2008年6月14日土曜日

[第1部・ロシア]「芸術」支える好調経済

(読売 4月28日)

「周囲のバックアップには、本当に感謝しているわ」。
スラリと伸びた長い手足。シンクロナイズド・スイミングの
ソロの女王として世界に君臨するナタリア・イーシェンコは静かに話す。

国際大会で優勝したロシアのスポーツ選手への報酬はすさまじい。
五輪の金メダル、世界選手権優勝クラスだと、
30万ドル(約3090万円)が手渡され、
さらに時価5000万円はするというモスクワの高級マンションが与えられる。
イーシェンコ本人は語りたがらないが、2006年のワールドカップで
優勝した彼女が、それに匹敵する報酬を得たのは、間違いない。

報酬は、どこから支払われるのか?
ロシア・シンクロ協会のイーゴリ・カルタショフ副会長が事情を説明。
プーチン大統領が知り合いの企業家たちに頼んで、金を出させる。
企業家たちも大統領に言われると、嫌とは言えない。
仕事がしにくくなるから」。

豊富なエネルギー資源を背景に、空前の好景気に沸くロシア。
専用のジェット機を持ち、高級車を乗り回す
新興の企業家たちが選手をサポート。

ロシアは、シンクロで圧倒的な強さを誇っていた。
五輪では2000年以降、金メダルを独占。
高い芸術性が強さの秘密。

84年のロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得し、
現在国際審判員を務める本間三和子(旧姓元好)・筑波大准教授は、
「私が今まで見てきた演技の中で、背中がゾクッとしたのはロシアだけ」。
切れ目のない優雅な所作と音楽にあった動き。
歴史的に数多くの作曲家、演奏家を生みだし、
バレエやダンスの伝統を持つ国。
「あの芸術性は、他国には絶対にマネできない」。

ロシアには、もう一つの“伝統”がある。
全国から5~7歳の優秀な選手を集め、徹底的な英才教育を施す。
年代ごとにふるいにかけ、生き残ったエリートだけが代表チームに入れる。
「まさに共産主義的な選手育成法と言える。
ソ連邦崩壊後、この育成法はいったん中断したんだけど……」。
復活させた張本人のイーゴリ副会長はニヤリと笑った。

政治体制が変わっても、脈々と受け継がれた芸術家気質。
共産主義時代に生まれたスパルタ教育法。
現在の成長経済を背景にした強力なバックアップ態勢。
シンクロの強さは、激動の国ロシアを象徴。

輝く金髪に青い瞳。
「ええ、もちろん私は現政権を支持するわ」。
まだ22歳のシンクロの女王は、ためらいなく言い切った。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080428.htm

落語:笑って健康に オリンパスが「げんき化計画」で病院向けに配信

(毎日 6月5日)

病室で落語を楽しめるサービスを、
オリンパスと関連会社のラジオカフェが、インターネットで提供。
落語を聞いて笑うことで、健康に良い影響があるとして、
病院向け情報配信プロジェクト「げんき化計画」の一環として導入。

「落語の日」、噺家の桂平治さんと、桂さんの弟弟子で
中央群馬脳神経外科病院理事長の中島英雄さんを招き、
落語の効能についての説明会。

桂平治さんは、知ったかぶりの和尚が恥をかく「転失気」(てんしき)を披露。
中島さんは、落語を聞いて笑っている時の脳の変化について、
病院での取り組みを交えて紹介。

「笑うと健康に良い」と言われるが、中島さんによると個人差があり、
これまで科学的な研究の対象にならなかった。
中島さんが患者の協力を得て、落語を聞いて笑った後の
脳や身体の変化を調べた結果、「血糖値が下がる」、
「中性脂肪が減る」などのデータを得た。

「血糖値が正常範囲の人が(笑うことで)低血糖になることはない。
(血糖が)少ないと増え、多いと減ることが『笑い』による変化の特徴」。
笑った後には脳血流が増え、特に左脳で増加率が高い。
調べた人数がまだ少ないため、今後も調査を続ける。

中島さんは、病院内で寄席を開いている。
客は患者や退院した人たちのほか、近所の住民も。
同門の噺家らを招くほか、自らも高座に上がる中島さんは
「大脳が正常に動いていないと笑えないので、
(寄席で)笑わないと退院させない」と、噺家らしい冗談を交えて話した。

客を患者に限定しないのは、近所の住民らの笑いにつられて
患者も笑いやすくなるから。
「げんき化計画」は、病院にテレビやインターネットを見るための機器を
設置するヴァイタスの端末専用で、06年10月にスタート。
落語のほか、クラシック音楽やバーチャル美術館など、
入院患者向けのコンテンツを提供。

オリンパスは、2011年の地上アナログ放送終了を視野に、
これまでテレビが主だった病室の機器として
インターネット接続機能の需要が高まるとみており、
情報配信サービスを充実させたい考え。

http://mainichi.jp/life/health/news/20080605mog00m100028000c.html

肥満と過体重の十代は慢性疾患のリスクが高い

(Medscape 6月2日)

肥満または過体重の十代は、2型糖尿病、心血管疾患、
脂肪肝疾患など慢性疾患のリスクが高いという
オーストラリアの横断研究の結果が、
『Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine』6月号に発表。

Elizabeth Denney-Wilson(シドニー大学)らは、
「肥満の小児と思春期小児は、心血管疾患、2型糖尿病、
脂肪肝疾患の代謝性リスク因子の保有率が高い
ことが、
複数の研究で示されている」。

「肥満保有率に並行して、有病率も増大すると予測されるが、
十代の一般集団における慢性疾患リスク因子については
ほとんど分かっていなかった。
同時罹患疾患に関する最近の研究のほとんどは、
重度の肥満を有する十代の、臨床現場で構成された集団を対象にした
ものばかりであり、代謝性合併症の全体については研究されていない。」

今回の研究の目的は、肥満症の指数(肥満指数[BMI]と腹囲)と、
心疾患、2型糖尿病、脂肪肝疾患のリスク因子との関連性、
思春期中期におけるリスク因子の集積を評価すること。

シドニーの中等学校の第10学年の小児496例を、
国際肥満専門部会(International Obesity Task Force)の
カットオフ値と英国腹囲カットオフ値に基づいて、
過体重または肥満に分類。
平均年齢は15.4 ± 0.4歳、男児が58.4%。

高比重(HDL)・低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール、トリグリセリド、
インスリン、血糖、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、
γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、
高感度C反応性蛋白(CRP)値を調べた。

これらの結果は、ガイドラインに従って正常と異常に分類。
ロジスティック回帰分析を使って、
過体重・肥満とリスク因子との関連性、個人内のリスク因子の集積を判定。

思春期男児において、過体重・肥満の有意に連関していた因子は、
インスリン、ALT、GGT、HDLコレステロール、高感度CRP、血圧であった。
思春期女児において、過体重・肥満と有意に連関していた因子は、
インスリン、HDLコレステロール、高感度CRPであった。

十代の肥満の男児・女児は、過体重でない十代男児・小児に比べ、
2つ以上のリスク因子を有している傾向が有意に強かった
(男児:73.5%対7.6%、女児:44.4%対5.4%)。
「過体重と肥満は、特に男児において、慢性疾患になるリスクが大きい。
腹囲は、代謝性リスク因子の予測因子として、BMIほど優れていない。」

この研究の限界として、心血管疾患の家族歴のデータがないことと
飲酒やその他の薬物使用の報告がないこと。
「脂肪症の傾向、生活習慣、リスク因子を思春期から成人まで追跡すれば、
現在の若年者が成人に達した時には、肥満関連の病態による疾患で
医療システムにかかってくる負担がさらに大きくなると予測ができる」

Arch Pediatr Adolesc Med. 2008;162:566-573.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=74532

まめな動き、長生きの鍵 厚労省研究班が中高年調査

(共同通信社 2008年6月4日)

8万人以上の中高年男女を約9年間追跡した
厚生労働省研究班の疫学調査の結果、
体をまめに動かしている人は、そうでない人に比べ、
死亡リスクが30-40%低い。

仕事か余暇かの別にかかわらず、全体的な身体活動量が多いと
死亡リスクが低くなるとの結果。

国立がんセンターの井上真奈美がん予防・検診研究センター室長
「自分ができる方法で、よく動く時間を増やすのが
早死にの予防につながる」。

調査は、岩手から沖縄まで10都府県の45-74歳の
男女計約8万3000人が対象。
1995年以降の追跡期間中に、約4500人が死亡。

研究班は、筋肉労働やスポーツ、歩いたり立ったりしている時間などを
アンケートし、対象者の1日当たりの平均身体活動量を算出。
その量に応じて4グループに分け、活動量と死亡との関連を調べた。

活動量が最多のグループは、最少グループに比べて
男性で約30%、女性では約40%、死亡リスクが低かった。

疾患別にみると、男性では、最多グループが、
がんで死亡するリスクが約20%、心疾患による死亡リスクが約30%低下。
女性は、がん死亡のリスクが約30%低下。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=74349

心筋へ成長促す物質特定 千葉大がマウス実験で

(共同通信社 2008年6月5日)

受精卵のように未成熟な細胞から、心臓を形作る心筋へと
成長を促すタンパク質を、小室一成・千葉大教授(循環器内科)チームが
マウスの実験で新たに特定し、英科学誌ネイチャー電子版に発表。

マウスの万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)に、
このタンパク質を加えて培養したところ、
心筋細胞に成長する効率が、従来の約20倍程度まで向上。
目的の細胞を効率よくつくる技術が鍵とされる、再生医療に役立つ成果。

マウスのES細胞を骨髄と一緒に培養すると、
心筋細胞ができやすいことに注目。
骨髄細胞を詳しく調べた結果、「IGFBP4」というタンパク質が、
心筋への成長を誘導していることを突き止めた。

小室教授は、「心筋梗塞などの患者に、万能細胞から成長させた
心筋を移植する治療の実現につながる」、
今後はES細胞に加え、新型万能細胞の「iPS細胞」でも研究する方針。

「将来はタンパク質を患者に注射するだけで、
心臓にわずかに存在する幹細胞を心筋に成長させることも
可能になるかもしれない」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=74416

2008年6月13日金曜日

環境・循環型社会白書:環境ビジネス、45兆円市場 「低炭素社会に転換」

(毎日 6月3日)

政府は、08年版の環境・循環型社会白書を了承。
国内の環境ビジネス市場が、00年の30兆円から06年には45兆円に
拡大したとの調査結果を報告、環境対策と経済発展の好循環が生まれ、
「低炭素社会への転換期を迎えた」ことを強調。

水処理や廃棄物管理を含む環境ビジネスは今後、
アジア・アフリカ諸国で、年率10%前後の高い成長率が見込めると予測。

環境問題などに配慮した「社会的責任投資」が、
米国で07年に2・7兆ドル(約280兆円)に及ぶなど、
資金の流れの変化が世界を変えつつあることに触れ、
各国の排出量取引制度や環境関連税制を重点的に解説。

太陽光発電の導入伸び率(06年)について、
スペインの198%増に対し、日本は1%減、
風力発電能力は日本13位など、自然エネルギー分野での立ち遅れを指摘

家庭1世帯当たりの給湯や料理に使うエネルギー消費量は、
米や英、独より多いなど、「省エネ大国」のイメージと異なる側面に注意、
取り組みを求めている。
英訳し、北海道洞爺湖サミットで各国代表団などに配布。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/03/20080603dde001010021000c.html

住民主体の「地域会議」を設置へ 釜石市

(岩手日報 6月10日)

釜石市は、新しい協働の仕組みとして、
住民が地域課題や解決策を話し合う「地域会議」を設置。

話し合った結果は、市の政策案に反映。
政策形成における住民のかかわりを強め、
住民主体の地域づくりを進める。
市は、各地で市政懇談会を開き、協力を呼び掛ける。

地域会議は、市内7カ所にある市生活応援センター内に設置。
構成メンバーは、町内会長や市民団体の代表、民生委員らを想定し、
各30人ほど。同センターが事務局を務める。

地域課題は、これまで各団体が個別に「道路を整備してほしい」などの
要望を市に申し入れ、市が対応を検討。

地域会議では、話し合った課題や解決策を
「地域の意見」として集約。
市と協議して最終決定し、市の政策に反映。
住民が政策決定の一翼を担えるようになるのが特徴。

市は、各センターごとに市政懇談会を開催し、制度を説明。
栗橋地区と唐丹地区をモデル地区として先行設置し、
本年度内に全7カ所に設置したい考え。
活動資金として当面は、1地域会議に年間25万円の交付金を措置。

地域会議設置は、野田武則市長の公約の1つ。
野田市長は、「市民に政策形成のプロセスに入ってもらおうということ。
地域会議を通して、思いや考えを反映させてほしい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080610_6

[第1部・クロアチア](下)「多様性」が生み出した力

(毎日 4月25日)

アテネ五輪男子ハンドボールでクロアチアに金メダルを
もたらした、リノ・チェルバール監督の教え子たちは、
第1次黄金期の選手とは、競技への動機付けの面で大きく違っている。

チェルバールは、強さの秘密について、
どんな環境でも生き抜こうとする前向きさと意思疎通能力。
それは、クロアチア人の遺伝子に刻まれたもの」。

1991年に旧ユーゴスラビアから独立したクロアチアは、
南はアドリア海に面し、西にスロベニア、東にボスニア・ヘルツェゴビナと
セルビア、北にハンガリーと国境を接する。

多くの国に囲まれ、軍事的にも、貿易の上でも重要で、
歴史的に何度も他国に支配された。
チェルバール監督は、「それでも、悲惨さを感じさせないのは
国民に前向きさがあるからだ」。

体格に恵まれなかったこともあり、選手としては大成しなかった。
23歳の若さで指導者になったが、
最初は、選手より若いために信頼されなかった。
「そんな中で前向きにやっていたら、
必死になってチームをまとめようとする私を、
多くの人が認めてくれるようになった。
クロアチア人というのは、そういう人たちなんだ」

昨年9月まで男子日本代表の監督を務めていた
イビツァ・リマニッチ氏は、9か国語を話す。
クロアチア人の強みを体現する一人かもしれない。

様々な国から来た選手が、一つのユニホームで戦う
クラブチームで生きてきた。
伝統や文化、宗教が違う複雑な事情をのみ込んで、
勝利という一つの方向に向かわなければならない。
その上、選手には、言語の壁もあり、誤解が生まれやすい環境。

リマニッチ氏は、「そうしなければ生きられなかったから、
全員がその環境の中で生き抜こうとした。
最後は、どこから来たかなんて考えなかった。
コートに立ったら、プレーがすべてだとわかったよ」。

試合中にも笑顔を絶やさないミルザ・ジョンバは、
チェルバール時代の申し子。
取材に応じた日は誕生日で、朝からひっきりなしに電話が鳴った。
表示される国番号は毎回違い、そのたびに、違う国の言葉で話した。

様々な背景を抱えたファンを持つ彼のファーストネームが、
イスラム圏特有のものだということは、地元の人なら誰でも知っている。
「国のために戦うと言う人もいるけど、
僕はすべての観衆のために戦いたい。
プレーによって、国の隔てなく人を幸せにしたい」。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080425.htm

「世界に誇る平泉文化」 中尊寺貫首が講演

(岩手日報 6月8日)

岩手大(藤井克己学長)の開学記念講演会。
中尊寺の山田俊和貫首が「平泉文化が育んだ浄土思想」と題して講演。市民や大学関係者ら約170人が聴講。

「平泉」の世界遺産登録の可否が決まる本審査を7月に控え、
山田貫首は浄土の意味や平泉文化の根源などについて説いた。
初代藤原清衡の「中尊寺建立供養願文」について、
清衡公は味方だけでなく敵も含め、この地で亡くなった人たちの霊魂を
みんな浄土に導きたいと言った。これはすごい考え方だ」とし、
「これを私たちは世界に誇らなければならない。
岩手の心だと言わなければならない」。
世界遺産登録で発信すべきこととして、
▽自然と共生する
▽人中の尊に生きる(互いの尊いものを認め合う)
▽誓願を持つ
の3点を挙げた。
園遊会では、学生によるジャズ演奏や伝統芸能などが披露。

木を使ったスポーツ「クッブ」普及目指して

(東海新報 6月7日)

「森林・林業日本一のまちづくり」を掲げる住田町は、
木を使ったニュースポーツ「クッブ」の普及を目指している。

環境に配慮した森林認証材を用いるなどしながら、
小学校などで普及活動を進めており、
今秋の第62回「全国レクリエーション大会inいわて」の
特別協賛行事として大会を開催する予定。
スポーツを通じ、特色あるまちづくりを広く発信していく。

クッブは、スウェーデンが発祥の地。
同国語で「薪」を意味し、相手の陣地に置かれた角材などを
丸棒を投げて倒し合うゲーム。
バイキングたちが生み出したとされ、600年以上の伝統を持つ。

屋内外問わず、子どもからお年寄りまで誰もが楽しむことができ、
さらに木を使う環境に優しい遊びとして、
近年は日本国内でも広がりを見せつつある。

http://www.tohkaishimpo.com/

2008年6月12日木曜日

地球と暮らす:/49 海をつくる会 アマモ再生の活動実る

(毎日 6月2日)

海底にたまるヘドロ、ビンや缶などのごみの層--
80年代の初め、横浜市・山下公園の海は、こんなありさま。
海の清掃に取り組んだダイバー仲間が結成したのが、「海をつくる会」。

海に潜りごみを取り除く作業を続けると、体にヘドロのにおいがついた。
10年間、地道な作業を続け、東京湾の浄化も進み、
海は次第に活気を取り戻してきた。

90年、横浜市金沢区の「野島海岸」を新たな活動の場所に選んだ。
海岸の生き物を調査してきた研究者がメンバーに加わったのがきっかけ。
野島海岸は同市で唯一、自然の海岸線や干潟が残る。
潜ってみると、スズキやカレイなど東京湾に生息する魚の多くを確認。

生物観察を続けていた時、地元の漁師からこんな話を聞いた。
「この辺りには昔、『アマモ』がいっぱい生えていて、
手を突っ込んだらカレイやアオリイカが捕れた」。
「昔の海に戻してほしい」。

アマモ」は、帯のような長い葉を持ち浅い海に群生する海草で、
魚が産卵したり、稚魚の隠れ場所になることから「海のゆりかご」。
漁師の言葉をヒントに、野島海岸に
アマモを復活させるプロジェクトが始まった。

自然のアマモが群生する神奈川県横須賀市の走水海岸から
アマモの種を採取し、県水産技術センターの協力で苗に育てた。
00年の冬、野島海岸にアマモを初めて移植。
03年には大規模な赤潮が発生し、植えたアマモが全滅したが、
移植を続けた結果、海底の全面にアマモが生い茂るまでに。

アマモが復活した海には、さまざまな「新顔」の生物が姿をみせる。
ホウボウの稚魚やカスベというエイの仲間、タツノオトシゴ--
最近はアオリイカの産卵も確認。
事務局長の坂本昭夫さん(51)は、「漁師の人たちから
『魚が増えたよ』と声をかけられると喜びを感じる」。

野島海岸で一定の成果が得られた今、
横浜市の河川の河口部にも、アマモを植える取り組みを始めた。
坂本さんは、「今やれることから、海の再生を目指していきたい」。
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◇海をつくる会

約90人の会員のうち、9割がダイバー。
海ばかりでなく、芦ノ湖などの水底の清掃を行ったり、
イベント会場で海の生き物を展示、紹介する活動。
http://umikai.sakura.ne.jp/

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/02/20080602ddm016040024000c.html

温暖化防止へ市民投資 ファンド設立 太陽光発電や省エネ事業

(東京新聞 2008年5月27日)

市民のお金が地球温暖化を止める、
と市民出資でファンドをつくり太陽光発電や省エネ事業に
投資する取り組みが進んでいる。
「金融商品」のためリスクはあるが、環境に貢献しながら
利益も得られる新しい仕組みが関心を集めている。

ファンド事業を行っているのは、「おひさまエネルギーファンド株式会社」。
太陽光利用推進で知られる長野県飯田市で、2004年に
「おひさま進歩エネルギー有限会社」として発足、
太陽光発電と省エネ事業への出資を呼び掛ける

「南信州おひさまファンド」を募集。

全国の市民約450人から、計約2億円の出資を受け、
飯田市内の幼稚園・公民館を中心に38カ所、計208キロワットの
太陽光発電パネルを取り付けた。

昨年、出資者に合計2333万円を分配。
実績が認められ、環境省のモデル事業にも選ばれ、2億円の補助。
社名変更し、新たに「温暖化防止おひさまファンド」の出資者を募集。
主な投資先は、大規模太陽光発電事業と省エネ事業(長野県南信州地域)、
自然エネルギー・省エネまちづくり事業(岡山県備前岡山地域)、
市民風力発電事業(北海道石狩市)。

6月まで総額約9億円を募集。
ファンド全体で、年間約3千トンのCO2削減につながる。
3月には飯田市、東京都内、大阪市で
自然エネルギーセミナーと出資説明会を開催。
273人から、1億5540万円の出資。
東京での説明会には、約50人が参加。
夫婦で訪れた男性(35)は、「寄付だと一回で終わるけど、
ファンドだと環境問題への関心が維持できる」。

NPO法人環境エネルギー政策研究所所長で、
おひさまエネルギーファンド取締役の飯田哲也さんは
「気候変動の危機回避は待ったなし。
日本は自然エネルギーへの取り組みが遅れている。
市民と地域の力で成功事例を作り、広げていくことが大切」。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2008052702000178.html

神経成長を加速する物質 奈良先端大、ラットで

(共同通信社 2008年6月3日)

神経の先端に集まる「シューティン」と呼ばれる物質に、
神経成長のスピードを速める働きがあることを、
奈良先端科学技術大学院大の稲垣直之准教授(神経科学)のチームが
解明し、米科学誌ジャーナル・オブ・セルバイオロジーに発表。

人では胎児期に盛んにつくられ、
高度な脳ができるのに一役かっているらしい。
成長すると分泌されなくなるが、稲垣准教授は
「脊髄損傷や脳卒中を起こした患者の脳に投与できれば、
神経再生につながる可能性がある」。

シューティンは2006年、成長する神経先端の軸索で同チームが発見。
今回はラット実験で、別の2つのタンパク質と一緒に働いて
神経が伸びる速さを調節しているのを確かめた。
シューティンの量を増やすと、成長スピードが速まり、
減らすと成長が鈍った。

「がん細胞や白血球でも働いており、
細胞が移動する仕組みの解明にも役立ちそう」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=74185

[第1部・クロアチア](中)練習のさなか 空襲警報

(読売 4月24日)

現在、男子ハンドボールのクロアチア代表の中心選手として
活躍するニクサ・カレブの自宅は、ボスニアとの国境にあり、
1990年代に内戦が起きた地域に近かった。

19歳の時、防空壕から抜け出して家の窓から、
母国戦車が敵陣を砲撃するのが見えた。
「心臓がドクドクと音をたてるのが聞こえた」。

当時、1996年のアトランタ五輪金メダリストのボジダー・ヨビッチ氏は、
首都ザグレブ市内のクラブチームでプレー。
練習をしていると、空襲警報が鳴った。
敵機が2分で飛んで来ることができる位置だったから、
急いで防空壕の中に隠れた。

ある日、大きな爆発音を聞いた。
爆弾が中心部の中学校の校庭に落ちた。
いつも子どもたちがサッカーで遊んでいた場所に、
クレーターのような大きな穴ができた。怒りと恐怖で、心臓が震えた。

