2009年6月6日土曜日

検証 橋下改革(10)大阪府教育委員 陰山英男さんに聞く

(読売 5月21日)

◆かげやま・ひでお

立命館大教授、立命館小副校長。
反復学習を重視する基礎学力向上策や「百ます計算」の実践。
中央教育審議会の教育課程部会委員も務める。51歳。

〈改革請負人〉の一人が、橋下改革を語る。
「今、大阪で学力が問われているのは、全国学力テストの順位が低い。
学力の本質は数値に表れないということは、教師なら誰でも知っている。
数値が低いことが問題である以上、点を上げる対策が必要」

兵庫県の公立小学校の教諭時代から実践してきた
「百ます計算」や漢字の反復学習を軸に、学力向上のてこ入れを図る。
その言動は、〈点数主義〉と批判を浴びることもあるが、
本人は意に介さない。
「体験学習が大切なのは当然。道徳教育だって必要。
でも、テストの点数が悪い学校が、そんなことばかり言うと、
保護者の信頼を損なう」

建前を嫌う。
教育論を振りかざす前に、教師がやるべきことがあると力説。
受験学力がものを言う社会があり、テストの点を気にする保護者がいる
現実を直視し、そこへの対処を考える。
その姿勢は、「府民感覚」を強調する橋下徹・大阪府知事と重なる。

昨年10月、府教育委員に就任するまで、
立命館小学校の副校長として、橋下知事の教育改革を外から見てきた。
「教育の中身やメソッド(手法)について、知事は素人。
教育界に風穴を開けたのはいいが、どんな風を送ったらいいか
分かっていないように見えた」

就任後、まず変えようとしたのは、府教委と学校の意識。
特に問題だと感じたのは、平等性や人権教育と学力対策とを、
対立的にとらえる風潮。
社会的弱者の自立には、学力向上が重要だという自負。
「教育学が支配する閉鎖社会で、外に目が向いていない。
呪縛さえ解ければ、陰山って俺たちの思っていたことを
やっているだけじゃん、ってなるはず」

学校に対し、〈ショック療法〉を試みたのは昨年11月。
校長研修で、「それでもプロか」と集まった約900人を面罵した。
反発も買ったが、「別の手法で見返そうと頑張って、
結果を出すならそれでもいい」と涼しい顔。
過激な言動で状況を動かす手法も、橋下知事と瓜二つ。

不登校や高校中退、校内暴力など、
大阪の学校が抱える課題の多さも承知。
「学力向上は、ゴールラインに見えるかもしれないが、
むしろスタートライン」
「早寝、早起き、朝ごはん」という、
生活習慣の改善に取り組んだ教師の草分け。
テレビや携帯電話、インターネットで氾濫する情報に取り囲まれ、
いじめや犯罪に巻き込まれる子どもたちを憂う。

「教育課題の解決には、子どもの危機を一番理解している教師が、
保護者や社会に対して声を上げないといけない。
今は、その教師が信頼されていない。
実績を上げ、信頼を取り戻すことから始めなければならない」

身を乗り出して語る姿に、熱血教師の素顔がのぞいた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090521-OYT8T00375.htm

0 件のコメント: