2007年12月15日土曜日

マラリア対策に340万ドル ゲイツ氏助成、愛媛大参加

(共同通信社 2007年12月5日)

愛媛大は、マラリアのワクチン開発を進めている国際研究チームに、
米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長らが運営する慈善団体が、
340万ドル(約3億8000万円)を助成することになったと発表。
 
オーストラリアの研究所が、病気の原因となるマラリア原虫の
遺伝子を絞り込み、愛媛大の遠藤弥重太教授らが
標的となるタンパク質を合成。
ワクチンの役目を果たす抗体をつくり動物実験で効果を確かめる。

発展途上国を中心に、毎年200万人超がマラリアで死亡。
遠藤教授らは、「実用化されたマラリアのワクチンはまだない。
根絶のためにも今回のプロジェクトは非常に重要だ」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63539

理系白書’07:第3部・科学者の倫理とは 私の提言/上 浅島誠・東京大学副学長

(毎日 12月2日)

科学者は、いわゆる「象牙の塔」にいて、社会と距離を置いてきた面がある。
だが、今は、先端的な医療技術が生命倫理を巡る議論を引き起こすなど、
科学技術が社会生活に大きな影響を与える。
地球温暖化問題のように、一分野の科学の域を超えて
政治的、社会的な問題になっている分野も。

社会に対するインパクトが増大するにつれ、科学者の責任も大きくなっている。
にもかかわらず、近年、国内外の著名な大学や研究機関で、
論文データの捏造などの不正が続発。

不正行為は、「どんな業界にもルールを破る人はいる」と、
軽く見過ごすことはできない。
科学者コミュニティー全体、ひいては科学という
営み自体に対する信頼を損なうことに。

国民から、「科学者に任せておいたのでは、何をするか分からない」と
思われていては、社会生活に直結するような研究は成り立たない。

そこで、科学者コミュニティーを代表する日本学術会議が
06年にまとめた「科学者の行動規範」では、
自ら規範を示してそれを守っていく「自律と説明責任」の大切さを強調

研究を束縛・規制するものではなく、
科学者が自律性を発揮し、透明性を高めていかなければ、
国民の信頼を取り戻すことができず、結果的に研究も進められない、
というメッセージだ。

大学の独立法人化などで、研究環境は大きく変わった。
最近は、科学コミュニティー全体が研究費を獲得したり、
次のポストを得るために、何かに追われるように
仕事をしているように感じられてならない。

短期間で成果を求める傾向が強まり、
不正行為の背景となる側面がある。
研究効率を求めるあまり、極端な分業体制を取り入れると、
隣の人が何をしているのかも分からなくなる。
指導者の望み通りの結果が出れば、十分な検討や議論もないまま
発表するというようなことも起こりうる。

重要なのは、研究室をオープンな雰囲気にすること。
指導者の主張や隣のグループの実験結果にも、
自由に議論ができる雰囲気があれば、
データ捏造やアカデミックハラスメントなどの問題は起こりにくい。
日ごろからそういう雰囲気に慣れていれば、
学会の場でも感情的にならず、学問上の真の批判や討論ができる。
これが、専門家による相互チェック機能として働き、
疑念を持たれるような研究は淘汰される。

本来、科学の研究とは知的冒険であり、独創性を持って
自らの課題に挑戦し情熱を傾けることのできる楽しい作業であるはず。
若い研究者がいきいきと希望を持って研究できるような環境を、
自分たちが主体となって社会と一緒に作っていかなければならない。

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■人物略歴

44年生まれ。東京大教養学部長などを歴任。専門は発生生物学。
89年、受精卵がさまざまな器官に分化するのを誘導する物質
「アクチビン」を発見。日本学術会議副会長も務める。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/12/02/20071202ddm016040053000c.html

新しい波/239 広がる人工芝/4止 撤去問題は停滞

(毎日 4月28日)

関西にある私立大学の人工芝グラウンドは、メーカーの予測が外れ、
施工からわずか3年足らずでダメに。
最大の原因は、使い過ぎだ。

本来ならば、はがして張り替える代わりに、
旧タイプの上に新タイプの人工芝を載せた。オーバーレイ工法という。

耐用年数が過ぎた人工芝は大抵、産業廃棄物として処分。
サッカー場の場合、撤去処理費用として約1000万円かかるという。
オーバーレイ工法によって費用は浮いた。
だが、そのメーカーの担当者は、「何度もできるわけではなく、
問題を先延ばしにしているだけ。根本的な解決にはなっていない」。

