2008年10月7日火曜日

学校の情報化(12)水族館発 iPod授業

(読売 10月2日)

水族館と連携し、ICT(情報通信技術)機器で授業をする学校がある。

20種類以上のサメが、悠々と泳ぐ深さ7メートルのパノラマ大水槽。
潜水服に身を包んで餌をやる女性職員の姿を、
26人の児童がかたずをのんで水面の上から見下ろす。
職員が水槽からあがると、すかさず女児たちが駆け寄って質問。
「怖くないですか?」、
「怖いというより楽しいよ。1か月間訓練を受けたから大丈夫」

福岡市の水族館「マリンワールド海の中道」で、
9月26日に行われた同市立志賀島小学校5、6年生の総合的な学習の時間。
児童は高田浩二館長(54)らの案内で、
一般客は入れない裏側の施設を中心に見学。

机の上に展示されたビニールを手に、「これは何だろう」と高田館長が問いかけ。
「全部、イルカやウミガメの腸から出てきたもの。
人間が海や陸に捨てたゴミが波間を漂い、好物のクラゲと間違われて
食べられちゃうんだね」との説明に、児童の表情がひときわ引き締まった。

同館は昨年度から、文部科学省の委嘱事業として
「海を伝える“キッズボランティア”」を始めた。
同小の児童が、ホームページの閲覧機能が加わった
デジタル携帯音楽再生機「iPod・Touch」を使い、海洋生物の魅力を伝える。
紹介したい対象を絞り、職員に取材したり、インターネットで集めたりした
情報をアイポッドに取り込む。
10月30日には、アイポッドを提示しながら来館客に発表。

「アイポッドを使いこなすことで、情報処理能力、自己表現力を身に着け、
奉仕する喜びも体験してほしい。
機器は、ゲーム機などに親しんでいるいまの子供が
学習に取り組む上での演出に過ぎない」

同館は、PDA(携帯情報端末)やLAN接続できる携帯電話を使い、
子供たちが新聞を作る授業などを仕掛けてきた。
「貴重で希少な物の収集に腐心するばかりではなく、
博物館の最大の機能は物の情報発信にある。
学社融合の一つの形として、地域の学校と連携しながら
子供が情報を使いこなす力を養う手伝いをしたい」

6年生の中川拓海君(12)が選んだのは、
環境汚染に弱いとされるイルカの一種スナメリ。
「博多湾にも来るし、イルカなのに背ビレがないところに興味を持った。
自分たちの海が人間の手で汚され、
海の生物が被害を受けていることを伝えたい」

世界で唯一、淡水に住むバイカルアザラシを調べる
同学年の松田友里さん(12)は、
「インターネットにつながったり、地図が見られたり、
アイポッドはすごいおもしろい。
お客さんに説明するときにも役立つと思う」

担任の高倉直太教諭(39)は、
「子供たちは、まだ機器の操作に魅力を感じている段階だが、
表現する魅力へとつなげたい」と期待を込める。

地域の社会教育施設と手を組むことで、
学校の情報化も新たな可能性が見えてくる。

◆学社融合

学校教育と社会教育がそれぞれの役割分担を前提とした上で、
そこから一歩進み、学習の場や活動など両者の要素を
部分的に重ね合わせながら一体となって、
子供たちの教育に取り組んでいこうという考え方。
文部省(当時)の生涯学習審議会が、1996年に出した答申に盛り込まれた。
学校だけでは成し得なかった、より豊かな子供たちの教育が可能になる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081002-OYT8T00190.htm

0 件のコメント: