2010年11月27日土曜日

総合学習を生かす(1)「笑顔の理由」考え深める

(読売 11月19日)

新潟県小千谷市立千田小学校の6年生の教室。
「お年寄りは、どんな時に笑顔になりましたか」、
担任の大野佳代教諭(50)が問いかける。
「ゆっくり大きな声で話した時」などと答える子どもたち。
総合学習では、高齢者との交流会を通した学習を行っている。

交流会は年6回実施し、各回の後に振り返りの場を設ける。
体験で得た情報を集めて整理し、課題を見つけて次回の計画を作成、
実行して再び振り返る。
そうした作業を繰り返す中で、自分で考え、実践する力を育てるのが狙い。

この日は、5回目の交流会後の2度目の振り返り。
子どもたちは、お年寄りが楽しいかどうかを判断する基準を
「笑顔」と考え、班ごとに考えをまとめて授業に臨んだ。
話し合いでは、ある男児が、「言葉は伝わったけど、笑顔にならなかった」と
指摘したのをきっかけに、「自分たちが笑顔で話しかけた」、
「相づちを打った」、「共感する言葉を言った」と議論を深めていった。

改善点が見えてきたところで、
最後に、次回に向けた目標と理由を個人カードに記入。
子どもたちは一斉に書き始め、周りをキョロキョロ見たり、
何も書かずにあきらめたりする子は一人もいなかった。

同小では、自分の考えを書くプリント学習やテストなどで、
白紙や無解答の児童はほとんどいない。
今年度の全国学力テストでは、読解力や判断力などを見る
応用的な国語Bの「無解答率」は、
全国平均の4・2%に対し、わずか0・7%。
正答率は、全国平均を約7ポイント上回った。

「体験を振り返り、友だちと一緒に考えを深める学習を
繰り返すことで、自分の考えを文章でまとめる力が
育っているのでは」と大野教諭。
曽我茂樹校長(53)も、「考えを深める『総合』の授業に
学校全体で力を入れた結果、学力も上がった」と胸を張る。

課題設定力、計画力、思考力……。
様々な力が、総合学習で育まれている。

2002年度に新設された「総合的な学習の時間」。
新学習指導要領では、知識を活用する思考力や判断力、
表現力などを育む探究的な学習の場として、
位置づけが明確になったが、
学校間で授業の質に差があるなど課題も多い。
効果的な授業を追求する各地の取り組みを報告する。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101119-OYT8T00154.htm

免疫強める新タンパク質 インフルエンザに効果か

(2010年11月22日 共同通信社)

ウイルス感染した際、体内で免疫を活性化させる
新たなタンパク質を見つけたと、
北海道大遺伝子病制御研究所の高岡晃教教授(免疫学)らが、
21日付米科学誌ネイチャーイムノロジー電子版に発表、
「ZAPS」と名付けた。

ウイルス増殖を抑制するインターフェロンを、
大量に作るよう誘導するなどの働きがあり、
インフルエンザやはしかなどのウイルスに効果があるのではないか。

高岡教授は、「今後は、動物実験で効果を確かめたい。
将来的には、抗ウイルス薬の候補としても期待」

インフルエンザウイルスなど遺伝情報を、
RNAで持つウイルスが細胞に感染すると、
細胞内にある「RIG-I」という分子が、ウイルスのRNAを感知。

高岡教授らは、RIG-IにZAPSが結合し、インターフェロン生産を
増強させることを突き止めた。

試験管内で、ヒトの細胞にインフルエンザウイルスを感染させる実験で、
人為的にZAPSが働かないようにした場合、
インターフェロンが抑えられてウイルスは増殖。
ZAPSの働きを高めると、ウイルスの増殖が抑えられた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/22/128606/

ブラジルのスポーツ政策

(sfen)

◆ブラジルの特徴

サッカーのワールドカップでは、過去19回大会すべてに連続出場、
5回優勝している唯一の国。
ブラジルがサッカー大国であることはよく知られているが、
近い将来、この国は世界屈指のスポーツ大国としての
成長も遂げるであろう。
広大な国土、豊富な資源を背景に、今や中国、ロシア、インドとともに
新興経済国BRICsの雄として躍進、
ブラジルの勢いに世界中の注目が集まっている。

4年後の2014年、1950年以来2度目のサッカーワールドカップを開催。
6年後の2016年、南米大陸初となる歴史的なオリンピックを、
リオデジャネイロで開催。
スポーツの2大メガイベントの成功を目指して、
ブラジル政府は、都市インフラを整備し、治安問題の改善を図り、
さまざまなスポーツ振興政策を図ってきた。

◆ブラジルのスポーツ環境の特徴

ブラジルのスポーツ環境の特徴として、多人種・多民族で構成される
社会に根づいた総合型地域スポーツクラブの多様性があげられる。
1888年の奴隷制廃止後、黒人の代替労働力として導入された
欧州移民たちは、新天地に次々とクラブを創設し、
近代スポーツを移入した。

19世紀末に伝えられたサッカーを通して、イギリス人、ポルトガル人、
イタリア人、ドイツ人をはじめ、各国移民のクラブが
アイデンティティと威信をかけて盛んに競合し、
そこへインフォーマルな草サッカーに興じていた貧しい黒人や
混血の人々が取り込まれていった。
ブラジルにおけるスポーツの大衆化やプロ化は、
サッカー界において先駆的に進展した。

地域、移民、人種、社会階層の多様性を反映したスポーツクラブが
百花繚乱し、日々のスポーツ実践の舞台となっている。
今日、サッカー以外にバレーボール、ビーチバレー、
フォーミュラー・ワン(F1)などが世界のトップレベルを維持、
バスケットボール、柔道、空手、ボクシング、水泳、
サーフィンなども盛ん。
アフリカ起源のカポエイラ、先住民が継承する伝統スポーツ、
カーニバルでお馴染みのサンバも、見逃すことはできない。

◆スポーツ関連法設置の経緯

ブラジルは、過去2回のクーデターと2度の権威主義的政治体制を経験。
1度目は、世界恐慌によるコーヒー経済の破綻後、
農業に替わる工業化を図るべく登場した
ヴァルガス独裁政権(新国家体制1937~45年)。
2度目は、社会主義化したキューバや中国への接近に反発して
登場した軍事政権(1964~85年)。

2つの政権下、中央集権的政策はスポーツにもおよび、
1941年『大統領令』[Decreto-Lei nº 3.199/41]では、
国内スポーツ競技団体がすべて全国スポーツ評議会(CND)傘下に
統制され、その内容は34年後の1975年『スポーツ法』[Lei 6.251/75]へ
引き継がれた。
サッカーワールドカップにおける3度の優勝(1958年、62年、70年)が
ことごとく国威発揚と政治宣伝に 利用され、
当時ブラジル・サッカーの栄光は、一方で「民衆のアヘン」と揶揄された。

1985年の民政移管後、民主主義を謳う1988年『新憲法』が公布、
第217条で「スポーツを行うことは国民の権利である」ことが明記。
スポーツは、国家の直接干渉から脱し、
競技団体やスポーツ統括組織の自立的活動が保障されるに至った。

その後、旧態依然としたブラジル・サッカー界の諸側面を、
スポーツの国際標準に適合させるための諸改革が次々と打ち出され、
スポーツ関連法の発展がみられた。

1993年、いわゆる『ジーコ法』[Lei 8.672/93]や、
1988年、『ペレ法』[Lei 9.615/98]、それらの改正法によって、
新リーグの創設、クラブの企業化、選手とクラブの契約是正、
テレビ放映権契約の規定、国営宝くじ収益のスポーツ財源化などの
さまざまな問題解決が図られていった。

◆スポーツ国家政策の内容

ブラジルのスポーツ所管省の変遷は下表のとおり。
2003年、ルラ政権によってスポーツ省が設置。

<ブラジルにおけるスポーツ所管省の変遷>

 年    所管省            担当組織
1941年 教育保健省        体育課 (DEF)
1970年 教育文化省        体育・スポーツ課 (DED)
1978年 教育文化省        体育・スポーツ局 (SEED)
1990年 大統領府         スポーツ局 (SEDES)
1992年 教育スポーツ省      スポーツ局 (SEDES)
1995年 国家スポーツ特別大臣 全国スポーツ推進機関 (INDESP)
1998年 教育スポーツ省      全国スポーツ推進機関 (INDESP)
1999年 スポーツ観光省      全国スポーツ推進機関 (INDESP)
2000年 スポーツ観光省     全国スポーツ局 (SNE)
2003年 スポーツ省        全国スポーツ・レジャー推進局 (SNDEL)
                     全国高度化スポーツ局 (SNEAR)
                     全国スポーツ教育局 (SNEED)

2005年、スポーツ省の全国スポーツ評議会(CNE)は、
「スポーツ国家政策」(Política Nacional do Esporte)を発表。
今日、この国家政策は3つの主要組織により実施。

第1は、「全国スポーツ・レジャー推進局(SNDEL)」、
レクリエーションやレジャーに関するスポーツ社会政策、
スポーツ科学技術政策などを担当。

第2は、「全国高度化スポーツ局(SNEAR)」、
さまざまなレベルの競技スポーツ政策(青少年スポーツから
リオデジャネイロオリンピックまで)、スポーツ・タレントの発掘、
国のスポーツ・イベント・カレンダー編成などを担っている。

第3は、「全国スポーツ教育局(SNEED)」、
学校教育に関するスポーツ政策、生涯スポーツ政策、
スポーツ文化政策などの分野を所管。

2010年3月、「サッカーに関する特別専門調査機関」設置。
法務当局や検察当局と協力し、競技環境の改善や
サポーター関連法の整備を行うほか、
2013年コンフェデレーションカップ、2014年ワールドカップに向け、
ブラジル・サッカー連盟(CBF)との連携を図っている。

◎山本栄作

高知学園短期大学講師。
在メキシコ日本国大使館専門調査員、
日本学術振興会サンパウロ研究連絡センター派遣研究者、
筑波大学助手を経て現職。
共著、「教養としてのスポーツ人類学」(大修館書店)など。

http://www.ssf.or.jp/sfen/sports/sports_vol10-1.html

2010年11月26日金曜日

情報機器を使う(8)映像教材 障害児支える

(読売 11月18日)

「この白と黒の自動車は、なんという名前かな」
都立葛飾ろう学校で行われた国語の授業。
特殊なマイクを胸元につけた山江直子・主幹教諭(45)は、
手話を交えつつ、小学部1年生の児童3人に問いかけた。

3人は、生まれつき耳が不自由で、聴力は地下鉄が駅を通過する
ごう音なら聞こえる80~110デシベルほど。
補聴器をつけても、話し声がようやく聞こえる
40~60デシベルにしかならない。
言葉として、はっきりと聞き取れるわけではない。

そんな3人が注目するのは、手元の教科書ではなく、
黒板の前に置かれた大型ディスプレー。
画面には、消防車やトラックなど様々な車の絵が映し出されている。

先生の質問に、まっすぐ手を上げたのは、柳久遠君(7)。
ディスプレーに駆け寄り、「パトカーです」と、
手話を交え元気よく答えた。
「警察官の乗る車ですね。よくできました」と山江教諭。
柳君は、「映像だと、とってもわかりやすい」とうれしそう。

ディスプレーに映し出されていたのは、
教科書に準拠して作られた教材で、「デジタル教科書」。
電子黒板などに映し、さし絵を拡大したり、
動画を再生したりして指導用に使う。

同校小学部が、国語のデジタル教科書を導入したのは2005年。
単元ごとに黒板にはる、模造紙の教材を作る必要がなくなった。
山江教諭は、「耳から入る情報の少ない子どもたちにとって、
映像の力は絶大。
下を向かず、情報を共有できるメリットも大きい」

教科書協会(東京都)によると、小学校でデジタル教科書が
作られているのは、国語のみ。

新学習指導要領が全面実施される来年度、算数、理科、社会でも
デジタル教科書が作られることが決まっている。
同校小学部では来年度、国語のほか理科、算数でも導入する予定。

情報通信技術(ICT)は、使い方次第で障害のある児童にとって、
効果的なアシスティブ・テクノロジーになる。
デジタル教科書は、その典型。

国立特別支援教育総合研究所の金森克浩・総括研究員(49)は、
「学習や生活にある困難を改善・克服させ、指導の効果を高める。
支援を必要とする児童にとって、利点は大きい」

教育現場に大量に入った情報通信機器は、
様々な形で学習の可能性を広げている。

◆アシスティブ・テクノロジー

障害のために実現できない学習上、
生活上の課題を支援する技術。
車いすや補聴器のほか、近年は、読み上げソフト、ICレコーダー、
携帯メールなどの情報通信技術も活用。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101118-OYT8T00170.htm

