2010年6月11日金曜日

地方空港を考える (鈴木修氏の経営者ブログ)

(日経 2010/6/4)

地元静岡に静岡空港が開港して、6月4日で1年に。
利用状況は、当初の需要予測を大きく下回り、
4月には経営再建中の日本航空(JAL)が撤退。

こうした事態を招いた根本原因は、
空港建設ありきで作られた甘い需要予測にある。
構想が打ち出された当初の予測は、178万人程度。
開港までに何度も下方修正され、結局106万人に。
実態は、国際線を含めても61万人程度。

役所など利害関係者が、大学の先生にお願いして作る
需要予測なんて、まさにお手盛り。
早く空港を作りたいという思いが先走って、あたかも、
そうであったかのような「でっち上げ」の数字が並んでしまう。

「わが県に空港を」と、官民挙げて動いてしまった。
建設することが前提で、手段を選ばなくなる。
そんな状況下で、「採算があわない」なんて誰も言い出せない。
私は途中まで反対していたが、結局、大勢に流された。
当時の知事さんに頼まれ、地元経済界を代表して
運輸大臣に陳情し、「どうぞよろしく」とお願いしたことも。

静岡は、新幹線や高速道路の便利がいい。
東京、名古屋、大阪にはすぐに移動できる。
羽田や中部空港に出れば、北海道や九州、沖縄に簡単に行ける。
四国などに比べ、静岡は本当に交通に恵まれた県。
恵まれているのに、もっと恵まれたいという甘え。
その結果、搭乗率が当初計画に達しなかった場合に
支援金を支払う「搭乗率保証」を約束、
今になって県とJALは対立を深めている。

開港当時のJALの社長さんは、浜松ご出身。
JAL再建に向けて東奔西走され、大変なご苦労をされた。
積もり積もったJALの経営問題の責任をすべてかぶり、
最後には、地元でも撤退問題で批判の的に。
私は運命など信じないが、あの人だけは本当に運が悪かったなぁと、
本当にご同情申し上げるしかない。

空港の赤字補てんは誰がするのか。
そのツケを、子や孫の世代に残してはならない。
何が何でも、地域に必要なインフラに再生させなければ。
こんなに恵まれた静岡にある空港に、
バラ色の未来はやってくるのか。

http://www.nikkei.com/biz/blog/article/g=96958A9C93819499E2E1E2E2808DE2E1E2E4E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;p=9694E2E7E2E3E0E2E3E2E1E3EBE3

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