劣化はしても、消滅しない人工芝。
将来、どんなに品質や性能が向上しても、この点だけは、
自然の産物である天然芝を超えられない。

撤去処理問題が、「一番の懸案事項」であることはメーカーも認識。
衝撃を吸収する充てん物(目砂やゴムチップ)を、
ポリエチレン素材の人工芝と分離してリサイクルに回すことが検討。
開発に着手しているメーカーもあるが、問題はコスト。

あるメーカーは、「リサイクルできる原料をどれだけ使うか。
お金をかければリサイクルは可能だが、製品に反映され、ユーザーに負担が。
どの製品でも、最近はリサイクルが言われている。
メーカーとしては『できません』とは言えない」。

来年開催の大分国体でラグビー会場となるグラウンドは現在、
天然芝から人工芝への工事中。
天然芝の場合、維持費が年間約800万円。
人工芝の施工費は、2面(約2万2000平方メートル)で約2億5000万円。
大分県由布市の国体推進室は、「安全性や耐久性のほか、
環境への配慮など総合的に判断した。
その際、張り替えをどうするかという話は出なかった。
使用規定を作ったり、管理をよくしたりして、できるだけ長く持たせたい」。

人工芝のリサイクルについて、自治体などユーザー側の意識はまだ高くない。
だが、今後、張り替え需要が出てくるにつれて
社会問題化する可能性は十分、ある。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070428ddm035070019000c.html

2007年12月14日金曜日

5歳チンパンジー、短期記憶の能力は人間の成人上回ると

(CNN 12月4日)

わずか5歳のチンパンジーが持つ短期記憶の能力は、
人間の成人をはるかに上回ることを、
京都大学霊長類研究所の松沢哲郎教授が発表。

松沢教授は、世界で初めて、
「チンパンジーの子どもの記憶能力が、チンパンジーのおとなよりも、
さらには人間のおとなよりも優れている」ことを示した。

大人と子供のチンパンジーに、1~9までの数字の順番を教え込ませ、
コンピュータのディスプレイ画面に表示された数字を
順番通りに触れるように訓練。
その後、画面に数字を表示させたところを見せ、
さらに数字を白い四角に置き換えても、数字の順番通りに触れば、
四角が消えていくテストを実施。

その結果、数字の表示時間をどんどんと短くしていっても、
チンパンジーの子供3頭は、ほぼ一瞬でどの数字が
どの場所にあったかを記憶出来たという。

一方、同様のテストを人間の成人で実施すると、
チンパンジーの子供にかなわなかった。

特に、一番成績の良かった5歳のチンパンジー、アユムは、
9個の数字を約0.7秒で記憶。
人間の成人は誰も記憶できない時間だった。

松沢教授は、アユムたちチンパンジーの子供の能力が、
人間の子供でも知られている「直観像記憶」に似ていると指摘。
人間でもまれに、複雑なパターンの細部を一瞬見ただけで
記憶できる子供がいるが、年齢が上がるとその能力が減退するとして、
人間の脳の進化を知る手がかりになる。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200712040016.html

新しい波/238 広がる人工芝/3 体への負荷増大

(毎日 4月21日)

同志社大学の京田辺キャンパス。
風が吹くと、砂ぼこりが舞っていたラグビー部のグラウンドが今週、
ドイツ製の人工芝に生まれ変わった。

中尾晃監督は、「理想は天然芝」というが、
100人を超える部員が毎日、足を踏み入れることを考えれば、ベターな選択。
地面に落ちているボールへの反応は、土と芝では格段に違う。
けがへの不安や恐怖心、ためらいがなくなり、
技術の向上に役立っていることは、複数の指導者や選手が明言。

世界の普及状況を考慮して日本ラグビー協会は04年、
丈の長いロングパイル人工芝を導入する際のガイドラインを作成。
日本サッカー協会も、03年に人工芝の公認規定などを作成。
サッカーは現在、国内約50カ所のピッチが公認。
両協会とも、人工芝はあくまでも天然芝の代用品である、との立場だ。

人工芝になって、すり傷や打撲などが減った代わりに
足首のねんざのほか、じん帯や半月板損傷などのけがが多くなった
との声がメーカーにも寄せられている。
スクラムを組んだ際、芝がめくれることで選手にかかる力を逃す天然芝に対し、
人工芝はスパイクの引っかかりが強いため、
選手への負荷が天然芝より大きく、腰やひざ、足首の故障を誘発しやすい。

あるメーカーは、導入数カ月間は人工芝の上を裸足で歩くことを勧めている。
足の裏で芝をつかむ感覚に慣れれば、
スパイクを履いた時に力の加減が分かる。
担当者は、「土のグラウンドと違う筋肉を使うので、そこに疲労がたまる。
あらかじめ刺激してやれば、早く順応でき、けがが少なくなる」。
これは、天然芝にも共通する考え方。

ラグビー19歳以下日本代表のフィットネス&コンディショニングを担当する
下農裕久コーチは、けがの予防策として
ウオーミングアップでストップ、ターンを重視。
「普段、土で練習している高校生にとって環境の変化は大きい。
今は大きな問題が起きているわけではないが、考慮しないといけない」。

けがの分析など検証を進めながら、
人工芝との正しい付き合い方を探る段階にきている。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070421ddm035070132000c.html

生活習慣病やがんの年代間伸び、「40-50代」最大 1人当たり医療費

(毎日新聞 2007年11月15日)

都民1人当たりにかかった医療費のうち、
生活習慣病やがんの年代間の伸びは、「40~50代」が最も大きいことが、
都福祉保健局が発表した医療費分析報告書で分かった。

「40代からの予防の取り組みが重要」と結論、
都の医療費適正化計画にこうした分析結果を生かす方針。
都が都民の医療費を詳しく分析するのは今回が初めて。

▽都国民健康保険団体連合会から昨年11月分のレセプト
(診療報酬明細書)437万6664件、
▽被用者保険2組合からレセプト計7万5360件、
の提供を受け、双方を比較したところ、
年齢階層別の疾病構造が同様の傾向だったため、
国保の医療費データを使って特徴を探った。

40代以上の1人当たりの医療費の伸びを年齢階層別に見ると、
生活習慣病の一つの高血圧性疾患は
「40~50代」が3・3倍に上ったが、「50~60代」は1・7倍にとどまった。
脳梗塞も「40~50代」が3・3倍、胃がんも2・8倍と伸びが大きい。

一方、05年度の都民医療費の総額は2兆8124億円で、
このうち70歳以上の老人医療費が約4割の1兆1344億円。
都の人口の将来推計では、75歳以上の高齢者は05年の98万9000人、
25年には2倍超えの205万5000人になり、老人医療費の激増が予想。

また、都民1人当たりの医療費は23万5000円で全国32位、
入院医療費は8万2000円で同43位、
入院外医療費は13万1000円で同13位。

都内は人口比の病床数が全国平均より少なく、
一般診療所が多いことなどから、入院医療費が低くなった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=61445

2007年12月13日木曜日

消石灰で視力障害98件 学校でライン引き使用 文科省、初の注意通知

(共同通信社 2007年12月3日)

運動場のライン引きなどに使っている消石灰(水酸化カルシウム)が、
児童生徒の目に入り視力が低下するなどの障害が残ったケースが、
これまでに98件あったことが、日本眼科医会の調査で分かった。
文部科学省は、より安全性の高い炭酸カルシウムに変えるよう
求める初の通知を出した。

消石灰は、強アルカリ性で、目に入ると角膜や結膜が損傷。
日本眼科医会は、「実際、もっと多くの事故が起こっているとみられる」。
消石灰の使用を禁止するよう呼び掛けている。

調査は今年9月、学校医や教委への聞き取りなどで実施。
小中高校での消石灰の使用や事故の有無などを聞いた。
管内の学校で、消石灰を使っているとしたのは29支部。
「ほとんどで使用」10支部、「半分ぐらい」4支部、「一部」15支部。

「視力障害が残った症例を経験したことがあるか」との問いに、
18支部から計98件の報告。
症状の内容は問わず、過去2年間に限れば、
消石灰が目に入って医師の診察を受けるなどした事故は、
18支部で計51件。
原因は、「風による飛入」が最も多く、「器具の横転」、「ふざけて遊んでいて」順。

日本眼科医会は、弱アルカリ性でより安全な炭酸カルシウム
使うよう文科省に要請。
文科省は、これまで学校安全に関する参考資料で、
石灰の取り扱いの注意を促すにとどまっていたが、今回の通知に。
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▽消石灰

生石灰(酸化カルシウム)に水を反応させてつくる
水酸化カルシウムを主成分とし、運動場などのライン引きのほか、
酸性化した土を中和させる改良剤などに使用。
強アルカリ性のため、目に入ると角膜などを傷つけ、失明するケースも。
消毒作用もあり、鳥インフルエンザが発生した場に散布。
2004年度の国内消費量は、約60万トン。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63290

統合失調症に関与の遺伝子特定

(毎日 2007.11.13)

幻覚や妄想などの統合失調症に関与するとみられる遺伝子を、
理化学研究所の吉川武男チームリーダー(精神医学)を中心とする
グループがマウスの実験で突き止め、発表。

この遺伝子は、脳でドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸と
結び付くタンパク質をつくる「Fabp7」。
脳が発達する胎児期に、これらの脂肪酸が不足したことが
発症に影響している可能性を示す。
確認されれば、妊婦への栄養指導による発症予防にも道を開く。

大きな音を聞く直前に小さな音を聞くと、
通常は大きな音だけのときより驚き方が小さくなるのに、
統合失調症患者では驚きが変化しにくいことに着目。

マウスの中にも、患者のように驚きが変化しにくいタイプを見つけ、
正常に反応するマウスと比較し、
この反応をつかさどる遺伝子がFabp7であることをまず突き止めた。

この遺伝子は通常、脳の発達期に働きが高まり、成長後は低下するが、
驚き方が変化しないマウスでは逆に、脳発達期に働きが低下し、
成長後増加していた。
Fabp7を持たないマウスをつくって調べると、
脳の発達期に神経細胞の増殖が低下。

死亡した大人の統合失調症患者の脳でも、
この遺伝子の働きが高まっていたことなどから、
グループは原因遺伝子の1つと判断。

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/071113/trd0711131012001-n1.htm

新しい波/237 広がる人工芝/2 耐久性が課題

(毎日 4月14日)

ひねって、こすって……。
衝撃吸収性や手触り感は天然芝に限りなく近く、
より耐久期間の長い製品を開発するためのラボテストが繰り返される。
スポーツ用人工芝のシェアでは国内トップにある、
SRIハイブリッドの加古川工場を訪ねた。

スポーツ人工芝ビジネスチームの西川知幸課長は、
耐久年数について「最近は7年から10年」。
天然芝と比べて約3倍かかる初期投資額(施工費)、
約10分の1の年間維持費を勘案すると、
最低でも7年は持たせないとコスト面のメリットが生じない。

だが、天然芝のグラウンドがあちこちにあって
人工芝は補完的な役割にとどまる欧州と、
人工芝が土のグラウンドを代替する日本とでは、事情が異なる。
西川課長は、「日本の使用頻度は(欧州の)5倍」。

都内にあるサッカー場の場合、1日12時間の使用で休日は月1回程度。
ある大学では、体育会の課外活動だけでなく、正課(体育)の授業でも使用。
踏みつけによる倒伏、変色など、ヘビーユース(使い過ぎ)によって劣化は加速。
人工芝は永遠に不滅、ではない。

人工芝のスタジアムでプロサッカーの公式戦も行われる欧州では、
耐久性よりも、ボールの転がりや跳ね方、
スライディングによるやけど防止など、プレー性が重視。
欧州スペック(仕様、性能)の人工芝をそのまま持ち込んでも、
日本では具合が悪い。

天然芝の葉茎に当たる部分は、ヤーンと呼ばれるポリエチレンベース素材。
それを用途に応じ、分量や間隔、長さを変えて、布に縫い付ければ、
人工芝が出来上がる。
ヤーンはテープ状で、縦に引っ張る力には強いが、横には弱い。
各メーカーは、厚みを増すなどして、摩耗しても先割れしにくい
ヤーンの研究開発にしのぎを削る。

JIS(日本工業規格)のように、品質や形状などが定量化できれば、
開発目標は明確になる。
「だが、使う人の感覚で優劣が決まる製品なので難しい」。

本格的な導入が始まって5、6年。
客観的な基準を確立するには、もう少し時間が必要。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070414ddm035070046000c.html

2007年12月12日水曜日

世界最小のクマ、マレーグマが絶滅の危機

(CNN 2007.11.14)

世界で一番小さなクマとして知られるマレーグマが、
森林伐採や密猟のために絶滅の危機に瀕していると、
国際自然保護連合(IUCN)が報告。

マレーグマだけではなく、世界各地に生息する
クマ8種のうち6種が絶滅の危機にさらされている。

マレーグマは、インドからインドネシアにかけての
東南アジアに生息するクマ。
体長は1.2メートルほど、体重は40─54キロほどで、
クマの仲間でも最も小さいことで知られる。
IUCNによると、マレーグマの個体数は過去30年間で30%まで急減し、
現在も同じ速度で減少している。
現在の生息数は、推定で約1万頭。

森林伐採による生息場所の減少のほか、
漢方薬の原料として密猟が絶えないことから、数が減り続けている。
東南アジアで唯一タイだけが、森林伐採と密猟を禁止し、
厳重な取り締まりを行っており、タイにおける生息数は安定している模様。
しかし、それ以外の国では、ほとんど対策が取られていない。

IUCNはマレーグマのほか、北極圏に生息するホッキョクグマや、
アジア各地のツキノワグマ、インドのナマケグマ、南米のメガネグマが、
いずれも絶滅の危機にあると警告、何らかの対策が必要だと訴えている。

一方、北米に広く生息するヒグマやアメリカグマは、絶滅の恐れはないとしている。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200711140028.html

エコノミー症候群:大半は女性 「トイレ行きたくない」水飲まず--日医大が分析

(毎日 12月2日)

長時間の空の旅などで起きる「肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)」は
女性客に集中的に発生していることが、
日本医科大千葉北総病院など成田空港利用客のデータ分析で分かった。

同病院は、「女性患者には、トイレに行きたくないから水分を取らなかった
という人が多い。水を飲まないのはよくない」。

分析は、94年1月~07年7月、重症の循環器病のため
成田国際空港クリニックから同病院の集中治療室に転送された
旅客72人(男性38人、女性34人、平均年齢59・7歳)を対象。

最も多かったのは、エコノミー症候群で31人。
急性心筋梗塞23人、原因不明の胸痛5人、
うっ血性心不全と不整脈各3人が続く。うち2人は、病院で死亡。

エコノミー症候群の31人のうち、29人は女性。
31人中27人は、帰りの飛行機着陸後に発症。

一方、急性心筋梗塞は23人中20人が男性。
発症時期は、行きの飛行機に乗る前が7人、行きの機内4人、
渡航先滞在中7人で、往路や滞在中が多い。

エコノミー症候群は、長時間同じ姿勢をとることで、
足などにできた血栓が肺の静脈に詰まり、呼吸困難になることも。
女性は更年期を境に、血液が固まりやすくなる。

同病院の畑典武・集中治療部長は、
「肺血栓塞栓症を起こした女性患者の中には、10時間以上
一度もトイレに行かなかった人もいる。
じっとしていれば血流が悪くなるし、脱水状態は血栓ができやすい」。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/12/02/20071202ddm041040095000c.html

新しい波/236 広がる人工芝/1 維持費も1/10以下

(毎日 4月7日)

初めてピッチに足を踏み入れた時、
サッカー元日本代表主将の宮本恒靖は戸惑った。
ボールの跳ね方が、天然芝とは違うような気がした。
移籍したオーストリア1部リーグ、ザルツブルクの本拠地
ブルズ・アリーナは人工芝。

このドイツ製の人工芝は、国際サッカー連盟(FIFA)の最高規格
「ツースター」の認定を受けていて、国際試合もできる。

同じ製品を国内で輸入販売しているのが、積水樹脂
「安全性だけでなく、初期と同じ状態でプレーできるよう耐久性も重視」。
葉茎に相当する部分が短く、
スライディングするとやけどが付き物だった「第1世代」、
クッション用の砂をまいてテニスコートなどに多用された「第2世代」を経て、
現在は丈の長い(5~6センチ)ロングパイルと呼ばれる「第3世代」が主流。

安全性や耐久性、プレー性が高まったことで、
ラグビーでも社会人や大学を中心に人工芝導入が相次いでいる。

国内トップシェアを誇る、住友ゴムグループ「SRIハイブリッド」の担当者は、
「市場は、倍々ゲームで伸びている」。
施工面積は、5万平方メートル(00年度)から10万(01年度)、20万(02年度)、
40万(03年度)、70万(04年度)、110万平方メートル(05、06年度)。
この2年間の件数は、170(05年度)から200(06年度)に。
市場規模は、100億~200億円。
人工芝は、サッカー場1面の場合、
施工費は天然芝の約3倍、1億~1億5000万円。

年間の維持費になると、1000万~1500万円の天然芝に対し、
人工芝は50万~100万円程度で済む、というのがセールスポイント。
サッカー、ラグビーの有力チームについては、ほぼ行き渡った。

次なるターゲットは、流行のフットサル。
「そして、学校の校庭が人工芝になると、面白い市場が形成される」
とあるメーカーの担当者。
今後の張り替え需要を含めると、
施工面積は年間140万平方メートルまで達する、と予測。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/archive/news/2007/20070407ddm035070105000c.html

2007年12月11日火曜日

野口英世アフリカ賞初受賞者、来年3月決定 記念講演は地元福島で

(毎日新聞社 2007年12月5日)

アフリカの医学、医療分野で優れた功績を残した人を
国が表彰する「野口英世アフリカ賞」について、
初めてとなる授賞者を来年3月に決定すると発表。

猪苗代町出身の野口英世(1876-1928)を顕彰し、
小泉純一郎元首相が発案した賞で、
受賞者の講演会を出身地で開催することも検討。

同賞は、医学研究、医療活動の2部門で構成。
アフリカの人々の健康や福祉の向上に貢献し、
推薦委員会が推した人の中から、
各部門1人(共同研究では最大3人)に賞金1億円を贈る。

内閣府は同賞担当室を設けており、大山研次・同室長補佐によると、
国内外の100を超える個人・団体の推薦が挙がっている。
年内に候補者を各部門3人に絞り、来年2月に同賞委員会で各1人を選出。
同3月に授賞者を最終決定する。

授賞式は、来年5月に横浜市で開かれる国際会議
「第4回アフリカ開発会議」に合わせて行う予定。

さらに同月、受賞者の記念講演会を、
ゆかりの猪苗代町か隣接する会津若松市内で開催する計画。

国は賞金計2億円のうち、1億円は寄付金で賄う方針だが、
これまで集まった寄付は約2000万円強という。
「野口英世アフリカ賞を、ノーベル賞に匹敵する賞にしたい。
人類の平和に貢献する趣旨で、一人でも多くの人に募金してもらえれば」。
募金は個人が1口1000円、団体は1口10万円から。
問い合わせは内閣府の担当室(03・3539・8902)。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63592

スポーツ界から地球温暖化防止を発信!JOC竹田会長らが鴨下一郎環境大臣を表敬訪問

(みんなで止めよう!温暖化 2007年12月4日)

チーム・マイナス6%に協力している、
財団法人日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恆和会長、
水野正人副会長、JOCスポーツ環境専門委員会の板橋一太委員長、
そしてJOC環境アンバサダーの松岡修造さんは、
鴨下一郎環境大臣を表敬訪問。

竹田会長は、「JOCにおいても、加盟スポーツ団体及びスポーツ選手を
通じた温暖化防止の啓発活動に積極的に取り組んできたが、
今後、スポーツ大会や団体活動において
環境保全活動をより強力に推進し、CO2排出削減に向けた
具体的なアクションを実施していく」。

鴨下環境大臣への表敬訪問を終えた竹田会長は、
「環境保全は、スポーツ界にも密接な関係があります。
2016年のオリンピック招致は、立候補している都市がいかに
環境問題に取り組んでいるかがキーポイント。
オリンピック招致に向けて、環境省にも協力をお願いした」。

JOC環境アンバサダーの松岡さんは、
「自分がテニスプレーヤーとして、過去一度だけ棄権した原因が
光化学スモッグだったこともあり、
スポーツが環境と密接な関係にあることを実感している。
スポーツ選手として、ルールを守ることはとても大切なことだから、
環境保全についてもきっちりルールを守っていくべき」と、
温暖化防止活動への強い決意。

http://www.team-6.jp/report/movement/2007/12/071204a.html

大腸がんの細胞増殖を抑制するmiRNAを発見

(nature Asia-Pacific)

国立がんセンター研究所生化学部 中釜斉副所長
土屋直人研究員、田澤大研究員

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RNAの研究が進むにつれて、タンパクをコードしない
ncRNA(non-coding RNA)の役割が注目。

代表的なncRNAの一つであるmiRNA(micro-RNA)については、
細胞の増殖やアポトーシスなどとの関係が徐々に明らかになり、
とくにがんの発生や増殖に関する研究が盛ん。

実験的に用いるsiRNAは、特定の遺伝子のmRNAに結合して
mRNAを分解するのに対し、
miRNAの場合は標的となる遺伝子が1種類のmiRNAにつき
100~200種類あると推定。
miRNA前駆体は、ヘアピン型のループ構造を持ち、
最終的に成熟したmiRNA が、RISC(RNA induced silencing complex)
と呼ばれる、タンパク・核酸の複合体とともにmRNAに結合し、
mRNAからタンパクへの翻訳を抑制する。

ヒトmiRNAは、現在500種ほどが同定されているが、
未知のmiRNAがさらに同数ほど存在する可能性が。

国立がんセンター研究所の中釜斉副所長らのグループは、
大腸がんに関して、培養細胞の増殖を抑制し、
患者のがん組織で発現低下しているmiRNAを同定。

大腸がんの培養細胞HCT116を、アドリアマイシン100ng/mlで処理して
細胞増殖を抑制し、16時間後に発現上昇しているmiRNAの同定を試みた。
アドリアマイシンは、DNAにダメージを与える作用があり、抗がん剤として使用。
100ng/mlでは、HCT116細胞の増殖は止めるが、アポトーシスは起こさない。
解析したmiRNA157種類のうち、アドリアマイシン処理後に
発現が2倍以上に上昇したものは、7種類。

反復実験により、再現性をもって発現誘導されるものとして、
miR-34a、miR-34b、miR-34cのmiR-34ファミリーを同定でき、
最も安定的に発現していたmiR-34aは、
アドリアマイシン処理後8時間で約3倍、48時間で約10倍にも増加。

この結果、miR-34ファミリーは細胞増殖と関係するmiRNAと考えられた。

大腸がん培養細胞HCT116では、がん抑制遺伝子p53が正常に働き、
アドリアマイシン処理後、miR-34a発現量の増加に先行して、p53が蓄積。
p53が変異している別の大腸がん培養細胞では、
アドリアマイシン処理後もmiR-34aが誘導されないことから、
「大腸がんでは細胞増殖の停止の際、miR-34aがp53蓄積に連動して働く」。

miR-34aが細胞増殖を止める可能性を検証するために、
HCT116と別の大腸がん培養細胞RKO(p53は野生型)に
それぞれmiR-34aを導入したところ、予想通り細胞増殖が抑えられた。
このときの遺伝子発現変化を、マイクロアレイで網羅的に調べると、
発現が抑えられた287遺伝子の中に、細胞周期や細胞増殖に関わる
E2F転写因子E2F-1、E2F-2と複数のE2Fターゲット遺伝子が含まれていた。

E2F-1のタンパク量についてHCT116とRKOで調べると、
miR-34aの導入により発現が抑制されることが確認。
miR-34a未導入細胞(コントロール群)と比べ、
導入細胞では細胞周期が止まり、細胞そのものが肥大化。
これは、細胞老化に特徴的な現象であることから、
細胞老化の指標であるSA-β-ガラクトシダーゼで染色すると、
老化様の変化を起こしていた。

「miR-34aは、E2F転写因子やそのターゲット遺伝子の発現を
抑制することで、細胞の増殖を止め、がん細胞を老化様に変化させる」。

ヌードマウスに、大腸がん培養細胞を移植して腫瘍を形成させ、
miR-34aを導入したところ、HCT116細胞では6日間、
RKO細胞では4日間、腫瘍の増殖がほぼ停止。

国立がんセンター中央病院で施行された大腸がん手術で得られた
大腸がん組織検体25症例中9症例(36%)で、miR-34aの発現低下。
「大腸がんでのp53遺伝子変異の頻度が4~5割であり、
36%というのは高い数値」。

世界の6グループから、p53による細胞増殖抑制やアポトーシス誘導作用への
miR-34の関与を示唆する論文が発表。
miR-34のp53による発現制御に関しては意見が揃いつつあるが、
miR-34aの細胞増殖抑制や細胞老化・アポトーシス誘導のメカニズムは未解明。

生化学部では、すでに大腸がん以外の培養細胞でも
miR-34aが細胞増殖を止めることを確認。

「今後は、miR-34aが細胞増殖を止めるメカニズムと発がんとの関連を解析し、
miR-34aによる細胞増殖抑制にRISCがどう関わっているかを明らかにしたい」。
miR-34aを突破口に、発がんの新たなメカニズム解明に向けて、
研究が始まっている。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=62

