2010年1月9日土曜日

「東京」にサイバー拠点を確保せよ

(日経 2009-12-24)

1990年代、ウオーターフロントブームに沸いた
東京の天王洲など湾岸地帯が、再び静かな活況。
今回のブームに、人影はあまり見られない。
無骨な倉庫などが立ち並ぶ街の風情も、さほど変わらない。
変化は、内部で起こっている。
用済みの自動車修理工場などが、デジタル経済の頭脳である
データセンターに生まれ変わっている。

「供給不足だ」。
インターネット企業どうしの接続事業やデータセンターを運営する
外資系大手、エクイニクスの古田敬社長は、
昨今のデータセンター建設ラッシュの状況を説明。

野村総合研究所の予測によると、国内データセンターの
市場規模は、2009年度で1兆2490億円。
年平均4.2%の成長が続き、14年度には1兆5000億円を突破。

ネットワーク経由で、情報システムの機能を利用できる
「クラウドコンピューティング」などの普及もあり、
データセンターの増設は世界中で進んでいる。
日本の特徴は、極端な首都圏への一極集中。

野村総研は、「都心部を中心に、サーバー設置場所の供給が不足し、
企業にとって、データセンターの確保が喫緊の課題」

アジアには、データセンターが多数立地するシンガポールなどの
都市もあるが、東京の集積度は「群を抜いている」
(エクイニクスの古田社長)。

背景には、施設の運営に欠かせない電力や通信環境の良さ。
通信インフラについては、東京の右に出る街はない。
都心部を起点に、NTT東西が敷設した未活用の光回線
「ダークファイバー」。
NTTに対する開放義務付け制度により、首都圏では、
「圧倒的な低コスト」でこの通信基盤を利用でき、
これが新たな施設を呼び寄せる。

世界のデータセンターの増設をけん引するのは、
グーグルやアマゾン・ドット・コム、セールスフォース・ドットコム
などの米国勢。
これらの企業は、米国に集中していたデータセンターの分散に
動いており、アジアでは「東京」が有力な受け皿。

09年、都道府県地価調査で、商業地が前年比5.9%下落。
百貨店売上高も、20カ月以上にわたり前月割れが続く。
データセンターを核に、アマゾンなど国内で物販などで成長を続ける。

デフレが鮮明な日本のマクロ経済の状況と、裏腹な首都圏の
データセンターラッシュが、膨張する日本のデジタル経済を支える。
一極集中というリスクをはらみつつ。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt091222.html

「ベスト尽くす」と小平 スピードの五輪メダル候補

(2010年1月5日 共同通信社)

バンクーバー冬季五輪のスピードスケートで、
女子1000メートルなど4種目に出場し、メダル獲得を狙う
小平奈緒が、所属する長野県松本市の相沢病院で、
「ベストを尽くし、応援してくれる方と喜びを分かち合いたい」
抱負を述べた。

新年は、3日から氷上練習を開始、
帯広市で開催される世界スプリント選手権を足掛かりに、
五輪での活躍を誓う。

「本番へ、どうコンディションを合わせていくかだけを考えている」
と2月をにらんだ。

同病院は、昨春信州大を卒業し、進路が未定だった小平を、
一般職員として雇い、長期出張扱いで
競技に打ち込める環境を整えた。

相沢孝夫院長は、「地元の選手が困っていると聞いて
支援を決めた。これほど活躍するとは」と驚いていた。

約1500人の職員を抱える相沢病院。
小平に対し、医療機関ならではのサポートも行っている。

今季の海外遠征では、「エコノミークラス症候群」を避けるため、
ビジネスクラスのチケットを用意し、かぜの予防にマスクを配布。
新型インフルエンザの予防接種もすでに済ませた。

相沢院長は、「そういうのは得意分野ですから。
職員が五輪に出るなんて前代未聞。
応援する患者さんの輪も広がっている」と喜んでいた。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/5/113955/

北の国からのメッセージ:バンクーバー冬季五輪/3 先住民、主体的に参加

(毎日 1月4日)

聖火リレーは、世界で2番目に広いカナダの国土を一周、
五輪が開幕する来月12日に、バンクーバーに戻ってくる。
国内ルートでは、過去最長の4万5000キロ、
約1万2000人の走者でつなぐ旅は、200以上の民族が暮らす
カナダの文化をめぐる旅。
聖火は、ある時は先住民のカヌーが運び、
ある時は犬ぞりに乗ってつないできた。

五輪組織委員会(VANOC)は、今大会の理念に
先住民の参加を掲げる。
IOCが、99年に策定した五輪運動の「アジェンダ(行動計画)21」
で促した「先住民参加」の理念を反映。

カナダの先住民は、かつてインディアンと呼ばれた
「ファーストネーションズ」、同じくエスキモーといわれた「イヌイット」、
欧米人との混血(メティス)を指す。
今大会では、バンクーバー周辺に居住区がある「マスクエアム」と
「ツレイル・ウォウトゥス」、ウィスラー周辺の「スコーミッシュ」と
「リリワット」の4部族の先住民が参加。

先住民は、19世紀半ばに定められた法律によって、
政府から居住地への移住と、強制的な英語教育による
同化政策を強いられた、いまいましい過去を持つ。
政府が公式に謝罪したのは、なんと一昨年。
五輪準備のために設立された4先住民協会の
テワニー・ジョセフ最高経営責任者(CEO)は、
「悲劇的で恥辱にまみれた歴史だった。
経験した者は、一生かかっても癒やされるものではない」
スコーミッシュ族出身ながら37歳のジョセフCEOは、
直接差別された記憶はないものの、過去の歴史の話を
口にするときには、目に怒りの色が浮かぶ。

先住民への差別的政策は、世界各地に残る負の側面。
00年シドニー五輪では、オーストラリアの先住民アボリジニが
参加して融和を唱えた。
02年ソルトレークシティー五輪でも、先住民への配慮が。
式典の出席など儀礼的なことが多く、
VANOCがIOCに先住民参加を持ちかけた際も、
「飾りではないのか」と、真意をただされた。

今回、羽根飾りのついた民族衣装など独自の文化を
紹介する点では、これまでより規模が大きくなっただけ。
先住民が主催者の一員となり、政府、バンクーバー市などと
同じ立場で関連施設の建設に携わるなど、
五輪に主体的にかかわったことが、過去よりも踏み込んだ点。

何より心の問題として、一般のカナダ人と同格に扱われ、
互いに尊重しあったことが大きい。
ジョセフCEOは、「我々の文化では、『7世代先のことを考える』と言う。
20年後に、『私たちの付き合い方は五輪で変わった』と、
振り返ることができれば最高だ」

カナダは多文化国家。
フランス系住民が多いケベック州では、今も独立機運がくすぶる。
五輪への先住民の参加が、モザイクと言われる国内の民族融和の
先例となることを、VANOCも、4先住民協会も望んでいる。
VANOCのジョン・ファーロングCEOは、
「聖火リレーで、国民はカナダの一員であることを実感しているはず」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/01/04/20100104ddm035050069000c.html

自閉症は脳の神経機能低下 タンパク質減少を確認 予防、治療の標的に

(2010年1月6日 共同通信社)

自閉症の人の脳の中では、神経から神経に情報を伝える
化学物質を回収し、再利用するタンパク質
「セロトニン・トランスポーター」が少なく、
神経機能が低下していることを初めて確かめたと、
浜松医大の森則夫教授らが発表。

化学物質「セロトニン」は、感情、睡眠、食欲、不安などに関係。
森教授は、「セロトニン・トランスポーターという、
予防や治療に役立つ具体的な標的を提示。
研究が大きく進むだろう」

森教授らは、知的障害がない「高機能自閉症」の
18~26歳の男性20人について、陽電子断層撮影法(PET)で
セロトニン・トランスポーターの分布を調査。

脳全体で、健常者より密度が低いことが判明。
自閉症の症状との関係を分析すると、帯状回という部位での
密度低下は、「相手の気持ちを読めない」という症状と、
視床での低下は強迫症状と関係があることが分かった。

これまで、自閉症の人の一部でセロトニンの血液中の濃度が高く、
自閉症との関連が指摘。

グループの辻井正次・中京大教授(発達臨床心理学)は、
「自閉症は、育て方の問題ではなく、明確な脳の障害があることが
見いだされた。障害を前提に、社会に適応して生きられるよう
サポートしていくことが大事だ」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/1/6/114012/

2010年1月8日金曜日

「天を衝く」の英訳出版 静岡の西村さん

(岩手日報 1月5日)

静岡県函南町の元大学教授、西村嘉太郎さん(80)は、
盛岡市在住の直木賞作家高橋克彦さんの歴史小説
「天を衝く」の英訳本を出版。

「主人公の武将九戸政実の生き方を、海外の人にも
知ってもらいたい」と、5年がかりで翻訳した労作、
高橋さんも、「英訳はうれしいのひと言。
県内の外国人に読んでもらいたい」
「天を衝く」は、安土桃山時代、南部一族の九戸政実が
豊臣秀次率いる奥州討伐軍に戦いを挑んでいく姿を描いた。
英訳のタイトルは、「To Tempt Heaven」。748ページ。

福島大などで英語を教えた西村さんが、
「天を衝く」と出合ったのは2001年、
大学設立を手伝うために渡ったタイ。
空港ラウンジに置いてあった文芸雑誌の連載に引き込まれた。
帰国後の04年、地元書店で単行本を見つけ、
その面白さを世界に発信したいと、翻訳を決意。
知人を通じて、原作者の高橋さんと会い、翻訳の許可をもらった。
共訳者に、知人の米国人ピーター・W・ウオーカーさんを迎え、
05年から本格的に翻訳に取り掛かった。
毎日3、4時間英訳し、米オレゴン州在住のウオーカーさんに、
電子メールで訳文を送り、検討してもらうという作業を重ね完成。
昨年11月、教え子らの協力で自費出版。
登場人物の名前を、政実は「マサ」などと短くして表記、
外国人にも読みやすいよう工夫。
西村さんは、「翻訳文には、あまり自信はないが、
政実と九戸一族の菩提寺の住職である薩天和尚との会話などは
うまく訳せたと思う」
高橋さんは、「出版社の依頼ではなく、個人の思いから
翻訳してもらいありがたい。自分も100冊購入。
岩手にかかわる外国の人に読んでもらえるよう、
寄贈など考えている」

「To Tempt Heaven」はA5判、1900円(税別)。
問い合わせは八朔社(03・3235・1553)。
県内書店でも注文できる。

「VW劇場」へようこそ

(日経 2009-12-29)

スズキが、フォルクスワーゲン(VW)と資本業務提携で合意、
2010年に世界最大規模の自動車メーカー連合が誕生。

「イコールパートナー」を目指すスズキが付き合うVWは、
発足の歴史に根ざした複雑な株主構造を持ち、
株主たちの利害対立が、思わぬ混乱を招く。

09年12月9日、資本業務提携の狙いは明快。
技術の多様化と低コスト化で、自動車メーカーの課題は増えている。
VWは、スズキにラブコールを送り、スズキは自分の得意分野に集中、
不足するところは補い合うパートナーが必要と決断。
VWは、スズキに19.9%出資、スズキもVWに最大で約2.5%出資。

スズキの鈴木修会長兼社長は、VW株の流通量の少なさを指摘。
もう少し出資してもいいが、市場に出回っているVWの
議決権付き株式はもともと少ない。
05年、ポルシェがVWの買収に乗り出し、09年1月過半数を取得。

筆頭株主となったポルシェの議決権付き株式は、
ポルシェ家、ピエヒ家というポルシェの創業一族が保有。
VWの名車「ビートル」を開発、第2次大戦前の国民車構想で、
ドイツ北部ウォルフスブルクの工場で、VWの礎を築いた
フェルディナント・ポルシェ博士の一族がVWのオーナーに。

ポルシェのVW子会社化は、ヴォルフガング・ポルシェ監査役会長、
破綻寸前のポルシェを救ったヴェンデリン・ヴィーデキング社長、
ホルガー・ヘルター最高財務責任者(CFO)によるプロジェクト。
外資やヘッジファンドによる敵対的買収から、
VWと共同開発した多目的スポーツ車「カイエン」など
ポルシェのビジネスモデルを守るという大義。

しかし、VWは簡単な会社ではない。
VWは、ポルシェ博士の娘ルイーズの子、
フェルディナント・ピエヒ監査役会長が、アウディ社長を経て、
93~02年社長を務め、最高意思決定機関である
監査役会のトップを務める。

ポルシェ一族は、経営に直接タッチはしないが、
ピエヒ氏は自動車メーカーのマネジメントを知り、
自動車殿堂入りした博士の一族の顔に。
ピエヒ氏を「家長」と呼び、ポルシェの3人組の買収を
「権力闘争」と報じた。お家騒動である。

ここで登場するのは、ウォルフスブルクの本社、ハノーバーなどの
国内工場を抱えるニーダーザクセン州。
第2位株主の同州は、20%の株式保有で、
VW株主総会での決議で「拒否権」を持つ。

ドイツの法規で、本来25%を超える議決権が必要だが、
VWは普通の会社ではない。
第2次大戦中、VW工場は軍需工場となり、
民間用のカブトムシはわずかしか作られなかった。
強制労働も行われ、軍用乗用車「キューベルワーゲン」や
水陸両用車「シュヴィムワーゲン」、軍用機の部品など生産。

戦後、英国軍政部の管理下で再生。
ドイツ連邦政府(西ドイツ政府)に委譲、
ニーダーザクセン州に運用が任される。

1960年、部分民営化のとき、施行されたのがVW法。
連邦政府と州政府は株主となり、監査役会のメンバーも送る。
連邦政府は株式を手放し、州政府は保持し続ける。
VW法では、大株主の議決権行使は20%に制限。
州政府が株式を保有し続ける限り、
VWはポルシェの意のままにはならない。

ポルシェに残された道は、特権の撤廃。
EUの欧州委員会が、欧州司法裁判所に訴え、
大株主の議決権制限や20%の保有による州の「拒否権」が、
資本の自由移動を認めるEUの法令に違反すると判断。

しかし、相手も手ごわい。
VW監査役に名を連ねるクリスティアン・ヴルフ州首相は、
メルケル首相と同じ保守キリスト教民主同盟(CDU)。
有力政治家として、メルケル氏の好敵手とされるヴルフ氏は、
VW株保持の意志を貫く。

VWで圧倒的な力を持つのは、国内工場の従業員と、
ほとんどが加盟する欧州最大規模の金属労組(IGメタル)。
雇用確保という問題で、州政府と利害関係が一致。
共同決定法により、VW監査役会のメンバーも、半分は
職場の従業員代表とIGメタルの関係者が占めている。

08年の株主総会、ポルシェはニーダーザクセン州の特権を
認めない議案を提出、同州はこれを認める議案を出す。
ポルシェを支持する方が多いが、決議されなかった。
真っ向から対立する大株主。
ポルシェの面々を風刺した横断幕を掲げ、
従業員やIGメタルは力任せの3人組に抵抗。

08年、VW法はニーダーザクセン州の拒否権を残した形で改正。
EUの判決を吟味した連邦政府は、拒否権だけは妥当と結論。
メルケル首相も、ウォルフスブルクを訪れて喝采を浴び、
元大株主の面目を保った。
ポルシェは、本業の販売低迷も重なり、
取得費用の負債だけが残った。

「お家騒動」は、ピエヒ氏のVWがポルシェを逆に買収し、
経営統合するという決着。

「VWのことがわかっていない」。
ポルシェによる子会社化闘争に、VWの関係者がため息混じりに。
創業一族、政治家、労組・従業員のバランス。
それを覆そうとしたポルシェの3人組は、
金融危機の誤算があだとなり、
ヴィーデキング氏とヘルター氏がポルシェを去った。

「政労使」のバランス。
06年、ベルント・ピシェツリーダー社長の解任劇も象徴的。
ピシェツリーダー氏は、VWの中核である乗用車事業の
高コスト体質を見抜き、ピエヒ氏が社長時代に3万人の余剰人員を
守った国内工場の「ワークシェアリング」に終止符を打とうとする。
ピエヒ氏の肝いりで開発した高級車「フェートン」の米国輸出をやめる、
スカニアとMANとのトラック連合で意見が対立している、など
「権力闘争」の見出しが躍り、ピシェツリーダー氏は解任。

VWはこの30年、拡大路線後にピンチを迎えている。
米国進出や買収で伸びきった経営を、ピエヒ氏が品質とコストを
重視した経営に切り替える。
国内工場の余剰人員問題は、ピシェツリーダー氏のクビと
引き換えに一定の解決をみた。

ポルシェを、10番目のブランドとして引き入れた
マルティン・ヴィンターコーン社長のもと、
VWは新たな拡大戦略に。

VWのシステムは、未来永劫変わらないのか?
スズキとの提携合意直後、カタール投資庁傘下の
カタール・ホールディングが、VWへの出資比率を引き上げた。
カタールは、創業一族だけが持っていたポルシェの議決権付き
株式を取得、ポルシェのVW株購入オプションを買い取った。
骨肉の争いとなった買収劇の後始末は、
中東のオイルマネーが買って出た。

09年末時点の出資比率は、ポルシェが51%、
ニーダーザクセン州20%、長期的視野で投資するカタール17%。
新しい役者たちを迎え、新装「VW劇場」の幕が開く。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091228.html

北の国からのメッセージ:バンクーバー冬季五輪/2 施設持続に不況の影

(毎日 1月3日)

アイスホッケーは、カナダの国民的スポーツ。
バンクーバーも、北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)・カナックス
の本拠地で、試合が行われる日には、市街地の路線バスの
行き先案内の電光掲示板に、「ゴー、カナックス」の文字。

過去3年間の世界選手権で、女子が2度優勝している
カーリングも人気が高い。
五輪代表決定戦では、会場が超満員になる。
今回の五輪で、アイスホッケー会場となる
UBCサンダーバードアリーナとカナダホッケープレース、
カーリング会場のバンクーバー五輪センターは、
大会後も利用需要が見込める。

冬季競技が盛んな国柄だが、「優良競技」ばかりではない。
ボブスレーなどのソリ系競技、ノルディックスキー、
スピードスケートの人気は決して高くはない。
「持続可能な発展」を理念とする五輪組織委(VANOC)にとって、
巨費を投じた大会施設を、五輪後も永続的に活用が目標。
VANOCで、この分野を担当するアン・ダフィーさんは、
「環境対策のみでなく、社会的にも経済的にも理念を実現したい」

ノルディックやソリ系の会場となるウィスラー市には、
07年、非営利団体「ウィスラー・スポーツ・レガシー(WSL)」設立。
WSLは、州政府や連邦政府が出資した
約1億カナダドル(約86億円)の基金の運用益で、
各施設を財政的に支援、五輪後は強化拠点として
各競技団体に活用を促すのが主な仕事。

カナダでは、88年にカルガリーで冬季五輪が開催。
地元メディアが、「緩やかな成功」と評する、この大会でも
基金で会場を運営してきたが、大会から20年を過ぎた現在は、
残された施設全体で9500万カナダドル(約82億円)の
改修費が必要。

