2008年6月24日火曜日

学生をつくる(7)上級生が学び方 助言

(読売 6月11日)

大規模大学が、学生づくりに上級生の力を借りる。
黄金週間のはざま。
立命館大学経営学部の1年を対象にした八重樫文准教授(34)の
基礎ゼミでは、約30人の学生が数人ごとに分かれて
「チベットデモはどうなるかな?」、「サブプライムは?」と
議論の花を咲かせていた。

現在の世の中の情勢を分析し、1年後の社会や経済を
予想するのがテーマ。
1年生のゼミは、大学での学び方や討論の仕方などを教えている。

てんでに言い合う1年生を、「背景を考えてみて」と促したのが
3年の三木涼平さん(20)。
新入生支援のボランティア「オリエンテーター」、通称オリターの一人。
1学年の学生が約7000人いる立命館大で、700人いる。
ゼミの手伝いだけでなく、入学式前後の歓迎会や交流会など
仲間づくりの場を設け、個々の相談にも乗る。

三木さん自身、入学時の心細さをオリターに支えられた。
自分の経験をもとに、「1年生の思いをきちんと受け止めたい」。
八重樫准教授も、「オリターが1年生の理解度をつかんでくれるから助かる」。

上級生を新入生支援のボランティアに充てる大学は、今は珍しくないが、
立命館はその先駆け的な存在。
1960年代、学生運動の拠点だった自治会で、
新入生の世話役を「オリター」と称した。
大学側が「新入生支援のボランティア」として公認したのは、91年。
沈滞した自治会の活性化という理由もあったが、
大規模大学での教育充実に、上級生の力を借りたいと考えた。

研修や活動内容、人選は学部のオリター組織に任されている。
大学から謝礼として、5000円分の図書券が出る。
大学が99年度に法学部1年505人を対象に調べたところ、
「オリターがいてよかった」の声が92%。

2004年度からは、上級生による授業ボランティア
「ES(Educational Supporter=教育支援者)」制度も開始。
前年度に同じ科目を履修した学生のうち、成績優秀者700人を、
学内の「大学教育開発・支援センター」で研修。
新入生らも受ける約300科目の授業内容の点検や受講生の指導。

昨年度からは、教育学の教授ら3人が担当する「ピア・サポート論」の
授業も開講、支え合いの意味を考えてもらっている。

オリターやES活動への参加は、上級生自身の学びにもつながっている。
02、04年の2回、計525人のオリターらに尋ねたところ、6割が
「コミュニケーション能力」、「他者に説明・理解させる能力」などが向上。

学内には「学生を取るだけ取って、上級生任せでいいのか」という疑問も。
300人超の大規模授業が全体の3割、約4200を占める状況で、
教育の質を維持・向上できるか。
大規模大学の課題は残る。

◆院生補助員は3分の2の大学が活用

文部科学省の調査では2006年度、大学院生に、手当を支給して
学部で教育補助業務をしてもらうTA(ティーチング・アシスタント)は、
全大学の66%に当たる465校が活用。
「実験・実習・実技指導」が422校で最多、「ゼミの指導」が221校。
TAの総数は約8万人。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080611-OYT8T00262.htm

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