(読売 12月26日)
園での学びの実践を、データベース化する試みが始まっている。
徳島市の鳴門教育大学付属幼稚園。
砂場で遊んでいた子どもたちが、蛇口と塩化ビニールの水道管や
竹をつないで、ドボドボと大量の水を流し込み、
スコップで山や川を作り始める。
しばらくして近くにあったおけに目をとめると、
砂場遊びは足湯ごっこへと発展。
見守っていた新田陛子講師(51)は、「水道管やスコップは、
近くにさりげなく置いておき、温泉遊びになりそうなら、おけやバケツ。
ごちそう遊びに移る気配の時は、スプーンやカップを出したり、
木の実や葉っぱを加えたりします」。
新田講師のように、遊びを先読みして導く技術は、
長年の経験に頼る部分が大きい。
同園の勝浦千晶教諭(34)は、「園で、いつどんな花が咲くかなどの
情報は教わることができるが、遊びを発展させる技術は、
試行錯誤で身に着けるしかなかった」
伝えにくい保育の技術を見えるようにしようと、
同園は2004年度、子どもがどのように遊びを刺激され、
教師がどうかかわっていたかの記録を始めた。
特に、遊びを生み出す場所や道具、行事など特定の環境に着目、
「遊誘財」と名付けて分析。
咲き終えたチューリップの茎を遊誘財として与えたケース。
ままごと遊びを始めた5歳女児が、料理をしながら
「ぽきっとしたら、すじがむける」と発見、別の女児は茎を、
「そのアスパラいただきますね」とイメージを発展。
教師が香りをかぐしぐさをすると、
「季節のお野菜が入っています。分かりますか」との言葉が
女児から引き出された。
砂場が遊誘財となっている場面では、
ダム作りをしている5歳男児が、泥水が泡のようになっているのを
見て、「泡ぶくの固まりみたいや」と言い、
教師が「せっけんは入っていないのになあ」と応じると、
「どうして泡ができるんだろうなあ」と、
不思議に思っていく様子が紹介。
元園長で研究開始当初からかかわる
佐々木宏子・同大名誉教授(69)は、
「遊びの中でどう学んでいけるかは、子どもの環境が大きく左右。
園で伝承されてきた遊誘財をキーワードにして整理することで、
教育的な意図を埋め込む教師のかかわり方も明快に」
6年目となる今年度は、蓄積してきた記録のデータベース化に着手。
遊誘財ごとに、子どもの遊びが展開していく傾向や教師の
取り組みが、将来の指導のヒントになると期待。
研究主任の鍋山由美教諭(29)は、
「『子どもに共感する』という対応一つをとっても、
具体例があると実践に応用しやすい」と意義を説明。
見えにくい幼児教育の技術が共有され、磨かれていく。
◆メモ
発達心理学が専門の佐々木名誉教授は、
家庭の「遊誘財」として、親自身が子どもの頃に好きだった
絵本を勧める。
読んであげることで幼児期の体験がよみがえり、
子どもの気持ちや興味の対象が見えやすくなる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091226-OYT8T00209.htm
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