2008年3月15日土曜日

睡眠時間:不足、メタボ呼ぶ 生活習慣病と関連--国内初の大規模調査

(毎日新聞 2008年3月13日)

睡眠時間が短いと、肥満や高血糖、動脈硬化の原因となる
脂質異常症を引き起こしやすいことが、
日本大学などによる国内の大規模疫学調査で分かった。
兼板佳孝・日大専任講師(公衆衛生学)は、
「睡眠も、喫煙や運動、栄養・食事、飲酒などと同様に
生活習慣病と密接に関連する。
生活習慣病を予防するには、睡眠習慣を含めた保健指導が必要」。

睡眠時間が短すぎたり長すぎると、死亡リスクが高まることは知られている。
だが、日本人を対象とした睡眠時間と生活習慣病のリスクとの関連は、
これまで十分な検討がなされていなかった。

兼板さんらは、地方公務員の男性約2万1700人の健診データを
99年から06年まで追跡。
99年時に肥満(体格指数BMIが25以上)でない約1万1400人について、
7年後の肥満の発症率と睡眠時間の変化との関連を調べた。

両健診時に、睡眠時間が5時間以上だったグループに比べ、
両健診でいずれも5時間未満と短いグループは1・36倍、
7年間で5時間未満に減ったグループは1・33倍、肥満になりやすかった。

高血糖や脂質異常の高トリグリセライド血症についてもほぼ同様。
元々肥満だったグループは、7年後に睡眠が短くなる割合が高く、
肥満と短時間睡眠が相互に関連することも分かった。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080313ddm001040181000c.html

大学リユース市:卒業生の家電や家具を新入生に、規模拡大で悩みも

(毎日 3月10日)

春は巣立ちの季節。
大学では、卒業に伴う引っ越しで不要になった家電や家具を
新入生へ格安で譲り渡す、「リユース市」や「リサイクル市」と
呼ばれるイベントが開かれる。

01年の家電リサイクル法施行などで処分にお金がかかる
家電や家具をリユース(再使用)に回すことのメリットが見直され、
取り組む大学が急速に広まった。

しかし、取扱量が増えたがゆえの悩みも。
「ここまで大きくなったのに、今年は実施できず残念です」
大阪大のリユース市「リユースマーケット」事務局で、
生活協同組合環境資源委員会の薮田真太郎さん(同大2年)は、
今年の開催断念を、無念そうに話す。

00年ごろから、まだ使える冷蔵庫やテレビ、家具を卒業生から回収、
市価の10分の1程度の格安料金で新入生を中心に販売。
「新入生の負担を減らし、ものを無駄にしない取り組み」として評価。

昨年の取扱量は400点に上り、春のイベントとして認知。
しかし、集めた家電や家具の保管場所にしてきた生協食堂の一角が、
耐震工事のため使えなくなってしまった。
大学外で倉庫を借りることも検討したが、
費用が高く適当な保管場所が見つからなかったため、
開催を断念せざるを得なくなった。

環境活動を行う大学生らで作る全国青年環境連盟「エコ・リーグ」
06年のアンケートでは、21大学がリユース市を「実施する(した)」と回答、
運動は広がりを見せている。

一方、規模が大きくなったことで、保管場所や開催場所の確保が新たな課題。
東京農工大では、例年保管場所として使っていた大教室が、
今年は別のイベントのために使えなくなり、
扱う品数を元の400~500点から半分程度。

長崎大でも、数年前には保管場所が確保できなくなり、
主催するサークルの部室にも一時保管。
その後も毎年大学側と交渉しているが、「保管場所の確保は悩みの種」。

一方、早稲田大ではリユース市そのものが開催できない。
「キャンパスでは学園祭を除き、販売行為そのものが禁止」という理由。
同大の環境サークル「環境ロドリゲス」は、秋の学園祭に合わせて開催したり、
春に開かれる地元の商店街のフリーマーケットに出店するなどしたが、
本格実施には至っていない。
同大4年の西尾敬さんは、「卒業生から新入生に家電や家具を受け渡す
という趣旨からすれば、大学でリユース市を実施しないとあまり意味がない」。

エコ・リーグ事務局員で東京農工大3年の宮坂和彦さんは、
「規模を大きくすると、保管場所や実施場所の確保や回収にかかる
手間などの負担が増えてくる。
卒業で家電や家具を粗大ごみにしてしまうのはもったいないという気持ちを、
いかに持続するかが大切」。
==============
◇リユース市

卒業生や周辺住民の自宅から無料で家電や家具を引き取り、
新入生を中心とした希望者に提供。
「協力金」などの名目で数百円から数千円を払ってもらう。
86年に京都大で始まり、各地に広がった。
最大規模となっている京都大での取扱量は1200点。
今年は、「3年後の地上デジタル放送に対応していないテレビの
引き取り手がないのではないか」(東京農工大、岡山大)などがトピック。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080310ddm016040070000c.html

2008年3月14日金曜日

お茶の花からメタボ対策の新素材!?茶花研究会が発足

(J-CAST 2008/2/13)

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策への関心が高まるなか、
お茶の花(茶花:ちゃか)の成分に注目して研究を進める
「国際茶花研究会」が発足。

「お茶」の葉に含まれるカテキンが、老化の防止や血中のコレステロール値を
整えたり、便秘の予防などに有用という研究結果はすでに出ていた。
お茶の花にも、サポニンやフラボノイドといった成分が含まれ、
脂肪吸収の抑制作用や腸運動亢進作用から
メタボの原因といわれる肥満や糖尿病の予防に役立つのでは。

4月からメタボリックシンドロームに対応した特定健診や特定保健指導が
導入されることもあり、肥満対策への関心が高い。
近畿大学薬学総合研究所の村岡修教授は、
「近年、科学的な裏づけのない健康食品が問題になっているが、
研究を通じて(茶花の)安心、安全性を保てるようにし、
新たな効能の発見にもつなげていきたい」。

京都薬科大学の吉川雅之教授が行った臨床治験では、
茶花抽出エキスを40人の成人に1か月間投与したところ、
平均1.70~2.50キログラムの体重の減少を確認。
「茶花にあるサポニンが糖分の吸収を抑制することは報告され、
ダイエットについて指摘するのはおそらく初めて」。

アンチエイジング研究の順天堂大学大学院・白澤卓二教授は、
「メタボにみられる脂肪の蓄積は、20~30年かけてしのび寄るので、
生活で密着したプログラムでの改善努力が必要」、
食事と運動の重要性を改めて語った。

お茶は、白い椿のような美しい花をつける。
花を咲かせると、茶葉に必要な栄養分が行かなくこともあり、
これまで茶園の農家に見向きもされなかったが、
ここにきてメタボ対策という思わぬ活用法が出てきた。

http://www.j-cast.com/2008/02/13016608.html

音とリズムでメタボ予防 ヘッドホンで運動--セガトイズが発売

(毎日 3月7日)

セガトイズ(東京都台東区、國分功社長)は、
ヘッドホンから流れるリズムと音声で、利用者の心肺機能にあった
有酸素運動を促す「カラダトレーナー」を発売。

来年度から新しい健康診断制度が始まるが、
五輪の女子マラソンのメダリストでアドバイザーの有森裕子さんは
「一人で体を動かすのが面倒なヒトも、ヘッドホンからのアドバイスで
効率良く運動できる」とPR。
メタボリック(内臓脂肪)症候群の予防など初心者に最適。

「カラダトレーナー」は、ウオーキングとジョギング、エアロビクスの
3種類に対応し、ジョギングの速さなどを年齢ごとに
音声などでアドバイスする仕組み。
有森さんは、「持ち運びに便利で室内外問わず、手軽に使える」。

同社は商品開発にあたり、子どもだけでなく、中・高年などに
年齢層を拡大して要望を聞いた結果、
「より楽しく、遊びながら健康になりたい」といった声が多かった。
開発担当の木全若菜さんは、「従来は製品化に向け、
室内で試す機会が多かったですが、今回は走りに走りました」
価格5775円(税込み)。

http://mainichi.jp/life/health/news/20080307ddm010020076000c.html

2008年3月13日木曜日

日本人患者からiPS細胞作製へ 病気解明へ京大チーム

(朝日 2008年03月09日)

