2009年6月6日土曜日

検証 橋下改革(10)大阪府教育委員 陰山英男さんに聞く

(読売 5月21日)

◆かげやま・ひでお

立命館大教授、立命館小副校長。
反復学習を重視する基礎学力向上策や「百ます計算」の実践。
中央教育審議会の教育課程部会委員も務める。51歳。

〈改革請負人〉の一人が、橋下改革を語る。
「今、大阪で学力が問われているのは、全国学力テストの順位が低い。
学力の本質は数値に表れないということは、教師なら誰でも知っている。
数値が低いことが問題である以上、点を上げる対策が必要」

兵庫県の公立小学校の教諭時代から実践してきた
「百ます計算」や漢字の反復学習を軸に、学力向上のてこ入れを図る。
その言動は、〈点数主義〉と批判を浴びることもあるが、
本人は意に介さない。
「体験学習が大切なのは当然。道徳教育だって必要。
でも、テストの点数が悪い学校が、そんなことばかり言うと、
保護者の信頼を損なう」

建前を嫌う。
教育論を振りかざす前に、教師がやるべきことがあると力説。
受験学力がものを言う社会があり、テストの点を気にする保護者がいる
現実を直視し、そこへの対処を考える。
その姿勢は、「府民感覚」を強調する橋下徹・大阪府知事と重なる。

昨年10月、府教育委員に就任するまで、
立命館小学校の副校長として、橋下知事の教育改革を外から見てきた。
「教育の中身やメソッド(手法)について、知事は素人。
教育界に風穴を開けたのはいいが、どんな風を送ったらいいか
分かっていないように見えた」

就任後、まず変えようとしたのは、府教委と学校の意識。
特に問題だと感じたのは、平等性や人権教育と学力対策とを、
対立的にとらえる風潮。
社会的弱者の自立には、学力向上が重要だという自負。
「教育学が支配する閉鎖社会で、外に目が向いていない。
呪縛さえ解ければ、陰山って俺たちの思っていたことを
やっているだけじゃん、ってなるはず」

学校に対し、〈ショック療法〉を試みたのは昨年11月。
校長研修で、「それでもプロか」と集まった約900人を面罵した。
反発も買ったが、「別の手法で見返そうと頑張って、
結果を出すならそれでもいい」と涼しい顔。
過激な言動で状況を動かす手法も、橋下知事と瓜二つ。

不登校や高校中退、校内暴力など、
大阪の学校が抱える課題の多さも承知。
「学力向上は、ゴールラインに見えるかもしれないが、
むしろスタートライン」
「早寝、早起き、朝ごはん」という、
生活習慣の改善に取り組んだ教師の草分け。
テレビや携帯電話、インターネットで氾濫する情報に取り囲まれ、
いじめや犯罪に巻き込まれる子どもたちを憂う。

「教育課題の解決には、子どもの危機を一番理解している教師が、
保護者や社会に対して声を上げないといけない。
今は、その教師が信頼されていない。
実績を上げ、信頼を取り戻すことから始めなければならない」

身を乗り出して語る姿に、熱血教師の素顔がのぞいた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090521-OYT8T00375.htm

逆風の中で:第4部・冬季競技の模索/5 ST、実業団の壁消え

(毎日 5月23日)

ショートトラックは、2つの企業チームが中核となって日本代表を輩出。
92年アルベールビル五輪男子五千メートルリレー銅メダルの
川崎努や赤坂雄一らが所属した帝産オート(現帝産観光バス)、
リレーメンバーの石原辰義や88年カルガリー五輪(公開競技)
女子三千メートルで金メダルの獅子井英子がいた西濃運輸

94年リレハンメル五輪後、相次いで解散。
当時、帝産オート総務部長でスケート部長でもあった
亀岡寛治・帝産観光バス社長は、
「バブル不況による経営不振が理由。私も廃部は仕方ないと思った」

石川良並・帝産グループ会長(当時)は、
日本スケート連盟副会長を務め、競技に理解が深かった。
82年創部のスケート部は、87年完成の専用リンク(長野県南牧村)で
「毎日、氷上で4時間以上、陸上トレーニングを含め6~8時間練習した」
西濃運輸に専用リンクはなかったものの、
名古屋市内の一般リンクを毎日使用できた。

日本の成績は98年長野五輪後、徐々に低下し、
06年トリノ五輪では決勝進出種目ゼロ。
トヨタ自動車やサンコーなど企業チームはあるが、
一般リンクの使用が限られるなど氷上練習は十分でない。
93年まで9年間、帝産オート監督を務めた
柏原幹史・同連盟ショートトラック強化部長は、
「帝産や西濃の廃部の影響は大きかった。
高校や大学を卒業後、競技を続ける環境も減った」

最近は、個人にスポンサーがつくケースも増えたが、
不況の影響は否めない。
ある日本代表選手には、「スポンサー数社が一時ついたが、
今は全部離れた」(柏原部長)といい、選手を取り巻く環境は不安定。

帝産リンクは今も存続し、普段は地元小中学生のクラブが活動。
亀岡さんは、「ジュニア普及の場は残したかった」
問題は、やはりトップ選手の強化。

現在、連盟の強化指定選手らは、4月から東京都内で
2カ月間の長期合宿を行っている。
柏原部長は、「昔のように、それぞれの実業団が強化拠点では
世界で勝てない。今は実業団の間の壁もなくなり、
ナショナルチーム体制を取りやすい」と現状のメリットを指摘。

企業チームの休廃部が招く国際競技力の低下は、
日本スポーツの大きな課題。
ここにどうくさびを打ち込むか?
日本代表を集中強化して挑む来年のバンクーバー五輪で、
その成果が問われる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/05/23/20090523ddm035050010000c.html

「メタボ」8割が認知、予防の生活習慣継続は3割…食育白書

(2009年5月26日 読売新聞)

2009年版の食育白書を閣議決定。
メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に関して、
「言葉も意味も知っていた」とする人は89・3%と、
2年前(77・3%)より増え、
政府が2010年度の目標値としていた「80%以上」を超えた。

予防や改善のために適切な食事や運動を半年以上、継続している人は
29・4%にとどまり、認知度の高まりに反して対策は
不十分であることが浮き彫り。

07年の調査では、生活習慣病につながるとされる
「朝食抜き」の割合が高いのは、30歳代男性(30・2%)や
20歳代男性(28・6%)
で、10年度の目標である「15%以下」とは
大きく隔たっていた。
女性も、20歳代(24・9%)、30歳代(16・3%)で朝食欠食率が高かった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/26/100349/

自分磨きは電子辞書で 語学学習や話しの種探し すぐに起動、いつでも活用

(日経 5月21日)

1台で様々なことを調べられる電子辞書。
最近の機種は、辞書の枠組みを超えた機能を数多く備えている。
ちょっとした合間の時間に、手軽に語学を勉強したり、
取引先との会話の糸口を見つけたりするといった使い方を、
電子辞書メーカーで働くビジネスパーソンに聞いた。

「苦手なリスニングを克服できました」
シャープでマーケティング業務を担当する谷口裕美子さん(24)は、
英語の勉強に電子辞書を活用。

谷口さんは、会社の行き帰りの電車の中で電子辞書を取り出し、
ヘッドホンのコードをつなげる。
スイッチを入れると、ネーティブスピーカーの朗読が耳に入ってくる。

最近の電子辞書は英単語だけでなく、長文の文書のデータも搭載。
日々の努力の積み重ねが功を奏し、
「国際コミュニケーション英語能力テスト(TOEIC)」の点数は、
2年前より100点以上高い700点台半ばに跳ね上がった。

リスニングであれば、ICレコーダーを使うやり方も。
谷口さんがあえて電子辞書を使っているのは、
「ちょっと気になった単語を、その場ですぐに調べられる」

言葉の意味を文章だけでなく、イラストや写真でも確認できる。
ICレコーダーではこうはいかない。
リスニングの練習道具にとどまらず、知識を深められるのが
電子辞書の最大の利点。

こうした機能は、パソコンでも利用できる。
最近は、「ネットブック」と呼ばれる低価格の超小型パソコンが普及、
外出先でも気軽に利用できる。

電源を入れてから起動するまで、時間がかかってしまう。
電子辞書であれば、思い立ったときにすぐに使えるので、
通勤途中や昼休み、取引先への移動中など
「細切れ」の時間での学習に適している。

ビジネスの現場でも、電子辞書は強い味方になり得る。
キヤノンマーケティングジャパンで、販売企画に従事している
横尾恭子さん(25)は、百科事典を収録している電子辞書を
営業ツールとして利用するようにすすめている。

出張する際、「その地方の歴史や名産品を事前に調べておけば、
初対面の人とも会話が続く」
パソコンでも調べられるが、電子辞書はインターネットに
接続する必要がなく、電車の中や空港などでの待ち時間など
ちょっとした時間にすぐに調べられる。

会食の席でも、電子辞書の活躍の場はある。
献立やメニューで見慣れない料理の名前があれば、
すぐに調べて話のきっかけにすることも。

相手の趣味や関心事について、予備知識が乏しかったとしても、
電子辞書があれば、ある程度は話についていける。
NHKの大河ドラマの登場人物に関する項目に目を通しておけば、
会話が続かなくて、気まずい思いをする危険性はかなり減りそう。

「ちょっと調べてみましょうか」と切り出せば、
自分の知識をひけらかしているという印象を与えずに済む。
商談でも、あやふやな点を確認するといった使い方が考えられる。

電子辞書に収録されている機能は多岐にわたるが、
国語辞書や英和辞書しか使っていない人が多いのが現状。
カシオ計算機で、電子辞書に収録する辞書の選定などを担当する
小林雄一さん(50)は、「購入したら、
本体の収録メニューボタンを押してほしい」

ボタンを押すと、語学学習用のコンテンツや百科事典、
ビジネス文書の書き方、冠婚葬祭のマナー、法律用語辞典などが
収められていることがわかる。
「自分には関係のなさそうな機能でも試しに使ってみると、
意外な面白さを感じられる」と小林さんは力説。

日本文化を、英語で紹介する機能があったとする。
仕事に役立たないかもしれないが、そのように表現するのか、
といった新しい発見がある。
こうしたことを繰り返していると、話題が豊富な人として
一目置かれる存在になれるかもしれない。

電子辞書の面白みを発見したら、
気になった点を調べる癖を付けることが重要。
いつも手の届く場所に置いておくことが、使いこなしへの一歩。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090520.html

技術が補う身体機能 メーカー、改良に努力 「老いが変わる」 医療・介護ロボット

(2009年5月25日 共同通信社)

「それではゆっくり立ち上がって下さい」
下関市の昭和病院のリハビリテーション室。
足の筋力を補助するロボットスーツ「ハル」をつけた
甲斐田年勝さん(63)は、理学療法士に支えられながら、
手すりにつかまって歩き始めた。

甲斐田さんは、脳梗塞の後遺症で下半身に障害。
大牟田市から4時間かけて昭和病院を訪れ、
4月下旬からロボットの利用を始めた。
妻シゲ子さんは、「普段はこんなに立ったり、歩いたり出来ません」と喜んだ。

ハルは、脳が筋肉に「動け」と命じた信号を皮膚の表面で検知し、
患者の足の動きを助ける。
昭和病院は、ハルを使った機能回復訓練をスタート。
整形外科の山崎康平医師は、
「まだ目立った効果は出ていないが、期待しながら使っている」

ロボットスーツを開発した筑波大学の山海嘉之教授は、
ベンチャー企業「サイバーダイン」をつくば市につくり、
住宅メーカーを代理店としてハルのリースを始めた。

「老化による身体機能の衰えは避けられないが、
テクノロジーで補うことは可能だ」

最先端のロボット技術によって医療、介護の現場を変えようとしている。
富山県小矢部市のベンチャー企業「日本ロジックマシン」は、
介護ロボット「百合菜」のレンタルを5月から始めた。
アーム(腕)を上下させることによって人を抱き上げることができ、
入浴やおむつ交換を補助する。

創業者の森川淳夫社長(54)が、介護ロボットを開発しようと
思い立ったのは約15年前。
特別養護老人ホームで働く知人が、腰を痛めたのがきっかけ。
富山県内の電機メーカーに勤めながらアイデアを練った。
2000年には自分の会社をつくり、昨年「百合菜」を完成。

「介護がつらく、限界を超えている」、「1日でも早く使いたい」
森川社長の電子メールには、介護に苦労している人たちからの相談が届く。
「介護、看病疲れ」による08年の自殺者は273人。
60歳以上が156人。
65歳以上の「老老介護」では、3人に1人が「死にたいと思うことがある」
高齢者施設向けに開発した介護ロボットだが、
森川社長は「家庭でも使えるように改良を急ぎたい」

医療、介護用のロボットを開発は、ベンチャー企業ばかりではない。
トヨタ自動車は、足が不自由な人が使う移動ロボットや
介護支援ロボットの商品化を検討。
三菱重工業も、03年に発表したロボット「ワカマル」を改良中。
人間の声に反応して返事をする機能に磨きをかけ、
家庭で高齢者を助けることができるロボットに脱皮させるのが目標。

「ロボット技術は日々進化している。
高齢者でも比較的簡単に使えるようになってきた」
藤江正克・早大教授(ロボット工学)。
ロボットの安全基準や、万が一の事故に備えた
保険制度などの整備はまだこれから。

「社会がきちんとロボットを受け入れる準備をすれば、
10年以内に相当普及するはず」
藤江教授はこう予想。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/25/100282/

2009年6月5日金曜日

検証 橋下改革(9)ブレーン3人 教委刺激

(読売 5月20日)

橋下改革で、教育委員会も大きく変わろうとしている。

「『教育は時間をかけないと成果が出ない』という人間を、信用しない」
大阪府庁新別館で、公立学校の新任校長を対象にした研修会。
府教育委員の陰山英男氏は、プロジェクターに
「学力は1年で伸びる」とする資料を映し出し、
「要はテストの点を上げること」と成果を求めた。

研修会で講師を務めたのは、同じく府教育委員の小河勝氏と、
府教委特別顧問の藤原和博氏。
いずれも橋下徹府知事が招いたブレーン。

3人は、教育委員会と学校の関係を変えた。
校長らを集めて叱咤激励するだけでなく、学校にも頻繁に足を運ぶ。
3月末まで、市町村教委や学校で行った講演会や研修は、
陰山氏が13回、小河氏が10回。藤原氏は55回。
従来の教育委員の学校視察は年2~3回だったといい、
訪問回数の増加は学校に直接働きかけようという姿勢の表れ。

教育委員会と知事の関係も変化した。
「教育委員が、(府教委)事務局をコントロールしてほしい」
昨年10月、陰山、小河両氏を教育委員に任命するに当たり、
橋下知事は2人を招いた理由を、そう話した。

従来、独立した行政委員会である府教委の政策一つ一つに、
知事が口を挟むことは少なかった。
橋下知事は、自ら人選した人材を教育委員に任用することで、
影響力を行使しようとした。

「陰山先生に進捗状況を報告してください」、
「藤原先生案で推し進めるべきです」
府教委幹部には、こうした橋下知事からのメールが次々と舞い込む。

「教育委員と連絡を取る回数が劇的に増えた」と、
府教委教育総務企画課の藤井睦子課長。
月1回の定例会議前、すでに固まった議案を説明することが多かったが、
現在は立案段階からメールや携帯電話で進捗状況を報告。
綿密に意思疎通を図るため、教育委員との連絡を担当する職員は、
1人から7人に増やした。

明確な達成目標を設定するのも〈橋下流〉。
「2010年度、全国学力テストで全国平均を目指す」、
「2009年度中、50%以上の府立高校で土曜の補習・講習を行う」
5月上旬の府幹部会議には、こうした数値目標を説明する
中西正人・府教育長の姿が。
橋下知事は、「わかりやすかったです」と満足。

府教委の変化に、反発を隠さない市町村もある。
「意見を言うだけで、改革反対のレッテルを張られる」と嘆くのは、
山元行博・豊中市教育長。
田口省一・吹田市教育長も、「点数万能主義に陥りかねない」と危惧。

外部人材の登用や数値目標の設定は、
「民間感覚」、「府民感覚」を強調する橋下知事の常套手段。
それを教育分野に持ち込んだ時、どのような変化と成果が表れるのか?
検証が必要なのは、むしろこれから。

◆教育委員会

首長から独立した教育に関する行政委員会で、
都道府県と市区町村に設置。
委員は原則5人で、首長が議会の同意を得て任命。
委員らで構成する会議は、行政職員や指導主事らで組織する
教委事務局を統括する意思決定機関。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090520-OYT8T00248.htm

チリ地震津波犠牲者50回忌に合わせ 本増寺境内に供養碑建立

(東海新報 5月24日)

大船渡市の本増寺(木村勝行住職)で23日、
昭和35年5月24日に来襲したチリ地震津波で犠牲となった
人々の供養碑入魂式が行われた。

供養碑は、津波犠牲者の五十回忌に合わせて建立。
法要に続いて行われた入魂式では、
檀信徒ら関係者が供養碑に向かって焼香し、
被災の教訓を後の世に伝えていくことを胸に刻んだ。

供養碑は、津波による大災害と犠牲者の無念を思い起こし、
忘れてはならない歴史として後世に伝えていこうと、
同寺が津波犠牲者の五十回忌に合わせて建立。

入魂式に先立ち、本堂で行われた津波犠牲者の五十回忌法要には、
チリ地震津波の体験者でもある檀信徒ら20人が参列。
読経のあと、総代の佐藤泰造さんが追悼文を読み、
津波に命を奪われた犠牲者に弔意を表した。

境内で行われた入魂式では、供養碑の除幕に続き、
木村住職が津波被害の惨状と犠牲者を偲ぶ言葉を記した
碑文を読み上げた。

献灯、献花、献茶のあと、檀信徒が読経が流れる中で焼香。
供養碑に手を合わせ、慰霊の心と防災への誓いを新たにした。

境内の北側に建立された御影石の供養碑は
縦100センチ、横140センチの大きさ。
裏面には、チリ地震津波の来襲時刻が刻まれている。

供養碑を建立した木村住職は、
「50年の歳月を経ても亡き人は帰ることなく、落涙をもよおす。
供養碑は孝養積善の道を思い、建立したもので、
永久の供養を怠ることなく努めていきたい」

チリ地震津波により、国内では三陸沿岸を中心に死者、
行方不明者合わせて142人という大きな被害。
大船渡市史によると、52人が死亡、1人が行方不明となった
同市の被害額は、当時の金額で約80億円、全国最大の被災地。

逆風の中で:第4部・冬季競技の模索/4 フィギュア、リンク閉鎖

(毎日 5月22日)

フィギュアスケートで日本勢が活躍する半面、
選手の練習や大会会場となるリンクの確保が困難に。
多くは、一般利用者の入場料が主な財源だが、
入場者の減少に伴い、各地で閉鎖が相次いでいる。
06年トリノ五輪の金メダリスト、荒川静香さんが通った
仙台市の勝山スケーティングクラブも4月末で幕を閉じた。
構造改革の荒波にもさらされている。
政府は、社会保険料で整備した福祉施設の廃止・売却を決めたが、
対象には13のリンクが含まれていた。

高橋大輔(関大大学院)が育った岡山県倉敷市の年金福祉施設、
ウェルサンピア倉敷のリンクもその一つ。
08年2月の競売で応札がなく、3月末での閉鎖が決まった。
「若手選手の練習拠点が消えてしまう」と動いたのが、
岡山県スケート連盟。

管理する「年金・健康保険福祉施設整理機構」に談判し、
無償でリンクを借り受けると、選手の父母や連盟会員らで協力し合い、
翌4月から自主運営で再開。
通常月200万円以上かかる管理費を節約するため、
時には製氷車の運転を会員が行い、貸し靴の窓口も当番制にして
人件費を削った。
夏の休場後、10月に再開する際は、業者に頼めば200万円かかる
氷張りを、手作りでしたことも。
藤井康男理事長は、「自主運営にかかわった人は100人以上。
ボランティアで大変だったが、役員報酬などの経費がかからず、
運営は可能だった」

存続の朗報が届いたのは今年2月。
再入札で、近くの倉敷芸術科学大を経営する学校法人加計学園が
3億3000万円で落札。
今後も、運営を無償で県連盟に任せる覚書も結び、
「大会開催もできる」と藤井理事長は喜ぶ。

関西のトップ選手が練習する大阪府立臨海スポーツセンター(高石市)も、
財政再建策で一時廃止・売却の方針が盛り込まれた。
存続を求める13万人以上の署名もあって、府は継続を決めたが、
11年度以降の委託費(年間3000万円)や大規模改修費は
支出しないと明言、危機は去っていない。

日本スケート連盟は昨年、廃止の危機にあった倉敷や
福井県のウェルサンピア敦賀のリンクについて、
連盟指定リンクとして大会や合宿を開催し、存続を支援することを決めた。
しかし、運営資金の助成まではできないのが実情。

閉鎖したリンクのある関係者は言う。
「フィギュアは、日本を代表する競技。
民間任せにせず、もう少し行政が拠点のリンク作りに乗り出してほしい」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/05/22/20090522ddm035050077000c.html

MyMaiTree:あすを植えよう 宮脇さんと識者ら対談

(毎日 5月23日)

国土の7割を占める日本の森林は、近年荒廃がいわれ、
地域で「森を守る」活動が広まりを見せている。
地球環境保全、というグローバルな問題への具体的な処方を担う
ローカルの取り組み。

地域のリーディングバンクとして、さまざまな森林再生活動を展開する
地方銀行の有志行が、情報を集約し活性化につなげようと、
ネットワーク化を目指す「日本の森を守る地方銀行有志の会」が始動。

対談特集「次世代へのメッセージ」最終回は、
同会会長の柏原康夫・京都銀行頭取宮脇昭・横浜国立大名誉教授に、
「豊かな森林を次代に引き継ごう」をテーマに、
その課題と展望を語り合ってもらった。

--国指定史跡の「糺(ただす)の森」を、
「地銀有志の会」の発起人会で視察された。

柏原さん 糺の森は、下鴨神社の境内に太古以来の山城原野の植生を
残す森で、京都の団体・企業が守る会を結成して運動を続けている。
有志の会発起人8行の担当者が見学、
全国にある森を守るため団結していこうと、決意を新たに。

地方の山を、森を守ろうというのが基本的な発想で、
糺の森のように街中にある森も含めて守っていくのが目標。
全国で、地銀はいろいろな形でボランティア的に活動、
林業の再生に結びつかないと難しいので、自治体にも呼びかけ。
環境省、林野庁からも注目、国民的な運動になってほしい。

--設立の経緯は?

柏原さん 去夏、山陰合同銀行頭取の古瀬誠さんと、
「森を守るネットワークづくりはどうか」という話に。
山陰合同は、3年前から担当部署を設け、行政にも働きかけている。
京都で、モデルフォレストという運動を呼び掛け。
各地で、地銀各行が森を守る活動をやっていることが分かり、
呼び掛けを始めた。
4月から活動を始め、12月に京都で森を守るサミットを開き、情報発信する。

宮脇さん 金融業界が連携し、森を守る活動を進めるのは世界初では。
緑は百様で、どの緑も大事。
自然保護の原点は、今あるものを残すこと。
土地本来の森があまりにも少ない。
今あるものを残しながら、ぜひ土地本来の多様な森を再生してほしい。

98年、米国ボストン大学での「神道とエコロジー」という国際シンポジウムで、
「鎮守の森を世界の森に」のテーマで基調講演。
ナポリ大学の教授に、「今の日本人は不幸だ。
鎮守の森と共生してきた4000年の日本文化の原点である
神道の教えが、戦後の信教の自由という名の下で無造作に失われている

450人の神道学者、関係者が参加し、神様はひとつであるという
キリスト教、イスラム教が、2000年で地球の環境をだめにした。
原始的といわれ、鎮守の森と共生してきた多神教の日本の神道をこそ
見直すべきだ、という論調。

私は、五大陸38カ国の植生を調べ、世界のかつての都は、
エジプトもアテネ、ローマも、土地本来の森を破壊して
都市文明を繁栄、滅亡させた。
ロンドンもパリもベルリンやニューヨーク、ワシントンも、
落葉広葉樹のナラ帯文化圏に。
日本人も、森を切り開き田畑や村、町をつくったが、
必ずふるさとの木を、鎮守の森を残し、守り、つくってきた。
京都の御所であり、糺の森。
奈良や鎌倉でも、タブやシイ、カシ類の森が残っている。

我々の調査では、土地本来の常緑広葉樹の森は0・06%しかない。
柏原さんたちが山の森を守り、里の森を残し、都市の中の森も
増やすことを重要視されている。

柏原さん 私たちの京都モデルフォレスト運動は、動き出して2年、
企業や団体が放置されている森を、ゾーンを受け持って整備する形。
10年の約束で現在、24企業・団体が活動中。
ヒノキなどの人工林のほか、五山の送り火の材木、
鞍馬の火祭のたいまつ材になる松やコバノミツバツツジなどのある山を
整備しているところも。
事務局は府が担当し、参加企業は増えている。

事務局は、行政が専任者を置いて力を入れているが、
ボランティアだけではなかなか発展しない。
京都銀行は、私が理事長という立場で参加。
07年秋、当行の嵐山研修会館の周りに、シイ、カシ類の幼木を
地域の皆さんと植え、見事に育っている。
今後は、お客様に金融商品を買っていただいた
収益の一部からの寄付も考えている。
企業・団体からの寄付も積極的に集まっている。
森を守る運動は皆さん、共感します。

宮脇さん 経済はもちろん大事だが、もうける一方でなく、
収益の一部を活用したらいい。
土地の自然環境のポテンシャルに応じて対応する素晴らしい活動、
世界の自然を守る活動のモデルとなるようにがんばってほしい。

柏原さん 地銀は、地域全域がお客様エリアで、ネットワークが強い。
ネットワークを活用し、国民の中に運動に対する理解も深まる。
木を植えると同時に、向こう10年間ぐらいで
何とかしないといけないのが人工林。
林業に、産業としてうまく自立してもらうため、10年間に、
1年ずつ切っては植える、植えては切るという形で進めていく。
杉やヒノキを植えるだけではなく、山に元々あった木を植えて、
人工林と共存させていく方法はないか。

京都に、日吉町森林組合という、林野庁も高い評価をしている例。
点在する小地主の山を調査し、「お宅の山は、これだけの本数を
間伐すると元気よくなる。
費用はこれくらいかかるが、補助が出るので利益が出る」、と計画。
生産管理のしっかりした森林経営で、給料制なので若者も帰ってきて、
素晴らしい実績。
「スーパー林道より、作業道がほしい」と。
作業道があると、10年後、木材を切り出すときにコスト安、十分利益が出る。
そういうシナリオを描いてやる方法を、全国に広げられないものか。

--環境対応を進める企業を、金融面で優遇するという
国連環境計画(UNEP)の金融イニシアチブの考え方をどう考えるか?

柏原さん 預金商品や住宅ローン関係での取り組みはあり、
企業活動を金融で動かすというのはどうか。
それは国の政策であり、金融は脇役。

宮脇さん エコロジカルに言いますと、科学技術がどんなに発展し
お金をもうけても、人間は地球にいる限り、
緑の植物、森の寄生者の立場でしか生きていけない。
寄主の立場の緑、命と遺伝子を守る、文化を守る森づくりは、
国や地方自治体が本腰を入れてほしい。
金融機関などが、それをどんどんサポートしていただきたい。

--改めて、次世代へのメッセージを。

柏原さん 京都を含め、街中にもっと木が欲しい。
街路樹があっても、すぐに枝を切って裸の木にしてしまうケースが多い。
ヨーロッパの古い街では、道路の大量のイチョウの葉っぱを掃除する時、
自宅前を自分でやるか、お金を出してやってもらうという市民参加型。
街路樹の素晴らしさを感じた代償。

都会には土地がないというが、高校には大きなグラウンドがある。
その周囲を、卒業記念で、卒業生に苗木1本500円として
1000円ずつ出してもらって2本ずつ植える。
10年もしたら立派な樹林になって、子供たちも、自分が植えた木が
どのくらいになったかと、ずうっと興味が続くと思う。

宮脇さん 生物社会で我慢ができないものは、一時も生きていけない、
というのが、生命誕生から40億年の自然の掟。
自然の、命のシステムを、学校でも社会でも正しく教えてほしい。
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◇植樹キャンペーン 「あすを植えよう いのちの森・My Mai Tree」

土地本来の木(北海道、東北北部、山地ではミズナラ、ブナなど、
東北南部以西の標高800メートル付近まではシイ、タブ、カシ類)を
中心に、多種類の苗木を、自治体などと開催する植樹祭で植える。
創刊135年記念事業として開始、06年から3年余の間に
15道府県28カ所で約19万3000本を植えた。
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◇日本の森を守る地方銀行有志の会

08年7月設立。
里山や人工林など荒れる森林を再生し守る活動を進める
地方銀行をネットワーク化。
市民団体や企業、自治体などと協力して、
「日本の森」を守る運動の盛り上げを図る。
地銀64行中59行が加入。会長行は京都銀行。
問い合わせは、同行広報部075・361・2292。

◇国指定史跡「糺の森」

京都市左京区の世界文化遺産・国宝「賀茂御祖神社(通称下鴨神社)」
境内に広がり、広さ12万4000平方メートル。
ケヤキ、エノキ、ムクノキ等の落葉広葉樹を中心に約40種が群生。
学術的に貴重と、83年国史跡に指定。
今回の対談は同神社境内に隣接し、居住当時よく森を散策したという
文豪谷崎潤一郎の旧邸「石村亭」で行われた。
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◇柏原康夫

1939年兵庫県生まれ。滋賀大経済学部卒。63年入行。
取締役人事部長、常務取締役、代表取締役副頭取を経て、98年から現職。
兼職で京都商工会議所副会頭、京都府観光連盟会長、
京都市観光協会会長、京都モデルフォレスト協会理事長など。
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◇宮脇昭

1928年岡山県生まれ。ドイツ国立植生図研究所で
潜在自然植生理論を学ぶ。
アジア初の国際生態学会会長などを経て、
現在(財)地球環境戦略研究機関国際生態学センター長。
70年「植物と人間」で毎日出版文化賞、06年ブループラネット賞。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/23/20090523ddm010040103000c.html

花粉症:好塩基球細胞に原因 マウス実験で初確認

(2009年5月25日 毎日新聞社)

花粉症などのアレルギー症状は、
白血球の一種の「好塩基球」という細胞に起因していることを、
兵庫医大の中西憲司教授(免疫学)らがマウス実験で初確認。
この細胞の活動を抑えられれば、症状を断て、新たな治療法開発に。
米科学誌ネイチャー・イムノロジー(電子版)で発表。

原因物質(アレルゲン)が体内に入ると、「Th2」という免疫細胞が増え、
アレルギーの原因となる抗体が過剰に作られる。
中西教授らは、好塩基球の表面に、アレルゲンを感知するのに
必要な分子があることを確認。

免疫細胞がTh2に変化するには、「IL-4」が必要、
正常なマウスとIL-4を除いたマウスで違いを調べた。
好塩基球にアレルゲンを足し培養すると、
正常なマウスの免疫細胞は約20%がTh2になるが、
IL-4を除去したマウスでは3%しかならなかった。

実験から、好塩基球がアレルゲンの情報を免疫細胞に伝えるだけでなく、
IL-4を自ら作り、免疫細胞をTh2に変化させることが分かった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/25/100301/

ダイエット 納豆、寒天、リンゴ、バナナ…根拠なし

(2009年5月22日 毎日新聞社)

納豆。寒天。リンゴ。バナナ。ゆで卵。
手を替え、品を替え、登場する何々ダイエット。
バナナダイエットがブームとなり、一時店頭からバナナが消える騒ぎも。

何かを食べてやせるということは、ありえない。
昨年秋、テレビや雑誌などで、バナナダイエットが話題に。
うたい文句は、「朝、バナナを1-2本食べ、
コップ1杯の水を飲むだけでやせられる」
昼と夜は、好きなものを食べてよいという手軽さが受けた。

バナナでやせられる理由として、
(1)糖質や脂肪を分解・燃焼する酵素が豊富
(2)抗酸化作用の高いポリフェノールが多く、細胞の活性化と代謝を促す
(3)食欲を抑えるアミノ酸が含まれる
(4)便通をよくする食物繊維が豊富--など。

こうした理由は科学的に正しいのか?
バナナ1本(100グラムと仮定)は約90キロカロリーで、
小さめのおにぎり1個程度のカロリーに相当。
バナナ2本で満腹感を得て、従来の朝食に比べて、
摂取カロリーを減らせばやせられる可能性はある。

だが、バナナで朝の摂取カロリーを減らしても、昼と夜の食事で
摂取エネルギーを増やせば、やせることはない。
体重を減らすには、消費エネルギー以下に摂取エネルギーを抑えるしかない。

高橋久仁子・群馬大教授(栄養学)は、
「バナナを食べてやせたというのは、今まで食べていた朝食より
カロリーが減ったから。
バナナダイエットは、バナナを食べて、空腹を紛らすというだけ」

特定の食品を食べてやせられると思うのは幻想。
酵素の豊富なバナナを食べると、
一緒に食べた肉類などの脂肪を速やかに分解すると言われている。

長村洋一・鈴鹿医療科学大教授は、
「酵素は、胃や腸でほとんど分解され、
体内で脂肪の燃焼にかかわることはない」

ポリフェノールは、大豆や他の果物にも豊富だが、体重の減少と関係ない。
バナナに含まれる食物繊維は、ジャガイモやレタスと同程度で特に高くない。
「特定の機能性成分を誇大視するダイエットは要注意」と高橋教授。

「食欲を抑える効果のあるリジンやアルギニンなどのアミノ酸が豊富」
という言い方はどうか?
肉や魚には、バナナよりも多くのリジンが含まれる。
この説だと、肉や魚を食べても、食欲が抑制されることに。

「バナナに、わずかながらリジンなどのアミノ酸が含まれている。
そうしたアミノ酸が、食欲を抑制させることはない」と
味の素アミノサイエンス研究所の担当者。

雑誌の特集やネットなどでは、
「バナナを食べたら、やせた」という体験談が登場、
それを支持する専門家の発言も添えられている。
最近は、バナナと同じ言い方で、キウイのダイエット本まで出てきた。

長村教授は、「個人の体験談や一専門家の見解は、
科学的な確かさのレベルは非常に低い場合が多く、だまされないように」
と、市民の側にも冷静な目が必要。

中谷内一也・同志社大教授(心理学)は、
「健康情報が多すぎ、単純で分かりやすい情報に飛びつく側面がある」
「ダイエットは、簡単に成功するものではないことを知っておくことが大切」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/22/99742/

2009年6月4日木曜日

増える、うつ病 城南病院・森井章二院長に聞く

(2009年5月29日 毎日新聞社)

年間の自殺者が、08年まで11年連続で3万人超。
遺書などで原因・動機を特定できた2万3490人のうち、
「病気の悩み(うつ病)」が3割近くでトップ。
30歳代などの若者で増えている。
誰もがかかる可能性のあるうつ病の症状や治療法などについて、
医療法人青樹会・城南病院(徳島市)の森井章二院長に聞いた。

--うつ病とはどんな病気か?

森井院長 50年前は、抑うつ感情、不眠、性欲減退が三大症状。
最近は、多彩な症状を持つようになっている。
基本的な症状として、喜びや悲しみを感じない、感覚が鈍麻する、
悲観的な考えから抜け出せなくなる、こと。

--症状は?

森井院長 不眠は90%以上のケースで出る。
抑うつ感、無気力感、無能感、食欲不振、疲れやすい、
手足がしびれる、口が渇く。
肩がこったり、便秘を訴える人も。
もう一つ大切なのは、不安、焦燥、イライラ感。
多くは不安愁訴を持っており、これが自殺を誘発することがある。
一過性に認知症のような知能低下を示すことも。

--患者数は急増しているとか。

森井院長 非常に増えている。100万人、200万人とか言われ、
精神科だけでなく、内科や脳神経外科、婦人科など
正確な患者数はつかめない。
出現頻度は人口の10%弱。
患者数は女性が多いが、自殺は男性が多い。

--増えている理由は?

森井院長 三つぐらいある。
一つ目は、うつ病にかかりやすい高年齢者が増えていること。
二つ目は、環境ストレスの増加。
もう一つは、うつ病を起こしやすい薬剤の使用。

環境ストレスでは、個人や家族に関する出来事、職業に起因。
最も大きいのは近親者の死亡、とりわけ配偶者。
結婚や病気、事故、家庭の不和、更年期など。
引っ越しも契機に。
転勤、転居、火災や過労、家庭内の経済問題も大きなウエート。
職場では、異動や配置転換、昇進、左遷、退職、定年。
仕事の内容の変化や、病気による欠勤、再出勤などがきっかけに。

--診断基準は?

森井院長 病気の診断基準を定めたICD(国際疾病分類)がある。
定型症状は、(1)抑うつ気分、(2)興味と喜びの喪失、
(3)活力減退による疲れやすさ--の3点。
一般症状は、(1)集中力と注意力の減退、(2)自己評価と自信の低下、
(3)罪悪感と自己無価値感、(4)将来に対する悲観的見方、
(5)自傷あるいは自殺の観念・行為、(6)睡眠障害、(7)食欲不振--の7点。

定型症状が二つ、一般症状が二つ該当すれば、軽症うつ病と診断。
定型症状が二つ、一般症状が三つの場合、中等度うつ病。
定型症状が三つ、一般症状が四つあてはまる場合、重症うつ病。
軽症うつ病は、家庭的・社会的・職業的な行動がいくぶん困難な状態。
中等度はかなり困難、重症うつ病はほとんど不可能。

--うつ病は精神面以外の要因もあるか?

森井院長 身体的な病気が原因で発症することも。
がんやパーキンソン病、認知症、関節リウマチ、心臓と脳の血管疾患。
うつ病を起こしやすい可能性のある薬物も。
心臓の薬や、てんかんの抗けいれん剤など。
パーキンソン病の治療薬、ステロイド、経口避妊薬、アルコールも。

--治療方法と注意点は?

森井院長 治療法は、休養、薬物療法、精神療法がある。
休養が一番。
休むように言っても、「自分の仕事が滞ったら会社に迷惑をかける」と。
休養には、入院治療も含まれる。
早期の段階で的確に診断し、早く完全に治癒させる目的で入院してもらう。
「入院するほど悪いのか」、「二度と治らないのでは」とよく聞くが、
「よほどのアクシデントが起こらない限り治る」と説明。
よほどのアクシデントというのは、自殺。
病院で休んでいただくのが最もいい方法。

--ほかには?

森井院長 二つ目は、薬物療法などの身体療法。
薬としては、抗うつ剤。「SSRI」という神経系の薬が主流。
セロトニン、ノルアドレナリンなど神経伝達ホルモンの枯渇がうつ病の原因。
抗うつ薬は、こうした成分の働きでもって回復させる。

「SNRI」という薬も、抗うつ作用のほか、意欲を増してもらう目的。
以前から使用している三環系・四環系の薬なども使っている。
ただ副作用がある。
食欲不振や消化器系の症状、発汗とか出るケースも。
一番多いのは口の渇き。便秘と催眠作用が起きる場合も。
副作用を勘案しながら投与の分量や種類など細かく対応。
薬を早く切り上げると、再発の可能性が残る。
医師の指導により、かなり長期に服用する必要。

電気けいれん療法や、光線が少ないことが原因で
冬に出やすいうつ病については光を照射する治療法も。

--精神療法は?

森井院長 精神療法は、患者の聞き役になり、患者をよく理解。
患者を支え、注意して見ていく。
精神療法なくして治療は成り立たない。
当を得た人間的な接触がなくては、いけない。
認知療法は専門的治療で、物事のとらえ方のひずみや、
解釈のひずみを日記などを書いてもらい矯正していく。
手間がかかるが。臨床心理士によるカウンセリングを併用する場合も。

--周囲の人が注意すべき点は。

森井院長 自殺が一番恐ろしいので、家族に「よく注意をして下さい」と指導。
症状が良くなりかけた時に、自殺するケースが多い。
危険なので、睡眠剤も2週間以上は出さない。
薬の管理も家族にお願いする。
しった激励は禁物。
頑張らなくてもいいから、自分のペースでやろうというのがいい。
温泉とか酒会とか、趣味とかの気分転換を勧めるのもだめ。
早期発見が一番で、ちょっと沈みかけているとか、調子悪いのでは
と思ったら、早急に専門の医者に相談すること。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/29/100792/

逆風の中で:第4部・冬季競技の模索/3 スケルトンの奮闘

(毎日 5月21日)

企業の全面支援を受けた日本初のスケルトンチームが
誕生したのは、07年6月。
名称は「スケルトンクラブ」。
日本代表の最年長選手として02年ソルトレークシティー、
06年トリノの両五輪に出場し、来年のバンクーバー五輪に
3大会連続出場が懸かる越和宏(44)は、
チームの代表兼選手という立場。

越の個人スポンサーだったコンピューターソフト開発会社
「システックス」(本社・長野市)が、越を含む3選手の競技活動を
経済面でバックアップする。
越以外のメンバーは、田山真輔(26)と高橋弘篤(25)。
07年、会社サイドから「チーム化しても構わない」と聞かされた越が、
スポンサーが付いていないことや将来性などを考慮し、
若手選手をリストアップした。

「活動費の大半と給料が出るのだから、
若いメンバーにとっては革命的な事。
マイナー競技で企業から支援していただけるのは、
特別なケースだと選手にも話している」

企業の支援を、「特別なケース」と受け止める姿勢は、
越自身の経験がもたらすもの。
92年、ボブスレーから転向時、働きながら競技を続けた。
99年、スケルトンが五輪で実施されることが決まると、
フルタイムの仕事をしながら五輪を狙うのは無理だと判断し、
アルバイトなどで生計を立てることに。

ソルトレークシティー五輪翌年の03年、支援企業が無くなり、
「スポンサーを探している」と異例の記者会見を開いたことも。

企業から支援を受けられる立場になった今、
越はチームの活動を広く認めてもらおうと模索を続けている。
競技に専念するだけではなく、会社のホームページにブログを掲載し、
付き合いの場にも、できる限り顔を出す。
社員はもちろん、企業を通じて人や地域とつながりを持てないか、
という考え。

「バンクーバーでは、メダルを目指す」とした上で、越は言う。
「スポーツが、社会的に認知されるために必要なものは何か。
メダルがすべてではないと思う。
メダル以外の『何か』を明確にしないと、スポーツの支援が企業にとって
趣味に過ぎないものになり、景気に左右される形に。
私は、地域の人に『何か』を感じてもらう存在でありたい

スケルトン界の先駆者であり続ける越。
競技生活の土台は自分で築く、という徹底したプロ意識が、
道を切り開くパワーを生み続ける。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/05/21/20090521ddm035050006000c.html

バイオガソリン:好調! 新日本石油が1都6県で販売開始

(毎日 6月1日)

新日本石油は、関東1都6県のガソリンスタンド(計861カ所)で、
植物からつくるバイオエタノールを混ぜたバイオガソリンの販売を開始。

温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みで、
バイオガソリンを大規模に販売するのは、同社が初めて。
同社は来年度以降、全国の店舗に広げる。

バイオエタノールから合成した化合物「バイオETBE」を、
レギュラーガソリンに1~8%混ぜたもので、
走行性能や価格は従来のレギュラーと同じ。

「環七堀之内サービスステーション」(杉並区)では、
のぼり旗やポスターで販売開始をPRし、
ドライバーがセルフサービスで、「環境にやさしい燃料」を次々に給油。

石油業界では、今年度中にバイオガソリンを
20万キロリットル販売する計画。
同社は、4・7万キロリットルの販売を目指し、
CO2排出量を年間約3万トン減らす効果を見込む。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/06/01/20090601dde041040020000c.html

体力:50歳は死亡率の指標 心筋梗塞などリスク低下--筑波大チーム発表

(毎日 5月21日)

50歳のとき、速足(時速6・4キロ程度)での歩行に相当する
身体活動が無理なくできる体力があれば、
心筋梗塞などで死亡する危険性が低くなることを、
筑波大の研究チームが突き止めた。
20日発行の米医師会誌(JAMA)に発表。

同大の児玉暁研究員(内分泌代謝学)は、
「体力の有無が、将来の心筋梗塞などの発症や死亡の危険性を
予測する指標として使えるかもしれない」

研究チームは、日米欧で発表された心筋梗塞など冠動脈疾患の
発症のほか、運動や死亡のデータが含まれる論文計1万679本、
計10万2980人分のデータを解析。
論文での追跡期間は1~26年で、対象者の体力と、
期間中の冠動脈疾患による死亡、それ以外の死亡を調べた。

50歳の男性を、体力が普通の群(時速6・4~7・8キロ程度で歩行できる)、
低い群(普通群以下)、高い群(時速7・9キロ程度以上で歩行できる)の
三つに分けて比較、低い群の冠動脈疾患による死亡率は
普通群の1・4倍、高い群の1・47倍。
すべての死亡率でも、低い群は普通群の1・7倍、
高い群の1・56倍と高くなった。

普通群と高い群はほとんど差がなく、普通群程度の体力があることが、
冠動脈疾患や死亡の危険性を減らす可能性がある。
40歳、60歳で比較しても、体力のある方が死亡や
心筋梗塞などの危険性が低かった。
女性の場合は、男性の約8割の体力で同様の結果が出た。

曽根博仁・筑波大教授は、
「定期的な運動をすることで、寿命が延びるというデータはないものの、
体力の有無が死亡率に影響を与えることが明らかに」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/21/20090521ddm012040003000c.html

インフルエンザウイルス増殖酵素の構造解明 全型効く薬へ道

(2009年5月22日 毎日新聞社)

インフルエンザウイルスが、自分の遺伝子を増やすのに使う
酵素「RNAポリメラーゼ」の構造を、
横浜市立大と筑波大の研究チームが解明。

この構造に基づいて、ウイルス増殖を抑える
2種類の化学物質の候補を見つけた。
酵素の構造は、人や鳥のさまざまなウイルスに共通する。
ウイルスの変異に関係なく、効果のある薬剤開発に役立つ可能性がある。
21日付独科学誌「欧州分子生物学機構誌」電子版に発表。

研究チームは、酵素を構成する約2200個のアミノ酸のうち、
他と結合する部分を特定。
結合部分のアミノ酸だけを変異させると、ウイルスがほとんど
増殖できなくなることを実験で確認。

既存の化学物質480万種類から、どの物質が結合を妨げるか推定。
効果が見込める百数十種類を選び、ウイルスを育てる培地に
混ぜて試すと、2物質がウイルスの増殖を抑えた。

現在のインフルエンザ治療薬「タミフル」などは、
変異して効きにくくなったウイルスが出現。

永田恭介・筑波大教授(ウイルス学)は、
「この成果を応用すると、すべてのインフルエンザウイルスの型に効き、
変異しても効果を失いにくい薬になるのではないか」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/22/99739/

2009年6月3日水曜日

不要物質分解酵素に不可欠、4種のたんぱく質を発見 新抗がん剤開発に期待

(2009年5月29日 毎日新聞社)

体内で邪魔になった物質を分解する酵素「プロテアソーム」の形成に、
不可欠な4種のたんぱく質を、東京都臨床医学総合研究所、
東京大などがそれぞれ突き止め、米科学誌セルに発表。

がん細胞でプロテアソームが作られなくなると、
不要なたんぱく質がたまったり、分裂できなくなって死滅するため、
新たな抗がん剤開発に役立つとして注目。

東京都臨床医学総合研究所のチームは酵母の細胞、
東京大のチームはヒトの腎臓がんの細胞を使い実験し、
4種のたんぱく質を突き止めた。
酵母細胞でこれらの働きを止めると、プロテアソームが作られず、
不要物質が蓄積して細胞が死んだ。
ヒトの細胞では、細胞内のプロテアソームが減った。

プロテアソームの働きを止める抗がん剤の開発が進んでいるが、
不要物質の分解以外の役割を持つプロテアソームの働きまで
止めてしまい、副作用の恐れがあった。
今回の4種のたんぱく質は、不要物質の分解にだけ働く
プロテアソーム形成にかかわるため、副作用の心配が少ない。

村田茂穂・東京大教授(たんぱく質代謝学)は、
「がん細胞のように、無秩序に増殖を繰り返す細胞は、
プロテアソームを大量に作り出している。
プロテアソームが作られなければ、がん細胞は生存できなくなり、
治療効果が期待できる

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/29/100745/

「乳酸菌配合」でゴシゴシ 唾液分泌に口の体操

(2009年5月30日 毎日新聞社)

歯の健康維持にも、乳酸菌が大切な働きをすることが分かってきた。
ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌が、善玉菌を増やし、
腸の調子を改善するのと同じように、
口の中でも乳酸菌が虫歯や歯周病を予防するかもしれない。
6月4日は、虫歯予防の日。

◆細菌バランスを改善

口の中には、約700種類の細菌がいる。
虫歯や歯周病、口臭の原因となる悪玉菌もいれば、
虫歯菌を抑える善玉菌もいる。

腸内や口内の細菌のバランスを改善し、良い効果をもたらす微生物を
プロバイオティクスというが、実は歯の健康にも
プロバイオティクスが関係している可能性がある。

例えば、虫歯の原因となるストレプトコッカス・ミュータンス菌は、
ネバネバした不溶性グルカンを作り出し、その中で作られる酸が
歯を少しずつ溶かしていく。
口の中にいるLS1という善玉の乳酸菌は、
不溶性グルカンが作られるのを抑える。
注目は、善玉菌と悪玉菌のバランスを改善することで虫歯を予防する健康法。

◆微生物に代わる働き

乳酸菌(ラクトミン)を配合した歯磨き剤を使う方法。
鶴本明久・鶴見大学歯学部教授らは、
乳酸菌配合歯磨き剤の有効性を確かめる臨床試験を行った。

大人27人を2グループに分け、一方は生きた乳酸菌を配合した歯磨き剤、
もう一方は通常の歯磨き剤で1日2回2週間、磨いてもらった。
科学的な厳密さを期すため、両方のグループがそれぞれ逆の方法で磨く
クロスオーバー試験を実施。

歯垢(プラーク)の中にいる連鎖球菌属に占めるミュータンス菌の
比率(う蝕菌比率)を調べたところ、乳酸菌配合歯磨き剤を使った方が
ミュータンス菌が少ない。
試験開始前、ミュータンス菌比率の高かった人ほど、減少傾向が強かった。
一方、歯垢の全体量にはあまり変化はなかった。

鶴本教授は、「ミュータンス菌比率の減少は有意差はなかったが、
乳酸菌群でミュータンス菌比率の減少傾向が見られた。
虫歯を防ぐ上で、乳酸菌がプロバイオティクスのような働きをする
可能性を示唆するものだ」

乳酸菌は、もとは腸にいるもので、口の中に定着するものではない。
今後は、「乳酸菌と改善作用のメカニズムを詳しく研究していくことが必要」

◆基本は毎日の歯磨き

乳酸菌を取っただけでは虫歯予防にはならない。
基本は、毎日歯を磨くことと適切なフッ化物の応用。
鶴本教授は、「夜、寝る前にきっちりと磨くことが基本。
テレビを見ながらでもよいが、3~4分間、ブラシだけで歯全体を磨き、
フッ化物が配合された歯磨き剤で磨けば確実。
乳酸菌配合なら、なお期待できるかもしれない」

◆汚れ落とし酸を中和

唾液をよく出すことも、虫歯予防には大切。
口の中の汚れを洗い落とし、虫歯菌のつくった酸を中和する働き。
唾液が少ないと、口の中がネバネバすることも。

唾液が出るのは、食べ物をかんだときだけでない。
あごの下にある顎下腺や舌下腺は、副交感神経に支配され、
悩み事や不眠などストレスがあると、唾液の分泌が少なくなりやすい。

食事の雰囲気も大事で、「独り寂しく取る『孤食』は避けたい」
唾液をたくさん出すには、毎日の食事でよくかむことが重要。
歯の弱い高齢者の場合、軟らかいものを食べているとかむ回数が減り、
唾液分泌が少なくなりやすい。
高血圧薬などを長く服用していても、少なくなることがある。

◆顔の筋肉動かし刺激

高齢者に効果的なのが、口周辺のマッサージや口の体操。
茅ケ崎保健福祉事務所は、お口の体操を映像で解説したDVD
「湘南版お口の健口体操」(20分)を製作、とても好評。
唾液腺は、口や顔の筋肉を動かすと刺激され、
両手で口の周りをもみほぐしたり、なでたりする。
歌うことも口の体操になる。
発声練習の要領で、「あ」「い」「う」「え」「お」と声を出すのもよい。

口を開けて舌を上下左右に動かしたり、回したりするのも、唾液分泌に。
口の体操を、デイケアセンターなどで実践すると効果的。

口の体操を広めている同福祉事務所の北原稔・保健福祉課長は、
「お年寄りが口や顔の筋肉を動かすことは、唾液を出すだけでなく、
顔の表情が豊かになって物事に意欲的になる」
DVDの問い合わせは、「クリフォード」(電話045・662・5688)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/1/100853/

逆風の中で:第4部・冬季競技の模索/2 長野五輪後のスケート

(毎日 5月20日)

競輪の年間賞金ランクで現在首位に立つ武田豊樹は、
02年ソルトレークシティー五輪の
スピードスケート男子五百メートル代表だった。
ワールドカップ(W杯)では、3勝を挙げた実力者。
氷を離れた今、「現役時代から、スケートで食べていくのは無理。
競技をやめれば、会社にも残れないのが現実。
何でこんなに報われないのかと思った」と冷めた目で見る。

男子五百メートルで、日本は84年サラエボ五輪から
6大会連続でメダルを獲得、その「伝統」は06年トリノ五輪で途切れた。
かつて日本のスピードスケートの底流には、選手だけでなく、
指導者に対しても企業の手厚い支援があった。
その状況が揺らいでいる。

88年カルガリー五輪で銅メダルを獲得後、
現役を引退した黒岩彰さんは、所属先のコクドの社員として
母校である専大の監督を務め、
94年リレハンメル五輪で銅メダルを手にした堀井学らを育てた。

現在、日本電産サンキョーを率いる今村俊明さんも88年に引退後、
ミサワホームに籍を置きながら母校の日大を指導。
その中で育ったのが、98年長野五輪で金メダルを獲得した清水宏保。

堀井は専大、清水は日大で学生時代から
世界トップクラスの選手として活躍。
昨年、富士急の監督に就任した黒岩さんは、
指導者が、企業の支援を受けて大学の指導を行い、
若い世代からの底上げを図る構図が、
『強い日本』を支えていた」と振り返る。

長野五輪後には長引く不況の影響もあり、
ミサワホームが99年、コクドが03年に撤退。
「企業側に、大学の指導者を支援するまでの余裕がなくなったのは事実」
02年、堀井が所属した王子製紙のスケート部も廃部。

長野で頂点に立った清水は、三協精機(当時)を退社し、
NECを実質上のスポンサーとしてプロ的な競技活動をスタート。
ソルトレークシティー五輪は2位。
トリノ五輪は18位に終わったが、08年からは家電量販店のコジマと契約し、
来年のバンクーバー五輪を目指している。

日本を沸かせた長野五輪から11年。
競技を取り巻く環境は大きく変わり、多くの選手と指導者を抱える企業は、
富士急と日本電産サンキョーの2社。
日本スケート連盟の強化委員でもある今村さんは、
「活性化を図るためには、自分たちが結果を出すしかない」
2大会ぶりのメダル奪還に向け、
バンクーバーは企業スケート部にとって正念場の戦いとなる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/05/20/20090520ddm035050040000c.html

インタビュー・環境戦略を語る:セブン&アイ・HD、稲岡稔・常務執行役員

(毎日 5月25日)

セブン&アイ・ホールディングス(HD)は、
コンビニのセブン-イレブン・ジャパン、スーパーのイトーヨーカ堂、
百貨店の西武百貨店やそごう、ファミリーレストランのデニーズなどを
傘下に抱える国内最大の流通グループ。
消費者との接点が多く、事業規模も大きいだけに、
環境対策強化は不可欠。
セブン&アイHDの稲岡稔常務執行役員に取り組みを聞いた。

--CO2排出の現状は。

◆当社の07年度のCO2排出量は、約230万トン。
9割は、店内外の照明や空調など、店舗運営に伴う電力使用の排出。
会社ごとの内訳は、セブン-イレブンが41・5%、
イトーヨーカ堂が32・2%、そごうと西武百貨店で計14・1%、
デニーズが5・1%など。

--店舗ではどのような対策を取っているか。

◆1万2000店舗超が、「24時間・年中無休」で営業している
セブン-イレブンは電気使用が多く、特に重点を置いている。
07年、新店舗や改装店舗を対象に、光を反射するセラミック床材などを
導入し、蛍光灯の本数削減につなげ、1店舗当たりの電気使用量を
年約2750キロワット時削減。
照明と並んで電気使用量の多い冷凍・冷蔵ケースは、
陳列ケース別に温度を管理できる制御盤を独自開発し、
電気使用量を従来より15~20%削減。
最新の省エネ設備をふんだんに導入した環境配慮型の実験店舗を、
長野市に開いて効果を検証中で、順次広げる方針。

--イトーヨーカ堂の対策は?

◆店舗の大型化や店舗数の増加が環境負荷増大につながらないよう、
省エネ設備機器導入を進めている。
大型ショッピングセンターのアリオに、化石燃料の使用比率が低い
夜間電力を使って氷を作り、売り場の冷房に使うシステムを導入、
従来の冷房に比べ、CO2排出量を年5%削減。

--グループとしての取り組みは?

◆熱帯雨林の保全活動を展開している、国連条約に基づく政府間組織
「国際熱帯木材機関」に、今年度1億円を拠出。
CO2を吸収する熱帯雨林を違法伐採から守り、
当社の排出量の約半分に当たる120万トンのCO2排出量を抑制。
今年度は、主にインドネシアで活動する。
傘下各社や店舗ごとの地道なCO2削減と合わせ、
世界規模でのCO2削減にも積極的に参加し、責任を果たす。
==============
◇いなおか・みのる

東京大法卒。毎日新聞記者を経て、84年イトーヨーカ堂入社。
01年常務取締役総務本部長。06年、セブン&アイHDの常務執行役員。
岡山県出身。63歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/05/25/20090525ddm008020021000c.html

5年間で若手研究者、大学生1.5-3万人海外派遣

(サイエンスポータル 2009年5月29日)

文部科学省は、今後5年間で1万5,000-3万人の若手研究者や
大学院生などを海外へ武者修行に送り出すため、
今年度補正予算で300億円を計上、
日本学術振興会に新たに設ける基金に積み上げる。
幅広い視野とネットワークを構築することで、
競争力のある若手を養成するのが目的。

若手研究者海外派遣事業(仮称)は、2つの事業から構成され、
若手研究者や大学院生・大学生を海外に機動的、集中的に派遣し、
海外での研鑽や研究の機会を拡大するとともに、
日本の大学や研究機関と海外の研究機関との協力関係を
維持・強化することで、競争力強化の源泉となる人材を育成。

優秀若手研究者海外派遣事業(個人支援型)では、
助教など常勤研究者や日本学術振興会の特別研究員などを
3カ月以上派遣。
今後5年間で、4,000人程度の若手研究者を海外に送り出す。

若手研究者等機関間国際交流支援事業(組織支援型)では、
将来研究者を志す大学生や、大学院生など若手研究者を
海外に派遣する大学などを支援。
派遣期間は3カ月-1年間で、必要な経費を基金からの補助金として
大学などに配分する。

近年、大学間の国際交流協定などの取り組みによって、
海外に派遣される研究者数は増えている。
派遣先はアジアが多く、欧米へは横ばいあるいは減少傾向。
ポスドクに至っては、国内のポストが増えたため、かなり減少。

中国や韓国などから欧米へ留学する研究者数は格段に増え、
優秀な若手研究者が次々と輩出。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0905/0905291.html

2009年6月2日火曜日

岩手県立地域診療センター無床化 医療体制、地域に丸投げ

(2009年5月31日 毎日新聞社)

県立地域診療センターの病床休止(無床化)問題で、
達増拓也知事も出席する地域住民対象の説明会が、
無床化した全5カ所で終了。

知事は、地域医療について「一番身近な市町村が担い、
手が届かない部分は県、国が行う」といった将来像を描く一方、
「2次医療圏ごとに設ける懇談会で話し合ってほしい」と
具体像づくりは地域に丸投げ。
懇談会でも、県の目指す姿や支援策は見えず、
市町村などの反発を招くばかり。
岩手の地域医療体制の将来は、深い霧がかかったまま、先がみえない。

「医師不足など状況が厳しいため、今後の在り方は考えられない」
奥州市であった胆江地区の懇談会で、田村均次局長は言い放った。
地域医療体制の再構築を、地域に丸投げした瞬間だった。

懇談会は、今後の地域医療体制をどのように構築するか、
市町村、医療機関、住民らと話し合う場。
9保健医療圏単位で、複数回話し合いを持つ。
先行して開かれた説明会で、具体性を持たなかった
達増知事の言葉を補完すると思われた。

知事や県医療局は、説明会と懇談会で、県は高度医療を含む
救急体制を守り、地域医療は地域が構築することを求めた。
地域に用意された支援策は、無床化されたセンターの民間活用に限定。
賃料を初年度は半額に、翌年度以降は4分の1に引き下げ、
県保健福祉部も介護保険料を補助。
無床化センターがない4地域には、支援メニューはない。

岩手の地域医療は、県の医療機関を中心に成り立ってきた。
財政力の弱い市町村単独で担うことは難しい現状を無視したと言え、
懇談会では大きな反発を招いた。

花巻市で開かれた中部圏域地域医療懇談会では、
本田敏秋・遠野市長が県担当者をしかりつけた。
「集中、選択する中で、どう代替案を示すのか」と迫る一幕。
奥州市医師会の石川健会長は、「医療局の姿勢が見えない。
連携したいが、取っかかりがない」とあきれさせた。

住民の健康と福祉の確保に、遅滞は許されない。
花泉と大迫の地域診療センターが19病床それぞれ無床化された
一関、花巻両市は、民間医療機関や老人保健施設などの公募、
空き病床の活用を探り始めた。

医療機関と介護・福祉施設の連携に課題は少なくない。
県内の特別養護老人ホームの入所待機者は、08年3月末現在5422人。
患者の受け入れを進めるのは容易でない。

医療機関と福祉施設の調整役を務める
県地域包括・在宅介護支援センター協議会の吉田均会長は、
「ニーズを再確認して、地元医師やケアマネジャー、市町村担当者ら
現場の人々が話し合う場」の設置を提案。

「国や県は、療養病床の老保施設への転換や在宅ケアを進めながら、
手当てがなく矛盾している」と、改めて本末転倒ぶりを指摘。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/1/100918/

逆風の中で:第4部・冬季競技の模索/1 揺れるIH界に参入

(毎日 5月19日)

名門・西武が撤退し、土台が揺らぐアイスホッケーのアジアリーグに、
今秋から参戦が認められたチームがある。
昨秋設立されたばかりの東北フリーブレイズ(FB)。

実質上の親会社は、東北地方を中心にスポーツ用品店などを
展開する「ゼビオ」(本社・郡山市)。
球団社長とゼネラルマネジャーを兼ねる荒城啓介監督(34)は、
「きっかけは、『出るくい制度』だったんです」
出るくいを「打つ」のではなく、「抜き上げる」ことを狙った
同社独自の人事制度。
社内試験をクリアすれば、パートや契約社員も店長になれる。

荒城監督は、日光アイスバックスで選手兼球団社長も務めたが、
経営難もあって04年に社長辞任。
知人の勧めで、ゼビオに入社。
会社からは、「子どもたちにアイスホッケーを教えないか」と誘われ、
昨年6月、自らチーム設立を提案。
「働くうちに、『トップチームを作ることで、地域社会に何かできないか』
と思ったが、本当に採用されるとは」

ゼビオは昨年7月、多様な競技の経験がある社員を中心に、
東北各地でスポーツ指導を行う子会社を設立。
その一環で、チームを運営する「東北アイスホッケークラブ株式会社」
が発足、荒城さんが社長に抜てき。
運営の柱の一つには、社会貢献活動を据えた。

従来の企業スポーツの存在意義といえば、
「社員の一体感の醸成」や「広告宣伝」。
荒城監督自身も日光の前身、古河電工でプレーしたが、
入社2年目で休部となり、「『一体感』や『広告宣伝』だけで、
スポーツが生き残るのは難しいと感じた」

リンクの使用料や試合の移動経費。
アイスホッケーには多くの費用がかかる。
FBを設立後、西武の廃部が明らかになったが、
「チームを持つ考え方が異なる分、むしろ動揺はなかった」

スポーツの底辺拡大が、スポーツ用品販売の需要掘り起こしにつながる、
という企業の「計算」もうかがえる。
従来とは異なる社会との接点を重視したチーム運営。
「社員として店舗で働いてもらうし、社会に出て技術指導する機会も多い。
負担は大きいが、それには耐えてもらいたい」
郡山市とアイスホッケーが盛んな八戸市を拠点に、
東北全域でホームゲームを実施する計画を立てている。

フリーブレイズの名称には、氷上を「自由」に「刃(ブレイド)」で切り開く、
という意味がある。
みちのくの地で始まった新たな挑戦。
閉塞したスポーツ界を切り開けるか。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/05/19/20090519ddm035050091000c.html

新しい波/302 toto好調の波紋/1

(毎日 5月16日)

スポーツ振興くじ(toto)の収益配分を検討する
「スポーツ振興事業助成審査委員会」
委員の一人である三屋裕子さん(バレーボール元五輪メダリスト)は、
衝撃を隠さなかった。
「一時はどうなるかと心配しましたが、驚がくの一言に値します」

昨年度、totoの売上額は過去最高の897億円(前年度比260億円増)。
06年度末、累積赤字が264億円に達し、政府が廃止も検討したほど。
06年9月にスタートした、最高当選金額6億円の「BIG」が大ヒット。
昨年度は急激に売り上げを伸ばし、
09年度にスポーツ界へ助成できる額は、過去最少だった
2年前の150倍近い116億円(見込み額)。

収益金は、半分を当選払戻金にあて、経費や借入金返済を差し引いた
3分の1を国庫へ納付。
残る3分の2を、競技団体と地方公共団体等に配分。
売り上げ急増に助成申請が追いつかず、
内定したのは1546件の61億円分のみ。
50億円余りが宙に浮いた。

totoを運営する日本スポーツ振興センターの
石川良二・スポーツ振興事業部長は、
「収益の変動にかかわらず、毎年安定した助成を実現するには、
一定額の留保(繰り越し)は必要」
販売不振を理由に、クラブなどへの助成を途中で打ち切った苦い過去もあり、
40億円を次年度以降に繰り越す方針。

委員の間には、「40億円残すというのは、
それだけ要望が集まらないということ。
助成する活動内容の枠組みを、もっと広く規定してもいいのでは」
同センターでは、5月下旬から地方公共団体などに向けて
10億円規模の事業を追加募集する。

01年度に始まったtotoは、一時期の売り上げ不振や存続の危機を
とりあえずは脱した。
スポーツ振興をめぐるカネの使われ方が、改めて問われている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20090516ddm035050156000c.html

日本、長寿世界一を維持 WHOの世界保健統計

(2009年5月22日 共同通信社)

世界保健機関(WHO)は、2009年版「世界保健統計」を発表、
07年の平均寿命が世界で1番長いのは日本の83歳、
前年までに続いて首位の座を維持。

男女別では、日本の女性の平均寿命が86歳で世界一。
男性では、イタリア中部にある内陸国サンマリノの81歳が世界一、
日本はスウェーデンなど、80歳のアイスランドに続き3位の79歳。

世界全体の平均寿命は71歳で、最も平均寿命が短かったのは
西アフリカ・シエラレオネの41歳。
長寿国として、スイスやイタリア、オーストラリアなどが82歳。

世界全体で05年の妊産婦の死亡率は10万人当たり約400人で、
年間約53万6000人が妊娠や出産に絡んで死亡。
国連のミレニアム開発目標では、妊産婦の死亡率を15年までに
1990年の水準の4分の1まで削減するとしているが、あまり改善がない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/22/99797/

2009年6月1日月曜日

自立目指し合同販売会 県南の授産施設団体

(岩手日報 5月17日)

県南部の障害者授産施設でつくる授産事業県南ネットワーク
「あべじゃネット」(代表・久保田博ワークセンターわかくさ施設長)は、
奥州市のいわて生協コープアテルイで、
各施設が作った食品などの定期販売会を始めた。

多施設合同の定期販売は県内初、全国的にも珍しい。
障害者の経済的自立と施設経営強化につながるモデルとして注目。

定期販売会「あべじゃネットフェア」は、毎月第三土、日曜に、
同店舗一階催事場(約36平方メートル)で開く。
奥州、北上、花巻、一関、平泉の5市町から14施設が参加。
地場食材を使ったキムチ、納豆、コーヒーや手芸品などを販売。

奥州市の主婦安藤てい子さん(66)は、「おいしく安全だから買っている。
(複数施設の品が)一カ所で買えるのは便利」

開店式典では、同ネットワーク事務局の
県南広域振興局・福田博明保健福祉環境部長が、
「施設利用者の生きがいとしてだけでなく、自立の一助になる」

奥州市のワークセンターわかくさ、北上市の和賀の園利用者らが
太鼓と踊りを披露。

障害者施設と利用者にとって、経済的自立が一番の課題。
販売会は、定期的に消費者の声に接することで、
品質や商品開発力の向上につなげる狙い。
共同出店により、各施設の人や経費の負担も軽減される。

久保田代表は、「ものが売れれば、さらに良い品を作る体力になる。
需要に合う品を作って売る好循環ができれば、
施設利用者の自立につながる」とし、参加施設の拡大も見込む。
同ネットワークは、売れる品物作りと販路開拓を目指し、2007年設立。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090517_13

脳の「長期記憶」仕組み解明 PTSD治療に期待

(2009年5月19日 毎日新聞社)

脳に記憶が長期間保存される仕組みを、
三菱化学生命科学研究所などがラットの細胞実験で解明。

恐怖や精神的ショックの記憶に悩まされる
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療に結びつく可能性。

記憶は、数分程度保持される短期記憶と、
数時間以上保たれる長期記憶に分けられる。
強い刺激や繰り返しの刺激を受けると、脳の神経細胞の
接合部(シナプス)が変形し、長期記憶を保存。

1個の神経細胞に数万個以上あるシナプスのうち、
なぜ特定のシナプスだけが変形するかは謎。

井ノ口馨・同研究所グループリーダーらは、
ラットの神経細胞内で記憶の固定化に関係するたんぱく質の動きを可視化。
長期記憶に相当する刺激を神経細胞に与えると、
細胞核からこのたんぱく質があらゆるシナプスに運ばれた。
刺激を受けたシナプスだけが、
このたんぱく質を取り込み変形することが分かった。

15日発行の米科学誌サイエンスに発表。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/5/19/98772/

ボシュロム・ジャパンの広瀬会長「国内売上高、5年以内に倍増」

(日経 5月18日)

日本は、コンタクトレンズ大国。
他の先進国に比べ、使い捨て製品を使う人が多く、
市場規模は年間1600億円前後。
世界で初めてソフトコンタクトレンズを実用化した
米ボシュロムの日本法人、ボシュロム・ジャパンは現在シェア約1割。
1990年代、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)日本法人で
コンタクトレンズ事業の拡大に尽力した経験のある広瀬光雄氏を、
会長に据え、巻き返しを急ぐ。
今後のコンタクトレンズ市場の見通しとボシュロム・ジャパンの戦略を聞いた。

——日本のコンタクトレンズ市場をどうみているか?

「先進国の中、日本は視力矯正する人が圧倒的に多い。
米ボシュロムは、1970年代にソフトコンタクトレンズを開発、
日本でも80年代以降の同社製品の使用者は順調に伸びてきた」

米J&Jが、90年代に使い捨て製品を投入して市場は一変、
現在は使い捨て製品の使用者が大半。
これは、他の先進国とは異なる。
使い捨ては、製品の消毒・洗浄の手間が省け、レンズを清潔に保てる、
と眼科医がみなし、自分の患者に薦める。
他社に先行し、1日使い捨て製品を早期に発売したJ&Jが
シェア約5割を占め、ボシュロムは約1割に

——今後どのように事業の拡大を目指すか?

「コンタクトレンズ事業の拡大を急ぐ。
ボシュロムを含め、シェア1割前後の2位メーカーが
複数しのぎを削っている状況。
今後1−2年の間に、新製品の投入などで他社と差をつけ、
優位性ある2位に浮上したい。新製品の投入も強化する」

「1日使い捨て製品は、洗浄・消毒が不要なため清潔だとして薦める
医師が多いのは事実。
割高なため、経済的な理由から2週間用を選ぶ人も最近は増える傾向。
ユーザーの声を聞きながら、製品を順次増やしていきたい」

——各社は、酸素透過性が高い新素材、シリコーンハイドロゲルを使う
製品を拡充している。

「2週間交換型など、製品を投入している。
シリコーンハイドロゲルにもデメリットはある。
従来の素材よりも硬く、つけ心地が合わないという使用者も。
方向性としては、品ぞろえを増やす見通しだが、
他の素材の製品も怠らないようにしたい」

——販売面のてこ入れは?

「ボシュロムは、あたかもコンタクトレンズを一般消費財のようにみなし、
営業活動してきた。
コンタクトレンズ販売店向けの営業活動に重きを置き、
眼科医向けの情報提供を怠ってきた一面も。
“メダリスト”ブランドは、一般消費者に広く浸透しているが、
価格競争に巻き込まれるることも」

今後は、基本に戻る。
眼科医との関係を密にして、レンズに関する情報提供を強化したい。
日本では手掛けていない眼科手術用機器も、3年以内に投入。
白内障で濁った水晶体を置き換える眼内レンズや、
手術時に使う機器などを順次日本にも投入。
日本での売上高を、今後5年以内に2倍に拡大」

——98年、J&J日本法人、ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカルを
退社して以来、11年ぶりにコンタクトレンズ業界に戻ってきた。

「市場環境はあまり変わっていない。
米ボシュロムは、経営不振に陥った2007年に米投資ファンドへの
身売りを決め、非上場に。
役員も大幅に入れ替わり、J&J時代にともに働いた
ジェラルド・オストロブ氏が、米ボシュロムの会長最高経営責任者(CEO)に。
彼からボシュロム・ジャパンに誘いを受け、当社会長への就任を決めた」

「J&J退社以来、私はゴルフ場再生会社パシフィックゴルフマネージメントの
会長を務め、事業再生を手掛けてきた。
今回の会長就任も、企業再生の観点から取り組める点は大きい。
かつての仲間とともに、再度新しいことに取り組むことが今から楽しみ」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090514_2.html

アジアの有能な研究者を呼び寄せるには

(サイエンスポータル 2009年5月22日)

文部科学省科学技術政策研究所が、第3期科学技術基本計画の
フォローアップにかかわる調査研究結果を公表。
「内外研究者へのインタビュー調査報告」は、
国内の研究者に加え、欧米55人、アジア23人の海外研究者に対する
インタビュー調査結果が基に。

アジアと米欧の調査対象者を見ると、日本とのかかわりが深い
米欧の研究者はあまり多くない。
トップクラスの研究者が多いからやむを得ないだろう。
アジアの調査対象者は、23人中18人が日本に何度も来ているか、
長期間共同研究をしたという人たち。
日本の研究活動、研究環境に対する見方は、
欧米の研究者たちより現実を踏まえたものに。

日本に対する厳しい指摘は、研究機関・研究者の内向き志向。
「最近の若手研究者は、内向的に。
海外で勉強や研究をするチャンスをつかもうとしない」、
「博士号取得後も、日本で働けるから外に行かない。
外国に1年でもいいから出るべき」、
「日本全体、日本の研究環境が安定し過ぎているのでは。
日本の若手研究者は、その安定した環境に安住。
安定し過ぎた環境は、創造力を制限してしまう」、
「学問的に高レベルを目指す学生が減少している」、

日本に何度も来ているか、共同研究に参加しているということは、
それぞれの国でも優秀な研究者たちばかり。
それにしても手厳しい評価ではないだろうか。

組織、制度、仕組みなどについても具体的な指摘、批判が続く。
「研究者同士の交流も少なく、それぞれの研究機関の閉じた箱の中で、
独立した研究活動を行う傾向」、
「研究機関は、ヒエラルキー(縦の関係)がとても強いため、
各研究者に能力があっても成功しづらい体質」、
「Ph.Dの質が低すぎる。理由として、研究者と教授双方に真剣さが欠如。
米国では、優秀な学生には学費免除、給与支給など優遇措置が明確で、
教授側にも人材を預かる責任感が高く、
学生と教授に緊張感のある関係が成立」

最近、日本でも指導的な立場の人々から出始めている指摘も。
「中国は以前、研究の失敗は許さない雰囲気であったが、
近年では失敗を許容する風潮に。
イノベーティブな研究もできる。
日本も、もう少し寛容性を皆が持つ国になるべき

アジアをはじめとする外国からの優秀な学生、若手研究者を
呼び込むことが、日本の科学技術力の向上に不可欠。
科学技術外交でも、アジアをはじめとする途上国との共同研究の
重要性が叫ばれ、実際に多くのプロジェクトが動き出している。
「研究環境や女性を取り巻く労働環境の悪さ、
学生の質の低下などから、日本の大学で研究することは難しい」、
「日本は、シンガポール人にとって文化的にはあこがれの国。
しかし、科学技術の研究の場には選ばない。
英語での研究環境がないため」

こんなことを言われないように、
足下の研究環境整備を急がないといけない。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0905/0905221.html