(2009年12月25日 毎日新聞社)
「飲むだけで肌がきれいになる」などの宣伝文句で、
コンビニエンスストアや通信販売でも売られている
「飲むコラーゲン」や「食べるコラーゲン」。
コラーゲンがブームといわれているが、科学的に見て、
効果はどこまで期待できるのか?
コラーゲンは、皮膚や軟骨などの組織を構成するたんぱく質の一種。
たんぱく質の原料であるアミノ酸が、複雑に絡み合った構造物。
細胞と細胞をつなぐ接着剤のような役割を果たしているが、
年とともに減り、みずみずしい肌は衰え、弾力性が乏しくなる。
コラーゲンを取れば、皮膚のコラーゲンに再合成され、
肌はきれいになるのだろうか?
「コラーゲンの話」(中央公論新社)の著者で、コラーゲンの働きに
詳しい大崎茂芳・奈良県立医科大教授は、
「コラーゲンを取っても、そのコラーゲンが体内で
コラーゲンの材料になることはない」
コラーゲンは、グリシンやプロリンなどのアミノ酸から
細胞内で合成、コラーゲンそのものを取っても、
そうしたアミノ酸にはならない。
皮膚科の医師など、科学者の間で一般的。
全く効果がないかといえば、そうでもなさそう。
コラーゲンが形を変えたゼラチンを、酵素などで分解して
小さなコラーゲンペプチドをつくる。
これを、人や動物に与えた実験で、
「皮膚の水分が増えた」、「骨密度が上がった」などの報告。
明治製菓食料健康総合研究所が今年3月、
日本食品科学工学会誌に報告した試験結果はそのひとつ。
魚のうろこから抽出したコラーゲンペプチドを、
約190人(25~45歳)の女性に4週間食べてもらった。
1日に食べる量を2・5、5、10gの3グループに分け、
偽コラーゲン(でんぷんのデキストリン)の摂取グループと比較。
その結果、コラーゲンの摂取グループは摂取しないグループに
比べ、肌の水分量が増え、特に30歳以上で5g以上を
摂取したグループで増えた。
弾力性では差はなかった。
この結果をどう見るか?
佐藤健司・京都府立大学大学院教授(食品科学)は、
「従来とは異なるメカニズムで、皮膚や骨の細胞に
作用している可能性がある」
佐藤さんは、人がコラーゲンペプチドを摂取すると、
血液中にごく小さなコラーゲンペプチドが検出されるのを確認。
コラーゲンペプチドが、コラーゲンをつくる線維芽細胞を増やす
作用を示すことを、試験管内実験で確かめた。
佐藤さんは、「体内に入ったペプチドが、細胞を増やすシグナルの
ような作用をしているのでは」
マウスに、コラーゲンペプチドを与えた実験で、
骨密度が増加することを確かめた
真野博・城西大学薬学部准教授(食品機能学)は、
「摂取されたコラーゲンペプチドは、骨の代謝促進など
細胞の働きを調節する伝達因子として働くのでは」
現段階で、「人で美容効果があるといえるだけの
確実な科学的データはない」
日本ゼラチン・コラーゲンペプチド工業組合が開催した
シンポジウムで、藤本大三郎・東京農工大名誉教授は、
「人での効果を証明する科学的な証拠はまだ不十分」、
人を対象にした複数の試験結果が出るまで、確かなことは言えない。
コラーゲンを多く含む肉類や魚をほとんど取らない菜食主義者でも、
皮膚や骨などにはコラーゲンがあるなど、
コラーゲンには未解明の要素が多い。
コラーゲンが減ったから補給すればよい、
という単純なものではないことだけは知っておきたい。
………………………………………………………………………
◇コラーゲン
皮膚や血管、骨、軟骨、腱などの組織を構成するたんぱく質。
体内にあるたんぱく質の約3割を占める。
約4割は皮膚、約2割は骨や軟骨にある。
豚や鶏の軟骨や魚の皮などに多く含まれる。
ゼリーに含まれるゼラチンは1~2%のごく少量で、
たくさん食べても効果は期待できない。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/12/25/113689/
0 件のコメント:
コメントを投稿