京都大学大学院医学研究科の中畑龍俊教授を中心とした研究チームは、
日本人患者の皮膚などから、万能細胞(iPS細胞)をつくり、
病気の原因究明や治療法の開発に取り組む計画を進めている。

iPS細胞は、京大の山中伸弥教授が作製に成功したが、
これまでは、海外から買った皮膚細胞でヒトiPS細胞をつくっていた。

患者の皮膚などの細胞を初期化したiPS細胞は、
病気を起こす潜在的な要因をもつと考えられる。
分化する様子をみることで、病気を起こすメカニズムがわかる可能性。

子どもに多い1型糖尿病や筋ジストロフィー、先天性の貧血などに悩む
京大病院の患者を対象。

血糖を下げるインスリンの分泌がされない1型糖尿病であれば、
iPS細胞を膵臓細胞に分化させ、1型糖尿病の起こる仕組みや
治療薬、治療法を探る。

再生医療として、iPS細胞からインスリンを分泌する細胞をつくる試み。
病気をもたない日本人からボランティアをつのり、
皮膚や臍帯血からヒトiPS細胞をつくり、病気の人と比較。
iPS細胞バンクづくりもめざす。

中畑教授をはじめ、京大の小児科、内科などの医師と山中教授が協力。
山中教授は、「外国でも同様の研究の取り組みは始まっており、
倫理委員会に申請したという話は複数聞いている。
われわれが患者さんの細胞からiPS細胞をつくり、京大だけでなく、
多くの医師らと協力して研究したい」。

http://www.asahi.com/science/update/0309/OSK200803090039.html

2008年3月12日水曜日

骨壊す細胞つくる酵素発見 粗しょう症の治療に道

(共同通信社 2008年3月7日)

体内で過剰になると、骨粗しょう症や関節リウマチを起こす「破骨細胞」を
つくる酵素を、高柳広・東京医科歯科大教授(骨免疫学)らのチームが発見。
人でこの酵素の働きを抑える物質が開発できれば、
これらの病気の治療薬につながる可能性がある。

破骨細胞は、骨を吸収する役割をしており、骨をつくる骨芽細胞と
バランスよく働くことで正常な骨を保っている。

破骨細胞で働いている遺伝子を網羅的に解析。
Btk」と「Tec」という2つの酵素をつくる遺伝子の働きが
高まっていることを見つけた。

遺伝子を欠いたマウスを作製したところ、破骨細胞がつくられず、
骨がすき間なく埋まり強度が低下する「大理石骨病」を発症。
2つの酵素が、破骨細胞を形成する役割をしていると判断。

2つの酵素の働きを抑える薬剤を、関節リウマチや骨粗しょう症を
発症させたマウスに投与したところ、症状が改善。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=69059

高度な脳はごみが作った?DNAの隠れた役割解明

(共同通信社 2008年3月4日)

人やマウスの遺伝情報に含まれ、役に立たない「ごみ」のように
考えられていた短いDNA配列が、脳の正常な発達に重要な役割を
担っていることを、岡田典弘・東京工業大教授らのチームが発表。
同様の配列は爬虫類や鳥類にもあるが、働いているのは哺乳類だけ。

チームは、進化の過程で哺乳類が高度な脳を獲得したのは、
このDNA配列の作用ではないかと。

進化の過程で、生物の遺伝情報に入り込む「SINE」と呼ばれる
短いDNA配列に着目。魚類や両生類にはない特定のSINEを、
爬虫類より高度な生物が持っていることを見つけた。
SINEの配列は、爬虫類や鳥類では進化に伴って変化したのに、

哺乳類ではもとの配列がよく保存されていた。

SINEが、哺乳類にとって重要な機能を持つのではないかと仮説を立て、
SINEが働くと細胞が発色するように遺伝子操作したマウスを作製。

その結果、SINEが胎児の脳の神経回路を正しく配置する遺伝子や、
大脳皮質を形作る遺伝子を働かせていることを突き止めた。
同様の機能は、鳥類のSINEにはなかった。

