2007年12月22日土曜日

あしたのかたち/77 強い関大/1

(毎日 5月17日)

1時間半近く、休みなく、しかも早口で言葉をつないだ。
大阪市内のホテルで開催された「関西大学スポーツサミット」。

河田悌一学長の紹介を受け、早大学事顧問の奥島孝康氏が壇上に。
講演「続 大学スポーツの意義と強化策」。
体育会45クラブの監督、顧問教授だけでなく、大学本部、体育OB会、
校友会、付属中学・高校から約200人が集まり、一致団結ぶりを誇示。

総長時代(94~02年)、奥島氏は
「早稲田は東大ではない。スポーツも強くなければならない」と、
アディダスとパートナーシップ契約を締結するなどして、
低迷していた「早稲田スポーツ」を復活。
今春入学した野球の斎藤佑樹、卓球の福原愛は、躍進の象徴的存在。

2年連続となる奥島氏の講演は、
「強い関大」を掲げる森本靖一郎理事長の要請があって実現。
04年10月の就任以来、森本理事長はことあるごとに「強い関大」を口に
入学式、卒業式、講演、取材……。スポーツだけでなく、
教育、研究、文化、就職、IT、財政、社会貢献に強い関大を目指す。

今年、開学121年の歴史で初めて志願者数が10万人超。
少子化の時代にあって、前年比22%増は全国的にも注目。
フィギュアスケート世界選手権の銀メダリスト高橋大輔(文学部4年)と、
そのライバル織田信成(文学部3年)の果たした役割が大きい。

戦後はバンカラのイメージがあったが、
「特色のないのが特色」とやゆされた時期が続いた。
ある大学職員が苦笑しながら言う。
「入試の広報戦略で北海道や東北を回っていたころ、
『関大と関学、どっちがどっち』とよく聞かれた」。
今では、それが笑い話になるほどの活力がみなぎる。

スポーツ強化にまい進する姿は、早大に重なる。
「うちは牛歩虎視。牛の歩みだけど、眼(まなこ)だけは見開いている」と
独自性を強調する森本理事長に対し、
ボクシング部の1年先輩で、体育OB会の小坂道一会長は、
「早稲田のマネをすることは恥じゃない。前者のわだちは安全なんです」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070519ddn035070080000c.html

歴史乗り越え、研究に協力 米で被爆者代表が講演

(共同通信社 2007年12月13日)

広島県原爆被害者団体協議会の坪井直理事長は、
放射線影響研究所(放影研、広島市・長崎市)と
前身組織の活動60年を記念して、
米科学アカデミーがワシントンで開いたシンポジウムで講演し、
「検査すれども治療せず、と研究に反発したこともあった。
だが、被爆者は未来に向かって歴史を乗り越える覚悟を固めている」。

20歳で被爆した坪井理事長は、
「核兵器の廃絶を悲願している。放射線の影響研究に協力を惜しまない」。

後遺症の再生不良性貧血や大腸がんで、
10回も入退院を繰り返した経験を振り返り、
「わたしは82歳でまだ若いつもり。
信条はネバーギブアップ(決してあきらめない)だ」と締めくくると、
100人を超す聴衆が立ち上がって拍手した。

放影研は、原爆被爆者への放射線の影響調査を目的に、
1947年に活動を始めた米原爆傷害調査委員会(ABCC)が前身で、
75年に日米共同機関として発足。

シンポジウムではこうした歴史を振り返り、最新の研究動向を紹介。
米側の運営資金を拠出するエネルギー省の
マイケル・キルパトリック担当副局長は、
「公衆の被ばく基準作りに貢献した」と放影研の研究成果をたたえた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=64311

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このような動きはとても大切なことです。
戦争によって、敵味方関係なく、多くの人々が被害に遭いました。
歴史を事実として、お互いに認識しあうことが
現代においても大切です。
原爆、強制収容、慰安婦、虐殺・・・
これらは、いつ自分たちが被害者側になったり、
加害者側になったりするか、分かりません。
歴史を学ぶことで、お互いを理解し合い、
このような悲しい出来事を防ぐ努力をしなければなりません。

世界初の人工リンパ装置が強い免疫機能を発揮することを確認!

(nature Asia-Pacific)

理化学研究所 免疫アレルギー科学総合研究センター
渡邊 武ユニットリーダー

私たちは多種多様の細菌やウイルスに囲まれて暮らしているが、
免疫機能が正常であれば、大事に至ることはあまりない。
ところが、がんやエイズなどの疾患では、免疫機能の低下により、
命を脅かす深刻な事態が生じる。

理化学研究所の渡邊武ユニットリーダー(以下、UL)は、
人工リンパ節を作製し、それを体内に移植することで
患者の免疫機能を高めることができないかと考え、
2001年頃からマウスを用いた研究を始めた。

2004年に人工リンパ節の構築に成功し、
免疫反応を誘導し、強い免疫機能を発揮することを確認。

渡邊ULらが開発した人工リンパ節の材料は、
生体適合材料として知られる「コラーゲンスポンジ」、
臓器や組織を形づくるための支持細胞である「ストローマ細胞」、
免疫反応の司令塔としてはたらく免疫細胞である「樹状細胞」からなる。

「まず2mm角ほどのコラーゲンスポンジに、
ストローマ細胞と外来の抗原を取り込ませた樹状細胞を含ませ、
それをマウスの腎臓皮膜下に移植する。
2~3週間後に、ほぼ100%の確率でリンパ節と同じような構造をもつ
直径3~5mmほどの人工リンパ節組織ができる」。
成功の鍵は、コラーゲンスポンジとストローマ細胞を組み合わせた点

このような研究を始めた経緯について、
「細胞治療や組織再生について、大きな研究成果がもたらされているが、
免疫組織の再生と構築については手がつけられていなかった。
リンパ節(二次リンパ節)は、免疫反応の場としてきわめて重要で、
実に美しい構造をしていることもあり、人工的に構築してみたい」。

