2007年12月29日土曜日

<漢字林>稽 書経に始まる『稽古』 阿辻 哲次

(東京新聞 2007年12月26日)

一昔前のお稽古ごとといえば、書道やお茶・お花、ピアノ、料理などが
中心だったが、最近はずいぶんバラエティーにとんでいて、
知り合いの女性の中にはフラダンスやヨガ、
セクシーなベリーダンスにはまっている初老の女性も。
お稽古ごとも、時代とともに大きくさまがわりしつつある。

「稽古」ということばは、成立が非常に古く、
出典は儒学の経典、「四書五経」の一つに数えられる『書経』にある。
『書経』とは、古代中国のすぐれた帝王たちが重要な機会ごとに
発言したことばや行動を記録した書物で、
そこには聖人の教えが数多く記録されているとされるが、
この書物の出だしに、「曰若(えつじゃく)稽古」という四文字があって、
伝統的な解釈では、
「曰(ここ)に若(したが)いて古(いにし)えを稽(かんが)えるに」と訓読。
おそらく昔の物語を語る時の出だしの文句、
「今はむかし」に当たる表現だと考えられるが、
これがほかでもなく現在の日本語で使われる「稽古」の出典。
「稽」には、「考える」という意味があり、
だから「稽古」とは、古代の書物を読んで、
そこから聖人の教えなどを学びとることを意味することば。

しかし現実には、人はなにかの利益が手に入らなければ
なかなか「稽古」をしない。
現代の日本だけでなく、昔の中国でも同様。
神聖な教えを学ぶ儒学の世界でも、学問に向かう動機として
現実的な利益の追求があるのは珍しくなかった。
後漢の儒学者であった桓栄は、
皇太子の家庭教師に任命時、自分の学生たちを呼び集め、
皇帝から頂戴したたくさんの車や馬などを並べて、
「わしが陛下からいただいたさまざまなものは、
すべて『稽古』のおかげ。
だからお前たちもしっかり勉強するように」と訓示。
「稽古」とご褒美は、昔から不即不離の関係に。
お稽古ごととして学ぶ勉強も、それが長続きするかどうかは、
ひとえにゲットできるご褒美の大きさしだいなのかもしれない。

アレルギー反応を制御する重要分子「STIM1」を発見

(理化学研究所 12月3日)

鼻がむずむずして、くしゃみが止まらない。
体中がかゆくて、ついつい引っかいてしまう。
花粉症やアレルギー喘息、食物アレルギーなどと、
日本人の約3割もの人々が、この症状に悩まされ、
アレルギーはいまや国民的病気に

アレルギーには、のど、鼻、腸管等の粘液表面にいる肥満細胞が関与。
アレルギーを引き起こす原因物質の抗原が最初に体内に入り込むと、
この抗原に特異的に反応する抗体IgEが作られ、
肥満細胞のIgE受容体と結合した状態になります(感作)。
そして、再び抗原が侵入すると肥満細胞表面のIgEは抗原と結合し、
肥満細胞を活性化させて化学物質を大量に含んだ顆粒を放出したり、
炎症性サイトカインを生み出したりします。

これらの化学物質が、発疹、かゆみなどのアレルギー反応を引き起こします。
肥満細胞からの顆粒放出には、細胞質内のカルシウム濃度が関係すると
されていましたが、そのメカニスムは不明。

理研免疫・アレルギー科学総合研究センター分化制御研究グループは、
この顆粒放出には、細胞外から細胞質内にカルシウムを流入させる
働きをもつタンパク質「STIM1」が必須であることを明らかに。

実際、STIM1の発現を低下させたマウスでは、アレルギー反応が抑制。
STIM1が関与する新たなアレルギー発症の分子メカニズムが
発見されたことで、STIM1をターゲットとするこれまでにない
治療法が開発できると期待。

http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2007/071203/

最前線:購入者の反応楽しみ--セガ・宮崎浩幸執行役員

(毎日 12月3日)

家庭用ゲーム機市場に人気ソフトを提供し続けているセガ
ゲーム機の特性を引き出す開発力は、業界で高く評価。
毎日新聞などと新作ソフトを製作したセガの宮崎浩幸執行役員に、
市場の最新事情や戦略を聞いた。

--家庭用ゲーム機市場の現状は。

◆任天堂の「Wii(ウィー)」など据え置き型ゲーム機に、
かつてのソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の
「プレイステーション(PS)2」のような勢いがない。
一方、携帯型ゲーム機は任天堂の「ニンテンドーDS」が、
異例の早さで国内販売台数2000万台を突破。
DSは開発費が安いため、ソフト開発メーカーが参入しやすい。
結果的に手軽に遊べるソフトが多数そろい、ゲーム初心者を引き寄せた。
ソフト開発メーカーの主戦場は、既にDSに移った。

--任天堂をパートナーとして初めての共同製作を行いましたね。

◆任天堂の「マリオ」とセガの「ソニック」という両社を代表するキャラクターが
競演するスポーツゲーム「マリオ&ソニック AT 北京オリンピック」を発売。
WiiとDSの2機種に対応し、国内外から予想以上の反響がある。
面白い研究をしている研究機関やブランド力のある企業と組む機会は増えていく。

--毎日新聞と共同製作したDS用ソフト「毎日新聞 1000大ニュース」も
11月29日に発売されました。

◆毎日新聞の創刊から今年までの135年間に掲載されたニュースをクイズにした。
政治や事件、スポーツなどあらゆる分野の知識を問われる。
過去をさかのぼっていく「タイムスリップモード」や、
間違いを探す「添削クイズ」など、初心者が楽しめる仕掛けが満載。
9月に第1回試験が行われた「ニュース時事能力検定」に対応し、
模擬試験として使うこともできる。

--ゲームソフトはこれからどう変わっていくのでしょう。

◆かつて、一番面白いのは家庭用ゲーム機という時代があった。
その後、携帯電話やパソコンなどが登場し、状況は大きく変わった。
今は、ゲームが携帯電話などと時間を奪い合っている。
クリアまでに数十時間かかる大作より、
ちょっとした空き時間に遊べるソフトが人気を集めている。
この流れは加速していくだろう。

--ゲームソフト作りの魅力は何ですか。

◆購入者の反応を予想しながら作るのが楽しい。
ただ、過去に売れたソフトが今後も売れるとは限らない。
毎回ゼロからのスタートになるから大変だ。
だが、成功体験が続かないからこそ、
売上本数など結果が出た時はうれしい。
==============
■人物略歴

東大文学部卒。93年にセガ・エンタープライゼス(現セガ)入社。
海外営業部長、マーケティング統括局長などを経て、
05年から現職。福岡県出身。45歳。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20071203ddm008020135000c.html

新しい波/255 スポーツ立国/中 政界と急速に接近

(毎日 12月22日)

「五輪のときだけ『勝て勝て』と言われても、ふだんは満足に補助をしてもらえない。
スポーツ振興は国策でやってほしい」。
日本オリンピック委員会(JOC)選手強化本部の福田富昭本部長は、
現場の立場でスポーツの国策化を声高に訴えてきた一人。
今年度、文部科学省のスポーツ関係予算は186億1100万円
文化庁の1016億5500万円(今年度)と比べて、著しく少ない。
福田本部長は、「スポーツは国民の生活に浸透しているのに、この差は何か」。

来年1月末には、東京都北区に初の国営施設となる
ナショナルトレーニングセンターが開設
だが、施設利用料ばかりか、海外遠征など選手強化費も
3分の1を競技団体が負担。
財政基盤の弱い競技団体では、負担に耐えられず、
海外遠征などを返上する例も。
欧米などのスポーツ先進国では、国が全額負担するのが常識。
日本では、北京五輪を目前に控えても強化の現場は危うい。

戦後、日本のスポーツ強化は長く企業に支えられてきた。
しかし、90年代後半以降撤退が相次ぎ、次に切り札として期待されたのが
01年から販売が開始されたスポーツ振興くじ(toto)。
今年度はBIG(ビッグ)効果で、初年度の643億円に次ぐ
486億円(8日現在)に売り上げを伸ばしたが、
昨年度末時点で264億円ある累積赤字が重くのしかかる。
当面は、借金返済に傾斜せざるをえない。
そこで「国にお願いしたい」(福田本部長)との結論に。

福田本部長は、昨年春に国策論をうたったリポートを作成。
その理論を補強したのが、
16年東京オリンピック招致委の河野一郎事務総長(JOC理事)、
JOC情報・医科学専門委員会の勝田隆副委員長ら。
顔ぶれは、自民党の遠藤利明衆院議員の私的懇談会のメンバーと重なる。
その懇談会が8月にまとめた「スポーツ立国ニッポン」は、
自民党スポーツ立国調査会(麻生太郎会長)の議論のたたき台に。
スポーツ界は急速に政治と結びつき、
悲願の強化資金確保に向け歩みを進めている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20071222ddm035050088000c.html

2007年12月28日金曜日

<漢字林>孟 三遷の故事で知られ 阿辻 哲次

(東京新聞 2007年12月19日)

いまではほとんど使われないことばになったが、
正月のことをまた「孟春」ともいう。
この場合の「」は、「はじめ」という意味であり、
二月を「仲春」、三月を「季春」という(「季」は「すえ」の意)。
「孟春」とか「孟夏」に使われる「孟」という漢字を見て、
まず思いつくのは儒学の聖人とされる孟子。

書物としての『孟子』を読んだことがない人でも、
「孟母三遷」の故事は耳にしたことはあるだろう。

知人が引っ越しをして、住所の案内をくれた。
新居は某有名大学の近くなので、子供が勉強するのにいい環境であると
家内がよろこんでいる、と書かれているのを見て、
「孟母三遷」の現代版かと苦笑。
「教育ママ」ということばが使われるようになったのは、
いったいいつごろからなのだろう。
少なくとも私が高校生だった昭和四十年代前半には、
まだそんなことばはなかったような気がする
(私が知らないだけかもしれないが)。
教育ママの元祖は、孟子のお母さん。
孟子の一家は、はじめ墓地のそばに住んでいた。
墓地では頻繁に葬式がおこなわれるので、
孟子少年は葬式のまねばかりして遊んでいた。
それを困ったことだと考えた孟子のお母さんは、
次に市場のそばに引っ越した。
すると、孟子は商人のまねをして遊びはじめた。
商人のまねをしていったいどこが悪いのかと思うが、
孟子のお母さんにとっては、それはやはり困ったことだったらしい。
今度は学校のそばに転居した。

すると、孟子は「学校ごっこ」をしはじめたので、
孟子の母はたいへん喜んだという。
当時の学校では、国語や算数のような教科を教えていたわけではなく、
実際にはさまざまな儀式のやりかたを教えるところだったので、
孟子はお祭りに使う道具(らしきもの)を並べ、
見よう見まねでお祭りや宴会の時の作法をまねて遊んでいた。
孟子の母はそれで満足したようだが、
現代の教育ママはそんな状況に満足せず、
きっとまた別のところに引っ越しを考えたにちがいない。

新しい波/254 スポーツ立国/上 振興策「欧米並みに」

(毎日 12月15日)

政治が、スポーツ振興に踏み込んできた。
10月30日に、自民党のスポーツ立国調査会が発足
会長に就任した麻生太郎・前幹事長は、
「スポーツは、健全な人間の育成と国民に感動を与えるもので、
もはや関係者に任せておく時代ではない」と
国の責任でスポーツ振興に取り組む姿勢を明確にした。

調査会は、党政務調査会内にあり、国の政策にも大きな影響力を持つ。
ここにスポーツ振興が掲げられたのは、党内でも初めて。
スポーツ界出身議員だけでなく、最高顧問に日本体育協会会長でもある
森喜朗・元首相ら有力者が顔をそろえた。

導火線となったのは、前副文部科学相の遠藤利明衆院議員(自民)の
私的懇談会が8月に発表した、「『スポーツ立国』ニッポン」と題した報告書。
ラグビー選手だった遠藤氏は、昨年のトリノ五輪の厳しい結果を受け、
欧米並みに国を挙げてスポーツ振興に取り組む必要性を痛感。

06年末に東京オリンピック招致委の河野一郎事務総長
日本オリンピック委員会(JOC)情報・医科学専門委員会の勝田隆副委員長
選手強化の現場にいる人々を中心に懇談会を設置。

オーストラリアの現地視察などを経て作成された報告書では、
国が責任を持って取り組む課題として、
(1)スポーツ庁の設置など組織整備
(2)スポーツ振興法(1961年制定)の見直し
(3)財政基盤の確立
(4)国際競技力の向上のためのプログラム--など。

遠藤氏が報告書を手に理解を求めると、森氏、麻生氏が快諾し、
石原伸晃政調会長(当時)も調査会への格上げを了承。

事務局長に就任した遠藤氏は、
「予想以上に関心が高かった。マグマが噴出して一気に広がっていった感じ」。
スポーツ振興は、政治的な対立が生まれにくい。
前向きなイメージも好感された。

調査会は、報告書をたたき台に月2回のペースで、
スポーツ関係者からヒアリング。
09年度のスポーツ庁設置という明快な目標に向け、
来年6月に中間報告をまとめる。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20071215ddm035050086000c.html

21世紀COEプログラム:文科省「目的達成」 初年度事後評価、最低ランクなし

(毎日 11月29日)

世界的な研究・教育拠点の形成を目指した文部科学省の
21世紀COE(卓越した研究拠点)プログラム」で、
初年度(02年度)に採択された国公私立大50校113件について
初の事後評価結果を公表。

評価は4段階で、最低ランクの「目的は十分には達成されなかった」と
判断された拠点はなく、文科省は「COEの目的はおおむね達成された」。
評価は、同プログラム委員会
(委員長=江崎玲於奈・茨城県科学技術振興財団理事長)が実施。
計画全体の目的達成度のほか、論文数や学会での発表数などで審査。

第3ランクの「目的はある程度達成された」と評価された拠点は14件(12・4%)、
大半は「十分達成され、期待以上の成果があった」、
「おおむね達成され、期待どおりの成果があった」と評価。

04年に公表された中間評価で、計画の大幅縮小を求められた
九州大と法政大の拠点も最低ランクの評価は免れた。

5分類の分野別では、人文科学の5件(25・0%)が3番目の評価となり、
自然科学系などの0~14・2%よりも厳しい評価に。
初年度の113件には、5年間で総額714億6200万円が投入。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/11/29/20071129ddm012040068000c.html

特集:超高齢社会を生きる/シリーズ1 地域で認知症患者を支える

(毎日 12月2日)

世界一の長寿国であるわが国は、高齢者(65歳以上)が総人口の
21%以上を占める超高齢社会を迎えている。
現在、年間死亡者は100万人を超え、85歳になれば4人に1人、
120歳まで生きれば全員が罹患するといわれる認知症患者は160万人に。
2025年には、死亡者は160万人、認知症患者は300万人に。

介護保険制度はスタートしたが、こと認知症に関しては、
さらなる支援システムの構築が求められている。

新田國夫さんは1990年、国立市に「地域に根ざした医療」を
実践したいと開業。大学病院時代に消化器がんを専門、
末期がん患者の在宅医療を目指した。
しかし、認知症高齢者の家族からの往診依頼が多く、
認知症患者の在宅医療を行わなければならなかった。

住民の高齢化が、この傾向に拍車をかけた。
国立市の場合、要介護度2の認知症患者の84%、5でも50%が在宅、
どうしても家に引きこもりがちに。

新田さんは、積極的に外出する場を提供することが重要と、
宅老所やデイケア施設を開設したところ、たちまち交流の場となり、
利用者の療養意欲を高めることができた。
「寝たきりだった人の表情が、日に日に豊かになり、動作も活発になる。
認知症による行動障害も見られなくなった」。

現在では、新田さんは自ら“高齢者を診る総合診療医”と名乗り、
認知症を中心に在宅で過ごしている約50人の要介護者、要療養者の治療、
通院可能な認知症患者の電話での対応などに24時間体制。
「高齢者医療は、生活の中で診ることが大切。
在宅医療の成否は、基本的に生活を支える介護力にかかっている」。

この10年、認知症ケアの進展には目を見張る。
自然や地域とのふれあいが大切にされるようになった。
自分らしく暮らし続けることを支援するグループホームは、
介護保険のスタート時、全国で300に満たないが、現在は6000超。
新田クリニックが例にあげられるが、診療所を核に通所施設などが用意され、
患者、家族が交流する機会も増えている。
それを支えるための街づくりが、各地で進められつつある。

東京都は7月、認知症対策推進会議を発足。
東京都は、住民の流動化が激しく、高齢者の独居、
夫婦のみ世帯も急増し共助・自助の低下が著しい。
しかし、退職する団塊の世代を含めて人的資源には恵まれている。
地域社会に根ざしたNPOも多数ある。
商店街、交通機関、金融機関など日常生活を支える社会資源も身近に存在。

モデル地区として練馬区と多摩市を選定、
認知症になっても安心して暮らせる街のあり方を探る。
介護サービス事業者の地域支援へのかかわり方を探るモデル事業をスタート。

村田由佳・都高齢社会対策部在宅支援課長は、
「認知症を隠さなくてもすむ社会を目標に、地域の中で、
患者と家族を面で支えていく方法を考えたい」。

認知症・身体症状の双方の症状に応じ、
初期(軽度)の混乱期から終末期(みとり)まで、
QOL(生活の質)を維持する医療のあり方を検討。

新田さんは、「意思表示ができない認知症患者の身体の異常を
正しく診断することが、何よりも大切」。
例えば身体症状が、脱水症状や感染症によって引き起こされていることを
見落としてしまうと、回復の機会を逸するばかりか、
そのまま終末期に入ってしまう危険がある。

上川病院理事長の吉岡充さんは、
「高齢者のみとりには安らぎが求められるので、ユニット型医療施設が不可欠」。
ユニット型医療施設は個室が原則で、プライベート空間が確保。
看病に来た家族も泊まることができる。
医療スタッフも十分に配置され、10人程度の少人数単位の患者をケアし、
患者とスタッフの親密な交流も維持。
「終末期にはベッドからおりようとしたり、衣服を脱いで裸になるなどの
行動障害に対する適切な治療とケアが求められる。
食事・排せつのケア、清潔さを保ち抑制しないケアも必要。
両方に対応でき、最期まで患者のQOLの維持ができるのがユニット型医療施設」。

認知症300万人時代に備え、介護力を高めるための第一歩が踏み出され、
認知症の医療も新しい時代を迎えようとしている。
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◇「介護家族へも支援を」

アルツハイマー病と診断されてから8年、鈴木孝子さん(仮名)は娘と孫娘が介護。
過去には療養型の病院、介護老人保健施設を利用したこともあったが、
環境の変化からか暴れ、ベッドや車椅子に拘束されてしまい、
結局、娘宅に落ち着いた。

娘宅には、毎日午前、ヘルパーが訪れる。
週1回訪問診療を受け、週2回入浴サービスとデイケアを利用。
しかし介護度が5のため、孫娘は仕事をやめた。
鈴木家では、長期介護の経験から、家族介護に対する経済的支援や、
光熱費などを介護保険でカバーしてほしいと考えるようになった。
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◇人間性は、変わらない--記録映画『終りよければすべてよし』演出、記録映画作家・羽田澄子さん

『終りよければすべてよし』には、「人間らしく生きたい」という願いが集約。
オーストラリア、スウェーデンのケアと対比し、
今の日本に欠けているものが何かを教えてくれる。

演出の羽田澄子さんは、1986年作品の『痴呆性老人の世界』以来、
「高齢者が安心して暮らせる社会」をテーマに。
「認知症になって、たとえ知能が破壊されても、情緒は破壊されない。
だから、人間性は変わらない」。

ワンカットに含まれるメッセージ量は膨大で、
文章では表現できないことを伝えてくれる。

岐阜県にあるサンビレッジ国際医療福祉専門学校では、
羽田さんの『安心して老いるために』を教材に、介護のあり方を教えている。
「死は敗北ではないこと、人は死ぬということを理解して、
初めて人を救うことができる」。
羽田さんは、医学部の学生に、特に作品を見てほしい。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/12/02/20071202ddm010100064000c.html

医学博士号謝礼 国公立大、65%は調査・注意せず

(毎日新聞 2007年12月25日)

名古屋市立大大学院元教授の汚職事件を機に、
医学博士の学位申請者からの審査担当教授らへの謝礼が問題。
医学系大学院を持つ全国の国公立大学法人にアンケートを実施、
65%にあたる30校が、謝礼について実態調査も注意喚起も
行ったことがないと回答。

各大学OBの複数の医師は、謝礼の慣習を認めており、
大学院側の問題意識の低さが浮かんだ。

調査は、全50校の医学系研究科長らに
謝礼の慣習の有無、実態調査や注意喚起の有無などを択一式で尋ね、
46校から回答を得た。

謝礼の慣習について、「ない」と答えたのは39校。
和歌山県立医大だけが「ある、または聞いたことがある」を選んだが、
開始時期や内容は「分からない」。
九州大は「お菓子程度の謝礼はある」、
名市大は「謝礼があると聞いたことがある」と答えたが、
いずれも慣習としての謝礼は否定。
「未把握」、「調査中」も計4校。

実態調査を実施したのはいずれも事件後で、
名市大、名古屋大、岐阜大の3校にとどまった。
教授らに謝礼を受け取らないよう注意喚起を行っているのは12校で、
うち4校は事件後に実施。
調査も注意もしていない大学院は30校で、
うち29校が謝礼の慣習を「ない」と言い切った。

大阪大で博士号を取得した30代医師は、
審査の主査に10万円を払ったことを認め、
「全国の医学系大学院の慣習で、払うのは当たり前だ」。
東北大で博士号を取得した40代医師は、
担当教授に数万円の謝礼を払い、食事の接待もしたといい
「100万円を学位取得者の頭割りで払う教室もあった」。

◇明治以来の慣習--医事評論家の水野肇さんの話

学位への謝礼は、「税金のかからない収入」として明治以来の慣習で、
全国で続いているのが実情。
大学医局は、一国一城のあるじとして教授一人に権力が集中しており、
外からチェックできない特殊な世界だ。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=65056

2007年12月27日木曜日

ヒューマンファクター 失敗は創造の源?

(東京新聞 2007年12月11日)

スイッチの切り忘れ、弁の操作ミス、排水ホースのつなぎ間違い…。
厳密な運転や保守管理が求められる原子力発電所で、
人のミスがなくならない。
重大事故につながる“芽”だけに、電力事業者は対策に懸命だ。

「ヒューマンファクター(人的要因)」をテーマに、
福井県で開かれた国際シンポジウムでは、
個人のミスに目を向けるだけでなく、組織全体の取り組みや
安全文化を育てることの大切さが強調された。

「発生件数、発生率(放射線管理区域内一万時間あたり)ともに
減る傾向にあるんですが、なかなかゼロというわけには」。
東京電力原子力品質・安全部の福良昌敏部長は、
人的ミスをなくすことの難しさを明かす。

東電は、柏崎刈羽と福島第1、第2の3つの原子力発電所(17基)を持つ。
2004年からとりはじめたデータによると、全体的には減少しているが、
今年に入ってやや増加傾向。

最近でも、機器洗浄装置の排水ホースをつなぐ場所を間違えたり、
ポンプのスイッチ操作を誤ったりして放射能を含む水が漏れるなど、
作業員のミスが起きている。

原因をみると、最も多いのがコミュニケーション不足

指示を徹底しなかったため別の作業をしてしまう。
リスク予測不足も目立つ。
作業をやる前にこれをやればどういう影響が出るか、
という危機予知が不十分なケース。
この二つで、人的ミスの半分くらいを占めるという。

その背景には、「手順書の不備や人手不足、研修不十分など、
個人では対応できない要因がある」と福良さんは説明。
「人的ミスが発生しても、重大事故につながらない仕組みづくりが必要」。

これまで、ヒューマンエラー(人的ミス)は、
個人の資質や能力に起因するとみられがち。

しかし、最近では組織の問題や企業の安全文化にまで踏み込み、
ヒューマンファクターとして分析や対策に取り組むようになっている。

福井県美浜町にある原子力安全システム研究所で開かれた
国際シンポジウムでは、ヒューマンファクターについて
内外のさまざまな分野の専門家が報告や意見交換。

パリ鉱山大のエリック・ホルナゲル教授は、
安全性との関係でヒューマンファクターを見る場合、
「人間はマイナス要因」との見方から、
「有用な要因」という見方に変化してきた、と説明。

人のパフォーマンスには、効率性がいいときも悪いときも(変動性)あるが、
「失敗の原因となるだけでなく、工夫や創造性につながる成功の源でもある」。
「変動性をおさえ込むのでなく、組織として受け入れることが大切」と、
組織に柔軟さを求める。

吉田道雄熊本大教授(集団力学)は、
「安全の実現は、知識だけではできない。
意識が必要で、さらにそれが行動になって初めて可能になる。
ちょっとおかしいと現場の人間が感じたときにものを言える職場環境や
人間関係があることが重要」。

フランス原子力庁長官付顧問のジャック・ブシャール氏は、
ヒューマンファクターへの対応として「安全文化を醸成する」、
「経験をフィードバックして生かす」、
「小さなミスもきちんと分析して対策をたてる」、
「現場から管理者までそれぞれ責任を持って仕事をする」。

そして、「原子力の安全性は、社会的に極めて高い受容性が求められる」
として「最も重要なのは(企業の)透明性」と強調。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2007121102071251.html

大学院で医学専門家育成へ 札幌医大が"非医師"課程

(共同通信社 2007年12月20日)

札幌医大は、2008年4月から、医師以外の医学・医療の専門家を
育成する修士課程を大学院医学研究科に新設。

修了後の進路に、製薬会社の研究職や介護施設のスタッフ、
医療ジャーナリストなどを想定。
医療系単科大学の大学院でのこうした課程の開設は珍しい。

同大は、「医師以外にも多くの分野で医学的知識が必要とされている。
それらの分野で働こうとする人を教育することで、
医療全体の底上げを目指す」。

新課程は、2年間の医科学専攻修士課程で募集人数は10人。
出身学部に制限を設けず、医療系大学出身者以外も対象。

1年目の前期は、医学を社会的視点から考察する社会医学などの講義が中心。
その後、大学院各講座で医療薬学や
ゲノム(全遺伝情報)医科学などの研究を行う。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=64799

あしたのかたち/82 強い関大/6止

(毎日 6月23日)

「関大北陽高」の誕生は、兄貴分となる関大一高にも刺激に。
豊島光男校長は、「ともに伸びていきたい。
野球やサッカーは全国でも実績があり、ノウハウを教えてもらえれば」。
「大学も、能力の一つとして運動を評価するので、それに対応したい」。

これまで野球とサッカーで、毎年10人程度が監督推薦などで入学、
来年度以降は枠を2倍程度に増やす予定。

関大北陽高の募集定員は、280人。
既存の男子の総合進学コース(80人)、スポーツコース(40人)、
新たに男女共学の「関大連携コース1類、2類」(各80人)が設けられ、
関大やその他の難関私大、国公立大学への進学を目指す。

月に2回開かれる関大と北陽高の合併推進協議会では、
北陽高の学力レベルをいかに引き上げるかという教育面に議論が集中。
「北陽に入って、関大に進学することが一番大事」と
合併推進協議会事務局の北田伸治・総合企画室長。

河田悌一学長も、「(関大)一高と並ぶような学生を養成する。
それは短期戦でなければならない」。
関大一高は大阪府下屈指の難関校だけに、課題は多い。

合併に当たって、北陽高の鈴木清士校長は、
昨年新設したばかりのスポーツコースの廃止を関大側に打診。
だが、関大側からは維持を要請。
「(スポーツは)北陽の存在感でしょうと言われた。本当にありがたかった」。
北陽のスポーツに対する、関大側の期待感が垣間見える。

ただし、学力の基準を上げるという条件はついた。
北田室長は、「差が開きすぎると、教育システムそのものが難しくなる。
将来、関大で能力を発揮したいのなら、当然、生徒の確保の方法も変わる」。

現段階では、関大進学を希望するスポーツコースの生徒は
スポーツフロンティア入試などを受験することに。

北陽ブランドを生かしながら、いかに文武両道を充実させていくか?
新1期生が卒業する11年春に、一つの答えが出る。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070623ddn035070023000c.html

2007年12月26日水曜日

最前線:夢ある商品売り出す--第一フロンティア生命保険・高野茂徳社長

(毎日 11月26日

12月22日に全面解禁を控えた保険の銀行窓口販売。
巨大販売チャンネルの登場を前に、大手各社が「次の一手」を模索するなか、
業界第2位の第一生命保険の窓販専門会社として
10月1日に営業開始したのが第一フロンティア生命保険

国内の生保会社が全額出資の生保子会社を新設するのは史上初。
戦略を、高野茂徳社長に聞いた。

--窓販専門会社設立の背景を教えてください。

◆第一生命の主力商品は、死亡保障性商品。
これを営業職員で売るという伝統的スタイル。
しかし、窓販となるとチャンネル(販路)が違う上に売る商品も変わる。
全面解禁後も、しばらくは変額年金が売れ筋。
リスクの面でも、死亡保障性商品は文字通り死亡リスクに対し、
変額年金は投資リスク。
売れている年代層も変額年金は50代以上がほとんど、
と全く違うことに気付いた。

--窓販専門子会社の強みはなんですか。

◆変額年金のライバルは、投資信託や株などの金融商品。
金融商品の「賞味期限」は短い。
市場の変動に応じ、商品を発売できるよう機動性を高める。
とりわけ、変額年金の販売では機動性がキーになる。

--元本保障型変額年金以外の商品発売も考えているのですか。

◆単純に、第一生命と同じものを出す気は全くない。
ただ、お年寄りの関心事の一つに老後の健康というのがどうしてもある。
だから、変額年金の付加価値として(医療保険など)
第3分野商品が必要なら、そういうものも視野に入れていく。

--販路に関する今後の戦略は。

◆販売してもらえるのなら、どこの銀行でも歓迎。
第一段階として考えているのは、第一生命の代理店を
そっくり引き継ぐことだが、(系列外の金融機関であっても)誰でも歓迎。

--販売後の顧客ケアも重要です。

◆入ってもらった後のフォローは最も大事。
他社が我々をまねできないのはそこ。
人数をできるだけ減らし、コストを落とす。
一方で、例えば苦情を受け付けるコールセンターだけは自前でやる。
顧客の声を聞き、内容を分析してサービス向上に役立てたい。

--今後の目標は。

◆5年で預かり総資産1兆円。
親会社の第一生命には資産規模では追い付けないが、
夢のある商品を売り出すことでは負けないようにしたい。
例えば、近い将来、外貨建て年金を売り出すとして、
為替変動リスクを回避するために1年に1度、
夫婦で海外に行ってもらうようにするとか。
いずれは、第一フロンティアがグループの両輪の一方を担いたい。
==============
■人物略歴

東北大法学部卒。72年第一生命保険入社。
06年11月、同社専務執行役員を退任、12月第一フロンティア社長、
07年8月第一フロンティア生命保険社長。57歳。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20071126ddm008020121000c.html

あしたのかたち/81 強い関大/5

(毎日 6月16日)

来春、「関大北陽高」が誕生。
関大は、北陽高(大阪市)を経営する学校法人福武学園との合併を発表。
関大一高に次ぐ2番目の併設校。

近年、私立大学が従来の付属校とは別に、
中学、高校を提携・系列化する動きが顕著に。
少子化が進む中、早くから学生を確保しようというのが狙い。
高校側にとっても、大学のブランドを利用して生徒を集めやすくなるメリット。

関西では、立命大が宇治高(京都)、守山女子高(滋賀)と合併、
関学大も三田学園(兵庫)など中高3校と提携関係を締結、
龍大は来春、平安中・高(京都)を付属校化。

「ゆがんだ受験のシステムがあるから、学問とスポーツが両立しない。
系列中学、高校ならばスポーツも楽しみ、勉強もできるというシステムは可能」。

「関西大学スポーツサミット」で、早大学事顧問の奥島孝康氏は、
スポーツ強化における一貫教育の重要性を説いた。

現在、早大には高校5校、中学2校の付属・系属校がある。
代表的なのが、硬式野球部が昨夏の甲子園で優勝した早実。
エースの斎藤佑樹は、早大でも主力となり、春季リーグ優勝に貢献。
高校の強化が、大学の成績に直結した典型例。

奥島氏は、「大学クラブの正選手の半分は、付属校出身者で賄うのが目標」、
佐賀県に中高一貫校を新設する構想。

合併発表の記者会見で、関大の森本靖一郎理事長は
「知名度のある北陽高を併設校とすることで、さらに強い関大を作りたい」。

定員割れの続く北陽側からの申し入れを受け入れる形だが、
北陽高は野球で春夏通算14回の甲子園出場、
サッカーは2度の全国制覇などを誇るスポーツの強豪校。
スポーツ推進を掲げる関大にとって、そのブランドは魅力。
理事でもある小坂道一・体育OB会長は、
「サッカー、野球はより強固になる」。

現在、両者の代表者による合併推進協議会(永田眞三郎座長)が
月2回のペースで開かれ、高大連携の骨格作りが進められている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070616ddn035070037000c.html

9・11後ビザ規制の影響から米国の大学院教育は復活したが、国際競争でどれほどの才能が流出したか?

(nature Asia-Pacific)

2001年9月11日のテロ攻撃の余波で、米国はビザ規制を強化。
この厳重な警戒体制のために、米国の専門大学・総合大学に応募し
入学が許可された海外からの大学院生の数が減少。

実際に米国大学院審議会(CGS)の調査によると、
2003~2004年の間に海外からの留学希望者は28%減少し、
入学許可者数は18%減少。

米国大学院プログラムの活力源とみなされる、海外からの才能を失うことは
教育機関および就職に悪影響を及ぼすと危惧した人は多い。

新たな手続き方法が整備され、ビザ発給遅延の多くには対応が施され、
海外からの応募学生数は増加し始めた。

しかし、海外からの応募を阻んでいるのはビザ問題だけだろうか?
国際的な競争が高まる中、関心が薄らいでしまったためだろうか?
これらの要因が共に働き、ビザ問題によって才能の流出が加速した。
CGSの最新の数字に、その答えに対するヒントがある。

米国の大学院が留学希望者に与えた入学許可の件数は、
2006~2007年までに全ての分野で8%増加。

昨年の12%の増加からは減少したものの、3年連続の増加。
生命科学分野の応募は18%増加し、入学許可は11%増加、
物理科学分野の応募は12%増加し、入学許可は8%増加。
ある程度まで大学は立ち直ったように思われ、
つまりビザ規制は確かに有能な人材の流れを阻んでいた。

米国の大学と国際大学との間の合同プログラムおよび
二重専攻(dual degree)プログラムに関するCGSの報告では、
実に30%もの大学院がこのプログラムに取り組んでいる。

競争は、大学院教育の国際化にある。

現時点では、米国の大学院教育の制度はその魅力を失っていない。
だがCGSの結果においては、海外からの学生は学位取得後、
母国へ戻る可能性が高いという事実は考慮されていない。
入学希望者だけではなく、仕事を求める修士やPhDの修了者にとっても
国際競争は高まっているのである。

Nature Vol. 449, P. 109, September 2007

http://www.natureasia.com/japaz/tokushu/detail.php?id=46

2007年12月25日火曜日

万能細胞研究は2位に 米科学誌が今年の10大成果

(共同通信社 2007年12月21日)

米科学誌サイエンスは、2007年に達成された科学の10大成果を発表、
第2位に山中伸弥京都大教授らがヒトやマウスの皮膚からつくった
万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を選んだ。

受精卵(胚)を壊してつくる胚性幹細胞(ES細胞)とは異なり、
倫理面での問題が少なく、同誌は
「科学的にも政策的にもブレークスルー(大きな進展)だ」と評価。

第1位は、個人によって全遺伝情報(ゲノム)の塩基配列が
わずかに異なる「ヒトの遺伝的多様性」の研究。

病気に関連する遺伝子の研究を大きく進めた点が評価されたが、
選考責任者は「(iPS細胞と)どちらを第1位に選ぶか迷った」。


http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=64855

あしたのかたち/80 強い関大/4

(毎日 6月9日)

200字を書くのに苦労している学生がいるかと思えば、
400字詰めの原稿用紙を催促する学生もいた。
スポーツフロンティア(SF)入試で入学してきた学生を対象に、
関大が実施した「文書作成能力向上講習会」のひとコマ。

課外教育として計6回開かれ、1、2年生の希望者延べ100人が受講。
テーマは、サッカーW杯や五輪など。
指導した文学部の吉田永宏教授(今春定年退職)は、
「体力不足」を感じたという。

「文章を書くことが習慣になっていない。
まず、何を考え、何を認識しているかを身につけさせることが大事。
文章表現は次の段階」。

学業との両立に向けた支援策の一つで、河田悌一学長が提案。
プロ野球選手がインタビューで、「頑張りました」、
「応援、よろしくお願いします」などと繰り返すのを見て、
河田学長には思うところがあった。

品格のあるスポーツ選手になってほしい
スポーツだけで卒業していく学生では困る。
社会に出ても通用する人材を育てたい。
文章が書ければ、人前できちっとあいさつできるようになる」

スポーツクラブに所属している学生には、ジレンマがある。
技術が上がれば上がるほど、レギュラーとして試合に出る機会が増え、
講義に出席したくても、大会出場や遠征のために欠席せざるを得ない。
学力不足というより、単位取得が困難な状況に陥りがち。

今年は内容、回数とも拡充される予定で、
一人でも多くの学生が出席できるよう各クラブの部長、監督にも協力要請。
文章力の低下は、一般学生にも当てはまる。

吉田さんは、「今年はカリキュラムを作って指導したい。
答案やリポートを書けるようになることが当座の狙いだが、
論理を発展させて主張するためにも、文章力は大事。
ゆくゆくは単位認定してもらえるように」。

SF入試組を、河田学長は期待を込め、「学生文化のフロントランナー」と。
文武両道に加え、判断力や決断力をも兼ね備えたアスリート。
彼らこそが真の意味での「フロントランナー」に。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070609ddn035070034000c.html

研究室恋愛の別れと出会い:読者の反応

(nature Asia-Pacific)


全ての人と同じように科学者にとっても、
真の愛が順調な経過を辿ることはめったにない。

しかし、経歴重視の研究者がロマンチックな恋愛を追い求める時に
直面する困難について議論した後で(Nature 446, 463; 2007)、
恋愛と研究室を両立することがいかに困難かを強調する手紙が殺到。
幸い、その全てが失恋話という訳ではなかった。

夫婦共々専門家への大志を持っているにもかかわらず、
結婚生活が続いている内容の手紙もあった。
その夫婦が、恋愛の賭けに踏み切るまでには10年かかった。


仕事と同時進行の恋愛となると、状況が極めて厄介になると案じていた。
やはり結婚してみると、状況は大変厄介になった。
勤務地は遠く離れ、別々に暮らし、会うために頻繁に飛行機を使うことになり、
彼らの銀行預金はみるみる空になっていった。

研究室恋愛(lab relationship)に関するデータを求めて、
別の読者は52名の科学者に対して非公式調査を行った。
14名が同じもしくは違う研究室の科学者と結婚、ほぼ同数が独身、
約7名が科学者と交際中、2~3名が離婚、という結果。

別の話では、研究室生活がいかに煩わしいものであるかが見て取れた。
ある上司が崩壊してしまった家庭生活を嘆きつつも、
最高の科学は午後5時から真夜中の間に生まれると主張。

旅行し、人生を愛する大学院生らは成功する科学者にはならない、
と書いている人もいた。

ある読者は、成功の秘訣を示してくれた。
彼とその妻は、応用物理と機械工学のPhD候補生で、1歳の子供がいる。
彼は、自分達の成功の理由を、
期限付き契約で仕事をしていること(これが先の計画を立てやすくする)、
人間的・仕事的に支えあっていること、
仕事と家庭生活が手に負えないと思われる時には
自分の恵まれている点を数えるのを忘れないこと。

恋愛に対する仕事関係の障害は、もちろん科学に限ったことではない。
しかし、とりわけ仕事に打ち込む専門家の間では、
恋愛を求めることはあらゆる点で自らが解き明かそうとする
自然の神秘と同じくらい厄介なものであり得るということを認識しておくとよい。

Nature Vol. 448, P. 723, August 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=41

2007年12月24日月曜日

最前線:生活の変化に柔軟対応--エステー・小林寛三社長

(毎日 11月5日)

芳香剤や防虫剤のトップメーカーのエステーは、
「エステー化学」の社名から8月1日に「化学」を外して再スタート。
昨年、創業60周年を迎え、化学以外に事業を展開していく姿勢。
創業家以外から初めて経営トップに就任した小林寛三社長に、
新生エステーの経営戦略を聞いた。

--新社名の狙いは、「化学にとらわれない」ということですか?

◆社名に「化学」がつき、試験管を振って開発した商品でなければいけない
雰囲気が社内にありました。
生活環境の変化は早く、新築マンションにはウオークイン・クローゼットが
ついているのに、洋服ダンス用の防虫剤しかなかった。
家庭の消費者を理解するのに、「化学」はなくてもいい。
柔軟に自由に発想し、いろいろな事業にチャレンジしたい。

--社名変更後に発売した商品には、どんなものがありますか。

◆温水洗浄便座のノズルを泡で洗う「パワーズ ノズルウォッシュ」も、
生活の変化に対応した新商品。
トイレの消臭芳香剤では、コンパクトなキューブ(立方体)型を出しました。
いかにもトイレの消臭剤といったものでなく、デザイン性を高めました。
すねやふくらはぎを引き締め、スリムに見せる女性用の立体着圧ソックスは、
これからの方向性を占うものです。
「化学」が取れて、美容と健康をサポートする幅広い商品が出しやすい。

--これまでの商品はどう強化しますか?

◆防虫剤で創業し、においのしない「ムシューダ」をヒットさせ、
除湿剤「ドライペット」を日本で初めて作りました。
消臭芳香剤「消臭力」シリーズは、年間4000万個以上を売るメガヒット商品。
使って楽しいとか、癒やされるとか、情緒に訴える商品を出していきたい。
付加価値の高い商品でないと、後発品に追いつかれ単価も下がります。
品種を削減して強い商品を育てます。

--海外展開はどうですか。

◆昨年から米ウォルマートの約3200店舗で、除湿剤や脱臭炭を販売。
水がたまったり、炭が減ったりして効果が見て分かりやすいので、
米国でも受け入れられました。
韓国では、今春に家庭用品第2位のメーカーと合弁会社を設立し、
消臭芳香剤などを販売。

--どのように商品開発をしていますか。

◆全社員から意見募集するイベント「アイディアのたまご」を8月に行いました。
555件の応募があり、生活に密着した商品のアイデアが集まっています。
==============
■人物略歴

80年中央大商学部卒、エステー化学工業(現エステー)入社。
専務執行役製造部門担当兼R&D部門担当などを経て、
07年4月から現職。東京都出身。50歳。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20071105ddm008020057000c.html

科学者として「研究の誠実性」の教育は重要

(nature ASia-Pacific)

著者資格としての不適切性からデータ偽造に至るまで、
科学における不正行為の事例は驚くほど日常的に発生。
新進の研究者に対し、何が許され何が許されないことであるのかを
確実に理解させるために手を尽くすべき。

ポスドクは、まだ指導下にありながら同時に指導するという
職業的立場にあることから、このような教育が特に重要。

特に、米国ポスドク協会(NPA)が指摘するように、
ポスドクは所属機関において、たいてい正式な地位にないため、
例えば誰が論文の筆頭著者になるべきであるとか、
いつどのように共同研究を行うべきであるとか、
自分が研究室を離れた場合のデータの扱い方のような問題を考える際に、
過労状態の(期待に応えてくれない、信頼できない)指導者に
頼らざるを得ない場合がある。

このような話題を切りだすのはおかしいと思われるかもしれないので、
多くのポスドクは日々の研究活動を優先させ、避けて通っている。

しかし、これらは研究の誠実性を損ないうる問題。
この問題に取り組むため、
NPAは、責任ある研究行為についての認識を向上させ、
教育を推進するためのプログラムに着手。

本プログラムにおける最初のシード助成金を発表。
12の大学およびポスドク協会に、研究の誠実性を狙いとした
率先的活動の支援を目的として、1,000ドルが支給。

例として、ボストンのマサチューセッツ総合病院ポスドク協会は、
指導者とポスドクの間で行われるランチ討論会の支援に、この資金を利用。

ペンシルベニア州のピッツバーグ大学は、この助成金を
「責任ある行為」に関する様々な問題についての協議を促す一助に。

このような議論は、問題に対してほとんどうわべだけの対処となり、
新たな実用的な勧告を生み出さないという危険性を常に孕んでいる。
しかし、あってはならない状況になっても、重要な成果は得られる。
それは、問題含みの領域に関する話題を人々に提供すること

この問題に取り組み始めなければ、
著者の決定や共同研究の計画といった問題が、
科学そのものと同じくらい複雑で困難なものになりうるため、
極めて大事なことかもしれない。

Nature Vol. 450, P. 129, 31 October 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=59

あしたのかたち/79 強い関大/3

(毎日 6月2日)

「千里凱風寮」は、阪急千里山駅から徒歩数分の住宅街に。
スポーツフロンティア(SF)入試で入学した学生用に、04年に完成。
入寮期間は原則1年間で、約50人が暮らす。
食堂はなく、夜になると、コイン式ガスコンロの前に学生が並ぶ。
柔道部の河津一也さん(2年)は、
「練習で疲れて帰ってきてから食事を作るのは、少しつらい」。

寮は、栄養を管理して、戦う体を作る場。
「食事がなくては意味がない」と野球部の土佐秀夫監督。
森本靖一郎理事長は、「(業者と)提携するような形でやっていきたい」
しかし、改善のめどは立っていない。
1室12平方メートルと手狭のうえ、浴室もないなど課題は山積み。

スポーツの強化、振興について、森本理事長は三つの柱を挙げる。
素質のある学生の獲得が第一。二番目はいい指導者、三番目はいい施設」。

だが、数十億円を投じてアイスアリーナ、柔道場や射撃場などが入る
「養心館」など専用の施設が次々と建設される一方で、
人工芝グラウンドはサッカー、アメリカンフットボール、ラグビーなどの共用。
体育の授業でも使用されるため、利用時間は午後2時半以降となり、
早朝練習で補っているクラブも。

昨夏から人気スポーツの野球、サッカー、アメフットに、
大学の特色を生かした競技としてアイススケート、アイスホッケー、陸上を
加えた6クラブが重点強化指定され、
学長任命制の指導者も常勤職員や嘱託という形で雇用して
フルタイム指導ができる体制を整えた。
今後は、準重点強化クラブも導入する予定。

それでも、現場からは不備を指摘する声が出る。
部員が100人を超えるサッカー部の場合、
常時指導できるのは島岡健太コーチだけ。
レベルに応じて4班に分けることで対応しているものの、
限界があり、一般入試組の入部受け入れを保留せざるを得ない。

「SF組が、トップ選手であり続ける保証はない。
いい素材をきちんと育成する環境を整えなければ、好成績は維持できない」。

SF入試導入から5年。
現場の要望は、受け入れ側の充実にシフトし始めている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070602ddn035070060000c.html

2007年12月23日日曜日

大豆:毎日食べれば脳・心筋梗塞の死亡率低下 女性で顕著

(毎日 12月3日)

大豆をほぼ毎日食べる女性は、あまり食べない女性に比べ、
脳梗塞や心筋梗塞など循環器病の死亡率が約7割も低下。

厚生労働省の研究班(津金昌一郎・国立がんセンター予防部長)
による大規模な疫学調査で分かった。

大豆に含まれるイソフラボンの摂取量が多いほど、
特に閉経後の女性で脳梗塞や心筋梗塞の発症率や死亡率が下がった。
研究成果は、11月27日付の米専門雑誌「サーキュレーション」に掲載。

調査は、岩手、秋田、長野、沖縄の4県に住み、調査開始当初、
心臓病やがんになっていなかった40~59歳の男女約4万人が対象。
90~02年まで、13年間にわたって追跡調査。

その結果、大豆を週5日以上の頻度で食べる女性は、
2日以下に比べ、脳梗塞や心筋梗塞による死亡率が0.31倍と低い。
イソフラボンの摂取量で比較すると、一番多い女性グループは、
一番少ないグループに比べ、発症率が0.39倍。

また、閉経後の女性の場合、摂取量が一番多いグループは、
一番少ないグループに比べ、発症率が0.25倍と特に低い。
一番多いグループの一日当たりの摂取量は、
豆腐3分の1丁か納豆小パック(約50グラム)1個程度。
一方、男性には同様の傾向は見られなかった。

小久保喜弘・国立循環器病センター予防検診部医長(循環器疫学)は
「イソフラボンを含む大豆を無理なく食べ続ければ、
女性は脳梗塞や心筋梗塞を予防できる可能性がある。
ただ大豆にはイソフラボン以外の成分もあるので、
イソフラボンだけ取っても予防できるかは分からない」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20071203k0000e040013000c.html

あしたのかたち/78 強い関大/2

(毎日 5月26日)

女子フィギュアスケートで期待される高校生トリオが、関大に入学。
沢田亜紀、北村明子、金彩華。

3人とも、5年目を迎えたスポーツフロンティア(SF)入試
呼ばれるスポーツ推薦で合格。
高槻キャンパスに昨夏完成した専用アイススケートリンクで、
SF入試の先輩、高橋大輔、織田信成と「世界」を目指す。

体育会クラブの愛称「カイザー」には、「皇帝、王者」の意味。
体育OB会の小坂道一会長が在籍した昭和20年代は「カイザー関大」時代。
しかし、大学紛争を契機に1970年、体育推薦入試制度が途絶えると、
64年東京五輪前後の「第2次黄金時代」の余韻は消え去った。
全共闘が体育会活動を、
「大学当局に加担する右翼」と攻撃したのが廃止の理由。

スポーツ強化にかじを切ったのは、羽間平安理事長時代(2000~04年)。
アメリカンフットボールのQBとして活躍した羽間氏には悔しい思い出が。
就任前、隣接する関大一高のアメフット部が2年連続日本一。
だが、中心選手は進学先に関大を選択しなかった。
98年センバツで準優勝した野球部のエースらも
社会人や関東の大学に進んだ。

羽間氏は、「スポーツにはリサーチ、リクルート、リフレッシュの3Rが大切。
いい人材が入って来なければ、クラブのリフレッシュも進まない」。
ほぼ30年の空白を経て03年度、SF入試を導入。
その方針は、森本靖一郎理事長に引き継がれている。

SF入試の合格者は05年度112人、06年度130人、07年度151人と
年々増え、サッカー部が2年前の総理大臣杯で
38年ぶりの日本一になるなど成果は表れつつある。

大学理事でもある小坂会長は、
「僕のベースは200人。それでもまだ足りない」。
今年度の合格者は、募集定員(全10学部で計86人)の倍近い。

河田悌一学長は、「各学部にお願いして採ってもらっているが、限界に」。
スポーツや健康を扱う新学部の設立が検討されている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070526ddn035070047000c.html

ビジネス教育の必要性を示したバイオサイエンス業界求人の短期調査結果

(nature ASia-Pacific)

1970年代のバイオテクノロジーの興隆以来、
バイオサイエンスの世界とビジネスの世界との距離は
これまでになく近くなっている。

しかし、バイオサイエンス業界に関心を抱く求職者にとっての
ビジネス教育のメリットとはどれほどのものであろうか?

いくつかの利点があげられるだろう。
例えば、製薬業界は深刻な人員削減にあえいでいる(Nature 448, 965; 2007)。

しかし、まだ仕事の場がなくなってしまった訳ではなく、
ビジネス教育もその足掛かりの1つ。
ビジネス教育が、どの程度の機会拡大につながるかは測りがたいが、
ビジネススキルを取り込んだバイオサイエンスの学位を取得できる
カリフォルニア州クレアモントのKeck Graduate Instituteは、
この実情を評価する報告書を発表(http://www.kgi.edu/x6503.xml)。

Molly Schmid氏とHelen Liu氏は、
製薬企業の収益上位5社(ファイザー社、グラクソスミスクライン社、
サノフィアベンティス社、メルク社、ジョンソンエンドジョンソン社)、
バイオテクノロジー企業の上位4社(アムジェン社、ジェネンテック社、
バイオジェンアイデック社、ジェンザイム社)において、
公募されていた3,790件の求人について調査。

研究開発(R&D)の求人は、全体のおよそ17%であり、
残りはビジネス関連業務の求人。
内訳は、7%が製造、24%が管理(情報技術、財務、法務などの業務)、
25%が規制関連業務(品質管理、テクニカルライティング、統計解析)、
27%が販売・営業。

この結果は、ちょっとした警鐘に。
「通常、学者達は産業界で得られる職種がどんなものかについて
調べたり考えたりしていません。多くの人は本当に驚くことでしょう。
R&Dは、もっと多いと考えていたはず。」

この調査は、1ヶ月間という短期的なものに過ぎないが、
この数字は多様なスキルを持つことの重要性を示している。
「学生達は、科学教育を受けたことによって手に入れることができる
職種について理解する必要があります。
有機化学の研究室では、そのようなメッセージは得られない」。

Nature Vol. 448, P.1077, August 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=45

2007年12月22日土曜日

あしたのかたち/77 強い関大/1

(毎日 5月17日)

1時間半近く、休みなく、しかも早口で言葉をつないだ。
大阪市内のホテルで開催された「関西大学スポーツサミット」。

河田悌一学長の紹介を受け、早大学事顧問の奥島孝康氏が壇上に。
講演「続 大学スポーツの意義と強化策」。
体育会45クラブの監督、顧問教授だけでなく、大学本部、体育OB会、
校友会、付属中学・高校から約200人が集まり、一致団結ぶりを誇示。

総長時代(94~02年)、奥島氏は
「早稲田は東大ではない。スポーツも強くなければならない」と、
アディダスとパートナーシップ契約を締結するなどして、
低迷していた「早稲田スポーツ」を復活。
今春入学した野球の斎藤佑樹、卓球の福原愛は、躍進の象徴的存在。

2年連続となる奥島氏の講演は、
「強い関大」を掲げる森本靖一郎理事長の要請があって実現。
04年10月の就任以来、森本理事長はことあるごとに「強い関大」を口に
入学式、卒業式、講演、取材……。スポーツだけでなく、
教育、研究、文化、就職、IT、財政、社会貢献に強い関大を目指す。

今年、開学121年の歴史で初めて志願者数が10万人超。
少子化の時代にあって、前年比22%増は全国的にも注目。
フィギュアスケート世界選手権の銀メダリスト高橋大輔(文学部4年)と、
そのライバル織田信成(文学部3年)の果たした役割が大きい。

戦後はバンカラのイメージがあったが、
「特色のないのが特色」とやゆされた時期が続いた。
ある大学職員が苦笑しながら言う。
「入試の広報戦略で北海道や東北を回っていたころ、
『関大と関学、どっちがどっち』とよく聞かれた」。
今では、それが笑い話になるほどの活力がみなぎる。

スポーツ強化にまい進する姿は、早大に重なる。
「うちは牛歩虎視。牛の歩みだけど、眼(まなこ)だけは見開いている」と
独自性を強調する森本理事長に対し、
ボクシング部の1年先輩で、体育OB会の小坂道一会長は、
「早稲田のマネをすることは恥じゃない。前者のわだちは安全なんです」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070519ddn035070080000c.html

歴史乗り越え、研究に協力 米で被爆者代表が講演

(共同通信社 2007年12月13日)

広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長は、
放射線影響研究所(放影研、広島市・長崎市)と
前身組織の活動60年を記念して、
米科学アカデミーがワシントンで開いたシンポジウムで講演し、
「検査すれども治療せず、と研究に反発したこともあった。
だが、被爆者は未来に向かって歴史を乗り越える覚悟を固めている」。

20歳で被爆した坪井理事長は、
「核兵器の廃絶を悲願している。放射線の影響研究に協力を惜しまない」。

後遺症の再生不良性貧血や大腸がんで、
10回も入退院を繰り返した経験を振り返り、
「わたしは82歳でまだ若いつもり。
信条はネバーギブアップ(決してあきらめない)だ」と締めくくると、
100人を超す聴衆が立ち上がって拍手した。

放影研は、原爆被爆者への放射線の影響調査を目的に、
1947年に活動を始めた米原爆傷害調査委員会(ABCC)が前身で、
75年に日米共同機関として発足。

シンポジウムではこうした歴史を振り返り、最新の研究動向を紹介。
米側の運営資金を拠出するエネルギー省の
マイケル・キルパトリック担当副局長は、
「公衆の被ばく基準作りに貢献した」と放影研の研究成果をたたえた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=64311

***********************
このような動きはとても大切なことです。
戦争によって、敵味方関係なく、多くの人々が被害に遭いました。
歴史を事実として、お互いに認識しあうことが
現代においても大切です。
原爆、強制収容、慰安婦、虐殺・・・
これらは、いつ自分たちが被害者側になったり、
加害者側になったりするか、分かりません。
歴史を学ぶことで、お互いを理解し合い、
このような悲しい出来事を防ぐ努力をしなければなりません。

世界初の人工リンパ装置が強い免疫機能を発揮することを確認!

(nature Asia-Pacific)

理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター
渡邊 武ユニットリーダー

私たちは多種多様の細菌やウイルスに囲まれて暮らしているが、
免疫機能が正常であれば、大事に至ることはあまりない。
ところが、がんやエイズなどの疾患では、免疫機能の低下により、
命を脅かす深刻な事態が生じる。

理化学研究所の渡邊武ユニットリーダー(以下、UL)は、
人工リンパ節を作製し、それを体内に移植することで
患者の免疫機能を高めることができないかと考え、
2001年頃からマウスを用いた研究を始めた。

2004年に人工リンパ節の構築に成功し、
免疫反応を誘導し、強い免疫機能を発揮することを確認。

渡邊ULらが開発した人工リンパ節の材料は、
生体適合材料として知られる「コラーゲンスポンジ」、
臓器や組織を形づくるための支持細胞である「ストローマ細胞」、
免疫反応の司令塔としてはたらく免疫細胞である「樹状細胞」からなる。

「まず2mm角ほどのコラーゲンスポンジに、
ストローマ細胞と外来の抗原を取り込ませた樹状細胞を含ませ、
それをマウスの腎臓皮膜下に移植する。
2~3週間後に、ほぼ100%の確率でリンパ節と同じような構造をもつ
直径3~5mmほどの人工リンパ節組織ができる」。
成功の鍵は、コラーゲンスポンジとストローマ細胞を組み合わせた点

このような研究を始めた経緯について、
「細胞治療や組織再生について、大きな研究成果がもたらされているが、
免疫組織の再生と構築については手がつけられていなかった。
リンパ節(二次リンパ節)は、免疫反応の場としてきわめて重要で、
実に美しい構造をしていることもあり、人工的に構築してみたい」。

さらに、生体という3次元空間内でおきる反応の解析には、
現在使われている平面培養法ではなく、
3次元で培養する系が必要だと感じたことも大きかった。

研究は、リンパ節の構築に最低限なにが必要かを考えるところから始まった。
「マウスでは、リンパ節の形成に関わる細胞・分子・分子間相互作用について、
かなりのことがわかっていた。
私達は、リンパ節の発生や形成過程をなぞるのではなく、
エッセンスだけを使って簡便に作ろうと考えた」。

骨組みとしてコラーゲンスポンジを、
組織基盤としてストローマ細胞を使うことにした。
驚くべきことに、最初にできあがった組織は、
自然のリンパ節とそっくりの美しい組織構造とリンパ節に存在する
ほとんど全ての細胞や構造を持っていた。

得られた人工リンパ節を、免疫不全のモデルマウスの腎臓皮膜下
(腎臓皮膜は、さまざまな臓器移植実験の場として使用)に移植し、
静脈注射でがん抗原や細菌タンパク質などの抗原を投与。
「正常マウスの免疫反応の10~50倍もの強い抗体産生が誘導された」。

その理由については、免疫不全マウスでは、
免疫細胞が増殖できる十分な空間があり、
人工リンパ節には免疫反応を抑える機構が少ないことなどが考えられる。

渡邊ULは、構築までの簡便化と、ヒトを含むマウス以外の動物にも
移植できる人工リンパ節の開発を進めている。
将来は、人工リンパ節が、エイズ、がん、老化による免疫能の低下、
免疫組織の破壊に対する有効な治療法になり、
モノクローナル抗体などの医薬品産生のツールとしても利用できると期待。

「リンパ節だけでなく、胸腺、脾臓などを含めた『人工免疫組織治療』が
かならず実現すると確信している」。

渡邊ULは、免疫組織の構築に必要な全ての細胞をES細胞から誘導し、
完璧な免疫能力をもった人工リンパ節を作ることを究極の目標に掲げ、
今日も研究を進めている。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=17

2007年12月21日金曜日

最前線:特徴ある健康食品開発--味の素・健康事業開発部、鈴木信二部長

(毎日 11月19日)

味の素は、食品や医薬品に続く成長分野として、健康事業を強化。
安全性や効能が科学的に実証された健康食品の開発に取り組む
健康事業開発部長の鈴木信二さん(51)に、
海外展開など今後の戦略を聞いた。

--どのような研究開発を目指していますか?

◆肥満予防や生活習慣病の改善などに、焦点を当てている。
天然由来の素材を開発し、人による試験を通じて
食品の安全性や有効性を調べる。
味の素グループ内の「健康基盤研究所」などと協力しながら
商品開発を進め、これまで4商品の開発に成功。

--顧客層は?

◆健康に関心の高い40~60代の顧客が多い。
「味の素の健康食品」として信頼を得ているようだ。
ただ、成長が期待される健康食品の市場は参入が多く、
競争が激しいので、特徴ある商品で顧客にアピールすることが重要。

--開発した商品の特徴を教えてください。

◆第1弾として開発したのがアミノ酸のひとつ、
グリシンを使った健康食品「グリナ」
体内で重要な役割を担うグリシンが、「さわやかな朝をサポートする」
という商品で、05年8月の発売以降、9万人を超える顧客が購入。

「かつおの力」は、アミノ酸やミネラルなど
27種類の栄養素が含まれているカツオだしに着目。
1袋をお湯に溶かして飲めば、みそ汁8杯分のカツオだしを摂取。

--通信販売に特化する狙いはなんですか?

◆新聞広告で宣伝して、興味を持って電話をかけてきた
顧客に販売するケースが多い。
健康食品に関心を持つ顧客は、商品の特徴や食べ方など
詳しい説明を求める方が多い。
オペレーターから直接説明を受ければ、安心して購入できる。

--海外展開も進めています。

◆肥満が深刻な米国では、医師を通じて、サプリメントの
「カプシエイト ナチュラ」の販売を今年7月に始めた。
タイで栽培した辛くないトウガラシから抽出した新しい成分
「カプシエイト」が健康をサポート。
今後は、欧州や中国などへの進出も検討したい。

--味の素グループの健康事業の位置づけは?

◆グループ全体の2010年度の売上高目標は1兆5000億円で、
そのうち健康事業は2000億円。
健康事業開発部では、新商品の投入や既存商品の販売拡大などで、
2000億円の5~10%程度を稼ぎ出すようになりたい。
乳酸菌の技術をもった子会社のカルピスと共同での商品開発も検討したい。
==============
■人物略歴

一橋大卒業。79年、味の素入社。
食品事業本部営業企画グループ長を経て、
02年から健康事業開発部長。長野県出身。51歳。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20071119ddm008020111000c.html

中国:杭州で4300年以上前の古城跡発見 殷墟に匹敵

(毎日 12月3日)

中国浙江省杭州の良渚(りょうしゃ)文化遺跡で、
少なくとも4300年以上前の巨大な古城跡が発見。

甲骨文字で有名な河南省安陽市の殷墟にも匹敵する
考古学的な価値があると専門家は指摘。

浙江省文物局などが18カ月にわたる調査の結果、古城跡の発見。
高さ4メートルの城壁に囲まれた古城跡は、
東西1.5~1.7キロ、南北1.8~1.9キロ、広さは約290万平方メートル。
サッカー場約400個分の面積で、
中国国内で発見された古城跡の中でも最大級。

良渚文化は、4000~5300年前に浙江省と江蘇省の境界にある
太湖周辺で発展した。
複雑な社会階層の分類を備えた文明社会だったとみられることから、
「中国最古の王朝が存在した可能性もある」。

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20071204k0000m030080000c.html

新しい波/253 野球独立リーグ/下 着実にレベル向上

(毎日 11月24日)

左手にストップウオッチを握り、男は手帳にペンを走らせていた。
独立リーグ日本一を争う香川-石川戦(10月27日、高松)の
バックネット裏には複数のプロ野球スカウトがいた。

楽天の中尾明生スカウトは、
「1年目は(フロントが)四国アイランドリーグを相手にしていなかった。
レベルが上がり、今では(球団の)現場からも注目選手の名前が上がってくる」。

物差しとして、プロは交流戦を重視。
05年は、オリックスとの1試合のみだったが、今年は17試合。
10月には、セ、パ12球団による教育リーグ「フェニックスリーグ」(宮崎)に、
四国リーグ選抜が初参加。
3勝8敗1分けながら、小差の試合が多かった。

大学生・社会人ドラフトでは、香川の三輪正義内野手(23)が
ヤクルト6巡目で、他に5選手が育成選手として指名。
計6人の指名は、過去最多。

今季、リーグ新記録の40盗塁をマークし、遊撃の守備も評価された
三輪ら4人はリーグ在籍3年目。
ヤクルトの岡林洋一スカウトは、
「守備、走塁、打撃とも段々と進歩している」。

監督やコーチを務める元プロ選手らによる育成機能が、
一定の役割を果たした証し。

海外も注目。
今季は、豪州から04年アテネ五輪銀メダリストら4人が加わった。
現在も豪州代表でプレーするトム・ブライス外野手(26)=香川=は、
「四国に来たのは、日本のプロ野球に行くステップになるから。
他の選手も関心を持っている」。

リーグ運営会社IBLJの鍵山誠社長(40)は、
「3年目の選手のプロ入りは特にうれしい。
コンスタントに選手を輩出し、プロへのもう一つの選択肢として認められた」。

四国リーグがまいた種は、全国各地で芽を出している。

今季スタートしたBCリーグからは、育成選手として楽天から1人が指名。
来季は福井、群馬が加入して6チームに増え、
岡山、宮崎、福島などでも新球団設立を目指す動きが加速。
夢を抱く他地域の選手には、3年間で計11選手がプロから指名された
四国が、まぶしく映っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

2007年12月20日木曜日

抗癌効果のある食事はあるのだろうか?

(Medscape 12月6日)

ある種の果物と野菜が癌のリスクを低下させ、
その通過路に発生する癌を抑制するのに役立つ可能性がある。
「抗癌作用をもつ食事」が現実に存在するわけではないが、
ある種の果物と野菜を多量に摂取することは、
発癌リスクを低下させるのに役立つと、研究者らは報告。

その知見は、果物と野菜の摂取量が多いことが癌リスクの低下と
関連することを明らかにした、以前の研究を確認および補強するもの。

最新の「A」リストには、ブラックラズベリーが食道癌の予防
ブロッコリーのようなアブラナ科の生野菜が膀胱癌の予防に推奨。

オハイオ州立大学総合癌センター(コロンブス)の栄養学の准教授
Laura Krestyは、「魔法のような効果のある食物はない。
重要なことは、多様な果物と野菜を食べよ、旬のものを食べよということ。
本当に目指すべきことは、果物と野菜の総摂取量を増やし、
野菜中心の食事を摂るように努めること」。

ブラックラズベリーを食べることが、
食道癌になるリスクの高い人々を保護する可能性がある。
動物実験において、ブラックラズベリーが口腔、食道、結腸の癌を抑制。
果物は、酸化ストレス、フリーラジカルによる細胞破壊を減らし、
DNA損傷と細胞増殖速度を軽減する。

バレット食道と呼ばれる食道の前癌病変を有する高リスク患者を対象。
バレット食道患者は食道癌のリスクが30 - 40倍高い。
食道癌は致死的であり、5年生存率は15%。

20例の患者が、凍結乾燥したブラックラズベリーを1日に1オンス(28.3g)
または1.5オンス(42.5g)(男性はより多く)、26週間摂取。
酸化ストレスのマーカーである尿中8-イソプラスタンを測定。
「58%の患者は、8-イソプラスタンが顕著に減少」。

発癌物質の無毒化を促進するGSTpiという酵素の組織内レベルも検討。
37%の患者で、保護作用を有する酵素が増加。
癌が発生した人々が減少したかどうか、長期追跡調査は行われなかったが、
Kresty博士は、果物には「保護作用がある」と。

Roswell Park癌研究所(ニューヨーク州バッファロー)の研究者らは、
ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、キャベツ、カリフラワーのような
アブラナ科の生野菜は、膀胱癌のリスクを約40%低下させる。
それらの野菜には、膀胱癌に対する保護効果を有すると考えられる
イソチオシアン酸塩、ITCという化合物を含む。

Roswell Park研究所Li Tang, MDは、
「生のアブラナ科の野菜は、加熱調理した野菜よりも良い。
調理中にイソチオシアン酸塩の量が60% - 90%減少する」。

膀胱癌と診断された275例、健康な被験者825例の食習慣を調査。
診断前の生および加熱調理済みの野菜の摂取、喫煙習慣、
他のリスクファクターについて質問。
1カ月にそれらの野菜を3食分以上摂取した非喫煙者は、
1カ月に3食分未満しか摂取しなかった喫煙者と比較して、
膀胱癌になる可能性が約73%低い。

Roswell Park癌研究所の腫瘍学の教授Yuesheng Zhangは、
ブロッコリースプラウトは膀胱癌の予防に、より優れている可能性がある。
4群の動物を用い、1つの群には膀胱癌を誘発する溶液を飲ませ、
ブロッコリースプラウトの凍結乾燥抽出物を摂取。
他群には、ブロッコリー抽出物のみ、発癌物質のみを摂取。
もう1つの群は対照群とし、何もしなかった。

10カ月後、「発癌物質のみを摂取した動物の96%に、腫瘍が発生」。
発癌物質とブロッコリー抽出物の両方を摂取した動物のうち、
癌が発生したのは37匹のみ。
この場合も、保護効果を示すと考えられるのはITC。
ブロッコリースプラウトは、発癌物質を無毒化する上で
重要な2つの酵素を活性化することによって効果を発揮。

American Association for Cancer Research's Sixth Annual International Conference on Frontiers in Cancer Prevention Research, Philadelphia, Dec. 5-8, 2007. Laura Kresty, PhD, assistant professor of nutrition, Comprehensive Cancer Center, Ohio State University, Columbus. Yuesheng Zhang, MD, PhD, professor of oncology, Roswell Park Cancer Institute, Buffalo, N.Y. Li Tang, MD, PhD, Roswell Park Cancer Institute, Buffalo, N.Y.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=64059

新しい波/252 野球独立リーグ/中 香川、リピーター増

(毎日 11月10日)

赤字経営が続く四国アイランドリーグで、
黒字転換にめどをつけた球団がある。
今季、2連覇を果たした香川オリーブガイナーズ(高松市)。

小崎貴紀球団社長(37)は、
「リピーターを戦略的に作ることができた」。

ホームの1試合平均観客数は、前年比約1・6倍の1592人。
年間集客数は、7万1634人でリーグの史上最多記録を更新。

カギは、無料チケットの有効活用
初年度は、リーグ全体で約40万枚をばらまき、赤字が膨らむ要因に。
香川では、地域別の配布枚数と実際に訪れた観客数の「着券率」を集約。
着券率の高い地域で営業を強化し、安定した集客を実現。

「家族客」の取り込みも効果的
市内の全公立小中学校約3万5000人の児童・生徒に、
無料チケット付きのチラシを配布した結果、
保護者を含めたリピーターが増えた。

リーグ1球団の年間経費は、1億~1億3000万円。
香川は今季、リーグ最多となる約40社のスポンサーから6000万円、
チケット3000万円、グッズ1300万円、飲食1200万円に加え、
2人がプロ球団入りを果たし、契約金や初年度年俸の2割が収入となり、
総収入は1億2500万円に達する見通し。

昨季から独立採算制に移行し、独自の経営戦略が可能になったことも大きい。
香川は、職員を6人に倍増して積極経営を選んだ。
元広島投手やアテネ五輪銀メダリストの豪州代表スラッガーを獲得し、
戦力アップにも取り組んだ。試合の質の向上は、集客に直結。

一時は球団存続が危ぶまれた高知は今オフ、
阪神・藤川球児投手の兄が球団代表に就任し、営業戦略を練り直し。
来季から新加入の長崎は、米独立リーグ人気球団と提携して
米国流のイベント充実に力を注ぐ。

今季スタートしたBCリーグの村山哲二代表(43)は、
「まず1球団だけでも、黒字化のモデルをつくりたい」。

香川の職員は、今季途中に徳島へ派遣され、
来季は別の職員が福岡の新球団で運営に携わる。
香川のノウハウは各地へ波及している。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20071110ddm035050027000c.html

大学と企業を渡り歩いた経験を、バイオベンチャー育成に生かす!

(nature Asia-Pacific)

株式会社トランスサイエンス・キャリア 顧問 池本文彦

今や、2人に1人が大学に進学する時代。
その1割は大学院にまで進み、理系に限ると大学院進学率は3割を超える。

ところが、大学における研究ポストはそれほど増えておらず、
公的研究機関では終身雇用の研究職が増えるどころか、減少の傾向。

一方、ライフサイエンスやIT、環境、食品など、
産業における研究者や技術者の需要は大きく、優秀な人材の確保が急務。

トランスサイエンス・キャリア社は、バイオ・メディカル分野において
研究者と民間企業との架け橋となるべく、
ベンチャー企業などの人材と組織を育成支援。

2005年に設立されたトランスサイエンス・キャリア社は、
ベンチャーキャピタルであるトランスサイエンス社と協同運営
薬理学研究者である池本文彦博士は、大学と製薬企業とを渡り歩き、
2004年にトランスサイエンス社の顧問に着任。
2006年からはトランスサイエンス・キャリア社の顧問も兼任。

「トランスサイエンス社は、160億円のファンドを国内外の52社に投資し、
トランスサイエンス・キャリア社の方は発足からわずか2年で、
経営幹部層を含め70人を超える人材を紹介してきた」。

人材の紹介先は、創薬ベンチャーからバイオインフラ企業、
コンサルティングファームと多岐にわたり、
着任ポストも代表取締役CEO、開発本部長、社長室長、薬理部長とさまざま。

1961年に神戸大学理学部生物学科遺伝学教室を卒業した池本博士は、
自活していくためにやむを得ず製薬企業に就職。
その後、大学での研究が捨てきれずに、製薬企業に籍を置いたまま
大阪市立大学医学部の研究生となり、
病態発生機序における細胞の能動輸送系障害の意義についての
研究をテーマとし、1972年に医学博士を取得。

1977年に製薬企業を退職し、同大学医学部の講師に就任して以来、
レニン・アンジオテンシン系の研究で成果を上げ、
助教授までを務めあげたが、1989年に依願退職。
1990年、万有製薬株式会社つくば研究所創薬研究所の副所長、
取締役開発研究所長などを歴任し、
2004年の退任後にトランスサイエンス社顧問となり現在に至る。

「好きな生き方をして、さまざまな経験をしてきたので、
少しでもご恩返しをしたい」。

自らを「珍種の存在」と語る池本博士は、現職への思いをそう話す。

一攫千金を狙ったバイオベンチャー設立ブームは記憶に新しいが、
安定した経営が行えている企業はきわめて少ない。
「私は利益のみを追うことはせず、大企業では難しい特化した領域を
発展させることに貢献したい。
利益は、社会への貢献についてくるといわれている。
大企業とベンチャーは、競合ではなく共存できるはずだ」。

「研究者は、アカデミックなサイエンスと、サイエンスを生かす事業とを
区別して認識しなければならない」。
研究を事業に結びつけるのは、
発端となる基礎研究を行った研究者だけでは不可能で、
医療応用の実現までを事業として考える企業や人材に
うまくバトンを渡す必要がある。

「新しい知見が得られた時、
社会に還元するために何ができ、何ができないのかを、
研究スタッフと経営者が同じ目線で話し合える環境が必要。
松下、ソニー、ホンダなども最初はベンチャーだったが、
技術者と優れた経営陣の両面が揃っていたから成功したのだろう」。

バイオベンチャー事業の成功の鍵は、優秀な人材をいかに活用するかにある。
研究者が、自分のスキルや興味に応じて、大学、公的研究機関、
大手の民間企業、ベンチャーの間を自由に行き来できる体制が必要。
「難病の指定を受けている疾患の治療に結びつく事業を応援したい」。

自らの経験を生かし、経営陣やスタッフの
よきアドバイザーとして活躍する日々が続く。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=47

2007年12月19日水曜日

地球温暖化防止求める集会、世界各地で開催

(CNN 12月9日)

インドネシア東部バリ島で開幕した
気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)に合わせ、
地球温暖化の防止を求める集会が、世界50都市以上で開かれた。

フィリピンの首都マニラでは、風車付きの帽子をかぶったり、
太陽を模したダンボールの面をかぶった何百人もの人々が市内を行進。

台北では、1500人前後の人々が、二酸化炭素排出に抗議する
スローガンが書かれた横断幕やプラカードを掲げた。

バリ島のCOP13会場前でも、大規模なデモ行進があり、
ニュージーランドの首都オークランドでは、
350人以上が草地に横たわって「気候SOS」の人文字を描いた。

ベルリンのブランデンブルク門では、
氷の彫刻家が15トンの氷からシロクマを制作。
また、ドイツ各地で商店街が5分間消灯した。

ロンドン市内では、大勢の市民が、国会議事堂広場に
自転車で乗り入れる抗議行動があった。

参加者らはかけがえのない地球を守るよう求め、
COP13進展の足かせとなっているブッシュ米政権を批判した。
主催者は、この日の抗議行動の最後に米大使館前に移動する考え。

フィンランドの首都ヘルシンキでは、商店街のアスファルトの道路に
スキーを履いた50人前後が現れ、
雪が降る寒い冬を呼び戻すよう指導者らに促した。

米国でもマサチューセッツ州ウォルデン池で、50人規模の集会があり、
シロクマに扮した参加者などが大統領や議員らの真剣な取り組みを求めた。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200712090006.html

新しい波/251 野球独立リーグ/上 6チームで再出発

(毎日 11月3日)

四国アイランドリーグの運営会社IBLJの鍵山誠社長(40)は
今、安堵している。
昨夏から温め続けたリーグ広域化構想が、ついに実現。
「小さなリーグでは限界がある。
いろんな地域とアライアンス(同盟)を組み、
戦略的に運営しないと四国は孤立する」。

1年目は3億円、2年目は1億5000万円、
今季も1億円以内の赤字経営が続く。
経費節減が限界に達する中、経営基盤強化のために、拡大路線は必然。

日本初の独立リーグとして05年4月、4チームでスタートした四国リーグは
来季、長崎、福岡両県の新球団を加えた6チームで
四国・九州アイランドリーグ」として再出発。
将来的には、西日本で16チームへの拡大を目指す。

広域化の狙いは、対戦カードの充実による集客アップや、
市場拡大によるスポンサー収入増にある。
1球団当たりの遠征費用は、
約360万円増の年間1000万円に膨らむが、補える計算だ。

今季が3年契約の最終年となるメーンスポンサーの
四国コカ・コーラボトリング(本社・高松市)は、既にスポンサー継続を決めた。
橋本建夫社長(62)は、「6チームになれば、
ゲームの魅力が増してお客さんも増える。知名度もアップする」。

人口約400万人の四国から、長崎、福岡を加えた約1000万人のマーケットへ。
多くのスポンサーとの契約更新交渉は順調。
1試合平均の集客目標は、今季の1100人より400人増の1500人、
計36万人に設定。

ライバルリーグも広域化の道を歩む。
新潟、富山、石川、長野の4チームによる北信越BCリーグ
2年目の来季、群馬、福井両県の球団を含めた6チームに拡大。
新名称は、BCリーグとなった。

運営会社の村山哲二社長(43)は、
「6チームはプロスポーツの最低単位。土台づくりを進める」。

四国・九州リーグの所属選手は、四国リーグより80人増の計180人。
鍵山社長は、「独立リーグのパイを広げれば、
チャレンジできる若者も増える。競争にもまれることでリーグは発展していく」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20071103ddm035050036000c.html

質の良い研究室のウェブサイト作成は、研究室の世界をより明確に示す

(nature Asia-Pacific)

先進国の多くの人々にとって、インターネットは日常生活に浸透しつつある。
インターネットは買い物、お勧めのレストラン情報の入手、
休日の楽しみの検索に利用。
そう遠くない将来、研究者は就職先として最も望ましい研究室を
探すに当たって、いい所を物色し、自分を売り込むために
ウェブを利用するだろう。

ウェブサイトは、研究室とコンタクトを取る最初の接点である場合が多く、
研究室の活動を紹介するデジタルウィンドウのようなものである。

研究室のウェブサイトの多くは、研究プログラムを明らかにし、
研究員の名前と連絡先を記載している。

良いサイトは、共同研究を探す手段も提供している。
特に優れたサイトでは、将来研究員となる人々が、
過去および現在の研究員が
何を目的として研究を続けているかを知ることができる。

もし私が新しい研究室を検索するとしたら、
今までの研究員が研究責任者の指導の下で論文を発表しているか、
彼らが学術界、企業、政府機関を問わず、専門内外を含めて、
私自身が追求してみたい職業に就いているかを知りたい。

また、研究室の体質についても知りたい。
研究員達が仕事上、またプライベートで交流しているかどうか?
彼らにはユーモアのセンスがあり、協力の精神を持っているか?

こうした「最高の仕事」を探すために、
幹細胞研究者であり、ブロッガーでもある大学院生Attila Csordásは、
ブログ上で研究室のウェブサイトのコンテストを主催
(http://pimm.wordpress.com/)。

Csordásの見解によると、メディアの技術を最大限生かしている
研究室のウェブサイトはほとんどなく、
これらは研究室の業績や体質について検索者が知りたいと思っている
情報を提供していないという。

「大学の研究室のほとんどのウェブサイトが、進化した、最新の、
絶えず変化しているウェブの基準を満たしていない」

Csordásは、自分の研究分野の合格点に近いサイトを数例紹介しているが、
世界中の生命科学の研究室に、最高の研究成果を共有するように求めている。
この挑戦を受けて立つことは、
研究室がその実績を売り込む助けとなり、将来有望な若い研究者を
自分達の研究室に誘致することができるだろう。

NatureVol. 447, P. 347, May 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=13

2007年12月18日火曜日

低脂肪食は閉経後女性の卵巣癌発生率を低下させる可能性

(Medscape 10月17日)

低脂肪食パターンは、閉経後女性において卵巣癌の発生率を低下させる
可能性があることを示す研究結果が報告。

フレッド・ハッチンソン癌研究センター(Fred Hutchinson Cancer Research Center)
のRoss L. Prenticeらは、
「Women's Health Initiative [WHI] Dietary Modification (DM)
Randomized Controlled Trial(女性の健康イニチアチブ食事改良
ランダム化比較対照試験)において、
「低脂肪食パターンが、慢性疾患の発生率に及ぼす効果を
乳癌と大腸癌、卵巣癌と子宮内膜癌で評価した」。

1993-1998年に、閉経後女性48,835例がDM介入(n=19,541)または
通常食(n=29,294)にランダム化された。平均追跡期間は8.1年間。

DM介入の目的は、総脂肪摂取を消費エネルギーの20%に減少、
野菜、果物、穀物の摂取量を増加させること。
癌の転帰を確認し、重み付けしたログランク検定を用いて、
卵巣、子宮内膜の浸潤癌、全浸潤癌、他部位の浸潤癌の発生率を群間で比較。

通常食群と比較して、DM介入群は卵巣癌のリスクが低かった。
全卵巣癌のハザード比(HR)は、統計学的に有意ではないが、
HRはDM介入の期間が長くなるにつれて低下。
最初の4年間は、卵巣癌のリスクは両群とも同程度
(介入群0.52 対 対照群0.45例/1000人-年)。

しかし、次の4.1年間に、DM介入群では同リスクが低下
(介入群0.38 対 対照群0.64例/1000人-年)。
子宮内膜癌のリスクは群間に差がないが、
全浸潤癌の推定リスクは対照群より介入群の方がわずかに低い。

研究の限界として、
5種類の癌のリスクに関する多重比較のための補正が、
同知見の統計学的有意性を低下させた可能性、
全期間に介入効果の一貫性が認められず、効果の確実性が低いこと、
対照群より介入群で卵巣癌が早く検出された場合には
累積ハザード推定値が歪められた可能性。

「低脂肪食パターンは、閉経後女性において
卵巣癌の発生率を低下させる可能性がある。
DM試験は、全浸潤癌の減少の可能性も示唆。
被験者に対して非介入で追跡を継続しており、
低脂肪食パターンがこうした癌の発生率に及ぼす効果について
更に有益な評価が行える可能性がある」

J Natl Cancer Inst. 2007;99:1534-1543.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=58911

新しい波/250 ドーピング対策/下 高まる国の責任

(毎日 7月21日)

国際オリンピック委員会(IOC)は、
今月上旬にグアテマラで開いた総会でユース五輪の創設を決めた。
14~18歳を対象にした大会は、競技力を争うだけでなく、
五輪精神や反ドーピング(禁止薬物使用)などの
教育活動が盛り込まれている。
IOCのロゲ会長は、「若者への投資」と話した。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)の
「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」
(ユネスコ規約、2月1日発効)も継続的な教育の必要性を掲げる。

ドーピング防止活動は、検査による「取り締まり」だけでなく、
薬物に手を出させない教育も重要視。

国内でも、反ドーピング教育の議論は始まっている。
文部科学省と日本オリンピック委員会(JOC)などが主催した
6月のスポーツコーチサミットでも分科会テーマに取り上げ、
「学校での教育の充実」や
「薬物乱用防止キャンペーンなど社会運動との連動」などの手法が語られた。

だが、まだ学校教育では高校の保健体育の教科書で触れられている程度で、
教員や教材の確保など課題も。

日本は、ドーピング検査の陽性率が0・14%(05年)で、
その大半が不注意によるものとされる。
ドーピングへの危機感は海外ほどではない。

ただ、五輪の商業イベント化が進み、注目度や選手の報酬が高まる中、
選手にはますます勝利への重圧がかかる。

一方で、麻薬などの乱用も社会問題に。
取り巻く環境の変化を考えれば、
「容易にドーピングのリスクの高い国になる可能性だってある」と
日本アンチ・ドーピング機構の浅川伸事務局長は訴える。

12月には、国内初のナショナルトレーニングセンターが東京都北区に完成。
国としても、五輪でのメダル獲得に取り組み始めるだけに、
ドーピング対策の責任も高まる。

16年夏季五輪の東京招致は、
国内で反ドーピング教育を広げるチャンスでもある。
スポーツの価値を守る反ドーピング活動は、
オリンピックムーブメント(五輪精神を広げる活動)に通じる。

日本は、ユネスコ規約の批准をはじめ法整備では国際的基準に達した。
実際に、ドーピング対策にどう取り組んでいるかを示せなければ、
招致活動への国際的な理解も得られないだろう。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070721ddm035070063000c.html

2007年12月17日月曜日

国は違ってもポスドク過剰は同じ

(nature ASia-Pacific)

多くの政府が、GDPの大部分を研究開発に投資し、
活気ある科学文化を構築、維持しようと努力している。
最終的に国家、経済および社会全体に利益をもたらす
科学研究を奨励することがその目的であろう。
雇用機会創出にも目が向けられている。
ところが、過ぎたるは及ばざるがごとしということもある。

2000年までにポスドクを1万人にする、という
日本の大胆なイニシアチブの目的は、
科学関連の雇用創出を改善し発見を促すことであったが、
それは極めて重大な問題に直面。
今やポスドクが過剰となり就職口が不足している。

日本政府は1995年当時、若い研究者らが以前よりも独立性を高め、
独自の研究を行う機会を増やすために、
ポスドクの数を増やす必要があると認識。

計画より1年早い1999年にその目標は達成され、
2005年にはポスドクは1万5千人。61%は理工学専攻。
そして、アカデミックな正規雇用ポストの枯渇が始まった。

生物医学を初めとする米国の科学者にとって、
この一連の出来事は非常に身近であろう。

数年来、米国の学会および科学界のメンバーは、
ポスドクの過剰および新参者向けの研究職需要の不足を認識
(Nature 422, 354–355; 2003)。

日本と米国では文化は異なるものの、
ポスドク問題を解決しうる共通のテーマを持っている。

全米アカデミーによる「独立への架け橋」(Bridges to Independence)
呼ばれる2005年の報告では、いくつかの解決策が提言。
ポスドクは、自身の研究のための資金をできるだけ多く獲得し、
個々の研究責任者の下で働く時間には制限を課され、
そのタイムリミットを過ぎたら別の形態の正規従業員になるべき。

革新および発見、そして優秀な科学者のために持続可能な研究機会を
最大限に促進することを目的とした科学分野の労働力の調整にあたって、
各国は共通の課題に直面しているように思える。

Nature Vol. 449, P. 1083, 24 October 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=58

新しい波/249 ドーピング対策/中 厳格対応のIOC

(毎日 7月14日)

グアテマラで4日にあった国際オリンピック委員会(IOC)総会で、
ソチ(ロシア)が決選投票の末に、平昌(韓国)を上回って
14年冬季五輪の開催地に決まった。

国際大会の経験が豊富で知名度も高いザルツブルク(オーストリア)は、
第1回目の投票で敗れた。

ドーピング(禁止薬物使用)対策の不手際が、惨敗の決定打に。

オーストリアは、昨年のトリノ五輪でバイアスロンの男子選手ら6人が
ドーピング規則に違反した。
IOCは、4月の理事会で6選手を五輪から永久追放とし、
オーストリアに対する補助金100万ドル(約1億2000万円)支払いも差し止め。

検査では陰性だった6人を、「禁止薬物の所持」という状況証拠で
厳しい処分にしたことはIOCの断固たる姿勢を象徴。
その中で、IOC委員がザルツブルクを高く評価するのは無理があった。

IOCではこれまで、72年ミュンヘン五輪での選手村襲撃事件や、
東西両陣営による80年モスクワ、84年ロサンゼルス両五輪の
ボイコットの応酬など、五輪の存在を揺るがす危機的状況に対応。

近年のIOCの動きをみると、ドーピング問題も、
それらの事件と同じくらいの重みをもった懸案事項に。
競技の公平性と選手の健康を損なう危険は、スポーツの根幹にかかわる問題。

そうした状況の下、東京都が招致を目指す16年夏季大会も
反ドーピングへの姿勢が問われる。

日本は、IOCが立候補の前提としているユネスコ(国連教育科学文化機関)の
「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」を批准。
世界反ドーピング機関(WADA)の常任理事国でもあり、
アジア・オセアニア地域事務所も東京・国立スポーツ科学センター内にある。
検査の陽性率は0・14%(05年)と低く、クリーンなイメージも定着。

東京オリンピック招致委員会の河野一郎事務総長は、
日本オリンピック委員会アンチ・ドーピング委員長も兼ねる。
禁止薬物対策の重要性を認識しているだけに
「日本は、国際的には貢献度が高い。
ただ招致を実現するには今後、
国の協力など国内での取り組み強化が求められる」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070714ddm035070152000c.html

音楽が女性ホルモンと作用 性別で不安緩和効果に差

(共同通信社 2007年11月15日)

音楽を聴くと不安が和らぐ効果には、女性ホルモンの作用が関係し、
これが性別による効果の差を生んでいる可能性があることを、
徳島大の近久幸子・助教(環境生理学)らの研究チーム
マウスを用いた実験で突き止めた。

不安が音楽によって取り除かれるとの報告は多いが、
男性より女性で効果が強く現れる傾向があり、理由は不明。

高所で不安定な実験装置にマウスを入れて行動を分析。
メスにクラシック音楽を聴かせると、装置から落ちそうな場所を避けるなど
不安を示す行動が減った。

オスではこの効果がなく、女性ホルモンの一種プロゲステロンを
働かなくしたメスでも効果が消失。
この物質が、音楽による不安緩和に重要な役割を果たしており、
性別で効果の差が出る一因と結論。

マウスでは、単純な音階とリズムの組み合わせでも緩和効果がみられ、
近久助教は、「どのような聴覚要素が効くのか突き止めたい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=61394

2007年12月16日日曜日

第3部・科学者の倫理とは 私の提言/下 山崎茂明・愛知淑徳大教授

(毎日 12月9日)

科学におけるミスコンダクト(不正行為)は、
必ず起こりうる病気と考えるべき。

病気には、公衆衛生学的なアプローチ、
つまり大学を中心とした研究環境改善が解決の道であり、
倫理教育が重要な役割を果たす。
「ウソを言ってはいけない」と、説いたところでインパクトはない。
これまでの不正の事例に向き合い、何が問題で発生したのか背景を考え、
そこから学ぶ努力が大切。

日本の科学政策は近年、競争的な研究活動を促し、産学連携を推進。
その結果、大学は研究資金の獲得や金もうけに奔走し、
自身の首を絞めている。
こうした状況が、大学のよさをつぶしていると考える人は多い。
そうした問題意識を共有していかないと、国の方針に負けてしまう。

産学連携の功罪も、みていく必要。
企業から、研究助成金やコンサルタント収入を得るのは悪いことではない。
しかし、その企業に有利なデータを発表しようと考える人は当然いる。
こうした利害衝突(利益相反)が起こりうることを科学者に認識させ、
金銭的な関係を公開していくことが重要。

不正行為を、科学コミュニティーだけで解決しようというのはナンセンス。
自分たちの世界だけで何かをやろうというのは限界がある。
研究活動の多くは、税金である政府資金に依存しており、
社会や国民が政府による規制を求めれば、それを拒絶する理由はない。

例えば米国では、研究者が倫理教育プログラムを受講していないと、
国立衛生研究所(NIH)の研究に加われない。
これも規制の一つだろう。
NIHは、独自の倫理教育プログラムも持っている。
研究資金を配分する機関の役割はそれだけ大きい。

倫理教育では、科学論文などの著者の資格(オーサーシップ)
についても教えていくべきだ。
なぜなら、共著者同士による論文内容のチェック機能が、
不正の最初の防波堤になるから。

研究室トップを著者に入れるのは当たり前という日本の風潮は、
世界的な基準からみると妥当でない。
著者の資格をもっと厳しくみる必要がある。

不正行為によって、組織の何が問題なのかが浮かび上がってくる。
単に悪いことだと糾弾するのでなく、
若手もいきいきと研究できるような環境改善の一つの材料ととらえ、
前向きに取り組んだ方がいい。

私は、不正に手を染めた研究者自らが、
倫理教育の場で語るような時代がくればいい。
研究に携わる以上、不正行為をする可能性はだれにもあるからだ。

健康になったら、病気だったときの体験を語る、
それによって悩む人や将来ある人たちの力になれる。

米国の健康福祉省公衆衛生庁に属する研究公正局がまとめた
研究不正に対する調査報告書を読むと、
調査の過程も教育なんだ」と気づく。
不正行為をした研究者に聴取する中のやり取りで、
自分のしたことの重大性を自覚させる作業をしている。

日本の科学界も、こうした報告書に触れて、
どうやって対処すべきなのか学んでほしい。
==============
■人物略歴◇やまざき・しげあき

47年生まれ。専門は科学コミュニケーション。
東京慈恵会医科大医学情報センター講師を経て、99年から現職。
近著「パブリッシュ・オア・ペリッシュ 科学者の発表倫理」(みすず書房)。

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20071209ddm016040026000c.html

新しい波/248 ドーピング対策/上 基準、世界レベルに

(毎日 7月7日)

来年の北京五輪を目指す選手は、パソコンが必需品に。
選手は、アンチ・ドーピング(反禁止薬物使用)管理システム
「ADAMS」にアクセスして練習場、自宅など
「居場所情報」を日常的に提供し、抜き打ち検査に備えなければならない。

検査を実施する日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によると、
ADAMSには日本オリンピック委員会(JOC)の
強化指定選手ら約1000人が登録。

悪質な違反例が少ない日本の選手には窮屈とも思えるシステムだが、
抜き打ち検査をはじめとする厳しいドーピング対策は今や世界の大きな流れ。

かつて取り組みの遅れが指摘された日本も、
国際的な流れに沿って対応を急ぎ始めた。
政府は昨年12月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が定めた
「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」(ユネスコ規約)を締結。

03年3月に採択された世界反ドーピング機関(WADA)規定に基づいた
スポーツ団体の自浄作用だけではなく、
国を挙げて取り組む宣言をしたことを意味。
世界では56カ国(6月1日現在)が締結。

文部科学省は、今年5月9日に
「スポーツにおけるドーピングの防止に関するガイドライン(指針)」を策定、
JADAも日本ドーピング防止規定を発効。
いずれも、WADA規定に準じたもので考え方に大きな違いはない。

しかし、指針には、選手が違反で処分されたり、指針を順守しない時に、
所属競技団体などへの補助金を停止することが盛り込まれた。
居場所情報の提供も、競技団体の義務として挙げられたもので、
守らなければ補助金が止まる。
国を挙げての取り組みであることを反映した項目。

防止規定でも、違反した選手への聴聞会の実施主体が
従来の競技団体からJADA規律パネルに変わった。
これで公平性が確保され、競技団体による「身内に甘い」処分はできない。

JADAの浅川伸事務局長は、
「世界で日本だけが低調な取り組みでいいはずはない。
これで日本も国際基準に達した」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070707ddm035070078000c.html

研究室におけるエコ志向の重要性

(nature Asia-Pacific)

最近、エコ志向がよく叫ばれている。
エコ志向とその研究の発信拠点となることが多い大学では、
科学研究所も含めて、自己点検と自らの活動の実態調査。
ほとんどの大学は、さらなる低消費化とエコ化に耐えうるだろう。

科学者達は、自分たちが日常活動でどうエネルギーを使っているか、
エネルギー効率を上げるためには何ができるかを考え始めるべき。

これは、必ずしも簡単ではない。
研究責任者には既に多くの仕事がある。
研究、交付申請、雇用、時には教育も。
その上に炭酸ガスの排出削減。こんなに小さい研究室で?
とは言っても、研究室には無駄な消費が多いことは明らか。

Natureの記事(Nature 445, 590–591; 2007)で指摘されているように、
従来型のドラフトは年間で米国の3世帯相当分のエネルギーを消費。
イリノイ州バタビアの米エネルギー省フェルミラボでは、
毎月の電気代に100万ドルを費やしている。

英国では、People and Planetと呼ばれる学生グループが、
最もエコな国内の大学をランク付けし、
The Times Higher Education Supplementにそのリストを発表。

当グループは、「エコ通学計画」、移動手段での対策努力、
再生可能資源からのエネルギー回収の実施などの要素をランク付け。
1位となったのはリーズメトロポリタン大学であった。

米国では、政府主催の組織Labs21が、
効率の良い研究室設計や設備について科学者に助言。
国内の大学および専門大学の学長らがClimate Commitmentを発表。
参加大学は、気候変動への対策を始めることを約束。

例えば、参加すると1年以内に、光熱使用、通勤通学、航空機利用による
大学からの温暖化ガスの総排出量の一覧をまとめる。

これまでに、280大学が本誓約に参加。
科学者や研究室は、反エコ的活動の主犯格というわけではないが、
しかし対策の一翼を担うのは当然である。
つまり、既に山積みの日常業務に「エコ活動」を追加すること。

Nature Vol. 447, P. 1027, June 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=29

2007年12月15日土曜日

マラリア対策に340万ドル ゲイツ氏助成、愛媛大参加

(共同通信社 2007年12月5日)

愛媛大は、マラリアのワクチン開発を進めている国際研究チームに、
米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長らが運営する慈善団体が、
340万ドル(約3億8000万円)を助成することになったと発表。
 
オーストラリアの研究所が、病気の原因となるマラリア原虫の
遺伝子を絞り込み、愛媛大の遠藤弥重太教授らが
標的となるタンパク質を合成。
ワクチンの役目を果たす抗体をつくり動物実験で効果を確かめる。

発展途上国を中心に、毎年200万人超がマラリアで死亡。
遠藤教授らは、「実用化されたマラリアのワクチンはまだない。
根絶のためにも今回のプロジェクトは非常に重要だ」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63539

理系白書’07:第3部・科学者の倫理とは 私の提言/上 浅島誠・東京大学副学長

(毎日 12月2日)

科学者は、いわゆる「象牙の塔」にいて、社会と距離を置いてきた面がある。
だが、今は、先端的な医療技術が生命倫理を巡る議論を引き起こすなど、
科学技術が社会生活に大きな影響を与える。
地球温暖化問題のように、一分野の科学の域を超えて
政治的、社会的な問題になっている分野も。

社会に対するインパクトが増大するにつれ、科学者の責任も大きくなっている。
にもかかわらず、近年、国内外の著名な大学や研究機関で、
論文データの捏造などの不正が続発。

不正行為は、「どんな業界にもルールを破る人はいる」と、
軽く見過ごすことはできない。
科学者コミュニティー全体、ひいては科学という
営み自体に対する信頼を損なうことに。

国民から、「科学者に任せておいたのでは、何をするか分からない」と
思われていては、社会生活に直結するような研究は成り立たない。

そこで、科学者コミュニティーを代表する日本学術会議が
06年にまとめた「科学者の行動規範」では、
自ら規範を示してそれを守っていく「自律と説明責任」の大切さを強調

研究を束縛・規制するものではなく、
科学者が自律性を発揮し、透明性を高めていかなければ、
国民の信頼を取り戻すことができず、結果的に研究も進められない、
というメッセージだ。

大学の独立法人化などで、研究環境は大きく変わった。
最近は、科学コミュニティー全体が研究費を獲得したり、
次のポストを得るために、何かに追われるように
仕事をしているように感じられてならない。

短期間で成果を求める傾向が強まり、
不正行為の背景となる側面がある。
研究効率を求めるあまり、極端な分業体制を取り入れると、
隣の人が何をしているのかも分からなくなる。
指導者の望み通りの結果が出れば、十分な検討や議論もないまま
発表するというようなことも起こりうる。

重要なのは、研究室をオープンな雰囲気にすること。
指導者の主張や隣のグループの実験結果にも、
自由に議論ができる雰囲気があれば、
データ捏造やアカデミックハラスメントなどの問題は起こりにくい。
日ごろからそういう雰囲気に慣れていれば、
学会の場でも感情的にならず、学問上の真の批判や討論ができる。
これが、専門家による相互チェック機能として働き、
疑念を持たれるような研究は淘汰される。

本来、科学の研究とは知的冒険であり、独創性を持って
自らの課題に挑戦し情熱を傾けることのできる楽しい作業であるはず。
若い研究者がいきいきと希望を持って研究できるような環境を、
自分たちが主体となって社会と一緒に作っていかなければならない。

==============
■人物略歴

44年生まれ。東京大教養学部長などを歴任。専門は発生生物学。
89年、受精卵がさまざまな器官に分化するのを誘導する物質
「アクチビン」を発見。日本学術会議副会長も務める。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/12/02/20071202ddm016040053000c.html

新しい波/239 広がる人工芝/4止 撤去問題は停滞

(毎日 4月28日)

関西にある私立大学の人工芝グラウンドは、メーカーの予測が外れ、
施工からわずか3年足らずでダメに。
最大の原因は、使い過ぎだ。

本来ならば、はがして張り替える代わりに、
旧タイプの上に新タイプの人工芝を載せた。オーバーレイ工法という。

耐用年数が過ぎた人工芝は大抵、産業廃棄物として処分。
サッカー場の場合、撤去処理費用として約1000万円かかるという。
オーバーレイ工法によって費用は浮いた。
だが、そのメーカーの担当者は、「何度もできるわけではなく、
問題を先延ばしにしているだけ。根本的な解決にはなっていない」。

劣化はしても、消滅しない人工芝。
将来、どんなに品質や性能が向上しても、この点だけは、
自然の産物である天然芝を超えられない。

撤去処理問題が、「一番の懸案事項」であることはメーカーも認識。
衝撃を吸収する充てん物(目砂やゴムチップ)を、
ポリエチレン素材の人工芝と分離してリサイクルに回すことが検討。
開発に着手しているメーカーもあるが、問題はコスト。

あるメーカーは、「リサイクルできる原料をどれだけ使うか。
お金をかければリサイクルは可能だが、製品に反映され、ユーザーに負担が。
どの製品でも、最近はリサイクルが言われている。
メーカーとしては『できません』とは言えない」。

来年開催の大分国体でラグビー会場となるグラウンドは現在、
天然芝から人工芝への工事中。
天然芝の場合、維持費が年間約800万円。
人工芝の施工費は、2面(約2万2000平方メートル)で約2億5000万円。
大分県由布市の国体推進室は、「安全性や耐久性のほか、
環境への配慮など総合的に判断した。
その際、張り替えをどうするかという話は出なかった。
使用規定を作ったり、管理をよくしたりして、できるだけ長く持たせたい」。

人工芝のリサイクルについて、自治体などユーザー側の意識はまだ高くない。
だが、今後、張り替え需要が出てくるにつれて
社会問題化する可能性は十分、ある。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070428ddm035070019000c.html

2007年12月14日金曜日

5歳チンパンジー、短期記憶の能力は人間の成人上回ると

(CNN 12月4日)

わずか5歳のチンパンジーが持つ短期記憶の能力は、
人間の成人をはるかに上回ることを、
京都大学霊長類研究所の松沢哲郎教授が発表。

松沢教授は、世界で初めて、
「チンパンジーの子どもの記憶能力が、チンパンジーのおとなよりも、
さらには人間のおとなよりも優れている」ことを示した。

大人と子供のチンパンジーに、1~9までの数字の順番を教え込ませ、
コンピュータのディスプレイ画面に表示された数字を
順番通りに触れるように訓練。
その後、画面に数字を表示させたところを見せ、
さらに数字を白い四角に置き換えても、数字の順番通りに触れば、
四角が消えていくテストを実施。

その結果、数字の表示時間をどんどんと短くしていっても、
チンパンジーの子供3頭は、ほぼ一瞬でどの数字が
どの場所にあったかを記憶出来たという。

一方、同様のテストを人間の成人で実施すると、
チンパンジーの子供にかなわなかった。

特に、一番成績の良かった5歳のチンパンジー、アユムは、
9個の数字を約0.7秒で記憶。
人間の成人は誰も記憶できない時間だった。

松沢教授は、アユムたちチンパンジーの子供の能力が、
人間の子供でも知られている「直観像記憶」に似ていると指摘。
人間でもまれに、複雑なパターンの細部を一瞬見ただけで
記憶できる子供がいるが、年齢が上がるとその能力が減退するとして、
人間の脳の進化を知る手がかりになる。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200712040016.html

新しい波/238 広がる人工芝/3 体への負荷増大

(毎日 4月21日)

同志社大学の京田辺キャンパス。
風が吹くと、砂ぼこりが舞っていたラグビー部のグラウンドが今週、
ドイツ製の人工芝に生まれ変わった。

中尾晃監督は、「理想は天然芝」というが、
100人を超える部員が毎日、足を踏み入れることを考えれば、ベターな選択。
地面に落ちているボールへの反応は、土と芝では格段に違う。
けがへの不安や恐怖心、ためらいがなくなり、
技術の向上に役立っていることは、複数の指導者や選手が明言。

世界の普及状況を考慮して日本ラグビー協会は04年、
丈の長いロングパイル人工芝を導入する際のガイドラインを作成。
日本サッカー協会も、03年に人工芝の公認規定などを作成。
サッカーは現在、国内約50カ所のピッチが公認。
両協会とも、人工芝はあくまでも天然芝の代用品である、との立場だ。

人工芝になって、すり傷や打撲などが減った代わりに
足首のねんざのほか、じん帯や半月板損傷などのけがが多くなった
との声がメーカーにも寄せられている。
スクラムを組んだ際、芝がめくれることで選手にかかる力を逃す天然芝に対し、
人工芝はスパイクの引っかかりが強いため、
選手への負荷が天然芝より大きく、腰やひざ、足首の故障を誘発しやすい。

あるメーカーは、導入数カ月間は人工芝の上を裸足で歩くことを勧めている。
足の裏で芝をつかむ感覚に慣れれば、
スパイクを履いた時に力の加減が分かる。
担当者は、「土のグラウンドと違う筋肉を使うので、そこに疲労がたまる。
あらかじめ刺激してやれば、早く順応でき、けがが少なくなる」。
これは、天然芝にも共通する考え方。

ラグビー19歳以下日本代表のフィットネス&コンディショニングを担当する
下農裕久コーチは、けがの予防策として
ウオーミングアップでストップ、ターンを重視。
「普段、土で練習している高校生にとって環境の変化は大きい。
今は大きな問題が起きているわけではないが、考慮しないといけない」。

けがの分析など検証を進めながら、
人工芝との正しい付き合い方を探る段階にきている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070421ddm035070132000c.html

生活習慣病やがんの年代間伸び、「40-50代」最大 1人当たり医療費

(毎日新聞 2007年11月15日)

都民1人当たりにかかった医療費のうち、
生活習慣病やがんの年代間の伸びは、「40~50代」が最も大きいことが、
都福祉保健局が発表した医療費分析報告書で分かった。

「40代からの予防の取り組みが重要」と結論、
都の医療費適正化計画にこうした分析結果を生かす方針。
都が都民の医療費を詳しく分析するのは今回が初めて。

▽都国民健康保険団体連合会から昨年11月分のレセプト
(診療報酬明細書)437万6664件、
▽被用者保険2組合からレセプト計7万5360件、
の提供を受け、双方を比較したところ、
年齢階層別の疾病構造が同様の傾向だったため、
国保の医療費データを使って特徴を探った。

40代以上の1人当たりの医療費の伸びを年齢階層別に見ると、
生活習慣病の一つの高血圧性疾患は
「40~50代」が3・3倍に上ったが、「50~60代」は1・7倍にとどまった。
脳梗塞も「40~50代」が3・3倍、胃がんも2・8倍と伸びが大きい。

一方、05年度の都民医療費の総額は2兆8124億円で、
このうち70歳以上の老人医療費が約4割の1兆1344億円。
都の人口の将来推計では、75歳以上の高齢者は05年の98万9000人、
25年には2倍超えの205万5000人になり、老人医療費の激増が予想。

また、都民1人当たりの医療費は23万5000円で全国32位、
入院医療費は8万2000円で同43位、
入院外医療費は13万1000円で同13位。

都内は人口比の病床数が全国平均より少なく、
一般診療所が多いことなどから、入院医療費が低くなった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=61445

2007年12月13日木曜日

消石灰で視力障害98件 学校でライン引き使用 文科省、初の注意通知

(共同通信社 2007年12月3日)

運動場のライン引きなどに使っている消石灰(水酸化カルシウム)が、
児童生徒の目に入り視力が低下するなどの障害が残ったケースが、
これまでに98件あったことが、日本眼科医会の調査で分かった。
文部科学省は、より安全性の高い炭酸カルシウムに変えるよう
求める初の通知を出した。

消石灰は、強アルカリ性で、目に入ると角膜や結膜が損傷。
日本眼科医会は、「実際、もっと多くの事故が起こっているとみられる」。
消石灰の使用を禁止するよう呼び掛けている。

調査は今年9月、学校医や教委への聞き取りなどで実施。
小中高校での消石灰の使用や事故の有無などを聞いた。
管内の学校で、消石灰を使っているとしたのは29支部。
「ほとんどで使用」10支部、「半分ぐらい」4支部、「一部」15支部。

「視力障害が残った症例を経験したことがあるか」との問いに、
18支部から計98件の報告。
症状の内容は問わず、過去2年間に限れば、
消石灰が目に入って医師の診察を受けるなどした事故は、
18支部で計51件。
原因は、「風による飛入」が最も多く、「器具の横転」、「ふざけて遊んでいて」順。

日本眼科医会は、弱アルカリ性でより安全な炭酸カルシウム
使うよう文科省に要請。
文科省は、これまで学校安全に関する参考資料で、
石灰の取り扱いの注意を促すにとどまっていたが、今回の通知に。
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▽消石灰

生石灰(酸化カルシウム)に水を反応させてつくる
水酸化カルシウムを主成分とし、運動場などのライン引きのほか、
酸性化した土を中和させる改良剤などに使用。
強アルカリ性のため、目に入ると角膜などを傷つけ、失明するケースも。
消毒作用もあり、鳥インフルエンザが発生した場に散布。
2004年度の国内消費量は、約60万トン。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63290

統合失調症に関与の遺伝子特定

(毎日 2007.11.13)

幻覚や妄想などの統合失調症に関与するとみられる遺伝子を、
理化学研究所の吉川武男チームリーダー(精神医学)を中心とする
グループがマウスの実験で突き止め、発表。

この遺伝子は、脳でドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸と
結び付くタンパク質をつくる「Fabp7」。
脳が発達する胎児期に、これらの脂肪酸が不足したことが
発症に影響している可能性を示す。
確認されれば、妊婦への栄養指導による発症予防にも道を開く。

大きな音を聞く直前に小さな音を聞くと、
通常は大きな音だけのときより驚き方が小さくなるのに、
統合失調症患者では驚きが変化しにくいことに着目。

マウスの中にも、患者のように驚きが変化しにくいタイプを見つけ、
正常に反応するマウスと比較し、
この反応をつかさどる遺伝子がFabp7であることをまず突き止めた。

この遺伝子は通常、脳の発達期に働きが高まり、成長後は低下するが、
驚き方が変化しないマウスでは逆に、脳発達期に働きが低下し、
成長後増加していた。
Fabp7を持たないマウスをつくって調べると、
脳の発達期に神経細胞の増殖が低下。

死亡した大人の統合失調症患者の脳でも、
この遺伝子の働きが高まっていたことなどから、
グループは原因遺伝子の1つと判断。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071113/trd0711131012001-n1.htm

新しい波/237 広がる人工芝/2 耐久性が課題

(毎日 4月14日)

ひねって、こすって……。
衝撃吸収性や手触り感は天然芝に限りなく近く、
より耐久期間の長い製品を開発するためのラボテストが繰り返される。
スポーツ用人工芝のシェアでは国内トップにある、
SRIハイブリッドの加古川工場を訪ねた。

スポーツ人工芝ビジネスチームの西川知幸課長は、
耐久年数について「最近は7年から10年」。
天然芝と比べて約3倍かかる初期投資額(施工費)、
約10分の1の年間維持費を勘案すると、
最低でも7年は持たせないとコスト面のメリットが生じない。

だが、天然芝のグラウンドがあちこちにあって
人工芝は補完的な役割にとどまる欧州と、
人工芝が土のグラウンドを代替する日本とでは、事情が異なる。
西川課長は、「日本の使用頻度は(欧州の)5倍」。

都内にあるサッカー場の場合、1日12時間の使用で休日は月1回程度。
ある大学では、体育会の課外活動だけでなく、正課(体育)の授業でも使用。
踏みつけによる倒伏、変色など、ヘビーユース(使い過ぎ)によって劣化は加速。
人工芝は永遠に不滅、ではない。

人工芝のスタジアムでプロサッカーの公式戦も行われる欧州では、
耐久性よりも、ボールの転がりや跳ね方、
スライディングによるやけど防止など、プレー性が重視。
欧州スペック(仕様、性能)の人工芝をそのまま持ち込んでも、
日本では具合が悪い。

天然芝の葉茎に当たる部分は、ヤーンと呼ばれるポリエチレンベース素材。
それを用途に応じ、分量や間隔、長さを変えて、布に縫い付ければ、
人工芝が出来上がる。
ヤーンはテープ状で、縦に引っ張る力には強いが、横には弱い。
各メーカーは、厚みを増すなどして、摩耗しても先割れしにくい
ヤーンの研究開発にしのぎを削る。

JIS(日本工業規格)のように、品質や形状などが定量化できれば、
開発目標は明確になる。
「だが、使う人の感覚で優劣が決まる製品なので難しい」。

本格的な導入が始まって5、6年。
客観的な基準を確立するには、もう少し時間が必要。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070414ddm035070046000c.html

2007年12月12日水曜日

世界最小のクマ、マレーグマが絶滅の危機

(CNN 2007.11.14)

世界で一番小さなクマとして知られるマレーグマが、
森林伐採や密猟のために絶滅の危機に瀕していると、
国際自然保護連合(IUCN)が報告。

マレーグマだけではなく、世界各地に生息する
クマ8種のうち6種が絶滅の危機にさらされている。

マレーグマは、インドからインドネシアにかけての
東南アジアに生息するクマ。
体長は1.2メートルほど、体重は40─54キロほどで、
クマの仲間でも最も小さいことで知られる。
IUCNによると、マレーグマの個体数は過去30年間で30%まで急減し、
現在も同じ速度で減少している。
現在の生息数は、推定で約1万頭。

森林伐採による生息場所の減少のほか、
漢方薬の原料として密猟が絶えないことから、数が減り続けている。
東南アジアで唯一タイだけが、森林伐採と密猟を禁止し、
厳重な取り締まりを行っており、タイにおける生息数は安定している模様。
しかし、それ以外の国では、ほとんど対策が取られていない。

IUCNはマレーグマのほか、北極圏に生息するホッキョクグマや、
アジア各地のツキノワグマ、インドのナマケグマ、南米のメガネグマが、
いずれも絶滅の危機にあると警告、何らかの対策が必要だと訴えている。

一方、北米に広く生息するヒグマやアメリカグマは、絶滅の恐れはないとしている。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200711140028.html

エコノミー症候群:大半は女性 「トイレ行きたくない」水飲まず--日医大が分析

(毎日 12月2日)

長時間の空の旅などで起きる「肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)」は
女性客に集中的に発生していることが、
日本医科大千葉北総病院など成田空港利用客のデータ分析で分かった。

同病院は、「女性患者には、トイレに行きたくないから水分を取らなかった
という人が多い。水を飲まないのはよくない」。

分析は、94年1月~07年7月、重症の循環器病のため
成田国際空港クリニックから同病院の集中治療室に転送された
旅客72人(男性38人、女性34人、平均年齢59・7歳)を対象。

最も多かったのは、エコノミー症候群で31人。
急性心筋梗塞23人、原因不明の胸痛5人、
うっ血性心不全と不整脈各3人が続く。うち2人は、病院で死亡。

エコノミー症候群の31人のうち、29人は女性。
31人中27人は、帰りの飛行機着陸後に発症。

一方、急性心筋梗塞は23人中20人が男性。
発症時期は、行きの飛行機に乗る前が7人、行きの機内4人、
渡航先滞在中7人で、往路や滞在中が多い。

エコノミー症候群は、長時間同じ姿勢をとることで、
足などにできた血栓が肺の静脈に詰まり、呼吸困難になることも。
女性は更年期を境に、血液が固まりやすくなる。

同病院の畑典武・集中治療部長は、
「肺血栓塞栓症を起こした女性患者の中には、10時間以上
一度もトイレに行かなかった人もいる。
じっとしていれば血流が悪くなるし、脱水状態は血栓ができやすい」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/12/02/20071202ddm041040095000c.html

新しい波/236 広がる人工芝/1 維持費も1/10以下

(毎日 4月7日)

初めてピッチに足を踏み入れた時、
サッカー元日本代表主将の宮本恒靖は戸惑った。
ボールの跳ね方が、天然芝とは違うような気がした。
移籍したオーストリア1部リーグ、ザルツブルクの本拠地
ブルズ・アリーナは人工芝。

このドイツ製の人工芝は、国際サッカー連盟(FIFA)の最高規格
「ツースター」の認定を受けていて、国際試合もできる。

同じ製品を国内で輸入販売しているのが、積水樹脂
「安全性だけでなく、初期と同じ状態でプレーできるよう耐久性も重視」。
葉茎に相当する部分が短く、
スライディングするとやけどが付き物だった「第1世代」、
クッション用の砂をまいてテニスコートなどに多用された「第2世代」を経て、
現在は丈の長い(5~6センチ)ロングパイルと呼ばれる「第3世代」が主流。

安全性や耐久性、プレー性が高まったことで、
ラグビーでも社会人や大学を中心に人工芝導入が相次いでいる。

国内トップシェアを誇る、住友ゴムグループ「SRIハイブリッド」の担当者は、
「市場は、倍々ゲームで伸びている」。
施工面積は、5万平方メートル(00年度)から10万(01年度)、20万(02年度)、
40万(03年度)、70万(04年度)、110万平方メートル(05、06年度)。
この2年間の件数は、170(05年度)から200(06年度)に。
市場規模は、100億~200億円。
人工芝は、サッカー場1面の場合、
施工費は天然芝の約3倍、1億~1億5000万円。

年間の維持費になると、1000万~1500万円の天然芝に対し、
人工芝は50万~100万円程度で済む、というのがセールスポイント。
サッカー、ラグビーの有力チームについては、ほぼ行き渡った。

次なるターゲットは、流行のフットサル。
「そして、学校の校庭が人工芝になると、面白い市場が形成される」
とあるメーカーの担当者。
今後の張り替え需要を含めると、
施工面積は年間140万平方メートルまで達する、と予測。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070407ddm035070105000c.html

2007年12月11日火曜日

野口英世アフリカ賞初受賞者、来年3月決定 記念講演は地元福島で

(毎日新聞社 2007年12月5日)

アフリカの医学、医療分野で優れた功績を残した人を
国が表彰する「野口英世アフリカ賞」について、
初めてとなる授賞者を来年3月に決定すると発表。

猪苗代町出身の野口英世(1876-1928)を顕彰し、
小泉純一郎元首相が発案した賞で、
受賞者の講演会を出身地で開催することも検討。

同賞は、医学研究、医療活動の2部門で構成。
アフリカの人々の健康や福祉の向上に貢献し、
推薦委員会が推した人の中から、
各部門1人(共同研究では最大3人)に賞金1億円を贈る。

内閣府は同賞担当室を設けており、大山研次・同室長補佐によると、
国内外の100を超える個人・団体の推薦が挙がっている。
年内に候補者を各部門3人に絞り、来年2月に同賞委員会で各1人を選出。
同3月に授賞者を最終決定する。

授賞式は、来年5月に横浜市で開かれる国際会議
「第4回アフリカ開発会議」に合わせて行う予定。

さらに同月、受賞者の記念講演会を、
ゆかりの猪苗代町か隣接する会津若松市内で開催する計画。

国は賞金計2億円のうち、1億円は寄付金で賄う方針だが、
これまで集まった寄付は約2000万円強という。
「野口英世アフリカ賞を、ノーベル賞に匹敵する賞にしたい。
人類の平和に貢献する趣旨で、一人でも多くの人に募金してもらえれば」。
募金は個人が1口1000円、団体は1口10万円から。
問い合わせは内閣府の担当室(03・3539・8902)。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63592

スポーツ界から地球温暖化防止を発信!JOC竹田会長らが鴨下一郎環境大臣を表敬訪問

(みんなで止めよう!温暖化 2007年12月4日)

チーム・マイナス6%に協力している、
財団法人日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恆和会長、
水野正人副会長、JOCスポーツ環境専門委員会の板橋一太委員長、
そしてJOC環境アンバサダーの松岡修造さんは、
鴨下一郎環境大臣を表敬訪問。

竹田会長は、「JOCにおいても、加盟スポーツ団体及びスポーツ選手を
通じた温暖化防止の啓発活動に積極的に取り組んできたが、
今後、スポーツ大会や団体活動において
環境保全活動をより強力に推進し、CO2排出削減に向けた
具体的なアクションを実施していく」。

鴨下環境大臣への表敬訪問を終えた竹田会長は、
「環境保全は、スポーツ界にも密接な関係があります。
2016年のオリンピック招致は、立候補している都市がいかに
環境問題に取り組んでいるかがキーポイント。
オリンピック招致に向けて、環境省にも協力をお願いした」。

JOC環境アンバサダーの松岡さんは、
「自分がテニスプレーヤーとして、過去一度だけ棄権した原因が
光化学スモッグだったこともあり、
スポーツが環境と密接な関係にあることを実感している。
スポーツ選手として、ルールを守ることはとても大切なことだから、
環境保全についてもきっちりルールを守っていくべき」と、
温暖化防止活動への強い決意。

http://www.team-6.jp/report/movement/2007/12/071204a.html

大腸がんの細胞増殖を抑制するmiRNAを発見

(nature Asia-Pacific)

国立がんセンター研究所生化学部 中釜斉副所長
土屋直人研究員、田澤大研究員

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RNAの研究が進むにつれて、タンパクをコードしない
ncRNA(non-coding RNA)の役割が注目。

代表的なncRNAの一つであるmiRNA(micro-RNA)については、
細胞の増殖やアポトーシスなどとの関係が徐々に明らかになり、
とくにがんの発生や増殖に関する研究が盛ん。

実験的に用いるsiRNAは、特定の遺伝子のmRNAに結合して
mRNAを分解するのに対し、
miRNAの場合は標的となる遺伝子が1種類のmiRNAにつき
100~200種類あると推定。
miRNA前駆体は、ヘアピン型のループ構造を持ち、
最終的に成熟したmiRNA が、RISC(RNA induced silencing complex)
と呼ばれる、タンパク・核酸の複合体とともにmRNAに結合し、
mRNAからタンパクへの翻訳を抑制する。

ヒトmiRNAは、現在500種ほどが同定されているが、
未知のmiRNAがさらに同数ほど存在する可能性が。

国立がんセンター研究所の中釜斉副所長らのグループは、
大腸がんに関して、培養細胞の増殖を抑制し、
患者のがん組織で発現低下しているmiRNAを同定。

大腸がんの培養細胞HCT116を、アドリアマイシン100ng/mlで処理して
細胞増殖を抑制し、16時間後に発現上昇しているmiRNAの同定を試みた。
アドリアマイシンは、DNAにダメージを与える作用があり、抗がん剤として使用。
100ng/mlでは、HCT116細胞の増殖は止めるが、アポトーシスは起こさない。
解析したmiRNA157種類のうち、アドリアマイシン処理後に
発現が2倍以上に上昇したものは、7種類。

反復実験により、再現性をもって発現誘導されるものとして、
miR-34a、miR-34b、miR-34cのmiR-34ファミリーを同定でき、
最も安定的に発現していたmiR-34aは、
アドリアマイシン処理後8時間で約3倍、48時間で約10倍にも増加。

この結果、miR-34ファミリーは細胞増殖と関係するmiRNAと考えられた。

大腸がん培養細胞HCT116では、がん抑制遺伝子p53が正常に働き、
アドリアマイシン処理後、miR-34a発現量の増加に先行して、p53が蓄積。
p53が変異している別の大腸がん培養細胞では、
アドリアマイシン処理後もmiR-34aが誘導されないことから、
「大腸がんでは細胞増殖の停止の際、miR-34aがp53蓄積に連動して働く」。

miR-34aが細胞増殖を止める可能性を検証するために、
HCT116と別の大腸がん培養細胞RKO(p53は野生型)に
それぞれmiR-34aを導入したところ、予想通り細胞増殖が抑えられた。
このときの遺伝子発現変化を、マイクロアレイで網羅的に調べると、
発現が抑えられた287遺伝子の中に、細胞周期や細胞増殖に関わる
E2F転写因子E2F-1、E2F-2と複数のE2Fターゲット遺伝子が含まれていた。

E2F-1のタンパク量についてHCT116とRKOで調べると、
miR-34aの導入により発現が抑制されることが確認。
miR-34a未導入細胞(コントロール群)と比べ、
導入細胞では細胞周期が止まり、細胞そのものが肥大化。
これは、細胞老化に特徴的な現象であることから、
細胞老化の指標であるSA-β-ガラクトシダーゼで染色すると、
老化様の変化を起こしていた。

「miR-34aは、E2F転写因子やそのターゲット遺伝子の発現を
抑制することで、細胞の増殖を止め、がん細胞を老化様に変化させる」。

ヌードマウスに、大腸がん培養細胞を移植して腫瘍を形成させ、
miR-34aを導入したところ、HCT116細胞では6日間、
RKO細胞では4日間、腫瘍の増殖がほぼ停止。

国立がんセンター中央病院で施行された大腸がん手術で得られた
大腸がん組織検体25症例中9症例(36%)で、miR-34aの発現低下。
「大腸がんでのp53遺伝子変異の頻度が4~5割であり、
36%というのは高い数値」。

世界の6グループから、p53による細胞増殖抑制やアポトーシス誘導作用への
miR-34の関与を示唆する論文が発表。
miR-34のp53による発現制御に関しては意見が揃いつつあるが、
miR-34aの細胞増殖抑制や細胞老化・アポトーシス誘導のメカニズムは未解明。

生化学部では、すでに大腸がん以外の培養細胞でも
miR-34aが細胞増殖を止めることを確認。

「今後は、miR-34aが細胞増殖を止めるメカニズムと発がんとの関連を解析し、
miR-34aによる細胞増殖抑制にRISCがどう関わっているかを明らかにしたい」。
miR-34aを突破口に、発がんの新たなメカニズム解明に向けて、
研究が始まっている。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=62

2007年12月10日月曜日

万能細胞で貧血治療 米研究チーム、マウスで 再生医療実現へ前進

(毎日新聞社 2007年12月7日)

貧血症のマウスの皮膚細胞から作った万能細胞
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を使い、貧血症を治療することに、
米国の研究チームが成功。
iPS細胞を使い、動物の病気の治療に成功したのは世界で初めて。

すでに京都大などのチームが、ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作ることに
成功しており、再生医療の実現へまた一歩前進。

米マサチューセッツ工科大などの研究チームは、
「鎌状赤血球貧血症」のマウスの尾から皮膚細胞を採取。
京都大のチームと同じ四つの遺伝子を導入して、
さまざまな細胞に分化する能力のあるiPS細胞を作った。

四つの遺伝子のうち、一つはがん遺伝子だったが、
ウイルスを使って特殊な酵素をiPS細胞に導入し、この遺伝子を取り除いた。

次に、iPS細胞の中にある貧血の原因遺伝子を健康な遺伝子に組み換え、
赤血球や白血球など血液のさまざまな細胞を作り出す
元となる造血幹細胞に分化させた。

この造血幹細胞を、細胞を採取したマウス3匹の尾の静脈に注射したところ、
体内で健康な血液を作り始め、約3カ月後には血液中の成分が大幅に改善。

「さまざまな細胞に分化できる能力を持たせるための遺伝子の導入や、
iPS細胞になってからの遺伝子組み換えなどは、
がんを含む副作用を引き起こす可能性がある。
ヒトに応用するには、これらの問題を解決し、
安全な方法を開発する必要がある」。

ヒトiPS細胞の作成に成功した山中伸弥・京都大教授は、
「iPS細胞を患者自身の細胞から作り、遺伝子の異常を修復し、
必要な細胞を分化させ、同じ患者に戻して治療するという、
理想とする治療が実現できることを、マウスを使って示した重要な研究」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63863

がんと闘う筑紫哲也さんに聞く 無常だからこそ感謝

(毎日新聞 2007年11月26日)

紅茶2杯で3時間。
斜光の入るレストランの個室で、筑紫哲也さん(72)は終始ニコニコしていた。
がんは面白い病気」と語れるようになった筑紫さんは今、
無常だからこそ輝く人生を、そのありがたさを感じているという。

事務所のある赤坂のビルまで迎えに上がると、
青いシャツに黒のジャケットというラフな格好で下りてきた。
療養中にしては、はつらつとしている。
半年ぶりにテレビ出演した先月は、つけ毛が話題になったが、
「生えてきたので、今は自毛です」と少し恥ずかしそうな顔をした。
「もともと髪が多いから、局で『視聴者がショックを受ける』なんて言われて、
つけ毛にされて。でも、嫌だから自分でばらしたんです」

以前、お会いしたのは2年前。
日比谷のホテルのバーでアフリカの話をした。
もともとがヘビースモーカーなので、灰皿が吸い殻の山に。

病後、たばこをやめた。
困ることが出てきた。大好きなマージャンと原稿書き。
「一服できないと、全然面白くない」。
長年愛してきたのは、ハイライトとマールボロの赤。
ニコチンが強く、のどに強い圧迫感のある本物のたばこだ。
「長生きには、吸わないのがいいのか、吸うのがいいのか、
議論のあるところでね。たばこで死ぬ人も、糖尿など食い過ぎで死ぬ人もいる。
もう一つは、たばこや食に急ブレーキかけて、そのストレスで死ぬ人。
屁理屈だけど」

論は勢いを増す。
「百害あって一利なしと言うけど、文化は悪徳が高い分、深い。
人類が発明した偉大な文化であり、たばこの代わりはありませんよ。
これを知らずに人生を終わる人を思うと、
何とものっぺらぼうで、気の毒な気がしますね」

でも、そんな文化ががんをもたらした、と向けると、
「そうとも言えない」と首を振る。
「肺がんに直結しているようだけど、たばこは引き金で、本当の原因はストレス」
たばこが原因だとは今でも思っていないのだ。

◇「Must(-ねばならない)」から「Want(-したい)」へ

では、どのようなストレスがあったのか?

「簡単に言えば、Mustが多すぎた。
だから、MustからWantに変えればいい
でも、長年、僕を知る人は笑う。
『お前は好きなことしかやらないじゃないか』と」

それでも、TBSテレビの「ニュース23」に出ずっぱりというのは、
やはり負担もあったのだろう。
「そう。僕は約束を破ったり、会議に出なかったり、いいかげんなんですが、
放送は18年間、月曜から金曜まで1秒も遅刻せずにやった。
自分がやりたいことだから、苦痛はなかった。
東京だけにいてはこの国は見えないと、週末は講演など理由をつけては
地方を回ったんです。これも、楽しかった」

ただ、心は楽しんでも、体は違った。
「加齢ですね。体が文句を言っても、ペースを崩さなかった。
人はそもそも心身が分裂しているものなんです。
美空ひばりは東京ドームで歌い終わり、ぐじゃっと倒れた。
僕もそういうところ、あると思う」

◇語るたびに自己嫌悪だった

30年間、朝日新聞社で記者、雑誌編集長を務め、キャスターに転身。
活字の世界にない気遣いもあった。

後任キャスター、共同通信社の前編集局長、後藤謙次さんにこう助言した。
「テレビは、軽率で不完全なメディアだから、
家で奥さんと反省会をやるのはやめなさい、とね。
僕は毎晩、自己嫌悪でした。

原稿ってのは、へたくそでも活字になると、まあ自己満足できるでしょ。
でも、テレビは見るたびに自己嫌悪でね。
ボディーランゲージが大きなウエートを占めるし。
『なんであんなことを言ったのか』というのがストレスになってね」
「僕がキャスターを始めたころ、朝日新聞では、テレビは下賤なメディアで
一度さわったら体が腐る、とさえ言われた」。

テレビに移ったのは、新聞に限界を感じていたからだ
「何百万も部数があるから、書いたものが相手に届くと思っていた。
でも、ある時気づいたのは、ほとんど何も届かない。
特に国際報道は、どんなに大変な思いをしても何も届かない。
多くの人に届けるには、テレビが手っ取り早いと気づいたんです」

キャスターとしてどれだけのことを伝えられたのか?

「こうあってほしいと思うことを語ってきたが、
その方向に世の中が進んだことはない」。
語るたびに、どんどん自分が少数派になってゆくと感じた。

それでも自分を突き動かすものがあるとすれば?

「うーん、おせっかいな好奇心ですかね。
でも、この(報道の)仕事って、おせっかいですよね」

◇予約つき人生、今日が大事

がんになり、発見があった。
一つは、患者と有権者が似ていること。
「いくら情報を与えられても、自分で思うほど賢くはなれない」。
結局は他人に言われるままになる。
そして悪い結果が出れば「自分の責任」となる。

「底にあるのは、人間は賢者になれるという壮大なフィクション。
世界経済の影響で酪農家が破産すれば、
『お前の責任』と言われ、フリーターや社会からこぼれる人が叱責される。
でも、弱い患者と同じく、有権者にすべての責任があるわけじゃない」

ごく自然に東洋医学に向かった。
「僕の体は空爆されたイラクみたいなもの。
放射線でがんはほぼ撃退したけど、体中が被爆している。
西洋医学は敵を攻めるばかりだが、東洋医学は、がんを生む体に
ならないようにすることを心がける。それが自分には合っている」。

今は月の半分を奈良の東洋医学専門家、松元密峰さんのもとで過ごす。
放射線医療の後遺症でのどが膨れ上がったとき、はり治療などで救われた。
「がんは面白い病気でね、これくらい個人差があり、
気持ちに左右されるものはない。心臓が急に止まるのと違い、
余命率がどれくらいという、一種予約つきの人生になる。
年数はわからない。ラッキーだと延びるし、短い人もいる」

日々、「ありがたい」と思うことがある。
「倒れるまで、一日、一日なんて、特に考えないで過ごしてきたけど、
先が限られていると思うとね。例えばきょう一日も、とても大事というかね。
うん。お墓には何も持っていけないから、大事なのは、どれくらい、
自分が人生を楽しんだかということ。それが最後の自分の成績表だと」

今は週に1回、立命館大で講義し、
あとは「源氏物語」を猛烈な勢いで読んでいるそうだ。
「入院中にじっくり読んだのは、新渡戸稲造の『武士道』。
古典が面白くてね。それと、仏像や日本画をしみじみと見るというのかな……。
これって、なんだろうと思う。
これから先、見ることはないという、見納めの心理も働いているんでしょうが、
すべてにありがたさを感じる。
そう思いながら味わえる何日かが、あとどのくらい続くか分からないけど。
その日々、月日があるというのは、急に逝くよりいいんじゃないか、なんて思うんです」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=62482

2007年12月9日日曜日

理系白書’07:第3部・科学者の倫理とは/5 始まる規範教育

(毎日 11月25日)

「これで、皆さんは晴れて研究の申請ができる。
ぜひ、社会から信頼される研究をしてほしい」。

東京大で開かれた研究倫理セミナーにて、
医学部倫理委員長を務める赤林朗・大学院医学系研究科教授が呼びかけた。
セミナーでは、「専門職の倫理とは」との総論から、
各種指針、臨床試験の審査体制、手続きなど実践的な内容が説明。

03年から、医学部での臨床研究に携わるすべての医師や研究者に受講が義務化。
2年間有効の受講証が発行され、受講証がないと研究申請できない。
同大大学院修士課程の根本努さんは、
「自分の研究を倫理という視点から見ることで、気付かなかった点も発見できた」。

臨床研究には、倫理面からのチェックが欠かせない。
だが、その仕組みを理解し、倫理的な判断ができる人材は限られる。

赤林教授は04年、東大に医療倫理人材養成ユニットを設立
「どんな研究でも、人に応用する段階はくる。
身体上のリスク、個人情報の取り扱いなど問題は多い。
倫理委員会がきちんと働かないと、医療は先に進まない」。

実験室で最先端の研究に挑む研究者と、倫理問題を検討する研究者を
隔てる「垣根」が、生命科学分野での研究倫理の醸成をさまたげているのでは?
そんな疑問を抱いた双方の立場の研究者が、声明文を発表。

「社会との共生を実現し研究を進めるには、
倫理的・法的・社会的観点など多面的な視点からの検討と配慮が不可欠。
自然科学と人文・社会科学が協働し、さまざまな立場の人と研究者が
協働する共通のプラットフォームを構築すべきだ」

科学技術振興機構社会技術研究開発センターが、
9人の研究者(生物学、脳機能研究、科学コミュニケーションなど)に
呼びかけ、声明が策定。

取りまとめ役の札野順・金沢工業大科学技術応用倫理研究所長は、
「自然科学の研究現場は多忙で、倫理を考える余裕がない。
一方、倫理の研究者は現場を知らない。
両者が同じ土俵で語り、問題を抽出し、解決へ導く取り組みが必要。
英国では科学者育成の初期から、倫理への配慮を学ばせている。
日本も人材育成に倫理面を取り入れ、その人材が活躍できる場を整備すべき」。

科学の発展は、私たちの暮らしを豊かにした一方、
最先端の科学は市民の手を離れ「ブラックボックス化」。
命に直接かかわる生命科学や医療の進歩は、社会の価値観をも揺るがす。
研究者には社会と向き合い、自らを律する規範も求められている。
そのような研究者を育てる取り組みは、緒に就いたばかり。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/11/25/20071125ddm016040068000c.html

アルツハイマー:アミロイド斑の関連物質発見 福島医大

(毎日 12月8日)

アルツハイマー病の原因とされるアミロイド斑(老人斑)を
生じさせる「βセクレターゼ」の活性が、
脳細胞から分泌される「シアロ糖たんぱく質」と関連していることを、
福島県立医科大の橋本康弘教授(生化学)らが発表。
シアロ糖たんぱく質が、アルツハイマー病の早期発見の目安になると期待。

アミロイド斑は、神経毒性の「Aβペプチド」が沈着して生じる。
沈着を引き起こす「βセクレターゼ」の活性度測定が、
アルツハイマー病診断につながることは分かっていた。

しかし、βセクレターゼの活性度の測定は困難。

研究チームは、βセクレターゼが活性化すると、
シアロ糖たんぱく質も増えることをマウス実験で確認。
将来、脳せきずい液でシアロ糖たんぱく質の増加量を測定し、
診断に応用できるという。
βセクレターゼの活性化を防げば、アルツハイマー病の予防につながる。

橋本教授は、「早期発見により、アルツハイマー病の進行を
遅らせることができる。将来的には早期診断と特効薬で、
アルツハイマー病が治るようになるのではないか」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20071208k0000m040093000c.html

2007年12月8日土曜日

TH2細胞の活性化とアレルギー性気道疾患の発現に不可欠なTRAILとCCL20との関連

(nature medicine 11月号Vol.13 No.11 / P.1308 - 1315)

2型ヘルパーT(TH2)リンパ球が仲介する免疫応答で、
腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)
担う役割は明らかになっていない。

本論文では、TRAIL欠損(Tnfsf10-/-)マウスとTRAILを標的とする
短鎖干渉RNAに暴露したマウスを使って、
アレルギー性気道疾患発症の特徴を明らかにする。

TRAILは、アレルギーマウスの気道上皮に大量に発現していること、
そのシグナル伝達を抑制すると、ケモカインCCL20の産生と
骨髄性樹状細胞およびCCR6とCD4を発現するT細胞の
気道へのホーミングが低下することがわかった。

ホーミングの低下により、TH2サイトカインの放出、炎症、気道過敏性
および転写活性化因子STAT6の発現が制限される。
Tnfsf10-/- マウスでは、インターロイキン13によるSTAT6の
活性化によって気道過敏性が復活する。
組換え型TRAILは、喘息の発症徴候を誘発し、
またヒト気管支上皮初代培養細胞でCCL20の産生を促進する。

TRAILはまた、喘息患者の痰でも増加。
気道上皮におけるTRAILの機能から、
この分子は喘息治療の標的であることが示される。

[原文]Critical link between TRAIL and CCL20 for the activation of TH2 cells and the expression of allergic airway disease

Markus Weckmann1, Adam Collison2, Jodie L Simpson2,3, Matthias V Kopp1, Peter A B Wark2,3, Mark J Smyth4, Hideo Yagita5, Klaus I Matthaei6, Nicole Hansbro2, Bruce Whitehead7, Peter G Gibson2,3, Paul S Foster2,6 & Joerg Mattes1,2,7

1 Department of Paediatrics and Adolescent Medicine, Albert Ludwigs University Freiburg, 79106 Freiburg, Germany.
2 Centre for Asthma and Respiratory Diseases (CARD), School of Biomedical Science, Faculty of Health, University of Newcastle and Hunter Medical Research Institute, Newcastle 2301, Australia.
3 Department of Respiratory and Sleep Medicine, Hunter Medical Research Institute, Newcastle 2305, New South Wales, Australia.
4 Cancer Immunology Program, Peter MacCallum Cancer Centre, East Melbourne 3002, Australia.
5 Department of Immunology, Juntendo University School of Medicine, 113-8421 Tokyo, Japan.
6 Division of Molecular Biosciences, John Curtin School of Medical Research, Australian National University, Canberra 2601, Australia.
7 Paediatric Respiratory and Sleep Medicine, Department of Paediatrics, John Hunter Children's Hospital, Newcastle 2305, Australia.

The role of tumor necrosis factor?related apoptosis-inducing ligand (TRAIL) in immune responses mediated by T-helper 2 (TH2) lymphocytes is unknown. Here we characterize the development of allergic airway disease in TRAIL-deficient (Tnfsf10-/-) mice and in mice exposed to short interfering RNA targeting TRAIL. We show that TRAIL is abundantly expressed in the airway epithelium of allergic mice and that inhibition of signaling impairs production of the chemokine CCL20 and homing of myeloid dendritic cells and T cells expressing CCR6 and CD4 to the airways. Attenuated homing limits TH2 cytokine release, inflammation, airway hyperreactivity and expression of the transcriptional activator STAT6. Activation of STAT6 by interleukin-13 restores airway hyperreactivity in Tnfsf10-/- mice. Recombinant TRAIL induces pathognomic features of asthma and stimulates the production of CCL20 in primary human bronchial epithelium cells. TRAIL is also increased in sputum of asthmatics. The function of TRAIL in the airway epithelium identifies this molecule as a target for the treatment of asthma.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200711/nature_medicine/03.html?Mg=4a9047687808fea9276ce35389724222&Eml=12b55b931cb52b4152963c77864c5aec&F=h&portalId=mailmag

理系白書’07:第3部・科学者の倫理とは/4 相次ぐ論文不正疑惑

(毎日 11月18日)

「そうそうたるメンバーが一堂に会し、熱い議論が交わされた」、
「今後のRNA(リボ核酸)分野の広がりを感じさせる素晴らしい1週間」。

米国・キーストンで05年1月に開かれ、数百人が参加した国際シンポジウム。
多比良和誠・東京大大学院教授(当時)は、専門誌で会場の様子をこう記した。
皮肉にもこのシンポジウムが、多比良氏に対する論文不正疑惑の発端に。

多比良氏は、前年に英科学誌「ネイチャー」に、
短い2本鎖RNAをヒトの細胞に入れると、
核の中で遺伝子の働きを抑制できたとする論文(後に取り下げ)を発表。
一方、ほぼ同時期に米国の研究者が異なる手法で同じ結果を出した論文を発表。
両者が招かれ、それぞれの論文をテーマに講演するはずだった。

多比良氏は、論文の核心には踏み込まず、具体的なデータも示さなかった。
外国の研究者から、「論文の手法では核内にRNAを導入できず、
うまくいかないはずだ」など批判的な質問が相次いでも、
多比良氏は明確に答えなかった。
「お茶を濁すような対応で、会場が騒然となった」。

日本RNA学会は05年4月、多比良氏の論文12本を検証するよう東京大に求めた。
4本を調査した東京大は06年3月、「信頼性はない」と結論を下した。
根拠となる実験ノートや生データは存在せず、実験結果を再現できなかった。
捏造などは確認できなかったが、大学は06年12月、
「科学の発展を脅かし、大学の名誉を傷つけた」などとして、
多比良氏と実験を担当した川崎広明助手(当時)を懲戒解雇。

多比良氏は、処分について「『再現性のない論文』とまでは断定できず、
過去の処分事例と比較しても重すぎる」と主張。
大学に教授職の地位確認などを求め、東京地裁で係争中。

調査委員長を務めた松本洋一郎・同大学院工学系研究科長は、
「生データや実験ノートがなく、正しさを説明できないこと自体が
科学の世界では“不正”だ」。

近年、東京大や大阪大、早稲田大など日本を代表する大学で、
研究者の論文不正疑惑が相次いで発覚。
だが、科学の世界では、意図的でないミスで
間違った結論を導いてしまうことも少なくない。
不正かどうかの認定は容易ではない。

「ミス」と「不正」をどう見分けるか?

専門分野が細分化した現在、その役割を果たすことが期待されているのは、
各分野の専門家集団である学会。

しかし、06年の日本学術会議の調査によると、回答した国内610学会のうち、
倫理綱領を策定していたのは93学会(策定中を含む)、
倫理に関する常設委員会を持っていたのは74学会。

日本分子生物学会は昨年12月、研究倫理委員会を発足。
きっかけは、杉野明雄・元大阪大教授が昨年、
染色体の複製に関する論文でデータを捏造したとして受けた懲戒解雇処分。
倫理委は現在、杉野氏の論文を過去にさかのぼって検証。
一研究者の業績を、学会がここまで徹底的に洗い直すことは極めて珍しい。

委員会設置を決めた前会長の花岡文雄・大阪大教授は、
「日本の学会には、仲間の批判を躊躇する雰囲気があり、
取り組みが遅れた。だが、科学が間違った方向へ行ったのなら、
その分野を一番理解している専門家が正さなければならない。
捏造の背景や、見過ごされてきた原因も含めて明らかにする責任がある」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/11/18/20071118ddm016040148000c.html

井口、医療機器を寄贈 ダイエー時代から慈善活動

(共同通信社 2007年12月5日)

米大リーグ、フィリーズからフリーエージェント(FA)となった
井口資仁内野手が、老人福祉施設へ
自動体外式除細動器(AED)などを寄贈
14日に北海道・洞爺湖町の社会福祉法人「幸清会」の施設を訪問し、
AED1台のほか、車いす3台を贈る。

井口は、ダイエー(現ソフトバンク)に入団した1997年から車いすの寄贈や、
盲導犬育成のための寄付など積極的にチャリティー活動を行ってきた。
今回の寄贈について、同選手は、
「野球でも、AEDがあれば助かっていたという痛ましい事故も起きている。
少しでも多くの命が救えれば」。

AEDは、心臓の拍動がリズムを失い、全身に血液が送り出せなくなった
患者に、電気ショックを与え心拍を正常に戻す医療機器。
心臓突然死から患者を救う装置として期待。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63540

2007年12月7日金曜日

万能細胞の安全性向上 がん遺伝子なしで成功

(共同通信社 2007年12月3日)

人の皮膚から、さまざまな細胞に成長できる万能性をもつ
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を、世界で初めてつくった
京都大再生医科学研究所の山中伸弥教授らが、作製法を改良し、
より安全なiPS細胞を得ることに成功。

これまで、がん遺伝子を含む4つの遺伝子を皮膚細胞に組み込んでいたが、
がん遺伝子を除く3つの遺伝子でもできることを確認。

人体に有害な恐れがあるウイルスは依然として使っているが、
安全性をめぐる問題の1つが解決でき、
傷んだ組織を修復する再生医療の実用に向け前進。

山中教授は、「ゴールは先だが、一歩一歩着実に前進している」。
今後は、細胞作製の効率をいかに向上させるかが課題。

成人女性の顔から採った皮膚とマウスの皮膚で、それぞれiPS細胞をつくった。
マウス実験によると、3つの遺伝子を組み込む改良法では、
iPS細胞ができるまでの日数が2-3週間と、従来法の倍以上かかり、
細胞の量も大幅に少なかった。

がんの危険性を比較するため、従来法と改良法でつくったマウスのiPS細胞を、
それぞれ別の受精卵の中に入れ、赤ちゃんマウスを誕生。
がん遺伝子入り細胞を持つマウスは、37匹のうち6匹(16%)ががんになり、
生まれて100日以内に死んだが、がん遺伝子なしの26匹は、
同期間内に1匹も死なず、安全性がより高いことが確認。
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人工多能性幹細胞(iPS細胞)

既に役割が定まった体細胞に遺伝子操作を加えて、万能性がある
胚性幹細胞(ES細胞)のように多様な細胞に成長できる能力を持たせた細胞。
山中伸弥・京都大教授らが2006年、世界で初めてマウスの皮膚細胞から作製。
人の皮膚からの作製には、山中教授と米ウィスコンシン大チームが
07年11月、同時に成功。

ES細胞と違い、育てば赤ちゃんになる受精卵(胚)を材料にするという
倫理問題を回避できるのが最大の利点で、
再生医療研究を大きく加速する成果として注目。
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【解説】

人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、治療に使うには安全面で2つの難題。
1つが、「がん遺伝子」を組み込んでいること。

今回の成功でこの点はひとまず解決したため、
再生医療の実用化に向け、大きく前進。
残る難題は、遺伝子の導入に「レトロウイルス」と呼ばれる、
発がんの危険が否定できないウイルスを使っていること。
ある専門家は「特定の遺伝子の除去よりこちらの方が難しい」。
解決にはかなりの時間がかかるとの見方も。

この研究は、iPS細胞づくりと並行して進められ、
初の作製成功の発表からわずか10日ほどでの成果。
研究競争の激しさを強く印象。
競争はさらに激化し、日本発の技術を適正に推進する方策が求められる。
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山中伸弥・京都大学教授

「20年近く研究をやってきて、初めて人の役に立つかもしれないと思えた。
ゴールはまだ遠いが、山頂は見えた」。

1987年、神戸大医学部を卒業。
研修医時代にリウマチの重症患者に触れたことなどから、基礎研究の世界に。
奈良先端科学技術大学院大で、受精卵を壊してつくる
胚性幹細胞(ES細胞)と異なる道を探り始めた。
きっかけの1つを、「約10年前に人の受精卵を顕微鏡で見た時。
受精卵は、子どもに育つ可能性がある。小さかった娘2人の姿と重なった。
ほかに道があるなら受精卵を使いたくないと思った」

マウスで成功して1年あまり。
試行錯誤して、人の万能細胞に必要な遺伝子を突き止めた。
「実験に取り組んだスタッフが頑張った。
成功した時に浮かんだのは、『すごいな、おまえら』の言葉」
と約20人の研究室スタッフをねぎらう。

世界的な競争が激化する研究分野。
複数の大学教授がチームで協力する欧米を「駅伝」、
個人技が主体の日本を「マラソン」に例える。
「臨床応用に向けて、日本も研究者同士の壁を取り除く必要がある」。

気晴らしは、大学周辺のジョギング。
「けがをしない保証があれば、学生時代のように柔道とラグビーをやりたい」
大阪府出身。45歳。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63297

理系白書’07:第3部・科学者の倫理とは/3 アカデミック・ハラスメント

(毎日 11月11日)

応用物理学を専攻する国立大准教授の40代男性は
最近、ようやく体調が戻りつつある。
以前は研究室に来て、上着をハンガーにかけるのも、おっくうだった。
前に在籍した大学で、教授から嫌がらせを受け、うつ状態になったため。

企業研究者だったとき、大学院時代に知り合った教授から
「別の大学に移る。どうしても一緒に来てほしい」と請われ、誘いを受けた。
助手として赴任した初日、勤務時間を尋ねると、教授は、
「ここは企業とは違う。勤務時間だけ働けばいいと思ったら大間違いだ」と、
いきなり怒鳴りつけられた。
以来、学生の前で、たびたび怒鳴られた。

独力で論文を書き上げたある日。
研究室の外の廊下で教授から、
「場所代だから、著者名に(教授の名前を)入れるのは当然だろう」。
反論を許さない口調に、しぶしぶ応じたものの不満だった。
論文内容に関する議論など、教授とはまったくなかった。

教授は、男性が親しくしていた学生らにも、いいがかりをつけ攻撃する。
男性は、学生との接触を避けた。
精神的な圧迫感で研究どころではなく、通院するようになった。

「大学は研究室単位で動いており、
予算と人事権を握る教授は中小企業の社長のようなもの。
研究室の問題は、外の人が口出しできない」。
この教授は取材に対し、「コメントできない」などと話している。

アカデミック・ハラスメント(アカハラ)とは、
「教育・研究現場での権力を利用した嫌がらせ」。

多くの論文を書くことは、科学者の業績や評価につながる。
研究に関与しなくても、共著者として論文に名前が載れば、成果とみなされる。
共著者を強要し、研究成果を横取りするのは、アカハラの典型例。

NPO法人「アカデミック・ハラスメントをなくすネットワーク」代表理事の
御輿久美子・奈良県立医科大助教らがまとめた
准教授、講師、助教を対象にしたアンケート(回答者931人)によると、
研究論文の作成で、1割が
「上司に論文の筆頭著者(ファースト・オーサー)をとられたことがある」。
筆頭著者を他の人に譲るように強要されたという回答も1割近く。

「上司から、実験データの改ざんや捏造を強要された」という教員もおり、
権力関係が論文捏造の背景に。
「自分で取った研究費が、教授の研究費として使われてしまう」、
「任期付きの職のため、次のポストを探さなければならないが、
上司に推薦状を書いてもらえない」という訴えも。

同ネットワークには1年間で、約1200件の相談が全国から寄せられた。
御輿さんは、最近の成果主義やプロジェクトの大型化が、
アカハラを誘発しやすくしているのではないかと懸念。
多額の公的研究費を受ける研究室からの相談が目立っている。

御輿さんは、「多額の資金を得れば、それに見合う成果が求められ、
若手研究者や大学院生は、上から決められた仕事を長時間強いられる。
思うようなデータが出ないと、辞めろと叱責される。
こうした環境では、アカハラが連鎖的に拡大しかねず、
捏造などの不正を招くかもしれない。悪循環だ」。


過去に所属した研究機関でアカハラを受けたと公表している
若山信子さん(65)=茨城県つくば市=は、
「被害者は、自分に落ち度があるのではないかと感じ、泣き寝入り。
こじれる前に、解決できる身近な相談場所が必要」。

セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)に続き、
アカハラの相談窓口をつくる大学が増えてきた。
アカハラ訴訟を担当してきた若林実弁護士(第2東京弁護士会)は、
「大学に相談体制があっても、申し立てることによって
2次的な嫌がらせを受けたり、研究がストップしてしまうなど、
被害者は不利な状況に置かれがち。
身内をかばい、隠ぺいとみられるケースもあり、自浄能力が十分でない」。
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<大学などがアカハラを認めた最近の主な例>

07年10月:大阪市立大教授が、博士論文の指導をしていた大学院生に対し、
一方的に学生指導の補佐から外す。停職3カ月。

07年6月:広島工業大准教授が、国の研究費を不正使用。
卒論作成時期の学生を学外調査に動員。停職6カ月。准教授は依願退職

06年1月:福岡県立大教員3人が、教授による研究や授業妨害、退職強要が
あったとして、人権救済を申し立てた。
福岡法務局が人権侵害を一部認め、教授に反省を促す措置

05年7月:山口大助教授が、学生にプリンターのトナー代を要求し、
研究員からは給料の10%を出すように強要。戒告処分

05年6月:九州大助教授が、大学院生に理不尽な叱責や
長時間の説教を繰り返した。戒告処分

05年6月:岡山大教授が、学生に自分の実験データ解釈を強制しようとして
恐怖や不安を与えた。学生のデータをもとに了承を得ず、
共著で論文を発表しようとした。減給処分

04年11月:九州大教授が、20年以上にわたり大学院生の自宅に
電話し専攻の変更を迫った。セクハラ行為も。諭旨免職

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/11/11/20071111ddm016040078000c.html