30代の仕事 運動も教える「何でも屋」

(2010年11月19日 読売新聞)

芳珠記念病院 医療サービス部健診課係長 森田 晃治さん(39)

「次はジャブ4発いきます。ワン、ツー、スリー、そう。
前にしっかり、打ったらすぐ戻す、OK」
ジャージー姿の男女の前で、インカムマイクを付け、
音楽に合わせて、ボクササイズの振り付けを披露。

ここはジムではない。
芳珠記念病院(能美市)の一室で、職員向けに初めて運動教室を開いた。
「異様なテンションでいきますけど、無理してついてこなくていいですよ」
軽快な動きと、テンポの良いかけ声が笑いを誘った。

専門学校を卒業後、二つのフィットネスクラブで計15年間勤めた。
事業統括マネジャーとして経営を任されるまでになったが、
新たに自分の経験が生かせる仕事をしたいと、
2年前、同病院の求人に申し込んだ。

現在は、健診課係長として、院内業務から住民向けの運動教室まで、
様々な仕事をこなす、自他共に認める「何でも屋」だ。

企業に出向き、人間ドックのスケジュールを調整したり、
ニーズに合った健康診断を提案したり。
インストラクター時代の経験を生かし、月に2、3回行う
地域住民向けの運動教室や講義は好評。

前職と比べ、「命に直結する現場のサポート。
何となくという思いでは務まらない」と意識の変化を挙げる。
裏方の仕事だけに、利用者の反応が直接返ってくるわけではないが、
「すぐに結果が見えなくても、続けていくことが来院者にとって大切」と
役割を認識する。

転職からわずか2年で、十数人を束ねる係長になったが、
「医療に関する知識が未熟。
もっと知識を増やさないと、同僚に迷惑をかけてしまう」と努力を続けている。

2009年9月から半年間、経営力を高めるという病院の方針で、
技術経営スクールに通い、異業種交流をして、ネットワークを築いた。
地元の里山を生かして健康を深めようと、里山作りをしている
「能美里山ファン倶楽部」に協力を呼びかけ、
「ヘルスアップハイク」を企画するなど、活動の場を広げている。

「能美市民や企業に認められるプレーイングマネジャーになって、
病院や能美市全体を活性化させたい」と夢を描く。

【上司から一言(上田 博 院長(63)】

スポーツインストラクターと栄養士の資格がある珍しい経歴の持ち主。
経歴を生かした病院らしくない企画を期待。
地域の皆さんへの健康教育は、病院の社会的責任。
院内では中堅なので、経営能力を高め、能美市民の役に立つ
仕事をしてほしい。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/19/128557/

カロリー制限で難聴予防 酵素関与の仕組み解明

(2010年11月19日 共同通信社)

摂取カロリーを抑えると、加齢に伴い聴覚が低下する
「老人性難聴」になりにくくなり、それには長寿に関係する
酵素がかかわっていることを、マウスの研究で解明、
田之倉優東京大教授らが18日付米科学誌セル電子版に発表。

老人性難聴は、内耳で音の刺激を電気信号に変換する
「有毛細胞」や、それを脳に伝える神経細胞が、
加齢とともに死滅するのが原因。

米国では、65歳以上の40%以上が発症、日本でも増えると予想。
教授は、「今回の結果は、老人性難聴の予防法や
治療薬の開発に役立つ」

田之倉教授らは、カロリー制限でマウスの寿命が延びるとの
研究報告や、長寿との関係が知られる「Sirt3」という
酵素を作る遺伝子に注目。

生後2カ月のマウスを使った実験で、与える餌のカロリーを
25%減らすと、10カ月後でも聴覚は正常だったが、
この遺伝子を働かなくしたマウスで同様の実験をすると、
大きな音しか聞こえなくなっていた。
カロリー制限をしない場合、いずれも大きな音しか聞こえなくなった。

難聴になったマウスは、有毛細胞や神経細胞が
生後2カ月の約25%に減っていた。

田之倉教授は、カロリー制限によってSirt3が活性化し、
聴覚にかかわる細胞が壊れるのを防いでいるとみている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/19/128523

2010年11月25日木曜日

漢方薬原料の調達先拡大 中国産の価格高騰で

(2010年11月19日 共同通信社)

日本の漢方薬メーカーが、原料となる生薬の調達先拡大に
本格的に乗り出している。
生薬は、中国からの輸入に80%以上を依存、
中国国内での需要増などを背景に、価格が高騰。
日本国内や東南アジア産の割合を増やしていく考え。

漢方薬大手のツムラは、北海道での生薬栽培を拡大する方針。
今年10月、夕張市に生薬製造工場を完成。
芳井順一社長は、「北海道は(生薬産地の)中国東北地方と緯度が近い。
栽培できるはずだと、社内に拠点作りを促した」

ツムラは、生薬の80%を中国から輸入。
日本国内産は15%、残りの5%はベトナムやインドネシアなどから調達。
国内栽培では、北海道のほか岩手、群馬、高知、和歌山の
各県にも拠点があり、今後は夕張を中心に強化。

人件費が安いラオスでの本格栽培も計画、
現地で試験栽培を実施。

中国政府は、生薬の乱獲で砂漠化が進行したとして、
約10年前から採取地域を限定したり、生薬の取引業者数を制限。
大幅な増産が見込めないこともあって、投機対象にも。
この1年で、価格が2倍以上になった生薬も多い。

クラシエ製薬も、漢方薬原料の約90%を中国に頼る。
担当者は、「今は現地の合弁会社を通じて、安定的に確保できている。
中国への依存が大きいことは事実なので、
日本国内での調達拡大を検討している」

生薬は、成分の含有量などで厳しい基準が各社ごとにある。
業界関係者は、「国内や東南アジアで生薬を栽培する場合、
試験栽培に長い時間が必要。
中国依存を、短期間で変えるのは難しい」と指摘。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/19/128518/

「肥満防止薬」実験成功…食事減らさず体重抑制

(2010年11月19日 読売新聞)

食事の量を減らさなくても、体重の増加を抑える「肥満防止薬」を
合成することに、米ジョンズホプキンス大などのチームが成功。
18日付米サイエンス誌に掲載。

チームは、人間や動物の中枢神経に作用して強い食欲を引き起こし、
肥満をもたらすホルモン「グレリン」に着目。
グレリンは、特定の酵素の助けが必要なことから、
この酵素を邪魔する物質を合成。

この物質を注射したマウスと、しないマウスに高脂肪のエサを
与えた体重を比較。
食べる量は変わらないのに、注射したマウスの約1か月後の
体重増加は、10%以内にとどまったのに対し、
投与しないマウスは、20%程度体重が増えた。

合成した物質は、食欲を抑えるのではなく、
糖などの代謝能力を高めていた。
摂取したエネルギーを消費して、体重増を抑えているらしい。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/19/128542/

(岩手)看護師流出ストップを

(2010年11月18日 読売新聞)

看護師の県外流出が止まらない。
県内の看護系大学や看護学校からの就職先は、
昨年度初めて、「県外」が「県内」を上回ったことが、
県医療推進課の調べでわかった。
全国的な看護師不足の中、新卒者の奪い合いが続いており、
県などが流出に歯止めをかけようと、知恵を絞っている。

県内で今年3月、看護職員を養成する大学、短大、
養成所施設の卒業生は612人。
就職先の内訳は、県外43・0%(263人)、県内42・6%(261人)、
進学が9・2%(56人)など。
県内への就職は、2003年度に50%を割り込み、減少傾向。

背景には、全国的な看護師不足がある。
厚生労働省のまとめでは、看護師(保健師、助産師含む)の
求人倍率は、10年4月時点で2・28倍、引く手あまたの状態。
1人でも多くの卒業生を確保しようと、県外の病院などが
県内の看護学校で就職説明会を開くことも多い。

県看護協会の兼田昭子会長は、
「今の学生は、都会志向が強い。
ホームページや説明会など情報も入りやすく、
PRがうまい関東の病院に流れがちだ」と分析。

こうした中、県内への就職を促そうと、
県と県看護協会は様々な取り組みをしている。
昨年度から、看護学生向けの就職説明会を始めた。
看護学生が卒業後、県内の主な病院で5年以上継続して働けば、
修学資金貸付金の返済を免除する制度があるが、
昨年度から、貸付枠を広げ、貸付額も増やした。

県外の岩手出身看護学生のUターン就職を増やそうと、
県外の学校にも、県内医療施設を網羅した
就職ガイドブックを送り始めた。
勤務制度の改善や研修制度の導入など、
待遇や職場環境の改善を図るところも出てきた。

兼田会長は、「地方も、医療技術が劣ることはなく、
仕事を丁寧に教える良さもある。
自分に合った職場を見つけてほしい」

県医療推進課の高橋勝重医療担当課長は、
「貸付金制度の拡充などの成果が今後、徐々に出てくるはず」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/18/128476/

2010年11月24日水曜日

料理の写真でカロリー計算…NTTコムが開発

(2010年11月17日 読売新聞)

NTTコミュニケーションズなどは、食卓に並んだ料理の写真を
同社のサーバーに送信すると、
自動的にカロリーを計算するシステムを開発。

携帯電話の全地球測位システム(GPS)を使って、
持ち主の移動距離から消費カロリーを算出する仕組みなどと
組み合わせ、健康増進サービスとして、
来年1月から実証実験に入り、将来の商用化を目指す。

自動計算のシステムは、携帯電話やデジタルカメラで撮影した
写真の色合いなどから、食べ物と食べ物以外を検出。
ご飯やおかずなど、食べ物の種別を判別しながら、
データベースに登録された写真から、よく似ている食べ物を探し出し、
推定カロリー値を算出する仕組み。

利用者が疑問を感じた場合、修正を加えることもできる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/17/128437/

(宮城)病の治癒祈る仙台の信仰 ガイド本に

(2010年11月17日 読売新聞)

仙台にも、「病気が治る」という信仰の対象になってきた
場所がいくつもある。
市歴史民俗資料館が、それらをまとめたガイドブック
「仙台の病にまつわる民間信仰」を発行。
昔の人が、健康の回復を祈った寺社などが紹介。

医療技術が発達していなかった時代には、
体に痛みや不調などの症状が出ると、
神社や地蔵に祈る民間信仰が盛んに行われていた。

この本には、江戸~大正時代に病気の治療に効果があったという
伝承が残り、市民が気軽に訪れられる場所22か所が集められた。

泉区の白藤観世音。
平安時代初期の征夷大将軍、坂上田村麻呂の愛馬の腰から下を
埋葬されたと伝えられる地にあり、下半身の痛みや病気を和らげる、
という言い伝えがある。
目の病を治すと伝えられる青葉区の三居沢不動堂などが掲載。

今でも多くの市民が願掛けにやって来る寺社や、
供え物が置かれる地蔵も取り上げられている。

本をまとめた資料館の学芸員、畑井洋樹さん(38)は、
「今も昔も、健やかに生きたいという願いは同じ。
健康に生きることの大切さを考える一助として読んでほしい」

9月の発行後、資料館発行の書籍の中では、
通常の倍のペースで売れる人気ぶりで、
「実際に本を手に、掲載の地を回っているという声も届いている」(畑井さん)。

A5判で48ページ。750円。
書店での取り扱いはなく、資料館のみで販売。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/17/128407/

遺伝子検査、手軽さと危うさ 科学的根拠乏しく、学会は過熱懸念

(2010年11月16日 毎日新聞社)

依頼に応じて個人の遺伝子を調べ、肥満や生活習慣病などの
可能性を予測するサービスが増えている。
予防への活用が期待される一方、高額な料金で科学的根拠が薄い
予測を出したり、子供の能力を調べる業者も現れた。

手軽さの半面、危うさもはらむ遺伝子検査ビジネス。
専門家でつくる学会が、国による監視を求める声明を発表するなど、
過熱を心配する声も。

東京都内のあるクリニックで、遺伝子検査を受けた。
腕に注射針を刺し、2mlほどの血を採る。
このクリニックは、血液を大阪市の検査会社「サインポスト」
送って調べている。

同社は、大阪大医学部発のベンチャー企業で、
肥満、糖尿病、脳卒中につながりやすい血栓など、
62種類の遺伝子を解析。
6000人以上の症例から導いた平均値と比べた、
その人の体質の「危険度」を判定。
1~2週間すると、結果がクリニックに送られ、依頼者に通知。
名前などの個人情報は暗号化。
1回3万1500円で受けることが可能。

人の遺伝子は、全体で約2万数千個。
遺伝子を調べると、何が分かるのか?

遺伝子検査ビジネスの多くは、病気との関連が明らかな
遺伝子を調べ、DNAの塩基配列を詳しく調べる。
調べる対象は多様。
たった一つの遺伝子の異常が引き起こす遺伝病もあるが、
がんは複数の遺伝子異常に、生活習慣などが重なって生じる
「多因子疾患」だ。
薬の効きやすさや副作用の出やすさといった個人差、
男性型脱毛症の可能性も分かる。

採血より手軽に、自宅でほおの内側の粘膜をこすり取り、
細胞からDNAを取り出す方法も。
サインポスト社長の山崎義光・大阪大先端科学
イノベーションセンター招聘教授は、「我々の遺伝子検査は、
確定診断ではなく、どんな体質を持っているか調べるのが目的。
特定の病気や症状へのリスクが高いと分かれば、
医師が指導し、食事や運動など生活習慣に注意することで、
予防に役立てられる」

遺伝子検査ビジネスを、疑問視する専門家も少なくない。
日本人類遺伝学会理事の福嶋義光・信州大教授(遺伝医学)は、
「有用性が証明されている検査はほとんどない」

多因子疾患リスクを調べる場合、発症に関係する遺伝子は複数。
一つの遺伝子を調べただけでは、発症に影響しているか、把握は難しい。

アルツハイマー病発症の危険因子、「アポリポたんぱく質E4(アポE4)」。
このたんぱく質を作る遺伝子を持つ人の発症リスクは、
持たない人の約4倍、実際には持っていても約9割が発症しない。

遺伝子検査の目的を、「あらかじめ危険性を知って予防する」と考えた場合、
有効な予防・治療法がまだないアルツハイマー病に関し、
遺伝子検査をする意義が問われる。

肥満の遺伝子検査にも、福嶋教授は疑問。
基礎代謝量に関係する複数の遺伝子を調べ、
太りやすい体質かどうかを調べるが、
肥満は遺伝より、食生活や運動など環境要因の方が大きく影響。
依頼者に、肥満予防のための健康食品などを勧める場合も。
その健康食品に、確実に効果があるという科学的根拠も示すべき」

実際、トラブルも起きている。
国民生活センターによると、遺伝子検査をめぐる相談は、
07年ごろから寄せられる。
40万円を支払い、がんに関する遺伝子検査を受け、
「がんの因子はない」と通知された依頼者が、2カ月後がんに。

特に問題視されているのが、子どもを対象とした遺伝子検査。
特定の遺伝子を、「知能や性格、能力に関係する」と見なし、
遺伝子を調べて潜在能力を予測。
韓国では、「十分な科学的妥当性がない」と、法律で禁止。

東京大医科学研究所の洪賢秀・特任助教(文化人類学)は、
「遺伝子検査の結果によって、親が子どもの進路を大きく変え、
子どもに不利益をもたらす可能性がある」と警告。

日本人類遺伝学会(中村祐輔理事長)は、
一般人を対象にした遺伝子検査ビジネスについて、
「科学的な根拠や有用性が確認されていない」と、
専門家による検証や国による監視体制を、
早急に構築すべきだとする提言をまとめた。

米国など多くの国が遺伝子検査ビジネスを規制、
日本は手つかずなのが現状。

福嶋教授は、「遺伝子検査の結果は一生ついて回り、
似た遺伝的体質を持った家族にも影響する可能性がある。
教育に使えば、子どもの可能性を狭める危険性があり、法規制が必要。
健康に関係する遺伝子検査なら、(科学的根拠に基づき)保険が
適用されるような医療の枠組みの中で実施してほしい」
……………………………………………………………………
◆日本人類遺伝学会の提言(要旨)

(1)一般市民対象の遺伝子検査には、臨床遺伝専門医などが関与
(2)消費者が不利益を受けないよう、遺伝子解析の意義や有用性などの
科学的検証を継続的に行う
(3)(学会関係者は)一般市民や学校教育関係者などに、
遺伝子検査がもたらす意味を教育・啓発し、遺伝子検査の理解が
促進されるように努力
(4)日本でも、遺伝子検査を監視・監督する体制の確立を早急に検討

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/16/128349/

2010年11月23日火曜日

衛生状態の改善で年間240万人を救える 米英科学者が研究結果発表

(2010年11月16日 共同通信社)

1月に大地震があったハイチで、900人以上がコレラで死亡、
発展途上国の衛生問題が大きくクローズアップ。
米英の科学者は、途上国の衛生状態を改善すれば、
多くの人の命を救うことができる、とする研究結果を相次ぎ発表。

米科学者グループが発行する医学誌

「パブリック・ライブラリー・オブ・サイエンス(PLoS)」によると、
世界の総人口の約20%に当たる26億人は、
トイレが使えず、屋外で排便し、こうした人々の3分の2は、
アジアおよびサハラ以南のアフリカ諸国で生活。

良好な衛生環境の中で生活している人は、先進国では99%、
途上国では53%に過ぎず、先進国と途上国の格差が大きい。

英科学者グループが発行する医学誌
「ロンドン・スクール・オブ・ハイジーン&トロピカル・メディシン」は、
世界全体の疾病による死者の7%以上は、
不衛生な環境と飲料水が原因、
こうした問題を解消すれば、世界全体で年間約240万人の命を
救うことができると指摘。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/16/128359/

健康情報見極めるには リスク、便益、費用…比べ選択 事例、還元し学び合う環境を

(2010年11月12日 毎日新聞社)

ダイエットや健康食品からがんの治療まで、
メディアを問わず健康・医療情報があふれている。
取捨選択し、健康な生活やよりよい医療に結びつけるための力は、
ヘルスリテラシー」と呼ばれ、
情報量の急増に伴って重要性が一般に浸透し始めた。
いま必要な健康・医療情報の活用法とは?

「情報に振り回され、適切な意思決定ができない例が、
個人から行政の政策レベルまで、広く見られる。
あわてた時の情報の『衝動買い』は、特に避けなければいけない」

中山健夫・京都大教授(健康情報学)。
「生老病死」に向き合う人を支える情報のあり方をテーマに
研究を進めている。

専門家でない人が、目の前にある健康・医療情報の信頼性を
判断することは、重要かつ難しい問題。
中山教授は、科学的根拠を示した論文などの引用元を明示した
「メーン情報」を見つけることが肝心。
引用元のデータで、リスクの大きさを知る。
病気の予防や治療の根拠について、学会などが手順をまとめた
文書「診療ガイドライン」も、メーン情報の一つ。

引用元を明示しても、利点だけを都合よく整理して紹介する場合も多い。
こうした「トリック」は、専門家ですら見逃すことも。
同教授は、「すべての健康・医療情報には不確実な部分があると
理解したうえで、行動の前に結論や影響を考えることが役に立つ。
リスクとベネフィット(便益)、場合によっては費用も比べて
選択する力を、普段から養うことが重要

インターネットが、ヘルスリテラシーを高める可能性に注目し、
約10年前から健康・医療情報サイトを運営してきた
中山和弘・聖路加看護大教授(看護情報学)は、
ネットは、医療界が抱え込んでいる知識や情報をオープンにする
チャンスだが、日本では米国などに比べ、まだ質的、量的に不十分」

社会的・経済的な理由による「健康格差」が深刻な米国だが、
公的機関や民間医療機関によるネット上の健康・医療情報は充実。
国立医学図書館のデータベースは、200万件以上の論文が
無料で検索でき、世界中の研究者や一般の人からの
年間検索数は10億回近く。

ネットの利点は、情報の送り手と受け手の双方向性にある。
この点、日本もミクシィやグリーといった交流サイト(SNS)などに
多様な健康・医療情報のやり取りがあり、闘病記を病名や年齢などから
検索できる「TOBYO」などのサイトも。
こうした情報は、科学的根拠のある情報に対する
セカンドオピニオン的な位置付けとなる。

同教授は、似た境遇にある人同士の体験情報の共有は、
「社会的なヘルスリテラシーを上げることにもつながる」と期待。
「自分だけ良い情報をもらって、良い意思決定をしようというのは難しい。
成功例や失敗例を還元し、学び合う環境をみんなでつくっていく意識が必要」

病気で医師の診断などを要する場合、
治療法などを巡って納得できる決定をするには、
医療従事者とのコミュニケーションが欠かせない。

自分が得た情報を、医師に問いただすのは勇気がいる。
勧められた治療法と異なる場合はなおさらだ。
中山和弘教授は、「患者は、いろんなコミュニケーションを使って
情報を集めていることを、多くの医療従事者は分かっているし、
患者の価値観を重視する流れがある」
医療現場にも、変化が起こりつつあるようだ。

◇効果的な活用法など解説

京大の中山健夫教授は、病院検索サイト「QLife」上に、
「5分で分かる!健康情報見極め術」(http://www.qlife.jp/value/)を監修。
マンガを用いて、中高生でも教材として利用できるよう、
4点のアドバイスを柱にした。

聖路加看護大の中山和弘教授は、
「健康を決める力」(http://www.healthliteracy.jp/)を今月開設。
1冊分の本にも相当する文量で、リスクや医療の不確実性から
ネット情報の効果的な活用法まで、丁寧に解説。
……………………………………………………………………
◇ヘルスリテラシー

リテラシーとは、「読み書きの能力」を意味し、
転じて健康を保つため、取り戻すための意思決定に必要な情報を
入手したり、理解する個人の能力を意味。
医療リテラシーなどと称されることも。
日本では、概念自体は保健医療分野で導入されているが、
まだ研究例が少ない。
長期的な医療費削減の観点からも注目。
……………………………………………………………………
◆健康・医療情報をチェックするポイント

・情報の出所や科学的根拠をチェック
・安易に強い表現をしていないか?
・情報の鮮度を確認
・情報発信者の意図を想像する
・誰が情報のスポンサーか確認する
・インターネットの場合、問い合わせ窓口がきちんとあるか?
(QLife「5分で分かる!健康情報見極め術」より一部抜粋)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/12/128229/

スポーツ政策を考える:井谷恵子・京都教育大教授(体育科教育学)

(毎日 11月13日)

「すべての人々のスポーツ機会の確保」、
「安全・公正にスポーツを行うことができる環境の整備」が、
スポーツ立国戦略の基本的な考え方。

実際には、競技スポーツに重点が置かれていて、
トップアスリートの育成・強化や、国としての一体感の醸成などに
大きな狙いがあるのではないか。

人口の半分を占める女性や高齢者、障害者、子どもたちを含めた
サイレントマジョリティーの存在は、立国戦略をまとめた人たちの
視野の外にあるようだ。

子どもを持つ女性が、ベビーカーを押しながら、
ウオーキングやジョギングをしたいと思っても、その環境がない。
無理もないと思うのは、スポーツそのものが男性中心で、
強いことが価値を持つからだ。
大きくて、筋肉があって、脂肪が少ない方が勝ちという原理が
近代スポーツを支えている。

健康な体づくりや医療費の削減、経済効果など、
スポーツがツールとして利用されている印象が強い。
楽しさより厳しさが求められ、レクリエーション的なスポーツの価値は
競技スポーツよりも低くみられている。

すべての人々がいつでも、どこでも、いつまでも
スポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会
実現するためには、強さや速さ、勝敗などを超えたものを
目指していかないと難しい。

女性や高齢者だけでなく、スポーツへのアクセスが限られる男性や
多様な性を持つ人々もいる。
そういう人たちに、視点を置くことで、
スポーツのさまざまな可能性が見えてくる。

スポーツの背骨、土台を守っていく。
それは、体を動かすことの楽しさ、面白さ、壮快さ。
健康を損なうことが分かっていても、やってみたいと
思わせるものを、スポーツは価値として内在。

日本の学校体育は、恵まれた環境にある。
小学校から中学、高校までの計12年間、毎週2~3時間の体育の授業が
必修で行われ、大抵の学校には運動場、体育館、プールがある。
こんな国はほかにない。

学校で教科として、体育・スポーツを教えるのはなぜか?
音楽や美術と同じように、次世代に伝えていくべき
価値のある文化だからだ。
そこを押さえていないと、単にうまくなればOKとか、
勝った負けただけで終わってしまう。
それでは、時代や社会、経済の状況が変われば、
切り捨てられてしまう恐れがある。

スポーツを文化としてとらえるような意識を、どうつくっていくか?
どんな知識が必要なのか?
スポーツとどうかかわっていけばいいのか?

「すべての人々」とは何かを考えながら、
勝敗、順位、記録など競技に偏っている日本スポーツの
コンセプトをチェンジしていく必要がある。
==============
◇いたに・けいこ

1954年生まれ。神戸大卒。
「スポーツ・ジェンダー学への招待」(編著)、
「スポーツ倫理の探求」(共著)。
日本スポーツとジェンダー学会会長。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/11/13/20101113dde035070025000c.html

2010年11月22日月曜日

金銭の約束、やる気そぐ? 脳活動の記録でも判明

(2010年11月16日 共同通信社)

金銭報酬を期待して課題に取り組むと、
約束された報酬がないときには、かえってやる気(動機づけ)を失い、
報酬なしで好奇心や関心を持って取り組んだ人より、
脳の活動も低下する-。

心理学の「アンダーマイニング効果」として知られていた現象を、
磁気共鳴画像装置(MRI)でとらえることに、
玉川大の松元健二准教授(認知脳科学)らが成功。

自発的な学習を促す教育法の開発などにつながる。
16日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に発表。

松元さんらは、大学生28人を報酬のあるなしで半々に分け、
ストップウオッチを5秒ちょうどで止める課題などを与えた。

課題をこなす最中、MRIで脳の血流を調べたところ、
報酬の有無に関係なく、課題の認識を担う前頭葉の一部と、
うれしいかどうかといった「自分にとっての価値の計算」を担う
大脳基底核の一部が連動。

課題をいったん終えた後、全員に「金銭の支払いはない」と伝え、
再び同じ課題をこなしてもらった。
最初に報酬の約束がない群では、
同じような脳の活動が見られた一方、
報酬を約束されていた群では、活動が著しく低下した。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/16/128356/

朝鮮の医学書「東医宝鑑」 吉宗、庶民にも販売

(2010年11月13日 読売新聞)

8代将軍徳川吉宗が、医療改革のために朝鮮から入手、
翻訳のうえ各大名に配った医学書「東医宝鑑」を、
それほど高くない価格で庶民にも販売していたことが、
徳川宗春が尾張藩主になる前に治めた陸奥梁川藩(福島県伊達市)の
庄屋文書で明らかに。

貫井正之・名古屋朝鮮史研究会会長(72)は、
「分かりやすい内容とはいえ、大部で貴重な医学書。
吉宗が、そこまで評価して広めようとしていたとは驚きだ」

梁川藩で、「東医宝鑑」(全25巻)の庶民向け販売のお触れが
回ったのは、享保15年(1730年)4月。

「このほど価格を引き下げたので、百姓、町民にもよく知らせ、
希望者に買い取らせるように。
上本は78匁、次本は60匁」などと書かれている。

基は、3月に幕府が全国に出したお触れで、
同藩では「百姓、町民」と付け加え、セールの対象をより明確。
当初の価格は不明、60匁が1両、6-10万円に相当。

「東医宝鑑」は、朝鮮王朝の宮廷医官だった許浚(ホジュン)が編さん、
1610年に完成。
当時の東洋医学界では、最高峰の医書とされ、中国でも何度も出版。
昨年、ユネスコの世界記録遺産にも選定。

吉宗は、対馬藩を通じて同書を入手。
朝鮮通信使との医事問答などを通じて、朝鮮の医療事情に詳しく、
その知識を江戸の小石川養生所の開設、全国の薬草調査、
朝鮮ニンジンの栽培などに生かしたうえ、同書の普及にも努めた。

長年、同書を研究してきた貫井さんは、
「吉宗が普及させたのは、各藩の御殿医や有力な町医者レベルまでと
考えられてきた。
『家庭の医学』書的な役割を果たせると考えていたことになり、
吉宗の同書に対する評価を再検討する必要があるだろう。
同様のお触れが、他藩にも残っているか調べたい」

医書「東医宝鑑」の編さん完成400年を記念し、
国際シンポジウム「東アジアの文化交流-『東医宝鑑』許浚、
そして東洋医学を語る」が、名古屋国際センターホールで開催。

貫井さんの基調報告、韓国の全世一・前延世大学校医学部教授の
特別講演に続いて、金夬正・許浚博物館長、
董福慧・中国中医研究院主任医師、小川晴久・東京大名誉教授、
安井廣迪・安井医院長をパネラーに、
「東医宝鑑」が東洋医学に与えた影響などを討論。
NPO法人フレンド・アジア・ロード主催。
参加費1000円(資料代を含む)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/11/15/128317/

大河流れて:ユース五輪の遺産 第1回開催シンガポールの場合

(毎日 11月12日)

アジア大会に、過去最多の242選手を派遣するシンガポールでは
今年8月、未来のオリンピアンを育てる「もう一つの五輪」が行われた。
14~18歳の選手を対象とし、IOCが新設した第1回ユース五輪。

競技だけではなく、教育や交流を重視した理念もあり、
IOC副会長でもある大会組織委員会のセルミャン・ウン会長は、
ユース五輪は、シンガポールにとって大きな遺産をもたらす」と力説。

大会には、約2万人の市民がボランティアとして参加。
選手村では、地元の中高校生が出場国・地域ごとにブースを設け、
遊びや展示を通して文化を紹介し、市民レベルでの交流も進んだ。

AFP通信などによると、大会経費は当初見積もりの3・7倍の
3億8700万シンガポールドル(約247億3000万円)に膨れ上がり、
9月には国会で議題に上った。

ビビアン・バラクリシュナン社会開発・青年スポーツ相は、
「形として見えるもの、目には見えないものを含めて、
投資に見合う価値はあった。
市民に、スポーツ文化の土台を築く効果がある」と強調。

アジア大会サッカー男子1次リーグのシンガポール-インドを
観戦した、シンガポール・オリンピック委員会の
クリス・チャン専務理事は、将来のアジア大会開催の可能性について、
「小さい国なので分からない」と慎重だが、
「子どもたちは、試合を見て感動していた。
次の世代にも、ユース五輪の理念を伝えていければ」と期待。

シンガポールの選手強化は、国外出身選手に頼ってきた側面も。
卓球の女子団体は、5月の世界選手権で、
中国の連覇を8で止めて優勝したが、
世界ランク3位のフェン・ティアンウェイ、
7位のワン・ユエグら中国出身選手が中心。

自国出身の選手が育ちにくい土壌の中で、
若手育成は長期的な課題。
ユース五輪の遺産を、アジアにどう伝え広めていくかも、
第1回開催国に課せられたテーマといえる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/11/12/20101112ddm035050048000c.html

2010年11月21日日曜日

気仙郡のルーツに一石 陸前高田で講演会

(岩手日報 11月21日)

気仙登場1200年記念講演会(陸前高田市、同市教委主催)は、
市ふれあいセンターで開かれ、約300人が聴講。

国立歴史民俗博物館(佐倉市)の平川南館長が、
創設年代が不明な気仙郡について、
「715(霊亀元)年、郡役所設置の申請がなされた香河(かがわ)村と
無縁ではない」と講演。
東北古代史の解明に一石を投じた。

香河村については、歴史書「続日本紀」の記述で、
郡家(ぐんけ)(郡役所)の設置を律令国家側が認めたとあり、
「香河郡」になったことがうかがえる。
位置については、現在の宮城県の登米郡や黒川郡あたりとする
見方がこれまであったが、平川館長は否定。

平川館長は、713(和銅6)年に郡などの名称が、
「めでたい文字」に変更されたことを説明。
気力や仙人という言葉に象徴されるように、
「気仙」もめでたい文字とした上で、問題はそれ以前に
どんな文字表記がなされていたかだとした。

四国の香川郡(香川県)に言及し、「当時はケカワと読んでいた。
つまり、香という字はケと読んでいた。川はセンとも読める」と説明。
問題の「香河」に戻って、「ケセンと読めるかどうかは、今後の検討課題」
という表現にとどめながら、香河郡と気仙郡の深い関連を示唆。

同市気仙町のツアーコンダクター紺野文彰さん(59)は、
「気仙の前身は香河だ、ということを暗示したのではないか。
非常に興味深く、驚いた」

平川館長と奥州市埋蔵文化財調査センターの伊藤博幸所長、
えさし郷土文化館の相原康二館長によるてい談も行われた。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20101114_5

扉の向こうに:広州アジア大会新競技/5止 ローラースポーツ

(毎日 11月6日)

板張りの体育館で、ジャンプやスピンを次々と披露する。
徳島を拠点とするローラースポーツ男子フィギュアの
西木紳悟(22)=コンドーク=は現在、
世界で唯一トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳ぶ。

氷上では、同じジャンプが得意の浅田真央(中京大)が活躍、
「ローラーでも十分楽しい」と、わが道を行く。

ローラーフィギュアとの出合いは9歳。
地元紙に掲載された体験教室。
あきっぽい性格が災いしてか、野球や水泳、空手など、
さまざまなスポーツをかじってはやめていたが、
ローラーフィギュアは違った。

みるみる上達して魅力にはまり、中学3年でシニアの
全日本選手権に出場。
初出場で優勝し、現在8連覇中。
非五輪競技・種目で競う09年ワールドゲームズ高雄大会(台湾)では、
国際大会で過去最高の5位。

マイナー競技ゆえの悩みが、日本のエースを襲っている。
徳島文理大4年の西木は今年、競技と両立できる企業を求めて
就職活動をしたが、条件を満たす企業は見つからなかった。
知名度が低く、企業の理解を得にくいばかりか、
競技人口が日本で約100人と少なく、通常の体育館では
「床が傷む」と、ローラーフィギュアが敬遠されるため、
練習場が限られ、勤務地の幅が狭まるのも原因。

アジアでトップレベルの実力を持ちながら、
引退も考えざるを得ない状況に追い込まれている。
「アジア大会は大きな大会。
ここでいい演技をして、ローラーフィギュアを有名にしたい」と西木。

開催地がリオデジャネイロに決まった16年夏季五輪では、
七つの追加競技候補にローラースポーツも挙がったが、
1回目の投票で落選。
「メジャー化」への道は険しい。
自らの現役続行も懸けて、トリプルアクセルを成功させ、
競技の存在感を示す役割を果たすつもりだ。
==============
◇ローラースポーツ

ローラースケートを使い、採点競技の「フィギュア」と、
距離別タイムレースの「スピードスケート」がある。
フィギュアは、「ショートプログラム」(2分15秒プラスマイナス5秒)と、
「ロングプログラム」(4分プラスマイナス10秒)の2本立てで順位を競う。
日本からは西木の他、スピードで女子の篠塚奈知(24)が出場。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/11/06/20101106dde035050038000c.html

情報機器を使う(7)仮想世界で実技を学ぶ

(読売 11月17日)

武蔵野市の市立第二中学校で、インターネット上の仮想世界
「セカンドライフ」を使った授業が行われた。
パソコンの画面に映し出されたのは、
ノコギリを手にした男性のアニメ映像。

「ノコギリひきのコツを見つけよう」。
同中で技術・家庭科を教える佐藤智巳教諭(25)は、
1年生30人に語りかけた。

ノコギリを持った男性がいるのは、仮想世界にある教育研究所で、
敷地面積は約6万平方メートル。
教育システム販売会社が、仮想世界に所有しており、
その一画(約1600平方メートル)を研究者に提供。

アニメの動きは、実際の人間の動きをビデオで撮影して作製。
ノコギリひきに慣れた上級者と初心者の動きを、
切り替えることができる。
生徒たちは、マウスを操作してアニメにノコギリをひいてもらい、
動きの違いを比べ、ひき方のコツを学ぶことができる。

グループごとにマウスを操作して、アップにして観察したり、
360度、いろいろな角度から見たりして動きを比べた後、
授業はいよいよ実技へ。
現実世界で、本物のノコギリを手にした生徒らは、
パソコンで見た上級者の動きを思い浮かべつつ、
木片を次々に切っていった。

うまく切れたという松本誠央君(13)は、
「映像はリアルで本物のよう。
動きの違いがよくわかる」とうれしそう。
上級者のように、脇をしっかり締めることに注意したという
松本君は野球部員で、「バットの振り方など練習でも使えれば」と
素振りのしぐさを見せた。
佐藤教諭は、「子どもたちの関心は想像以上。また使いたい」

この授業には、仕掛け人がいる。
教室の後ろで様子をみていた安藤明伸・宮城教育大学准教授(37)。
中学で技術・家庭科を教えた後、大学で3D映像を
教育現場で利用する方法などについて研究しており、
佐藤教諭は安藤准教授の大学での教え子。

アニメ映像は、実は安藤准教授の仮想世界内のアバター(分身)。
「授業で、上級者の動きを見る機会は少ないし、その機会があっても、
何度も繰り返し見ることはムリ。
3D映像が、上級者の実演観察の代わりになれば
将来的には、跳び箱など体育の実技などにも活用したい。

3D映像を使った授業が行われたのは、
同校を含めてもまだ数校程度。
まだあまり知られていないが、実技のある教科で
頼もしい助っ人になりそうだ。

◆セカンドライフ

米カリフォルニアのネット企業、リンデン・ラボ社が、
2003年に開設したオンライン・サービス。
現実世界のように立体的で、人との交流や経済活動などができる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101117-OYT8T00189.htm