さらに、生体という3次元空間内でおきる反応の解析には、
現在使われている平面培養法ではなく、
3次元で培養する系が必要だと感じたことも大きかった。

研究は、リンパ節の構築に最低限なにが必要かを考えるところから始まった。
「マウスでは、リンパ節の形成に関わる細胞・分子・分子間相互作用について、
かなりのことがわかっていた。
私達は、リンパ節の発生や形成過程をなぞるのではなく、
エッセンスだけを使って簡便に作ろうと考えた」。

骨組みとしてコラーゲンスポンジを、
組織基盤としてストローマ細胞を使うことにした。
驚くべきことに、最初にできあがった組織は、
自然のリンパ節とそっくりの美しい組織構造とリンパ節に存在する
ほとんど全ての細胞や構造を持っていた。

得られた人工リンパ節を、免疫不全のモデルマウスの腎臓皮膜下
(腎臓皮膜は、さまざまな臓器移植実験の場として使用)に移植し、
静脈注射でがん抗原や細菌タンパク質などの抗原を投与。
「正常マウスの免疫反応の10~50倍もの強い抗体産生が誘導された」。

その理由については、免疫不全マウスでは、
免疫細胞が増殖できる十分な空間があり、
人工リンパ節には免疫反応を抑える機構が少ないことなどが考えられる。

渡邊ULは、構築までの簡便化と、ヒトを含むマウス以外の動物にも
移植できる人工リンパ節の開発を進めている。
将来は、人工リンパ節が、エイズ、がん、老化による免疫能の低下、
免疫組織の破壊に対する有効な治療法になり、
モノクローナル抗体などの医薬品産生のツールとしても利用できると期待。

「リンパ節だけでなく、胸腺、脾臓などを含めた『人工免疫組織治療』が
かならず実現すると確信している」。

渡邊ULは、免疫組織の構築に必要な全ての細胞をES細胞から誘導し、
完璧な免疫能力をもった人工リンパ節を作ることを究極の目標に掲げ、
今日も研究を進めている。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=17

2007年12月21日金曜日

最前線:特徴ある健康食品開発--味の素・健康事業開発部、鈴木信二部長

(毎日 11月19日)

味の素は、食品や医薬品に続く成長分野として、健康事業を強化。
安全性や効能が科学的に実証された健康食品の開発に取り組む
健康事業開発部長の鈴木信二さん(51)に、
海外展開など今後の戦略を聞いた。

--どのような研究開発を目指していますか?

◆肥満予防や生活習慣病の改善などに、焦点を当てている。
天然由来の素材を開発し、人による試験を通じて
食品の安全性や有効性を調べる。
味の素グループ内の「健康基盤研究所」などと協力しながら
商品開発を進め、これまで4商品の開発に成功。

--顧客層は?

◆健康に関心の高い40~60代の顧客が多い。
「味の素の健康食品」として信頼を得ているようだ。
ただ、成長が期待される健康食品の市場は参入が多く、
競争が激しいので、特徴ある商品で顧客にアピールすることが重要。

--開発した商品の特徴を教えてください。

◆第1弾として開発したのがアミノ酸のひとつ、
グリシンを使った健康食品「グリナ」
体内で重要な役割を担うグリシンが、「さわやかな朝をサポートする」
という商品で、05年8月の発売以降、9万人を超える顧客が購入。

「かつおの力」は、アミノ酸やミネラルなど
27種類の栄養素が含まれているカツオだしに着目。
1袋をお湯に溶かして飲めば、みそ汁8杯分のカツオだしを摂取。

--通信販売に特化する狙いはなんですか?

◆新聞広告で宣伝して、興味を持って電話をかけてきた
顧客に販売するケースが多い。
健康食品に関心を持つ顧客は、商品の特徴や食べ方など
詳しい説明を求める方が多い。
オペレーターから直接説明を受ければ、安心して購入できる。

--海外展開も進めています。

◆肥満が深刻な米国では、医師を通じて、サプリメントの
「カプシエイト ナチュラ」の販売を今年7月に始めた。
タイで栽培した辛くないトウガラシから抽出した新しい成分
「カプシエイト」が健康をサポート。
今後は、欧州や中国などへの進出も検討したい。

--味の素グループの健康事業の位置づけは?

◆グループ全体の2010年度の売上高目標は1兆5000億円で、
そのうち健康事業は2000億円。
健康事業開発部では、新商品の投入や既存商品の販売拡大などで、
2000億円の5~10%程度を稼ぎ出すようになりたい。
乳酸菌の技術をもった子会社のカルピスと共同での商品開発も検討したい。
==============
■人物略歴

一橋大卒業。79年、味の素入社。
食品事業本部営業企画グループ長を経て、
02年から健康事業開発部長。長野県出身。51歳。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20071119ddm008020111000c.html

中国:杭州で4300年以上前の古城跡発見 殷墟に匹敵

(毎日 12月3日)

中国浙江省杭州の良渚(りょうしゃ)文化遺跡で、
少なくとも4300年以上前の巨大な古城跡が発見。

甲骨文字で有名な河南省安陽市の殷墟にも匹敵する
考古学的な価値があると専門家は指摘。

浙江省文物局などが18カ月にわたる調査の結果、古城跡の発見。
高さ4メートルの城壁に囲まれた古城跡は、
東西1.5~1.7キロ、南北1.8~1.9キロ、広さは約290万平方メートル。
サッカー場約400個分の面積で、
中国国内で発見された古城跡の中でも最大級。

良渚文化は、4000~5300年前に浙江省と江蘇省の境界にある
太湖周辺で発展した。
複雑な社会階層の分類を備えた文明社会だったとみられることから、
「中国最古の王朝が存在した可能性もある」。

http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20071204k0000m030080000c.html

新しい波/253 野球独立リーグ/下 着実にレベル向上

(毎日 11月24日)

左手にストップウオッチを握り、男は手帳にペンを走らせていた。
独立リーグ日本一を争う香川-石川戦(10月27日、高松)の
バックネット裏には複数のプロ野球スカウトがいた。

楽天の中尾明生スカウトは、
「1年目は(フロントが)四国アイランドリーグを相手にしていなかった。
レベルが上がり、今では(球団の)現場からも注目選手の名前が上がってくる」。

物差しとして、プロは交流戦を重視。
05年は、オリックスとの1試合のみだったが、今年は17試合。
10月には、セ、パ12球団による教育リーグ「フェニックスリーグ」(宮崎)に、
四国リーグ選抜が初参加。
3勝8敗1分けながら、小差の試合が多かった。

大学生・社会人ドラフトでは、香川の三輪正義内野手(23)が
ヤクルト6巡目で、他に5選手が育成選手として指名。
計6人の指名は、過去最多。

今季、リーグ新記録の40盗塁をマークし、遊撃の守備も評価された
三輪ら4人はリーグ在籍3年目。
ヤクルトの岡林洋一スカウトは、
「守備、走塁、打撃とも段々と進歩している」。

監督やコーチを務める元プロ選手らによる育成機能が、
一定の役割を果たした証し。

海外も注目。
今季は、豪州から04年アテネ五輪銀メダリストら4人が加わった。
現在も豪州代表でプレーするトム・ブライス外野手(26)=香川=は、
「四国に来たのは、日本のプロ野球に行くステップになるから。
他の選手も関心を持っている」。

リーグ運営会社IBLJの鍵山誠社長(40)は、
「3年目の選手のプロ入りは特にうれしい。
コンスタントに選手を輩出し、プロへのもう一つの選択肢として認められた」。

四国リーグがまいた種は、全国各地で芽を出している。

今季スタートしたBCリーグからは、育成選手として楽天から1人が指名。
来季は福井、群馬が加入して6チームに増え、
岡山、宮崎、福島などでも新球団設立を目指す動きが加速。
夢を抱く他地域の選手には、3年間で計11選手がプロから指名された
四国が、まぶしく映っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

2007年12月20日木曜日

抗癌効果のある食事はあるのだろうか?

(Medscape 12月6日)

ある種の果物と野菜が癌のリスクを低下させ、
その通過路に発生する癌を抑制するのに役立つ可能性がある。
「抗癌作用をもつ食事」が現実に存在するわけではないが、
ある種の果物と野菜を多量に摂取することは、
発癌リスクを低下させるのに役立つと、研究者らは報告。

その知見は、果物と野菜の摂取量が多いことが癌リスクの低下と
関連することを明らかにした、以前の研究を確認および補強するもの。

最新の「A」リストには、ブラックラズベリーが食道癌の予防
ブロッコリーのようなアブラナ科の生野菜が膀胱癌の予防に推奨。

オハイオ州立大学総合癌センター(コロンブス)の栄養学の准教授
Laura Krestyは、「魔法のような効果のある食物はない。
重要なことは、多様な果物と野菜を食べよ、旬のものを食べよということ。
本当に目指すべきことは、果物と野菜の総摂取量を増やし、
野菜中心の食事を摂るように努めること」。

ブラックラズベリーを食べることが、
食道癌になるリスクの高い人々を保護する可能性がある。
動物実験において、ブラックラズベリーが口腔、食道、結腸の癌を抑制。
果物は、酸化ストレス、フリーラジカルによる細胞破壊を減らし、
DNA損傷と細胞増殖速度を軽減する。

バレット食道と呼ばれる食道の前癌病変を有する高リスク患者を対象。
バレット食道患者は食道癌のリスクが30 - 40倍高い。
食道癌は致死的であり、5年生存率は15%。

20例の患者が、凍結乾燥したブラックラズベリーを1日に1オンス(28.3g)
または1.5オンス(42.5g)(男性はより多く)、26週間摂取。
酸化ストレスのマーカーである尿中8-イソプラスタンを測定。
「58%の患者は、8-イソプラスタンが顕著に減少」。

発癌物質の無毒化を促進するGSTpiという酵素の組織内レベルも検討。
37%の患者で、保護作用を有する酵素が増加。
癌が発生した人々が減少したかどうか、長期追跡調査は行われなかったが、
Kresty博士は、果物には「保護作用がある」と。

Roswell Park癌研究所(ニューヨーク州バッファロー)の研究者らは、
ブロッコリー、ブロッコリースプラウト、キャベツ、カリフラワーのような
アブラナ科の生野菜は、膀胱癌のリスクを約40%低下させる。
それらの野菜には、膀胱癌に対する保護効果を有すると考えられる
イソチオシアン酸塩、ITCという化合物を含む。

Roswell Park研究所Li Tang, MDは、
「生のアブラナ科の野菜は、加熱調理した野菜よりも良い。
調理中にイソチオシアン酸塩の量が60% - 90%減少する」。

膀胱癌と診断された275例、健康な被験者825例の食習慣を調査。
診断前の生および加熱調理済みの野菜の摂取、喫煙習慣、
他のリスクファクターについて質問。
1カ月にそれらの野菜を3食分以上摂取した非喫煙者は、
1カ月に3食分未満しか摂取しなかった喫煙者と比較して、
膀胱癌になる可能性が約73%低い。

Roswell Park癌研究所の腫瘍学の教授Yuesheng Zhangは、
ブロッコリースプラウトは膀胱癌の予防に、より優れている可能性がある。
4群の動物を用い、1つの群には膀胱癌を誘発する溶液を飲ませ、
ブロッコリースプラウトの凍結乾燥抽出物を摂取。
他群には、ブロッコリー抽出物のみ、発癌物質のみを摂取。
もう1つの群は対照群とし、何もしなかった。

10カ月後、「発癌物質のみを摂取した動物の96%に、腫瘍が発生」。
発癌物質とブロッコリー抽出物の両方を摂取した動物のうち、
癌が発生したのは37匹のみ。
この場合も、保護効果を示すと考えられるのはITC。
ブロッコリースプラウトは、発癌物質を無毒化する上で
重要な2つの酵素を活性化することによって効果を発揮。

