2008年10月11日土曜日

つながる生命(上)里山 人の手で豊かに

(読売 10月7日)

さまざまな生命がつながり合う自然の営み。
その保全を目指す生物多様性条約の第10回締約国会議(COP10)が、
2010年10月に名古屋市で開かれる。
会議へ向け、身近な自然と人々の暮らしを見つめてみたい。

琵琶湖西岸の滋賀県高島市。
湖畔の針江地区に住む主婦、前田正子さん(65)が
足元の池にナスの切れ端を放り込んだ。
魚影が動く。待ちかまえていたのは6匹のコイだった。
「カレーを作った鍋なら、2日沈めればきれいさっぱり」。
前田さんは、「わき水は夏は冷たく、冬は温かい」と誇らしげ。

170世帯中107世帯に、「川端」と呼ばれる昔ながらの水場が残り、
安曇川から引き込んだ水路が、川端をめぐり網の目のように流れる。
野菜を洗ったり、料理に使ったり。
川端の井戸でくみ出す地下水と水路の水を、住民は用途に応じて使い分ける。

地下水の水源は、美しいブナ林と棚田が残る比良山系。
川端のわき水を集め、水路は琵琶湖に注ぐ針江大川へ。
人里を貫く川なのに、絶滅危惧種のウナギに似た魚「スナヤツメ」など
28種の魚が生息。

取材に訪れた9月中旬、水面には清流に咲く「バイカモ」の白い花が揺れていた。
兵庫県川西市。
炭焼き名人の今西勝さん(70)が管理する標高300メートルの山肌に、
美しいモザイク模様が広がっていた。

伐採は、幹の直径が約10センチに成長する8~10年目以降。
根元から1~2メートル上をチェーンソーで切るため、切り株だけは太くなる。
そこから出た新芽は、深く、広く張り出した根が吸い上げる
栄養を一身に受け、力強く育つ。

兵庫県立大の服部保教授は、異なる成長度のクヌギ林が混在する
今西さんの森を、「日本一の里山」と呼ぶ。
クヌギが適度に伐採された森の植物の種類は、放置された森の2・5倍。
「クヌギの成長に応じ、異なる植物相が現れ、生き物を呼び寄せる。
人の管理があってこそ、多様な生態系がある」

針江の人たちは、魚の遡上が妨げられないよう、年4回、水路の水草を刈る。
琵琶湖のヨシ刈りも毎冬の恒例行事。
地元で米を作る石津文雄さん(60)は、1回40トンとれる水草と、
もみ殻や米ぬかを混ぜ、有機肥料として田にまく。
水を浄化し、水生生物を育むヨシの刈り取りは、その新芽の成長を促す。

4年前、針江の四季を映したNHKのドキュメンタリーが
国際コンクールを総なめにし、20か国で放映。
最近は韓国、豪州などからも見学者が訪れる。

里山は、人と自然が共生するモデル――。
日本政府は「SATOYAMA」を世界に発信する計画だ。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20081009-OYT8T00346.htm

米で10万人の子ども調査 健康と環境の関連解明へ

(共同通信社 2008年10月6日)

米国立衛生研究所(NIH)は、生活環境や遺伝が、
自閉症や肥満など近年増えている子どもの健康上の問題と
どう関連しているかを解明するため、
10万人を出生前から21歳まで追跡する「全米子ども調査」
来年から始めると発表。

研究対象はほかに学習障害、糖尿病、ぜんそく、出生異常などで、
総費用は32億ドル(約3370億円)に上る。

大学や病院、政府機関など全米約40カ所の拠点施設で、
妊娠中や妊娠予定の参加希望女性を募り、
生まれた子どもの健康診断データや遺伝子のほか、
住居内のごみや飲料水といった環境試料も収集、発症した
病気などとの関連を解析する。

2000年に成立した「子ども健康法」に基づく調査で、
これまで実施方法や個人情報保護などについて検討。
来年1月に、まず2施設で参加者の募集を始める。

NIHの担当者は、「子どもの各発達段階で、
環境などがどんな影響を与えているかについて重要な情報が得られる。
大人の病気の予防にも役立つだろう」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=80870

酵素がHIV増殖弱める 京大、新薬開発に期待

(共同通信社 2008年10月6日)

人の細胞にあって、エイズウイルス(HIV)の増殖をじゃまする
「APOBEC」というタンパク質が、特定の酵素の働きで
より強い防御力を得ることを、京都大の高折晃史講師らの研究チームが
突き止め、米科学誌の電子版に発表。

酵素は「Aキナーゼ」と呼ばれ、
HIV感染した細胞に加えると増殖の勢いが弱まった。

HIV治療では、既存の薬が効かない薬剤耐性ウイルスの拡大が世界的な脅威。
高折講師は、「新たな治療薬の手掛かりにしたい」

APOBECは、HIVの遺伝子を変異させて増殖をじゃまする働きを持つ。
ただ通常は、HIVがつくるタンパク質に逆に分解され、
十分な防御力が発揮できないでいる。

人の細胞を使った実験で、Aキナーゼの働きでAPOBECが
分解されにくい性質に変わることを発見。
HIV増殖の勢いを弱める効果を確かめた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=80864

ノーベル平和賞にアハティサーリ前フィンランド大統領

(読売 10月11日)

ノルウェーのノーベル賞委員会は、2008年のノーベル平和賞を
マルッティ・アハティサーリ前フィンランド大統領(71)に贈ると発表。

同委員会は授賞理由で、「30年以上にわたり、複数の大陸で
国際紛争の解決に貢献した」と指摘、国連特使や民間人として、
紛争調停に尽力した功績をたたえた。フィンランド人の受賞は初めて。

アハティサーリ氏は、旧フィンランド領ビイプリ(現ロシア領)出身。
オウル大を卒業後、高校教師を経て外務省入りし、
タンザニア赴任の経験から、国連ナミビア弁務官を務め、
ナミビアの独立に力を尽くした。

1994~2000年、母国で大統領を務めた後、
英領北アイルランド紛争の武器査察、インドネシアのアチェ紛争、
コソボ紛争の調停などに携わった。

同委員会は、同氏が関与した紛争の中でも、コソボ問題を
「極めて困難な状況だった」と認定し、国連事務総長特使としての努力を称賛。

同委員会は、同氏が、紛争解決に努める民間組織
「クライシス・マネジメント・イニシアチブ(CMI)」を発足、
昨年、イラクで対立関係にあるイスラム教スンニ、シーア両派の会合を
実施するなど、民間の立場から紛争調停に努めた点も評価。

アハティサーリ氏は授賞発表後、ノルウェーのテレビに対し、
受賞の喜びを語ったうえで、数々の紛争調停の中で
「時間がかかった分、ナミビアが最も重要だった」と振り返った。

賞金は1000万スウェーデン・クローナ(約1億4400万円)で、
授賞式は12月10日、オスロ市庁舎で行われる。

http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081007-4686911/news/20081010-OYT1T00557.htm

ウイルス使わず万能細胞 がん化恐れ少なく安全に

(共同通信社 2008年10月10日)

さまざまな組織に成長する人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、
がん化の恐れがあるウイルスを全く使わずにつくることに、
京都大の山中伸弥教授らのチームが世界で初めてマウスで成功、
米科学誌サイエンス電子版に発表。

「プラスミド」と呼ばれる、小さな環状の遺伝子を細胞内に入れる手法。
山中教授が当初開発したレトロウイルスを使う遺伝子操作手法と異なり、
もとの細胞の染色体に変化を与えないのが特徴。
がん化の恐れが少ない安全な万能細胞をつくるための重要な一歩。

山中教授は、「本格的な再生医療につながる新世代のiPS細胞。
人の細胞でも試しており、近く成功すると思う」

iPS細胞は、創薬や再生医療に役立つ一方、
ウイルスを使う従来手法では、遺伝子改変に伴うがん化の危険が否定できない。
患者への移植など、本格応用には改良が必要。

山中教授らは、染色体に影響を与えず、細胞質にとどまって
必要なタンパク質などをつくるプラスミドに着目。
マウスの子どもの皮膚細胞に、4つの遺伝子を組み込んだ
2種類のプラスミドを入れることで、iPS細胞に変化させるのに成功。

プラスミドは数日で細胞内から消え、染色体に余分な遺伝子が
入り込んでいないのも確認。
作製効率は、レトロウイルスを使う場合の100分の1以下と低い。

山中教授は、「改良により、効率はもっと高くなるだろう。
実験室での扱いが難しいウイルスを使わずに済むメリットも大きい」

▽プラスミド

大腸菌や酵母の細胞質などに存在し、染色体とは独立して増殖、
機能する小さな遺伝子の集まり。
2本のDNAが環状につながった構造が一般的。
医薬品産業やバイオ研究の分野では、標的となる遺伝子を細胞に
組み込むための運び屋(ベクター)として広く用いられる。
大腸菌などを使って、安全かつ大量につくることができ、
冷凍すれば長期保存もできる。

▽レトロウイルス

RNAに遺伝情報を持つウイルス。
感染した細胞の染色体にウイルス由来の遺伝子を挿入し、
細胞がタンパク質を合成する機能を借りて増殖。
エイズウイルスなど。
遺伝子操作では、細胞に効率良く遺伝子を導入するための
運び屋(ベクター)として有用だが、予期せぬ突然変異が起きる恐れがあり、
一定の封じ込め機能を備えた設備での扱いが必要。

▽万能細胞と再生医療

高い分化能力を持つ万能細胞からつくった臓器や組織を移植すれば、
現在は有効な手だてがない難病患者の治療につながると期待。
神経組織を脊髄損傷やパーキンソン病患者に、
インスリン分泌細胞を糖尿病患者に移植するなどが一例。
拒絶反応を回避する必要もあり、免疫適合した胚性幹細胞(ES細胞)や、
患者自身の人工多能性幹細胞(iPS細胞)が治療用細胞として有望視。

【解説】傷んだ臓器を患者自身の万能細胞で修復する?

移植時の拒絶反応が起きない夢の再生医療の実現には、
がん化の心配をなくすなど安全性向上が不可欠。

京都大の山中伸弥教授らが今回狙ったのは、
人工多能性幹細胞(iPS細胞)の遺伝子操作に使う"道具"の改良。
当初は、細胞の染色体に遺伝子を挿入するウイルスを使ったが、
染色体とは独立して働くプラスミドを使うことで、染色体への影響を少なくした。

今回はマウスで、人での成功が次の課題。
狙った組織に分化誘導できるか検証も必要。
国立成育医療センター研究所の阿久津英憲室長は、
「二歩前進と言っていい。染色体への影響が少ないため、
品質が良く扱いやすい万能細胞ができる可能性がある」と評価。

米ハーバード大は、別の種類のウイルスで染色体への影響を減らす手法を開発。
操作に用いる遺伝子の数も、当初の4つから3つ以下に減らす研究が盛ん。
専門家は、「こうした工夫の積み重ねで、将来は臨床応用レベルの
安全性が実現しそうだ」と期待。

東京大の中内啓光教授(幹細胞生物学)の話

iPS細胞が抱えるいくつかの課題のうち、安全性の問題は非常に大きく、
今回の成果でかなりの部分が解決された。
実用化に向けて大きく前進した。
ここまで数年はかかると予想していたが、昨年11月に
人のiPS細胞作製が発表されてから1年もたっておらず、
短期間にすごいスピードで着実に進歩している。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=81180

2008年10月10日金曜日

南部さんは日本人?米国人?人材流動化で意見百出

(朝日 2008年10月8日)

ノーベル物理学賞に決まった南部陽一郎さん、化学賞の下村さん。
いずれも米国在住の研究者。

特に、若くして米国の研究所に移った南部さんは、「頭脳流出」の代表例。
よりよい研究環境を求めて国境を越える研究者の流れはその後、強まる一方。

物理学賞発表について、海外メディアの多くは受賞者を、
「2人の日本人と1人の米国人」と報じた。
生まれ育ちは日本だが、米国生活が長く、
70年に米国籍を取得した南部さんの扱いが異なる。
「南部さんを、日本人とカウントしないわけにはいかないが……」。

素粒子物理学などの基礎研究を支援する文部科学省は、
内部資料としてノーベル賞の受賞者数を国別に毎年集計。
これまでは、受賞者の国籍で数えてきた。

南部さんは、注釈付きで日本の受賞者にする方向だが、
関係者からは「そもそも国別に数える意味があるのか」という声も。
「外国人が日本の研究拠点での業績でノーベル賞を受けたら、
日本の受賞にカウントするのだろうか」ともらす関係者もいる。

下村さんは日本国籍のままだが、60年に渡米。
そこでの研究が、今回の受賞につながった。

政府は最近、魅力的な研究環境を整え、逆に世界から日本に人材を集める
「頭脳循環」へと持ち込む姿勢を強める。
塩谷文科相は、「大いに世界に出ていくと同時に、世界の頭脳が
日本に集まる環境作りをぜひやりたい。
4人もの受賞は、世界の拠点のひとつになりうる証明と思う」

文科省は昨年、外国人比率を高める「世界トップレベル研究拠点」を
全国に5カ所選出し、事務部門も含めて英語を公用語に。
東京大数物連携宇宙研究機構は、米カリフォルニア大教授だった
素粒子論の世界的リーダー、村山斉さん(44)を機構長に引き抜いた。

「同じ研究環境があれば、欧米にこだわる必要はない。
米国からは、日本の素粒子物理学が非常に華々しく見えた。かつてとは違う」

米国に研究拠点を移して73年にノーベル物理学賞を受けた
江崎玲於奈さんは、「今の日本は、当時より飛躍的に研究基盤が
発達している割に、外国人研究者が根付いていない。
二重国籍を許すなど、差別のない住みやすい日本を作るため、
国内のみんながしっかり取り組まなくてはだめだ」

http://www.asahi.com/science/update/1008/TKY200810080230.html

第2部 かけ橋として/2 オーロラの魅力、中継

(毎日 10月5日)

ふと手にしたオーロラの写真集にひかれ、米国アラスカに飛んだ。
理工学部の学生だった21歳のとき。

さまざまな色や形の光のカーテンが全天を舞う
「オーロラ・ブレークアップ(爆発)」に遭遇。
「脳みその回路が飛び、足が震えて座り込んだほど衝撃を受けた。
これにしがみついて生きていかなければ、と思った」

コンテンツ制作会社「遊造」(東京都三鷹市)を経営する
古賀祐三さん(38)は、こう振り返る。
06年11月に始めたオーロラのネット生中継
「Live!オーロラ(http://aulive.net/)」は、会員が2万人を超え、
今年の科学ジャーナリスト賞も受けた。

進学した大学院では、情報処理を学んだ。
「オーロラで食っていく職業」として、科学者やカメラマン、旅行業界も考えたが、
「技術を身に着ければ、新しい道がある」と漠然と考えたからだ。
修了後、ソフトウエア会社に就職して画像認識・処理技術を磨き、29歳で独立。

当時は、淡いオーロラを撮影できるビデオカメラも、
大量データを送信できる通信網もなかった。
「コンピューターグラフィックスでオーロラの動画を自作し、DVDも作ったけど、
100本くらいしか売れなかった」と苦笑。

ホームページ制作などの仕事で食いつなぎながら、
「誰もが気軽にオーロラと接する場を作りたい」と、
オーロラの画像や仕組みなどを載せたウェブサイトを立ち上げた。

これがきっかけとなって、米アラスカ大の観測所に
高感度ビデオカメラを設置でき、生中継が実現。
パソコンや携帯電話のサイトでオーロラの動画を配信するほか、
大手映像会社からベストシーンを集めたDVDも発売。

徐々に軌道に乗り始めたが、あちこちで講演するたびに気になることがある。
「日本が、今も南極観測をやっていることを知らない人が多い」。
大人の科学離れは深刻。
科学を伝えるためにも、しっかりしたビジネスにしたい。
つぶれたら、後に続いてくれる人がいなくなる」と、古賀さんは強調する。
しっかり稼いで、「オーロラ中継キャラバン」として全国を巡回するのが夢だ。

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20081005ddm016040041000c.html

イグ・ノーベル賞を受賞した北海道大准教授の中垣俊之さん

(共同通信社 2008年10月7日)

「単細胞が迷路を解いた」。
米パロディー科学誌が毎年発表するイグ・ノーベル賞。

授賞式で、認知科学賞の授賞理由発表を受け、
共同受賞者の小林亮・広島大教授らと演壇に進むと、
会場のハーバード大記念ホールは拍手と歓声で包まれた。

受賞した研究の面白さは、脳も神経もない単細胞生物「真正粘菌」が、
人間でも難しい迷路を解いた点。

簡潔明快が評価される受賞スピーチは、
英語で「単細胞は日本でばかを意味するが、
実は考えてきたよりずっとスマートだ」と短く済ませ、
観客は歓呼の声で応えた。

理化学研究所で研究していた1990年代末。
粘菌を飼っていたおけに、えさのオートミールをぱらぱらとまいておくと、
細い管でつなぐようにすべてのえさに体を伸ばしていることに気付いた。

それならと、粘菌を迷路に入れ、入り口と出口に食べ物を置くと、
見事に最短経路を結んだ。

今年18回目となる同賞の授与条件は、
「まず人を笑わせ、その後、人に考えさせる研究成果」。

例えば化学賞は、コカ・コーラに殺精子効果があるかどうかで正反対の主張をした、
それぞれの研究者が獲得。
授賞式は、ユーモアとしゃれを効かせた演出で、観客は1時間半笑い転げる。

粘菌の能力の貴重な発見も賞には恵まれず、
「イグ・ノーベルなら応えてくれるかも」とひそかに希望をかけていた。
「単細胞がどれぐらい賢いのか。記憶とか学習もどれぐらいできるのかを
ちゃんと調べていきたい」。愛知県出身。45歳。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=80940

糖尿病なりかけに「緑茶が効果」 1日7杯で血糖値改善

(朝日 2008年10月4日)

緑茶を1日に7杯分ほど飲むことで、糖尿病になりかかっている人たちの
血糖値が改善することが、静岡県立大などの研究でわかった。
健康な人で緑茶をよく飲んでいると、糖尿病になりにくいという報告はあるが、
高血糖の人たちの値が下がることを確認した報告は珍しい。

血糖値が高めで、糖尿病と診断される手前の「境界型」などに該当する
会社員ら60人に協力。

緑茶に含まれる渋み成分のカテキンの摂取量を一定にするため、
いったんいれたお茶を乾燥させるなどして、実験用の粉末を作製。
毎日、湯に溶かして飲むグループと、飲まないグループに無作為に分け、
2カ月後の血糖値を比べた。

平均的な血糖値の変化を、「Hb(ヘモグロビン)A1c」でみると、
緑茶粉末を飲んだ人たちは当初の6.2%が、2カ月後に5.9%に下がった。
飲まなかった人たちは変わらなかった。
飲まなかった人たちに改めて飲んでもらうと、
同じように2カ月間で6.1%から5.9%に下がった。

一般に、HbA1cが6.1%以上だと糖尿病の疑いがあるとされ、
6.5%以上だと糖尿病と即断
患者の血糖値を5.8%未満に維持できれば、優れた管理。
今回の成果は、糖尿病一歩手前の人が緑茶をたくさん飲むことで、
糖尿病にならずに済んだり、発症を遅らせたりできる可能性を示した。

2グループで、体格や摂取エネルギーなどに差はなく、
緑茶からのカテキン摂取量が血糖値に影響したらしい。
1日分の緑茶粉末は、一般的な濃さの緑茶で湯飲み(約100ミリリットル)
約5杯分のカテキンを含み、緑茶粉末を飲んだ人では、
普通に飲んだ緑茶と合わせ1日に約7杯分のカテキンをとっていた。

静岡県立大から移った吹野洋子・常磐大教授(公衆栄養学)は、
「運動などの生活習慣改善とともに、食事の中で積極的に
緑茶を取り入れてほしい」

http://www.asahi.com/science/update/1004/TKY200810040094.html

自転車を持って電車の旅に出よう――フランスの電車・自転車事情

(日経 08/10/03)

◆フランソワ・デュボワ

フランス出身のマリンバ奏者、作曲家。
キャリアマネジメントの手法、デュボワ・メソッド開発者。
フランスで作曲家、マリンバ・ソリストとして活躍後に来日。
慶応義塾大学で教鞭を執る。
キャリアマネージメント講座を慶応義塾大学にて開講。
『デュボワ・メソッド・スクール』で、自治体や企業にキャリアセミナーを提供。
マリンバ奏者としても、レジオン・ヴィオレット金章音楽部門受章(94年)受賞
-------------------------
きょうは、この間のフランス旅行の際に見かけた面白いものを紹介。
両親の住むグルノーブルから、パリに1日の日帰り旅行をしたとき、
リヨン経由のTGV(新幹線)に乗った時のこと。

ブルゴワン・ジャイユ駅(グルノーブル地方)のホームで、
リヨン行きの電車を待っていると、たくさんの人が自転車を持って
電車を待っている光景を目に。
「あれ?電車が来たら、みんなどうするんだろう?!」
と不思議に思いながら、せっかくだから写真に撮ってしまえ、とカシャカシャ。