50~60回の空襲警報があり、ザグレブ市内に爆弾が落とされたのは、
学校に落ちたものを含めて2度。
暗い防空壕の中で、警報がやむのを待った。
「爆弾を落としていった飛行機が飛び立ったのは、
多分、自分が生まれ育った場所。複雑な思いだったよ」と当時を回想。

当時使われていた防空壕は、今も市内の各所に残されていた。
そのうちのひとつに案内された。
幼稚園の遊具のひとつとしてある小高い山に、ドアが付いていた。
そのドアを開けると、奥にコンクリートで作った階段があり、
そこから人が下りられるようになっている。

地下へ5メートルほど階段を下りると、音楽スタジオの防音設備のような
分厚いドアが二重になっていた。
入ると、暗い15畳ほどの部屋が二つ。
金網のような3段ベッドが並んでいた。
足下には、1トンほどの飲料水が入るプラスチックタンクが一つ。
非常食の大きな袋も積まれていた。

カギを開けて案内してくれた幼稚園の関係者は、
「30年ほど前につくられ、90年代の内戦時にも使われた。
核攻撃にも耐えられるものだ。
写真は撮ってもいいが、場所は書かないでほしい。
これから使うことがあるかもしれないから」。

クロアチアの人々にとって戦争は過去の歴史ではなく、
今後も直面するかもしれない現実。
心の底には、いつも、防空壕の中での不安と戦いに備える
気持ちが張り付いている。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080424.htm

三鉄、物販てこ入れ 開発進め全国発信

(岩手日報 6月6日)

第三セクター三陸鉄道(山口和彦社長)は本年度、
旅客事業などに加え、物販事業にも力を入れる。
既に商品化されている「三鉄赤字せんべい」、「また乗レール」(マドレーヌ)
などのオリジナル商品に加え、新たな商品開発を進める考え。

物販事業へのてこ入れで鉄道収入の不足を補い、
「三陸」の知名度アップと地元商品の全国発信を狙う。

三陸鉄道は現在、携帯ストラップや車両型警報ブザー、
キーホルダーなどグッズ類10種類とせんべい、マドレーヌ、
「赤字カットわかめ」、昆布巻きなど食品9種類を販売。

2006年12月から販売を始めた「三鉄赤字せんべい」は、
山田町の菓子工房三石が開発。
苦しい台所事情を表すストレートな商品名、ゴマと青のりの風味が効いた
甘いクッキーのような仕上がりが好評で、
昨年度は1カ月平均約30万円の売り上げ。

女性運転士をキャラクター化した「久慈ありす」も人気。
今年4月には「久慈ありすの好物はホヤだった」との設定で、
ホヤの薫製を新発売。
25グラム入り400円を1カ月で400個売るなど好調。

三陸鉄道は昨年度、営業企画課内に物販セクションを設置。
本年度から物産企画課を新設し、3人の職員体制を敷いた。
物販事業の売り上げは昨年度5300万円で、本年度は1億円を目指す。

全国では千葉県の三セク・銚子電鉄が、
「電車運行維持のために『ぬれ煎餅』を買ってください」
と呼び掛け、注目を集めた。

三陸鉄道の07年度決算は、経常赤字が1億715万円。
旅客収入は、前年度比3・8%増の3億9741万円だが、
14年連続の赤字。
県と沿線12市町村は、赤字分を損失補助金として充当。

山口社長は、「今後も旅客収入の増収に力を入れるとともに、
物販を増やし、経営のプラスにしていきたい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080606_15

2008年6月11日水曜日

[第1部・クロアチア](上)内戦…母国のため戦う

(読売 4月23日)

男子ハンドボール界でのクロアチアの強さは、抜きんでている。
人口440万人程度の小国が、サッカーやテニスなど
数々の競技で世界的な名選手を生んでいることは知られているが、
なかでもハンドボールは、王座に君臨する強さ。

クロアチアには、2つの黄金期があった。
最初は、1991年の内戦直後。アトランタ五輪で金を獲得。
もう一つは、アテネ五輪で優勝したリノ・チェルバール監督の時代。

アトランタ五輪で活躍したボジダール・ヨビッチ氏は、内戦時、
生まれ育った土地、バナルーカがセルビア人に占領され、ザグレブに移った。
20歳の時、故郷に残っていた親類から父に電話がかかってきた。
「叔父が誘拐された」。
「丸一日たって、叔父の遺体が川に捨てられているのが発見。
この時期、約50人のクロアチア人が誘拐されて帰ってこなかった」

内戦が続いていた92、93年は、欧州クラブ選手権に出場したが、
本拠地で試合をさせてもらえなかった。
ホームの試合は、ドイツの会場で行われた。
当時のクロアチアは、多くの人が他国に避難し、労働者として働いていた。
ドイツでの試合は、地元で働く同胞が観客席を埋め尽くした。

母国というのは、一番美しいもの。
故郷というのは、自分を大切に思い、応援してくれる人々のこと。
金や名誉のためじゃない。あのころは、その人々のために戦っていた」

アトランタ五輪で、母国・クロアチアの代表だったネナ・クリヤイッチ氏は、
それ以前、ユーゴスラビアの代表として戦っていた。
代表監督だった父の影響で始めた。
88年にザグレブで欧州優勝。その後、ユーゴの代表に。

内戦が激しくなり、選手たちは「おれたちも前線に行きたい」と言い出した。
それを議会が反対。
それでも収まらない選手が多く、
「スポーツ選手として、特権を受けるのはいやだ」と。

そんな時、代表選手らに極秘の指令が下った。
「本当に戦わなければならなくなったら、
最前線に出すためのスポーツ選手の特別部隊を組む。
だから、今は踏みとどまってくれ。
君たちが死んだら、子供たちが悲しみ、国民の士気が下がる」。

「私たち選手が、どんな気持ちでコートにいたか。分かるだろう」。
クリヤイッチ氏の目が悲しく光った。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080423.htm

全盲・全ろうの福島氏に博士号、11日に東大で授与式

(読売 6月7日)

目と耳がともに不自由な東京大学先端科学技術研究センターの
福島智・准教授(45)に、博士号が授与。
全盲ろう者の博士号取得は日本で初めてといい、
11日に東大駒場キャンパスで授与式が行われる。

福島准教授は9歳で失明、18歳の時に聴力も失ったが、
母親の令子さん(74)が点六つを組み合わせる点字を応用して、
両手の指6本で福島さんの手をとんとんとたたく「指点字」を考案。
盲ろう者として、国内で初めて大学(東京都立大)に進学。

障害者と社会のあり方を研究している福島准教授は、
6年ほど前から博士論文の準備を始めた。
言葉のない世界に陥った状況から、指点字で他人との意思疎通が
再び可能になる過程を、日記や作文、録音テープなどの資料や、
親や友人といった関係者の証言を基に分析。
コミュニケーションでは、口調や声の強弱といった話しぶりや
間の取り方など、言葉の内容以外の感覚的な情報が
いかに重要かを考察。

福島准教授は、「人生をかけて、自分しかできない実験を
続けているようなもの。コミュニケーションは、
空気や水や食べ物と同じぐらい重要」として、
盲ろう者などへの支援の重要性を強調。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080607-OYT1T00402.htm

理科学習:「大切」と考える中3、国際比較で最低水準

(毎日 6月6日)

「理科の勉強は大切で、将来に役立てたい」
と考える中学3年生の割合を07年、経済協力開発機構(OECD)が
実施した15歳対象の国際学習到達度(PISA)調査に
当てはめたところ、57カ国・地域中54位の水準であることが
国立教育政策研究所の調査で分かった。

「科学は身近で有用」と思う中3の割合も、
52位と国際水準に達していなかった。
「科学を学ぶのが楽しい」と答えた割合は、36位と国際水準並みで、
中学の授業で理科の大切さや有用性を伝えきれていない実情。

07年の国際調査で、日本の高1の理科学習の意欲や関心度が
国際的に最低レベルと判明したことから、
中3の状況を探るため調査。
08年1~2月、全国の中3約3000人に、高1と同じ質問。

同研究所は、「科学を学ぶ意義を実感できる授業に変え、
科学関連の職業への関心を高める情報をもっと与える必要がある」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080606k0000m040123000c.html

07年の出生率1・34 本県は前年と同率

(岩手日報 6月5日)

女性1人が、生涯に産む子供の推定人数を示す合計特殊出生率が、
2007年は1・34。
厚生労働省の人口動態統計(概数)で分かった。
06年を0・02上回り、過去最低だった05年(1・26)から2年連続の上昇。

07年に国内で生まれた日本人の赤ちゃんは、
前年より2929人減の108万9745人で、
死亡者数はこれを上回る110万8280人(2万3830人増)。
初めて自然減となった05年以来、人口が再びマイナスに転じた。
死者のうち、自殺は3万777人で、2年ぶりに3万人を超えた。

わずかながら出生率がアップしたことについて同省は、
前年に引き続き、団塊ジュニア世代を中心とした30代後半の
“駆け込み出産”が要因の1つ。

少子高齢化により、出産可能な女性人口が大きく減る中、
こうした現象が出生数を微減にとどめ、出生率全体を押し上げた。
年齢別の出生率は、10代と20代が前年より下降したが、
30代以上はいずれも上昇。
この結果、全体で0・02の上昇。
35-39歳の上昇分が、0・0139と最も大きかった。

都道府県別では、沖縄がトップで1・75、宮崎1・59、
熊本と鹿児島の1・54。
最低は東京1・05、京都1・18、北海道1・19など、
大都市を含む地域が低かった。

本県の2007年の合計特殊出生率は、
過去最低だった06年と同率の1・39。
生まれた赤ちゃんの数は、06年を212人下回る1万344人。

自殺者は、06年より29人減少し438人。
10万人当たりの死亡率は、32・2で全国で4番目に高い。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080605_1

「平成の名水百選」に 本県から3カ所

(岩手日報 6月5日)

環境省が選定した「平成の名水百選」に、
本県から盛岡市の「大慈清水・青龍水」、「中津川綱取ダム下流」と
一関市の「須川岳秘水ぶなの恵み」が選ばれた。
名水の選定は、1985年以来23年ぶり。
水質・水量のほか、親しみやすさや住民らによる保全活動が高く評価。

【大慈清水・青龍水】

古い街並みが残る盛岡市鉈屋町にある。
周辺住民で構成する用水組合が管理し、井戸の清掃や周辺環境の整備。
一番井戸は飲み水、二番井戸は米とぎ水、三番井戸は洗い物などと
用途が決まっており、豊かな水資源を有効利用。

【中津川綱取ダム下流】

秋にはサケが遡上し、冬には白鳥が飛来する盛岡市中心部を流れる
自然豊かな川。
河川敷には自然散策路が整備され、市民の憩いの場。
市民団体による清掃活動や保全活動も盛んだ。
市は、大慈清水・青龍水と併せ、盛岡ブランドとして発信。
谷藤裕明市長は、「盛岡の誇りであり大きな喜び。名水を後世に伝えたい」。

【須川岳秘水ぶなの恵み】

一関市厳美町祭畤山国有林内にあり、
須川岳(栗駒山)の湯治客の荷物や客自身を背負って
登山道を行く案内人の、のどを潤していたわき水。
道路整備とともに所在が不明に。
1980年代後半に、ブナ原生林伐採計画が持ち上がったとき、
地元住民が自然保護を訴えて水源を探索、2000年に発見。
現在は水飲み場が整備され、市民に親しまれる。
地ビールの仕込み水にも使われている。

1985年選定の「名水百選」では、
本県から岩泉町の「龍泉洞地底湖の水」、
八幡平市の「金沢清水」が選ばれている。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080605_10

2008年6月10日火曜日

UNEP笹川賞:2団体が受賞 太陽光発電レンタルのラオス企業など

(毎日 6月2日)

UNEP(国連環境計画)と日本財団が創設した国際的な環境賞
「UNEP笹川賞」の今年の受賞者が決まった。

東南アジアのラオスで太陽光発電設備のレンタルを手がける
民間企業「サンラボブ」社と、南米ペルー・アンデス山脈のふもとで
超小型の水力発電設備による電力を供給しているNGO
プラクティカル・アクション」の2団体が受賞。

「サンラボブ」社は01年、ラオスの実業家、アンディ・シュローター氏が設立。
電力網の行き届かない農村部に、太陽光発電システムや
携帯太陽光発電ランプを安く貸し出し、
自家発電用の灯油の使用量を減らすことに成功。

「プラクティカル・アクション」は1966年に設立されたNGOで、
英国ラグビー市の本部のほか、世界8カ所に事務所を置く。
開発が遅れたペルー北部のアンデス山脈の東麓地域で85年以降、
現地の河川に管理が比較的容易なマイクロ水力発電を47基設置。
自然エネルギーによる電力を5000家族に供給。

UNEPのシュタイナー事務局長は、
「地球温暖化対策として効果がある二酸化炭素の排出削減に
どれだけ貢献できるかという基準を軸に、地域への貢献度などを
評価に加えて受賞者を決めた」。

選考委員の一人でノーベル平和賞受賞者のワンガリ・マータイさんは、
「この賞を通じ、草の根で活動している運動家に光を当て、
支援することができてうれしい」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/02/20080602ddm016040018000c.html

活性酸素:除去の新たな仕組み発見 「老化遅らせる薬」に道?

(毎日 6月1日)

発がんや老化など有害な作用を持つ「活性酸素」を、
生物が除去する新たな仕組みを、
産業技術総合研究所関西センターなどのチームが見つけた。
将来、老化を遅らせる薬などの開発につながる可能性も。

同センターの中村努主任研究員と大阪大大学院工学研究科の
井上豪教授らは、微生物の一種「古細菌」が活性酸素除去に使う
たんぱく質を結晶として取り出した。
この結晶に、活性酸素の一種である「過酸化水素」を加えた。

活性酸素の分解過程で、どのような物質が生じているかを
詳細に調べるため、反応後の時間を少しずつ変え、
マイナス190度で凍結。反応が進まないように分析。

その結果、「スルフラン誘導体」という硫黄化合物が見つかった。
従来は、除去に関係しないと考えられていた物質で、
活性酸素を除去する新しい仕組み。

中村研究員によると、古細菌のたんぱく質に似たたんぱく質は
人体にもある。
反応を詳細に研究すれば、老化を遅らせる薬の開発にもつながる。
硫黄化合物の新たな合成法を開発できる可能性も。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/01/20080601ddm016040039000c.html

実像探る基礎研究、しのぎ削る世界 iPS細胞・研究最前線/上

(毎日新聞社 2008年6月1日)

山中伸弥・京都大教授が生み出した人工多能性幹細胞(iPS細胞)。
再生医療実用化のカギを握るとして熱い注目。
現在は、細胞の基本的な性質や、より安全な作成方法など
基礎研究の蓄積が進められ、世界中の研究者が激しくしのぎを削る。
京都で行われた国際シンポジウムを核に、iPS細胞研究のトピックスを紹介。

◆がん化防止を模索

山中教授は、マウスの皮膚にある「線維芽細胞」に
Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc、
の4つの遺伝子を導入し、iPS細胞を作り出した。
その後、がんの発生に関係するc-Mycを使わない方法でも成功。

いずれの方法でも、遺伝子の運び役として「レトロウイルス」を使う。
これが、がん細胞を生む可能性が指摘。
レトロウイルスは、細胞のDNAにランダムに入り込む。
入る場所が悪いと、細胞が異常化、がん化するおそれ。
導入した遺伝子が、予想外の働きをする可能性も捨てきれない。

そこで、遺伝子の代わりに、低分子の化合物でiPS細胞を作る方法が模索

◆2遺伝子で作成

このテーマで注目を集めているのが、
スクリップス研究所(米国)のシェン・ディン准教授
Oct3/4、Klf4の2遺伝子と低分子化合物で、マウスiPS細胞を作ったと発表。
従来より作成効率も高く、Oct3/4を除く3遺伝子と
化合物の組み合わせでも成功。

ディン准教授は04年、独自に見いだした化合物「リバーシン」を使って、
マウスの筋肉を作る細胞(筋芽細胞)を、
その前段階の前駆細胞に逆戻りさせたと発表。
今回の成果はその延長線上。

「彼は、化合物を使って細胞を初期化させる研究のエキスパート。
今後、この分野で世界をリードするのでは」との期待。
ディン准教授も、「近々、遺伝子を使わず、化合物だけで
iPS細胞を作ることもできるだろう」。

◆疑いを払しょく

米国の幹細胞研究の権威、ルドルフ・イェーニッシュ・
マサチューセッツ工科大(MIT)教授は、iPS細胞にまつわる一つの
“疑義”を晴らすデータを科学誌「セル」で発表。
iPS細胞は、分化が済んだ体細胞から作られている。

だが「実は、元になる体細胞の中に含まれていたごく微量の未分化細胞が、
iPS細胞になったのではないか」という疑問。
これを解決するため、イェーニッシュ教授は、
マウスの免疫を担うリンパ球のB細胞からiPS細胞を作ることに挑戦。

完全に分化した成熟B細胞は、体外からの異物を認識、攻撃するため、
遺伝子の組み換えが起きている。
利根川進・MIT教授が発見した仕組みだが、
イェーニッシュ教授はこの事実を応用。
成熟B細胞から作ったiPS細胞が、組換え後の遺伝子になっていることを
示し、分化が済んだ細胞からiPS細胞が生まれることを証明。

ただし、この方法では、山中教授が見つけた4遺伝子に加えて、
C/EBPαという五つ目の遺伝子が必要。

◆動物で病気治療

イェーニッシュ教授は、動物を使った治療実験でも成果を上げた。
遺伝性貧血症のマウスやパーキンソン病のラットに、
マウスのiPS細胞から作った造血幹細胞やドーパミン産生細胞を
移植し、症状を改善。

人間での臨床応用は、安全面などまだ多くのハードルがあるが、
イェーニッシュ教授は「(iPS細胞を使った人の治療は)
白血病などから始まるのではないか」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=74090

[第1部・フランス](下)エリート育成 国主導

(読売 4月22日)

パリから南東へ約20キロの閑静な町・スーシー。
講道館柔道の祖・嘉納治五郎師範の写真を掲げた
110畳もの広い道場を持つ柔道クラブは、熱気にあふれていた。
年配の男性に交じり、「健康作りが目的」という若い女性や子供の姿も。
打ち込みや乱取りに励む姿もさまになっている。

「将来は五輪選手になりたい。内またが得意なの」と
目を輝かせる中学生のレア・サルディさん(13)の横で、
母親がほほ笑みながら語った。
「うちの子は、エネルギーがあふれているから柔道をやらせたの。
少しはおとなしくなるんじゃないかしら」

柔道メディア研究を手がけるミシェル・ブルース仏ボルドー大教授(55)は、
フランスで隆盛を極めた要因の一つに、
「非行セラピーの役割がある」と指摘。
「柔道をやれば、恥ずかしがり屋の子は積極的になるし、
けんかっ早い子はおとなしくなるケースが多い」。

男子100キロ超級世界王者のテディ・リネール(19)が、
中学生のとき親から「少年院に行くか、柔道を続けるか」と
柔道クラブに放り込まれたのは有名な話。

礼に始まり、礼に終わる柔道。
フランスでは、どの道場にも「八つの心得」が大きく掲げられている。
「礼儀」、「勇気」、「友情」、「克己」、「誠実」、「謙虚」、「名誉」、「尊敬」

これだけ教育的価値の高い習い事を、行政サイドも放っておくはずがない。
普及からトップの強化まで、国レベルでの一貫した指導態勢が構築。

国内に5500か所もある柔道クラブには、
国家資格を持ったコーチを置くことが、1955年から義務づけ。
スーシークラブでコーチを務めるフィリップ・ブカル六段(49)は、
「国のお墨付きがあるので、両親も安心して子供を預けてくれる」。

子供たちが集まった各クラブは、エリート育成のための
重要な人材供給源の役割も果たす。
優秀な選手は、ジュニアの時から各地域で選抜され、
その中のエリート選手が、ナショナルチームの強化を担当する
INSEP(国立スポーツ研究所・体育学校)で、英才教育を受ける。

学校や企業の柔道部が強化の拠点となっている日本とは
全く違うシステムは、まさに「プロ養成」そのもの。
無邪気な子供たちが、笑い声を出しながら練習に打ち込む地域のクラブ。
だが、そののどかさこそが、柔道大国、フランスの強さの源泉に。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080422.htm

地域限定通訳士の1期生活躍中 県内観光地

(岩手日報 6月4日)

観光地で外国人観光客を案内する「地域限定通訳案内士」。
2007年度から本県を含む全国4県で導入され、
県内でも「第1期生」が活躍の場を広げている。

平泉文化の世界遺産登録が決まれば、
外国人観光客の増加が予想されるだけに、
地元ガイドならではの高い専門性に期待。
今後は、「プロの通訳ガイドがいる観光地」という認知度アップも課題。

仙台市職員の岩渕康民さん(59)=奥州市水沢区出身=は
本県の地域限定通訳案内士。
岩渕さんは、「ひらいずみ通訳・ガイドの会」の
通訳案内士・大川博子さんのサポート役として、
米国・ミネソタ州から平泉町の毛越寺と中尊寺を訪れた
カイ・ナン・アンさん(60)と妻のスエイ・チン・ワン(58)さんを案内。

岩渕さんにとっては、資格取得後3回目のガイド。
「平泉は現存する寺院などが少なく、
外国人に理解してもらうための説明に苦労する」と、
平泉の価値を伝える難しさをあらためて実感。

岩渕さんは、仙台市内で約20年間、
英語のボランティアガイドを続けるベテラン。
昨年、本県の地域限定通訳案内士試験に合格し、同会に所属。
公務員のため、無償でガイド活動を行っている。

県内唯一の通訳ガイド団体「ひらいずみ通訳・ガイドの会」
06年2月設立。
通訳案内士16人と地域限定通訳案内士9人を含む45人が所属、
県全域を対象に通訳ガイドや翻訳活動に取り組んでいる。

07年は依頼が倍増したが、県内の通訳ガイドの存在を
旅行代理店など関係者に知ってもらうことが課題。
岩渕勝夫会長は、「4月からホームページやチラシによる宣伝に
力を入れている。ガイドの会を知ってもらい、地元の通訳だからこそ
できるきめ細かい対応をしていくことが必要」。

県は8月31日から本年度の試験を実施。
受験受け付けは27日まで。
問い合わせは、県地域産業課(019・629・5534)へ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080604_13

2008年6月9日月曜日

スポーツ21世紀:新しい波/269 バレー協会・個人登録制度/4

(毎日 5月31日)

日本バレーボール協会(JVA)の個人登録制度が
反発を呼ぶ原因の一つが、デジタル化による選手管理
従来はチームごとに一括して、登録選手のリストを規定の紙に記入して
提出したが、新制度ではインターネットを通じ、個人単位で氏名などを入力。

デジタル化について、JVAの山岸紀郎専務理事は例を挙げて説明。
「ひどい話だが、かつてはA中学の出場登録メンバーに
B中学の生徒がいた--なんてことさえあった」。

紙に選手の氏名を列挙するだけの従来の制度では、
大会本部が出場選手が登録された本人かどうか、確認が難しかった。
「デジタル管理すれば、大会本部が出場選手を登録カードと照合する
などして正確に把握でき、不正を排除できる」。

個人登録制度の導入に伴い、JVAは
「未登録者の公式戦出場は、絶対に認めない」との姿勢。
過渡期だった昨年度は緩やかに運用されたが、今年度からは、
未登録者はJVA主催の全国大会へつながる公式戦に一切出場できない。
すでに今春の全国高校選抜優勝大会の千葉県予選では、
ある学校の主力選手が登録を忘れたため、出場が認められなかった。

東京・筑波大付高の女子バレーボール部を指導する藤生栄一郎教諭は
「教育の立場から見て、問題が多い」
と指摘。

最後の思い出作りに、未登録のバスケット部員2人を加えて、
大会にエントリーしてきた--藤生教諭が挙げた例。
「恐らく1回戦負け。でも、エントリーしてきた心情は分かる」。
現場の温情で大目に見てきた「不正」。
しかし、デジタル化によって、その余地はなくなる。

「彼らを『未登録だ』とはね付けるのが、教育か。
JVAは、選手からスポーツをする権利を奪えるのか」と
首をかしげる藤生教諭。
有志らと「個人登録に反対する草の根バレーの会」をつくり、
活動を繰り広げている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

[第1部・フランス](上)AWAZUの柔道50年

(読売 4月21日)

「Dojo Shozo AWAZU」。
パリ市内にあるフランス連盟の道場には、
ある日本人の名が冠せられている。
粟津正蔵九段(85)。

今や日本の3倍近い56万人の競技人口を誇る
世界最大の柔道大国・フランス。
50年にわたって全仏チームのコーチを務めた粟津は、
「Maitre AWAZU(粟津師範)」とも呼ばれる特別な存在。

2月に行われたフランス国際は、2日間で2万2000人近いファン。
北京五輪でも金メダルを狙う男子100キロ超級の
テディ・リネール(19)は、アイドル並みの人気。
粟津にとっても、現在の盛り上がりぶりは、隔世の感がある。
「まさかここまで柔道のすそ野が広がるなんて、感激だね」

粟津が故郷の京都をたち、パリに来たのは1950年、27歳のとき。
戦前に柔道をフランスに伝えた川石酒造之助七段から、
「1年間だけ柔道を教えてやってくれ」と請われたのがきっかけ。
東洋文化の象徴でもある柔道。

だが、フランスには受け入れる土壌もあった。
粟津の教え子で、75年にフランス初の世界王者(男子軽重量級)
になったジャンリュック・ルージェ仏柔連会長(58)は、
礼儀を重んじる柔道の武士道とフェンシングに代表される騎士道には
共通点がある。国民性に合っていた」。

粟津は、理解しやすい教え方も心がけた。
日本では、初心者に最初に教えるのは受け身。
粟津は、川石が戦前に考案した「川石式」と呼ばれる
ユニークな指導法を取り入れた。

「背負い投げ」などの技名を「腰技1号」と記号化したり、
習熟度で帯の色をカラフルにしたり。
「苦しいのは長続きしない。楽しむ柔道が大事」。
ゲーム感覚が受け入れられて、入門者も増えていった。
「教える喜びで、日本に戻る気はいつの間にかなくなりました」
と粟津は笑う。

強化コーチに就任し、56年に東京で行われた
第1回世界選手権(男子無差別のみ)に全仏チームを率いて凱旋。
クルティーヌが4位に入賞し、人気は一気に高まった。

シドニー五輪100キロ超級で優勝したダビド・ドイエ(39)は
「粟津さんが頑張ったから、今の柔道人気がある」。
今でも、毎週金曜には柔道着姿で畳の上に立つ粟津。
生涯現役を貫く凛としたたたずまいに、
パリっ子たちは最大限の敬意を表している。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080421.htm

自動車拠点へ結束確認 盛岡・とうほく集積会議

(岩手日報 6月4日)

「関東自動車工業岩手工場を、トヨタの国内第三拠点(東北)の
中核工場としての地位を確固たるものにしていく」。
とうほく自動車産業集積連携会議で、トヨタ自動車の高橋徳行常務が
こう強調したことを受け、県内外の関係者は東北のさらなる
自動車産業発展に向け、連携強化と取引拡大への意欲。

「1日1日、ものづくりをしっかりとやっていく。
その結果、期待に応えられるようにしていきたい」。
関自工岩手工場の石井善章工場長は気を引き締めた。

講演会には、東北各地の産学官関係者約300人が出席。
「需要があるところで、世界同一品質で生産する」(高橋常務)とする
トヨタグローバル戦略について、真剣な表情で聞き入った。

とうほく自動車産業集積連携会議の代表幹事を務める達増知事は、
「今後は、自動車メーカー進出効果を東北全域に波及拡大することが重要。
人材の質、量とも高め、アピールしていきたい」。

講演会に先立ち、同連携会議の総会が開かれ、
会員1169人のうち606人(委任状含む)が出席。
6県連携を再確認。

2011年を目標にしたビジョンの達成率(07年度末)は、
自動車関連企業数(目標1200社)が965社で80%、
輸送用機械出荷額(同2兆円)は1兆2301億円で61%と順調。

しかし、商談会(同10回)は2回、商談成約(同300件)は21件にとどまり、
取引拡大が大きな課題。
企業ニーズを踏まえ、技術を売り込む「特定企業向け商談会」を初企画し、
大手部品メーカーのケーヒン(栃木県)を対象に開催。

ケーヒン角田開発センターの佐藤真一購買管理部長は、
「東北は優位性がある。より実のある商談会にしたい」。
達増知事は、「年間40万台生産のうち、一部品を生産できる企業を
創出するのは不可能ではない。取引拡大に積極的に取り組む」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080604_7

奥州市長の公約78点 早大研究所が中間評価

(岩手日報 6月4日)

相原正明奥州市長の選挙公約(マニフェスト)取り組み度は、78点。
早稲田大マニフェスト研究所(北川正恭所長)が行った
中間採点結果が、「高いレベルで取り組んでいる」との評価。

評価は、市の依頼で行い、市の資料と市長、職員からの聞き取りを
もとに100点満点の減点式で採点。
「情報公開や市民との協働の点で物足りないが、
高いレベルで取り組んでいる」として78点。

減点は、ホームページ以外の情報公開、職員間での政策共有、
市民との協働など。
進行度では、市全域にかかわる23項目中、15件が高評価を得たが、
「生活がどう向上したか見えない部分がある」との指摘。
▽マニフェスト担当職員配置など態勢が充実、
▽手法、手段、責任者など細かな工程管理などの点は優れている。

同研究所はこれまで、本県を含む5県3市1区を採点。
最高は、岐阜県多治見市の90点で、多くは70―80点台。
2006年に行った増田寛也前知事は88点。
北川所長は、「着実に具体化させており高く評価できる。
課題を修正し生活者起点の市政実現を」と期待。

相原市長は、「マニフェストは『いつまでに』の部分が重要。
早さ勝負で進めてきた部分もある。
項目達成に加え、生活をどう改善したかに留意し、さらに努力したい」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080604_11

2008年6月8日日曜日

協同組合さんりくランバーと三陸木材高次加工協同組合が総会厳しい経営浮き彫り

(東海新報 5月31日)

住田町世田米の木工団地に工場を構える協同組合さんりくランバー
(曽根哲夫理事長)と三陸木材高次加工協同組合
(通称・三木=さんもく、佐々木英一理事長)は、定期総会を開き、
19年度決算や20年度事業計画について承認。

両事業体の経営危機が表面化した昨年度の決算は、
三木が約7億9500万円、ランバーが約2億4900万円の赤字。
両事業体は、町から巨額の融資を受けて再建に取り組んでおり、
新年度は一層のコスト削減などを図りながら軌道修正を図る。

ランバーの総会には、全組合員(九事業所・団体)が出席。
曽根理事長は、「町からの融資に至ったことを深謝するとともに、
配慮を重く受け止めたい。よい数字を出せるようになっており、
一日も早く健全経営できるよう努力する」。

19年度は、製造経費や管理費といったコスト度外視の生産などもあって
約2億4900万円の赤字決算となり、前期繰越を合わせた
約2億5000万円を繰り越した。
今年度の売り上げ目標は、4億4400万円で、
2千万円の利益確保を目指す。