American Association for Cancer Research's Sixth Annual International Conference on Frontiers in Cancer Prevention Research, Philadelphia, Dec. 5-8, 2007. Laura Kresty, PhD, assistant professor of nutrition, Comprehensive Cancer Center, Ohio State University, Columbus. Yuesheng Zhang, MD, PhD, professor of oncology, Roswell Park Cancer Institute, Buffalo, N.Y. Li Tang, MD, PhD, Roswell Park Cancer Institute, Buffalo, N.Y.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=64059

新しい波/252 野球独立リーグ/中 香川、リピーター増

(毎日 11月10日)

赤字経営が続く四国アイランドリーグで、
黒字転換にめどをつけた球団がある。
今季、2連覇を果たした香川オリーブガイナーズ(高松市)。

小崎貴紀球団社長(37)は、
「リピーターを戦略的に作ることができた」。

ホームの1試合平均観客数は、前年比約1・6倍の1592人。
年間集客数は、7万1634人でリーグの史上最多記録を更新。

カギは、無料チケットの有効活用
初年度は、リーグ全体で約40万枚をばらまき、赤字が膨らむ要因に。
香川では、地域別の配布枚数と実際に訪れた観客数の「着券率」を集約。
着券率の高い地域で営業を強化し、安定した集客を実現。

「家族客」の取り込みも効果的
市内の全公立小中学校約3万5000人の児童・生徒に、
無料チケット付きのチラシを配布した結果、
保護者を含めたリピーターが増えた。

リーグ1球団の年間経費は、1億~1億3000万円。
香川は今季、リーグ最多となる約40社のスポンサーから6000万円、
チケット3000万円、グッズ1300万円、飲食1200万円に加え、
2人がプロ球団入りを果たし、契約金や初年度年俸の2割が収入となり、
総収入は1億2500万円に達する見通し。

昨季から独立採算制に移行し、独自の経営戦略が可能になったことも大きい。
香川は、職員を6人に倍増して積極経営を選んだ。
元広島投手やアテネ五輪銀メダリストの豪州代表スラッガーを獲得し、
戦力アップにも取り組んだ。試合の質の向上は、集客に直結。

一時は球団存続が危ぶまれた高知は今オフ、
阪神・藤川球児投手の兄が球団代表に就任し、営業戦略を練り直し。
来季から新加入の長崎は、米独立リーグ人気球団と提携して
米国流のイベント充実に力を注ぐ。

今季スタートしたBCリーグの村山哲二代表(43)は、
「まず1球団だけでも、黒字化のモデルをつくりたい」。

香川の職員は、今季途中に徳島へ派遣され、
来季は別の職員が福岡の新球団で運営に携わる。
香川のノウハウは各地へ波及している。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20071110ddm035050027000c.html

大学と企業を渡り歩いた経験を、バイオベンチャー育成に生かす!

(nature Asia-Pacific)

株式会社トランスサイエンス・キャリア 顧問 池本文彦

今や、2人に1人が大学に進学する時代。
その1割は大学院にまで進み、理系に限ると大学院進学率は3割を超える。

ところが、大学における研究ポストはそれほど増えておらず、
公的研究機関では終身雇用の研究職が増えるどころか、減少の傾向。

一方、ライフサイエンスやIT、環境、食品など、
産業における研究者や技術者の需要は大きく、優秀な人材の確保が急務。

トランスサイエンス・キャリア社は、バイオ・メディカル分野において
研究者と民間企業との架け橋となるべく、
ベンチャー企業などの人材と組織を育成支援。

2005年に設立されたトランスサイエンス・キャリア社は、
ベンチャーキャピタルであるトランスサイエンス社と協同運営
薬理学研究者である池本文彦博士は、大学と製薬企業とを渡り歩き、
2004年にトランスサイエンス社の顧問に着任。
2006年からはトランスサイエンス・キャリア社の顧問も兼任。

「トランスサイエンス社は、160億円のファンドを国内外の52社に投資し、
トランスサイエンス・キャリア社の方は発足からわずか2年で、
経営幹部層を含め70人を超える人材を紹介してきた」。

人材の紹介先は、創薬ベンチャーからバイオインフラ企業、
コンサルティングファームと多岐にわたり、
着任ポストも代表取締役CEO、開発本部長、社長室長、薬理部長とさまざま。

1961年に神戸大学理学部生物学科遺伝学教室を卒業した池本博士は、
自活していくためにやむを得ず製薬企業に就職。
その後、大学での研究が捨てきれずに、製薬企業に籍を置いたまま
大阪市立大学医学部の研究生となり、
病態発生機序における細胞の能動輸送系障害の意義についての
研究をテーマとし、1972年に医学博士を取得。

1977年に製薬企業を退職し、同大学医学部の講師に就任して以来、
レニン・アンジオテンシン系の研究で成果を上げ、
助教授までを務めあげたが、1989年に依願退職。
1990年、万有製薬株式会社つくば研究所創薬研究所の副所長、
取締役開発研究所長などを歴任し、
2004年の退任後にトランスサイエンス社顧問となり現在に至る。

「好きな生き方をして、さまざまな経験をしてきたので、
少しでもご恩返しをしたい」。

自らを「珍種の存在」と語る池本博士は、現職への思いをそう話す。

一攫千金を狙ったバイオベンチャー設立ブームは記憶に新しいが、
安定した経営が行えている企業はきわめて少ない。
「私は利益のみを追うことはせず、大企業では難しい特化した領域を
発展させることに貢献したい。
利益は、社会への貢献についてくるといわれている。
大企業とベンチャーは、競合ではなく共存できるはずだ」。

「研究者は、アカデミックなサイエンスと、サイエンスを生かす事業とを
区別して認識しなければならない」。
研究を事業に結びつけるのは、
発端となる基礎研究を行った研究者だけでは不可能で、
医療応用の実現までを事業として考える企業や人材に
うまくバトンを渡す必要がある。

「新しい知見が得られた時、
社会に還元するために何ができ、何ができないのかを、
研究スタッフと経営者が同じ目線で話し合える環境が必要。
松下、ソニー、ホンダなども最初はベンチャーだったが、
技術者と優れた経営陣の両面が揃っていたから成功したのだろう」。

バイオベンチャー事業の成功の鍵は、優秀な人材をいかに活用するかにある。
研究者が、自分のスキルや興味に応じて、大学、公的研究機関、
大手の民間企業、ベンチャーの間を自由に行き来できる体制が必要。
「難病の指定を受けている疾患の治療に結びつく事業を応援したい」。

自らの経験を生かし、経営陣やスタッフの
よきアドバイザーとして活躍する日々が続く。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=47

2007年12月19日水曜日

地球温暖化防止求める集会、世界各地で開催

(CNN 12月9日)

インドネシア東部バリ島で開幕した
気候変動枠組み条約第13回締約国会議(COP13)に合わせ、
地球温暖化の防止を求める集会が、世界50都市以上で開かれた。

フィリピンの首都マニラでは、風車付きの帽子をかぶったり、
太陽を模したダンボールの面をかぶった何百人もの人々が市内を行進。

台北では、1500人前後の人々が、二酸化炭素排出に抗議する
スローガンが書かれた横断幕やプラカードを掲げた。

バリ島のCOP13会場前でも、大規模なデモ行進があり、
ニュージーランドの首都オークランドでは、
350人以上が草地に横たわって「気候SOS」の人文字を描いた。

ベルリンのブランデンブルク門では、
氷の彫刻家が15トンの氷からシロクマを制作。
また、ドイツ各地で商店街が5分間消灯した。

ロンドン市内では、大勢の市民が、国会議事堂広場に
自転車で乗り入れる抗議行動があった。

参加者らはかけがえのない地球を守るよう求め、
COP13進展の足かせとなっているブッシュ米政権を批判した。
主催者は、この日の抗議行動の最後に米大使館前に移動する考え。

フィンランドの首都ヘルシンキでは、商店街のアスファルトの道路に
スキーを履いた50人前後が現れ、
雪が降る寒い冬を呼び戻すよう指導者らに促した。

米国でもマサチューセッツ州ウォルデン池で、50人規模の集会があり、
シロクマに扮した参加者などが大統領や議員らの真剣な取り組みを求めた。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200712090006.html

新しい波/251 野球独立リーグ/上 6チームで再出発

(毎日 11月3日)

四国アイランドリーグの運営会社IBLJの鍵山誠社長(40)は
今、安堵している。
昨夏から温め続けたリーグ広域化構想が、ついに実現。
「小さなリーグでは限界がある。
いろんな地域とアライアンス(同盟)を組み、
戦略的に運営しないと四国は孤立する」。

1年目は3億円、2年目は1億5000万円、
今季も1億円以内の赤字経営が続く。
経費節減が限界に達する中、経営基盤強化のために、拡大路線は必然。

日本初の独立リーグとして05年4月、4チームでスタートした四国リーグは
来季、長崎、福岡両県の新球団を加えた6チームで
四国・九州アイランドリーグ」として再出発。
将来的には、西日本で16チームへの拡大を目指す。

広域化の狙いは、対戦カードの充実による集客アップや、
市場拡大によるスポンサー収入増にある。
1球団当たりの遠征費用は、
約360万円増の年間1000万円に膨らむが、補える計算だ。

今季が3年契約の最終年となるメーンスポンサーの
四国コカ・コーラボトリング(本社・高松市)は、既にスポンサー継続を決めた。
橋本建夫社長(62)は、「6チームになれば、
ゲームの魅力が増してお客さんも増える。知名度もアップする」。

人口約400万人の四国から、長崎、福岡を加えた約1000万人のマーケットへ。
多くのスポンサーとの契約更新交渉は順調。
1試合平均の集客目標は、今季の1100人より400人増の1500人、
計36万人に設定。

ライバルリーグも広域化の道を歩む。
新潟、富山、石川、長野の4チームによる北信越BCリーグ
2年目の来季、群馬、福井両県の球団を含めた6チームに拡大。
新名称は、BCリーグとなった。

運営会社の村山哲二社長(43)は、
「6チームはプロスポーツの最低単位。土台づくりを進める」。

四国・九州リーグの所属選手は、四国リーグより80人増の計180人。
鍵山社長は、「独立リーグのパイを広げれば、
チャレンジできる若者も増える。競争にもまれることでリーグは発展していく」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20071103ddm035050036000c.html

質の良い研究室のウェブサイト作成は、研究室の世界をより明確に示す

(nature Asia-Pacific)

先進国の多くの人々にとって、インターネットは日常生活に浸透しつつある。
インターネットは買い物、お勧めのレストラン情報の入手、
休日の楽しみの検索に利用。
そう遠くない将来、研究者は就職先として最も望ましい研究室を
探すに当たって、いい所を物色し、自分を売り込むために
ウェブを利用するだろう。

ウェブサイトは、研究室とコンタクトを取る最初の接点である場合が多く、
研究室の活動を紹介するデジタルウィンドウのようなものである。

研究室のウェブサイトの多くは、研究プログラムを明らかにし、
研究員の名前と連絡先を記載している。

良いサイトは、共同研究を探す手段も提供している。
特に優れたサイトでは、将来研究員となる人々が、
過去および現在の研究員が
何を目的として研究を続けているかを知ることができる。

もし私が新しい研究室を検索するとしたら、
今までの研究員が研究責任者の指導の下で論文を発表しているか、
彼らが学術界、企業、政府機関を問わず、専門内外を含めて、
私自身が追求してみたい職業に就いているかを知りたい。

また、研究室の体質についても知りたい。
研究員達が仕事上、またプライベートで交流しているかどうか?
彼らにはユーモアのセンスがあり、協力の精神を持っているか?

こうした「最高の仕事」を探すために、
幹細胞研究者であり、ブロッガーでもある大学院生Attila Csordásは、
ブログ上で研究室のウェブサイトのコンテストを主催
(http://pimm.wordpress.com/)。

Csordásの見解によると、メディアの技術を最大限生かしている
研究室のウェブサイトはほとんどなく、
これらは研究室の業績や体質について検索者が知りたいと思っている
情報を提供していないという。

「大学の研究室のほとんどのウェブサイトが、進化した、最新の、
絶えず変化しているウェブの基準を満たしていない」

Csordásは、自分の研究分野の合格点に近いサイトを数例紹介しているが、
世界中の生命科学の研究室に、最高の研究成果を共有するように求めている。
この挑戦を受けて立つことは、
研究室がその実績を売り込む助けとなり、将来有望な若い研究者を
自分達の研究室に誘致することができるだろう。

NatureVol. 447, P. 347, May 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=13

2007年12月18日火曜日

低脂肪食は閉経後女性の卵巣癌発生率を低下させる可能性

(Medscape 10月17日)

低脂肪食パターンは、閉経後女性において卵巣癌の発生率を低下させる
可能性があることを示す研究結果が報告。

フレッド・ハッチンソン癌研究センター(Fred Hutchinson Cancer Research Center)
のRoss L. Prenticeらは、
「Women's Health Initiative [WHI] Dietary Modification (DM)
Randomized Controlled Trial(女性の健康イニチアチブ食事改良
ランダム化比較対照試験)において、
「低脂肪食パターンが、慢性疾患の発生率に及ぼす効果を
乳癌と大腸癌、卵巣癌と子宮内膜癌で評価した」。

1993-1998年に、閉経後女性48,835例がDM介入(n=19,541)または
通常食(n=29,294)にランダム化された。平均追跡期間は8.1年間。

DM介入の目的は、総脂肪摂取を消費エネルギーの20%に減少、
野菜、果物、穀物の摂取量を増加させること。
癌の転帰を確認し、重み付けしたログランク検定を用いて、
卵巣、子宮内膜の浸潤癌、全浸潤癌、他部位の浸潤癌の発生率を群間で比較。

通常食群と比較して、DM介入群は卵巣癌のリスクが低かった。
全卵巣癌のハザード比(HR)は、統計学的に有意ではないが、
HRはDM介入の期間が長くなるにつれて低下。
最初の4年間は、卵巣癌のリスクは両群とも同程度
(介入群0.52 対 対照群0.45例/1000人-年)。

しかし、次の4.1年間に、DM介入群では同リスクが低下
(介入群0.38 対 対照群0.64例/1000人-年)。
子宮内膜癌のリスクは群間に差がないが、
全浸潤癌の推定リスクは対照群より介入群の方がわずかに低い。

研究の限界として、
5種類の癌のリスクに関する多重比較のための補正が、
同知見の統計学的有意性を低下させた可能性、
全期間に介入効果の一貫性が認められず、効果の確実性が低いこと、
対照群より介入群で卵巣癌が早く検出された場合には
累積ハザード推定値が歪められた可能性。

「低脂肪食パターンは、閉経後女性において
卵巣癌の発生率を低下させる可能性がある。
DM試験は、全浸潤癌の減少の可能性も示唆。
被験者に対して非介入で追跡を継続しており、
低脂肪食パターンがこうした癌の発生率に及ぼす効果について
更に有益な評価が行える可能性がある」

J Natl Cancer Inst. 2007;99:1534-1543.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=58911

新しい波/250 ドーピング対策/下 高まる国の責任

(毎日 7月21日)

国際オリンピック委員会(IOC)は、
今月上旬にグアテマラで開いた総会でユース五輪の創設を決めた。
14~18歳を対象にした大会は、競技力を争うだけでなく、
五輪精神や反ドーピング(禁止薬物使用)などの
教育活動が盛り込まれている。
IOCのロゲ会長は、「若者への投資」と話した。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)の
「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」
(ユネスコ規約、2月1日発効)も継続的な教育の必要性を掲げる。

ドーピング防止活動は、検査による「取り締まり」だけでなく、
薬物に手を出させない教育も重要視。

国内でも、反ドーピング教育の議論は始まっている。
文部科学省と日本オリンピック委員会(JOC)などが主催した
6月のスポーツコーチサミットでも分科会テーマに取り上げ、
「学校での教育の充実」や
「薬物乱用防止キャンペーンなど社会運動との連動」などの手法が語られた。

だが、まだ学校教育では高校の保健体育の教科書で触れられている程度で、
教員や教材の確保など課題も。

日本は、ドーピング検査の陽性率が0・14%(05年)で、
その大半が不注意によるものとされる。
ドーピングへの危機感は海外ほどではない。

ただ、五輪の商業イベント化が進み、注目度や選手の報酬が高まる中、
選手にはますます勝利への重圧がかかる。

一方で、麻薬などの乱用も社会問題に。
取り巻く環境の変化を考えれば、
「容易にドーピングのリスクの高い国になる可能性だってある」と
日本アンチ・ドーピング機構の浅川伸事務局長は訴える。

12月には、国内初のナショナルトレーニングセンターが東京都北区に完成。
国としても、五輪でのメダル獲得に取り組み始めるだけに、
ドーピング対策の責任も高まる。

16年夏季五輪の東京招致は、
国内で反ドーピング教育を広げるチャンスでもある。
スポーツの価値を守る反ドーピング活動は、
オリンピックムーブメント(五輪精神を広げる活動)に通じる。

日本は、ユネスコ規約の批准をはじめ法整備では国際的基準に達した。
実際に、ドーピング対策にどう取り組んでいるかを示せなければ、
招致活動への国際的な理解も得られないだろう。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070721ddm035070063000c.html

2007年12月17日月曜日

国は違ってもポスドク過剰は同じ

(nature ASia-Pacific)

多くの政府が、GDPの大部分を研究開発に投資し、
活気ある科学文化を構築、維持しようと努力している。
最終的に国家、経済および社会全体に利益をもたらす
科学研究を奨励することがその目的であろう。
雇用機会創出にも目が向けられている。
ところが、過ぎたるは及ばざるがごとしということもある。

2000年までにポスドクを1万人にする、という
日本の大胆なイニシアチブの目的は、
科学関連の雇用創出を改善し発見を促すことであったが、
それは極めて重大な問題に直面。
今やポスドクが過剰となり就職口が不足している。

日本政府は1995年当時、若い研究者らが以前よりも独立性を高め、
独自の研究を行う機会を増やすために、
ポスドクの数を増やす必要があると認識。

計画より1年早い1999年にその目標は達成され、
2005年にはポスドクは1万5千人。61%は理工学専攻。
そして、アカデミックな正規雇用ポストの枯渇が始まった。

生物医学を初めとする米国の科学者にとって、
この一連の出来事は非常に身近であろう。

数年来、米国の学会および科学界のメンバーは、
ポスドクの過剰および新参者向けの研究職需要の不足を認識
(Nature 422, 354–355; 2003)。

日本と米国では文化は異なるものの、
ポスドク問題を解決しうる共通のテーマを持っている。

全米アカデミーによる「独立への架け橋」(Bridges to Independence)
呼ばれる2005年の報告では、いくつかの解決策が提言。
ポスドクは、自身の研究のための資金をできるだけ多く獲得し、
個々の研究責任者の下で働く時間には制限を課され、
そのタイムリミットを過ぎたら別の形態の正規従業員になるべき。

革新および発見、そして優秀な科学者のために持続可能な研究機会を
最大限に促進することを目的とした科学分野の労働力の調整にあたって、
各国は共通の課題に直面しているように思える。

Nature Vol. 449, P. 1083, 24 October 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=58

新しい波/249 ドーピング対策/中 厳格対応のIOC

(毎日 7月14日)

グアテマラで4日にあった国際オリンピック委員会(IOC)総会で、
ソチ(ロシア)が決選投票の末に、平昌(韓国)を上回って
14年冬季五輪の開催地に決まった。

国際大会の経験が豊富で知名度も高いザルツブルク(オーストリア)は、
第1回目の投票で敗れた。

ドーピング(禁止薬物使用)対策の不手際が、惨敗の決定打に。

オーストリアは、昨年のトリノ五輪でバイアスロンの男子選手ら6人が
ドーピング規則に違反した。
IOCは、4月の理事会で6選手を五輪から永久追放とし、
オーストリアに対する補助金100万ドル(約1億2000万円)支払いも差し止め。

検査では陰性だった6人を、「禁止薬物の所持」という状況証拠で
厳しい処分にしたことはIOCの断固たる姿勢を象徴。
その中で、IOC委員がザルツブルクを高く評価するのは無理があった。

IOCではこれまで、72年ミュンヘン五輪での選手村襲撃事件や、
東西両陣営による80年モスクワ、84年ロサンゼルス両五輪の
ボイコットの応酬など、五輪の存在を揺るがす危機的状況に対応。

近年のIOCの動きをみると、ドーピング問題も、
それらの事件と同じくらいの重みをもった懸案事項に。
競技の公平性と選手の健康を損なう危険は、スポーツの根幹にかかわる問題。

そうした状況の下、東京都が招致を目指す16年夏季大会も
反ドーピングへの姿勢が問われる。

日本は、IOCが立候補の前提としているユネスコ(国連教育科学文化機関)の
「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」を批准。
世界反ドーピング機関(WADA)の常任理事国でもあり、
アジア・オセアニア地域事務所も東京・国立スポーツ科学センター内にある。
検査の陽性率は0・14%(05年)と低く、クリーンなイメージも定着。

東京オリンピック招致委員会の河野一郎事務総長は、
日本オリンピック委員会アンチ・ドーピング委員長も兼ねる。
禁止薬物対策の重要性を認識しているだけに
「日本は、国際的には貢献度が高い。
ただ招致を実現するには今後、
国の協力など国内での取り組み強化が求められる」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070714ddm035070152000c.html

音楽が女性ホルモンと作用 性別で不安緩和効果に差

(共同通信社 2007年11月15日)

音楽を聴くと不安が和らぐ効果には、女性ホルモンの作用が関係し、
これが性別による効果の差を生んでいる可能性があることを、
徳島大の近久幸子・助教(環境生理学)らの研究チーム
マウスを用いた実験で突き止めた。

不安が音楽によって取り除かれるとの報告は多いが、
男性より女性で効果が強く現れる傾向があり、理由は不明。

高所で不安定な実験装置にマウスを入れて行動を分析。
メスにクラシック音楽を聴かせると、装置から落ちそうな場所を避けるなど
不安を示す行動が減った。

オスではこの効果がなく、女性ホルモンの一種プロゲステロンを
働かなくしたメスでも効果が消失。
この物質が、音楽による不安緩和に重要な役割を果たしており、
性別で効果の差が出る一因と結論。

マウスでは、単純な音階とリズムの組み合わせでも緩和効果がみられ、
近久助教は、「どのような聴覚要素が効くのか突き止めたい」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=61394

2007年12月16日日曜日

第3部・科学者の倫理とは 私の提言/下 山崎茂明・愛知淑徳大教授

(毎日 12月9日)

科学におけるミスコンダクト(不正行為)は、
必ず起こりうる病気と考えるべき。

病気には、公衆衛生学的なアプローチ、
つまり大学を中心とした研究環境改善が解決の道であり、
倫理教育が重要な役割を果たす。
「ウソを言ってはいけない」と、説いたところでインパクトはない。
これまでの不正の事例に向き合い、何が問題で発生したのか背景を考え、
そこから学ぶ努力が大切。

日本の科学政策は近年、競争的な研究活動を促し、産学連携を推進。
その結果、大学は研究資金の獲得や金もうけに奔走し、
自身の首を絞めている。
こうした状況が、大学のよさをつぶしていると考える人は多い。
そうした問題意識を共有していかないと、国の方針に負けてしまう。

産学連携の功罪も、みていく必要。
企業から、研究助成金やコンサルタント収入を得るのは悪いことではない。
しかし、その企業に有利なデータを発表しようと考える人は当然いる。
こうした利害衝突(利益相反)が起こりうることを科学者に認識させ、
金銭的な関係を公開していくことが重要。

不正行為を、科学コミュニティーだけで解決しようというのはナンセンス。
自分たちの世界だけで何かをやろうというのは限界がある。
研究活動の多くは、税金である政府資金に依存しており、
社会や国民が政府による規制を求めれば、それを拒絶する理由はない。

例えば米国では、研究者が倫理教育プログラムを受講していないと、
国立衛生研究所(NIH)の研究に加われない。
これも規制の一つだろう。
NIHは、独自の倫理教育プログラムも持っている。
研究資金を配分する機関の役割はそれだけ大きい。

倫理教育では、科学論文などの著者の資格(オーサーシップ)
についても教えていくべきだ。
なぜなら、共著者同士による論文内容のチェック機能が、
不正の最初の防波堤になるから。

研究室トップを著者に入れるのは当たり前という日本の風潮は、
世界的な基準からみると妥当でない。
著者の資格をもっと厳しくみる必要がある。

不正行為によって、組織の何が問題なのかが浮かび上がってくる。
単に悪いことだと糾弾するのでなく、
若手もいきいきと研究できるような環境改善の一つの材料ととらえ、
前向きに取り組んだ方がいい。

私は、不正に手を染めた研究者自らが、
倫理教育の場で語るような時代がくればいい。
研究に携わる以上、不正行為をする可能性はだれにもあるからだ。

健康になったら、病気だったときの体験を語る、
それによって悩む人や将来ある人たちの力になれる。

米国の健康福祉省公衆衛生庁に属する研究公正局がまとめた
研究不正に対する調査報告書を読むと、
調査の過程も教育なんだ」と気づく。
不正行為をした研究者に聴取する中のやり取りで、
自分のしたことの重大性を自覚させる作業をしている。

日本の科学界も、こうした報告書に触れて、
どうやって対処すべきなのか学んでほしい。
==============
■人物略歴◇やまざき・しげあき

47年生まれ。専門は科学コミュニケーション。
東京慈恵会医科大医学情報センター講師を経て、99年から現職。
近著「パブリッシュ・オア・ペリッシュ 科学者の発表倫理」(みすず書房)。

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20071209ddm016040026000c.html

新しい波/248 ドーピング対策/上 基準、世界レベルに

(毎日 7月7日)

来年の北京五輪を目指す選手は、パソコンが必需品に。
選手は、アンチ・ドーピング(反禁止薬物使用)管理システム
「ADAMS」にアクセスして練習場、自宅など
「居場所情報」を日常的に提供し、抜き打ち検査に備えなければならない。

検査を実施する日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によると、
ADAMSには日本オリンピック委員会(JOC)の
強化指定選手ら約1000人が登録。

悪質な違反例が少ない日本の選手には窮屈とも思えるシステムだが、
抜き打ち検査をはじめとする厳しいドーピング対策は今や世界の大きな流れ。

かつて取り組みの遅れが指摘された日本も、
国際的な流れに沿って対応を急ぎ始めた。
政府は昨年12月、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が定めた
「スポーツにおけるドーピングの防止に関する国際規約」(ユネスコ規約)を締結。

03年3月に採択された世界反ドーピング機関(WADA)規定に基づいた
スポーツ団体の自浄作用だけではなく、
国を挙げて取り組む宣言をしたことを意味。
世界では56カ国(6月1日現在)が締結。

文部科学省は、今年5月9日に
「スポーツにおけるドーピングの防止に関するガイドライン(指針)」を策定、
JADAも日本ドーピング防止規定を発効。
いずれも、WADA規定に準じたもので考え方に大きな違いはない。

しかし、指針には、選手が違反で処分されたり、指針を順守しない時に、
所属競技団体などへの補助金を停止することが盛り込まれた。
居場所情報の提供も、競技団体の義務として挙げられたもので、
守らなければ補助金が止まる。
国を挙げての取り組みであることを反映した項目。

防止規定でも、違反した選手への聴聞会の実施主体が
従来の競技団体からJADA規律パネルに変わった。
これで公平性が確保され、競技団体による「身内に甘い」処分はできない。

JADAの浅川伸事務局長は、
「世界で日本だけが低調な取り組みでいいはずはない。
これで日本も国際基準に達した」。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070707ddm035070078000c.html

研究室におけるエコ志向の重要性

(nature Asia-Pacific)

最近、エコ志向がよく叫ばれている。
エコ志向とその研究の発信拠点となることが多い大学では、
科学研究所も含めて、自己点検と自らの活動の実態調査。
ほとんどの大学は、さらなる低消費化とエコ化に耐えうるだろう。

科学者達は、自分たちが日常活動でどうエネルギーを使っているか、
エネルギー効率を上げるためには何ができるかを考え始めるべき。

これは、必ずしも簡単ではない。
研究責任者には既に多くの仕事がある。
研究、交付申請、雇用、時には教育も。
その上に炭酸ガスの排出削減。こんなに小さい研究室で?
とは言っても、研究室には無駄な消費が多いことは明らか。

Natureの記事(Nature 445, 590–591; 2007)で指摘されているように、
従来型のドラフトは年間で米国の3世帯相当分のエネルギーを消費。
イリノイ州バタビアの米エネルギー省フェルミラボでは、
毎月の電気代に100万ドルを費やしている。

英国では、People and Planetと呼ばれる学生グループが、
最もエコな国内の大学をランク付けし、
The Times Higher Education Supplementにそのリストを発表。

当グループは、「エコ通学計画」、移動手段での対策努力、
再生可能資源からのエネルギー回収の実施などの要素をランク付け。
1位となったのはリーズメトロポリタン大学であった。

米国では、政府主催の組織Labs21が、
効率の良い研究室設計や設備について科学者に助言。
国内の大学および専門大学の学長らがClimate Commitmentを発表。
参加大学は、気候変動への対策を始めることを約束。

例えば、参加すると1年以内に、光熱使用、通勤通学、航空機利用による
大学からの温暖化ガスの総排出量の一覧をまとめる。

これまでに、280大学が本誓約に参加。
科学者や研究室は、反エコ的活動の主犯格というわけではないが、
しかし対策の一翼を担うのは当然である。
つまり、既に山積みの日常業務に「エコ活動」を追加すること。

Nature Vol. 447, P. 1027, June 2007

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=29