(岩手日報 12月24日)
荒れた農地をどう再生するか?
県内の耕作放棄地は、約7千ヘクタールに上り、
本年度から国の耕作放棄地再生利用緊急対策事業がスタート、
利用は低調。
農業を取り巻く厳しい情勢や政権交代による将来不安から、
多くの農家は二の足を踏んでいる。
地域を挙げて再生活動に取り組むケースもあり、
貴重な資源をどう活用するか、地域で見直す時期を迎えている。
「この地区の悲願だった」。
花巻市矢沢の農業菊池寛一さん(66)は、
約1ヘクタールの農地を前にこう語った。
今月初旬から、花巻市矢沢地区のJR東北新幹線
新花巻駅そばの農地で、整地作業が進む。
約1カ月前まで、ヤナギがうっそうと茂る耕作放棄地。
10年以上前から荒れ地となり、タヌキがすみつき、
周辺水田に病害虫の被害を及ぼすなど地域の悩みの種。
地区の農業委員らが、市外在住の地権者と長年交渉、
解決には至らなかった。
国の対策がスタートした今年。
菊池さんが、農地の利用調整を担当する花巻農業振興公社に相談。
同公社の職員が地権者と交渉し、農地の賃貸契約が結ばれた。
再生活動は11月からスタート。
樹木の伐採や草刈りは、地域住民が総出で行った。
菊池さんは、「声を掛けたら予想以上の参加があった。
それだけ荒廃地を何とかしたいという思いがあったんだ」
再生した農地は、菊池さんが同公社から借り受け、
来春から地域の生産組合に委託し大豆を栽培。
矢沢地区のように、再生活動が動きだすケースは
県内でまだ多くない。
県農業振興課によると、国の耕作放棄地再生利用緊急対策事業の
11月末時点の利用状況は5件に。
なぜ利用が低調なのか?
11月から農地再生コーディネーターとして
耕作放棄地再生利用に取り組む遠野市の菊池勝広さん(56)は、
「耕作放棄されている農地は不在地主だったり、
所有者が貸す意向があっても、土地が狭く利用しにくい
場所だったりする」と現状。
農作物価格が低迷する中、農地再生後に
何を栽培し、収益を上げていくかなど課題も多い。
農業従事者の減少や急速な高齢化の現状を見れば、
対策は待ったなし。
耕作放棄地の解消は、矢沢地区のように
地域住民の協力が欠かせない。
「最初は制度も知らなかった。
行政に相談したことで、素早く対応してくれた」と、
同地区の菊池さんは行政との連携の重要性も指摘。
県は、9月末に県農地再生・活用対策本部を設立し、
体制を整備した。
本部の旗揚げだけに終わることなく、
積極的に地域住民に働き掛け、共に歩む姿勢が必要。
国は、耕作放棄地の解消対策だけでなく、
農業の収益性を上げる構造改革を進めることも忘れてはならない。
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091224_15
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