2009年6月5日金曜日

検証 橋下改革(9)ブレーン3人 教委刺激

(読売 5月20日)

橋下改革で、教育委員会も大きく変わろうとしている。

「『教育は時間をかけないと成果が出ない』という人間を、信用しない」
大阪府庁新別館で、公立学校の新任校長を対象にした研修会。
府教育委員の陰山英男氏は、プロジェクターに
「学力は1年で伸びる」とする資料を映し出し、
「要はテストの点を上げること」と成果を求めた。

研修会で講師を務めたのは、同じく府教育委員の小河勝氏と、
府教委特別顧問の藤原和博氏。
いずれも橋下徹府知事が招いたブレーン。

3人は、教育委員会と学校の関係を変えた。
校長らを集めて叱咤激励するだけでなく、学校にも頻繁に足を運ぶ。
3月末まで、市町村教委や学校で行った講演会や研修は、
陰山氏が13回、小河氏が10回。藤原氏は55回。
従来の教育委員の学校視察は年2~3回だったといい、
訪問回数の増加は学校に直接働きかけようという姿勢の表れ。

教育委員会と知事の関係も変化した。
「教育委員が、(府教委)事務局をコントロールしてほしい」
昨年10月、陰山、小河両氏を教育委員に任命するに当たり、
橋下知事は2人を招いた理由を、そう話した。

従来、独立した行政委員会である府教委の政策一つ一つに、
知事が口を挟むことは少なかった。
橋下知事は、自ら人選した人材を教育委員に任用することで、
影響力を行使しようとした。

「陰山先生に進捗状況を報告してください」、
「藤原先生案で推し進めるべきです」
府教委幹部には、こうした橋下知事からのメールが次々と舞い込む。

「教育委員と連絡を取る回数が劇的に増えた」と、
府教委教育総務企画課の藤井睦子課長。
月1回の定例会議前、すでに固まった議案を説明することが多かったが、
現在は立案段階からメールや携帯電話で進捗状況を報告。
綿密に意思疎通を図るため、教育委員との連絡を担当する職員は、
1人から7人に増やした。

明確な達成目標を設定するのも〈橋下流〉。
「2010年度、全国学力テストで全国平均を目指す」、
「2009年度中、50%以上の府立高校で土曜の補習・講習を行う」
5月上旬の府幹部会議には、こうした数値目標を説明する
中西正人・府教育長の姿が。
橋下知事は、「わかりやすかったです」と満足。

府教委の変化に、反発を隠さない市町村もある。
「意見を言うだけで、改革反対のレッテルを張られる」と嘆くのは、
山元行博・豊中市教育長。
田口省一・吹田市教育長も、「点数万能主義に陥りかねない」と危惧。

外部人材の登用や数値目標の設定は、
「民間感覚」、「府民感覚」を強調する橋下知事の常套手段。
それを教育分野に持ち込んだ時、どのような変化と成果が表れるのか?
検証が必要なのは、むしろこれから。

◆教育委員会

首長から独立した教育に関する行政委員会で、
都道府県と市区町村に設置。
委員は原則5人で、首長が議会の同意を得て任命。
委員らで構成する会議は、行政職員や指導主事らで組織する
教委事務局を統括する意思決定機関。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090520-OYT8T00248.htm

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