2010年11月26日金曜日

情報機器を使う(8)映像教材 障害児支える

(読売 11月18日)

「この白と黒の自動車は、なんという名前かな」
都立葛飾ろう学校で行われた国語の授業。
特殊なマイクを胸元につけた山江直子・主幹教諭(45)は、
手話を交えつつ、小学部1年生の児童3人に問いかけた。

3人は、生まれつき耳が不自由で、聴力は地下鉄が駅を通過する
ごう音なら聞こえる80~110デシベルほど。
補聴器をつけても、話し声がようやく聞こえる
40~60デシベルにしかならない。
言葉として、はっきりと聞き取れるわけではない。

そんな3人が注目するのは、手元の教科書ではなく、
黒板の前に置かれた大型ディスプレー。
画面には、消防車やトラックなど様々な車の絵が映し出されている。

先生の質問に、まっすぐ手を上げたのは、柳久遠君(7)。
ディスプレーに駆け寄り、「パトカーです」と、
手話を交え元気よく答えた。
「警察官の乗る車ですね。よくできました」と山江教諭。
柳君は、「映像だと、とってもわかりやすい」とうれしそう。

ディスプレーに映し出されていたのは、
教科書に準拠して作られた教材で、「デジタル教科書」。
電子黒板などに映し、さし絵を拡大したり、
動画を再生したりして指導用に使う。

同校小学部が、国語のデジタル教科書を導入したのは2005年。
単元ごとに黒板にはる、模造紙の教材を作る必要がなくなった。
山江教諭は、「耳から入る情報の少ない子どもたちにとって、
映像の力は絶大。
下を向かず、情報を共有できるメリットも大きい」

教科書協会(東京都)によると、小学校でデジタル教科書が
作られているのは、国語のみ。

新学習指導要領が全面実施される来年度、算数、理科、社会でも
デジタル教科書が作られることが決まっている。
同校小学部では来年度、国語のほか理科、算数でも導入する予定。

情報通信技術(ICT)は、使い方次第で障害のある児童にとって、
効果的なアシスティブ・テクノロジーになる。
デジタル教科書は、その典型。

国立特別支援教育総合研究所の金森克浩・総括研究員(49)は、
「学習や生活にある困難を改善・克服させ、指導の効果を高める。
支援を必要とする児童にとって、利点は大きい」

教育現場に大量に入った情報通信機器は、
様々な形で学習の可能性を広げている。

◆アシスティブ・テクノロジー

障害のために実現できない学習上、
生活上の課題を支援する技術。
車いすや補聴器のほか、近年は、読み上げソフト、ICレコーダー、
携帯メールなどの情報通信技術も活用。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101118-OYT8T00170.htm

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