2010年1月8日金曜日

北の国からのメッセージ:バンクーバー冬季五輪/2 施設持続に不況の影

(毎日 1月3日)

アイスホッケーは、カナダの国民的スポーツ。
バンクーバーも、北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)・カナックス
の本拠地で、試合が行われる日には、市街地の路線バスの
行き先案内の電光掲示板に、「ゴー、カナックス」の文字。

過去3年間の世界選手権で、女子が2度優勝している
カーリングも人気が高い。
五輪代表決定戦では、会場が超満員になる。
今回の五輪で、アイスホッケー会場となる
UBCサンダーバードアリーナとカナダホッケープレース、
カーリング会場のバンクーバー五輪センターは、
大会後も利用需要が見込める。

冬季競技が盛んな国柄だが、「優良競技」ばかりではない。
ボブスレーなどのソリ系競技、ノルディックスキー、
スピードスケートの人気は決して高くはない。
「持続可能な発展」を理念とする五輪組織委(VANOC)にとって、
巨費を投じた大会施設を、五輪後も永続的に活用が目標。
VANOCで、この分野を担当するアン・ダフィーさんは、
「環境対策のみでなく、社会的にも経済的にも理念を実現したい」

ノルディックやソリ系の会場となるウィスラー市には、
07年、非営利団体「ウィスラー・スポーツ・レガシー(WSL)」設立。
WSLは、州政府や連邦政府が出資した
約1億カナダドル(約86億円)の基金の運用益で、
各施設を財政的に支援、五輪後は強化拠点として
各競技団体に活用を促すのが主な仕事。

カナダでは、88年にカルガリーで冬季五輪が開催。
地元メディアが、「緩やかな成功」と評する、この大会でも
基金で会場を運営してきたが、大会から20年を過ぎた現在は、
残された施設全体で9500万カナダドル(約82億円)の
改修費が必要。

肝心の運用益も、昨今の不況で伸び悩んだ。
カルガリー五輪で、スピードスケート会場だった「五輪オーバル」は
一昨年、資金難から経営陣が交代。
世界屈指の高速リンクとして知られ、日本からも毎夏、
実業団チームが合宿に訪れる同リンクですら、
大会後の施設活用は期待通りではない。

今回の五輪に向け、バンクーバー市内に建設される選手村も、
不況で金融機関の融資が滞り、完成が遅れている。
大会後、住宅として販売し建設費を回収する計画だが、
現在の不況下で販売が順調に進み、
建設費を回収できるのかは不透明。

地元メディアが、昨年11月に発表した世論調査では、
バンクーバー市のあるブリティッシュコロンビア州の住民のうち、
57%が五輪に肯定的、28%が否定的、15%は分からない。
ほぼ同時期に行われた別の調査では、
逆に否定的な住民が半分を超え、地元には五輪に対し
複雑な感情がある。
ダフィーさんは、「五輪の準備には、カナダ国民の税金が使われ、
五輪の住民への利点も示さなければならない」

VANOCは大会終了後、1年ごとに五輪関連施設の活用状況を
IOCに報告。
地域住民や国民の理解を得ながら、施設などの五輪遺産を
「持続可能」とする取り組みの成否を、IOCも注目。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2010/01/03/20100103ddm035050120000c.html

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