肝心の運用益も、昨今の不況で伸び悩んだ。
カルガリー五輪で、スピードスケート会場だった「五輪オーバル」は
一昨年、資金難から経営陣が交代。
世界屈指の高速リンクとして知られ、日本からも毎夏、
実業団チームが合宿に訪れる同リンクですら、
大会後の施設活用は期待通りではない。

今回の五輪に向け、バンクーバー市内に建設される選手村も、
不況で金融機関の融資が滞り、完成が遅れている。
大会後、住宅として販売し建設費を回収する計画だが、
現在の不況下で販売が順調に進み、
建設費を回収できるのかは不透明。

地元メディアが、昨年11月に発表した世論調査では、
バンクーバー市のあるブリティッシュコロンビア州の住民のうち、
57%が五輪に肯定的、28%が否定的、15%は分からない。
ほぼ同時期に行われた別の調査では、
逆に否定的な住民が半分を超え、地元には五輪に対し
複雑な感情がある。
ダフィーさんは、「五輪の準備には、カナダ国民の税金が使われ、
五輪の住民への利点も示さなければならない」

VANOCは大会終了後、1年ごとに五輪関連施設の活用状況を
IOCに報告。
地域住民や国民の理解を得ながら、施設などの五輪遺産を
「持続可能」とする取り組みの成否を、IOCも注目。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/01/03/20100103ddm035050120000c.html

気仙この1年 明暗交錯の2009年閉幕

(東海新報 12月31日)

歴史的な政権交代、新型インフルエンザの大流行、
裁判員制度スタート、深刻化するデフレ不況など、
さまざまなニュースが駆けめぐった平成21年。

気仙に目を転じれば、三陸縦貫道「高田道路」の
先行整備区間開通、大船渡港湾岸壁の完成、
新型インフルの感染拡大、相次ぐ企業倒産など、
明暗が交錯した激動の一年。
新しい年の飛躍に期待を込めながら、この一年の動きを追った。

■1月
◇各分野で地道な活動を続ける個人や団体を顕彰する
第36回東海社会文化賞を、「陸前高田市気仙大工左官親交会」、
「鷹生ふるさとの味を守る会」が受賞。

◇大船渡市民文化会館・リアスホールの誕生を祝い、
「けせん第九を歌う会inおおふなと」が開かれた。

◇大船渡魚市場の20年サンマ水揚げ数量が3万㌧超、全国5位。
金額は、17億2000万円余で全国7位。

■2月
◇大船渡港物流強化促進協議会が首都圏では初めてとなる
「いわて・大船渡港セミナー」を、東京都の経団連会館で開催、
荷主や商社、運輸関係者らに大船渡港をPR。

◇県大船渡地方振興局が、地域産業の活性化につなげようと、
気仙の食材を用いた「気仙の逸品を食べてみよう会」開催。

◇陸前高田市小中学校適正規模化検討委員会が
統廃合推進計画案をまとめる。

■3月
◇新大船渡魚市場空調設備・給排水工事の入札で、
県の指名停止を受けていた東京都内の業者を含む
特定共同企業体が落札したことが判明、再入札を実施。

◇開業25周年を迎える三陸鉄道の南リアス線で、
大手旅行代理店主催の企画列車が運行、
沿線各駅では東北各地から訪れた大勢のツアー客を歓迎。

◇大船渡港北部工業用地を、㈱阿部長商店(気仙沼市)が取得、
水産加工場を建設へ。

◇三陸縦貫自動車道「高田道路」の先行整備区間(3・4㌔)開通。

◇陸前高田市高田町の国道340号高田バイパス(竹駒工区)が開通。

◇県立大船渡病院附属住田地域診療センターの
無床化4月実施が決定。

■4月
◇定額給付金の支給に合わせ、気仙3市町の商工関係団体が
〝プレミアム商品券〟を発売。

◇大船渡港湾整備事業で、赤崎町永浜・山口地区に国直轄の
水深13㍍岸壁が完成。過去最大級5万㌧船による試験荷役も実施。

◇危険業務従事者叙勲で、元大船渡地区消防組合消防監の
金野重夫さん(68)が瑞宝双光章を受章。

◇春の褒章で、陸前高田市の郵便切手類販売者・宮城巖さん(83)が
黄綬褒章、同市の元農林業センサス調査員・鈴木忠實さん(84)、
元国勢調査員・畠山重男さん(83)、住田町の元農林業
センサス調査員・吉田孝索さん(83)が藍綬褒章を受章。

◇春の叙勲で、陸前高田市の保護司・佐々木廣道さん(74)が
瑞宝双光章を受章。

◇大船渡市が気仙3市町を枠組みとした合併協議を
陸前高田、住田両市町に申し入れ。

■5月
◇新型インフルエンザの疑いがある感染者が国内で確認、
大船渡保健所が新型インフルエンザ対策連絡調整会議を開催。
気仙地区内から感染者が発生した場合に備え、
関係機関の連携や対応を確認。

◇大船渡市議会が陸前高田市、住田町両議会に対し、
合併協議への賛同を求める要望書を提出。

◇さいとう製菓㈱と㈱八木澤商店が、農業参入のための協定を
住田町と締結。

◇合併協議申し入れに、陸前高田市の中里長門市長が、
「市民一丸で、自立を目指したまちづくりを進める方向を確認」、
住田町の多田欣一町長が、「当面自立の考えを持っているが、
議会の判断を待って回答したい」との姿勢。

◇新大船渡魚市場の建設工事に着手。

■6月
◇旧大船渡公共職業安定所陸前高田出張所に、
「市ふるさとハローワーク」を開設。

◇経済産業省と新エネルギー産業技術総合開発機構による
「新エネ百選」に、住田町での木質バイオマスエネルギーの
取り組みが選ばれた。

◇大船渡工、大船渡農、広田水産・家政、高田・情報処理の
専門学科が統合、総合的専門高校として昨春開校した
大船渡東高校の新校舎が落成。

◇日本女子マラソン界の先駆として1984年ロサンゼルス五輪に
出場した大船渡市出身の永田(旧姓・佐々木)七恵さんが27日、
病気のため死去。53歳。

■7月
◇建設業・㈱杉山組が民事再生法適用を申請。
負債額は約19億6000万円。

◇三陸鉄道南リアス線「小石浜駅」が、地元住民の要望を受け、
「恋し浜駅」に改称、新駅名がスタート。

◇住田町長選で、現職の多田欣一氏(64)が新人で前町議の
佐々木公一氏(34)を破り、3選。
同町議補選では、共産党新人の会社員・佐々木春一氏(56)が
無投票当選。

◇株主総会における新取締役選任を巡って、混迷が続いていた
大船渡魚市場の新代表取締役社長に、
前大船渡商議所会頭の菅野佑三氏(74)が就任。

■8月
◇住田町が、中学生までの医療費無料化をスタート。

◇大船渡地区消防組合消防本部が、
県内消防本部で初となる水難救助隊を発隊。

◇第45回衆院選挙が行われ、岩手第3選挙区(定数1)で
民主党前職・黄川田徹氏(55)が自民党新人・橋本英教氏(42)、
幸福実現党新人・阿部忠臣氏(35)を大差で破り、連続4選。
全国的には民主党が歴史的勝利を収め、政権交代が実現。

■9月
◇新型インフルエンザ集団感染が、気仙で初めて気仙小で確認。
児童・生徒に感染拡大が進み、学校施設の閉鎖措置が相次ぐ。

◇陸前高田市が、核兵器廃絶に取り組む世界各国の都市で
構成される「平和市長会議」に加盟。県内では3団体目。

◇住田町独自の安全安心農産物認証制度が本格スタート。

◇東京タワーで、初の「三陸・大船渡東京タワーさんままつり」。

■10月
◇県議会が、22年4月から地方振興局再編の関連議案を可決。
沿岸広域振興局を釜石市に置き、
大船渡地方振興局は行政センターに。

◇大船渡市が、県内公立施設では初めて吉浜地区の
認定こども園施設整備事業に着手。

◇東海新報社創刊50周年記念企画「気仙応援団フォーラム」、
首都圏で活躍する気仙出身6氏が、
気仙活性化へのアイデアやヒントを発信。

◇市道田茂山明神前線赤沢工区整備が完了、全線が開通。

◇県発注工事の受注調整をしたとして、県内の建設業者91社が
公正取引委員会から排除勧告、
気仙の6社が審決案に対して異議を申し立て。

◇県立大船渡病院で、新型インフルエンザのワクチン接種がスタート。

■11月
◇秋の褒章で、大船渡市漁協赤崎地区女性部が緑綬褒章、
同市の保護司・佐藤隆司氏(64)が藍綬褒章を受章。

◇秋の叙勲で、大船渡市の元市議・滝田賢藏氏(80)が旭日小綬章、
陸前高田市の元消防団分団長・黄川田光男氏(80)と
大船渡市の元三陸町消防団副団長・澤田孝一氏(80)、
工業統計調査員・森啓吉氏(74)、元身障者授産施設館長・
山下哲夫氏(63)が瑞宝単光章を受章。

◇陸前高田市竹文化振興協会が、県内でも珍しい「角竹」づくりに成功。

◇県が、住田町に計画を進めている津付ダムについて、
県大規模事業評価専門委員会が「要検討(事業継続)」とした
県の評価を「妥当」。

◇陸前高田市の新鮮な海産物や加工品を販売する初の産直店
「田舎のごっつお用賀店」が、東京都世田谷区にオープン。

◇国土交通省が、三陸鉄道事業の再構築実施計画を認定。
線路敷地の所有権を沿線8市町村に移し、
同社に無償貸与する「上下分離方式」が盛り込まれた。

■12月
◇陸前高田市議会が、市議会基本条例を可決。

◇大船渡高校出身のJリーガー・小笠原満男選手(鹿島)が、
今季JリーグMVPに輝く。

◇「書の甲子園」として知られる国際高校生選抜書展個人の部で、
大船渡高校3年・菅野義郁くんが大賞を受賞。

◇県が住田町で計画を進めている津付ダムが、
国による事業継続か否かの検証対象に。

http://www.tohkaishimpo.com/

2010年1月7日木曜日

お母さんのおなかの中で、赤ちゃん微笑む

(読売 12月30日)

お母さんのおなかの中にいる赤ちゃんが、
ほほ笑んでいる様子を、超音波診断装置を使って撮影することに、
聖心女子大の川上清文教授(心理学)らの研究チームが成功。
国際的な基準に沿って「微笑」と判定されたのは、世界で初めて。

幼い赤ちゃんの微笑を見せたのは、23週と1日目の胎児。
鎌倉市で産婦人科を開業する矢内原巧医師とともに、
約3分間撮影、計6回、1回あたり平均4・7秒の微笑を見せた。

微笑は、「自発的微笑」といわれ、外的な刺激と無関係に表れる。
新生児にもみられる。
唇の端が上がっている状態が1秒以上続くことなどが、
国際的な判定基準。
人の笑顔などに反応する「社会的微笑」とは区別。

これまでに、生まれたてのチンパンジーやニホンザルでも確認、
胎児での確認は初めて。
自発的微笑がなぜ起きるのかは不明だが、
川上教授は、「進化した動物には、自発的微笑が見られる。
この微笑がいつ始まっていつ終わるかという点に、
情動の進化を解明する手がかりが隠されているかもしれない

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091230-OYT1T00107.htm

アジア研究圏の創設提言 スマート・ソサエティ目指し

(サイエンスポータル 2010年1月1日)

グローバル化によるひずみを改善し、アジア諸国が連携して、
新たな社会像の構築を目指す「アジア研究圏」の創設を、
公益法人、大学などの専門家、研究者からなる研究会が提言。

武田計測先端知財団「科学技術の国際連携戦略研究会」
(座長・有本建男・科学技術振興機構 社会技術研究開発センター長)
がまとめた政策提言「アジア研究圏の創設」 によると、
アジア研究圏は、「研究者、情報、資金の自由な移動と、
地域全体としての人材育成により、地域が抱えるさまざまな
技術的・社会的課題の解決に向けた体制を構築する」ことを目的。

「アジア共同体」の目指す姿として、地球環境にやさしく、
生活を豊かにする仕組みを持つ「スマート・ソサエティ」という
新しい社会像を提言。
「アジア研究圏」が進めるアジア域内の連携は、
「科学技術政策とODA・外交政策の連携を土台に、
国境を越えた研究者・政府・民間非営利セクター・企業が参加する
重層的なネットワーク」を重視。

これによって、共同研究の成果から新しい技術や制度を生み出す。
欧米に向かっている人材流出の流れを止め、
アジアが持続的に成長できるよう人材の育成とネットワーク化を
共同で行う仕組みを構築。
豊かな社会は何かを再定義し、今までのような量的な豊かさの
追求ではなく、地球環境に負荷をかけず、格差拡大を助長せず、
質的な豊かさを追求する社会をつくりあげる。

「アジア研究圏」創設にあたって、日本が率先してイニシアチブを
取ることを求め、アジアからの有能な人材を積極的に受け入れ、
定着させるための外国人受け入れ政策の転換を急ぎ、
高等教育制度に加え、専門的知識を持つ外国人が働ける
体系的な制度の確立や、民間企業での税制優遇や
職能資格共通化に向けた取り組みを行うことを提言。

EUは、既に研究者・知識・技術の移動を自由にするため、
欧州研究圏(ERA)構築を進めている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/1001/1001011.html

北の国からのメッセージ:バンクーバー冬季五輪/1 温暖化の影響ジワリ

(毎日 1月1日)

「Sea to Sky(海から空へ)」。

太平洋に面した五輪主会場のバンクーバー市内と、
アルペンスキーなどの舞台となるウィスラー市を、
約2時間半で結ぶ高速道路の愛称。
ウィスラー市を抱くウィスラー(標高2182メートル)と、
ブラッコム(同2284メートル)の両山頂に立てば、
抜けるような青空、そして山々と海を望む絶景が広がる。

年間約220万人が訪れる北米屈指のリゾート地にも、
地球温暖化の影響はジワリと出てきている。
キャリア20年の現地スキーガイド、野口英雄さん(48)は、
「雪は確実に減ったと思う。
昔は見えなかった岩も、氷河の下からのぞいている」

バンクーバー市内を流れるキャピラノ川などでも、
以前は約1000万匹は遡上してきたサケの姿がめっきりと減った。
寒さで死滅するはずの松食い虫は、冬を生き延びて森を荒らした。
市のダウンタウン西にあるスタンレー公園では、
近年の嵐で倒れた木々が今も痛々しい姿をさらす。

冬季競技にとって、地球温暖化は深刻なテーマ。
選手たちは、相次ぐ雪不足による試合中止などで、
危機を肌で感じている。
昨年2月、06年トリノ五輪モーグル女子の金メダリスト、
ジェニファー・ハイルら夏冬合わせて70人以上の
カナダの五輪選手たちが署名を集め、環境対策の充実を
バンクーバー五輪組織委員会(VANOC)に働きかけた。

VANOCは昨年6月、大会の環境問題対策として、
地元の環境コンサルト会社「オフセッターズ」と
公式サプライヤー契約を結んだ。
オ社は、二酸化炭素などの温室効果ガスを
オフセット(相殺)する方法を提案する企業。

同社の試算では、今回の五輪で排出される温室効果ガスは、
約26万8000トン。
1トンは、五輪の競泳プールの1杯分、人間が1年間暮らして生じる
ガスが約5トン、莫大さがうかがえる。
11万8000トンは会場建設、選手の移動など大会運営で発生。

オ社の役割は、排出された温室効果ガスを相殺するために
必要な資金500万カナダドル(約4億3000万円)を拠出、
五輪閉幕後に地元や世界各地の環境事業に投資すること。
「カーボンニュートラル」と呼ばれる手法。

観客や大会関係者の移動、宿泊で生じる残りの
温室効果ガスについて、五輪公式スポンサーなど25社が
相殺に取り組む。
オ社は、その方法も提言、温室効果ガス削減のための技術を
世界から訪れる人々に示して、観客に向けた啓発活動も行う。

過去の五輪でも、環境対策は掲げられた。
大会期間中の温室効果ガス排出の抑制を目指したものが多く、
大会後に遺産として残る手法は初めて。
オ社のジェームズ・タンジー社長(37)は、
「競技で、カナダが金メダルを獲得するのは難しいかもしれないが、
この取り組みは金メダルを獲得できる」と胸を張った。

地球温暖化への対策は、IOCも重要視するテーマ。
99年に打ち出した、新世紀に向けたオリンピックムーブメントの
「アジェンダ(行動計画)21」では、三つの柱の中の一つに、
「環境に配慮した大会運営」を挙げている。
この計画書は、92年、ブラジルで開かれた国連の「地球サミット」で
示された行動計画にある、「持続可能な発展」との考え方を、
スポーツ界に持ち込み、国連の助言を受けながら作成。

昨年3月、バンクーバーでIOCと国連環境計画(UNEP)との
共催による「スポーツと環境世界会議」が開かれ、
IOCのロゲ会長は、「環境はオリンピックムーブメントの重要な柱。
五輪においても、環境対策の遺産を残すことはできる」

地元の声と、世界的な流れを反映した環境保護への
取り組みこそが、バンクーバーから世界に発信するメッセージ。
VANOCで、「持続可能な発展」の分野を担当する
アン・ダフィーさんは、「カナダは、質素でおとなしく見える国だが、
考え方は持っている」

バンクーバーの動きは、すでに将来の五輪に影響を与えている。
12年ロンドン夏季五輪は、温室効果ガス排出量を算出し、
対策を具体化させることを打ち出し、バンクーバーを先例に。
次回、14年冬季五輪の開催地であるソチ(ロシア)の組織委員会も、
「バンクーバーの取り組みを発展させたい」と
VANOCなどに伝えてきている。

バンクーバー冬季五輪の開幕(2月12日)まで、1カ月余り。
静かに、しかし着実に準備を進めている北の国が、
五輪を通じて世界に発信するメッセージを紹介。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/01/01/20100101ddm035050088000c.html

観光誘致に手応え 経費助成で4000人来訪

(東海新報 12月26日)

大船渡市は今年度、碁石海岸を訪れる団体旅行客を対象に、
経費の一部を補助する助成事業を行っている。
各旅行業者らに呼びかけたところ、9月以降ツアーが相次ぎ、
延べ約4千人に達した。
市では、予想より多い申し込みを受けて補正予算措置も行い、
次年度以降も継続化したい姿勢。

20年度にかけ、県内では平泉の世界遺産登録に向けた動きと
呼応する形で、JRのデスティネーションキャンペーンを展開。
大船渡市を含む沿岸南部5市町では、
全国規模の海の祭典「海フェスタ」が開催、
新たな観光客PRが進められた。

各取り組みでの大船渡に対する認知、関心向上を受け、
今年度は継続的な集客・観光ツアーの定着を図ろうと、
市では7月から助成事業を始めた。
旅行業法に定める旅行業者らが、要件を満たす観光ツアーを
新規に行った場合、審査・選考を経た上で誘客実績などに応じた
経費の一部助成を行っている。

