2008年10月8日水曜日

学校の情報化(13)新潟県上越市の事務主幹 二見恵美子さんに聞く

(読売 10月3日)

学校の情報化に奮闘してきたベテラン職員が、過去と未来を語る。

校舎内を歩くと、まず廊下の広さに驚く。
壁には、絵画など市民の作品が並ぶ。
げた箱一つ一つに雨水の受け皿を置き、
音楽室には動かしても音の出にくいイスを入れた。
夏の教室で測った窓際の気温のデータを示して、
ひさしを基準いっぱいまで長くした。
理科室も、掃除用具入れも、使い勝手のいいように――。

校舎の全面改築が2年前に成った新潟県上越市立城北中学校には、
様々なアイデアが施され、教育関係者の視察が絶えない。
中野敏明校長(59)から改築の全権を委任された
事務主幹の二見恵美子さんの説明は、実に楽しげだった。
教育委員会との交渉で、「日本一の学校を作る」とまで発言して誕生した
「現場の声を生かした学校」。
事務主幹は、将来的に事務長的な役割を担う職。

学校事務職員ひと筋に約40年。
学校の情報化で、約20年の歴史を持つ上越市で、
初期から中心的役割を果たしてきた。
「情報化は、コンピューターを入れるだけではない。
教職員が互いの顔を見ながら情報交換することが大事。
人間関係が希薄になっては意味がない」、
「事務職員は、教育行政と学校現場のパイプ役になり、
地域連携でも先導的な役割をすべきだ」と訴える。

平成の大合併で不要になった旧役場の町長室の机を、
校長室用に転用できるよう頼み、花壇の植栽の予算が足りないとなれば、
地元の福祉施設に協力してもらうなど、
切りつめる所は切りつめ、知恵も絞った。
「役所から予算を引き出すだけでは、限界がある。
事務職員が、財務のプロとして認められる存在になる必要がある」

市内の各校に、事務用コンピューターが配備されたのは1989年。
当時は画期的だったが、「はて、何をしよう」と仲間と考えた。
電子メールもWindowsもない時代。
PTAなどの会計処理、学校の備品管理など5項目で共通フォーマットを配った。
学校事務の標準化の先駆けだ。
地元の上越教育大とも連携し、職員や教員に研修会を開いた。

96年には力強い味方ができた。
市、教育関係者、企業人らが教育関係機関のネットワーク化を
進めるために作った研究会。
2002年には、研究会の役割を取り込んだ
NPO法人上越地域学校教育支援センターが生まれた。
「上越では、情報化がボトムアップで進められたことに特徴がある」

一方で01年から、事務の共同実施が、
二見さんの勤務校などで試験的に始まった。
共同実施は2年前に全市、今年度は県全体に広がっている。

年間約2000件も学校に舞い込む様々な文書はかつて、
手書きで一つ一つ記録されていた。
コンピューター化と事務の共有化で、空いた時間は、
人でなければできないことをやるべき。
学校の様子を熟知した事務職員が、仕事の領域を広げる必要がある」
二見さんの場合、まさに校長のもとで学校経営を一緒に考える立場に。

城北中では、教員がいっさい会計処理をしていない。
「他の学校もそうなったほうがいいと思うし、これからそうなると思う」。

「先生を子供たちに返す」には、事務職員が変わることが不可欠。
学校の情報化は、目的ではなく手段。そのことを痛感した。

◆ふたみ・えみこ
上越地域の小中学校8校に勤務し、城北中は5年目。
2006年から事務主幹。59歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081003-OYT8T00158.htm

0 件のコメント: