2010年6月12日土曜日

世界一、水水しい国、日本へ 第4回・企業編

(日経 5月31日)

第3の第3のエネルギー革命。
水素の時代を前にして、
我々は躊躇するのか、
先頭走者を目指すのか。
 
◆「C からH へ」 渡文明(73)新日本石油会長

今、世界のエネルギー事情は、第3の変革期を迎えている。
第1の変革は、木炭のような手近にあるエネルギーを使っていた
時代から、地中に眠る化石資源、石炭を利用し始めた時代。

第2の変革は、石炭から石油へ主役交代した時代。
私が入社した1960年は、この変革の真っ最中で、
「石油の時代」の到来。

今、第3の変革期にさしかかりつつある。
これまで人類は、石油や石炭に含まれる炭素(C)を燃やして、
発電したり、暖をとったり、クルマを走らせたりしてきた。

それが、地球環境問題という大きな制約に直面。
私たちは、新たなエネルギーを見つけなければならない。

そこで、浮上してきたのが水素(H)。
エネルギー密度が高く、しかもほぼ無限に存在、正しく扱えば安全。
その水素を、効率よく作って利用できる技術を開発すれば、
日本は「第3のエネルギー革命」の先頭走者に躍り出る。

幸い、日本には蓄積がある。
水素を利用して、電力をつくる家庭用燃料電池
火力発電などの従来方式と違い、家庭内で発電するため、
送電によるロスが生まれない。
排熱を給湯などに利用することもでき、発電所でつくられた
電力を家庭に送るよりも、はるかにエネルギーの利用効率が高い。

日本は、この分野で技術や人材の厚みがある。
当社も、まだ石油の需要減が顕著となる前から、
このような分野の研究に力を入れてきた。

中国やインドのような新興国でも、
水素を使った小型発電の需要が期待。
中国の地方部では、電話は固定電話でなく、
最初から携帯電話が普及。
インフラが整っていない新興地域ほど、送電網などを築くのは難しく、
分散型の発電設備の方が適している。

必要な機器やノウハウ、人材を私たちが供給すれば、
日本の成長戦略にも直結。

水素の応用範囲は、みなさんが想像される以上に広がっている。
自動車の動力源に使えば、排出物が水だけという
究極のエコカーが誕生。
年間を通して、風が強い南米のパタゴニアのような場所で
風力発電を行い、その電力で水を電気分解し、
水素の形でエネルギーを日本が輸入する壮大な構想も。

水素をエネルギーの主役に据えることで、
中東に偏在する石油の時代より、
日本のエネルギー安全保障は高まる。

「石油会社が水素社会にかじを切るのは、
自己否定ではないか」とよく言われる。
しかし、当社は石油会社である前に、エネルギー会社。
これから世界の化石燃料の消費量は減っても、
エネルギー消費の総量は決して減らない。

「我々は、未来型のエネルギー企業として会社の骨格を変えよう」
社員には、日ごろからこう呼びかけている。

「CからHへ」――。
変革は大きな挑戦だが、それは同時に大きなチャンス。
水素の時代を前にして躊躇するのか、
積極的に前に乗り出すのか。
日本は、選択を迫られている。

◆「水素、地球環境問題の切り札に」(編集委員から)

水素と聞いても、「むかし理科の時間に習ったな」程度の
感想しか浮かばない人が多い。
原子番号「1」のこの物資は、万物の母ともいえるすごい存在。
私たちが日々その恵みを受けている太陽エネルギーは、
水素の熱核融合によって発生。

この水素を、今度は地球環境問題の切り札に活用しようという
機運が高まってきた。
世界の自動車メーカーは、「究極のエコカー」と呼ばれる
水素を利用した燃料電池車に注目、
2015年を期して本格普及に乗り出す計画。

製鉄会社は、地球温暖化の元凶であるCO2排出を
大幅に減らす「水素還元」という技術の実用化を急いでいる。
水素を発電に使えば、分散型のより効率的な発電システムが実現。
本格的な水素社会を実現するためには、課題も。

今の水素供給コストは、ガソリンの約2倍、低廉化が不可欠。
水素を安全かつ効率的に「貯蔵」、「輸送」、「充てん」する

技術の開発も必要。
世界を見渡しても、石油メジャーなど水素エネルギーの開発に
取り組むライバルが数多い。

2020年、日本が「水素革命」で世界をリードするためには、
技術開発を主導する企業と、それを支援する政府、
国民の理解が欠かせない。

単に水素社会を「夢物語」として描くだけではなく、
実現に向けての障害を、私たちが一つひとつ
取り除いていかなければならない。

水素の技術革新で世界をリードし、地球環境問題に貢献する――。
地球が瑞々しく、自然豊かな星であり続けるたけに、
私たちは社会の様々な場面で、水素の活躍する
「水水しい国」づくりに踏み出すとき。

http://www.nikkei.com/news/topic/article/g=96958A88889DE2E5E5EAE0E4EAE2E0E2E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;q=9694E3E5E2E7E0E2E3E2E0EAE4EA;p=9694E3E5E2E7E0E2E3E2E0EAE6E7;n=96948D808D9F9B80939B8D8D8D8D;o=9694E3E2E2E7E0E2E3E2E0E2E7E3

149兆円の市場創出 インフラ輸出や環境で 経産省の産業ビジョン

(2010年6月2日 共同通信社)

経済産業省は、インフラ輸出や環境・エネルギー産業など
5分野に官民の力を結集し、2020年までに総額149兆円の
新たな市場を生み出す目標を掲げた
「産業構造ビジョン2010」をまとめ、産業構造審議会に提示。

政府の中長期的な成長戦略の柱に据え、
予算の重点配分を通じ、産業競争力を高めることを目指す。

戦略5分野は、
(1)原子力発電設備や鉄道などのインフラ関連産業、
(2)環境・エネルギー、
(3)医療・介護、
(4)ファッションなどの文化産業、
(5)ロボットなどの先端分野。
こうした分野を強化し、計258万人の雇用を生み出す目標も。

具体的には、次世代送電網「スマートグリッド」や
電気自動車などの環境・エネルギー分野で23兆7千億円、
インフラ産業で12兆3千億円規模の市場を拡大。
雇用面では、医療や介護、健康、子育てサービスを育成、
113万4千人の雇用を増やす。

ビジョンは、「戦後成長の『成功の神話』からの脱却」を提唱。
国際競争に勝つために、官と民や省庁間、国と地方の壁をこえた
「戦略の構築と実施が不可欠」と訴えた。

現行で約40%の法人税の実効税率について、
5%程度の引き下げも提言。
外国企業の拠点を国内に誘致することや、
民間主導の産業再編を促す環境整備も求めた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/2/121103/

ALS 新たな原因遺伝子発見

(2010年6月1日 毎日新聞社)

筋肉が次第に動かなくなる神経の難病、
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新たな原因遺伝子を
広島大、徳島大などの研究チームが発見、
英科学誌「ネイチャー」に発表。

ALSは、年間10万人あたり2人程度の患者が報告、
9割は原因がはっきりしない孤発性、残りが遺伝性。

研究チームは原因遺伝子を探るため、遺伝性のALS患者に着目。
父由来と母由来の遺伝子に同じ変異がある場合に
発症する可能性を考え、近親婚の両親を持つ
患者6人の遺伝情報を調べた。

その結果、半数の3人が、緑内障の原因遺伝子「OPTN」に変異。
OPTNは、がんや炎症に関与するたんぱく質が
過剰に働くのを抑える役目。
変異によってこの機能が失われ、運動神経に影響を与えたと推定。

広島大の川上秀史教授(分子疫学)は、
「孤発性の患者でも、この遺伝子が作るたんぱく質に
異常が見られることから、この遺伝子は発症に関与」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/1/121042/

新聞で伸びる(1)温暖化 記事から試算

(読売 5月27日)

東京都北区立王子第三小学校の6年2組の教室。
『地球にやさしいエコカー』と題した小学生向けの新聞記事を
読み終えた子どもたちに、担任の太巻美青教諭(34)が問いかけた。
「算数で未来を考え、自分ならどうするか、意見をまとめてもらいます」

算数を通じて、環境問題を考える授業。
記事に書かれていた〈1〉ガソリン車、〈2〉ガソリンと電気を使う
ハイブリッド車、〈3〉天然ガス車――の3車種で、
CO2排出量がどのくらい違うか、確認する作業から始める。

「算数を使って予想しよう」という単元では、
前の時間に読んだ地球温暖化の記事を使い、
氷山が解けて消滅してしまう時間をグラフから予測。
2時間目のこの日は、記事をもとに百分率を使って
排出量の減り具合を考えた。

身近な問題に感じられるよう、架空の「王三マンション」に、
100世帯が住んでいて、ハイブリッド車、天然ガス車を半数ずつ
持っていると設定。
記事の中から、CO2排出量は、ハイブリッド車は半分程度、
天然ガス車は25%程度、それぞれガソリン車より少ないという
データを読み取らせ、すべてガソリン車の場合に比べて、
CO2をどれくらい減らせるか求めた。

計算方法について聞かれた児童は、
「ガソリン車100台分の排出量をもとにし、王三マンションの
排出量の割合を求めます」と答えた。
その結果、37・5%も減らせることが分かった。

一連の授業では、新聞記事から、
「キリマンジャロにある氷河が、2022年にも消滅しそう」、
「CO2排出量 中国がトップに」という情報にも触れた。
「地球がCO2の増加で温暖化すると困ることも学んだよね」と
授業を補佐した山岸幸枝教諭(34)。

まとめのコーナーで、女子児童の一人は、
「車種によって、かなり減らせることが分かった。
乗るならエコな車にします」、
男子児童は、「少しくらい不便でも(車に乗るのは)我慢します」

単純な予想は当てずっぽうになりがち。
記事や資料を使ってグラフにしたり、割合を求めたりすると、
「AだからBになるだろう」と根拠をもって説明。
新聞の情報から算数の便利さを実感し、
身の回りの出来事も、興味を持って分析的に考えられる。

教科書や全国学力テストに、新聞を活用した学習が
登場するようになった。
子どもを伸ばす新聞の使い方を先駆者の取り組みから紹介。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100527-OYT8T00323.htm

2010年6月11日金曜日

(鳥取)地方を生きる 第4部<1> 医の最前線で--鳥取県日南町から

(2010年6月1日 読売新聞)

医療現場が疲弊している。
深刻な医師不足で、特に自治体病院の経営は苦しい。
平成に入り、全体の7%にあたる約80か所が閉院。
地方の実態を伝える連載「地方を生きる」第4部は、
鳥取県日南町の国保日南病院からの報告。
命にかかわる地域医療をどう立て直すか?
医師や看護師らの取り組みを通し、考えたい。

「黒字経営の秘密を教えて下さい」
山間部に立つ国保日南病院には年に5、6度、
各地の公立病院関係者が視察に訪れる。

昨年度の経常収支は、7900万円の黒字。
27年連続の黒字達成。

町立病院として、1962年開院。
他の公立病院と比べ、恵まれているわけでもない。
人口5800人の日南町は、65歳以上が半数近い過疎の町。
常勤医の確保は難しかった。
院長不在で、2000万円以上の赤字を抱えたことも。

その病院を変えたのは、この町出身の前院長、
安東良博さん(71)。
「古里に戻ってくれ」
町長らの説得を受け、82年、院長に就任。
県の健康増進施設の所長だった安東さんには、
糖尿病の研究者になる夢。

町の保健センター所長も兼任する条件に、心を動かされた。
住民の病気の予防や健康づくりも一緒に行える。

厳しい現実が待っていた。
常勤医不足に不安を感じ、町外の病院に通う住民も多かった。
50床のベッドは、自宅療養が難しい長期入院患者が占めていた。

何からやるか?
安東さんが手がけたのは、往診だった。
「町内は広くて、病院まで遠い人もいる。
寝たきりの高齢者ら、病院に来られん人が多かったのでね」

往診の有り様は、一人の女性宅の訪問を境に変わる。
「薬だけください。私は長いこと風呂に入っていない。先生に悪いので」
寝たきりの女性にそう言われた。
入浴の福祉サービスがなかった時代。

「皮膚の清潔は、医療の基本。お風呂に入れてあげんとなあ」
安東さんの発案で、看護師らが折り畳み式の浴槽を携え、
高齢者宅を回り始めた。

患者に親身に当たる姿勢が伝わり、外来患者が増え出す。
往診の充実で、家でも療養できると考えられ、長期入院も減る。
人件費を中心に経費節減など経営改善にも努め、
院長就任から1年で黒字に転換。

日南病院の玄関には、〈町は大きなホスピタル〉とする
院是が掲げられている。
「町の道路は病院の廊下、各家庭は病院のベッドと考えた。
入院患者のナースコール同様、各家庭の電話で、医師が出向く。
これが信頼を築いた」
いまは病院事業管理者に就いている安東さんが語る地域医療の原点。

◆国保日南病院

国民健康保険事業の一環で町が開設。
内科、小児科、外科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科の6診療科。
ベッド数は一般病床59、療養病床40の計99床。
院長を含む常勤医師は6人。
看護師35人、准看護師10人が勤務。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/1/121062/

スポーツ政策を考える:荻原健司・参院議員(自民党)

(毎日 5月29日)

2004年の参院選比例代表に、自民党から立候補して
当選して以来、スポーツの普及、振興のためには、
政治の力も必要との認識を持って活動を続けてきた。

この6年間、日本のスポーツ環境が改善されたとは言い難い。
バブル経済がはじけて以降、企業スポーツの休廃部が続き、
未来あるスポーツ選手の行き場がない。

私のところにも、オリンピックに出場したことのある選手が
相談にやってくる。
日本のスポーツ選手を取り巻く厳しさを物語っている。

昨年の事業仕分けで、スポーツ予算は「大幅縮減」と判定、
文部科学省のスポーツ関連予算は今年度、
2億円増えて約227億円。

日本オリンピック委員会や日本体育協会への補助金が
減らされる中、オリンピックでメダル獲得が有望な競技を支援する
マルチ・サポート事業は大幅増となった。

スポーツが、経済状況の良しあしによって左右されているようでは、
国際大会で活躍できる選手はなかなか生まれてこない。

そういう意味でも、トップアスリートに対する国による支援を
充実させていくことが重要。
国の中でスポーツが果たす役割、機能は何なのかを
明確にしなければならない。

スポーツをすることによって、解放感を味わい、ストレスを発散する。
スポーツを通じて、体も心も元気になる。
これが、社会の健康につながっていく。

文科省の総合型地域スポーツクラブ作りが進んでいる。
今まさに日本のスポーツ文化そのものを作っている最中。
ただ単に、スポーツができる場所を確保するだけでなく、
スポーツを核にして人と人が触れ合い、絆が強まることが
地域の元気につながっていけばいい。

縦割りになっているスポーツの施策をまとめ、
マネジメントできるスポーツ庁のような組織を作ってほしい、
というのが現場の声。

全部が横でつながれば、効率は上がる。
すべての権限と予算を集約し、無駄な事業は
徹底的に排除するとともに、必要なものに
集中的に予算を投下していく。

底辺からトップまで、全部がつながるような
理想的なピラミッドの中で、スポーツ振興は進んでいく。

今回の参院選には立候補しない。
スポーツ庁の設置を含めて、国がスポーツを推進するうえで、
根拠とすべきスポーツ基本法の道筋が見えてきた。
法案の作成過程にかかわれたことはよかった。

数年前から、国会で仕事をしているという自負と、
現場に行けない、見えていないという思いが錯綜していた。
自分をはぐくんでくれた現場に戻って、
スポーツの課題を政治に反映させる活動をしていきたい。
==============
◇おぎわら・けんじ

1969年生まれ。早大卒。
スキー・ノルディック複合でオリンピック団体2連覇、
ワールドカップ個人総合3連覇。
引退後の2004年、参院議員に初当選。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/05/29/20100529dde035070021000c.html

iPS細胞にがん免疫治療への応用期待

(サイエンスポータル 2010年6月2日)

iPS細胞の利点を活用することで、
がん免疫治療への応用が期待できることを、
理化学研究所の研究グループが、マウスを使った実験で確かめた。

理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの
古関明彦・免疫器官形成研究グループディレクター、
渡会浩志・免疫制御研究グループ上級研究員らは、
既にヒトへの臨床研究が進む「ナチュラルキラーT(NKT)細胞」
によるがん免疫治療に、山中伸弥・京都大学教授が開発した
iPS細胞誘導技術を活用することを試みた。

マウスの脾臓から採ったNKT細胞から、
山中教授と同じ方法でiPS細胞を作成、そのiPS細胞から
NKT細胞をつくりだすことに成功。

この成果のポイントは、皮膚からつくられたiPS細胞では、
NKT細胞以外のがん治療に役立たない
リンパ球までできてしまうのに対し、iPS細胞から分化した
リンパ球がすべてNKT細胞になること。

黒色腫にかかったマウスに、この方法でつくった
NKT細胞を入れてやると、
がんの転移や再発を抑える効果があることが確かめられた。

NKT細胞は、リンパ球の一種で、
理化学研究所の谷口克・免疫・アレルギー
科学総合研究センター長らが1986年に発見。
強力な免疫増強作用を持つことが知られている。

研究グループは千葉大学と連携、NKT細胞を活性化し、
肺のがん細胞を攻撃する新しい治療法を開発、

これまで17人の肺がん患者に対し、
第2段階(小規模の患者が対象)までの臨床試験を終えている。
初回治療だけで、すべての患者に延命効果があることが
確かめられたが、治療効果が高かった患者は、
体内にNKT細胞が多いことが明らか。

体内でNKT細胞だけを大量に増やすことは難しいことから、
研究グループは、NKT細胞からいったんiPS細胞をつくり、
再び大量のNKT細胞をつくる技術の開発に挑んだ。

今後、千葉大学と進めている臨床研究にこの方法を応用。
この研究成果の一部は、科学技術振興機構の
戦略的創造研究推進事業(CREST)の研究課題
「ヒトiPS細胞の分化能と腫瘍化傾向を反映するマーカー
遺伝子群の探索」(研究代表者:古関明彦・
理化学研究所免疫器官形成研究グループディレクター)。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1006/1006022.html

地方空港を考える (鈴木修氏の経営者ブログ)

(日経 2010/6/4)

地元静岡に静岡空港が開港して、6月4日で1年に。
利用状況は、当初の需要予測を大きく下回り、
4月には経営再建中の日本航空(JAL)が撤退。

こうした事態を招いた根本原因は、
空港建設ありきで作られた甘い需要予測にある。
構想が打ち出された当初の予測は、178万人程度。
開港までに何度も下方修正され、結局106万人に。
実態は、国際線を含めても61万人程度。

役所など利害関係者が、大学の先生にお願いして作る
需要予測なんて、まさにお手盛り。
早く空港を作りたいという思いが先走って、あたかも、
そうであったかのような「でっち上げ」の数字が並んでしまう。

「わが県に空港を」と、官民挙げて動いてしまった。
建設することが前提で、手段を選ばなくなる。
そんな状況下で、「採算があわない」なんて誰も言い出せない。
私は途中まで反対していたが、結局、大勢に流された。
当時の知事さんに頼まれ、地元経済界を代表して
運輸大臣に陳情し、「どうぞよろしく」とお願いしたことも。

静岡は、新幹線や高速道路の便利がいい。
東京、名古屋、大阪にはすぐに移動できる。
羽田や中部空港に出れば、北海道や九州、沖縄に簡単に行ける。
四国などに比べ、静岡は本当に交通に恵まれた県。
恵まれているのに、もっと恵まれたいという甘え。
その結果、搭乗率が当初計画に達しなかった場合に
支援金を支払う「搭乗率保証」を約束、
今になって県とJALは対立を深めている。

開港当時のJALの社長さんは、浜松ご出身。
JAL再建に向けて東奔西走され、大変なご苦労をされた。
積もり積もったJALの経営問題の責任をすべてかぶり、
最後には、地元でも撤退問題で批判の的に。
私は運命など信じないが、あの人だけは本当に運が悪かったなぁと、
本当にご同情申し上げるしかない。

空港の赤字補てんは誰がするのか。
そのツケを、子や孫の世代に残してはならない。
何が何でも、地域に必要なインフラに再生させなければ。
こんなに恵まれた静岡にある空港に、
バラ色の未来はやってくるのか。

http://www.nikkei.com/biz/blog/article/g=96958A9C93819499E2E1E2E2808DE2E1E2E4E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E2E7E2E3E0E2E3E2E1E3EBE3

2010年6月10日木曜日

世界一、言語の壁が低い国、日本へ 第3回

(日経 5月24日)

もう論争はやめよう。
英語と国語、どちらが重要か。
両方を習得できる道はある。
取り払うべきは心の壁だ。

正直言って、外国人の取材は苦手。
「もっと英語ができたら」と、痛感するのが、
正式なインタビューを済ませた後。

普段は、取材後のささやかな会話から相手の本音を聞き出したり、
人となりを理解したりするが、相手が外国人だとうまくいかない。

5歳の娘をアメリカの保育園に約1週間、預けたことが。
初日の夕方、迎えに行くと、娘の目は真っ赤に腫れ、
声はガラガラ。
英語がわからないので一日中、部屋の片隅で泣き叫んでいた。

翌朝、「絶対行きたくない」と言い張る娘を保育園へ連行。
しがみつく手を振り払って、保育園を後にした。

ところが夕方、娘の様子を見ると、
笑顔で友達と遊んでいるではないか。
「あしたもここに来たい」。
娘なりに、一生懸命に意思疎通の努力をした。
子どもの順応性に驚かされた。

語学教育には、いろんな意見がある。
「外国語より国語が大事」、「幼少期から徹底した英語教育をすべき」
そんな論争を続けている間も、地球は回り続け、
世界と自分の距離はいや応なく縮まっている。

多感な時期にいろいろな国・地域で、多様な価値観を肌身で
感じることが重要。
高校無償化につぎ込む予算を、留学費用や外国人教師の採用に
充てることを考えてもいいのではないか。

外国人に、日本の文化や日本語を教える活動も強化すべき。
外国語ができないことで、今の若い人たちが将来、
損をするような事態は避けたい。
外国人を取材するたびに、そう思う。

http://www.nikkei.com/news/topic/article/g=96958A9C93819596E3E6E2E4E48DE3E6E2E7E0E2E3E2869087E2E2E2;q=9694E3E5E2E7E0E2E3E2E0EAE6E5;p=9694E3E6E2E7E0E2E3E2E0E7EAEB;n=96948D808D9F9B80939B8D8D8D8D;o=9694E3E2E2E7E0E2E3E2E0E2E7E3

医療の疑問にやさしく答える 患者力トレーニング 更年期… 患者塾

(2010年6月1日 毎日新聞社)

歌手の森昌子さんが子宮を全摘したというニュースに、
たくさんの方からお電話をいただいた。
一番多かったのが、「喪失感」に関するもの。

「医師は、『子宮を全摘しても、卵巣を取るわけではないので、
女性ホルモンの環境には何の影響もない』と説明。
この喪失感は、全摘した者にしか分からない。
医学教育に、そうした心のケアに関するものを
もっと取り入れるべきではないか」

「森さんの場合、更年期障害と重なったので、
たいへんだったと思う。
出血がひどくて立っていられないという経験を私もしたが、
家族も含め、職場の同僚も心から理解してくれる人は
ほとんどいなかった」

「私も、子宮全摘を勧められている。
子供も大きくなったし、今さら子宮を取っても影響がないのは
分かるが、女でなくなるような気がして死にたい」

更年期障害では、喪失感がしばしば問題に。
女性ホルモンが急激に減って、さまざまな不定愁訴と呼ばれる
症状が現れ、「女らしさを失った」と言う思いに沈み込むように。

さらに追い打ちをかけるのが、子供や夫のこと。
手塩にかけた子供が一人前になって、
「自分が必要ない状態になったこと」、
「夫はもともと他人で、妻なんてじゃまでこそあれ、
必要なものではないらしい」という思いが、喪失感を決定的なものに。
森昌子さんの場合、女性としての象徴的な臓器である
子宮を全摘したわけで、立ち直るのはたいへん。

ここでちょっと厳しいことを言っておきたい。
かかりつけ医として、更年期女性の喪失感に精いっぱい
理解しようと、努めて診療に当たっているつもり。
準備の足りない女性が多すぎる。
夏の後には秋が来て、やがて冬が訪れる。
更年期障害でつらいところに、子宮を取らねばならない可能性は
女性なら誰だってある。
心と体の季節が夏のうちに、冬の準備をしておくのが
患者力ではないか。
…………………………………………………………………………
Q 紫外線に害があるの?

1歳になる孫がいる。
天気がよかったので、「天気のいい日は、外に出てお日様に
当たった方がいいよ」と言ったら、娘からえらくしかられた。
「紫外線の害のことを、おばあちゃんは何も考えてない」と。
鹿児島市、59歳、女性

A 浴び過ぎに注意、熱中症にも

紫外線は毒で、なんのメリットもない、というわけではない。
体内でビタミンDを作る手助けをし、免疫力を高める。
太陽光を浴びる時間は、10分程度で十分。
顔から肩にかけて浴びるだけでも十分。

最近は、紫外線の害が強調。
特に成長期で、細胞分裂の盛んな時は、
紫外線を浴び過ぎないように注意。
ベビーカーでのお散歩の時、アスファルトからの照り返しで
熱中症になる心配も。
外での散歩は、ほどほどに楽しんで。

Q 家で高く、病院で正常な血圧

48歳の妻は、病院で測る血圧は正常なのに、
「隠れ高血圧」と言われ、薬を飲んでいる。
「白衣高血圧」は聞いたことがあるが、病院で正常で、家庭で高い
なんてことがあるのか。
私と一緒にいるのがストレスなのか。
熊本市、52歳、男性

A 夜と起床時の値に注意を

家庭で測った血圧(家庭血圧)が、医療機関で測った血圧(外来血圧)
より高く、基準値を超えている場合を「隠れ高血圧」、「仮面高血圧」。

血圧は夜寝ている間に下がり、朝戦闘モードになって上がる。
脳卒中や心筋梗塞は午前中に多い。
家庭では夜くつろいだ時と起床時の2度測り、高い時は治療が必要。

日本高血圧学会では、135/85以上なら治療が必要。
食事療法と運動療法から始め、効果がなければ薬を飲みます。
家庭でのストレスかどうかは、治療の効果がない時に検討すればいい。
ご主人も家庭血圧をチェックしてみてください。
……………………………………………………………………………
回答まとめ・小野村健太郎さん

質問は事務局へ
〒807-0111 福岡県芦屋町白浜町2の10「おのむら医院」内
電話093・222・1234 FAX093・222・1235

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/1/121083/

国交、厚労、経産省も海外水ビジネス後押し

(サイエンスポータル 2010年6月2日)

東京都や企業が先行して取り組みを始めている
水ビジネスの海外展開に、国土交通、厚生労働、経済産業の
3省が積極的に後押し。

3省は、「海外水インフラPPP協議会(仮称)」を発足、
協議会に参加する企業の委員を公募、
7月上旬に第1回の協議会を開きたい。

協議会には環境、外務、総務の各省も加わるほか、
東京都や横浜市、大阪市といった地方自治体、
国際協力機構(JICA)、日本貿易振興機構、
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などの
独立行政法人も参加する予定。

海外における上下水道の整備、運営・管理は、
今後も大きな需要が見込まれ、
2025年には約80兆円規模の市場に成長。
日本は、企業に優れた技術があるにもかかわらず、
運営・管理を含むトータルマネジメントの実績は少ない。

水源確保から上下水道事業までの水管理をパッケージととらえ、
官民連携による海外展開に向けた取り組みを積極的に推進する。
日本は、排水処理に必要な膜技術で世界をリードし、
都市の水再利用が盛んだ。

漏水率が小さいなど、日本の上下水道システムの優れた点は
多いのに、上下水道システムの構築から、
その後の維持管理までを丸ごと受注する
水ビジネスの海外展開では、欧州の企業が圧倒的な強み。

最近になり、東京都が日本企業と組んで、
オーストラリアの水道事業にかかわるなど、
海外水ビジネスへ乗り出そうという動き。

科学技術振興機構も、大垣眞一郎・国立環境研究所理事長を
研究総括とする戦略的創造研究推進事業(CREST)の
新規プロジェクト「持続可能な水利用を実現する
革新的な技術とシステム」
を、昨年度からスタート。

このプロジェクトは、気候変動などによって、
将来さらに深刻化すると予想される国内外のさまざまな
水利用の課題を解決する水利用システムの創出を目指す。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1006/1006021.html

早期発見に新基準 ヘモグロビンA1c、血糖値と検査併用 糖尿病学会が決定

(2010年5月28日 毎日新聞社)

日本糖尿病学会(門脇孝理事長)は、
糖尿病の新診断基準を決めた。

従来の血糖値による診断に加え、過去1~2カ月の平均的な
血糖状態を示すヘモグロビンA1c(HbA1c)を取り入れる。

早期発見しやすくなり、糖尿病や合併症の減少が期待。
7月1日から適用。

新基準を検討した委員会の清野裕・委員長は、
「早期介入で合併症を防ぎたい」

学会によると、診断基準の改訂は99年以来11年ぶり。
糖尿病患者は、07年の調査で国内に約890万人、
早期の診断や治療を目指し、診断基準を見直した。

新基準では、慢性的な血糖状態を反映するHbA1cを、
補助的役割から格上げ。
血糖値の基準値は変わらないが、HbA1cの基準値は厳しくなった。

検査は併用し、いずれも基準値を超えた場合、糖尿病と診断。
HbA1cの数値を、国際基準に合わせる方針も確認。
7月1日から、国際学会の発表などで新しい基準を使用。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/5/28/120927/

2010年6月9日水曜日

スポーツ政策を考える:桂充弘・弁護士

(毎日 5月15日)

日本のスポーツ行政の中で、スポーツ事故への対応が
遅れているのではないか、という疑問。

どんなに安全なスポーツを心がけても、スポーツの性質上、
一定の割合で事故が発生する事実が統計上認められる。
事故の被害者へのケア、再発防止のための原因究明、
情報公開をしっかりすることを考えるべき。

大阪府高槻市で開催されたサッカー大会で、
落雷に遭い重度の障害を負った元高知・土佐高生と
家族が約6億4600万円の損害賠償を求めた訴訟で、
高松高裁は2008年9月、学校と主催者の高槻市体育協会の
過失を認定、約3億円を賠償するよう命じた。

判決は、落雷に関する知識が乏しく、事故を予見すべき
注意義務を怠り、回避のための措置をとらなかったとして、
落雷事故で、学校側の責任を初めて認めた。
被害者の保護という点は画期的な判決だったが、
指導者からすると、そこまで責任を負わなければいけないなら
指導はできない、という思いが。

高校時代、ラグビーの練習中に首の骨を折り、
車いす生活になった男性がいる。
学校相手の調停の代理人として、責任追及や
賠償請求をしようとすると、学校側や競技団体側は、
事故原因等の情報を容易に開示しようとしない。

ラグビーでは、20件前後の死亡を含む
重症障害事故が毎年発生。
被害者は、同じような悩みを持つ人と連絡をとるすべがなく、
リハビリや補償などの情報も与えられず、
孤立してしまっている状態。

高槻のような形で、訴訟にして相手に過失があることを
立証しないと救済されない。
無過失であっても、被害者を救済する範囲を
もう少し広げるべきだと思う。

フランスでは、スポーツ活動を行う際、非営利の団体や
連盟などに対し、自分たちだけでなく、参加者やボランティアらの
保険加入を義務付け、加入しない場合、
6カ月の懲役及び罰金を科すことを法律で定めている。

日本は、原則として当事者間の処理に委ねてしまっている。
スポーツ基本法を新たに制定するならば、
フランスのように保険の加入義務を盛り込むことを検討してほしい。
いくら防ごうとしても、事故が発生する以上、
スポーツ被害に遭った人に対して、どうケアするかという視点を
抜きにしては、完全なスポーツ基本法と言えない。

現行の共済制度では、学校事故に対応する
日本スポーツ振興センターからの見舞金の上限は3800万円程度。
高槻のような場合、差額はだれが負担すべきなのか。
引き上げるための原資が足りなければ、
税金を投入することがあってもいいと思う。
==============
◇かつら・あつひろ

1955年生まれ。同志社大卒。
スポーツ事故、スポーツ選手の契約・肖像権管理などを担当。
日本スポーツ仲裁機構仲裁人候補者。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/05/15/20100515dde035070042000c.html

寂しいと太る・・・は本当だった?!

(日経ヘルス 5月25日)

軽度の環境・社会的ストレスが長く続くと、脂質代謝が乱れ、
肝臓への脂肪蓄積を伴う内臓脂肪蓄積型の肥満になる可能性が。
「第64回日本栄養・食糧学会大会」での発表。

実験では、「1匹で飼い、周囲との視覚的なコミュニケーションを
完全に遮断し、床に敷くおがくずを少なくし、潜って遊ぶことなどを
できなくした」、軽度の環境・社会的ストレスを与えたマウス
(=単独マウス)15匹を、3カ月飼育。

一般的に適正な数とされる5匹で、通常の環境で飼育したマウス
(=集団マウス)15匹と比較。

その結果、9週目から単独マウスの体重が集団マウスと比較し、
増え始め、13週目に有意な増加となった。

実験終了後、内臓脂肪の重量と肝臓の重量も単独マウスでは増え、
肝臓に脂肪がかなり蓄積。
血中の善玉ホルモン、アディポネクチンが有意に減少、
血中の総コレステロールが有意に上昇。

静岡県立大学環境科学研究所生体機能学研究室の
榊原啓之助教は、「単独マウスの食事量は、1週目から増える傾向、
体重が増加したのは9週目から。
ストレスで、食事量が若干増えても、体内のホメオスタシスが働いて
体重を増やさないようにするが、その状態が長く続くと、
脂質代謝が乱れるのでは。

同様の実験を行ったマウスでは、1カ月後に肝臓での
脂肪酸の合成の遺伝子発現が高くなり、
脂肪酸の分解の遺伝子発現は低くなっていた」

榊原助教らのグループは、同様の単独マウスのモデルを使って、
ウコンを摂取させると、内臓脂肪の蓄積が抑えられた、
という研究結果も同学会大会で発表。

ウコンには、脂質代謝を高める作用があり、
食事性の肥満を抑制するという報告は以前からあった。
今回の研究で、ウコンを日常的に摂取すれば、
ストレス性の肥満にも効く可能性があることがわかった」

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20100525/107192/

インサイド:五輪ボイコット30年・第2部 政治に敗れたJOC/3

(毎日 6月3日)

五輪ボイコットに向け、「外堀」は隠密のうちに埋められていった。
JOC総務主事だった岡野俊一郎・現IOC委員(78)は、
80年5月23日夜、日本体育協会の河野謙三会長から
緊急招集を受けた。
行き先は、銀座のレストラン「千疋屋」。

河野会長がよく利用していた千疋屋には、体協幹部が集結。
体協の下部組織だったJOCから、柴田勝治委員長も。

岡野氏は、「行ってみたら、河野さんが伊東(正義)官房長官に
電話して、『君、明日、体協に来て説明しろ』と言ったんだ。
伊東官房長官は、カーター米大統領がボイコットの可能性を
公にして間もないころ、『日米関係をよく考えてくれ』と我々に言った人。
伊東さんに改めて説明させるということは、
ボイコットなのだなと思った。
JOCの言い分を聞くというより、空気で悟らせる集まりだった

河野会長、柴田委員長、伊東官房長官も既に亡くなった今、
岡野氏はボイコットにいたる水面下のやりとりを知る数少ない人物。

79年、在テヘラン米大使館人質事件での「弱腰外交」が
非難されていたカーター大統領が、五輪イヤーに行われる
大統領選を控え、五輪ボイコットで対ソ強硬姿勢を示した、
という見方は根強い。
米国との関係を重視する日本政府の方針を考えれば、
岡野氏には、政治家で参院議長も務めた河野会長の意図が
十分伝わってきた。

翌日の体協臨時理事会は、執行部の方針で議事録を取ることが
許されなかったが、体協国際担当参事だった伊藤公さん(74)は、
ひそかに速記。
「伊藤メモ」によると、伊東官房長官は「政府の本心を言えば、
参加することに反対、ボイコットしてくれということだ」

続くJOC臨時総会では、柴田委員長が
「ナショナルエントリー(国別申し込み)は無理」と委員長見解を述べ、
多数決で不参加が決まった。
JOCをまとめる総務主事の立場から棄権した岡野氏は、
スポーツが、政治と無関係であるとは言えない。
だが、政治に利用されるのは困る」と複雑な心境。

権威に弱い日本スポーツ界の体質が、政府の介入を招いた
側面は否定できない。
西側諸国でも対応は異なり、英国、フランス、スペインなどは
参加に踏み切った。

欧州の情勢を調査した当時の体協競技力向上委員長、
福山信義さん(78)は、「欧州では、『私はこう思う』という感じで、
個人の意思の尊重を強く感じた。
日本国内では、何とか五輪に行かせたかった私に、
『下克上をやるつもりか』と言った人もいた」

参加を後押しする世論の支持も、十分に得られなかった。
柴田委員長は、報告書で「オリンピック運動が、
本当に大衆の間に根を張り、理解されていたかどうか。
スポーツの重要性が大きいわりに、社会的に低い位置に
あることは、検討と対策を必要とする」と結んでいる。

その状況は依然変わらない。
リオデジャネイロに開催地が決まった16年夏季五輪招致、
東京の地元支持率は、立候補4都市中最低の55・5%(IOC調べ)。
JOCの竹田恒和会長は、「五輪での活躍は国民の活力になり、
子供に感動、希望、夢を与える」と訴える。

事業仕分けで、政府からの補助金削減が打ち出されるなど、
今もJOCは逆風にさらされている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100603ddm035050122000c.html

天下りより官僚FA  (鈴木修氏の経営者ブログ)

(日経 2010/5/28)

皆さんご承知の通り、お役所には変なシキタリがある。

同じ省内で、同期入社の一人がトップに登りつめていくと、
みんな退官する。
退官後もそれなりに処遇しないといけないから、
財団法人や公益団体など多くの天下り先を作る。
まさに悪循環。

僕は、官僚の皆さんに言いたい。
天下りなんて言われるまえに、
早く退官し、自分を高く売りつけなさいよ。

20歳代から天下国家の視点で政策を勉強し、
お国のために一生懸命働いた方々。
豊富な経験と幅広い見識を持っておられるのですから、
それらを日本の産業発展のために生かしてくださいよ。

自ら外の世界に飛び出すのだから、天下りではない。
私は、プロ野球でいうところのフリーエージェント(FA)だ。

企業も「役所に頼まれたから」と言って、要らない人を
引き受けるのではなく、本当に必要な人材に来てもらう姿勢を
明確にしなくてはならない。

実は、スズキは随分前から「官僚FA制度」を採用。
役員の1割ぐらいは、社外の異色の経験の持ち主を充てる、
という考え方で、現在は3人の方々に在職。

優秀ですよ。
海外経験も豊富だし、とにかく行動力がある。

スズキに入社し、ものづくりの現場を歩いてきたプロパーこそ、
会社を支える戦力。
企業が成長するには、違った視点を取り入れることも大切。

常々考えているが、官僚の方は45歳になったら、
民間へ出るほうが良いのではないか。

優秀な方々だから、45歳から2年間、みっちり現場で
「雑巾がけ」をすれば、会社のことを覚えられる。
そうすれば、20年間官僚として身につけた実力を、
経営幹部として存分に発揮できるはず。

45歳を過ぎ50歳にもなると、お役所の中で偉くなってくる。
一から雑巾がけするのはなかなか難しい。
大学や研究機関で活躍するなら、いくつになっても遅くないが、
ビジネスの世界に飛び込むなら、45歳がひとつの目安。

優秀な人材を生かせない天下りは、国家にとって甚大な損失。
企業の戦力として活躍する元官僚が増えれば、
天下り批判なんてなくなると思う。

いま、日本の製造業は厳しい時代を迎えている。
官僚の皆さん、ものづくり復権に向けて一緒に知恵を絞りませんか。

http://www.nikkei.com/biz/blog/article/g=96958A9C93819499E0E7E2E1998DE0E7E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E2E7E2E3E0E2E3E2E1E3EBE3

2010年6月8日火曜日

世界一、世界人が多い国、日本へ 第2回

(日経 5月17日)

停滞を宿命と考えるのは
もうやめよう。
我々は忘れていないか。
世界を驚嘆させた時のことを。

今から10年ほど前、米経営学者のピーター・ドラッカー氏を、
西海岸の自宅に訪ねたことがある。

当時も、今と同じく日本の存在感低下が指摘、
「ジャパン・パッシング(日本素通り)」という言葉が
しばしばメディアに登場。

「このまま日本は沈んでいくのでしょうか?」
こちらの問いかけに、90歳を超えた碩学からは、
「大丈夫。時が来れば、
日本ほど大胆に変化する国はほかにない
という答えが返ってきた。

たしかその時、ドラッカー氏は明治維新や戦後の復興を
例に話してくれたが、重要なのは個々の歴史的事象ではない。

私たち日本人の奥底には、たぐいまれな進取の気性や挑戦心が
息づいており、普段は目立たないが、何かきっかけがあれば、
驚くほどのエネルギーがあふれ出る。
そんな「日本人観」を、聞かされたことが新鮮だった。

「世界人」をテーマに、皆様から寄せられたアイデアに目を通す中、
頭をよぎったのがこの時のこと。

「淡路島をアワジシティーに」、「子どもオリンピックを」――
大胆でありながら、決して実現不可能ではない示唆に富む
提案が集まった。

停滞を宿命と考える場所からは、何も生まれない。
世界に飛び込む勇気、世界を受け入れる勇気があれば、
日本人は「世界人」に変身する。

http://www.nikkei.com/news/topic/article/g=96958A9C93819596E3E2E2E1E78DE3E2E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;q=9694E3E2E2E7E0E2E3E2E0E2E4E3;p=9694E3E2E2E7E0E2E3E2E0E2E7E6;n=96948D808D9F9B80939B8D8D8D8D;o=9694E3E2E2E7E0E2E3E2E0E2E7E3

特定タンパクが軟骨破壊 変形性関節症

(2010年5月24日 共同通信社)

脊椎や手足の関節が変形し、歩行障害などの症状が出る
変形性関節症は、軟骨細胞に存在する特定のタンパク質によって、
軟骨が破壊されたり骨になる「骨化」が異常に起きたりするのが
原因との研究結果を、川口浩東京大准教授(整形外科)らが
23日付米医学誌ネイチャーメディシン電子版に発表。
こうした仕組みを標的にすることで、治療薬開発につながる。

骨ができる過程では、成長板という軟骨が壊れて、
骨に置き換わる「軟骨内骨化」という現象が起きる。
変形性関節症では、成人の関節で、そのままであるべき軟骨に、
異常な骨化が起きると考えられている。

川口准教授らは、軟骨が骨になる過程で出る特殊なコラーゲンに着目。
軟骨細胞に存在する「HIF2A」というタンパク質によって、
このコラーゲンの分泌が促進されることを見つけた。

マウスのひざの関節に負荷をかける実験で、
HIF2Aが少ないとコラーゲンも少なく、軟骨の破壊が抑えられた。

手術で摘出した患者の軟骨では、正常な軟骨よりHIF2Aが多かった。
関節の辺縁部では、血管が入り込み、破壊された軟骨から骨ができる。

川口准教授によると、日本の変形性関節症の患者は2千万人以上、
現在は消炎鎮痛剤の投与などの対症療法しかない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/5/24/120654/

インサイド:五輪ボイコット30年・第2部 政治に敗れたJOC/2

(毎日 6月2日)

80年モスクワ五輪で、瀬古利彦さん(53)は、
男子マラソン金メダルの最有力候補と目されていた。

日本の不参加が決まった80年5月24日。
20キロ余りを走り終え、故中村清監督の自宅へ向かった。
社旗を立てた新聞社の車が並び、玄関には無数の靴、靴、靴……。

騒然とした雰囲気の中、中村監督と一緒に記者会見した
瀬古さんは、「心構えができていたから、
それほどショックではありません」と淡々と答えた。
「中村先生から、『こう言いなさい』って全部決められていたことも
ありますが、自分も次(4年後)があると思ったから、
『悔しい』とかはなかった」

80年12月の福岡国際、瀬古さんはモスクワ五輪の覇者、
ワルデマール・チェルピンスキー(東ドイツ)を破り、実力を証明。
84年のロサンゼルス五輪は14位、88年ソウル五輪は9位。
マラソンは、通算15戦10勝。
五輪の表彰台とは縁がなかった。

「モスクワ五輪に出たら、82年まで充電するつもり。
不参加になり、強さを証明したくて、ロスまでに頑張りすぎた。
ボタンの掛け違い。
一度歯車が狂うと、人生も狂ってしまう
今も無念の思いがこみ上げる。

瀬古さんや宗茂、猛さん兄弟を擁し、
メダル独占も夢ではなかったが、日本陸上競技連盟は
「ボイコットやむなし」の姿勢を変えなかった。
当時の日本体育協会会長の故河野謙三氏は、
参院議長も務めた政界の実力者で、日本陸連会長経験者。
歴代の会長には政治家が多く、
陸上界は政界の影響を受けやすかった。

日本陸連内部の会合では、財界関係者から
不参加要望が相次いだ。
当時の日本陸連専務理事で、体協理事やJOC委員も兼ねた
帖佐寛章さん(79)は、「五輪に参加すれば、
米国が石油やトウモロコシなどを、友好国から日本に送らせない、
と財界関係者から話が。一種の経済封鎖だよ」

ソ連のアフガニスタン侵攻に反発したイスラム諸国への配慮もあり、
日本陸連は、「アジアとの連帯」を考えて不参加に賛成。
アジア競技連盟加盟32カ国・地域のうち、不参加は19。
当時の日本陸連会長で、5月30日に94歳で亡くなった
青木半治さんも、アジアとの関係を重視。

西側諸国でも、英国やフランスなどは参加を決め、
国旗ではなく、五輪旗を使って開会式に臨んだ。
IOC副会長として、一貫してボイコット反対を主張した
故清川正二さんは、「過去80年かかって築いた日本のスポーツの
光輝ある歴史と、世界のスポーツ界の信頼が、
一朝にして潰え去ったとはいわないまでも、大きな汚点を残した」、
モスクワ五輪の公式報告書に記している。

88年夏季五輪招致で、名古屋市と争った
メルボルン(オーストラリア)から、日本は痛烈な批判を受けた。
JOC監修「近代オリンピック100年の歩み」によると、
メルボルン側は招致パンフレットで、
「名古屋は88年の開催地に立候補するようだが、
日本はモスクワ・オリンピックをボイコットしている」と非難。

「これ(国際社会での信頼関係)を修復するには、
今後よほどの努力と年月が必要とされる。
『オリンピック・ムーブメントの理念』を今一度思い直し、
JOCなりの『哲学』を持つ必要がある
清川さんの提言は、今に生きているだろうか。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100602ddm035050003000c.html

水がきれいな河川多い北海道、東北

(サイエンスポータル 2010年6月1日)

カワゲラやヒラタカゲロウなど、
きれいな水を好む水生生物が住む河川が多いのは、
北海道、東北、という結果が、国土交通省と環境省が
昨年8月に行った全国水生生物調査で明らかに。

この調査は、環境問題への関心を高めることも
大きな狙いになっており、小学生を中心に両省が募集した
一般市民によって毎年、実施。

河川に住む30種類の水生生物を手がかりに、
どのような生物が住んでいるかを調べ、水質の程度を判定。

カワゲラ、ヒラタカゲロウ、ナガレトビケラ、ヤマトビケラ、
ヘビトンボ、ブユ、アミカ、サワガニ、ウズムシが住む河川は、
「きれいな水」とみなされ、
コガタシマトビケラ、オオシマトビケラ、ヒラタドロムシ、
ゲンジボタル、コオニヤンマ、スジエビ、ヤマトシジミ、
イシマキガイ、カワニナが住む「少しきれいな水」、
ミズカマキリ、タイコウチ、ミズムシ、イソコツブムシ、
ニホンドロソコエビ、タニシ、ヒルが住む「きたない水」、
セスジユスリカ、チョウバエ、アメリカザリガニ、サカマキガイ、
エラミミズが住む「大変きたない水」の4段階にランク付け。

きれいな水と判定された河川が、最も多かった北海道は
調査地点の75%を占め、東北が66%、九州64%、北陸62%の順。
最も少なかった地域は中国の31%、関東、四国の42%、
全国平均は56%。

この調査に参加したのは、小中学校など学校単位の約48,000人、
市民団体・子供会・観察会など、団体からの約19,000人を
中心に約71,000人。
調査地点は、全国3,059地点。

調査地点は、参加者が任意で選んでいる。
毎年同一地点を比較したものともなっていないが、
1999年をピークに、減少傾向にあった「きれいな水」と判定された
地点数は、この8年間、56-60%前後でほぼ横ばい。
両省は、昨年の調査結果を公表するとともに、
今年も7-8月の夏休み期間中に行われる調査の参加者を募集。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1006/1006011.html

2010年6月7日月曜日

エビさんの食べるスポーツ:名人の教え=海老久美子

(毎日 5月17日)

「あおばな」をご存じだろうか。

滋賀県草津市で昔から栽培され、花の青い色素が
友禅染の下絵用の染料として利用されてきたツユクサの一種。
化学染料の普及に伴い、栽培農家が激減したが、
1981年に草津市の市花に制定。

地方の一都市が大切に育ててきたあおばなだが、
近年の研究によって、血糖値の上昇を抑える働きのある
成分が含まれることが発見、にわかに注目を集めはじめた。
今では、あおばなから、お茶やそばなどが作られている。

あおばなを使った食品を作っているメーカーと、
大学のお菓子サークルで、あおばなのお菓子を発案してみよう、
という話が持ち上がり、その苗づけに誘っていただいた。

畑では、あおばな作りの名人がニコニコ顔で丁寧に説明、
苗を扱う様は、まるで孫と接しているかのよう。
あおばなへの愛情が伝わってくる。

名人によると、自慢は農薬を一切使わないで育てていること。
大変なのでは?と聞くと、
「畑がきれいだと、小さな緑のカエルがいっぱい来てくれて、
虫を食べてくれるんですよ。
そのカエルがちっちゃくてね、本当にきれいなんですよ」と
カエルさえいとおしそうに話してくれた。

あおばなは、サプリメントとしてタブレットにも。
サプリメントも食品。
効果効能以前に、原材料がどんなものかが重要。
名人のあおばな、という原材料への愛情とプライドを見せられ、
この名人が作っているものなら安心だ、と確信させてくれる経験。

サプリメントを取っているアスリートは非常に多い。
中には、人に勧められたからという理由だけで、
中身を知らないで取っているケースも少なくない。

サプリメントは、自分の体の中に入れるもの。
原材料の製作現場まで見に行けとまではいわないが、
サプリメントを取る時は、それくらいの心遣いを持っていてほしい。

【海老久美子・立命館大学スポーツ健康科学部教授】

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/05/17/20100517dde035050004000c.html

インサイド:五輪ボイコット30年・第2部 政治に敗れたJOC/1

(毎日 6月1日)

東西冷戦下の1980年、ソ連のアフガニスタン侵攻に
反対する米国が、西側諸国にモスクワ五輪ボイコットを
呼び掛け、JOCは日本政府の圧力に屈し、不参加を決定。

当時の舞台裏と、ボイコットが残したつめ跡を振り返るとともに、
五輪にかけてきたアスリートを守りきれなかった
JOCに突きつけられた課題を30年後の今、再検証する。

30年前の80年5月24日、岸記念体育会館地下3階。
JOC臨時総会で、日本バレーボール協会の専務理事だった
松平康隆・現名誉会長(80)
は、モスクワ五輪参加の
是非を問う多数決で、「参加すべし」に手を挙げた。
結果は、「不参加やむなし」29票、「参加すべし」13票、
棄権が2票。
五輪参加は、「幻」と消えた。

午前中の日本体育協会臨時理事会には、
五輪参加は望ましくない、との見解を表明していた政府から、
伊東正義・官房長官、柳川覚治・文部省体育局長も出席。
補助金削減をちらつかされた体協は、
「JOCが、ナショナルエントリー(国別申し込み)を
提出することに反対する」ことを決議。

JOC総会は、その日の午後に行われたが、
当時、JOCは、体協内の一委員会だった。
体協理事会の決定は重かった。

政府の人間が高いところから見下ろし、五輪参加を主張する
団体には、目にもの見せてやるといった感じだった。
バレー、特に女子は金メダルを取れる可能性があった。
政府が補助金をカットするなら、
海を泳いででも行かせてあげたかった」

松平さんは、JOCが不参加を決定後、IOC本部のある
スイスを訪れ、キラニン会長に個別参加を打診。
既にIOCは、個別参加を認めない方針を決め、
キラニン会長の反応は冷淡だった。
返ってきたのは、「検討する」というあいまいな答えだけ。

幻の女子バレー、モスクワ五輪代表、
中島(旧姓・広瀬)美代子さん(51)は、五輪不参加の知らせを
合宿先の北海道別海町で聞いた。
「合宿は中止になって、釧路湿原や美幌峠を観光した。
夜は残念会。みんな泣いていたのを覚えている」

広瀬さんは、名門ユニチカに入部後、下積みを重ね、
世界屈指のレシーバーに成長。
現在、バレー教室で子供たちを指導する広瀬さんは、
「子供からの夢だった金メダルが、すぐそこにあったのに」と回想。

84年ロサンゼルス五輪には出場、銅メダルに終わり、翌年引退。
日本バレーはその後、男女ともメダルから遠ざかる。

松平さんには、忘れられない思い出がある。
72年ミュンヘン五輪、イスラエル選手団がパレスチナ・ゲリラの
襲撃を受け、計17人が死亡。
大会中止か続行かで意見が分かれる中、
IOCのブランデージ会長にコーヒーでも飲もうと誘われた。
松平さんは、全日本男子の監督だったが、以前から親交があった。

ブランデージ会長は言った。
「私は、世界中から袋だたきに遭うだろう。
しかし、100年後には称賛されると思っている」
政治とスポーツの分離を主張する会長は、大会再開を決断。

人権や民族問題の観点から、歴史的評価は分かれる
ブランデージ氏だが、ナチス政権下の36年ベルリン五輪で
ボイコット運動が起きた際、米国オリンピック委員会の会長として
選手団派遣を進めた。
75年に他界、カーター米大統領のボイコット呼び掛けで、
世界が揺れたモスクワ五輪の時、既にこの世にはいなかったが、
松平さんは、「彼なら自分の国の大統領にも、きっと盾ついたと思う」

モスクワ後、五輪の在り方も変わった。
キラニン氏の後、IOC会長に就任したサマランチ氏は、
プロ化を促し、商業化路線を推し進めた。
一方で、ドーピング(禁止薬物使用)など負の側面も。
「五輪の成功が大きいほど、商業主義と政治の介入は大きくなり、
“オリンピック”は魔力を持った言葉になる」
ミュンヘン五輪の最後に、ブランデージ氏が残した警句だ。
==============
◇1980年モスクワ五輪ボイコットの経緯◇

1月 4日 カーター米大統領が、ソ連のアフガニスタン侵攻に対する
       制裁措置として、五輪ボイコットの可能性を表明
4月12日 米国オリンピック委員会が、総会で五輪不参加を決定
4月21日 競技団体のコーチが発起人となったコーチ団会議で、
       レスリングの高田裕司が涙で五輪参加を訴える
4月25日 日本政府が、五輪参加は望ましくないとの見解
5月24日 日本体育協会臨時理事会で、五輪参加反対を決議。
       JOC臨時総会では多数決の結果、不参加が決まる
7月19日 モスクワ五輪開幕。80カ国・地域(IOC加盟約140)が参加、
       米国、日本、西ドイツなどが不参加

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100601ddm035050155000c.html

平泉町に中国友好都市 天台県と協定へ

(岩手日報 6月3日)

平泉町は、中国浙江省天台県と友好都市協定締結に向け、
協議を進めている。
6月中にも締結の見通し、同町にとって初の海外友好都市。

天台県は、中尊寺と毛越寺の宗派天台宗発祥の地、
1998年から交流が続く。
「平泉の文化遺産」世界遺産登録再挑戦に向け、
機運の盛り上げにもつながりそう。

天台県は、上海から約400km南に位置、人口約56万人。
日本仏教の哲学や思想の源とされる天台山があり、
同町議会は98年、初めて同県を訪問。
以来、児童らが書画を交換したり、関係者が互いに往来して
交流を深めてきた。
2002年、天台県が属する台州市から招待を受け、
町議や民間人らが訪問。

中尊寺、毛越寺を開いたとされる慈覚大師が、
天台県・国清寺の参拝を許されなかったという逸話も残るが、
98年以降、国清寺の僧侶が中尊寺と毛越寺を参拝し、
相互理解は深まった。

同町の柳之御所遺跡から、奥州藤原氏が栄えた時代に
中国と交流があったことを示す遺物も数多く出土。
町関係者は、「約800年から900年前、先人が行っていた交流が、
時を経て、今も続くことを世界に訴える上で、
友好協定締結の意義は大きい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100603_1

皆さんの街でも事業仕分けを (鈴木修氏の経営者ブログ)

(日経 2010/5/21)

◆鈴木修

1930年1月生まれ。浜松市の中小企業を、
世界的な自動車メーカーに育てた自称「中小企業のおやじ」。
2009年12月、独フォルクスワーゲン(VW)との提携もまとめ、
80歳にしてなお、新たな戦略に知恵を絞る。

昨日、事業仕分けの第2弾の後半戦が始まった。
公益法人の無駄を追及。
前半戦の少し前、「独立行政法人の職員の給与が国家公務員より
高いことが、総務省の資料からわかった」という記事。

驚いた。
そんなこと、総務省は知っていた。
新聞記者もこれまで、お調べになろうと思わなかったのか。

私は2005年から、地元浜松市の行財政改革推進審議会の
会長を務めた際、市の外郭団体の経営状況を調べた。

医療公社が、赤字経営だったにもかかわらず、
市の人事院勧告に基づく給与引き下げを受け入れず、
市職員よりも高い手当をもらっていたことを明らかにし、
段階的に改善するよう求めた。

調べるうちに、公務員の給与の仕組みそのものに問題が。
総務省は、国家公務員の給与水準との格差を示す
「ラスパイレス指数」とかいうモノサシを持ち出して評価、
あれはいわゆる基本給だけ。

基本給以外に、各種の「手当」を隠れミノに、
給与水準を上げている。

本当に必要なの?という手当がいっぱい。
「ラスパイレス」なんて、難しい名前の指数を持ち出し、
煙に巻こうとしているのではないか。
それだけ調べても、実態は何もわからない。

国家公務員は、全国をまわる転勤が多いから官舎があり、
住宅手当がある。
市内の自宅から通勤できる市の職員とは、全く事情が異なる。

総理大臣や知事に公邸があるから、市長にも公邸を用意。
自宅から通勤すれば良いじゃないか、と思う。
自宅を持っていながら、公邸に家賃も払わず住み続けた
首長さんを私は知っている。
その方は結局、落選の憂き目に遭われたが・・・・。

そこで、このブログを読んでいただいている皆さんに提案が。
皆さんも事業仕分けをやってみませんか?

政府の事業仕分けの「実況中継」が面白いのはわかるが、
皆さんの住んでいる町にも同じように、隠れた部分・無駄遣い、
物事の本質を見誤ってしまっていることが多々ある。

地元の議員の先生方は、「調査権」を持つ。
そのお力を借りて、様々な資料などの公開を求めれば、
きっと色々な問題が見えてくる。

税金を払っている企業や市民による自治体の無駄をなくす
運動が広がれば、まず地方が変わり、そして日本も変わる。

浜松で、行革審の取り組みが始まって5年。
少しずつではあるが、変わり始めている。
お役所の追及の仕方がわからない、という方はどうぞご連絡ください。
こっそりお教えしますよ。

http://www.nikkei.com/biz/blog/article/g=96958A9C93819499E3E3E2E28B8DE3E3E2E7E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E2E7E2E3E0E2E3E2E1E3EBE3

2010年6月6日日曜日

エビさんの食べるスポーツ:佃煮の極意=海老久美子

(毎日 5月24日)

料理研究家の土井善晴先生に誘っていただき、
早稲田大学「食の文化研究会」が定期的に開催している
研究会に、コメンテーターとして参加。
毎回、食の職人が講演、5月は東京・浅草にある佃煮の老舗
「鮒佐」のご主人、五代目佐吉さんがお話。

驚いたのは、佃煮を作っている最中は、
一度も味見をしないというエピソード。
味見をすると、その時の体や気候のコンディションに
引きずられてしまうから。
自分を信じて、いつもの仕事を、いつも通りすることが大切。

これは、まさにトップアスリートのセリフと同じ。
道を究めた人は、同じ心境にたどり着くようだ。
余計なことはしないで、伝統の味をただ守り続けるのが
自分の仕事とも語っていた。

お店で作っているあさりの佃煮をいただいた。
口に含むと、まずしょっぱさを感じるが、そのあとに旨みがあふれ、
ジワッと唾液が出てきた。
司会の学生が、「すごくごはんがほしくなりました」と感想、
これは単にしょっぱかったからではなく、
伝統の技が生む滋味を感じたから。

唾液の中には、糖質の消化酵素であるアミラーゼが含まれている。
唾液がジワッとあふれる佃煮で、ごはんを食べることは、
ごはんがおいしくなるだけではなく、
ごはんの消化もよくして食べられる。

ご主人はいった。
「しょっぱいでしょう。
でも、佃煮はいっぱい食べるものではなく、脇役なんで、
この味だと思うんです」

佃煮を、100gあたりで塩分が何g入っている、というとらえ方を
してしまえば、塩分は高すぎる。
食べ方というのは大人の判断。
伝統がはぐくんできた食べ物を、塩分の数値だけで評価するのは
悲しいことだと思う。
食べ過ぎの責任を食べ物に押しつけるのは、食べ物に失礼だ。

伝統は、食べ方さえ教えてくれる。

【海老久美子・立命館大学スポーツ健康科学部教授】

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/05/24/20100524dde035050038000c.html

在宅の医療・介護充実を   高齢者、生きがい創出も  「地域再生」

(2010年5月25日 共同通信社)

全国の地方新聞社と共同通信社が、識者らとつくる
「地域再生列島ネット」は、「高齢者の健康を地域で支えるには」を
テーマに、第11回の意見交換を行った。
地域医療の危機がいわれる現状を踏まえ、
在宅での医療や介護の充実が重要と提起。
コミュニティー構築や、働く機会を確保するなど、
生きがいの創出も必要との意見も。

▽県単位で調査

「試行錯誤する時間的余裕はない」
窪田裕行・福井県政策推進課課長補佐は訴える。
同県は東大と2009年、協定を結び高齢者をめぐる
共同研究を開始。
注目は、県単位では初めてという、03年度から8年分の医療や
介護保険のデータを基に行う分析。
有効な対策を打つには十分な調査が必要とし、
高齢化のスピードを考えれば早く取り組むべきだと指摘。

対策の大きな柱は、在宅医療体制の充実。
高齢化で、病院や医療施設だけでは対応が困難。
07年の調査で、寝たきりでも自宅で治療を望む人は46・9%、
最後まで住み慣れた地域でとの願いも強い。
窪田氏は、「老い」への対応が「新しい地方の生活モデル」につながる。

河内山哲朗・前山口県柳井市長も、
高齢者が自宅で暮らせるよう、家事援助や訪問介護へ資源を
誘導する政策を提起。
田谷徹郎・千葉県保険指導課長は、
在宅医療の充実は「難しい課題」と指摘。
自治体が成功例など成果を共有、財政出動を受け入れる意識を
高める必要もある。

▽担い手が連携

地域での支え合いが重要との指摘も。
藤波匠・日本総合研究所主任研究員は、
「コミュニティーを再生し、多様な年齢層が暮らす持続的な地域」を
目指すべきだと提言。
白戸洋・松本大教授は、都会のようにつながりが薄い地域では、
関係団体などが参加目的を決めた
「テーマ型コミュニティー」が効果的との考え。

小林敬典・鳥取県教委教育総務課長は、
高齢者の様子を確認するNPOなどの活動を
「新たな公的な取り組み」と、広がりを期待。
こうした担い手が力を発揮するために、
沼尾波子・日本大教授は、連携を進める調整が必要とし、
行政が役割を果たせるよう行財政システムの構築を求めた。

▽働ける環境を

木村陽子・自治体国際化協会理事長は、
高齢者の健康維持に、「生きがいを感じる環境」が重要。
渡辺英彦・富士宮やきそば学会会長は、
まちおこしの視点から、地方都市では高齢の女性にふさわしい
仕事の開発が課題。

沢井安勇・日本防炎協会理事長も、
意欲と体力のある人に働く場を提供する仕組みを提起。
高齢者の「ワークライフバランス」(仕事と生活の調和)確立に向け、
社会が取り組むよう求めた。

※地域再生列島ネット 

地方が抱える問題を話し合うため、全国の地方新聞社と
共同通信社が識者らとつくった。
まちづくりに取り組む団体の代表者や研究者、行政担当者ら、
さまざまな専門分野を持つ48人で構成。
毎月、テーマを決め電子メールなどで意見交換、
形にとらわれないシンクタンクを目指す。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/5/25/120749/

当世給食事情(9)食生活改善に家庭の力

(読売 5月26日)

保護者や学校栄養士らから、様々な反響が届いた。

「学校栄養士は、栄養管理や食育をどう考えているのか」
東京都内と兵庫県内の小学校に息子2人を通わせた
京都府内の母親(42)は、変な給食への疑問をぶつけた。

東京の小学校では、揚げパンやクロワッサンと、
みそラーメンや焼きそばを組み合わせた献立が何度もあり、
パンの代わりにチョコレートマフィンが出たことも。
兵庫では一時期、毎週、マーボー豆腐が献立に。
「外食の時、息子が奇妙な組み合わせのメニューを
注文したりして、給食の影響ではないか不安」

千葉県内の母親(44)は、長女が通う中学校の給食試食会を
きっかけに、関心を高めた。
「国産、旬の食材使用や薄味の調理など、
栄養士の工夫や努力を知り、ありがたく思った」
逆に、和食の献立でも、牛乳が出されることには不満。
「わが子がどんな給食を食べているのか、
積極的に知ろうとする姿勢が重要」

元学校栄養士の千葉県内の女性(74)は、
栄養士の苦労にも目を向けてほしいと訴えた。
栄養摂取基準を満たす献立作成は、容易ではなかった。
ラーメンとドーナツの組み合わせがおかしいことが分かっていても、
「エネルギーを補うため、やむを得ないことも。
反面、脂質を減らすことには、とても頭を悩ませた」

千葉県松戸市の選択方式については、
「苦手な料理も含め、必要な栄養を考えながら献立を選択するのは、
食育として効果がある」(山口県内の20歳女子学生)、
「自ら選んだのだから、残さないという意識が働いてよいのでは」
(千葉県内の49歳の母親)など、支持する声がほとんど。

今回、取材に応じてくれた学校が見せてくれた給食は、
大半が米飯の和食。
ここに、学校栄養士の多くが語った給食の理想形が見えてくるが、
現実との溝は深い。

人気メニューなら食べ残しは減るが、栄養バランスが取りにくい。
理想の献立が実現しても、家庭での偏った食生活が、
せっかくの栄養バランスを台無しに。
ある学校栄養士は、「脂質などを抑えた和食献立を、
おいしそうに食べてくれても、家では揚げ物や、スナック菓子を
繰り返し食べている」と打ち明けた。

「どんなにいい給食を作っても、保護者の理解と協力なしでは、
子どもたちの食生活は改善できない」
ある小学校の校長が漏らした言葉が、印象に残っている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100526-OYT8T00253.htm

三陸観光に新たな光を 達増知事が出席し移動県庁

(東海新報 6月2日)

達増拓也知事が、県民の意見を聞く移動県庁が、
大船渡市の三陸公民館で開かれ、
「いわて三陸観光の展開について」をテーマに意見交換。

気仙の観光産業に携わる4氏が、取り組みや課題を述べ、
観光地間をつなぐルートの整備や水産日本のルーツである
貝塚の資源にもスポットを当てるべきなどと提言。

知事は、土佐・龍馬であい博が開かれている高知県を
先日訪れたことを述べ、「高知は、岩手の沿岸に地形が似ており、
観光振興で同じ悩みを抱えていた。
それぞれの分野で活躍している皆さんのご意見を聞いて、
県の施策に生かしたい」と出席者の意見に耳を傾けた。

大船渡市観光物産協会事務局長の新沼信男さんは、
観光客の入り込み数が10年間で22%も減少している経緯や
体験型観光、グリーンツーリズム、ボランティアガイド養成、
東京のはとバス観光ツアー誘致実現などの観光客増に
努めていることを紹介、「県が主要観光地として、
宮古以北を挙げることが多く、
碁石や高田松原も取り上げてほしい」と要望。

碁石海岸レストハウスマネージャーの岩間朋子さんは、
首都圏のツアー客が80%、最近は台湾や中国の観光客もある一方、
「碁石までの道路がわかりにくいという声も」と、
観光ルートの周知の必要性を述べた。

陸前高田市海と貝のミュージアム主任学芸員の熊谷賢さんは、
「メトロポリタン博物館や国立科学博物館には、
気仙の骨角器や化石などがかなりある。
水産日本のルーツは三陸の貝塚にあり、
それにもスポットを当ててほしい」、三陸の海の情報発信を求めた。

住田観光開発㈱代表取締役社長の千田明雄さんは、
滝観洞の観光客が道路の開通で回復傾向にあり、
大船渡側へ観光客が流れるようにするには、
大型バスが上有住・日頃市線を通れるようにしてほしい、
「洞窟観光客を、秋田県からも呼び込めないかと
戦略を練っているところ」と取り組み。

知事は、一つずつに言及し、新たな光が当たる可能性を指摘、
「相手を具体的にして取り組んでいくと、具体的な進展がある。
沿岸広域の枠組みの中で、三陸の海、海岸、山をセットにして
売り出し、新しい光を当てることが大事

県側から加藤主税政策地域部長、中村一郎沿岸広域振興局長、
水野尚光同副局長らが同席。
移動県庁は、県北・沿岸圏域の振興施策に生かすことを目的に
昨年度に続いて実施。

同日午後から、釜石で県北・沿岸振興セミナーが開かれ、
知事がいわて県民計画について講演、
いわて三陸ブランド強化をテーマに、
パネルディスカッションが行われた。

http://www.tohkaishimpo.com/