市では、旅行業者に対し、碁石海岸を中心とした
同市に来訪するツアー作成を要請。
その結果、実際に企画して募集を行った場合、
業者に30万円を助成。
実際にツアー客が訪れ、おみやげを購入する時間を確保したり、
宿泊した場合には旅行者一人当たり500円を助成。

この結果、9月ごろから助成を利用したツアーが企画。
市がまとめた誘客実績によると、20日現在でツアー回数は
延べ148回、催行人数は延べ3950人。
市では、助成予算に200万円をみていたが、
予想を上回り、今月新たに60万円の追加補正を計上。

市商工観光部では、「三陸海岸ツアーの流れとして、
北リアスよりも南リアスに関心が向いている傾向。
初年度のスタートとしてはうまくいっている。
次年度も取り組み、さらに観光客を増やしていきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

2010年1月6日水曜日

特集 健康を考える 骨粗鬆症 大阪市立大大学院医学研究科・小池達也准教授に聞く

(2009年12月27日 毎日新聞社)

高齢化に伴って、約1000万人の患者が存在、
治療を受けているのは、うち約300万人--。
中年以上の女性患者が多数を占める「骨粗鬆症」。

病名が知られ始めたのは約20年前、
検診を受ける人は今もなお少ない。
大阪市立大大学院医学研究科の小池達也准教授に、
骨粗鬆症の症状、治療、予防などを聞いた。

--骨粗鬆症は骨がもろくなる病気、と。

小池 骨粗鬆症の「鬆」は、大根の「鬆(す)」と同じ意味、
骨の密度が薄くなる、骨の量が減る病気と理解。
患者は、閉経後の高齢女性が多く、男性は比較的少数。
骨量の減少には、加齢現象の一面もあり、過度に減ると骨折。
骨粗鬆症患者の大腿骨骨折は、年間12万件に及ぶ。

--痛みや運動障害などの症状は?

小池 骨粗鬆症には自覚症状がない。
知らずに放置し、転んだ時などに突然骨折に見舞われる。
骨折の部位は、股関節、背骨、上肢など。
ソファに座った途端、寝床から起き上がった瞬間の骨折も。

--発症が中年女性に多い理由は?

小池 女性は、閉経をはさんで女性ホルモンの分泌が急減。
その結果、骨を作る「骨芽細胞」と、吸収する「破骨細胞」の
バランスが崩れ、骨の形成が吸収に追いつかなくなって
骨の密度が低下。
カルシウムなど、骨形成に役立つ栄養分の不足なども。
個人差があるが、高齢女性はリスクが高い。
関節リウマチや糖尿病、甲状腺関連の疾病に伴って
発症する骨粗鬆症もある。

--骨折でやっと病気に気付く、というのは困りもの。

小池 知らずに腰の骨が徐々につぶれる「脊椎圧迫骨折」という
症状も多く、骨折した人の死亡率が健常者の4-5倍。
病名が知られだしたのは、骨量計測が一般的になってから。
当初アイソトープを用い、1-2分で終わるレントゲン検査が普通に。
骨量検査で、正常値を100として80以下に骨量が減ると
「骨減少症」、70以下だと骨粗鬆症と診断。

--この20年、骨粗鬆症の検診体制は?

小池 政府も医学界も、検診体制の整備と受診の勧めを
ずっと訴えている。
自治体や医療現場では、切迫感が希薄、他の疾病の検診と比べ、
優先順位が低いという判断から、検診機器の導入が遅れ、
受診率は今も低迷。

--日常的に可能な予防法は?

小池 カルシウムの摂取は、骨粗鬆症予防に限らず、不可欠。
日本人の栄養分摂取で、先進各国と比べ、
摂取量が唯一少ないのがカルシウム。
心掛けたいのは、食品で最もカルシウムを含む牛乳の摂取。
1日に必要なカルシウムは600mg、牛乳には1mlに1mg含まれる。
バターやチーズなどの乳製品でも可。
ヒジキなどの海藻類、じゃこなどの小魚にもカルシウムは多い。
菓子類は、リンを多く含み、消化の過程で
カルシウムの吸収を妨げ、多食は厳禁。

--骨は強くできるものでしょうか?

小池 柔道やラグビーに励んできた人は、
一般に水泳選手などより骨が丈夫。
中高年になって急に運動を始めても、足腰に無理がくるだけ。
女性に多い疾病という現実を踏まえれば、
まず体を動かすこと、歩くこと。
患者さんが転ぶのは、自宅内が多い。
すり足で歩き、畳の縁に引っかかって転倒したりする。

--不安な人は?

小池 生活面で心掛ける一方、気になる方は検診を受け、
専門医に相談なさるのがいい。
骨が過剰に代謝されていないかを調べる血液・尿検査も。

--治療は?

小池 骨折は、整形外科で対応、骨粗鬆症そのものの治療は
服薬が中心。
更年期障害の治療で用いる女性ホルモンのほか、
ビタミンD、ビタミンKなどがよく使われる。
近年、「ビスフォスフォネート」という破骨細胞を抑え、
骨量増加や骨折抑制作用を持つ薬もあり、顕著な効果。
服薬では、副作用もあり、治療前に専門医と話し合うことが大切。
ビタミンDは、魚のはらわた、ビタミンKは納豆に多い。
納豆の消費は関西では少なく、骨粗鬆症の発症も「西高東低」。
因果関係は立証されてはいないが……。
転倒した際、衝撃を吸収して股関節を守る「ヒッププロテクタ」という
装身具も市販。
……………………………………………………………………
◇こいけ・たつや

1982年大阪市立大医学部卒。同整形外科助手などを経て
96-98年、米国マサチューセッツ総合病院・
ハーバード大医学部客員助教授。
2002年から現職(07年まで助教授)。
日本リウマチ学会評議員、国際骨ミネラル代謝学会会員など
加入学会多数。第12回理学療法ジャーナル奨励賞、
日本骨代謝学会学術賞、日本骨粗鬆症学会奨励賞、
大阪市医学会市長賞など、受賞も多数。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/28/113780/

イサダで健康食品開発を 釜石・北里大海洋研

(岩手日報 12月22日)

本県で水揚げが盛んなイサダ(ツノナシオキアミ)を
活用しての健康食品開発に向けて研究を進めている
釜石市の北里大海洋バイオテクノロジー釜石研究所
(井上松久所長)は、民間の協同組合と連携し、
素材となる乾燥粉末のサンプルを希望する
食品メーカーに無償で提供。
血圧が高めの人に有効とされるアミノ酸「ギャバ」を含み、
三陸発の健康食品誕生に期待。

同研究所は、2008年度からの研究で、
県内産のイカの塩辛から取り出した乳酸菌でイサダを発酵させ、
高濃度のギャバを含む食品素材を製造する技術を確立。

事業化に向けて09年度、水産物を原料とする
健康食品素材の製造を手掛ける協同組合マリンテック釜石
(佐々木伝十郎代表理事)と連携。

マリンテックの設備を利用し、品質が安定した乾燥粉末の
量産にめどがついた。
素材の供給体制が整ったことから、食品メーカーに
製品化を検討してもらおうと、サンプルを提供。

乾燥粉末は、1g中に2mg以上のギャバを含む。
菓子類など、さまざまな食品に添加し、イサダの栄養分と
ギャバの効能を生かした新しい健康食品の開発を期待。
甲殻類アレルギーの原因とされる成分も、
製造過程で分解、「安全・安心」を確保。
微粉末のため、水に溶けやすく利用しやすい。

同研究所の笠井宏朗部長補佐は、
「多くの食品メーカーに粉末が届くことを期待。
製品化へできる限りのアドバイスをしたい」と意気込む。

イサダは、甲殻類系の海洋プランクトンで、
本県の水揚げ量は全国一。
鮮度低下が早いことから、大半が釣り餌などとして安値で取引され、
付加価値をいかに高めるかが課題。

サンプルは、1袋20g入り。
問い合わせは、マリンテック釜石(0193・36・1200)へ。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091222_12

公立校教員:精神疾患で休職5400人 過去最悪、16年連続の増加

(毎日 12月26日)

うつ病や適応障害、統合失調症など、精神疾患で
08年度に休職した公立学校の教員は、
過去最多の5400人(前年度比405人増)と、
初めて5000人を超えたことが文部科学省の調査で分かった。
増加は16年連続。

病気休職者全体に占める割合も63・0%(同1・1ポイント増)と
過去最高。
文科省は、「教育委員会などがメンタルヘルスに関する取り組みを
進めているが、なかなか休職者の数が減らない。深刻な問題」

公立小中高校、特別支援学校などの教員計約92万人に調査。
病気休職者全体の数も、8578人(同509人増)と過去最多、
増加分の8割を精神疾患が占めた。
5400人の年齢構成は、
50代以上1989人(36・8%)、40代1947人(36・1%)、
30代1110人(20・6%)、20代354人(6・6%)。
教員全体の年齢構成割合とほぼ変わらず、どの年代でも増えている。

文科省は、「精神科受診の抵抗感が弱まっている」という
社会背景を指摘しつつ、
(1)教育内容の変化についていけない、
(2)教員同士のコミュニケーションが減り、相談相手がいない、
(3)要望が多様化している保護者らへの対応が難しい--
などの複数要因が絡んで、精神疾患に至るケースが増えている。

08年度、「個人情報の不適切な取り扱い」を理由に
懲戒・訓告処分などを受けた教員が、対象項目に加わった
05年度以降で最多の277人(前年度比59人増)に上った。
懲戒処分は75人(同20人増)。
パソコンやUSBメモリーを、許可なく学校から持ち出して紛失したり、
ファイル交換ソフトを通じてネット上に情報を流出させるケースなど。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/12/26/20091226ddm012040006000c.html

思考つかさどる大脳新皮質、大人も神経生成 ラット実験

(朝日 2009年12月28日)

意識など高次の精神作用をつかさどる大脳新皮質で、
大人でも新たな神経細胞が作られることを、
藤田保健衛生大などが、ラットを使った実験で突き止めた。
脳の障害を防ぐ治療法の開発につながる可能性。
27日付の米科学誌ネイチャー・ニューロサイエンス電子版。

記憶をつかさどる海馬など一部の脳細胞は、
老化に伴って一方的に死ぬだけでなく、
大人でも作られることが分かってきているが、
認識や思考といった高度な脳機能にかかわる
大脳新皮質については、はっきりした証拠がなかった。

藤田保健衛生大の大平耕司助教らは、
成熟したラットの大脳新皮質の最も外側の層にある細胞に注目。
光るように工夫して形態などを調べたところ、
神経細胞の元となる前駆細胞であることを発見。
神経回路に組み込まれることも分かった。

大脳新皮質で神経細胞が作られる証拠となる細胞を、
初めて見つけた。

新しく作られた神経細胞は、てんかん時に見られるような
脳の異常な興奮を抑える機能があり、
一時的に脳に血が回らない虚血状態にすると増える。

大平さんは、「神経の前駆細胞の増殖を薬剤などで促進できれば、
脳卒中後の虚血によるてんかんや、
それに伴う認知機能の低下を防ぐ治療法の開発につながる」

http://www.asahi.com/science/update/1228/TKY200912270379.html

2010年1月5日火曜日

10分の運動で頭スッキリ 筑波大が仕組み解明

(2009年12月24日 共同通信社)

たった10分間の軽いジョギングで、頭がスッキリする。
筑波大と農業・食品産業技術総合研究機構などの
研究チームは、短時間の適度な運動が脳の認知機能を
向上させる仕組みを解明したと発表。
16日付の米科学誌ニューロイメージに掲載。

筑波大によると、これまで長時間の適度な運動が、
脳を活性化させることは「常識」として知られていたが、
短時間でも、脳が活性化することが
科学的に裏付けられたのは初めて。

同大の征矢英昭教授は、「メタボ対策だけでなく、
健康な人でも昼休みにちょっとした運動をすることで、
集中力が高まる」

19~24歳の男女計20人を対象に実施。
50%の力で、自転車をこぐ「中強度」の運動を10分間した後、
脳の活動を画像化する装置で測定すると、
全員で左脳の前頭前野の一部の血流が増加し、
情報処理などの能力が向上した。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/24/113636/

設計改革 強いトヨタと技のリコー

(日経 2009-12-22)

世の中の注目は電気自動車に集まるが、
ガソリン車の燃費低減は重要なテーマ。
ガソリン車について、重要な商品特性が燃費。
設計初期段階で、少しでも燃費を改善することが、
発売後の商品力に大いに貢献する時代。

トヨタ自動車は、2008年秋以降、燃費の低減を設計初期に
製品に造り込む手段として、「形の決まっていない段階で、
燃費を検証する解析計算」(トヨタ自動車第2技術開発本部
エンジンプロジェクト推進部エンジン計画室シニアスタッフ
エンジニアの沢田龍作氏)を使い始めた。

エンジン設計上のパラメーター(ボアやストローク、圧縮比など)を
設定、燃費がどうなるか、発生する力や排気の状況がどうなるかを
計算するシステムを開発。
エンジン周りの構想設計に使用。

形が決まっていない段階だから、3次元モデルはなく、
3次元解析のような時間のかかる計算は、設計初期段階に向かない。
エンジン各部の働き、燃焼状況、給排気における熱の出入り、
機構の摩擦によるエネルギー損失などを数式で表し、
すばやく計算するモデルを作り上げた
(燃焼状況の解析のみ、燃焼室形状の3次元モデルを利用)。

設計パラメーターを調整していくと、
「ちょっとやるだけで、何%も燃費が良くなる」(沢田氏)。
詳細設計段階や試作段階で、「思ったより燃費が悪い」と
関係者が悩むことはなくなる。

商品力が高く、より多く売れるということは、
それだけコスト低減効果が増幅すること。
1個2円のコスト低減で100個売れたときより、
1個1円のコスト低減でも300個売れる方が、低減額は大きい。

リーマン・ショック以後、設計陣にも単なるコスト低減より、
商品力を強化することの支援が強く求められる。
製品全体を左右する設計初期段階が重要。

最近の設計改革のポイントは、試行錯誤をどう位置付けるか?
試行錯誤は、良く表現すれば「新しい案を次々と試していく」こと、
悪く表現すれば、「考えても分からないから、作って様子を見る」こと。
3次元CAD(コンピューターによる設計)を使っても、
試作が実物ではなくバーチャルだというだけで、
基本的に試行錯誤に頼っている。

試行錯誤は、ムダな案をたくさん作ることでもあり、
基本的に効率が悪い。
(1)筋道を立てれば分かることは、試行錯誤を避ける、
(2)試行錯誤が必要な場面、なるべく効率的に実行する、
(3)全く新しい方式や技術を開発するとき、
積極的に試作と試行錯誤を実行する——
というメリハリが重要。

トヨタ自動車の例は(2)に当たり、(1)に取り組む企業も。
その1つがリコー。

リコーの開発革新センターは、設計手順に沿って、
設計者の業務を支援するITシステム
「EAST(Engineering Assisting System)」の
整備を進める。

このシステムは、所定の手順に従って作業内容(何を決めるか)を
順番に設計者に示し、同時に設計者が利用すべき情報
(作業の入力情報)を提示。
結果、決めた情報(作業の出力情報)もシステムが管理
(設計者が、EASTに入力)。

システムの目的は、設計検討の順番や計算やシミュレーションに使う
ツールなど、設計者間で統一、品質を確保すること、
設計で用いる情報を探し回ることなく、誰もが同じ情報を参照できること。

EASTの前提が、設計手順の詳細な定義。
「定着ローラの設計手順」のように、設計者が実行する
仕事の単位ごとに、作業内容を細かく決める。
各作業で何を決めるか、何の情報を使うか、
どこにあるか、を明らかにしておく。

設計の大部分は、繰り返し作業である。
「製品開発に、100%新規に設計することはめったにない。
既にある製品の10~20%を、新しいものに切り替え、
残りは既存のものを一部変更して流用。
流用設計に、やるべきことは決まっていて、そこを最短距離で走り、
新しい10~20%の部分に頭を使ってもらうのが目的」
(リコー開発革新センター副所長の佐藤敏明氏)。

繰り返し部分が対象といっても、効果は大きい。
カラー複写機で、色ずれがないよう位置を合わせる機構の
設計作業は、予定時間の10%程度で終わった。
他の仕事でも、50%程度削減できる例が多い。
「設計者が無用に迷ったり、情報を探したりすることがない」(同氏)。

(3)のような、まったく新しいことを考えられる場面でも、
行き当たりばったりに作業を進めてよいわけではない。
まずは、ポンチ絵で考えをまとめる。
ポンチ絵に、なぜその形状にしたか、なぜその材質にしたか、
といった設計思考や背景情報をすべて書き込む。

現在、この段階にITはあまり使わない方がよい。
CADでは、設計案の最終形は表現できるが、
そこに至る思考や背景の情報は扱いにくい。
ポンチ絵を書きながら全体を構想できる技術者が少ないことが、
多くの企業で課題に。
一部の企業では、構想設計に焦点を当てた教育制度を発足。

これらの取り組みは、実は「設計とはどうあるべきか」という、
哲学的ともいえる命題。
長期的展望に立って考えていくべきテーマだが、
大不況によって加速。
考えて手を打ってきた企業が、今後有利になっていく。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091221.html

医師養成の方向性議論 県の総合力育成検討委初会合

(岩手日報 12月23日)

中小規模の地域病院を担う、医師の「総合力」育成を目指す
県の検討委初会合は、盛岡市内で開かれた。
地域医療に必要な技術や研修プログラム構築の
方向性について議論。
課題である人材確保に向けて、
「働く魅力を感じる仕組みづくりが必要」などの意見。

検討委は、県内の国保病院、県立病院の院長ら7人で構成。
座長に、県立中央病院の佐々木崇院長を選出。

総合力育成の主な対象は後期研修医で、
県は一定規模の「拠点病院」が指導者確保や参加者の募集を行い、
総合診療の実践は、地域病院や診療所で行う―
とのたたき台を示した。

必要な技術について、県立釜石病院の遠藤秀彦院長は、
「救急と内科ができれば、自信を持てる」として、
県北や沿岸などの基幹病院での育成を提言。
県立磐井病院の加藤博孝副院長は、
「育成実績のある県外の病院に派遣するのはどうか」

人材確保に向け、国保藤沢町民病院の佐藤元美院長は、
「勉強のための長期休暇や研修制度などを整え、
県外からも医師が集まる魅力づくりが必要」
総合医の仕事について、「社会的に評価されてこそ、
医師はやりがいを感じる」と県民周知の必要性も課題。

佐々木座長は、「検討課題は多いが、うまく制度づくりができれば、
医師不足の本県医療にとって大きな力になる」と期待感。

今後、年度内に2回の会合を開き、引き続き方向性を議論。
2010年度、プログラム策定や参加者募集などを行い、
11年度から実施する方針。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091223_6

今年最注目の研究は「iPS細胞作製法」 米科学誌

(朝日 2009年12月21日)

米科学誌ネイチャー・メソッズは、今年最も注目される
生命科学分野の研究法に贈られる
「メソッド・オブ・ザ・イヤー2009」に、
山中伸弥・京都大教授らが開発した
人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作製法を選んだ。

患者の細胞を使った病因解明や細胞のがん化、老化のしくみを
解明する基礎研究など、発展をみせる新たな研究手法として
役割が認められた。
20日付の同誌電子版で発表。

山中教授らは、2006年にマウスの皮膚細胞から、
07年にはヒト皮膚細胞からiPS細胞の作製に成功。

同誌は、体細胞にわずか3~4遺伝子を入れるだけで、
体内の様々な組織や臓器になる能力を持つ細胞ができるため、
熱狂的な勢いで世界に広がったiPS細胞が、
研究手法としても着実に進歩し、
新たな発見が近づく段階に入ったと解説。

09年以降、脊髄性筋萎縮症やパーキンソン病など、
患者から作ったiPS細胞で、発症原因の解明や治療法の
開発研究が進み、新薬開発で必要な薬剤の有効性や
副作用を調べる研究分野でも貢献を評価。

http://www.asahi.com/science/update/1220/TKY200912200283.html

2010年1月4日月曜日

健康ナビ コラーゲンは肌に効くの?

(2009年12月25日 毎日新聞社)

「飲むだけで肌がきれいになる」などの宣伝文句で、
コンビニエンスストアや通信販売でも売られている
「飲むコラーゲン」や「食べるコラーゲン」。
コラーゲンがブームといわれているが、科学的に見て、
効果はどこまで期待できるのか?

コラーゲンは、皮膚や軟骨などの組織を構成するたんぱく質の一種。
たんぱく質の原料であるアミノ酸が、複雑に絡み合った構造物。
細胞と細胞をつなぐ接着剤のような役割を果たしているが、
年とともに減り、みずみずしい肌は衰え、弾力性が乏しくなる。

コラーゲンを取れば、皮膚のコラーゲンに再合成され、
肌はきれいになるのだろうか?
「コラーゲンの話」(中央公論新社)の著者で、コラーゲンの働きに
詳しい大崎茂芳・奈良県立医科大教授は、
「コラーゲンを取っても、そのコラーゲンが体内で
コラーゲンの材料になることはない」

コラーゲンは、グリシンやプロリンなどのアミノ酸から
細胞内で合成、コラーゲンそのものを取っても、
そうしたアミノ酸にはならない。
皮膚科の医師など、科学者の間で一般的。

全く効果がないかといえば、そうでもなさそう。
コラーゲンが形を変えたゼラチンを、酵素などで分解して
小さなコラーゲンペプチドをつくる。
これを、人や動物に与えた実験で、
「皮膚の水分が増えた」、「骨密度が上がった」などの報告。

明治製菓食料健康総合研究所が今年3月、
日本食品科学工学会誌に報告した試験結果はそのひとつ。
魚のうろこから抽出したコラーゲンペプチドを、
約190人(25~45歳)の女性に4週間食べてもらった。
1日に食べる量を2・5、5、10gの3グループに分け、
偽コラーゲン(でんぷんのデキストリン)の摂取グループと比較。

その結果、コラーゲンの摂取グループは摂取しないグループに
比べ、肌の水分量が増え、特に30歳以上で5g以上を
摂取したグループで増えた。
弾力性では差はなかった。

この結果をどう見るか?
佐藤健司・京都府立大学大学院教授(食品科学)は、
「従来とは異なるメカニズムで、皮膚や骨の細胞に
作用している可能性がある」

佐藤さんは、人がコラーゲンペプチドを摂取すると、
血液中にごく小さなコラーゲンペプチドが検出されるのを確認。
コラーゲンペプチドが、コラーゲンをつくる線維芽細胞を増やす
作用を示すことを、試験管内実験で確かめた。

佐藤さんは、「体内に入ったペプチドが、細胞を増やすシグナルの
ような作用をしているのでは」

マウスに、コラーゲンペプチドを与えた実験で、
骨密度が増加することを確かめた
真野博・城西大学薬学部准教授(食品機能学)は、
「摂取されたコラーゲンペプチドは、骨の代謝促進など
細胞の働きを調節する伝達因子として働くのでは」

現段階で、「人で美容効果があるといえるだけの
確実な科学的データはない」

日本ゼラチン・コラーゲンペプチド工業組合が開催した
シンポジウムで、藤本大三郎・東京農工大名誉教授は、
「人での効果を証明する科学的な証拠はまだ不十分」、
人を対象にした複数の試験結果が出るまで、確かなことは言えない。

コラーゲンを多く含む肉類や魚をほとんど取らない菜食主義者でも、
皮膚や骨などにはコラーゲンがあるなど、
コラーゲンには未解明の要素が多い。
コラーゲンが減ったから補給すればよい、
という単純なものではないことだけは知っておきたい。
………………………………………………………………………
◇コラーゲン

皮膚や血管、骨、軟骨、腱などの組織を構成するたんぱく質。
体内にあるたんぱく質の約3割を占める。
約4割は皮膚、約2割は骨や軟骨にある。
豚や鶏の軟骨や魚の皮などに多く含まれる。
ゼリーに含まれるゼラチンは1~2%のごく少量で、
たくさん食べても効果は期待できない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/25/113689/

たばこ吸う人と結婚したくない 男69%、女61% 法政大調査

(2009年12月26日 毎日新聞社)

たばこを吸う異性を、恋人や結婚相手にできないと考える
学生が過半数を占めることが、法政大学生の学内調査。
約9割が、「不健康そう」、「たばこ臭い」と悪い印象を抱いており、
喫煙者への厳しい見方が若者に広がっている。

調査は、法政大市ケ谷キャンパスで、
同大人間環境学部の学生が教員の指導のもと、
1-4年生を対象に無作為に聞いた。
男女計1074人が回答。

その結果、80%は「喫煙経験がない」で、
「現在たばこを吸っている」は13%、
「以前吸っていたが今は吸っていない」が6%など。
喫煙する異性に悪い印象を持った学生は、男女とも89%。
「クール(かっこいい)」、「大人っぽい」などの好印象を抱いたのは、
男女とも10%に達しなかった。

たばこを吸う異性と「結婚できない」と回答した
男は69%、女は61%。
「恋人にできない」も男が60%、女は50%。
喫煙者は、61%が結婚相手の喫煙を容認。

「恋人が、たばこを吸うのを不快に感じる場面」をたずねたところ、
最も多かったのは、「歩きながらの喫煙」で回答の4分の1。

調査を担当した4年の清水俊樹さん(22)は、
「これほど多くの人が、異性の喫煙を嫌う傾向があるとは思わなかった」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/28/113773/

三陸を世界地質遺産に 県、認定視野に検討

(岩手日報 12月24日)

県は、三陸地域を中心に、世界ジオパーク(地質遺産)の
認定も視野に、「ジオパーク」の取り組みを行う方向。

貴重な地形や地質を有する自然公園を保全し、
教育や観光につなげる新しい地域振興策の一つ。

本県は、リアス式海岸を有し、古生代カンブリア紀から
全時代の地層が分布するなど、豊富な地質遺産が特長。
県は専門家の意見を聞きながら、地形や地質の見どころや
活用策などを検討していく方針。

ジオパークは、貴重な地形や地質、火山、断層などを
見どころとする自然公園を保全し、教育や観光面での活用を
通じた地域活性化を目指す取り組み。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の支援で、
2004年に設立された世界ジオパークネットワーク(事務局・パリ)
を中心に、世界的に活動が広がっている。

今年は、日本で初めて洞爺湖有珠山(北海道)、糸魚川(新潟)、
島原半島(長崎)の3地域が、同ネットワークから
世界ジオパークの認定を受けた。

本県は、複雑に入り組んだリアス式海岸などを有する。
古生代カンブリア紀(5億4200万年~4億8800万年前)から
新生代第四紀(259万年前~現在)に至る全時代の地層も
分布しており、地質の多様性は日本随一。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091224_3

スポーツ21世紀:新しい波/329 フェンシング界その後/下

(毎日 12月26日)

日本フェンシング協会は、3人目となる外国人コーチの
招請を進めている。
昨年の北京五輪で、フェンシング界初のメダルを獲得した
男子フルーレの太田雄貴(森永製菓)の活躍の陰には、
コーチを務めたウクライナ出身のオレグ・マツェイチュク氏の指導が。

北京五輪では、エペ種目でも同じウクライナ出身のコーチを招いた。
唯一外国人指導者がいないのはサーブルで、
現在、世界選手権の優勝経験者との交渉が大詰めを迎えている。

外国人コーチを招くにも、先立つものは強化資金。
日本協会は北京五輪後、スポーツマネジメント会社と
資金集めのためのマーケティング委託契約を結んだ。
協会幹部は、それぞれに仕事を持っており、
スポンサー集めに自ら奔走するのは、厳しいのが現状。
ノウハウを持つ企業に委託する道を選んだ。

委託したスポーツビズ社を通じ、日本協会は新たに
インターネットの関連企業から、年約1000万円の協賛を得た。
同社の山本雅一社長は、「フェンシング界は、
これまで競技者OBの関連企業が協賛の中心。
今後は、太田選手のような選手をきっかけに、
広く協賛を得られるように手助けしたい」

4月から、有望なジュニア選手を
ナショナルトレーニングセンターで長期養成する
JOC「エリートアカデミー」にも参加。
中学生が、ここで寄宿生活を送っている。
「ジュニア世代の育成も、ようやく態勢が整えられつつある」と
日本協会の張西厚志専務理事。
今後は選手だけでなく、日本人指導者の養成も課題。

行政刷新会議での事業仕分けでは、JOCの選手強化事業への
補助金縮減が打ち出された。
張西専務理事は、「事業仕分けのショックは大きい。
12年のロンドン五輪で目標とする複数のメダル獲得を
果たすためには、ゆったりとしていられない」。
強化の足場を固めながら、フェンシング界は次の飛躍を見据えている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/12/26/20091226ddm035050027000c.html

2010年1月3日日曜日

神経細胞、分化に重要たんぱく質 神戸大准教授ら確認

(2009年12月25日 毎日新聞社)

神戸大大学院工学研究科の藤原俊伸准教授(分子生物学)
のグループは、神経幹細胞が神経細胞に分化する際、
「HuD」というたんぱく質が重要な役割を果たしていることを確認。

この仕組みを応用すれば、あらゆる細胞に分化する
人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)を使って
神経細胞だけを作れる可能性もあり、
パーキンソン病やアルツハイマー病などの治療にも期待。
25日付の米科学誌「モレキュラー・セル」に発表。

HuDは、神経細胞にしか含まれないたんぱく質。
グループは、HuDを含む細胞と含まない細胞を作成して比較。
その結果、HuDを含む細胞の方が、神経細胞に分化する際に
必要なたんぱく質などを2~3倍多く合成。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/25/113726/

県内、進まぬ耕作放棄地対策 地域資源見直しを

(岩手日報 12月24日)

荒れた農地をどう再生するか?
県内の耕作放棄地は、約7千ヘクタールに上り、
本年度から国の耕作放棄地再生利用緊急対策事業がスタート、
利用は低調。
農業を取り巻く厳しい情勢や政権交代による将来不安から、
多くの農家は二の足を踏んでいる。
地域を挙げて再生活動に取り組むケースもあり、
貴重な資源をどう活用するか、地域で見直す時期を迎えている。

「この地区の悲願だった」。
花巻市矢沢の農業菊池寛一さん(66)は、
約1ヘクタールの農地を前にこう語った。

今月初旬から、花巻市矢沢地区のJR東北新幹線
新花巻駅そばの農地で、整地作業が進む。

約1カ月前まで、ヤナギがうっそうと茂る耕作放棄地。
10年以上前から荒れ地となり、タヌキがすみつき、
周辺水田に病害虫の被害を及ぼすなど地域の悩みの種。

地区の農業委員らが、市外在住の地権者と長年交渉、
解決には至らなかった。

国の対策がスタートした今年。
菊池さんが、農地の利用調整を担当する花巻農業振興公社に相談。
同公社の職員が地権者と交渉し、農地の賃貸契約が結ばれた。

再生活動は11月からスタート。
樹木の伐採や草刈りは、地域住民が総出で行った。
菊池さんは、「声を掛けたら予想以上の参加があった。
それだけ荒廃地を何とかしたいという思いがあったんだ」

再生した農地は、菊池さんが同公社から借り受け、
来春から地域の生産組合に委託し大豆を栽培。

矢沢地区のように、再生活動が動きだすケースは
県内でまだ多くない。
県農業振興課によると、国の耕作放棄地再生利用緊急対策事業の
11月末時点の利用状況は5件に。

なぜ利用が低調なのか?
11月から農地再生コーディネーターとして
耕作放棄地再生利用に取り組む遠野市の菊池勝広さん(56)は、
「耕作放棄されている農地は不在地主だったり、
所有者が貸す意向があっても、土地が狭く利用しにくい
場所だったりする」と現状。

農作物価格が低迷する中、農地再生後に
何を栽培し、収益を上げていくかなど課題も多い。
農業従事者の減少や急速な高齢化の現状を見れば、
対策は待ったなし。

耕作放棄地の解消は、矢沢地区のように
地域住民の協力が欠かせない。
「最初は制度も知らなかった。
行政に相談したことで、素早く対応してくれた」と、
同地区の菊池さんは行政との連携の重要性も指摘。

県は、9月末に県農地再生・活用対策本部を設立し、
体制を整備した。
本部の旗揚げだけに終わることなく、
積極的に地域住民に働き掛け、共に歩む姿勢が必要。

国は、耕作放棄地の解消対策だけでなく、
農業の収益性を上げる構造改革を進めることも忘れてはならない。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091224_15

未来へのパス:全国高校ラグビーを前に/下 普及、強化の地域格差

(毎日 12月24日)

前回大会でノーシードながら4強に進出し、
旋風を巻き起こした京都成章(京都)の練習には、
年に数回、同校OBでトップリーグのヤマハ発動機に
所属するSH矢富勇毅(24)が訪れる。

部員に教えるのは、スクラムからの球出しなど
基本プレーの繰り返し。
同校指導歴21年の湯浅泰正監督(45)は、
「日本トップのレベルで活躍する先輩のプレーに接することが、
部員の高いモチベーションにつながっている」

近隣の中学ラグビー部との交流も密で、毎年8月に開く
「成章フェスティバル」には、中学生300人が集まる。
コーチ役を担うのは、同校部員。
湯浅監督は、「中学生にとっては、花園を目指す高校生と
プレーすることで夢が膨らむ。
うちの部員も、指導に回ることで理解度を深めることができる」と
効果を強調する。
高校ラグビー部を、地域の育成拠点とするモデルとして定着させたい。

スクールや中学の部活動など、高校入学前に手軽に
ラグビーに接する環境にある地域は多くない。

初出場を果たした倉吉総合産(鳥取)は、
全員が高校からラグビーを始めた。
同校の前身にあたる倉吉工時代から指導する
岩野竜二監督(36)は、社会人のクラブチームと休日に
合同練習を行うなど地域の交流を重視するが、
指導者の少なさという壁に悩む。

岩野監督は、「ラグビーを始めて浅い時期に、
プレーの基本を教えられる人材が、地方には圧倒的に少ない。
安全に楽しむ環境が整備されていないから、
相変わらず危険という先入観が先に立ってしまう」と嘆く。
競技者の少なさは、そのまま指導者不足につながる。

簡略化したルールで、少人数でも楽しめるタグラグビーの
普及のため、近隣の中学に出張授業もしている岩野監督は、
「ワールドカップ(W杯)日本開催を成功させるためにも、
日本協会にはトップの強化だけでなく、
地方の普及にも力を注いでほしい」と注文。

15人制の元日本代表監督で、神戸製鋼で現役時代から
ラグビースクールなどで普及にも携わる萩本光威さん(50)は、
「指導者が少ない地域で、地道な活動をしている方には頭が下がる。
普及、強化の地域格差をなくすのは、
ラグビー界全体で取り組むべき課題の一つ」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/12/24/20091224ddm035050101000c.html

幼児教育(8)遊ばせ方のコツ共有

(読売 12月26日)

園での学びの実践を、データベース化する試みが始まっている。

徳島市の鳴門教育大学付属幼稚園。
砂場で遊んでいた子どもたちが、蛇口と塩化ビニールの水道管や
竹をつないで、ドボドボと大量の水を流し込み、
スコップで山や川を作り始める。
しばらくして近くにあったおけに目をとめると、
砂場遊びは足湯ごっこへと発展。

見守っていた新田陛子講師(51)は、「水道管やスコップは、
近くにさりげなく置いておき、温泉遊びになりそうなら、おけやバケツ。
ごちそう遊びに移る気配の時は、スプーンやカップを出したり、
木の実や葉っぱを加えたりします」。

新田講師のように、遊びを先読みして導く技術は、
長年の経験に頼る部分が大きい。
同園の勝浦千晶教諭(34)は、「園で、いつどんな花が咲くかなどの
情報は教わることができるが、遊びを発展させる技術は、
試行錯誤で身に着けるしかなかった」

伝えにくい保育の技術を見えるようにしようと、
同園は2004年度、子どもがどのように遊びを刺激され、
教師がどうかかわっていたかの記録を始めた。
特に、遊びを生み出す場所や道具、行事など特定の環境に着目、
「遊誘財」と名付けて分析。

咲き終えたチューリップの茎を遊誘財として与えたケース。
ままごと遊びを始めた5歳女児が、料理をしながら
「ぽきっとしたら、すじがむける」と発見、別の女児は茎を、
「そのアスパラいただきますね」とイメージを発展。
教師が香りをかぐしぐさをすると、
「季節のお野菜が入っています。分かりますか」との言葉が
女児から引き出された。

砂場が遊誘財となっている場面では、
ダム作りをしている5歳男児が、泥水が泡のようになっているのを
見て、「泡ぶくの固まりみたいや」と言い、
教師が「せっけんは入っていないのになあ」と応じると、
「どうして泡ができるんだろうなあ」と、
不思議に思っていく様子が紹介。

元園長で研究開始当初からかかわる
佐々木宏子・同大名誉教授(69)は、
「遊びの中でどう学んでいけるかは、子どもの環境が大きく左右。
園で伝承されてきた遊誘財をキーワードにして整理することで、
教育的な意図を埋め込む教師のかかわり方も明快に

6年目となる今年度は、蓄積してきた記録のデータベース化に着手。
遊誘財ごとに、子どもの遊びが展開していく傾向や教師の
取り組みが、将来の指導のヒントになると期待。

研究主任の鍋山由美教諭(29)は、
「『子どもに共感する』という対応一つをとっても、
具体例があると実践に応用しやすい」と意義を説明。

見えにくい幼児教育の技術が共有され、磨かれていく。

◆メモ

発達心理学が専門の佐々木名誉教授は、
家庭の「遊誘財」として、親自身が子どもの頃に好きだった
絵本を勧める。
読んであげることで幼児期の体験がよみがえり、
子どもの気持ちや興味の対象が見えやすくなる。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091226-OYT8T00209.htm