「SINEがこうした機能を獲得したことが、
哺乳類特有の高度な脳の形成につながった」と推測。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=68810

インスブルックら4都市が立候補、第1回冬季ユース五輪

(CNN 3月8日)

2012年に第1回大会を開く冬季ユース五輪で、
国際オリンピック委員会(IOC)は、4都市が開催地に立候補。
リレハンメル(ノルウェー)、インスブルック(オーストリア)、
クオピオ(フィンランド)、ハルビン(中国)。

4都市のうち、リレハンメルとインスブルックは冬季五輪を過去に開催。
6月19日までに開催計画の概容を提出。
8月に候補地が絞り込まれ、11月にIOC委員による郵便投票を実施し、
12月に開催地を最終発表。

ユース五輪は、14歳─18歳の選手を対象としたもので、
発案したロゲ会長は、「エリート選手の競争の舞台というより、
スポーツを通じた教育に重点を置く。
友情、健全な肉体、社会との関係などで五輪の価値を学んでもらいたい」。

ユース五輪は五輪同様、4年ごとに開催。
期間は、1週間から10日間程度。
実施種目は、五輪種目を基本とし夏季は3千人、冬季は1千人を
超えない規模を想定。

2010年に初めて開かれるユース夏季五輪の開催地には
シンガポールが既に選ばれている。

http://www.cnn.co.jp/sports/CNN200803080020.html

2008年3月11日火曜日

β-カテニンの安定化は調節性T細胞の生存を延長し、非調節性T細胞のアネルギーを誘導する

(nature medicine 2月号Vol.14 No.1 / P. 162 - 169)

β-カテニンは、Wnt経路の重要な分子
in vitroでは、CD4+CD25+調節性T(Treg)細胞での
安定型β-カテニンの発現によって、これらの細胞の生存が著しく促進。

in vivoでは、安定型β-カテニンを発現するCD4+CD25+Treg細胞は、
対照のTreg細胞との競合に打ち勝ち、
安定型β-カテニンを発現するCD4+CD25+Treg細胞を用いると、
炎症性腸疾患の防御に必要なTreg細胞の数を大幅に減らす。

疾患発症の原因となる可能性があるCD4+CD25-T細胞上に、
安定型β-カテニンを発現させると、アネルギー状態が生じた。
β-カテニンを介したアネルギー誘導は、Foxp3欠損T細胞でも起こった。

β-カテニンの安定化は、既存の調節性T細胞の生存促進と
エフェクターT細胞前駆細胞での非反応性誘導によって、
炎症性疾患の防止に強力な影響を及ぼす。

[原文]
Beta-catenin stabilization extends regulatory T cell survival and induces anergy in nonregulatory T cells

Yi Ding1,2, Shiqian Shen1, Andreia C Lino1, Maria A Curotto de Lafaille1,3 & Juan J Lafaille1,3
1 Molecular Pathogenesis Program and Skirball Institute for Biomolecular Medicine, New York University School of Medicine, 540 First Avenue, New York, New York 10016, USA.
2 Sackler Institute of Graduate Biomedical Sciences, New York University School of Medicine, 540 First Avenue, New York, New York 10016, USA.
3 Department of Pathology, New York University School of Medicine, 540 First Avenue, New York, New York 10016, USA.

β-catenin is a central molecule in the Wnt pathway. Expression of a stable form of β-catenin on CD4+CD25+ regulatory T (Treg) cells resulted in a marked enhancement of survival of these cells in vitro. Furthermore, stable β-catenin-expressing CD4+CD25+ Treg cells outcompeted control Treg cells in vivo, and the number of Treg cells necessary for protection against inflammatory bowel disease could be substantially reduced when stable β-catenin-expressing CD4+CD25+Treg cells were used instead of control Treg cells. Expression of stable β-catenin on potentially pathogenicCD4+CD25-T cells rendered these cells anergic, and the β-catenin-mediated induction of anergy occurred even in Foxp3-deficient T cells. Thus, through enhanced survival of existing regulatory T cells, and through induction of unresponsiveness in precursors of T effector cells, β-catenin stabilization has a powerful effect on the prevention of inflammatory disease.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200802/nature_medicine/05.html

「先生はJリーガー」膨らむ夢 協会の事業、NPOに

(朝日 2008年03月10日)

現役のJリーガーや元選手らが「夢先生」として小学校を訪れて語る、
日本サッカー協会の事業「こころのプロジェクト」が、
NPO法人として独立し、全国の教育委員会などと連携して拡大。

昨年1月、サッカー元日本代表の北沢豪さんが東京都内の小学校で
初めての試験授業を行った。
その後、様々な分野の「夢先生」が子どもたちに夢を語っている。

この事業は昨年4月に本格的に始まり、今年2月までの11カ月間で
首都圏を中心に224回開かれた。
NPO発足を見越して来年度の事業として予算化した自治体もあり、
人気を集めている。

背景には、将来の目標を立て、実現に向けて行動する能力を
身につける「キャリア教育」が導入。
04年「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議
の最終報告書をもとに、文部科学省が推進。
プロジェクトは、これまでは同協会が年間1億円をかけて運営。
学校側の金銭的負担はほとんどない。

夢先生は自己推薦で募っており、知名度は様々。
サッカー以外にプロ野球、陸上、水泳、バレーボール、
ラクロスからの夢先生も教壇に立っている。

http://www.asahi.com/sports/fb/TKY200803090187.html

2008年3月10日月曜日

分化中の胚性幹細胞からの機能を備えた骨格筋の再生

(nature medicine 2月号Vol.14 No.2 / P.134 - 143)

骨格筋前駆細胞の研究やその単離への胚性幹(ES)細胞の使用は、
ほとんど進歩していない。
これは、胚様体(EB)のin vitro分化の際、沿軸中胚葉の形成が少ないこと、
骨格筋前駆細胞を同定および単離するための信頼できる基準がない。

本論文では、胚様体分化過程で転写因子であるPax3を発現させると、
沿軸中胚葉形成およびこの集団内の細胞の筋肉形成能の
両方が高まることを示す。

しかし、Pax3で誘導した細胞の移植からは奇形腫が生じるので、
この細胞集団内には未分化細胞がまだ残存していることが示される。
沿軸中胚葉マーカーであるPDGF-α受容体の存在、
側板中胚葉マーカーであるFlk-1の非存在によって細胞を選別、
分化中の培養ES細胞から、かなりの筋肉再生能をもつ細胞集団が得られる。

こうした細胞を、ジストロフィーマウスの筋肉内および全身に移植すると、
収縮機能の高まった成体筋繊維が広範囲に生着、
奇形腫が形成されることはない。
筋ジストロフィー症治療に、ES細胞療法が有効であることを実証。

[原文]
Functional skeletal muscle regeneration from differentiating embryonic stem cells

Radbod Darabi1, Kimberly Gehlbach1, Robert M Bachoo2, Shwetha Kamath1, Mitsujiro Osawa1, Kristine E Kamm3, Michael Kyba1 & Rita C R Perlingeiro1
1 Department of Developmental Biology, University of Texas Southwestern Medical Center, 5323 Harry Hines Boulevard, Dallas, Texas 75390-9133, USA.
2 Department of Neurology, University of Texas Southwestern Medical Center, 5323 Harry Hines Boulevard, Dallas, Texas 75390-9133, USA.
3 Department of Physiology, University of Texas Southwestern Medical Center, 5323 Harry Hines Boulevard, Dallas, Texas 75390-9133, USA.

