2008年6月28日土曜日

[第2部・南アフリカ](下)政治の渦中 走り続けた

(読売 6月10日)

ゾーラ・バッド(結婚後、ピータース姓)は歓声よりも、
怒号が渦巻く好奇の目の中で走り続けてきた。
「人類に対する犯罪」、とまで呼ばれたアパルトヘイト(人種隔離政策)。

それに対する反対の声が国際世論となり始めた1980年代、
10代のバッドは彗星のごとく登場。
世界のトップレベルの記録に、裸足で走る姿。
アパルトヘイト下の国の選手であることで、格好の政治的な論争の中心に。

南アが五輪舞台から締め出されていた84年ロサンゼルス五輪で、
英国に国籍を移して出場。
女子三千メートルでは米国のスター、メアリー・デッカーと接触。
デッカーは棄権し、大ブーイングの中、バッドも7位でレースを終えた。

南アが五輪の舞台に復帰した92年バルセロナ五輪には、
今度は堂々と南ア代表として再び同じ種目に出場したが、
すでに全盛期の力はなく、あえなく予選落ち。国際舞台から去った。

自分では、どうすることも出来ない状況下で競技生活を
送らざるを得なかったバッド。
「五輪にいい思い出はない。もちろん『あの時、ああじゃなかったら』と
思うことはある。スポーツと政治は、別であるべきなんだけど」

今も楽しみのために走るが、
テレビで五輪やスポーツを観戦することはない。
現役時代の写真やメダルも一切、家にはない。
選手育成にも興味はない。
第一線から退いた後、結婚し、長女と男女の双子の3人の子供に恵まれた。
静かな田舎町、故郷ブルームフォンテーンで子育ての傍ら、
キリスト教の教えを基にしたセラピスト(心理療法士)を目指している。

「誰に勝ちたいとか、記録を狙うなどの目的で走っていたんじゃない。
私にとってランニングは、悲しみや苦しみのはけ口だった。
でも、本当は、ただ好きだから走っていただけ

以前は、子供に自分の体験を話すつもりなどなかったが、
ある日、長女が学校から帰宅して興奮した口調で聞いた。
「お母さんがあのバッドなの。教科書に載っていた」。
政治的な発言は、今も避ける。
しかし、最近、親として子供に伝えたい気持ちも芽生えている。
「とてもいやな体験だったけど、今から考えれば、困難な状況に陥った時の
対処の仕方を学んだし、得難い経験だったとも思う。
何より、スポーツは人生を教えてくれるものだから

淡々と話し続けていたバッドに、ずっと身を寄せていた長女が顔を上げて、
母親のほおにそっとキスをした。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080610.htm

学生をつくる(10)「まず疑え」思考力養う

(読売 6月14日)

学生へのアンケートを、新入生向けの教材にする授業がある。
国際基督教大学(ICU)で、1年生21人が、
手にした紙を食い入るように見つめていた。

13の設問が、日本語と英語で書かれた
同大の授業評価アンケートの用紙。
「授業の評価とはどういうことか、話し合って」。
渡辺敦子講師(46)が英語で指示を出すと、学生も英語で
「教師のランク付け」、「学生の心情をぶつける」と、次々に口を開いた。

ICUの1年生には、必修の英語が週8コマあり、英語を通した
「批判的思考力」の育成も目的。
授業評価のアンケートも、その教材の一つ。
「なぜ学生に評価の権利があるか」、「評価する学生の義務は?」。
渡辺さんが質問を重ねるうち、学生の表情に真剣さが増した。

ICUは、1953年の開学以来、批判的思考力の育成を掲げてきた。
「学びは自分でつかむもの。それには、批判的思考力は不可欠だと、
1年次で気づいてほしい」。
10年前からICUの英語教育に携わってきた富山真知子教授(55)が強調。
批判的思考力とは、「情報や知識を客観的、論理的に分析し、
評価する能力」(富山さん)。大切なのは、吟味する過程。

入試を経たばかりの学生は、権威に弱い傾向があり、
「辞書に出ている」、「著名な学者が書いている」というだけで満足。
詰め込んだ知識の内容の吟味に踏み込む必要がなかった。
英語を介することは、日本流のあいまいな会話や考え方にも
疑問を持ってほしい。

授業を通して、教員は「うのみにするな」、「まず疑え」と繰り返す。
だからこそ、授業評価アンケートも格好の教材に。
大学のすることだからと、無批判に受け止めるのではなく、
なぜこういうことをするのか、評価する自分自身はどう学んでいるのか、
客観的に考えることを期待。

OECD(経済協力開発機構)が、各国の大学4年生の力を測り、
比べる指標の一つに批判的思考力を打ち出したことを機に、
最近、同大の授業方法への問い合わせが増えている。
かつてなかったことだけに、
「日本の大学が変わりつつある」と富山さんは実感。

批判的思考力は、専門課程でさらに磨きをかける。
2年以上を対象にした「神学宗教学特別研究」の森本あんり教授(51)は
少人数クラスで、英語の哲学書の精読と、学生同士の討論を繰り返す。
批判的思考力を、「自分の眼鏡を外し、その眼鏡を点検する」
かみ砕いて説いたうえで、
「4年では完成しない。だが必ずあとで生きる」。

社会に出て役立つ力を蓄える最後の学びの場。
その責任は重く、いま厳しく質が問われている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080614-OYT8T00255.htm

東京2009アジアユースパラゲームズ調印式が行われる

(東京オリンピック招致委員会 6月17日)

「東京2009アジアユースパラゲームズ」
(主催/アジアパラリンピック委員会(APC)、
東京2009アジアユースパラゲームズ組織委員会)の調印式。
東京オリンピック招致委員会会長の石原慎太郎東京都知事も
開催都市代表として出席。

東京2009アジアユースパラゲームズは、
障害のあるアジアの青少年を参加対象とする国際総合競技大会で、
東京での開催が決定。

APCのザイナル・アブ・ザリン会長と、東京2009アジアユースパラゲームズ
組織委員会の北郷勲夫委員長が、石原都知事立会いのもと、
「東京2009アジアユースパラゲームズ開催に関する協定書」に調印。
北郷委員長は、東京オリンピック招致委員会の理事。

ザイナル会長は、「東京は、第2回アジアユースラパゲームズの主催地に。
アジアパラリンピック委員会に加盟する40カ国・地域のメンバーが
2009年を心待ちにしている。選手たちは競技に参加するために、
ある者は観客として、ぜひ東京にやってきたいと、今から期待している」、

北郷委員長は、「アジア40カ国・地域のハンディキャップのある青少年の
期待に応え、障害者スポーツの振興に最大の努力をしたい」。

石原都知事は、「(大会期間中は)応援を含め、1000人以上が
東京を訪れると聞いている。14~19歳の若者がハンディキャップにもめげず、
アスリートとして競うのは、これからの人生において大きな喜びに。
東京が、そうした若者たちの人生に大きな贈り物ができることをうれしく思う」。

2016年のオリンピック・パラリンピック招致を目指す東京で、
大規模な国際総合競技大会が開かれることは、
障害者スポーツへの理解と、パラリンピックの招致機運を高める契機。

東京2009アジアユースパラゲームズの大会期間は、
2009年9月8~15日の8日間。
陸上競技、水泳、卓球、ボッチャ、ゴールボール、
車いすテニス(オープン競技)の6競技。

・国立霞ヶ丘競技場(陸上競技)
・国立代々木体育館(ゴールボール、車いすテニス)
・東京体育館(卓球、ボッチャ)
・東京辰巳国際水泳場(水泳)
これらは、東京オリンピック・パラリンピックの競技会場プランに含まれる。

*ゴールボール
視覚障害者による対戦型スポーツ。1チーム3名の選手が、
鈴の入ったボールを投球し攻撃したり、鈴の音を頼りに身体全体を使って
セービングしたりしながら得点を競い合う競技。

*ボッチャ
決められたコートの中で、ジャックと呼ばれる白いターゲットボールに、
赤いボール6個と青いボール6個をそれぞれ投球し合い、
ジャックにどれだけボールを近づけられるかを競う競技。

http://www.tokyo2016.or.jp/jp/news/2008/06/2009.html

睡眠不足だと間食し過ぎる?

(WebMD 6月11日)

クッキーの瓶に手を伸ばすのを、我慢できないのはなぜか?
それは、夜更かしをしているせいかもしれない。
睡眠を十分にとっていない人々は、しばしば好きなだけ
過剰な間食をしていることを、研究者らは見出した。

米国睡眠医学会(AASM)のスポークスマンであるSanjeev Kothareは、
この研究は、睡眠不足が肥満につながることがある理由を
何とか知ろうと試みているため重要。
ハーバードメディカルスクールの睡眠専門家であるKothare博士は、
間食によって、高カロリーを摂取することが関与することを示唆する」。

睡眠試験施設に、14日間ずつ2度滞在する11例の男女が参加。
一方の試験期間中、毎晩5時間半しか睡眠をとらせなかった。
もう一方の試験期間中、毎晩8時間半、睡眠をとらせた。
両方の試験期間中、被験者は
食べたくなったら、いつでも好きなだけ食べることができた。

シカゴ大学のPlamen Penevは、第22回米国睡眠関連連合学会年次総会、
SLEEP 2008(シカゴ)で知見を発表。
結果は、睡眠時間を5時間半に制限した場合、
被験者は1日に間食だけで平均1,087kcal摂取。
一方、8時間半の睡眠をとった場合、
被験者は間食によって866kcalを摂取。
1日あたりの総摂取カロリーと総体重増加量は、
両方の試験期間において同様。

Kothare博士は、被験者が数週間しか試験を行わなかった点に言及。
より長期にわたり経過観察をしていれば、他の変化が認められた可能性がある。
AASMは、成人は毎晩7 - 8時間の睡眠をとるよう推奨。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=75522

ぜんそく、黄砂で悪化 環境汚染物質含み 鳥取大、きょう発表

(毎日新聞社 2008年6月17日)

中国大陸から飛来する黄砂により、日本のぜんそく患者の症状が
悪化している可能性のあることが、鳥取大の調査で分かった。
中国から黄砂に乗って飛来する環境汚染物質による
日本での健康被害が懸念される中、具体的な調査事例として注目。

調査は、同大付属病院(鳥取県米子市)を受診した20歳以上の
ぜんそく患者117人を対象。
07年3-5月に、黄砂で同市内の視界が10キロ以下になった
計9日間について、翌日以降に電話で聞き取り調査。

その結果、3月と4月では27人(約23%)で、せきや痰が多くなるなど
ぜんそく症状の悪化がみられた。
スギ花粉の影響を除外するため行った5月の調査でも、
16人がぜんそく症状の悪化を訴えた。

研究チームが空気中のちりを分析したところ、
黄砂が飛んだ日は、飛ばない日よりアレルギーなどを引き起こす
ニッケルや、カドミウムの含有量が多かった。

渡部仁成助教は、「黄砂そのものより、付着した有害物質が症状に
悪影響を与えている可能性がある」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=75494

「健康のため運動」わずか2.4% 山梨・スポーツ意識県民アンケート

(毎日新聞社 2008年6月18日)

山梨県民のスポーツに関する意識などを探るアンケートで、
前回の01年度調査に比べ、
「あまり健康ではない」という人が約4ポイント増加、
健康のために運動している人は35ポイント減少、わずか2・4%。
週1回以上、運動した人は、全国平均(44・4%)を大きく下回る32・4%、
発表した県スポーツ健康課は
「地域でスポーツのできる環境を作っていきたい」。

アンケートは、県スポーツ振興計画を策定するため、
20歳以上の県民370人を対象に6年ぶりに実施。

健康状態について、「あまり健康ではない」との回答が18・4%
(前回14・3%)と増え、「健康へ注意を払っている」という人も
89・2%(同82・1%)に上昇。
しかし、健康のために運動している人は2・4%(同37・4%)と大幅に減少

スポーツしなかった理由で、前回調査よりも増えた項目は
▽する機会がない(43・5%)
▽仲間がいない(19・4%)。

活動相手は、前回は「地域のクラブやサークルの人」が最多、
今回は「ひとりで」がトップになり、地域スポーツ行事への参加率も約19%減少。
同課は「仲間や地域でスポーツする人が減り、個人でスポーツを行う
傾向が高まっている」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=75721

2008年6月27日金曜日

生きる価値はどこに 工場解雇の末、樹海へ 緊急連載企画「命つなぐために-自殺大国ニッポンのいま」5回続きの(1)

(共同通信社 2008年6月25日)

凍傷で小指を失った右足が今もうずく。病気、解雇、借金...。
あり地獄の底に落ちたかのような絶望から自殺を決意し、
富士山のふもとに広がる冬の青木ケ原樹海をさまよい歩いた。
生還後も仕事がなく、先の見えない日々が続く。
「まだ、樹海の中にいるようなものかな」。
愛知県出身の大沢忠雄さん(45)=仮名=はそうつぶやいた。

心筋梗塞で倒れたのは3年前。
命は取り留めたが、不整脈のため軽勤務しかできなくなった。
昨年6月、約12年間勤めた工場を解雇され、社宅も追い出された。
車などで寝泊まりしながらハローワークに通ったが、
病気と分かると相手にされない。
生活が荒れ、消費者金融に手を出した。
借金は150万円余りに膨らみ、追い詰められた。

「おれなんか、生きている価値もないのかな」。
11月、手元の30万円のうち20万円を、離れて暮らす70代の母に送り、
生まれ故郷に寄ってから樹海に向かった。

所持品は、ロープにカッターナイフ、焼酎のボトルと少しの食料。
携帯電話は土中に埋めた。
日が沈むと、氷点下になる樹海で手首を切り、震えながら斜面に横たわった。
「頭はからっぽ。『このまま静かに逝きたい』とだけ考えていた」

死に切れず、2週間。
樹海で倒れているところを地元の警察に保護。
「人間そんなに簡単には死ねないよ。とにかくここへ行きなさい」。
署員から電車賃を渡され、
「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」(東京)に駆け込んだ。

約5カ月入院し、現在は民間の保護施設で暮らす。
生活保護は受けられるようになったが、借金を抱え、
仕事がない現実は変わらない。
「生きていてよかった、とはまだ言えない。
体調は不安だけど、無理してでも働いて、ここから脱出することが当面の目標」

全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会で事務局次長を務める
吉田豊樹さん(35)にも、自殺未遂の経験がある。

ヤミ金融からの借金が一時約3000万円に上り、
取り立てを苦に首をつったが、意識を失う前にベルトが切れた。
テレビで協議会を知り、相談。利息の過払い分を一部取り戻すことができた。

「借金の解決は必ずできます!」。
協議会は、青木ケ原樹海に自殺防止を呼び掛ける看板を設置。
これまで、33人が看板を見て相談の電話をかけてきた。
いずれも自殺を思いとどまった。

「借金で死ぬ必要はない」と吉田さん。
「まずは、身近な相談窓口が大切。ただ、借金の問題だけでなく、
自立支援など包括的な施策が必要」。

昨年1年間に国内で自殺した人は、約3万3000人。
1998年以来10年連続で3万人超。
生きやすい社会とは何か?
命をつなぐ手だてを模索する各地の動きを報告。

※経済生活問題での自殺 

2007年に経済生活問題で自殺した人は7318人、
健康問題に次いで2番目に多い。
「多重債務」は、1973人で約90%が男性。
「借金の取り立て苦」、「自殺による保険金支給」が原因や動機と
みられる人も計320人。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=76280

学生をつくる(9)行動を記録 自省の跡

(読売 6月13日)

学生に、毎日の行動を記録させる大学がある。
「はいっ」「ソーレ」「はいっ」「ソーレ」
石川県穴水町の七尾北湾に、カッターをこぐ学生たちのかけ声。

同県野々市町の金沢工業大学の1年生。
最初は弱々しかった声も、30分かけて周辺をひと回りするころには
力強さが出てきた。
同大では1年生全員が、大学研修施設でカッター操船を経験。
人を思いやる心やチームワークを育てるのが目的。

今年は、新入生約1700人が15班に分かれ、順次施設を訪れた。
学生たちは、大学のイントラネット上の個人ページに、
穴水で感じたことや学んだことを書き込んだ。

金沢工大では2004年度から、イントラ上に複数の
「ポートフォリオ」の仕組みを構築。
1年生全員が記入する修学ポートフォリオは、
毎日の行動履歴を記録するもの。

記入項目は、「欠席・遅刻した講義科目と理由」、
「予習や復習、課題をした科目と所要時間」、
「部活動やアルバイトなどの内容と時間帯」、「睡眠時間」など。
課外活動も記入させるのは、課外も含めた勉強や人間関係の中で、
総合的な人間力が付く。

学生は、毎日の行動だけでなく、1週間ごとに、
週の反省点やその対策を100字以上で書き入れ、印刷して
「修学基礎」の授業で提出。
遅刻が続き、夜にアルバイトをしている場合、すぐに大学が指導できる。

しかし、ポートフォリオの目的は学生の管理ではない。
自分の生活を振り返り、何ができていないか、気づかせること。
藤本元啓学生部長は、「自己を管理し、評価し、次につなげることは、
本来、自らやるべきことだが、今は、できない学生が多い。
教員が介在して手を差し伸べている」。

新入生の1人、工学部の飯岡豊さん(19)は、毎週の勉強、
ボウリングサークルでの活動の様子などをポートフォリオに書き込んだ。
「今は効果はわからないけど、書くのが楽しくなってきた。
後できっと役立つと思う」

工学部3年の沢田隆之さん(21)は、1年の時、
最初は「面倒くさい」と思いながら入力。
特に100文字以上の反省文が苦痛で、
「今週は暇だった、しんどかった」程度しか書く内容がなかった。
しかし、毎週理由付けをしながら書くうちに、
「自分を見つめるようになった」。
今では、手帳を持って自己管理をするように。

学生たちは、時間の使い方が上手になり、ものごとの優先順位が
つけられるようになってきた。
学生を伸ばすことで、その名を知られる大学は、
社会人に必要な能力を、1年目から育てている。

◆ポートフォリオ

本来は、紙ばさみや書類入れという意味。
転じて、教育分野では、学習の目標や記録などをファイルに残し、
その蓄積から成長を確かめる学習法を指す。
バインダーなどに、書類や写真の記録物を入れていく方法が主流だが、
コンピューター上にデータベースとして残していく方法も。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080613-OYT8T00273.htm

スポーツ21世紀:新しい波/272 バレー協会・個人登録制度/7

(毎日 6月21日)

バレーボールの選手カテゴリーは小学生から実業団、ビーチまで
12に分かれている。
10カテゴリーは、昨年度から個人登録制度が適用され、
今年度はソフトバレーが加わった。

約13万人と言われる家庭婦人だけが、今もチーム単位の登録料
(1チーム1000円)を支払っている。
家庭婦人とは、ママさんバレーのこと。
全国家庭婦人バレーボール連盟(家婦連)は、
「制度について考え方の相違がある」。

日本バレーボール協会(JVA)は、
「個人登録すれば、JVA主催大会に参加できる」ことをメリットとし、
選手の加入を推し進めている。
しかし、これはママさんではあまり意味をなさない。

家婦連は、開催する全国4大会にさまざまな出場条件を定めている。
JVAが唯一主催に名を連ねる「全国ママさんバレーボール大会」には、
一生に一度しか出られない。
JVA共催の「ローソンカップ」は、2年連続の出場ができない。
家婦連によれば、「ママさんは全国の頂点を争う必要はない。
より大勢の人が目標を持ち、楽しみながら続けることを主眼に置いている」。

ママさんバレーは、生涯スポーツとして成り立っている。
「このご時世でも、みんなバレーが好きだからやっている。
それなのに、新制度は『登録しないと大会に出られない』とデメリットばかり。
こんなことをやれば、チームは減る一方」と家婦連の幹部は言う。

家婦連は、個人登録制度が導入された07年以来、
JVAに理事を送るのをやめた。
前出の幹部は、「会議の話題は世界大会やVリーグばかりで、
普及や生涯スポーツはテーマにならない。
登録制度に反対しても、疎まれるだけ。もう、理事を送っても仕方ない」。

「JVAは、世界大会などのイベントになると
(受付など運営に必要なマンパワーとして)都合よくママさんたちを使いながら、
全然尊重していない」と不満。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

[第2部・南アフリカ](上)生活と共に 女子長距離

(読売 6月4日)

サッカー・ワールドカップ(W杯)を2年後に控えた南アフリカ。
スタジアム工事が行われ、交通基盤整備も進む光景を見る限り、
かつて国際スポーツ界から締め出されていたことは想像しにくい。
マシシ南ア五輪委会長は胸を張る。
「将来、五輪招致に手を挙げるかは未定だが、
2010年の成否は大きなカギを握るね」

南アの歴史と白人・非白人を区別するアパルトヘイト(人種隔離政策)
切り離せない。1994年に完全撤廃されたが、
この制度は南アが国際社会から孤立する原因。
国際舞台で競争力を磨くことが不可欠なスポーツ界への
ダメージは小さくなかった。
そんな状況で、南アスポーツを牽引してきたのが、女子長距離

五輪の女子長距離は、三千メートルとマラソンが1984年から、
一万メートルが88年から採用されるなど、比較的歴史は浅い。
南アでは、さほど注目されていない時代から人気を誇った。
温暖な気候に加え、ランニングに最適の起伏に富んだ地形。
子供のころから野山を駆け回り、自然と鍛えられる環境。
記録やメダルといった競技色より、生活や趣味として結びついていた。

そんな生活を送り、世界トップにまで上り詰めたのがエレナ・マイヤー
南アが32年ぶりに復帰した92年バルセロナ五輪の
女子一万メートル銀メダリスト。
ケープタウン郊外の閑静な町で育ったマイヤーは、懐かしそうに振り返る。
「私は、恥ずかしがり屋で気の小さい女の子だったけど、
走るのだけは好きだった。ランニングが自信を与えてくれた

今年42歳になるマイヤーは昨年、念願の子宝に恵まれた。
長男の育児に忙しいが、走るのをやめたわけではない。
「乳母車は走って押すの。周りは驚くけど」と笑う。
子育ての一方、子供を対象にしたランニング学校の経営にも携わる。
1日1キロずつ42日間走って、「マラソンを完走する」ことで
スポーツの楽しさや目標を達成する喜びを学ぶ。
子供の非行を防ぎ、教育に役立てるのが狙い。

充実した生活を送るマイヤーだが、
南アスポーツ界の現状には、表情が厳しくなる。
この国では、スポーツへの政治的な関与は避けられなかった。
今も間違った人が間違った理由、やり方で進めるから、
今は強い選手が出ない」と痛烈に批判。

かつてその荒波に翻弄された一人の選手がいた。
「裸足の天才少女」と呼ばれたゾーラ・バッド
近年、公の場に一切姿を見せなかったバッドが語り始めた。
「私が、あのバッドであることを私の子供は最近まで知らなかった」。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080604.htm

心筋細胞の分化促す、たんぱく質IGFBP-4発見 千葉大院教授ら、マウスで実験

(毎日新聞社 2008年6月17日)

心臓の形成に重要な働きをするたんぱく質を、
小室一成・千葉大大学院教授らが発見。

幹細胞の培養に使うと、10-20%の高い割合で心筋細胞が発生。
人にも存在し、重篤な心臓病の新たな治療法につながるか注目。

心筋細胞の再生には、人工多能性幹細胞(iPS細胞)や
胚性幹細胞(ES細胞)が注目。
だが、心筋細胞に分化する割合は1%程度。

研究チームは、心筋細胞への分化を促すたんぱく質が存在すると考えた。
マウスで実験した結果、「IGFBP-4」を幹細胞の培養に使うと、
10-20%の割合で心筋細胞が発生することを突き止めた。

孵化直後のオタマジャクシで、このたんぱく質の働きを止めると、
心臓が小さくなったり消滅することも分かった。

現在の重症心不全の治療は、薬物治療が主流だが、
生存率は5年で平均約50%。
心臓移植も国内で年間10例前後。
小室教授は、「このたんぱく質を使い、心筋細胞内の幹細胞を刺激し、
心筋の再生を可能にしたい」。
英科学誌ネイチャー電子版に発表。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=75499

2008年6月26日木曜日

Tリンパ球とBリンパ球は兄弟ではなかった!新旧の血液細胞分化モデル

(Nature Asia-Pacific)

理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター 河本 宏

免疫機能を司るリンパ球は、造血幹細胞を出発点に段階的な経路を経て作り出される。
古典的なモデルは、生物学や医学の教科書で頻用され、
「Tリンパ球とBリンパ球は、共通の前駆細胞から作られ、両者は兄弟の関係にある」
との考えが常識。
理化学研究所の河本 宏 チームリーダー(以下TL)らは、
この学説を覆す研究成果をもたらした。

血液細胞には、赤血球、顆粒球、単球、Tリンパ球、Bリンパ球など。
顆粒球と単球は、「ミエロイド系(骨髄系)細胞」とも。
1970年代後半に、これらの細胞の全てが骨髄中の造血幹細胞から
作られることが示されたが、Tリンパ球とBリンパ球は
「細胞の形態が似ており、両者とも抗原特異的な免疫反応に関わる」
という共通性をもっていたことから、兄弟の関係にあるとされてきた。
「似た者は、共通の経路で分化してくるのだろう」との推測から、
仮の分化経路図が作られ、教科書などで広く紹介。
この経路図では、造血幹細胞からの最初の分岐で、
「Tリンパ球とBリンパ球の共通前駆細胞」および
「赤血球とミエロイド系細胞の共通前駆細胞」が作り出される。

医学部卒業後の研修医時代に、血液疾患に興味をもった河本TLは、
京大大学病院血液内科系の大学院を修了後、
1994年から胸部疾患研究所(現 再生医科学研究所)の
桂義元教授の研究室に移り、リンパ球の初期分化に関する研究をはじめた。
3年後、桂教授とともにMLPアッセイ法という新手法を開発、
数々のブレイクスルーをもたらすことに。

「MLPアッセイ法では、1個の造血系前駆細胞がもつTリンパ球、Bリンパ球、
ミエロイド系細胞の3系列への分化能を、同時に調べることができる」。
マウス胎仔の肝臓に含まれる造血系前駆細胞を材料に、
その分化能を地道に調べ上げた。
「前駆細胞の中には、Tリンパ球・Bリンパ球・ミエロイド系細胞のうち
一種類しか作らないものの他に、全てをつくるもの、ミエロイド系細胞と
Tリンパ球をつくるもの、ミエロイド系細胞とBリンパ球をつくるものがあったが、
Tリンパ球とBリンパ球の両者だけをつくるものはない」。
この結果は、Tリンパ球とBリンパ球が兄弟の関係にはないことを強く示唆。
一連の実験結果から、従来のモデルが間違っていると推察した
桂教授と河本TLは、「ミエロイド系の細胞は、すべての細胞の基本型となり、
Tリンパ球、Bリンパ球、赤血球への分化経路の途中まで
ミエロイド系細胞を作る能力が保持される」とする
新しいモデル(ミエロイド基本型モデル)を作り上げた。
その後、このモデルは胎生期における造血モデルとしては認められる。
ただし、河本TLらの発表後に、「マウス骨髄中で、Tリンパ球とBリンパ球の
共通前駆細胞を同定した」の報告がいくつか出され、
成体では従来のモデルが正しいとされ続けた。

2002年から現職に就いた河本TLは、和田はるか研究員とともに、
ミエロイド基本型モデルが胎児期に限らず、
生体にもあてはまることの実証に乗り出した。
前駆細胞を特殊な細胞(ストローマ細胞)とともに培養する新たな手法も開発。
「成体マウスの胸腺中にあるTリンパ球の前駆細胞が、
Bリンパ球を作る能力を失っていることは分かっていた。
今回、新しい培養法によって、この前駆細胞を1個ずつ培養したところ、
多くがTリンパ球とともにマクロファージをも作りだした」。
Tリンパ球前駆細胞由来のマクロファージは、
胸腺中のマクロファージの約30%に達する。
T前駆細胞は、Bリンパ球を作れなくなってからでも、
ミエロイド系細胞を作ることが証明。
この事実は、従来の造血モデルでは説明できず、
ミエロイド基本型モデルが正しいことを強く支持。
「私たちの成果は、教科書の書き換えを迫るだけでなく、
免疫細胞の起源や進化についてのパラダイム転換をももたらす」。
「同時に、白血病の病態理解やリンパ球を用いた再生医療にもつながる」、
Tリンパ球を、体外で効率よく培養する手法の開発に着手。
「がんを根治できるような免疫療法の開発という究極の夢」
に向けて走り続ける日々が続く。

セカンドライフ:地球を救う未来都市 仮想空間で設計コンペ--東大が参加者募集

(毎日 6月16日)

二酸化炭素(CO2)の排出量が半減する街づくりに参加しませんか?

東京大公共政策大学院は、ネット上の仮想世界「セカンドライフ」で、
環境に優しい「持続可能な街づくり」コンペ(設計競技会)を開催。
仮想空間での作業を通じ、現実社会に必要な地球温暖化対策や、
それに関する人々の合意形成のあり方を探るのが目的。
27日まで参加者を募集中で、
「地球を救う未来都市」のユニークなアイデアを期待。

寄付講座「エネルギー・地球環境の持続性確保と公共政策」の
一環として実施。
松浦正浩・客員講師(合意形成学)は、
「仮想空間を活用した環境に優しい都市設計の研究は例がない」。

参加者は四つのチームに分かれ、与えられた土地で
住宅やビル、道路などの建築・構造物、街路樹などの植栽を
ネット上で議論しながら自由に配置。

例えば、太陽光発電などを活用し、
「持続可能なエネルギー・環境を体現した街」をつくる。
議論の過程は記録する。
仮想通貨で予算も決められ、必要な物資はその範囲内で購入。
可能なら、独自の技術で太陽光発電パネルなどを自作してもいい。

「街づくり」の期間は今年7~12月で、終了後に都市計画などの
専門家が講評し、最優秀の街を決める。

松浦講師は、「仮想とはいえ街づくりをすることは、
現実の環境政策のあり方にも応用できる独創的な試みだ」。

参加者は「セカンドライフ」へアクセス、利用できる環境にあることが条件。
詳細はプロジェクトのホームページ(http://www.slplanning.net/)。

http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080616ddm016040044000c.html

学生をつくる(8)「遊び」が「学び」の教科書

(読売 6月12日)

キャンパス内での「遊び」を、「学び」につなげる取り組みがある
竹やぶのあちこちに、顔をのぞかせたタケノコを見つけ、
軍手にジャージー姿の大学生20人が歓声を上げた。

日本福祉大学美浜キャンパス(愛知県美浜町)の一角。
クワとスコップで周りを掘り、手で土をかきわけて引っ張り出したのは
長さ約60センチ。
「初めてとは思えない腕前だね」と社会福祉学部の平野征人教授(63)が
学生たちの肩をたたき、顔をほころばせた。

同大は、6学部の新入生約1200人を入学直後、
20人前後のゼミに入れ、自ら学ぶ習慣や討論・発表の仕方、
幅広い教養、コミュニケーション能力などを2年かけて学ばせる。
そのゼミで、平野さんは「遊び」を重視。
「遊びには、学生を育てるあらゆる要素が入っている」。
タケノコ掘りもその一環。

4年前、愛知県立高校の教頭を最後に定年退職、
同大の教壇に立った時、平野さんは、大学入試ばかり意識して
生徒に向かってきたことを反省させられた。
与えられた問題は解けても、
自分で問題を見つけて考え続ける姿勢が乏しい、
人との間合いがつかめないため議論が難しい、
そんな学生が目の前にいたからだ。

実践的知識や体験、人とのかかわり方など、
社会に出て必要な力を身に付けさせたいと思いを巡らせるうち、
「遊び」に行き着いた。

手軽で、楽しくなければ、今の学生は飛びつかない。
夏は竹を切り割ってそうめん流し、秋はキノコ狩りやアケビ採り。
自然に恵まれたキャンパスならできる。

3年目となるタケノコ掘りでは、驚かされることも多い。
道具持参でと指示すると、ハサミを手に現れた学生もいる。
タケノコは、枝にぶら下がっていると思ったようだ。
そんな学生たちが、掘り方や料理法だけでなく、
竹の根が治山・治水に役立った歴史や里山の現状まで学んでいく。

学生同士の交流も深まる。
社会福祉学科2年の生田卓也さん(19)は、
「互いの名前もわからず、不安だったが、
一緒に掘ることでつながりを実感できた」。
小学校の教員志望。
いつか子供たちにも体験させたいと意欲を燃やす。

こうした「遊び」は、キャンパスに広がり始めている。
発信元は、斎藤真左樹・教育開発担当部長(46)が
学内ウェブに書く「自給自足さんの日記」。
15年前からキャンパス内を歩き回り、果物や山菜など、旬の味を発見、
数年前からウェブで収穫時期や今年の出来具合、料理方法などを紹介。

斎藤さんが、タケノコ掘りをビデオ撮影してウェブで流すと、
直接案内を求める教員が増えた。
実は、平野さん自身、元は斎藤さんの「日記」から着想を得ていた。

2人の思いは同じだ。
「おいしいキャンパスを、生き生きとした学びの栄養にしてほしい」
地方ならではの手法が、竹のように根を張りそうだ。

◆コミュニケーション力習得と大学生

日本能率協会(東京)が今春入社した984人に、
大学生時代、どんな知識や能力の習得に力を入れたか尋ねたところ、
「専門知識」(40%)、「コミュニケーション能力」(33%)や
「発表能力」(24%)が挙がった。
「英語等の語学力」、「文学、歴史、哲学等の一般的な教養」は15%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080612-OYT8T00230.htm

[第2部・エチオピア]ランニングの国の誇り

(読売 6月3日)

地平線にかすむ一本道を選手が駆けていく。
首都・アディスアベバから、車で約30分の高原の空気は薄い。
約2500メートルの高地で行う1週間に1度のロード練習中、
デスタ・マラソンコーチの声が響く。「休むな、走り続けろ」。
背中に薪を積んだロバが時折、驚いたように耳をピンと立てる。

近年のエチオピア男子長距離の歴史は、そのまま世界の系譜でもある。
はだしで走って1960年ローマ五輪男子マラソンを制し、
世界を驚かせたアベベ・ビキラは、続く東京五輪も制覇。
メキシコではマモ・ウォルデが、エチオピア勢の五輪3連覇を達成。
モスクワではミルツ・イフターが五千、一万メートルの2種目で金メダル。
90年代からは、男子マラソンでハイレ・ゲブレシラシエ、
トラックでケネニサ・ベケレの2人の世界記録保持者が君臨。

ベケレは言う。「僕はエチオピアにしか住んだことがないから、
他国で育っていたら、どんな選手になったかは分からない。
だけど、国と自分の誇りのために走っているのは、間違いない」

心肺機能を高めるのに最適な標高2000~3000メートルの高地で育ち、
子供のころから高いレベルで切磋琢磨する環境。
アベベから連綿とつながる英雄たちに触発される歴史。
確かに「強くなる要素」は多い。では、それだけが強さの源だろうか?

食料の安全や貧困の削減が国の最重要課題に挙がるように、
国勢は決して裕福ではない。
しかし、3000年前とされる、アフリカ最古の独立国としての「気高さ」は、
エチオピア人の体に染みついている。
その〈矜持〉を形にして満たし、国民の希望を一身に担うのが、ランニング。
アフリカ諸国には、オイルマネーで裕福な中東の国に“国籍を売って”
代表の座を望み、金に固執する「国家意識」の希薄な選手は珍しくない。

エチオピアは違う。
選手たちは、海外の賞金レースで稼ぎながら自国で生活を続ける。
「皇帝」ゲブレシラシエは、語気を強める。
「私は、アベベ以来のあらゆるものを受け継いでいる。
ここに住み、生きているのが、トップであり続けている最大の理由」。
大気汚染を懸念し、北京五輪男子マラソン欠場を表明、
国や陸連とあつれきが生まれる現状にも、国を離れる考えはない。

数時間後、デスタコーチの声がやみ、練習が終わった。
褐色の肌に汗を光らせた若手選手が話す。「ここで走ることがすべて」。
祖国への誇りとランニングの血。
この二つが強く結びついている限り、強者の系譜は続いていく。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080603.htm

学校法人・北里研究所と大船渡市 地域連携で協定

(東海新報 6月18日)

学校法人・北里研究所と大船渡市との連携協力に関する
協定書締結式が、大船渡市役所で行われた。
同研究所による地域連携は、全国で4自治体目。

同研究所と北里大学を運営する学校法人・北里学園は、
統合して新しい組織体系となり、
30年以上三陸キャンパスがある同市との関係を生かし、
人材育成連携や教育・文化・スポーツの振興などに取り組む姿勢。

締結式には、同研究所側から柴忠義理事長、
北里大学海洋生命科学部の緒方武比古学部長、
同学部の山森邦夫教授らが出席。
市側からは甘竹勝郎市長、紀室輝雄副市長、金野大登教育長らが同席。

甘竹市長は、「北里大は、この地に昭和47年から35年の長きにわたって、
活躍されている。一時は撤退の話もあって心配したが、
柴理事長の英断もあり学部名称を変えられ、
校舎の改築にも着手していることに敬意を表したい。
大学のご隆盛と地域の振興発展に協定できたことに感謝します」。

柴理事長も、「これまでも連携は進めているが、
さらなる発展の証しとなったのでは。
海洋生命学部は、水産学会の中で突出している学者の集まり。
地元に還元できることは、大学としてもうれしい限り」。

協定書に盛り込まれた協力事項は、
▽人材育成
▽教育・文化・スポーツの振興・発展
▽まちづくり
▽産業振興
▽環境保全
包括的な連携のもとで相互に協力し、地域の発展と人材育成を目指す。

人材育成については、同学部側が持つ栽培漁業など専門的な知識を提供。
緒方学部長は、「現場の問題に関する研修会などを開催することで、
若い世代が海に関心を持つ動きを進められれば。
学部施設、教員を積極的に活用してもらい、人材育成を図りたい」。

大船渡市と同学部はこれまでも、生物観察会などの開催、
各種協議会委員への教員派遣など連携を深めているが、
今後はより積極的な活動を行う方針を掲げている。

7月19日から開幕する「海フェスタ」期間中、
大船渡駅前で同学部による企画展を開催。
今月末には体験実習として、魚市場や水産加工事業所などに
学生が訪れ、現場の水揚げ、加工に理解を深める。

学校法人・北里研究所は今年4月、社団法人・北里研究所と
学校法人・北里学園が法人統合して新たに発足。
薬学部、獣医学部、医学部、海洋生命科学部をはじめとした
学部、研究所、病院などを持つ北里大学と、
看護、保健衛生の専門学校、生物製剤研究所等で構成。
学校法人全体の職員は5千6百人余り、学生は約9千人。
運営病院に訪れる患者も、一日5千人に上るなど、
生命科学の最前線で活躍する人材を育成。

三陸キャンパスで、2年生以上の生徒が学ぶ海洋生命科学部は
今年度、水産学部から名称変更。
これまで15の海外大学と協定締結を結び、
神奈川県相模原市、青森県十和田市、岩手県釜石市とも地域連携。

http://www.tohkaishimpo.com/

2008年6月25日水曜日

遺伝子ドーピング、コーチ・医師も処罰…IOC医事委員長

(読売 6月12日)

世界反ドーピング機関(WADA)のアルン・ルンクビスト副会長
(国際オリンピック委員会医事委員長)は、
サンクトペテルブルクで行われた第3回遺伝子ドーピング国際会議後、

北京五輪で遺伝子ドーピングを行った状況証拠等が見つかった場合、
選手だけでなくコーチや医師など関係者も処罰すると語った。

来年施行する新WADA規約では、4年の資格停止に相当すると明言、
厳罰で臨む姿勢を見せた。

北京五輪までには、筋肉を太くしたり赤血球を作ったりする
ホルモンの生産遺伝子を体内に加える遺伝子ドーピングが、
行われる可能性が高いと指摘されており、これを受けたもの。

ルンクビスト副会長は、現時点で遺伝子ドーピングが行われているとの
情報は得ていないとしている。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/news/topic/sports/news/20080612-OYT1T00136.htm

エコカー:期待の両輪 燃料電池車と電気自動車

(毎日 6月16日)

自動車メーカーが、ガソリンをまったく使わずに走る
次世代エコカーの開発を強化。
地球温暖化問題や原油高に対応、水素を動力源とする「燃料電池車」と、
家庭用電源などから充電する「電気自動車」が
次世代エコカーの2大勢力になりそう。

◆1台数千万円

ホンダが、栃木県の工場で生産を始めたのは
新型燃料電池車「FCXクラリティ」。
7月に米国で、秋には日本でリース販売を始め、
今後3年で200台の販売を目指す。

燃料電池車は、タンク内の水素を空気中の酸素と化学反応させて発電し、
モーターを動かすため、排出するのは水だけで二酸化炭素(CO2)は出さない。
クラリティは、一度に走れる距離が平均的なガソリン車を超える620キロ。

トヨタ自動車も今月、新型の燃料電池車を完成させ、
年内に国内リース販売を開始、米ゼネラル・モーターズ(GM)や
独BMWなど欧米勢も燃料電池車の開発に熱心。

燃料電池車は、製造工程が複雑で、1台当たりのコストが
「数千万円以上」(福井威夫ホンダ社長)。
ホンダは、10年以内に1000万円以下で販売できるよう
コスト削減を急ぐが、それでもまだ高い。
ガソリンスタンドに代わる水素ステーションの整備も課題で、
現在は官公庁など特定の利用に限られ、
「一般に普及するまでに20~30年はかかる」(業界関係者)。

◆燃費10分の1

燃料電池車より一足早く普及しそうなのが、電気自動車。
高価なリチウムイオン電池を使うため、
製造コストはガソリン車の倍以上となるが、
燃費はガソリン車の約10分の1に抑えられる。

最近は、ガソリン高で電気自動車への注目が高まっており、
三菱自動車は09年夏、日産自動車や富士重工業も
10年度までに販売を開始する計画。

電気自動車は、1回の充電で走れる距離がガソリン車の半分以下。
電気自動車の使い勝手を、ガソリン車並みに高めようと、
トヨタが今月下旬、次世代電池の研究・開発に乗り出すが、
2030年ごろまでの開発が目標で、
当面は買い物など近距離用途に限られそう。

◇電機会社と提携 リチウムイオン電池の開発・量産化

電気自動車などの性能を左右する「リチウムイオン電池」の
開発・量産化に向け、自動車と電機メーカーの合従連衡が加速。
中核部品は、自社で手がけたいという自動車会社と、
大口顧客を確保したい電機会社の利害が一致。

トヨタ自動車は、松下電器産業との合弁会社を通じ、
10年からリチウムイオン電池の本格生産を始める。
家庭用電源で充電できる「プラグインハイブリッド車」などに搭載。

日産自動車はNECと、三菱自動車はジーエス・ユアサなどとの合弁で、
09年以降、量産に乗り出す予定。
三菱自は仏プジョーシトロエングループと
電気自動車の技術提供に向けた交渉も進めている。

三菱電機は、独フォルクスワーゲンに電池を供給する契約を締結。
日立製作所は、米ゼネラル・モーターズに電池を供給する予定。

自動車会社は競争力確保のため、
「主要部品は外部調達に頼りたくない」(大手自動車メーカー)。
電機会社は、「安定供給先を事前に確保した方が、
巨額の資金が必要な設備投資に踏み切りやすい」(電機大手)。
自動車と電機メーカーは、それぞれ特定の相手と手を結び、
業界の垣根を越えた陣営作りが進んできた。

燃料電池車より普及が早く進むとみられる電気自動車だが、
「電池価格を大幅に引き下げることが不可欠」(業界関係者)と指摘、
大量生産体制を実現するため合従連衡がさらに進む可能性も。

◇ことば リチウムイオン電池

充電式電池の一種で、ノートパソコンや携帯電話などに使われている。
軽量で電気をためる容量が大きい。
現在のハイブリッド車で主に使われているニッケル水素電池に比べ、
体積や重量を半分以下に抑えられる。
ハイブリッド車や電気自動車の燃費を高めて走行距離を延ばすことが可能、
次世代自動車の有力な動力源として開発が進んでいる。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080617k0000m020098000c.html

中国も自然を食いつぶす国に

(サイエンスポータル 2008年6月12日)

エコロジカル・フットプリントとは?
WWF(世界自然保護基金)ジャパンによると、
「ライフスタイルを支えるのに必要な農耕地等の面積の和」と説明。

NPO法人「エコロジカル・フットプリント・ジャパン」によると、
「私たち人間のエネルギー消費、食料、消費財などを面積に換算、
どれほどの土地が必要かを表すこと、
どれほど人間が自然環境に依存しているかを、わかりやすく伝える指標」。
あるエリアの経済活動の規模を、食料のための農牧地・海や
木材・紙供給・二酸化炭素吸収のための森林など、
エリア内だけでなく輸入品の生産に要するエリア外の面積も
足し合わせてヘクタールで表す。

「エリアで自然環境を踏みつけている面積=人間の足跡(フットプリント)」

1人当たりのエコロジカル・フットプリントが、
中国では1960年代から2003年時点で倍増、
国内の生態系が持続的に供給できる飲み水、農作物、木材などの
天然資源の2倍以上を必要。

「中国の環境と開発に関する国際協力委員会」(CCICED)とWWFの
共同委託研究に基づく報告書。
2003年の中国の1人当たりエコロジカル・フットプリントは、1.6ヘクタール。
ライフスタイルを支えるために必要な土地が、1.6ヘクタールということ。
この数字は、世界平均の2.2ヘクタールよりは小さい。

巨大な人口のため、1960年代までは、同国内の生物生産能力が
エコロジカル・フットプリントを上回っていたが、70年初めに逆転、
03年はエコロジカル・フットプリントの方が生物生産能力の倍にまで増大。

祝光耀CCICED事務局長は、「中国は、これからの20年が正念場。
持続可能な発展に切り替えられるかどうかが重要」。
中国の生物生産能力から見た輸入の総量は、4億8,000万ヘクタール、
輸出は3億5,000万ヘクタール。差し引き1億3,000万ヘクタールの入超、
これはドイツの生物生産能力に相当。

輸出入の相手国を見ると、輸入が多いのはカナダ、米国、インドネシア。
米国からは穀物、丸太、パルプが主な輸入品、
インドネシアもパルプが主、森林資源の外国依存が顕著。
輸出が多いのは日本、韓国、オーストラリア、米国で、
オーストラリアは紙、その他3国は毛織物、水産物が主要輸出品。

日本に関しては、輸入に比べ、輸出が極端に多く、
差し引き1,580万ヘクタール分のエコロジカル・フットプリントを
日本は中国に負担させているという結果。
日本の1人当たりエコロジカル・フットプリントは、4.4ヘクタールで
中国よりもはるかに高く、世界平均の倍。

ヘモグロビンA1C値はその後の糖尿病による死亡率に強く関連する

(Medscape 6月9日)

ヘモグロビンA1C(HbA1C)値は、以前に糖尿病と診断されていない
男女のその後の死亡率に強く関連することを示す、
HbA1C値とその後の死亡リスクに関する最大の研究結果が、
『Diabetes Care』6月号に報告。

マッセー大学公衆衛生研究センター(ニュージーランド)のNaomi Brewerらは、
「当初、糖尿病がみられない被験者のHbA1C値とその後の死亡リスクとの

関連について検討したプロスペクティブ(前向き)研究は、わずかしかない」。
「HbA1C値とその後の死亡率との関連が認められた。
HbA1C値は、1型糖尿病および非糖尿病性慢性腎疾患患者の死亡率や
心血管疾患の発症とも関連」。

本研究の目的は、ニュージーランド人におけるHbA1C濃度と死亡率との
関連を評価すること。
肝炎財団(Hepatitis Foundation)のB型肝炎検査キャンペーンにおいて
HbA1C検査を受けた参加者は、1999~2004年まで、
国民死亡データベースに匿名でリンク。
コックス回帰分析を用い、年齢、民族性、喫煙習慣、性別について
補正したハザード比(HR)を推定。

参加者47,904例のうち、71%がマオリ族、12%が太平洋民族、
5%がアジア系、12%がその他。
HbA1C値が4.0%未満であったのは142名、
4.0~5.0%未満(基準カテゴリー)は12,867名、
5.0~6.0%は30,222名、6.0~7.0%は2,669名、7.0%以上は1,596名。
408名は、以前に糖尿病の診断を受けていた。
追跡調査期間中、815名の死亡。

以前に糖尿病の診断を受けていない参加者において、
全死因による死亡のHRは、HbA1C値の基準カテゴリーから
最高値カテゴリー(7.0%以上)まで着実に上昇。
HbA1C値は、循環器疾患、内分泌疾患、栄養疾患、代謝疾患、
免疫疾患による死亡、その他および原因不明の死亡とも関連。
以前に糖尿病の診断を受けた参加者でも、死亡率の上昇が認められたが、
HbA1C高値では部分的にしか説明できなかった。

「この研究は、HbA1C値およびその後の死亡リスクに関する最大の研究。
今回の結果は、以前に糖尿病の診断を受けていない男女において
HbA1C値がその後の死亡率に強く関連、過去の知見を確認するもの」。

本研究の限界として、人体測定データと他の心血管リスク因子の情報がない、
短い追跡調査期間、HbA1C検査時の糖尿病により血糖値が上昇していた
可能性が除外できない、具体的な死因の誤分類、参加者は
地域集団に基づく集中的なB型肝炎検査プログラムに登録、
本知見を全人口に一般化できない可能性がある。

HbA1C高値に伴う過剰な死亡リスクは、様々な原因によるが、
特に内分泌・栄養・代謝・免疫疾患および心血管疾患との強い関連。
しかし、以前に糖尿病の診断を受けた参加者において、
HbA1C値では、上昇した死亡リスクの一部しか説明できなかった」

Diabetes Care. 2008;31:1144-1149.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=75484

[第2部・米国](下)「薬物ダメ」選手から発信

(読売 6月2日)

ごく少数の、しかし、世界的トップ選手の薬物汚染で、
内外から不審の目にさらされる短距離王国・米国。
クリーンなアスリートにとっては、「風評被害」が広まる中、
反ドーピング(禁止薬物使用)の声は、選手側からも高まっている。

テネシー大体育館。
昨年の全米四百メートル女王のディーディー・トロッター(25)は、
練習後の着替えの時間も惜しんで語り始めた。
「ドーピングスキャンダルで、みんなが疑われている。
だけど、自分は違うと世間に発信したかったの」

昨年2月、独自の反ドーピング運動を始めた。
母と二人でNPO法人を設立。
1万1000ドル(約114万円)を投じて、白地に赤で
「TEST ME, I’M CLEAN」と記したリストバンドを作った。
2ドルでネット販売し、大会などでは無料配布。
既に約15か国から購入。
昨冬からは各地の高校などへ講演に出かけ、幅広い世代に、
薬物の危険性、誠実に生きることを訴える。

「薬物を使わないことは、人間として誠実に生きる証し。
最初は自分を守るためだったけど、このプログラムは一生続けたい」。
あふれる思いは2時間以上、途切れることなく続いた。

自分は自然そのまま、クリーンな身だ。
そんな意味のタトゥーを昨季前、腕に刻んだのは、
2005年ヘルシンキ世界陸上男子二百メートルで銀、
昨年の大阪世界陸上では銅のウォラス・スピアモン(23)。
トップ選手だった頑固一徹な父から
「ズルはするな。ハードな練習で正しい道を進め」とたたき込まれ、
アルコールはもちろん、カフェインも避けるためにコーヒーも飲まない。

「簡単にとれないタトゥーは、100%の覚悟の意味。
僕はクリーンだと示す重要なアクションだった」

パームツリー並木が迎えるロサンゼルス。
24年前の五輪で、カール・ルイスが4冠に輝き、五輪の商業化、選手のプロ化を
加速させた地で、米国陸上関係者の多くが反ドーピングの象徴として
名を挙げるアリソン・フェリックス(22)は、練習に励んでいた。

カモシカのような細い手足で、大阪世界陸上女子短距離3冠。
父と祖父が牧師の、信仰深い彼女は言う。

今の時代に生まれたのも、神様が与えた使命。
北京では、人間らしい側面を見せてメダルを取れない可能性もあるけど、
それも自然の結果。
でも私は、科学の力に頼らず、自然な力で成功できると訴えたい」

米短距離界始まって以来の暗闇の時代、
胸の中に熱い思いを抱える「新世代」と呼ばれる選手たちがいる。
8月の北京で、彼らの輝きが、闇を振り払うか。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080602.htm

2008年6月24日火曜日

博士はあまっていない?

(サイエンスポータル 2008年6月9日)

ポスドク問題は、いろいろな場で論じられ、
「これは、若者から見れば一種の詐欺行為」
(吉川弘之・産業技術総合研究所理事長)という声も。

日本物理学会キャリア支援センター長、坂東昌子・愛知大学名誉教授の
基本的な考えは、「若い人たちだけの問題ではなく、
日本の将来、科学技術で身を立てていこうとしている
日本の将来にかかわる大問題」。

博士を採用しないと自分たちが困ることになる、
という危機意識が産業界には薄い。
こうした企業に対し、姿勢転換を求める声も。
「世界中どこへ行っても、研究開発の現場では博士が活躍。
日本だけが違う。
相変わらずキャッチアップ型なら、修士で足りる。
本当に最先端を走るなら、博士中心にならなければ駄目。
日本企業は、本当に技術開発をする気があるのか、
本当に将来を読んでいるのか」。

企業の姿勢が変わるのをじっと待っていればよい、という問題ではない。
府川伊三郎・日本化学会理事が、日本化学会が進めている
博士卒人材の企業就職支援策について紹介。
博士がイノベーションの中心を担っている世界の現状に対し、
日本の化学企業は修士が中心。博士卒の採用率は、5-10%。

例外は製薬業界で、博士卒の採用比率が高く、30~70%。
理由は、製薬メーカーは専門を生かしやすいこと、
グローバル展開により、海外で臨床検査にかかわる機会が増えたこと。
海外では、修士はテクニシャン扱いでしかない。

化学メーカーには、扱うテーマが変わっても、
ゼロから対応できる能力が要求され、博士号の専門を生かしにくい。
長年、修士が研究開発の中心として頑張ってきたという自負から、
博士の採用増への反発も社員の中に見られる。

日本化学会は、「博士課程在学生のための短期集中的インターンシップ」、
「拡大博士セミナー―博士のためのセミナーと就職相談会」を開催。

産学協調の催しが実現したのは、
「博士の人材育成に関する提言」という野依フォーラムが、
経団連などに出した文書がきっかけ。
野依フォーラムは、野依良治・名古屋大学教授がノーベル化学賞受賞を機に
野依氏を囲む化学・製薬企業20数社をメンバーとする集まり。

日本物理学会キャリア支援センターの試みで、成果が上がった例に、
物理医学士がある。
物理学と医学という異なる専門知識を要する
新しい職種への物理学博士の参入。
日本物理学会が実施するシンポジウムや特別企画による支援策で、
物理医学士の道を歩み始めた物理博士は10名超。
もともとあったニーズに、学会側の積極的な取り組みがうまくかみ合った。

井村裕夫・先端医療振興財団理事長は、
「PET(ポジトロン断層法)が注目されているが、
画像を読める専門医がものすごく不足している」。
医療の進歩に、人材育成がついて行けない。
医療の分野では、さらに統計学者ももっと必要。

国際的に遅れ、深刻視される臨床研究には、
統計学の分かる人材が不可欠。
高度な専門知識と、新たな分野への挑戦意欲を持つ人材が必要なのに、
人材養成が追いついていない。

こんな領域は、医療以外にもある。
こうした分野、職種にこそ、博士が積極的に飛び込むことが期待。
ポスドク問題には、活躍すべき分野にポスドクが行っていないという面も。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0806/0806091.html

35疾患患者集団の一塩基多型情報公開

(サイエンスポータル 2008年6月11日)

がんや心臓疾患など35の代表的病気を持つ患者集団から得られた
一塩基多型の頻度情報が、ウェブサイトで公開。
ヒトの遺伝子は、人種や個人により微妙な違いがある。
ゲノム上の塩基配列が1個所だけ変わっている場所が
人口の1%以上に見られる場合を、一塩基多型(SNP=スニップ)。

特定の病気にかかりやすかったり、薬に強い副作用を示すヒトと、
一塩基多型との間には関連。

今回のデータ公開は、理化学研究所と科学技術振興機構が
2003年から「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」の一環。
東京大学医科学研究所に設けられているバイオバンクジャパンに
収集されている、35疾患の日本人患者集団191-195人分の
DNA試料を、理化学研究所ゲノム医科学センターが解析。

この結果得られた35疾患患者集団の一塩基多型頻度情報が、
JSNPデータベースで公開。
JSNPデータベースには、日本人一般集団に見られる約20万カ所の
一塩基多型の頻度情報が収められ、データは昨年10月から公開。

標準的な日本人の一塩基多型データと、今回公開される35疾患の
患者集団の一塩基多型頻度情報を比較する研究が内外で進められ、
病気や副作用に関係する新たな遺伝子が見つかると期待。

「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」は、
新しい治療薬や診断薬の開発、個人にあった投薬法を開発するための
プロジェクトで、理化学研究所ゲノム医科学センターが
遺伝子解析の中心的な役割。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0806/0806111.html

使われるほど進化する音声情報検索システム

(サイエンスポータル 2008年6月13日)

ユーザーが協力すればするほど性能が向上する
音声情報検索システムを、産業技術総合研究所の
後藤真孝・主任研究員と緒方淳・研究員らが開発。

インターネット上にある日本語の音声データ「ポッドキャスト」を
対象としたこのシステムによる全文検索システム
「「PodCastle(ポッドキャッスル)」を公開、実証実験を開始。

ポッドキャストは、音声版ブログとも言われ、急速に普及。
これまでの音声認識技術では、誤認識が多く、新しい言葉に対応できず、
インターネット上には多様な音声データが存在するのに対し、
使い物になる音声情報検索サービスは実現していなかった。

新しく開発されたポッドキャッスルは、
不特定多数のユーザーが簡単な操作で誤認識を訂正できる
新たなインターフェースが組み込まれている。
さらに、不特定多数のユーザーの協力で構築されている
インターネット辞書「はてなダイアリーキーワード」などを用いて
開発された、新しい言葉を自動学習する仕組みも付加。

この結果、多くのユーザーが利用し、訂正すればするほど
音声の検索・認識性能が向上する性格を持っている。
ロボットやコールセンター、会議議事録作成などの
さまざまな分野への応用が期待。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0806/0806131.html

学生をつくる(7)上級生が学び方 助言

(読売 6月11日)

大規模大学が、学生づくりに上級生の力を借りる。
黄金週間のはざま。
立命館大学経営学部の1年を対象にした八重樫文准教授(34)の
基礎ゼミでは、約30人の学生が数人ごとに分かれて
「チベットデモはどうなるかな?」、「サブプライムは?」と
議論の花を咲かせていた。

現在の世の中の情勢を分析し、1年後の社会や経済を
予想するのがテーマ。
1年生のゼミは、大学での学び方や討論の仕方などを教えている。

てんでに言い合う1年生を、「背景を考えてみて」と促したのが
3年の三木涼平さん(20)。
新入生支援のボランティア「オリエンテーター」、通称オリターの一人。
1学年の学生が約7000人いる立命館大で、700人いる。
ゼミの手伝いだけでなく、入学式前後の歓迎会や交流会など
仲間づくりの場を設け、個々の相談にも乗る。

三木さん自身、入学時の心細さをオリターに支えられた。
自分の経験をもとに、「1年生の思いをきちんと受け止めたい」。
八重樫准教授も、「オリターが1年生の理解度をつかんでくれるから助かる」。

上級生を新入生支援のボランティアに充てる大学は、今は珍しくないが、
立命館はその先駆け的な存在。
1960年代、学生運動の拠点だった自治会で、
新入生の世話役を「オリター」と称した。
大学側が「新入生支援のボランティア」として公認したのは、91年。
沈滞した自治会の活性化という理由もあったが、
大規模大学での教育充実に、上級生の力を借りたいと考えた。

研修や活動内容、人選は学部のオリター組織に任されている。
大学から謝礼として、5000円分の図書券が出る。
大学が99年度に法学部1年505人を対象に調べたところ、
「オリターがいてよかった」の声が92%。

2004年度からは、上級生による授業ボランティア
「ES(Educational Supporter=教育支援者)」制度も開始。
前年度に同じ科目を履修した学生のうち、成績優秀者700人を、
学内の「大学教育開発・支援センター」で研修。
新入生らも受ける約300科目の授業内容の点検や受講生の指導。

昨年度からは、教育学の教授ら3人が担当する「ピア・サポート論」の
授業も開講、支え合いの意味を考えてもらっている。

オリターやES活動への参加は、上級生自身の学びにもつながっている。
02、04年の2回、計525人のオリターらに尋ねたところ、6割が
「コミュニケーション能力」、「他者に説明・理解させる能力」などが向上。

学内には「学生を取るだけ取って、上級生任せでいいのか」という疑問も。
300人超の大規模授業が全体の3割、約4200を占める状況で、
教育の質を維持・向上できるか。
大規模大学の課題は残る。

◆院生補助員は3分の2の大学が活用

文部科学省の調査では2006年度、大学院生に、手当を支給して
学部で教育補助業務をしてもらうTA(ティーチング・アシスタント)は、
全大学の66%に当たる465校が活用。
「実験・実習・実技指導」が422校で最多、「ゼミの指導」が221校。
TAの総数は約8万人。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080611-OYT8T00262.htm

[第2部・米国](中)ドーピング 進む厳罰化

(読売 5月29日)

米国の陸上五輪代表選考システムは、明快。
選考会で上位3人に入ればいい。
多様な価値観の渦巻く移民の国。
単純明快な一発勝負の結果は、誰もがすっきり受け入れる。
百メートルは、「誰が最速か」を即決してくれる、最も注目を集めるメーンイベント。

全米陸連のクレイグ・モズバック前CEO(最高経営責任者)は、
「スピードは、米国の文化。広大な国家が機能するには、
情報や物の伝達などすべての面で、スピードは欠かせない。
だから短距離も米国の文化、伝統となった」。

しかし、ドーピング(禁止薬物使用)は、
明快、公平に「最速」を決めるレースをぶち壊しにする。

「我々が望むのは、科学的に確信的にドーピングの事実を見つけ出し、
裁判所などではっきりさせることだ」。
全米陸連のビル・ロー会長は、抜き打ちテストの増強を
米国反ドーピング機関(USADA)に要請していることを明かし、
北京五輪で薬物使用が発覚した場合には、
4年後の五輪には出場させない厳罰方針を採ることも明言。

検査、罰則の増強は緊急課題。
しかし、それだけで霧は晴れるだろうか?
テキサス大のジョン・ホバマン教授は、「検査は改善したが、
その先を行くクスリも生まれる。友人の科学者も、
検査ですべてを解決する希望はないと常々指摘する」。

宇宙センターで知られる土地にある、テキサス州のヒューストン大学。
午前9時、小柄な老人がトラックに現れた。
カール・ルイスを育てたトム・テレツ氏。
75歳のボランティアコーチは、休む間もなくグラウンドを右へ、左へ。
手が空いたのは昼過ぎだった。

「全員がドーピングを疑われる状況では、まずはお金をかけて
検査の精度を上げるしかない」
ドーピング対策について、そう答えると、続けた。
日本人は絶対使わないだろう。恥を知っているから。
米国人はお金のために使う。悲しいね。
ルイスはクスリなしで記録を作り、スポーツ環境は以前より良くなった。
なぜクスリに手を出す必要があるのか」

米短距離界を栄光に導いたストイックなまでに勤勉な老コーチは、
立ちっぱなしで30分以上熱く語り、嘆き、
昼食も取らずに、再びグラウンドへ向かった。

ドーピング問題の根っこに横たわる、ごく少数者のモラルの喪失。
老コーチを嘆かせる心の問題を、解決する方法はあるのか。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080529.htm

2008年6月23日月曜日

脳を元気に (4)読み書き算数 効果実証

(読売 6月16日)

読み書きそろばん。
昔の子どもたちの「必修科目」が、認知症の改善や予防に効果のある
「脳トレ」として注目。

くもん学習療法センターが、東北大の川島隆太教授(脳科学)らと
共同開発した高齢者向けプログラム「学習療法」。

小林一茶の俳句「雪とけて 村いっぱいの 子供かな」などの
やさしい読み書きと、「4+1」など1けたの計算が軸。
金属板に書かれた100までの数字の上に、
同じ数字入り磁石を置く「磁石すうじ盤」という課題。

これら課題を行っている人の脳の活動を、
「fMRI」(機能的磁気共鳴画像装置)で解析すると、
コミュニケーションなどにかかわる「前頭前野」の血流量が増加。

認知症患者が自分で着替えられるようになるなど、
認知機能が向上し、動作も劇的に改善。
健常者でも、脳機能低下の予防効果が確認。
東京都品川区の高齢者教室など、
学習療法を取り入れる自治体、施設も増えている。

縦横の数字を組み合わせるパズル「数独」なども
脳の若返りに有効とされるが、
脳研究者で、ブレインサイエンス・ラボラトリー所長の塩田久嗣さんは、
「空間認識に関係する頭頂葉などを鍛えると、
創造力などの高次機能も向上する」。

代表例として、マッチ棒を動かして別の図形を作るといった図形パズル。
中学入試の算数問題には、その手の良問が多い。

笑い、怒りなど喜怒哀楽の感情を表に出すのも良いらしい。
恐れなどの感情をつかさどる脳深部の「扁桃体」を刺激する。
脳科学の進歩は、新たな「脳トレ」開発のヒントを与えてくれる。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/plus/20080616-OYT8T00340.htm

エ-・アンド・デイ、熱中症指数モニター

(スポーツ早耳ニュース 6月16日)

エ-・アンド・デイは、「熱中症指数モニター AD-5695」を発売。

熱ストレスの指標は「WBGT指数」を測定し、
気温や相対温度などを測定し、数値としてデジタル表示。

◎75mm全球型黒球による安定した輻射温度の設定、 ◎WBGT指数、気温、黒球温度、相対湿度のデジタル表示、
◎屋内、屋外モードの切り替え可能、
◎測定範囲は、WBGT指数(0~50℃)、気温(0~50℃)、
黒球温度(0~80℃)、相対温度(10~90%RH)
などの特徴を持つ。

学生をつくる(6)寮生活で協働、調整力

(読売 6月10日)

コミュニケーション能力をつけるため、寮生活を奨励する大学がある。
東北公益文科大学(山形県酒田市)のキャンパス内には、
コテージ風の小規模な20棟の建物が並ぶ。
「ドミ」と呼ばれる学生研修寮。

女子学生9人が暮らすA2棟から、カレーの香りが漂ってきた。
共同台所で、この時間にいた4人の1年生が仲良く調理。
ニンジンをむく人、タマネギを切る人、水の量を量る人、
使ったまな板を洗う人。
各人が自然に自分の役割を見つけて、あっという間にカレーができた。

寮の住人は、1棟8~9人。
男子は14棟に120人、女子は6棟に52人、177人の定員はほぼいっぱい。
研修寮と名を付けたことには訳がある。
親元を離れ、一人で自由に生活できるようになった大学1年生の
時期にこそ、意識的に人とかかわる経験をさせたい」(伊藤真知子副学長)。
数百人が、一つの建物に住むような寮にしなかったのも、そのため。

同大は、「公益学」を学ぶ単科大学として、2001年開学。
山形県の庄内地方には4年制大学がなく、
当時の周辺14市町村と県が出資して設置された公私協力方式の大学。

社会のために活動できる人材作りには、個々の利害が調整できる
コミュニケーション能力を付けること。
そんな能力をはぐくむ場として、1年生を優先的に入寮。
開学当初は15棟だったが、希望者が多く、増やした。
今年度は1年生199人のうち、自宅通学生が55人、
賃貸アパート暮らしが33人に対し、寮生が111人。

棟ごとの話し合いで、掃除もゴミ出しも食事作りもルールを決める。
A2棟では、食事当番は定めず、夕食時に寮にいる学生が一緒に調理。
材料も、みんなで買って割り勘。「安くあがっていい」と好評。
別の棟では、ご飯を炊く当番だけ決めて、おかずは各自で準備。
全くバラバラに夕食を取る棟もあるが、費用は高くなる。

光熱費の請求も棟ごと。
生活費を抑えるため、一丸となって節約に励む。
夜中まで共同リビングで大笑いしながらゲームに興じる、
ご飯当番を忘れてしまう、他人が電気をこまめに消しているのに
自室でクーラーをつけっぱなしにする……。
そんな寮でのトラブルも、大学側は織り込み済み。
大学事務局に相談があった場合も、解決のための話し合いを促す。

1年生の戸塚深智さん(18)は、「将来、NPOやNGOで活動をしたいが、
そういう場では絶対に協働が必要に。
人とやっていくということを、寮で経験するのはきっと役に立つと思う」。

寮を出た後も、寮生同士で部屋を借りて暮らす上級生も。
人とかかわる力は備わっているようだ。

◆公私協力方式

地方自治体が用地などを提供したり、補助金を出したり、
財政的な協力をして私立大を開設する方式。
自治体には、大学誘致で地域が活性化される期待。
1982年度以降、140の大学や短大がこの方式で開設。
ピークは、2000年の11校。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080610-OYT8T00199.htm

かめる高齢者は元気 県歯科医師会が90歳調査

(岩手日報 6月11日)

県歯科医師会(箱崎守男会長)は、「県90歳健康長寿調査」の
結果を発表。
自分の歯でも入れ歯でも、しっかりかむ力がある人は活動的で、
規則正しい生活が健康を支えていた。

調査は80歳、85歳時にも調べた人を追跡。
年齢を重ねる中で、歯の健康と全身の健康がどうかかわっていくかを
知るために、詳しく比較分析。
90歳調査は、1997年、2002年に実施した
旧盛岡保健所管内の102人を対象。
歯科・内科検診、血液検査、体力測定、栄養・健康アンケートなど。

その結果、自分の歯が残っている人は日常生活を楽しみ、
かかりつけの歯科医院がある傾向が分かった。
入れ歯でもしっかりかむ力がある人は、
町内会活動に参加したり旅行をするなど活動的。

日常生活は規則正しく、十分な睡眠が確保。
主食、主菜、副菜(汁物)の整った和風料理が長寿を支えているよう。

平均歯数は3・36本、80歳の4・64本、85歳の4・35本に比べ、
徐々に減っている。
総入れ歯は、61人(59・8%)。
20本以上残っていたのは3人で、最高は25本。

今後は、調査した人の健康が5年ごとにどう変化したかなど、
追跡調査の比較分析を行い、秋ごろに結果を発表。

岩手医大歯学部予防歯科学講座の米満正美教授は、
「長寿の日本だからこそできる調査。
今後の結果分析で、口の健康と全身の健康状態に
どのような関係があるか、明らかにできるのではないか」。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080611_10

次代のニューリーダーたちに向けて、河野事務総長と吉原マネージャーが東京オリンピック招致を語る

(東京オリンピック招致委員会 6月18日)

自民党本部で、「TOKYO自民党政経塾 一般リーダーコース講座
(主宰/石原伸晃衆議院議員)が開かれ、
東京オリンピック招致委員会の河野一郎事務総長と吉原知子マネージャー
東京オリンピック・パラリンピック招致について講演。

今回で3期目となる自民党政経塾は、日本の将来のために広く人材を募り、
世界で活躍できる新しいリーダーたちを発掘し、育てることを目的。

公募により、全国各地から選ばれた今期の塾生は160名。
幅広い年齢層の方が受講、記念すべき第1回目の講座に
「東京オリンピック招致への課題」が選ばれた。

招致プランやオリンピック開催による経済効果など説明した河野事務総長は、
「東京は、20世紀に噴出したいろいろな課題に最初に直面している大都市。
環境問題など一つ一つ克服している東京でのオリンピック開催は、
次に続く都市のロールモデルになる」と、
東京でオリンピックを開催する意義を語った。

「先日の立候補都市選定で、東京は最高の評価を得た。
これは、都市力があるだけでなく、我々と東京都、関係者の皆さんが
一丸となった結果。日本にはそういった素晴らしいチームワークがある」、

「来年の2月には、IOCに立候補ファイルを提出するが、
これは技術的なことだけでなく、いかに東京、日本の素晴らしさを
世界に訴えるかが重要。まさにチームワークが必要」。

スポーツは、国として取り組むべき価値がある。
スポーツを国策とするため、新スポーツ振興法の制定や
スポーツ庁(省)の設置などが検討されている。
これらの動きにあわせ、オリンピック招致について政府の財政保証が
得られるようお願いしたい」。

吉原マネージャーは、「バレーボールでオリンピックを経験して、
何が一番大切だったかというと、やはりチームワーク。
人間は、ひとりだけでは限られた力しか出ないが、
それぞれが一つになるとすごい力を発揮する」と
河野事務総長と同様、チームワークの重要性について語り、
「オリンピックの素晴らしさを皆さんに伝え、
是非オリンピックを日本に招致したい。
皆さんに、オリンピックを自分たちの手で作ったという達成感を感じてほしい」。

http://www.tokyo2016.or.jp/jp/news/2008/06/post_51.html

2008年6月22日日曜日

脳を元気に (3)朝食食べて集中力アップ

(読売 6月13日)

3年前に熊本県が行った小中学生対象の学力テストで、
「朝食を必ず食べる」中学生の5教科合計点(500点満点)の平均は
「ほとんど食べない」生徒の平均を65・4点も上回った。
規則正しい生活の大切さを裏付けたものだが、
専門家は「脳と栄養の関係を考えても当然」。

脳のエネルギー源は、ブドウ糖だけ。
ブドウ糖は、肝臓にグリコーゲンの形でわずかしか蓄えられていない。
中川八郎・大阪大名誉教授(神経内科学)は、
「ひと晩寝ると、体内に蓄えられたグリコーゲンは空になる。
朝食を抜くと、脳に必要なエネルギーが供給されず、集中力が低下し、
ミスが多発する」。

女子栄養大の三浦理代教授(栄養科学)は、
脳を目覚めさせる朝食として、「ごはんなどの炭水化物(糖質)とともに、
糖質を効率よくエネルギーに変えるビタミンB1を含む食品も食べて」。

B1摂取には、うなぎ入り卵焼きやほうれん草のごまあえなどが良い。
白米を胚芽米に代えるのも賢い手。
洋食なら、ピーナツクリームやシリアルなどの食品がお勧め。

三浦教授は、「脳を活性化するメニュー」などをレシピ付きで紹介。
ビタミンB1が豊富な豚肉のほかに、脳の神経伝達物質の材料となる
アミノ酸の一種「トリプトファン」を多く含む鶏肉、神経細胞の保護作用がある
ドコサヘキサエン酸(DHA)が多い魚を挙げている。

こうした食事は年齢に関係なく共通するが、年を重ねると注意したいのは
脳の低栄養状態」。
同じ食材を食べ続けるなど、食事が単調になるときに起こりやすい。
この状態が長く続くと、脳の老化の引き金になる。
たくさんの食材をバランス良く食べたい。

http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/plus/20080613-OYT8T00519.htm

学生をつくる(5)「社会の力」講座に注ぐ

(読売 6月7日)

学習意欲を維持させるために、大学が社会の力を活用。
講義室には、スクリーンとグランドピアノ。
スクリーン上の男性がピアノを弾き出すと、講義室のピアノの鍵盤が
動き出し、学生ら約100人の歓声が上がった。