三木の総会には、組合員の18事業所・団体の代表者のうち、
本人、委任合わせて15人が出席。
佐々木理事長は、「たいへん厳しい状況を報告せねばならず、
おわび申し上げたい。住田町の公金投入という事態を償う唯一の方法は
確かな再建であり、強く認識して取り組む」。

事業報告書によると、19年度は約13億9600万円の売上高、
7億9490万円の当期損失を計上。
前期からの繰越損失と合わせた8億0570万円を繰り越し。

今年度は、24時間操業も視野に入れながら製品歩留まり率向上や
徹底したコスト削減を図り、売り上げ目標は15億円で
6400万円の利益確保を目指す。

任期満了に伴う理事の改選も行われた。
経営危機表面化後、理事は辞任する予定だったが、9人中6人が留任。
「無報酬で再建に取り組み責任をまっとうしたい」。

両事業体は、昨年10月に経営危機が表面化し、
中川信夫総支配人(中川木材商事社長)をトップとする
新執行体制に経営権を移譲。
給与カットや歩留まり向上策などを踏まえた再建計画に取り組む。
中川総支配人が両事業体の今年度4、5月期の単月決算を報告。
4月は、三木が459万、ランバーが25万円、5月は三木が585万円、
ランバーが218万円の純利益を計上、
中川総支配人は、「今後も粉骨砕身努める」と決意。

三木の新理事は次の通り。任期2年。
▽理事=佐々木英一(陸前高田市森林組合)、
曽根哲夫(釜石地方森林組合)、熊谷進(住田町建設業協同組合)、
菊池良一(住田素材生産業協同組合)、金崎功(大槌製材協同組合)、
中川信夫(中川木材商事)、佐々木一彦(住田住宅産業)、
E木澤光毅(気仙地方森林組合)、鈴木忠四郎(鈴木建設)
▽監事=上田昭雄(釜石・大槌素材生産業協同組合)、
菅野勝郎(陸前高田製材業協同組合)

http://www.tohkaishimpo.com/

「津波の追憶」碑に刻む 新山神社鳥居跡地に建立吉浜の千葉組

(東海新報 5月29日)

薄らいでいく津波の教訓を後世に残そうと、
大船渡市三陸町吉浜中井の(株)千葉組(齊藤儀継社長)は、
昭和8年3月3日に襲来した昭和三陸大津波の恐ろしさを伝える
石碑「津波の追憶」を、24日のチリ地震津波記念日に合わせて、
新山神社参道入り口に建立。

旧浜街道沿いの参道入り口にあった石製の大鳥居は、
75年前の三陸大津波で被災、根元部分からポッキリ折れた。
吉浜海岸に堤防がなかった時代で、鳥居はのちに上方の現在地に移設、
壊れた土台部分の石は、道路沿いの草むらの中に残されたまま。
同社の千葉門治会長(77)は、「壊れた石の残骸が気になっていた。
地域と結びつきが深い神社の式年大祭も近づき、
何とかしたいと思っていた」。

石碑は、ヨコ140センチ、タテ120センチの自然石(地元の花崗岩)。
中央に黒御影石のプレート(80センチ×60センチ)をはめ込んだ。
新山神社の渡邊昭博宮司の母、八千代さん(98)らの記憶をもとに
『神社参道入口の鳥居が第二波で被災』、
『津波遡上高は碑頭より3メートル上と追想』、
『残骸としてここに鳥居の一部が存在する』などと刻んだ。

石碑の脇には、壊れた鳥居の一部を安置。
鳥居が実際にあった場所には、『旧鳥居跡地』と記した石柱も併せて建立。
「中国四川省の大地震もあり、改めて災害の教訓を心に刻みたい」。
追憶の碑は、津波の恐しさを現代に語りかけている。

http://www.tohkaishimpo.com/

エネルギー消費、調節メカニズムを解明 メタボ対策薬、開発に可能性

(毎日新聞社 2008年6月1日)

食事で摂取したエネルギーを消費する骨格筋が、
消費量を調節する仕組みを、永井良三・東京大教授(循環器内科)らが
マウスの実験で発見。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の予防や改善などに
つながる可能性がある。

研究チームは、動脈硬化などを起こすたんぱく質「KLF5」の量を
半減させた遺伝子改変マウスを作成。
このマウスは、エサを大量に食べても脂肪細胞が大きくならず、
太りにくい性質を持つことが分かった。

KLF5半減マウスの骨格筋を調べたところ、
脂肪の燃焼を促す遺伝子のうち、少なくとも5種類の働きが
正常マウスに比べ、約1・5~2倍活発。

KLF5の働きを分子レベルで調べると、
KLF5は「SUMO」と呼ばれる分子と結合した場合、
脂肪の燃焼を促す遺伝子の発現を抑制。
SUMOと分離すると、脂肪燃焼遺伝子を増やす指令を出していた。

KLF5半減マウスでは、SUMOと結合したKLF5の働きが減るため、
エネルギー消費が増加して太りにくくなる。

米国で臨床試験が進むメタボ改善薬の一つは、
この研究の成果から、KLF5とSUMOを分離することで、
エネルギー消費を増やしていることが示された。

永井教授は、「エネルギー代謝を低下させる原因と、
生活習慣に起因することが多い動脈硬化や心血管疾患の原因には
分子レベルで共通点があった。
今回解明した仕組みを利用して、太りにくく、心血管疾患を予防する
薬の開発も可能になるだろう」。
「ネイチャー・メディシン」電子版に掲載。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=74091

肺がん:「喫煙と酒」要注意 1日2合で発生率1.7倍--厚労省研究班

(毎日新聞社 2008年5月30日)

日本酒を1日2合以上飲む喫煙者は、
時々たしなむ程度の喫煙者に比べ、肺がんを発症する危険性が
1・7倍高いことが、厚生労働省研究班の調査で分かった。
一方、非喫煙者では、飲酒量と肺がん発生率に関連性はみられない。

研究班は、岩手県など10府県に住む40-69歳の健康な男性
約4万6000人を対象に調査。
飲酒量を、▽ほとんど飲まない、▽時々(月に1-3回)、
▽日本酒で1日1合未満、▽1日1-2合、▽1日2-3合、▽1日3合以上
の6グループに分類、04年までの約14年間追跡。

その結果、喫煙者では1日2~3合飲むグループと3合以上のグループは、
時々のグループに比べ、肺がん発生率がともに1・7倍高い。
飲酒量が増えるほど、発生率が高まる傾向。

アルコール分解酵素がたばこの煙に含まれる発がん物質の働きを
活発化することなどが原因。
飲まないグループも、時々のグループに比べ1・6倍高いが、
「もともと肺がんリスクが高く、飲めなくなっていた人が含まれていた」。
日本酒1合は、ビールで大瓶1本、ワインでグラス2杯に当たる。

分析をまとめた国立がんセンター予防研究部の島津太一研究員は、
「肺がんだけでなく、生活習慣病予防のためにも
1日1合程度に控えた方がいい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=74024

女性の全遺伝情報、初めて解析 オランダチーム

(朝日 2008年05月27日)

オランダのライデン大医学センターの研究チームが
ヒトの女性の全遺伝情報(ゲノム)を初めて解読。

ヒトゲノムは、03年に解読が完了し公開されているが、
匿名を条件に提供された複数の人のゲノムをつなぎ合わせている。
個人のゲノムが解読されたのは、DNAの二重らせん構造を発見した
ジェームズ・ワトソン博士ら男性4人。

オランダ科学研究機構(NWO)によると、
同大学の女性遺伝学者マロリン・クリークさんのゲノムを解読。
今後プライバシーにかかわる部分を除いて公開を予定。

女性のゲノム解読によって、ヒトの遺伝子の多様性がわかり、
女性には通常は二つあり、男性には一つしかない
X染色体の研究にも役立つ。
研究チームのリーダーは、「男性が4人続いたのだから、
性差のバランスをとるにはいい時期だ」。

http://www.asahi.com/science/update/0527/TKY200805270329.html