Little progress has been made toward the use of embryonic stem (ES) cells to study and isolate skeletal muscle progenitors. This is due to the paucity of paraxial mesoderm formation during embryoid body (EB) in vitro differentiation and to the lack of reliable identification and isolation criteria for skeletal muscle precursors. Here we show that expression of the transcription factor Pax3 during embryoid body differentiation enhances both paraxial mesoderm formation and the myogenic potential of the cells within this population. Transplantation of Pax3-induced cells results in teratomas, however, indicating the presence of residual undifferentiated cells. By sorting for the PDGF-α receptor, a marker of paraxial mesoderm, and for the absence of Flk-1, a marker of lateral plate mesoderm, we derive a cell population from differentiating ES cell cultures that has substantial muscle regeneration potential. Intramuscular and systemic transplantation of these cells into dystrophic mice results in extensive engraftment of adult myofibers with enhanced contractile function without the formation of teratomas. These data demonstrate the therapeutic potential of ES cells in muscular dystrophy.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200802/nature_medicine/02.html?Mg=890179c439f7db4fbdb4c2f1a1691965&Eml=12b55b931cb52b4152963c77864c5aec&F=h&portalId=mailmag

新しい波/262 陸上・実業団選手登録/6

(毎日 3月1日)

日本実業団陸上競技連合では、
選手登録に関する規則の見直し作業を進めているが、
4月からの新年度の登録には間に合わない状況。

問題を難しくしている要因は、選手の所属形態の多様化だけでない。
強化に対する考え方の違い、強化と普及という相反する要素の混在

強化の対象は誰か、という考え方が、指導者や企業によって異なる。
有力長距離チームの指導者には、
実業団から世界で戦える選手を育てようという意欲も強い。
日本陸連の強化委員でもある河野匡・大塚製薬監督は、
「責任を持って選手を育てるため、実業団全体で(登録に関し)
一定の条件や規則があってしかるべき」。

だが、あるチームの部長は、「自社の勝利を第一に考えるのは当然。
日本の強化に利用される筋合いはない」、
登録規定もできるだけ緩和すべきだと主張。

この発想は、駅伝の外国人起用制限に関する議論とも関連。
実業団連合の強化委員会では、
「外国人に依存するチームの増加は、日本人のレベルアップを妨げる」
などの理由で、06年から外国人起用の撤廃を提案。
しかし、07年の理事会で否決。
外国人に関しては十数年来の議論が続くが、結論が出ず、
その間にも人数が増えている。

長距離以外の種目では、実業団登録選手が減っている。
東日本連盟が開く東日本実業団選手権では、
92年に873人いた参加者が、01年に578人まで減少。
人数が少なく大会の体をなさない種目もあり、
04年から実業団登録をしていない一般選手も受け入れ、700人台まで回復。

東日本連盟の大平達夫事務局長は、
「専門学校やクラブチームの選手も受け入れた『社会人』に
枠組みを変えることも検討しないと実業団は衰退する」。
だが、他地区には「実業団は企業対抗」という考え方が根強く、
登録の対象を広げることに難色を示す。
実業団連合のある理事は、
「一度実業団を解体できれば話は早いが、そうもいかない」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

2008年3月9日日曜日

新しい波/261 陸上・実業団選手登録/5

(毎日 2月23日)

女子長距離の強豪チームの一つに、セカンドウィンドAC(SWAC)がある。
昨年の世界選手権大阪大会女子マラソンで6位の嶋原清子、
昨年の北海道マラソンを制した加納由理ら実力者がそろい、
戦力的には有力実業団チーム並み。

だが、実業団の駅伝や選手権大会には出ない。
企業に所属するチームではなく、日本実業団陸上競技連合にも登録していない。

SWACは、川越学監督が昨春、全日本実業団対抗女子駅伝も制した
資生堂の監督を辞めて創設。
「限られた選手だけが走れる企業チームと違い、
意欲のある人ならレベルや実績を問わず誰でも走れる環境を作りたい」
という狙いのクラブチーム。
資生堂から嶋原ら4人の選手も一緒に移籍。
スポンサー探しや、市民ランナーの会員を募って指導するなどの
苦労もしながら競技を続ける。

企業チームの多くは会社の意向で、社名の露出が多い実業団駅伝で
好成績を出すことを重視。
川越監督は、「企業が恵まれた環境を提供してくれるのは、
実業団駅伝があるからこそ」と、駅伝重視のチームのあり方に意義。