しかし、デジタル一眼レフのカメラはかなり目立つので、みんなの視線を浴び、
車内だったらもっと撮りやすいかもしれない、とカメラを仕舞いました。
電車のホームには、自転車を持って待つ人がちらほら。

すると、そこに1人の男性が近づいてきて、僕に声をかけてきた。
「あの、失礼ですが、写真を撮られている理由と、
それをどうされるのか伺ってもよろしいですか?」

びっくりして、なんだかバツの悪い気分になり、
罪悪感に襲われてしまいました。
「僕は、『日経エコロミー』という日本のメディアで、
エコロジーの連載をしているのですが、何かのネタにならないかと思って、
よく分からないけれど、自転車を電車に持ち込む光景を写真に撮っている」

すると、その男性の顔がゆるみ、
「いやあ、あなたは幸運ですね。
私は、地域の公共交通機関の利用者環境を改善するサービスを
提供している会社を経営している者です。
この自転車のサービスも弊社のもの。まあ、お座りください。ご説明しますよ」

本当にこのラッキーな出会いにびっくりしました。
リヨンまでの30分間、車中でこの社長のインタビューをさせてもらいました。

SNCF(フランスの旧国鉄)が取り組んでいる試みで、
マイ自転車移動の奨励に、自転車でのスムーズな公共交通機関利用を
促すために車内の一部を改造して、駐輪スペースを設けている。

他の都市からリヨン市内に訪れる人たちや、
もともと市内に住む人たちの足が車から自転車に切り替わりやすくなり、
車の使用量を減らすことで、市内の交通量減少に大いに役立っている。

このサービスを利用するには、毎月数ユーロで済み、
自転車大国のフランスで大成功。

社長ご自身の利用者カードも見せてもらい、許可を得て、
社長の自転車も撮影させてもらいました。
利用料を払い、利用者カードを取得すれば、自転車を電車に乗せられる。

このプロジェクト自体は、リヨン県がSNCFにお金を出して進めたもの。
この成功例を見て、パリでも同様のサービスが始まったばかり。

フランスでは、地方都市のエコ意識や運動の力が非常に大きく、
それらの後押しがあってこそ、SNCFなどのような大きな組織が
共に動き出すきっかけを得て、首都へと広がるケースがほとんど。

またひとつ、パリが必ずしもエコ先進都市とは限らない、
という分かりやすい例。

http://eco.nikkei.co.jp/column/eco_methode/article.aspx?id=MMECz5000002102008&page=1

2008年10月9日木曜日

世界科学大賞受賞 盛岡・鍼灸師の岡本さん

(岩手日報 10月3日)

長年東洋医学を研究している盛岡市の鍼灸師岡本修一さん(61)は、
スウェーデンアカデミー(D・H・サムエルソン総裁)が主催する
本年度の世界科学大賞で、健康医学部門の大賞を受賞。

電気針を使った骨折治療の実績と理論が高く評価。
健康医学部門の受賞は国内3人目、東北では初。
岡本さんは、「東洋医学を応用した治療が認められ、本当にうれしい」

15年前に始めた岡本さんの研究は、
骨折部分に電気針で適度な電流を与えることで、
血液中のイオンカルシウムを誘導し、
骨化形成の働きを活発にする―という治療法。

昨年、アイスホッケーで頸部骨折し、自力での回復は無理と診断された
高校生に、同法の治療を実施。約2カ月で完治。
岡本さんによると、同治療法で完治させた患者は相当数に上る。

岡本さんは6月、臨床経過や電圧、電流の波形などをまとめ、
東京都の日本文化振興会(伏見博明総裁)を通じて、
スウェーデンアカデミーに論文を提出。
針きゅう治療の発展に寄与し、多くの患者に役立てられると認められた。

同賞は毎年、国際的に顕著な業績を残した人に贈られる。
論文や実績を基に同アカデミーが決定。

岡本さんは、八戸市出身。
京都市の大学で針きゅうを学び、1971年、プロ野球・阪神タイガースに
専属トレーナーとして入団。掛布や田尾ら選手の治療に当たった。

85年から盛岡市に移り、開業。
県内外から多くの高校球児や国体選手、難病患者らが訪れ、
治療を受けている。

これまでに日本文化振興会の社会文化功労賞、
米国アガペー大の東洋医学博士号などを受けている。

日本文化振興会の鬼塚修二国際文化総局長は、
「細部にわたる長年の研究に敬意を表したい」
岡本さんは、「これからが課題。多くの患者の治療に役立てたい」

◆スウェーデンアカデミーとは

1786年に設立されたスウェーデンの学士院。
文学者や歴史家、法学者など18人の終身会員で構成され、
ノーベル文学賞の選考委員会も兼ねる。首都ストックホルムに事務所。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081003_16

クローズアップ2008:ノーベル化学賞に下村氏

(毎日 10月9日)

ノーベル化学賞に決まった下村脩・元米ウッズホール海洋生物学研究所
上席研究員(80)が発見した緑色蛍光たんぱく質(GFP)は、
生命科学の研究現場では欠かせない物質。

なぜ病気になるのか?
開発した薬剤はどのように効くのか?
生体内での分子の振るまいが、この光るたんぱく質によって
手に取るように分かるようになった。
美しく青く光るクラゲへの関心から生まれた発見は、
生命の謎解きに挑む最先端の研究者を支えている。

「GFPによる蛍光標識の手法は、医療や脳科学などさまざまな分野で活用」
専門家は、下村氏らのGFP発見と開発の意義をこう評価。
GFPは、生きた細胞内でたんぱく質がどう働くかを調べる先駆的な目印。

マウスの生体内で抗がん剤の効果を知るため、
GFPなどの蛍光たんぱく質を利用している
小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員は、
「細胞を扱う研究で、なくてはならない武器。
いつか受賞すると思っていただけに、本当にうれしい」

小林さんらは、生きたマウスにできたがんの転移の様子や、
抗がん剤の効果を観察するため、GFPなど5種類の蛍光たんぱく質を使って実験。
従来の蛍光物質では、細胞分裂が進むと光が弱くなり、やがて見えなくなる。
GFPは、遺伝子として細胞内に組み込まれるため、
細胞分裂をしても次々とGFPが作られ、最初と変わらずに光り続ける。
「たった一つのがん細胞の動きも追うことができる。
がんの転移の様子を観察するのに、最適の目印」

血糖値を下げるホルモン「インスリン」を作るベータ細胞が、
膵臓の中で作られる過程や、
アルツハイマー病で神経細胞が破壊される様子が分かる。
マウスの骨髄にGFPを取り付け、別のマウスに移植した骨髄の状態を追跡できる。

GFPを実験に使った研究成果を掲載した論文は、年間で1000本超。
近江谷克裕・北海道大教授(光生物学)は、
「生命科学などの進展に、いまやGFPは不可欠。
下村先生の発見がなければ、こうした分野がこれほど進展することはなかった」

◇改良続き、広く活用

下村氏が発見したGFPは、その後多くの生命科学の研究に幅広く利用。
マウスの嗅覚の神経回路の機能などを研究している
森憲作・東京大教授(神経科学)は、
「GFPを使うと、神経細胞の形がきれいに見える。
脳のシナプスがどのように枝を張っているか、
脳の中の配線が目で見えるようになった」

GFPが普及する前は、脳を薄くスライスし、色素で染めて
目的の物質の場所を特定。
つまり、死んだ細胞でしか観察できなかった。
「GFPの登場で、生きた細胞でも目的のたんぱく質の動きを追跡できる。
医学や生物学にとって、なくてはならない技術だ」

下村氏がGFPの単離に成功した当時、この有用性は研究者の間でも
十分理解されていなかった。
マーティン・チャルフィー氏は、線虫などの細胞をGFPで発光させ、
生体細胞内でのたんぱく質の標識としての使い道を確立。
ロジャー・チェン氏は緑以外の色で発光させ、
一度に多くの物質に標識をつけることに成功、実用化への道が開かれた。

飯野正光・東京大教授(薬理学)は、「チェン氏は、細胞内のカルシウム濃度を
簡単に測る方法を開発。
一酸化窒素を測定するなど、さまざまな応用法が生まれている」

GFPは、改良が続いている。
理化学研究所の宮脇敦史チームリーダーの研究チームは、
発光効率を従来の最大100倍に高めたり、
一度に6種類の物質に標識をつけることのできる蛍光たんぱく質を開発。
産業技術総合研究所は、自ら発光する蛍光たんぱく質の開発に成功。

ノーベル化学賞の受賞が決まった下村脩氏が発見したGFPは、
細胞内の物質の場所や動きを見る手段として生命科学研究で活用。
新発見には、それまで見えなかったものを見たり、できなかったことを実現する
「道具」が不可欠だが、そうした技術にノーベル賞が贈られるケースが目立つ。

昨年の医学生理学賞は、特定の遺伝子だけを別の遺伝子に置き換えたり、
働きを止めたりする「ジーンターゲティング」という手法を開発した
米英の3氏が受賞。
マウスなどの遺伝子を改変し、体にどのような変化が表れるかを観察すれば、
その遺伝子の役割が分かる。
研究の世界では現在、日常的に用いられる手法。

03年の医学生理学賞は、がんの診断などに広く普及している
MRI(磁気共鳴画像化装置)の開発。
体を傷つけずに、人体の断面画像を描き出すことが可能。

02年に化学賞を受賞した、田中耕一・島津製作所フェローの業績も同様。
壊れやすいたんぱく質の質量を壊さないで、正確に測る質量分析の新手法。
ヒトゲノム解読が終わり、研究の焦点がたんぱく質の機能に移る中で、
この手法が歓迎された。

米シアトルに出張中の田中さんは、下村氏の受賞について
「見えない現象を見えるようにすることで初めて、新しい理論が生まれたり
病気の解明が進む。こうした研究が受賞することは喜ばしい」

◇日本人、貢献度大きく

ノーベル賞で、日本は02年に小柴昌俊氏(物理学賞)、田中氏が
ダブル受賞して以降、5年間、受賞者が出なかった。
最近の受賞者の業績を見ると、
日本人研究者が大きな貢献をした分野が少なくない。
日本の科学界が低迷していたわけではなく、受賞は時間の問題だった。

「ナンブは正しかったが、(登場するのが)早すぎた」。
ノーベル財団は04年の物理学賞の解説資料で、
南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授(米国籍)の貢献について異例の言及。
この年は、素粒子の一つであるクォーク同士を結びつける力を説明する
理論を確立した米国の3氏が受賞したが、
南部氏の理論はこの研究に大きく貢献した。

ノーベル賞の受賞者は、一つの分野で3人まで。
同じテーマに2度贈られることはない。
このため、南部氏の受賞可能性は消えたかに見えた。
だが今年、素粒子物理学分野で別のテーマが選ばれ、
南部氏の貢献が再び認められて受賞が決まった。

昨年の物理学賞は、わずかな磁場によって電気抵抗が大きく変化する
「巨大磁気抵抗」の発見に貢献した仏独の2氏に贈られた。
パソコンなどの記憶媒体であるハードディスクなどに使われている原理。
その実用化には、十倉好紀・東京大教授、宮崎照宣・東北大教授、
湯浅新治・産業技術総合研究所研究グループ長らの功績が不可欠。

体内で不要になったたんぱく質が分解される際、
目印となる物質「ユビキチン」を発見したイスラエルと米国の3氏には
04年、化学賞が贈られた。
東京都臨床医学総合研究所の田中啓二所長代理は、
ユビキチンを目印に、酵素のプロテアソームが不要たんぱく質を
分解することを明らかにし、具体的な仕組みを解明。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/10/09/20081009ddm003040106000c.html

障害ある人も歩きやすく 茨城・つくばの企業、ロボットスーツ販売開始

(毎日新聞社 2008年10月8日)

茨城県つくば市のベンチャー企業・サイバーダインは、
福祉・医療用ロボットスーツ「HAL(ハル)」を今月から量産し、
リース販売を始めると発表。

HALは、同社最高経営責任者(CEO)の山海嘉之・筑波大大学院教授(50)
98年に1号機を開発。

金属製のフレームを体に装着し、筋肉を動かす際に体表を流れる
微弱な電流をとらえ、モーターに信号を送って体の動きを助ける。
年間500体生産する下半身タイプは、足腰に障害がある人や
高齢者が装着すると、1人で立ち上がったり、歩きやすくなる。

住宅メーカー・大和ハウス工業を通じて、
関東・関西の介護・福祉施設にリース販売。
価格は、片足用が月15万円、両足用が同22万円。
山海教授は、「今後は、北欧を拠点に海外販売も検討したい」

31日、同市に開業するショッピングセンター「イーアスつくば」内に、
HALを試着できるコーナーを設ける。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=81094

学校の情報化(14)【読者の声】使い方に工夫して

(読売 10月4日)

学校の情報化には様々な側面のあることが、読者の声からもわかる。

「学校の図書室の貸し出しシステムを、表計算ソフトのエクセルで自作。
パソコンがあれば、バーコードリーダーを買うだけで利用できる」
九州の中学校に勤務する事務職員(31)から、こんな情報提供。
全校生徒が33人の小規模校。
「公立図書館の多くは、図書管理システムを導入、
学校図書館は、いまだに手書きの図書カードを記入している所も多い。
市販のソフトは、コストを考えれば学校で導入できる状況にない」

そこで、独自のシステムを作った。
導入によって、貸出数も大幅に増えた。
「自作のため、できることに限界はあるが、小規模校には有用。
町内で導入を検討している小学校もある」。
この取り組みは、全国学校図書館協議会の雑誌「学校図書館」9月号にも紹介。
小さな学校の職員による、ちょっとした情報化の工夫にエールを送りたい。

ICT(情報通信技術)を障害児に活用している
埼玉県の養護学校の記事(9月23日付)に対して、
障害者の先輩から激励の声がメールで舞い込んだ。

千葉県に住む56歳の男性。
大手の情報通信関連会社に勤務していたが、脳梗塞で半身マヒとなって退職、
在宅勤務ができる会社に移った。

「自分と同じようにあきらめず、パソコンを習得すれば、障害者でも就職は可能。
もし自分が起業できたなら、障害者の高校生を採用したい。
人は、どんな人でも助け合って生きている。あきらめないことです

山口県内の小学校の教員からは、学校の実情に関する情報も。
「十数年前、コンピューター関係企業から転職したころ、
学校というのは何と非効率的な職場だろうと思っていた。
現在は、校務処理でのデータの共有は一般化しているが、
授業での活用はいまだ普及しているとは言えない」

情報教育担当として、校内研修で、ウェブ上に授業で活用できる
サイトがあることから紹介、
「異動があると、一から始める形の繰り返し」。
自分でも、授業で活用できるような資料を作ったものの、
「一教員の力には限界がある」と訴える。

神奈川県内の小学生の娘を持つ母親からは、
小学校低学年へのパソコンを使った授業に疑問の声が。
情報教育の指定校での経験をつづる。

「1年からパソコンを使った授業があり、参観したことがあるが、
『こんなの家で出来るのになあ』が正直な感想。
保護者には、指定校になったことで、
若い先生が多数を占めることに対する不安が多かった」

引っ越し先の学校では、「様々な年代の先生がいて、娘たちは楽しそう」。
「パソコンなら私でも少しなら教えられるし、小学校で導入しなくても不都合はない。
興味のある児童は、自分から学ぶ。
教員にIT(情報技術)が出来るように迫るより、個性あふれる授業を期待したい」

ITはあくまで道具。そのことを忘れてはならないことは間違いない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081004-OYT8T00221.htm

2008年10月8日水曜日

スポーツ21世紀:新しい波/278 ビデオ判定/1

(毎日 10月4日)

コートを取り囲むように、ボールの軌跡を監視する
10個の“タカの目”が光っていた。

女子テニス協会(WTA)ツアーの東レ・パンパシフィックオープンシングルス準決勝。
有明コロシアムのセンターコートで、選手が審判にビデオでの再判定を求める
「チャレンジ」を宣言した。

そのわずか7、8秒後。
会場の大型ビジョン2台に、ボールがライン際で弾む瞬間の
コンピューター映像がスローで再生。
ボールは、ほんの数センチサイドラインを割ったことが明白に。
判定は覆った。

時速200キロを超えるサーブを見極めるには、
試合のリプレー映像では難しい。
英国の「ホーク・アイ・イノベーション」社が開発した
「ホーク・アイ」と呼ばれる最新の自動ライン判定システムの存在。

同社技術リーダーのアレックス・バースさん(23)は、
「誤差は、最大でも3・5ミリほど」と自信をのぞかせた。

10台のカメラでボールを追跡。
スピード、角度などのデータを集積し、コートにボールがバウンドした場所を
正確に特定する。
WTAの審判の最終決定を受け、ボールの軌跡を分かりやすく映した
コンピューターグラフィックスで再生。
映像は、会場やテレビ画像にも同時に流され、ショーアップの効果もある。

テニス界の革命とも言えるビデオ判定が、
ツアー史上初めて導入されたのは06年3月、米国の大会。
選手が審判にボールのイン、アウトの再判定を要求できる
チャレンジ制度を新設。
チャレンジは現在、1セットに3回、タイブレークに追加の1回を認めると規定。
審判の判定が正しければ、権利は一つずつ減る。

国内ツアーでは今回の東レが初めてだったが、
4大大会では土に跡が残って判別しやすいクレーコートの
全仏オープンを除いて、既に導入。

WTAのツアー競技責任者の一人、ジュリア・オルランディさんは
「(ツアーランク上位の大会で)昨年は6大会、今年は14大会で
ビデオ判定を採用。来年は、さらに多くの大会で行う予定」と快活に笑った。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

バイオ系人材が活躍できるためには

(サイエンスポータル 2008年9月22日)

バイオエネルギーをはじめとするバイオブームの陰に潜む問題の一面を、
NPO法人「サイエンス・コミュニケーション」代表理事の
榎木英介氏(医師)が、メールマガジン「SciCom News」。

「バイオバイオバイオ!…でいいのか」、
と題する論説で榎木氏は、大阪府の橋下知事が
「将来ビジョン・大阪」の将来像イメージの中で、
北大阪でバイオ関連産業を育成する方針を打ち出したことを取り上げている。

「エコノミスト」誌9月23日号の特集「勝ち残る大学」から、
「過去6年に、70もの生命系の学部の新増設があった」という記述も引用、
「バイオバブルとでもいう状況だ」と指摘。

「バイオ産業や周辺産業の雇用規模は30万人程度、
エレクトロニクスや機械などに比べて産業規模は小さい」という
「SciCom News」に掲載された別の論説を引き、
これから大量に生み出されるバイオ人材が、活躍の場を得られず、
「路頭に迷う」事態になることを心配。

博士号を取得したものの就職先がない、不安定な任期付き契約のポストを
渡り歩かざるを得ない、というポスドク問題については、
日本学術会議の若手・人材育成問題検討分科会も提言
「新しい理工系大学院博士後期課程の構築に向けて
-科学・技術を担うべき若い世代のために-」で、早急な対応を求めた。

分科会メンバーをみると、生物、医学、農学系の研究者は入っていない。
バイオ産業や周辺産業より、雇用規模が大きいとされる理工分野の方が、
むしろ危機感が強いということか。

提言の中に、「1990 年代以降、大学理工系学部への志望者は、
顕著な減少傾向が続いている。
背景には、社会のさまざまな分野で活躍する技術系人材に対する
処遇の悪さや、ポスドク問題に象徴される若手研究者の
将来への閉塞感があると思われる。
学部から大学院への進学率は増加したが、修士課程から博士課程への
進学者数は急速に減少」、という現状分析が示されている。

これから増えるバイオ系人材を路頭に迷わせないため、
この提言に盛り込まれたような多様な対策を、
バイオ関係分野においても今から講じる必要がある。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0809/0809221.html

クローズアップ2008:ノーベル物理学賞に日本人3氏

(毎日 10月8日)

ものに質量があり、世界に物質が存在するのはどうしてか?
こうした問いに、新しい素粒子の理論から答えを出したのが、
南部陽一郎・米シカゴ大名誉教授(87)、益川敏英・京都産業大教授(68)、
小林誠・高エネルギー加速器研究機構名誉教授(64)。
3人の理論によって、素粒子の基本的性質が解明。
湯川秀樹博士、朝永振一郎博士以降、世界のトップレベルを歩んできた
日本の素粒子研究の歴史に新たなページを加えた。

対称性とは何か?
例えば、机の上に本が表紙を上に置いてあっても、逆にしてあっても、
本の性質に変わりはない。

素粒子の世界で、性質が変わらないという常識が通用しない
「非対称性」が起こることを提唱したのが、南部氏。
1960年代、「対称性の自発的な破れ」という概念を導入。
後に素粒子理論の基礎となる「標準理論」や
宇宙誕生後の膨張を説明する「インフレーション理論」に発展。

では、「対称性の破れ」とは何か?
「大勢の客が丸いテーブルにぎっしり着席。
各席の前には皿、ナイフ、フォーク、ナプキンが置いてあるが、
左右どちらのナプキンが自分に属するかわからぬほど左右対称に。
だれか一人が、右側のナプキンを取り上げれば他の客もそれにならい、
とたんに対称性が自発的に破れてしまう」=「クォーク」(講談社)。
その概念は、物質の超電導現象を説明する理論から思いついた。

理論では、物質を構成する素粒子は元来、質量をもたないが、
対称性が破れたところに、素粒子の質量の源がある、という考え。

小林、益川両氏の理論は、素粒子の標準理論が形成されつつある73年に発表。
「対称性の破れ」を、標準理論に沿って検討した結果、
素粒子の一種・クォークについて重要な予測。
宇宙の誕生時には粒子と、その双子のような「反粒子」が一緒に生まれたとされる。
粒子と反粒子が出合うと、光を発して消滅。

ところが、「CP対称性」を認めると、粒子と反粒子は同数で、
宇宙誕生時にできたすべての粒子が反粒子と反応して消える。
小林、益川両氏は、「クォークが少なくとも6種類あれば、
CP対称性の破れは矛盾なく説明できる」と予測。
この理論では、6種類は質量の軽い方から2種類ずつペアで
第1世代、第2世代、第3世代に分かれる。

例えば、水素の原子核である陽子は第1世代のアップクォーク2個、
ダウンクォーク1個でつくられる。
まだクォークが3種類しか見つかっていない時代。

破天荒に見える新説は、さほど関心を集めなかった。
しかし、5番目のクォークが発見されたころから注目を集めた。
6番目のトップクォークも、95年に存在が確認。
小林・益川理論が予言した「破れ方」は、大型加速器を使った実験で証明。

◇加速器実験で裏付け--日本のお家芸に存在感

「日本が貧しく、金のかかる大掛かりな実験も簡単にはできない時代に、
紙と鉛筆だけで勝負できる分野として、日本中の秀才が集まって切磋琢磨した」。
日本物理学会会長も務めた佐藤勝彦・東京大教授(宇宙物理学)は、
日本の理論物理学の強さをこう分析。
「ノーベル賞を受賞した湯川、朝永両氏の影響も大きかった」と
偉大な先人もたたえた。

湯川氏が、1949年日本初のノーベル賞(物理学)を受けて以来、
日本は理論物理学分野で強みを発揮。
現代物理学の基本である「標準理論」に大きく貢献した南部、小林、益川の
3氏が今回、ノーベル物理学賞を独占したことは、
日本伝統の「お家芸」の存在感を改めて示す結果。

南部氏は、湯川氏にあこがれ物理学を志した。
小林氏と益川氏も、湯川氏の弟子に当たる
坂田昌一・名古屋大教授(故人)に師事。
坂田氏の研究室は、「坂田スクール」と呼ばれ、世界的な理論物理学者を輩出。
佐藤さんは、「3人とも、もっと早く受賞してもいいと思っていた。
日本人3人がもらったことは非常に明るいニュースで、
後に続く若い人の励みになる」

紙と鉛筆で練り上げた理論を、実験が後押ししたことも大きい。
小林氏が在籍した高エネルギー加速器研究機構の加速器
「Bファクトリー」は00年、小林・益川理論の中核である
「CP対称性の破れ」を裏付ける実験結果を世界に発表。
鈴木厚人機構長(62)は、「高エネ研そのものが、小林・益川理論を
証明するために設立された。
受賞をバネに、日本がこの分野で世界を引っ張っていくことにつながる」

生出勝宣同機構教授(56)も、「受賞は、始まりにすぎない。
今後、加速器科学を進めることで、毎年のようにノーベル賞が出るのも夢ではない。
ここにかかわる何百人何千人の努力の結晶だ」

一方で課題もある。
宇宙誕生の直後、CP対称性の破れがどのように起きたか、
いまだに正確には分かっていない。
9月にスイス・フランス国境で稼働した大型加速器「LHC」は、
陽子同士を光速に近い速さで衝突させ、宇宙誕生直後の状況を再現しようと試み。
その過程で、CP対称性の破れがどのように生じたか、
課題が解明されることが期待。

◇一つの賞、最大3人

ノーベル賞の受賞者は、一つの賞につき1年で最大3人の枠。
物理学賞は、3人すべてが日本生まれという快挙。

◇麻生首相が祝意

麻生太郎首相は7日夜、小林氏、益川氏の2人に電話し、祝意を伝えた。
首相は、益川氏に「おめでとうございます。とても明るいニュースで、
国民もとても喜んでいると思う。
先生は昭和15年生まれですか?同い年ですね。
若い人が物理学に興味を持ってもらえるようなメッセージを」

益川氏は、「科学にロマンを持つことが大事。
あこがれを持っていれば、勉強もしやすい。
あこがれが受験勉強で弱くなっていると思う」

首相は、小林氏にも祝意を伝えたうえで、「若いのに、メッセージを」と求めた。
小林氏は、「自分を信じて、大いに頑張ってもらうことがよろしいと思う」
==============
◇標準理論

素粒子間に働く四つの力「重力」、「電磁気力」、「強い力」、「弱い力」のうち、
電磁気力と弱い力を統一した理論体系。
1960年代に提唱、確立させたのが70年代の「小林・益川理論」、
素粒子の振る舞いの大半を説明できる理論として受け入れられてきた。

最近の実験で、素粒子のニュートリノに質量があることが分かるなど、
標準理論では説明できない点も出てきた。
研究者の多くは、四つの力を統一できる新理論が必要だと考えている。

◇CP対称性

Cは電荷、Pは空間に関する物理量であるパリティーを指す。
どんな粒子でも、電子に対する陽電子のように、
質量は同じだが、反対の電荷を持つ反粒子がある。
「CP対称性」とは、粒子を反粒子に置き換え、同時に鏡像のように
左右を入れ替えても、物理現象は同じになるという法則。
これが成り立っている場合、粒子と反粒子が出合うと、光を出して消滅。

宇宙誕生時、粒子と反粒子は同数あったが、現在、粒子のみが残って
宇宙が成り立っているのは、粒子と反粒子の性質がわずかに異なる
「CP対称性の破れ」によって、反粒子が消えたためと考えられている。

日本は、科学技術政策の方向性を盛り込んだ01~05年の
第2期科学技術基本計画で、
「50年間にノーベル賞受賞者30人程度を輩出」を目標。
ノーベル賞の自然科学3賞(医学生理学、物理学、化学)の受賞者数が、
その国の科学技術レベルを測る指標とされ、
06年からの第3期基本計画にも盛り込んだ。

ノーベル賞の過去の受賞者の推移を見ると、
20世紀前半はドイツを中心とした欧州が世界の科学の中心、
後半は米国に移っていった。

ノーベル賞が創設された1901年から第二次世界大戦が終わった45年までの
合計受賞数では、ドイツが36人でトップ、英国25人、米国18人、
フランス16人と欧州が優勢。
46~99年は、米国が175人と突出、
欧州勢(英国44人、ドイツ26人、フランス10人)を圧倒。
21世紀も、06年の自然科学3賞の受賞者を米国勢が独占するなど、
米国優位が続いている。

文科省の岡谷重雄・科学技術・学術戦略官は、
「科学者は、トップレベルの研究者が多い場所や研究環境のいい場所など、
自分が最高の結果を出せる場所に集まる。
その場所が、科学の伝統がある欧州から、経済力で世界から
多様な人材を受け入れた米国に移った」

日本も、多様性を目指して昨年から、
「世界トップレベル研究拠点プログラム」を始めた。
東京大、京都大、東北大など5拠点を選び、5億~20億円を最大15年間投資。
研究だけでなく、事務手続きもすべて英語で行うなど、
世界トップクラスの研究者を集める。

今回の3氏の受賞は、60~70年代の業績に対するものだが、
岡谷さんは「たとえ外国人でも、日本の研究機関で取り組んだ研究が
ノーベル賞を取れば、そこにトップクラスの研究者が集まる。
研究者と切磋琢磨した日本人研究者から、さらに多くの受賞者が生まれるだろう」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/10/08/20081008ddm003040109000c.html

学校の情報化(13)新潟県上越市の事務主幹 二見恵美子さんに聞く

(読売 10月3日)

学校の情報化に奮闘してきたベテラン職員が、過去と未来を語る。

校舎内を歩くと、まず廊下の広さに驚く。
壁には、絵画など市民の作品が並ぶ。
げた箱一つ一つに雨水の受け皿を置き、
音楽室には動かしても音の出にくいイスを入れた。
夏の教室で測った窓際の気温のデータを示して、
ひさしを基準いっぱいまで長くした。
理科室も、掃除用具入れも、使い勝手のいいように――。

校舎の全面改築が2年前に成った新潟県上越市立城北中学校には、
様々なアイデアが施され、教育関係者の視察が絶えない。
中野敏明校長(59)から改築の全権を委任された
事務主幹の二見恵美子さんの説明は、実に楽しげだった。
教育委員会との交渉で、「日本一の学校を作る」とまで発言して誕生した
「現場の声を生かした学校」。
事務主幹は、将来的に事務長的な役割を担う職。

学校事務職員ひと筋に約40年。
学校の情報化で、約20年の歴史を持つ上越市で、
初期から中心的役割を果たしてきた。
「情報化は、コンピューターを入れるだけではない。
教職員が互いの顔を見ながら情報交換することが大事。
人間関係が希薄になっては意味がない」、
「事務職員は、教育行政と学校現場のパイプ役になり、
地域連携でも先導的な役割をすべきだ」と訴える。

平成の大合併で不要になった旧役場の町長室の机を、
校長室用に転用できるよう頼み、花壇の植栽の予算が足りないとなれば、
地元の福祉施設に協力してもらうなど、
切りつめる所は切りつめ、知恵も絞った。
「役所から予算を引き出すだけでは、限界がある。
事務職員が、財務のプロとして認められる存在になる必要がある」

市内の各校に、事務用コンピューターが配備されたのは1989年。
当時は画期的だったが、「はて、何をしよう」と仲間と考えた。
電子メールもWindowsもない時代。
PTAなどの会計処理、学校の備品管理など5項目で共通フォーマットを配った。
学校事務の標準化の先駆けだ。
地元の上越教育大とも連携し、職員や教員に研修会を開いた。

96年には力強い味方ができた。
市、教育関係者、企業人らが教育関係機関のネットワーク化を
進めるために作った研究会。
2002年には、研究会の役割を取り込んだ
NPO法人上越地域学校教育支援センターが生まれた。
「上越では、情報化がボトムアップで進められたことに特徴がある」

一方で01年から、事務の共同実施が、
二見さんの勤務校などで試験的に始まった。
共同実施は2年前に全市、今年度は県全体に広がっている。

年間約2000件も学校に舞い込む様々な文書はかつて、
手書きで一つ一つ記録されていた。
コンピューター化と事務の共有化で、空いた時間は、
人でなければできないことをやるべき。
学校の様子を熟知した事務職員が、仕事の領域を広げる必要がある」
二見さんの場合、まさに校長のもとで学校経営を一緒に考える立場に。

城北中では、教員がいっさい会計処理をしていない。
「他の学校もそうなったほうがいいと思うし、これからそうなると思う」。

「先生を子供たちに返す」には、事務職員が変わることが不可欠。
学校の情報化は、目的ではなく手段。そのことを痛感した。

◆ふたみ・えみこ
上越地域の小中学校8校に勤務し、城北中は5年目。
2006年から事務主幹。59歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081003-OYT8T00158.htm

2008年10月7日火曜日

プロ野球:流出抑止の日本球界復帰制限、アマ側は当面静観

(毎日 10月6日)

ドラフトを拒否して海外球団入りしたアマ選手に対し、
日本プロ野球組織(NPB)が、海外球団を退団しても
一定期間は日本のプロ入りを凍結するとしたことについて、
高校・大学・社会人のアマ3団体は、静観する構え。

社会人野球を管轄する日本野球連盟の後勝専務理事は、
「プロ側の決めることで、どうこう言うことはない」。
この規則が正式に決まった場合、海外球団を退団した選手が
社会人野球入りを希望するケースも考えられるため、
「連盟として、対応を検討する必要はあるだろう」。

日本高校野球連盟の田名部和裕参事は、
「有望な選手が、直接メジャーに行くことに対する危機感は理解出来る」
としながらも、「帰国後に一定の制限をかけるのはプロ側の問題であり、
アマ側としては論評できない」

全日本大学野球連盟の内藤雅之常任理事は、
海外から戻る選手について、「プロから学生野球に戻ることはできないので、
(大学側には)関連しない」

◇「世論はどう思うか」と戸惑い…新日本石油の大久保監督

田沢の所属する新日本石油ENEOSの大久保秀昭監督は、
「驚いた。(海外で)成長して戻ってくる選手もいるだろうに、
世論はどう思うのか」と戸惑いをみせた。

大久保監督は、田沢のメジャー挑戦において、
大リーグ球団との窓口も務めている。
今回のNPBの決定が、田沢の意思に影響を与えるかについては、
「今から変えるということはないだろう」としながらも、
「最初からそういうルールがあった訳じゃないから。
そのルールをしっかりみてみないと」と困惑の色を隠せない。
「田沢は、自分を成長させたい一心。
その動きが、悪い方向にいってガッカリですね」

田沢はこの日、川崎市内の同社野球部合宿所にいたと思われるが、
姿は見せずじまい。

▽メッツ・大慈彌功・環太平洋担当部長

(制限を付けても)メジャーに行きたいという選手は行くと思う。
「だめだったら」と考える選手は通用しない。
以前、韓国人選手がメジャーで活躍し、その後、韓国プロ野球に戻って
プレーして韓国球界に貢献している例がある。
そういう選手は、韓国ではスターであり、誇りであるから、
球界も盛り上がるという例も。
日本球界は子供の夢、国民の夢を摘むようなことはしないでほしいし、
これは日本球界にとっても後退になる。

▽野球評論家・村上雅則さん

田沢君は、かわいそうな立場になったと感じる。
元々、日米間で紳士協定があったが、口約束。
田沢君がメジャー挑戦を表明し、日本球界はそういうことが起こるとは
思っていなかったので、慌てた。
それで対応策をということだが、いつも後手に回っている印象。

▽大リーグ評論家・福島良一さん

プロ野球でプレーする機会が失われる期間ができるようなルールは問題。
従来は、米大学球界からプロの世界に入った場合、
メジャーでプレーできるようになるまで3、4年はかかっていた。
ところが今は1、2年で上がれる状況に。
メジャーを目指す選手がなくなることはないだろう。
米国に挑戦する勇気を持つ選手は、そう多くない。
それだけに、その勇気を尊重するしかないのではないか。

http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/news/20081007k0000m050122000c.html

16年五輪招致:開催都市決定まで1年…東京でイベント

(毎日 10月2日)

東京都が立候補している2016年夏季五輪・パラリンピックの
開催都市決定まで、あと1年となった2日、
東京ミッドタウンで1年前イベントが開かれた。
北京五輪ソフトボール金メダルメンバーの山田恵里(日立ソフトウェア)、
柔道金メダルの内柴正人(旭化成)、北京パラリンピック競泳金メダルの
鈴木孝幸(静岡)ら選手や、石原慎太郎・東京都知事が出席。
東京五輪招致への理解や協力を呼びかけた。

東京オリンピック・パラリンピック招致委員会の河野一郎事務総長が会見し、
8月の北京五輪期間中に国際オリンピック委員会(IOC)委員らへ
向けて行ったPR活動について報告。
「コンパクトな計画や安心、安全、信頼の面で東京の評価は高い。
いい意味での確信を持った」と自信をのぞかせた。

招致委は今後、国内外での招致活動の中で、五輪開催を契機とした
環境問題改善や高齢化に対応した都市再生推進、
経済効果や観光等の活性化など、
スポーツ以外の面での開催意義も訴えて行く方針。
国内では、他の立候補都市に比べて低い市民の支持率向上も図る。
河野事務総長は、「広い視点からメリットを語り、
スポーツ界だけが五輪をやりたがっているという誤解を解きたい」

16年五輪招致には東京、シカゴ(米国)、マドリード(スペイン)、
リオデジャネイロ(ブラジル)の4都市が立候補。
来年2月12日までに、開催計画などを盛り込んだ立候補ファイルを
IOCへ提出し、4~5月にはIOC評価委員会による現地調査を受ける。

開催都市を決めるIOC委員の投票は来年10月2日、
コペンハーゲンで開かれるIOC総会で行われる。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/news/20081003k0000m050052000c.html

ノーベル医学生理学賞:エイズウイルス発見の2博士らに

(毎日 10月6日)

スウェーデンのカロリンスカ研究所は、08年のノーベル医学生理学賞を、
独がんリサーチセンターのハラルド・ツア・ハウゼン名誉教授(72)と、
仏パスツール研究所のフランソワーズ・バレシヌシ教授(61)、
仏パリ大のリュック・モンタニエ名誉教授(76)に授与すると発表。

授賞理由は、ツア・ハウゼン氏が
「子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルスの発見」。
バレシヌシとモンタニエ両氏は、「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の発見」。
この2種類のウイルスは、性交渉が原因で感染が広がる。
ウイルスの発見で病気の理解が深まり、治療法の開発につながったと評価。

授賞式は、12月10日にストックホルムで開かれる。
賞金1000万スウェーデンクローナ(約1億4000万円)のうち、
半分をツアハウゼン氏、残りをバレシヌシ氏らが等分。

ツア・ハウゼン氏は、83年に子宮頸がんの患者から
ヒトパピローマウイルスのDNAを発見、そのウイルスの遺伝子を複製。
これが、感染を防ぐためのワクチン開発につながった。
子宮頸がんと診断された大半からパピローマウイルスが見つかり、
毎年50万人が感染。

バレシヌシ、モンタニエ両氏は83年、後天性免疫不全症候群(エイズ)の
患者から原因となるウイルス(HIV)を発見。
HIVにより発症したエイズが原因で、これまでに約2500万人が死亡。
両博士の発見で、ヒトのリンパ球の機能が弱まる仕組みが分かり、
ワクチン開発の道が開かれた。
世界保健機関によると、HIV感染者は3320万人(07年末現在)。

◇HIV「最初の発見者」論争、米仏で6年以上

HIVの発見を巡っては、モンタニエ氏らと、米国のロバート・ギャロ氏が
共に「最初の発見者」と主張し、論争を繰り広げた。

モンタニエ氏らは、エイズ患者から初めてウイルスを分離、
「LAV」と命名して83年に発表。

一方、ギャロ氏はその翌年、別のウイルス名で
「エイズの原因ウイルスを発見した」と発表。
論争は、米仏両国を巻き込んで6年以上続いたが、
遺伝子分析などで両者がほとんど同じと判明。
このウイルスは後にHIVと命名され、モンタニエ氏に軍配が上がった。

松下修三・熊本大教授(感染免疫学)は、
「ギャロ氏は、HIVの大量培養法や検査キットなどを開発し、
治療薬の開発につなげた。
ノーベル賞は、最初のウイルス分離を重視しモンタニエ氏らに贈られたが、
病気克服への貢献という意味では、両者の果たした役割は同じ程度に大きい」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20081007k0000m040052000c.html

学校の情報化(12)水族館発 iPod授業

(読売 10月2日)

水族館と連携し、ICT(情報通信技術)機器で授業をする学校がある。

20種類以上のサメが、悠々と泳ぐ深さ7メートルのパノラマ大水槽。
潜水服に身を包んで餌をやる女性職員の姿を、
26人の児童がかたずをのんで水面の上から見下ろす。
職員が水槽からあがると、すかさず女児たちが駆け寄って質問。
「怖くないですか?」、
「怖いというより楽しいよ。1か月間訓練を受けたから大丈夫」

福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」で、
9月26日に行われた同市立志賀島小学校5、6年生の総合的な学習の時間。
児童は高田浩二館長(54)らの案内で、
一般客は入れない裏側の施設を中心に見学。

机の上に展示されたビニールを手に、「これは何だろう」と高田館長が問いかけ。
「全部、イルカやウミガメの腸から出てきたもの。
人間が海や陸に捨てたゴミが波間を漂い、好物のクラゲと間違われて
食べられちゃうんだね」との説明に、児童の表情がひときわ引き締まった。

同館は昨年度から、文部科学省の委嘱事業として
「海を伝える“キッズボランティア”」を始めた。
同小の児童が、ホームページの閲覧機能が加わった
デジタル携帯音楽再生機「iPod・Touch」を使い、海洋生物の魅力を伝える。
紹介したい対象を絞り、職員に取材したり、インターネットで集めたりした
情報をアイポッドに取り込む。
10月30日には、アイポッドを提示しながら来館客に発表。

「アイポッドを使いこなすことで、情報処理能力、自己表現力を身に着け、
奉仕する喜びも体験してほしい。
機器は、ゲーム機などに親しんでいるいまの子供が
学習に取り組む上での演出に過ぎない」

同館は、PDA(携帯情報端末)やLAN接続できる携帯電話を使い、
子供たちが新聞を作る授業などを仕掛けてきた。
「貴重で希少な物の収集に腐心するばかりではなく、
博物館の最大の機能は物の情報発信にある。
学社融合の一つの形として、地域の学校と連携しながら
子供が情報を使いこなす力を養う手伝いをしたい」

6年生の中川拓海君(12)が選んだのは、
環境汚染に弱いとされるイルカの一種スナメリ。
「博多湾にも来るし、イルカなのに背ビレがないところに興味を持った。
自分たちの海が人間の手で汚され、
海の生物が被害を受けていることを伝えたい」

世界で唯一、淡水に住むバイカルアザラシを調べる
同学年の松田友里さん(12)は、
「インターネットにつながったり、地図が見られたり、
アイポッドはすごいおもしろい。
お客さんに説明するときにも役立つと思う」

担任の高倉直太教諭(39)は、
「子供たちは、まだ機器の操作に魅力を感じている段階だが、
表現する魅力へとつなげたい」と期待を込める。

地域の社会教育施設と手を組むことで、
学校の情報化も新たな可能性が見えてくる。

◆学社融合

学校教育と社会教育がそれぞれの役割分担を前提とした上で、
そこから一歩進み、学習の場や活動など両者の要素を
部分的に重ね合わせながら一体となって、
子供たちの教育に取り組んでいこうという考え方。
文部省(当時)の生涯学習審議会が、1996年に出した答申に盛り込まれた。
学校だけでは成し得なかった、より豊かな子供たちの教育が可能になる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081002-OYT8T00190.htm

2008年10月6日月曜日

学校の情報化(11)ゲーム通じ数学体感

(読売 10月1日)

ゲームを通して、数学の大切さを学ぶ授業がある。

「ゲーム制作と数学の意外な関係」。
そんなタイトルがついた授業は、塚越克己教諭(52)自身が、
ゲームに挑むところから始まった。
「ずいぶん練習したんだけどなあ」。生徒たちには大受けだ。

千葉県船橋市立湊中学校のコンピューター室で、
3年生の選択数学の研究授業。
ゲームに興じて見せるのは、授業のつかみに過ぎない。

ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、社会貢献の一環で協力し、
千葉大学の藤川大祐准教授が理事長を務めるNPO法人
「企業教育研究会」が進める授業の一つ。

ゲームのプログラミングに関数が使われていることを実体験することで、
数学が生活に大きなかかわりがあることを理解させようという趣向。

17人の生徒は、数式を入れ替えると、
ゲーム上のサルのキャラクターの動きが変わることを実感し、
個々のパソコンの画面に用意された升目に、サルがバナナを三つ以上取れる
直線や曲線を描き、その線が1次関数や2次関数のどんな数式になるかも考えた。

SCEのゲームプログラマーも、映像で登場。
小学校の時のゲームを巡る経験を語った上で、
「ゲームは、中学校で学んだ数学抜きには語れない」と強調。
最後に、3次関数や三角関数の数式を入力、キャラクターがまさに
ゲームらしい動きになることを見せて、授業は終わった。

教師用パソコンから配布されたアンケートで、多くの生徒が
「今後もこうした授業を受けたい」と回答。

企業教育研究会は、メディアとの基本的なつきあい方の能力を指す
メディアリテラシー教育の一環で、
SCEとの授業にも2年前から取り組んできた。
希望に応じて、年間15件から20件程度、学校に足を運んでいる。

SCEも、様々な教育プログラムを研究してきた。
調べ学習で学んだことをゲームで表現する、「ゲームのシナリオを作ろう!」
といった授業も、すでに実施。

船橋での研究授業後の研究会では、
数学や情報教育を担当する市内の教師が参加、
「生徒が線を描くと同時に、数式が表示されるようにできれば、
もっとわかりやすくなるのでは」といった提案も。

「塚越先生のように、新しいことになかなか挑戦できない」といった本音も。
情報教育で、市内の教員のまとめ役である塚越教諭自身、
「数学の授業で、外部の団体の支援をいただくのは初めての経験」。
企業と学校の関係は、まだまだ進んでいないことの裏返しとも言える。

今回のような授業の後、数学への興味をどうつないでいくかも課題。
数学は、世の中の役に立つということを生徒に実感してほしいというのは、
集まった教師たちの共通の願い。
「学校を卒業してから何の役に立つの?」と考える生徒が多い
教科とされるだけに、数学を扱う企業の側の積極的なかかわりが、
もっとあっていい。

◆「社会に出て役立つ」3分の2

今年度の全国学力・学習状況調査で、
「数学の授業で学習したことは、社会に出た時に役立つ」と答えた
中学3年生は、「どちらかと言えば」を含めて65.4%。
国語(79.5%)を大きく下回った。
「数学で学習したことを、普段の生活の中で活用できないか考える」
という生徒も3分の1に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081001-OYT8T00293.htm

大分、岩手両県民結ぶラジオ交流 長寿コーナー17年

(岩手日報 10月4日)

第63回国民体育大会(大分国体)の開催地のラジオから、
聞き覚えのある声が流れる。
IBC岩手放送と大分放送(OBS)が、水曜午後の番組内で生放送する
「岩手・大分ホットライン」。

スタートから17年、両県の名産品をパーソナリティーが
試食の音と感想で紹介し合う約10分間の長寿コーナーが、
遠く離れた2つの土地の交流をはぐくんでいる。

同コーナーは、IBC「ワイドステーション」、OBS「ごごらくワイド」の番組内で
毎週水曜日午後2時40分ころから放送。
互いに名産品を送り、その日の両県内の話題や同コーナーへの
メッセージを取り上げる。

名産品のプレゼントのほか、熟練のアナウンサーによる
ユニークなやりとりが好評。
1991年4月のスタートから根強い人気を誇る。

コーナー開設のきっかけは、酒席の話題。
かつて両社の東京支社の懇親会で、
「気候風土がまったく違うところで、生放送ができればおもしろい」
会話が弾み、トントン拍子で共同製作の実現に至った。

現在、IBCが大塚富夫さん(59)と水越かおるさん(46)、
OBSは松井督治さん(47)と安波利恵さん(37)が担当。
各市町村に特産品をつくる「一村一品運動」で、
地域活性化を図る大分県と、地場産品が豊富な岩手県を結び、
リスナーを楽しませている。

岩手の県産品で一番人気だったのは、大船渡サンマ。
大塚さんは、「岩手のサンマと大分のカボスは、相性がいいからかな」と
長寿コーナーと両県交流を軽妙に分析。

水越さんは、「夏の甲子園などは、大分を応援するメッセージがよく届く」と
相互交流に深まりを感じる。

県勢の健闘が続く大分国体は、7日まで。
安波さんは、「大分の選手と同じように、岩手の結果も気になる。
岩手(盛岡市立高)の新体操男子を見たときは感動した」と目を輝かせ、
松井さんも、「大分の人も番組を通じ、岩手を身近に感じていると思う。
国体は大分、岩手で上位を狙ってほしい」とマイクを通して、
「遠くて近い」本県に友情応援を呼び掛ける。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081004_12

「コカ・コーラの避妊効果」研究にイグ・ノーベル化学賞

(CNN 10月3日)

「笑えるとしか言いようがなく、しかも記憶に残り、人々を考えさせる業績」
に贈られる、毎年恒例となったイグ・ノーベル賞の第18回授賞式が、
米ハーバード大学のサンダース・シアターで催され、
「コカ・コーラの避妊効果」について研究し、真反対の結果を導き出した
2つの研究グループに、化学賞が贈られた。
片方は、「避妊効果がある」との結論で、もう片方は「効果がない」。

「コカ・コーラに避妊効果がある」との研究は、
米ボストン大学医学部のデボラ・アンダーソン教授が1985年に、
米医学誌の権威ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに発表。
コカ・コーラの中でも、特にダイエット・コークの避妊効果が最も高かった。

同様の研究は、台湾の研究グループも行っており、同時受賞となった。
台湾のグループは、コカ・コーラならびに他のソフトドリンクには
「避妊効果がない」ことを確認。
清涼飲料水大手コカ・コーラは、イグ・ノーベル化学賞についての
問い合わせに、回答を拒否。

高価な偽薬(プラセボ)ほど、安い偽薬よりも効果が高いことを確認した
米デューク大学のダン・アリエリー行動経済学教授が、医学賞を受賞。
同教授は、体の70%以上をやけどして入院した3年間に、
病院内の患者の行動を観察。

やけどの痛みで夜に飛び起きる患者が、看護師から鎮痛剤を受けて
すぐ眠る様子を何度となく見かけたが、
看護師から注射は単なる生理食塩水だと聞かされ、偽薬とその効果に注目。
「何かを期待すれば、人間の脳はそれを実現させるよう働く」と述べ、
価格が安い後発医薬品「ジェネリック医薬品」も、
名前と値段を変えれば高い効果が上がると主張。

脳を持たない真正粘菌が、迷路の最短経路を見つけることを発見した、
中垣俊之・北海道大准教授ら6人の研究が、認知科学賞を受賞。
日本人の受賞は、昨年「牛糞からバニラ香料成分の抽出」研究で受賞した
山本麻由さんに続き、2年連続。

同賞は毎年、本家ノーベル賞の発表を控えた時期に発表。
授賞式には、歴代のノーベル賞受賞者が出席。
今年は化学賞受賞者に敬意を表して、
壇上でコカ・コーラを飲んで祝福するなど、会場を盛り上げた。

今年の受賞一覧は以下の通り。
◎栄養学賞:
「同じ食べ物でも、名前の聞こえが良い方がおいしく感じる」ことを示した
イタリア・トレント大学のマッシミリアーノ・ザンピーニ氏と
英オックスフォード大学のチャールズ・スペンス氏

◎平和賞:
「植物にも人間と同様に尊厳がある」ことを法的に定めた、
スイスの人間以外の生物工学に関する連邦倫理委員会とスイス国民

◎考古学賞:
考古学の発掘現場付近に生息するアルマジロが、
発掘品をより深く埋めたり持ち去ったりすることで、
発掘現場がメチャクチャになるだけではなく、
歴史が変わってしまう可能性があることを示した、
ブラジル・サンパウロ大学のアストルフォ・ゴメス・デ・メロ・アラウージョ氏と
ジョゼ・カルロス・マルセリーノ氏

◎生物学賞:
「イヌに寄生するノミは、ネコに寄生する個体よりも、より高く飛ぶことができる」
ことを発見した、フランス国立トゥールーズ獣医大学の
マリークリスティーヌ・カディエルジュ、クリステル・ジョベール、ミシェル・フランの3氏

◎医学賞:
「高価な偽薬(プラセボ)は安価な偽薬よりも効果が高い」ことを確認した
米デューク大学のダン・アリエリー行動経済学教授

◎認知科学賞:
脳を持たない単細胞生物の真正粘菌が、迷路の最短経路を見つけることを
発見した、中垣俊之・北海道大准教授、小林亮・広島大教授、
石黒章夫・東北大教授、ハンガリー・セゲド大学のアゴタ・トス氏

◎経済学賞:
プロのストリッパーの排卵周期が、チップ収入に影響を与えることを発見した
米ニューメキシコ大学のジェフリー・ミラー、ジョシュア・タイバー、
ブレント・ジョーダンの3氏。
ストリッパーが最も稼ぐのは、生殖能力が最も高い時期。

◎物理学賞:
大量の糸や髪の毛は、外部要因がなくとも必ず絡まることを数学的に証明した、
スクリップス海洋研究所のドリアン・ライマー氏と、
米カリフォルニア大学サンディエゴ校のダグラス・スミス氏

◎化学賞:
「コカ・コーラの避妊効果」についての研究で、
ボストン大学医学部のデボラ・アンダーソン教授、
台湾の台北医科大学の研究グループ。
アンダーソン教授らの研究は「避妊効果がある」で、
台北医科大学の研究は「効果がない」と、全く正反対の結果。

◎文学賞:
「バカ野郎:物語的手法を用いた、組織内で経験した憤慨についての分析」
研究で、英カス・ビジネス・スクールのデイビッド・シムズ氏

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200810030007.html

「迷路の近道、菌でも探せる」中垣氏らにイグ・ノーベル賞

(読売 10月3日)

ノーベル賞をもじって、ユーモアあふれる研究に贈られる
「イグ・ノーベル賞」の授賞式が2日、米ハーバード大で行われ、
単細胞生物の真正粘菌が迷路の最短経路を見つけることを発見した
中垣俊之・北海道大准教授ら6人に、
今年の「認知科学賞」が贈られた。

中垣准教授らは、真正粘菌が迷路全体に広がった後、
エサを迷路の入り口と出口に与える実験を行った。
粘菌は、最短経路以外に広がっていた部分を次第に縮小し、
最後は1本の管状になって両端でエサを食べる最も効率的な形に。
「脳も神経もない原始的生物でも、高度な情報処理機能をもつ」として
8年前、英科学誌ネイチャーに発表。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081003-OYT1T00264.htm

2008年10月5日日曜日

学校の情報化(10)1人1台 進度も様々

(読売 9月30日)

小型パソコンを1人1台配布した新たな実証実験が、小学校で始まった。

「休み時間もやってみたい人は?」
授業の終了時、情報教育担当の村田直江教諭(60)が問いかけると、
25人の児童のほぼ全員が手を挙げた。
挙げなかったのは、まだパソコンの操作に夢中になっていた数人だけ。

千葉県柏市立旭東小学校の5年1組で、
半導体メーカーのインテルと情報機器商社の内田洋行による実証実験。
同小の5年生2クラスと同市立手賀東小学校の4、5年生各1クラスで、
小学館の漢字の書き取りや算数の計算問題のソフトを使い、
学習効果や、学校での使い勝手について探る。

1組の児童には、タッチペンで画面に書き込むタブレット型パソコンが
初めて配布された。
その大きさを見て、「DS?」とニンテンドーの人気ゲーム機を
思い浮かべる児童も。

使い方を覚えるまでは、担任や両社の担当者、様子を見に来た
熊谷美利校長までが加わって面倒を見たが、
子供たちはやがて、ソフトを自在に使い始めた。
いずれは、テレビ会議の端末としても活用してみたい。

「私たちだと慣れるのに時間がかかるが、デジタル世代は
タッチペンの書き味も気にならないようです」と村田教諭。
情報教育指定校の同小で情報教育を担当して7年目で、
市の教育の情報化推進委員も務める立場。
情報機器によって、いかに効率よく学べるかはよくわかっている。

「漢字の書き取り一つにしても、先生に教わるのではなく、
自分で気づくのがいい。子供たちの進度は一人一人違うが、
その子なりの評価が出来、授業中に遅れている子を重点的に見て回れる。
みんなそろうまで待ちなさい、と言わなくていい」

1人1台にパソコンが渡ると、「<やっちゃだめ>の教育が出来なくなる」。
村田教諭は、情報機器が従来の教育観を変える存在と見る。
パソコンを家庭に持ち帰らせることまではしないが、
保存されたデータで、個々の進度やつまずき部分が分かるため、
宿題の中身も個人個人で変わることになる。

柏市内の学校では、小中61校全校で、校内のどこでも
インターネットが使えるLAN(情報通信網)回線が整備済み。
同小は、情報教育指定校になって約20年がたち、
普通教室でも無線LANが使える上、コンピューター教室自体も
普段から開放されている。
子供たちが自在に使えるパソコンを持てば、
ネットでの調べ学習での利用なども進む。

学校のLAN環境整備を待たず、ニンテンドーDSを
学習に使う動きも広がっている。
2006年ごろから、英語や算数、国語の学習ソフトが相次いで登場。
陰山英男・立命館小学校副校長や
藤原和博・前東京都杉並区立和田中学校校長らも取り入れた。

ここに来て、学校のネット環境の整備が進んでいる。
こうした整備によって、学校で使える小型パソコンの開発・活用も
はずみがつきそうだ。

◆DSの学習活用

文部科学省によるNPO法人パソコンキッズへの委託事業が
昨年度からスタート、今年度は全国の小中高校17校が
ニンテンドーDSを学習に使っている。
京都府八幡市のように、市立中4校すべてで英単語の学習に使う例も。
藤原和博氏が、府の特別顧問になった大阪でも活用の動きがある。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080930-OYT8T00234.htm

寂しい人は寒さを感じやすい?

(WebMD 9月16日)

社会的隔離は人に寒気を感じさせることを、
トロント大学の心理学者Chen-Bo ZhongとGeoffrey J. Leonardelliが発見。
人に疎外感を感じさせると、室温程度のぬるい飲食物より、
熱いスープやコーヒーを選ぶことも発見。

Leonardelli博士は、「社会的に排除されたとき、
人が熱いコーヒーやスープを好むということは特筆すべき。
温かいチキンスープが、社会的隔離の対処メカニズムである可能性を、
我々の研究は示唆している」

Zhong博士とLeonardelli博士は、大学生に2つの実験を実施。
学生65名を、2つのグループに分けた。
1番目のグループには、仲間外れにされたときのことを思い出させた。
2番目のグループには、仲間に加わっているときのことを思い出させた。
その途中で、わざとメンテナンスの担当者に、
室温が何度くらいか質問させた。

室温は、常に同じであった。
しかし、学生の推測は11.6℃から40℃まで幅があった。
寂しい感情を思い出した人は、社会的に支えられている感覚を
思いだした人より、推測した室温が低かった。

2つ目の実験では、52名の学生にコンピュータのボール投げゲームをさせた。
学生は、他の人とオンラインでプレイしているものと思っていたが、
ゲームには仕掛けがあった。

半分の学生には、数回ボールが回るようにした。
他の人には、30回以上ボールが回っていると思わせながら、
学生を仲間外れの状態にした。
もう半分の学生には、その他の「プレーヤー」と同じくらいの回数でボールが来た。

その後、学生たちの気をそらすため意味のないマーケティング調査を行い、
ホットコーヒー、ホットスープ、りんご、クラッカー、
よく冷えたコーラがどのくらい欲しいか質問。

もうおわかりだろう。
ゲームで疎外された学生は、仲間とプレイした学生より、
スープやコーヒーを欲した。

Zhong博士とLeonardelli博士は、私たちが心で感じること、体で感じること、
頭で考えることが、すべてつながっているということがポイントである。
寒いという感覚は、人の社会的排除の経験の一部。

社会的排除は、寒気や不快感を起こさせるだけではない。
寂しさは、不安やうつを誘発すると知られ、
身体的疼痛経験に関係する脳領域を活性化させる。

隠喩(メタファー)とは、「成功は、孤独と非情である」というように、
話法の一形態で、文字の上では違っていても、
一方でもう一方のことを述べること。
「隠喩は、単なるコミュニケーションのための言葉ではない。
隠喩は、人々が周囲の世界を理解し、経験するために欠かせない入れ物」

書籍『Chicken Soup for the Soul』シリーズを挙げ、
「温かいスープを食べることは、文字どおり社会的排除に対する
対処メカニズムなのではないか」と示唆。

『Psychological Science』9月号に発表。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=80270

日本人は本土型か琉球型 理研、7千人の遺伝子解析

(共同通信社 2008年9月26日)

日本人は、遺伝的に「本土型」と「琉球型」の2つのグループに
大別できることを、理化学研究所の鎌谷直之グループディレクターらが、
約7000人のゲノム(全遺伝情報)のわずかな個人差を、
統計学的に解析して突き止めた。
米人類遺伝学専門誌電子版に発表。

日本人の起源については、在来の縄文人と北東アジアから渡来した
弥生人が混血する一方、アイヌや沖縄の人は弥生人の影響をあまり受けず、
縄文人の要素が強いとする学説「二重構造モデル」があるが、
今回の結果はこれを支持する内容。
鎌谷さんは、「大量のデータを網羅的に解析しており、証拠力が高い」

解析は、人によって遺伝子の塩基配列がところどころ異なる
一塩基多型(SNP)が、病気のかかりやすさや薬の副作用の現れ方に
どう関連しているかを調べる研究の一環。

約7000人について、1人当たり約14万カ所のSNPを、
個人間の近縁関係が分かるよう統計学的に解析すると、
大きく2つの集団に分かれた。
一方は、北海道から九州までの大部分の人を含み、
もう一方は沖縄の人がほとんどを占めた。

両者の違いを特徴付ける代表的なSNPは、
髪の毛の太さや耳あかの湿り具合にかかわる遺伝子。
東から西に行くに従い、比較のために同時解析した
中国人のグループに近くなり、西日本ほど混血度が高く、
弥生人の影響が大きいことが示された。

注)米専門誌は「The American Journal of Human Genetics」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=80335

宇宙の食糧:大麦が有望 ストレスあるがISSですくすく

(毎日 10月1日)

国際宇宙ステーション(ISS)で育った大麦は、
有害な活性酸素を消去する遺伝子の働きを高めていることが、
岡山大などの研究で分かった。

宇宙の厳しい環境が、植物に強いストレスを与えたことを示した。
生育への影響はなかったことから、将来の宇宙での暮らしを支える
食糧として期待。日本育種学会で発表。

ISSのロシア実験棟内で、気温25度、湿度70%の条件で栽培。
実験開始から3日目に発芽し、28日目で50~60センチに成長。

地上に持ち帰った後、葉の遺伝子を調べると、
活性酸素を消去する4種類の遺伝子の働きが地上で育った大麦に
比べて、2~9倍も高くなっていた。
病原菌に感染すると活性化する遺伝子など、
他の遺伝子に変化はみられなかった。

ISSは、高度約400キロを周回している。
重力は極めて弱く、宇宙放射線による1日当たりの被ばく量は、
地上で自然界の出す半年分に相当。

杉本学・岡山大准教授(細胞分子生化学)は、
「大麦は、米や小麦に比べて乾燥や高低温の環境にも強い。
宇宙での食糧源として期待できる」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20081002k0000m040137000c.html