8年目を迎える静岡産業大学(静岡県藤枝市)の冠講座は、
県内の企業や自治体などが職員を派遣し、
最新の技術や実務情報を解説する人気講座。
単発ではなく、一つの企業や団体が、半年間、15週を担当。

ヤマハ(浜松市)が受け持つ授業の2回目。
約30キロ離れた工場から、インターネットを使ってピアノを遠隔演奏。
「ここ10年の研究で、時差は10分の1、0・3秒に縮まり、
わずかなスタッフと機材で、数か国同時の演奏会も可能になった」。
講師の説明に学生の目が輝く。

「未来につながるすごいビジネス。自分もいつかやってみたい」と
情報学部2年の松本聖也さん(19)は興奮を隠せない。
大坪檀学長(79)は、「産業界の最先端技術や情報は、
学生にとって格好の教材。学ぶ目的や将来像が明確になる」。

米国ハーバード大とノースカロライナ大で客員研究員を務めた後、
ブリヂストンに入社、米法人の経営責任者も務めた大坪学長は、
2000年の就任以来、「地域に役立つ人材の養成」を掲げ続ける。

就任直後、フリーター化する学生の多さに驚き、
考え抜いた末にたどりついた校是。

日本庭園造りが趣味だったブリヂストンの創業者・石橋正二郎が、
「どんな石や木も、置き方次第で庭を変える力がある」。
「それと一緒。できない学生なんていない。
原石を磨き上げてダイヤにするのが大学の役割」

1年生には少人数制のゼミで、リポートの書き方や語学などの
基礎力を徹底的に培う。名付けて「大化け教育」。
卒業時に向けて学習意欲を維持、向上させる決め手が「社会の力」。
社会人経験のある教員を集め、図書館には地元企業1000社の
社史を置く専用のコーナーを設けた。

目玉の冠講座は「寄付は要らない。情熱を伝えて」と、
学長自ら企業を回って口説いた。
金融機関や県なども快諾し、初年度は5講座で始まった。

講師には、知事や銀行の頭取、プロサッカーチーム「ジュビロ磐田」の
社長ら、県内のそうそうたる顔ぶれが登場。
社会保障、福祉、経済、環境、チーム作りなど、
多彩な話題を実習や校外視察も交えて紹介。
市民に公開されたこともあって話題を呼び、今年は20講座を数える。

この春の同大卒業生の就職率は、96%。
ここ数年、95%を下回ったことはない。
学部での教育には、卒業時を見据えた戦略が欠かせない。
「在学中に卒業後の人生設計をきちんとさせ、フリーターにはさせない」、
かつては遠くに見えた学長らの願いが、現実。

◆冠講座

企業や地方公共団体などからの寄付金をもとに、
学外からの研究者らを招き、企業名などを冠して開設する講座。
中曽根康弘首相時代の臨時教育審議会が、
「民間活力の導入」を提言したのを受け、
文部科学省が1987年に国立大学設置法施行規則を改正、
国立大でも解禁に。米国では100以上の“冠”を抱える大学も珍しくない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080607-OYT8T00194.htm

COP9:生物を守れば、企業が生きる 多様性イニシアチブに日本の9社が署名

(毎日 6月10日)

国連の生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)で、
企業が生物多様性の保全に積極的に取り組む
「ビジネスと生物多様性イニシアチブ」に日本の9社が署名。
企業が社会貢献の一部ではなく、
本業の中で生物を守る動きが広がりつつある。

◆庭に5本の木

イニシアチブには日本、ドイツ、ブラジル、フィンランド、スイス、
アメリカから、観光、木材加工、建築、金融などさまざまな
業種の企業34社が参加。

企業の経営・マネジメント方針に、生物多様性の保全を組み込む
▽年次報告書で活動内容を公表
▽企業活動が生物多様性に与える影響を分析する
など7項目からなる「リーダーシップ宣言」に署名。

日本企業は、積水ハウス、サラヤ、鹿島建設、富士通、森ビルなど。
積水ハウスは、販売する戸建て住宅の庭に、
日本在来の5本の木を植える運動を展開。
「3本は鳥のために。2本はチョウのために」がキャッチフレーズ。
「人が見てきれいかどうかより、生物のための庭をつくる」との発想。
市民団体「シェアリングアース協会」の協力を得て、
鳥やチョウなどが集まるその土地の樹木のリストを作成し、
住宅の顧客に選んでもらっている。

洗剤・せっけん製造業者のサラヤ(大阪市)は、
原料のアブラヤシが取れるインドネシアなどで野生動物の保護に取り組む。
更家悠介社長は、「生物多様性を社会貢献ではなく、
本流のビジネスにしようとする企業が増えるはず」。

◆行政、NGOに限界

企業による生物多様性保全の重要性が浮上したのは、
06年のブラジル・クリチバでのCOP8で、
民間部門の参加を促す決議が採択されたのがきっかけ。

背景には、この問題が国際社会の主要テーマになったにもかかわらず、
生物の絶滅・衰退が止まらないという現状。
WWF(世界自然保護基金)は、世界中の1300種を超える
野生生物の生息状況を調査して指数化、
05年は1970年と比較してこの指数が約27%低下。

生物多様性の損失は、空気、水、食物、気候に影響を及ぼし、
自然界から原料などを得る企業自身の存続や、
人類の生存の基盤も脅かすことに。

もはや行政やNGO(非政府組織)だけでは、
条約の「2010年までに多様性の損失速度を顕著に減少させる」
という目標は達成困難。

国内では、問題意識を共有する企業が主体となって
生物多様性に関する学習や情報交換をする
「企業と生物多様性イニシアチブ」(JBIB)が発足。
生物多様性とその持続可能な利用についての学習や
シンポジウム開催の情報発信といった活動を始め、
将来は政策提言も視野に入れる。

17社が参加を表明し、さらに増える見通し、
今後はNGOとの交流も進める。
足立直樹事務局長は、「生物多様性保全のため企業ができることは多い。
単独で進めるより、熱意のある企業が集まって情報交換し、
COP10で日本企業の取り組みをアピールできるようにしたい」。

◆名古屋でルール作り

2010年に日本での開催となる名古屋市のCOP10では、
「2010年目標」の達成度を評価し、
新たな保全目標を設定しなければならない。

薬など生物を利用して得られた利益を、企業と原産国で分け合う
「遺伝資源の取得と利益配分」のルール作りが大きなテーマ。

COP9では、法的義務を求める途上国と、これに難色を示す
日本などの先進国が対立したまま、
10年がそのルールを決める期限。

国連は、10年を「生物多様性の年」と定め、
国連総会で生物多様性を論じるための首脳会合の開催も検討。
国際自然保護連合日本委員会の道家哲平氏は
「条約史上最も重要な会議になる」。

日本は、議長国として難しいかじ取りを迫られ、
企業やNGOと連携してどう生物多様性の保全を図っていくか
問われる会議となりそう。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/10/20080610ddm016040150000c.html

「子育てにやさしい企業」に 県内2社認定

(岩手日報 6月12日)

県は、「いわて子育てにやさしい企業」に
川口印刷工業(盛岡市、斎藤誠社長)と、
訪問介護などを行うウェルファム(矢巾町、小笠原哲社長)
の2社を認証。

岩渕良昭県保健福祉部長が、両社長に認証書を手渡し、
「子育てに社を挙げて取り組むことに感謝する」とあいさつ。

川口印刷工業は、約200人の従業員のうち女性は3割弱。
育児のための勤務時間短縮措置の対象を、
3歳から小学校就学までに引き上げた。
斎藤社長は、「男性も育児がしやすい環境になるようにしたい」。

ウェルファムは社員23人中、20人が女性。
子どもの看護休暇制度を半日からでも取得できるよう変更。
小笠原社長は、「従業員には制度を活用してほしい」。

県が認証した企業は、今回で計5社。
次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を、
労働局に届け出る義務がない300人以下の企業を認証し、
仕事と子育ての両立を支援する。

企業にとって、認証されることで県単融資制度保証料率の
引き下げなどのメリットがある。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20080612_5

[第2部・米国](上)短距離王国包む深い闇

(読売 5月26日)

4月というのに、日差しが痛いテキサス州立大。
リレー種目中心の競技会「テキサス・リレー」には、
陸上王国らしく約2万人が集まった。
そこに現れたのが、昨年の大阪世界陸上で百メートルなど
3冠の王者タイソン・ゲイ。
シーズンインの足慣らしに2種目のリレーをこなすと、記者に囲まれた。

「コーチが、ドーピング(禁止薬物使用)と関係ない自信はあるか」、
「もちろん。大学時代からの長い付き合いだし、一緒に練習してればわかる」
五輪の年。そのメーンイベント男子百メートルの英雄候補と、
そんなやりとりが始まる。
澄んだテキサスの空とは対照的な深い闇に、米国短距離界は包まれている。

今年1月。2000年のシドニー五輪で、女子短距離3冠を獲得して
ヒロインとなったマリオン・ジョーンズが、ドーピングなどに関する
偽証罪などで、禁固6か月の実刑判決。

06年にアテネ五輪金メダルのジャスティン・ガトリン、
05年に元男子百メートル世界記録保持者のティム・モンゴメリ、
04年には03年世界陸上女子短距離2冠のケリー・ホワイトの
ドーピングが、次々発覚。

「メディアや陸上関係のウェブサイトなどで、僕も薬物を使ってるという
話が飛び交う。そんな環境になってしまったのが悔しい」
ゲイの嘆きは、米国選手すべての思い。

「世界一速い男」を決める百メートルは、米国五輪史の中心。
1896年第1回アテネ大会を、クラウチングスタートを持ち込んだ
トーマス・バークが制すと、1936年ベルリン大会では人種差別政策を
行ったヒトラーの前で、黒人選手ジェシー・オーエンスが4冠を達成、
2004年アテネ大会まで24大会で16勝。

五輪史の分岐点にもなったのが、東西冷戦下でのボイコット合戦となった
84年ロス大会のカール・ルイスの登場。
4冠を果たし、商業主義にカジを切った地元五輪を盛り上げて
五輪の商業化を一気に加速させ、五輪選手のプロ化の源流に。

しかし、この革新の光が暗黒の源になったとの指摘。
テキサス州立大のジョン・ホバマン教授は、
「五輪はお金になる、と示したのがロス大会であり、カールだった。
お金が稼げる、というオリンピックドリームで、五輪は崩壊しかけている」

米国からスタートした商業化。
米国のスターが築き上げた、富を手にするシステム。
その輝きに、目がくらんだ者たちが選んだドーピングという不正手段によって、
米国が苦しんでいる皮肉は偶然だろうか。

僕らに課せられた役割は、暗闇を明るくすること。
北京五輪では、アンチ・ドーピングの強い意志を持って活躍し、
子供たちに夢を与えなければならない」
ゲイは、それを宿命と受け止め、光を求める。

http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2008/feature/continent/fe_co_20080526.htm