2008年6月25日水曜日

エコカー:期待の両輪 燃料電池車と電気自動車

(毎日 6月16日)

自動車メーカーが、ガソリンをまったく使わずに走る
次世代エコカーの開発を強化。
地球温暖化問題や原油高に対応、水素を動力源とする「燃料電池車」と、
家庭用電源などから充電する「電気自動車」が
次世代エコカーの2大勢力になりそう。

◆1台数千万円

ホンダが、栃木県の工場で生産を始めたのは
新型燃料電池車「FCXクラリティ」。
7月に米国で、秋には日本でリース販売を始め、
今後3年で200台の販売を目指す。

燃料電池車は、タンク内の水素を空気中の酸素と化学反応させて発電し、
モーターを動かすため、排出するのは水だけで二酸化炭素(CO2)は出さない。
クラリティは、一度に走れる距離が平均的なガソリン車を超える620キロ。

トヨタ自動車も今月、新型の燃料電池車を完成させ、
年内に国内リース販売を開始、米ゼネラル・モーターズ(GM)や
独BMWなど欧米勢も燃料電池車の開発に熱心。

燃料電池車は、製造工程が複雑で、1台当たりのコストが
「数千万円以上」(福井威夫ホンダ社長)。
ホンダは、10年以内に1000万円以下で販売できるよう
コスト削減を急ぐが、それでもまだ高い。
ガソリンスタンドに代わる水素ステーションの整備も課題で、
現在は官公庁など特定の利用に限られ、
「一般に普及するまでに20~30年はかかる」(業界関係者)。

◆燃費10分の1

燃料電池車より一足早く普及しそうなのが、電気自動車。
高価なリチウムイオン電池を使うため、
製造コストはガソリン車の倍以上となるが、
燃費はガソリン車の約10分の1に抑えられる。

最近は、ガソリン高で電気自動車への注目が高まっており、
三菱自動車は09年夏、日産自動車や富士重工業も
10年度までに販売を開始する計画。

電気自動車は、1回の充電で走れる距離がガソリン車の半分以下。
電気自動車の使い勝手を、ガソリン車並みに高めようと、
トヨタが今月下旬、次世代電池の研究・開発に乗り出すが、
2030年ごろまでの開発が目標で、
当面は買い物など近距離用途に限られそう。

◇電機会社と提携 リチウムイオン電池の開発・量産化

電気自動車などの性能を左右する「リチウムイオン電池」の
開発・量産化に向け、自動車と電機メーカーの合従連衡が加速。
中核部品は、自社で手がけたいという自動車会社と、
大口顧客を確保したい電機会社の利害が一致。

トヨタ自動車は、松下電器産業との合弁会社を通じ、
10年からリチウムイオン電池の本格生産を始める。
家庭用電源で充電できる「プラグインハイブリッド車」などに搭載。

日産自動車はNECと、三菱自動車はジーエス・ユアサなどとの合弁で、
09年以降、量産に乗り出す予定。
三菱自は仏プジョーシトロエングループと
電気自動車の技術提供に向けた交渉も進めている。

三菱電機は、独フォルクスワーゲンに電池を供給する契約を締結。
日立製作所は、米ゼネラル・モーターズに電池を供給する予定。

自動車会社は競争力確保のため、
「主要部品は外部調達に頼りたくない」(大手自動車メーカー)。
電機会社は、「安定供給先を事前に確保した方が、
巨額の資金が必要な設備投資に踏み切りやすい」(電機大手)。
自動車と電機メーカーは、それぞれ特定の相手と手を結び、
業界の垣根を越えた陣営作りが進んできた。

燃料電池車より普及が早く進むとみられる電気自動車だが、
「電池価格を大幅に引き下げることが不可欠」(業界関係者)と指摘、
大量生産体制を実現するため合従連衡がさらに進む可能性も。

◇ことば リチウムイオン電池

充電式電池の一種で、ノートパソコンや携帯電話などに使われている。
軽量で電気をためる容量が大きい。
現在のハイブリッド車で主に使われているニッケル水素電池に比べ、
体積や重量を半分以下に抑えられる。
ハイブリッド車や電気自動車の燃費を高めて走行距離を延ばすことが可能、
次世代自動車の有力な動力源として開発が進んでいる。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080617k0000m020098000c.html

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