緒子さん(34)。

公立図書館はゼロ。
書店は1店のみ。
1島1町の離島だから、隣町の図書館に足を運ぶわけにもいかない。
町内に二つある小学校の図書室は古い本ばかり。
公民館に約1500冊があったが、こちらは大人向けの本ばかり。

風向きが変わったのは、町が2007年秋、
「島まるごと図書館構想」を始めてから。
港のターミナルや福祉施設など人の集まる所を、
図書館の分館に見立てて整備する構想。
気軽に本を手に取ってもらおうと、どの分館にも小さな本棚を置いた。

一方で、学校図書室を整備した。
小中3校で年間計50万円だった図書購入費を、180万円に増額。
古い本を思い切って捨て、子どもたちが好きそうな新しい本を購入。
じゅうたんを敷くなど、心地よい空間を作り、
1人もいなかった司書を2人雇った。
町のホームページに蔵書のリストを載せ、要望があると
分館まで届けるようにした。

その結果、小学生の本の貸し出し冊数が飛躍的に伸びた。
昨年度は6100冊、07年度(760冊)と比べると8倍。
島の児童は約100人だから、1人が年60冊近く借りたことに。

今年10月、島に待望の公立図書館が完成する。
ゆくゆくはここを拠点に、インターネットですべての本を一元管理し、
どの分館でも好きな本を借りられるようにする予定。
読書過疎地だった島の子どもたちに、
「本のある暮らし」が根付き始めている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100623-OYT8T00270.htm

2010年7月5日月曜日

つばき油を産地化 大船渡でモデル農地近く整備

(岩手日報 6月29日)

ヤブツバキ栽培北限の地である大船渡市で、
つばき油の産地化を目指したプロジェクトが本格始動。

気仙地域の関係機関が研究会を立ち上げ、
近く市内にモデル農地を整備。
シャンプーの成分として使われるなど近年、つばき油の需要は
拡大しているが、国内の産地は少なく、安定供給が課題。
産地化できれば、農業振興や新たな産業創出も期待。

同市や県、気仙地方の関係団体は、
椿油産地化研究会(会長・佐藤英夫大船渡市農林課長)を設立。

同研究会が、大船渡東高の農場未利用地にモデル農地を設置、
今秋に苗木を植える計画。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100629_3

子供の死、アフリカに集中 栄養不足やエイズまん延

(2010年6月28日 共同通信社)

主要国(G8)首脳会議(ムスコカ・サミット)で、
議長国カナダが重要課題に掲げる「母子保健」の分野で、
アフリカは深刻な状況に。

国連児童基金(ユニセフ)によると、5歳未満で死亡する
乳幼児の半数は、サハラ砂漠以南のアフリカに集中。
栄養不足やエイズ、マラリアのまん延、医療従事者の不足などが背景、
貧困が妊婦や子供の命を奪っている。

「ここでは人命があまりにも軽い」
タンザニア西部の病院で、助産師として活動する
清水範子さん(33)の実感。

ある日、赤ちゃんが呼吸不全に陥った。
自動的に酸素を送る装置はなく、手動の機器を用いた。
手動では限界があり、赤ちゃんは死んでしまった。
「死をみとりにアフリカに来たのか」と自問自答する日々が続く。

ユニセフによると、5歳未満で死亡する乳幼児は、
千人当たりで日本では4人(2008年)、
サハラ砂漠以南のアフリカでは144人。
アフリカ南部のアンゴラでは220人、
ほぼ4人に1人が5歳の誕生日を迎えることができない。

サハラ砂漠以南のアフリカ全体で5歳未満の死亡率は、
1990~08年までの18年間で、184人から144人に減少。
南アジアや中南米・カリブ海諸国など他地域では、
これを上回るペースで死亡率が減少、
アフリカの立ち遅れが際立っている。

アフリカでは、農村の貧しい住民には車などの交通手段がなく、
病気になっても医療機関にたどり着けないことが多い。
医療施設になんとか行き着いても、
充実した医療はなかなか期待できない。

00年に採択、15年までに貧困人口半減など8分野での
目標達成を目指す「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」
10年版年次報告書は、アフリカなどでの改善が大幅に遅れ、
このままでは「多くの目標が達成できない」と指摘。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/28/122141/

選手のリハビリに温泉療法…全国初

(2010年6月28日 読売新聞)

那須塩原市塩原の県医師会塩原温泉病院(森山俊男院長)は、
アマチュアスポーツ選手らのリハビリテーションに本格的に取り組む。

温泉プールを利用したリハビリと治療で、
脳卒中や骨折などの患者の日常生活への早期復帰に成果を上げ、
スポーツ選手らにも応用。

温泉とトレーニング施設を併用、県内にいる医師会公認の
約200人の健康スポーツドクターとも連携。
温泉を利用したスポーツリハビリ施設は全国初。

同病院は2007年、豊富な温泉を利用した総合リハビリセンター
としてオープン。
脳卒中など脳血管疾患患者や、骨折など患者を中心に受け入れ。

福島稔県医師会常任理事(整形外科医)によると、
小中高校生のクラブ活動や一般市民のスポーツによるけが、
故障者が最近多くなっている。

同病院では、脳血管疾患や骨折などの患者に
歩行訓練器具などによるリハビリのほか、
温泉療法室にある縦15m、横5mの温泉プールとジェットバスを
使ったリハビリは、他の方法より体力の回復が早いことなどの利点。

スポーツリハビリに向けすでに、スポーツ整形外科と
アスレチックリハビリに定評がある東芝病院に、
理学療法士を08年度から毎年1人派遣、
半年間の研修を受けさせた後、サッカーJ2栃木SCで
トレーナーと一緒に選手のケアを行っている。

アメリカ製新型のトレーニングマシン(5種計約1000万円)も導入。
現在41人いる理学療法士を、今年度末までに50人に増員。

福島常任理事は、「学童から大学生、一般市民のおもに
アマチュアスポーツのリハビリに取り組む。
塩原温泉の旅館等に宿泊しながら、リハビリに通ってもらう
などで地域にも貢献していきたい
将来は、日本体育協会公認のスポーツドクター、トレーナーも配置、
体育館、グラウンドの併設した総合スポーツリハビリ施設に
していく方向で検討。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/28/122161/

立花隆さんインタビュー全文(3)「がん大国」は悲しむべきことではない

(2010年6月26日 読売新聞)

--抗がん剤の効果は限られている、という話。
「有効な治療はない」と言われると、多くの人が希望を失う。
効かない治療でも続けてしまう面が。
治療を受けることだけが希望なのか?

立花 それは、患者個人の世界観によってみんな違う。
人間が有限な命しか持たない存在であるということを
踏まえる必要がある。

肉体的にがんに勝てなかったとしても、
がんに敗北しなかった人はたくさんいる。
ニュートリノ観測でノーベル賞に最も近いと言われた物理学者で、
一昨年、大腸がんで亡くなった戸塚洋二さんは、
見事な闘病記を残した。
「私にとって早い死といっても、健常者と比べて10年から20年の
違いではないか。みなと一緒だ、恐れることはない」と。

--代替療法を使う人も多い。効果はあるか?

立花 効果がある療法はない。
がんは多種多様なもの、きわめてまれに、がんが消えることはある。
代替医療のおかげでなく、人間の持っている力で、
そういうことはある。
がんが治るというような療法はない。
信じる者は救われるで、宗教みたいなもの。

--立花さんは、がんになって生活や仕事の面で変わったことは?

立花 たいして変わっていない。
何かが、がんを境に変わったということはない。

--大腸がんになったキャスターの鳥越俊太郎さんが、
「人生の残り時間を考えるようになった」と言っていた。

立花 それはあるが、必ずしもがんのせいではない。
自分の年齢がもう古希だから。
いろいろな意味で、体も頭も壊れつつあり、
坂道の下り坂にあると分かる。
がんは、その一つの表れとは言える。

--立花さんは、膀胱温存手術を受けられたが、
もう少し進行していたら、全摘になるところだった。

立花 早期ではなく、けっこう危ないところまで行っていたと、
後から分かった。
手術を受ける時、麻酔が効いていたから、つらくも何ともない。
麻酔が切れ、動けない状態はつらいが、
がんそのもののつらさはない。
歯医者に行った時のことがよほどつらい。

--がんの再発の心配は?

立花 再発の仕方が問題。
3か月に1回、内視鏡で精査。
見つかれば、そのたびに内視鏡で治療すればいい。
実際に、何度も繰り返し治療した人もいるのでは。
この年になったら、どこにがんができてもおかしくない。
そのことを心配しても、どうしようもない。

--がんの再発は、一般に怖いイメージが。

立花 それは全然ない。
再発の仕方によって千差万別。
がんの全容がつかめていない。
がんが遺伝子レベルで解明され、進行する過程の大きなマップが
分かれば、自分は今このあたりにいて、今後こうなると分かるが、
それがまだよく分からないのが今の状況。
がんが増えたことが問題になり、日本がこれだけの
「がん大国」になったのは、世界一の長寿国になったから。

--がん大国になったことは、悲しむべきことではないと思うか?

立花 そう思う。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/28/122158/

2010年7月4日日曜日

海水浴、鎌倉で発祥か…明治の軍医が効能紹介

(2010年6月27日 読売新聞)

明治時代の医学者が、1874年(明治7年)に
海水浴の効能や方法、欧州での現況などを寄稿した記事を、
鎌倉市職員鈴木伸治さん(59)が発見。

鎌倉市の七里ヶ浜海岸で、実験的に海水浴した上で書かれ、
鈴木さんは、「鎌倉こそ海水浴発祥の地では」。

記事を寄稿したのは、適塾で知られる緒方洪庵の次男、
陸軍軍医監を務めた緒方惟準(これよし、1843~1909年)他1人。
寄稿は、明治期の新聞「朝野新聞」の前身「公文通誌」の
1874年8月9日付に掲載、東大がマイクロフィルムで保存。

湘南の郷土史を趣味で研究している鈴木さんは数年前、
読売新聞のCD-ROMで検索、惟準が大磯の海水浴場開設の
発起人にあてた手紙を引用した1886年の記事に気づいた。

手紙に、「明治7年に相州七里ヶ浜で海水浴を行い、
西洋海水浴法と効能を朝野新聞に寄稿。
以来、海水浴場が各地に設けられるようになった」
とあったのをヒントに、寄稿に行き着いた。

寄稿は「海水浴」と題し、「海水だけでなく、波動や新鮮な空気、
遊泳などの運動によって効果を現す」、
慢性皮膚病、神経病など多くの疾患に効能がある。
「時期は夏7、8月が良く、冬は健康に害がある」などと書いている。

鈴木さんが注目したのは、「海水浴の効能を知る人はとても少ない。
私たちは論文を書くことはもちろん、これを手始めに
海水浴を広めることにした。
(中略)海水浴場を設け、病気を治し、健康を守ることこそ
私たちの願いだ」と述べている点。

明治10年代、海水浴場が設けられた大磯町や倉敷市などが
海水浴発祥の地とされる場合が多いが、
鈴木さんは、「全国に海水浴が広がった発端という
惟準の後の記述から見ても、鎌倉・七里ヶ浜が
発祥地の一つに名乗りを上げる資格はある」

海水浴の歴史に詳しい上田卓爾・星稜女子短大教授(観光史)
によると、1871年(明治4年)に横浜市金沢区で、
18歳の女性が医師を伴い、海水浴をしたことが
外国人の著書に紹介。

上田教授は、「発祥の地の考え方はいろいろあるが、
(寄稿記事は)海水浴の方法に関する最古の記述といっていい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/28/122162/

立花隆さんインタビュー全文(1)死に方を選べるなら、がんがいい

(2010年6月24日 読売新聞)

評論家・ジャーナリストの立花隆さんは2007年、
膀胱がんで手術を受けた。
がんとどう向き合うかを聞いた。

◆立花隆(たちばな・たかし)

1940年、長崎県生まれ。
東大仏文科卒。東大、立教大特任教授。
著書「田中角栄研究」、「脳死」など。

◆立花さんのがん体験

2007年、取材で超音波検査を受け、
膀胱にポリープ状の病変が見つかった。
翌月、血尿が出て、内視鏡検査の結果、がんと分かり、
膀胱を温存する手術を受けた。
転移はなく、定期検査を続けている。
 
--がんは、日本人の関心が最も高い病気。
立花さんも、がんに関する仕事をされている。

立花 僕は心臓病でカテーテル治療を受けていて、
リスクから言うと、心臓のほうが高い。
それに比べ、がんはどうってことない。
がんに関心があるのは、面白い病気だから。

がんは複雑で、一般論が成り立たない病気であることが、
研究が進むほど分かってきた。
「がんとはこういうもの」という人の言うことが必ずしも正しくない。
「がんは治る」、「がんは治らない」、どちらも正しいといえる。
がんの特徴は、転移と浸潤にあり、
細かい過程はよくわかっていない。

リンパ性の転移と血液の転移があり、他の臓器への遠隔転移は
血液で転移する。
最新の研究では、血液の中では、これまで考えられてきた100倍、
1000倍のがん細胞が流れている。
それを同定することもできる。
がん患者の血液の中を、がん細胞がどんどん流れ、
漂着した先でコロニー(植民地)をつくろうとするが、なかなか育たない。
日常的に、がん患者の体の中で起きている。
その認識がないと、がんに対するものの考え方を間違える。

--がんは怖い、というイメージが強い。

立花 がんの本質を考えると、生きていること自体が
がんを育てている。
人間は、がんから逃れることができない。

医師の中にも、「死に方を自分で選べるとすると、がんがいい」
という人がけっこういる。
バタンと死ぬわけではなく、ゆっくり進むから。
自分も、自分の周囲の人間も、その人が死に向かっていくのを
受容するゆとりのある病気。

日本のがん対策の基本的考え方が変わって、
緩和ケアが大事だという方向に。
日本は、痛みのケアを十分にやらなかった。
痛みをとるモルヒネの使用量が、日本では非常に少ない。
きちっとやってもらえば、がんの末期はそれほど苦しまないで済む。
モルヒネは麻薬で、日本では敵対的な感情があり、
緩和ケアに至ることが人生の敗北のように考える人が多い。
緩和ケアを受けず、苦しい思いをする人がいる。

一因は、がんの進行の流れのどこにあるか、
本人がよく説明を受けていないこと。
がんであることはもちろん、死に至るがんの流れの中で、
今どこにあるかということを医師は必ずしも言わないし、
家族にある程度言っても、本人に必ずしも伝わっていない。
それが大きな問題。

--抗がん剤などによる治療が進歩している。

立花 抗がん剤にもいろいろある。
もともと毒ガスから始まっている薬品で、細胞に対する猛毒。
ある種の抗がん剤について、高名な遺伝子の研究者が、
「人間の生命活動の一番基本的なところを破壊する。
そんな恐ろしいものは僕なら使わない」

大腸がんで亡くなった物理学者、戸塚洋二さんは、
ブログで闘病記を残し、どの抗がん剤を使い、どんな効果や
副作用があったか克明に記し、体がぼろぼろになっていく。
僕は、ああいう薬は使いたくない。

最近登場してきた分子標的薬とは性質が違うが、
分子標的薬も、そうした抗がん剤とセットで使っている。

--分子標的薬はどうか?

立花 分子標的薬はピンポイントで効くが、
どこを標的にするかで相当違う。
がんが増殖する経路の一つを薬でつぶしても、迂回路が出来る。
その繰り返し。
ある時は確かに効くが、迂回路ができるのに2か月。
2か月たつと、効かなくなっていく。
治療を始めると、2か月ごとに新しい薬を使うしかない。
いくつも薬があるわけではないので、ある程度やると、
「もうありません」。
あとは、一般的な細胞毒のある薬を投入するしかない。

新しい抗がん剤が登場し、治療が進歩しているという情報が
広がりすぎている。
たいていの薬は限界があり、がんの薬の成功は一時的。
それに意味があると考えるかどうかは、個人の価値観。
抗がん剤が寿命を延ばす効果は、2か月程度のことが多いが、
そのために副作用でQOL(生活の質)を下げる覚悟があるか。

--今後、がんの画期的な新薬が出てくる期待は?

立花 近い将来、画期的な薬や治療法が出てくる可能性はない。
がんがどういうものか、よくわかっていないから。
がんの正体が何なのか、ゲノムで解析しなければ、
薬や治療法の見通しも開けない。

--作家の柳美里さんは、「がん患者は、画期的治療が出てくることに
望みをかけて治療を続けている」という趣旨のことを書いている。

立花 それは幻想。あり得ないと考えていい。
慶応大学の放射線科医の近藤誠さんは、
「抗がん剤では、がんは治らない」と言って論争になったが、
基本的にほとんど正しい。
がんの専門医との内輪話で、「近藤さんが言っていることは
正しいということですか」と聞くと、「そうですよ」。
医師たちは知っている。

「抗がん剤でがんが治りました」というのは、
極めて特殊な場合に少数あるのかもしれないが、
一般的に抗がん剤でバラ色の未来が開けている、ということはない。

抗がん剤の製薬企業から医師に多くの研究資金が渡って、
医学論文には、研究者が抗がん剤のメーカーとどういう
資金関係があるか明示しなければならない。
学会を開く費用にも、製薬会社の資金が使われている。
抗がん剤に、否定的なことを言う人は多数派にならない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/25/122094/

「介護で退職」26% 要介護家族アンケートで

(2010年6月23日 共同通信社)

介護者支援の全国ネットワーク
「ケアラー(家族など無償の介護者)連盟」が実施した
家族介護者らへのアンケートで、
26%が「介護のため仕事を辞めた」と答えたことが分かった。

調査は今年4~6月、障害者や認知症などの家族らを介護する
介護者を対象に実施、250人が回答。

仕事への影響を複数回答で尋ねたところ、
「勤務時間を減らした」人33%、「退職した」26%、
「転職した」11%、「休職した」6%。

介護をする以前に行っていた趣味やボランティアなどの
社会活動の機会が減った人は64%。

介護時間は、「半日程度」28%で最多。
「1時間未満」(20%)、「ほとんど終日」(17%)、「2~3時間」(16%)。

「ほとんど終日、要介護者のことを考えている」(41%)、
「孤立していると感じたことがある」(50%)、
「身体に不調がある」(52%)、
「こころの不調がある」(39%)-などの回答。

必要な支援として、「サービスや制度の充実」、
「行政や地域、職場の介護者問題への理解」、
「在宅介護者手当」など。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/23/121962/