だが、異なる方向を目指すSWACは、駅伝へのこだわりがない。
実業団への登録も考えなかった。
「駅伝に出なくていいなら、実業団登録の必要性も感じない。
日本陸連への登録だけで出場できる大会はいくらでもある」。
嶋原や加納もこの1年は、北京五輪を目指し、
以前なら駅伝向けの練習をしていた時期に、マラソンに向けた練習に専念。

世界選手権女子一万メートルに出場した絹川愛=宮城・仙台育英高=は、
今春からミズノに進む。
室伏広治や末続慎吾ら一般種目の有力選手が多いチームだが、
長距離選手は初めて。
実業団入り後も、絹川の指導を担う渡辺高夫・仙台育英高監督は
「駅伝にとらわれず、個人のレースや練習に集中できる。
世界で戦うためにはその方がいい」と進路選択の一因を説明。
従来の実業団長距離のあり方とは異なるスタイルで勝負。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20080223ddm035050168000c.html

HOPEミーティング:ノーベル賞受賞者と若手研究者が交流--茨城・つくば

(毎日 3月2日)

アジア・太平洋地域から選ばれた大学院生とノーベル賞受賞者らが
語り合う第1回「HOPEミーティング」が、つくば市で開かれた。

アジアの科学技術発展のため、若手研究者を育成することが狙い。
中国、インド、韓国など13カ国から博士後期課程の81人が参加。
江崎玲於奈博士は、「アジアの大学もレベルが上がってきた。
今後は科学技術振興のために、相互交流や協力が必要。
この会合はその枠組みになる。科学のスピリットを学んでほしい」。

HOPEミーティングは、講演だけでなく、講師を含んだグループ討論や
施設見学などを5日間にわたり行うことが特徴。
アラン・ヒーガー博士は、「研究とは、発見と創造性の組み合わせ
私は、この点を若い研究者に伝えたい」。
白川英樹博士は、「いろんな人に出会い、話をすることが大切。
科学は細分化されてきたが、このままではやっていけない。
自分の専門以外に何があり、自分がどこにいるのかを知る必要がある
この会合が、そういう場になってほしい」。

ノーベル賞受賞者が、若手研究者に接する試みは例がない。
ハインリッヒ・ローラー博士は、「若い人は自分が学びたいことを学ぶべき。
ここではいくつかのアイデアを提供する。
そこから何を学ぶかは若手研究者次第。
学ぶために、まず学ぶことが必要だといえる」。
ヒーガー博士は、「若手に学んでもらいたいことは、
科学はリスクに満たされているということ。
論文を書くことは、これが正しいと理解したと世界に示すことでもある。
新しいことをやるにはリスクが伴い、リスクをとることは科学を楽しむこと」。

アジアの科学技術レベルについて江崎博士は、
「科学者は二つに分かれる。リーダーとフォロワー。
日本は忠実で立派なフォロワーだが、このままでは限界。
リスクをとるのがリーダーで、
本当のリーダーとなるようなアジアの研究者をつくりたい」。

ロバート・ラフリン博士は、「科学技術において、
欧米とアジアの競争力の差はすでにない。
違いがあるとすれば、経済的な支援。
研究者に対する報奨金などが欧米では充実している」。
==============
◇江崎玲於奈
1925年生まれ。半導体におけるトンネル効果の実験的発見により、
73年ノーベル物理学賞。茨城県科学技術振興財団理事長

◇白川英樹
1936年生まれ。導電性プラスチックの発見と開発により、
00年ノーベル化学賞。筑波大名誉教授

◇アラン・ヒーガー
1936年生まれ。導電性プラスチックの発見と開発により、
00年ノーベル化学賞。米カリフォルニア大教授

◇ロバート・ラフリン
1950年生まれ。量子流体の理論解明により、
98年ノーベル物理学賞。米スタンフォード大教授

◇ハインリッヒ・ローラー
1933年生まれ。走査型トンネル電子顕微鏡の開発により、
86年ノーベル物理学賞。元IBMチューリヒ研究所フェロー(スイス)

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/03/02/20080302ddm016040090000c.html