2008年6月23日月曜日

学生をつくる(6)寮生活で協働、調整力

(読売 6月10日)

コミュニケーション能力をつけるため、寮生活を奨励する大学がある。
東北公益文科大学(山形県酒田市)のキャンパス内には、
コテージ風の小規模な20棟の建物が並ぶ。
「ドミ」と呼ばれる学生研修寮。

女子学生9人が暮らすA2棟から、カレーの香りが漂ってきた。
共同台所で、この時間にいた4人の1年生が仲良く調理。
ニンジンをむく人、タマネギを切る人、水の量を量る人、
使ったまな板を洗う人。
各人が自然に自分の役割を見つけて、あっという間にカレーができた。

寮の住人は、1棟8~9人。
男子は14棟に120人、女子は6棟に52人、177人の定員はほぼいっぱい。
研修寮と名を付けたことには訳がある。
親元を離れ、一人で自由に生活できるようになった大学1年生の
時期にこそ、意識的に人とかかわる経験をさせたい」(伊藤真知子副学長)。
数百人が、一つの建物に住むような寮にしなかったのも、そのため。

同大は、「公益学」を学ぶ単科大学として、2001年開学。
山形県の庄内地方には4年制大学がなく、
当時の周辺14市町村と県が出資して設置された公私協力方式の大学。

社会のために活動できる人材作りには、個々の利害が調整できる
コミュニケーション能力を付けること。
そんな能力をはぐくむ場として、1年生を優先的に入寮。
開学当初は15棟だったが、希望者が多く、増やした。
今年度は1年生199人のうち、自宅通学生が55人、
賃貸アパート暮らしが33人に対し、寮生が111人。

棟ごとの話し合いで、掃除もゴミ出しも食事作りもルールを決める。
A2棟では、食事当番は定めず、夕食時に寮にいる学生が一緒に調理。
材料も、みんなで買って割り勘。「安くあがっていい」と好評。
別の棟では、ご飯を炊く当番だけ決めて、おかずは各自で準備。
全くバラバラに夕食を取る棟もあるが、費用は高くなる。

光熱費の請求も棟ごと。
生活費を抑えるため、一丸となって節約に励む。
夜中まで共同リビングで大笑いしながらゲームに興じる、
ご飯当番を忘れてしまう、他人が電気をこまめに消しているのに
自室でクーラーをつけっぱなしにする……。
そんな寮でのトラブルも、大学側は織り込み済み。
大学事務局に相談があった場合も、解決のための話し合いを促す。

1年生の戸塚深智さん(18)は、「将来、NPOやNGOで活動をしたいが、
そういう場では絶対に協働が必要に。
人とやっていくということを、寮で経験するのはきっと役に立つと思う」。

寮を出た後も、寮生同士で部屋を借りて暮らす上級生も。
人とかかわる力は備わっているようだ。

◆公私協力方式

地方自治体が用地などを提供したり、補助金を出したり、
財政的な協力をして私立大を開設する方式。
自治体には、大学誘致で地域が活性化される期待。
1982年度以降、140の大学や短大がこの方式で開設。
ピークは、2000年の11校。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080610-OYT8T00199.htm

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