2007年12月10日月曜日

万能細胞で貧血治療 米研究チーム、マウスで 再生医療実現へ前進

(毎日新聞社 2007年12月7日)

貧血症のマウスの皮膚細胞から作った万能細胞
「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を使い、貧血症を治療することに、
米国の研究チームが成功。
iPS細胞を使い、動物の病気の治療に成功したのは世界で初めて。

すでに京都大などのチームが、ヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作ることに
成功しており、再生医療の実現へまた一歩前進。

米マサチューセッツ工科大などの研究チームは、
「鎌状赤血球貧血症」のマウスの尾から皮膚細胞を採取。
京都大のチームと同じ四つの遺伝子を導入して、
さまざまな細胞に分化する能力のあるiPS細胞を作った。

四つの遺伝子のうち、一つはがん遺伝子だったが、
ウイルスを使って特殊な酵素をiPS細胞に導入し、この遺伝子を取り除いた。

次に、iPS細胞の中にある貧血の原因遺伝子を健康な遺伝子に組み換え、
赤血球や白血球など血液のさまざまな細胞を作り出す
元となる造血幹細胞に分化させた。

この造血幹細胞を、細胞を採取したマウス3匹の尾の静脈に注射したところ、
体内で健康な血液を作り始め、約3カ月後には血液中の成分が大幅に改善。

「さまざまな細胞に分化できる能力を持たせるための遺伝子の導入や、
iPS細胞になってからの遺伝子組み換えなどは、
がんを含む副作用を引き起こす可能性がある。
ヒトに応用するには、これらの問題を解決し、
安全な方法を開発する必要がある」。

ヒトiPS細胞の作成に成功した山中伸弥・京都大教授は、
「iPS細胞を患者自身の細胞から作り、遺伝子の異常を修復し、
必要な細胞を分化させ、同じ患者に戻して治療するという、
理想とする治療が実現できることを、マウスを使って示した重要な研究」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=63863

がんと闘う筑紫哲也さんに聞く 無常だからこそ感謝

(毎日新聞 2007年11月26日)

紅茶2杯で3時間。
斜光の入るレストランの個室で、筑紫哲也さん(72)は終始ニコニコしていた。
がんは面白い病気」と語れるようになった筑紫さんは今、
無常だからこそ輝く人生を、そのありがたさを感じているという。

事務所のある赤坂のビルまで迎えに上がると、
青いシャツに黒のジャケットというラフな格好で下りてきた。
療養中にしては、はつらつとしている。
半年ぶりにテレビ出演した先月は、つけ毛が話題になったが、
「生えてきたので、今は自毛です」と少し恥ずかしそうな顔をした。
「もともと髪が多いから、局で『視聴者がショックを受ける』なんて言われて、
つけ毛にされて。でも、嫌だから自分でばらしたんです」

以前、お会いしたのは2年前。
日比谷のホテルのバーでアフリカの話をした。
もともとがヘビースモーカーなので、灰皿が吸い殻の山に。

病後、たばこをやめた。
困ることが出てきた。大好きなマージャンと原稿書き。
「一服できないと、全然面白くない」。
長年愛してきたのは、ハイライトとマールボロの赤。
ニコチンが強く、のどに強い圧迫感のある本物のたばこだ。
「長生きには、吸わないのがいいのか、吸うのがいいのか、
議論のあるところでね。たばこで死ぬ人も、糖尿など食い過ぎで死ぬ人もいる。
もう一つは、たばこや食に急ブレーキかけて、そのストレスで死ぬ人。
屁理屈だけど」

論は勢いを増す。
「百害あって一利なしと言うけど、文化は悪徳が高い分、深い。
人類が発明した偉大な文化であり、たばこの代わりはありませんよ。
これを知らずに人生を終わる人を思うと、
何とものっぺらぼうで、気の毒な気がしますね」

でも、そんな文化ががんをもたらした、と向けると、
「そうとも言えない」と首を振る。
「肺がんに直結しているようだけど、たばこは引き金で、本当の原因はストレス」
たばこが原因だとは今でも思っていないのだ。

◇「Must(-ねばならない)」から「Want(-したい)」へ

では、どのようなストレスがあったのか?

「簡単に言えば、Mustが多すぎた。
だから、MustからWantに変えればいい
でも、長年、僕を知る人は笑う。
『お前は好きなことしかやらないじゃないか』と」

それでも、TBSテレビの「ニュース23」に出ずっぱりというのは、
やはり負担もあったのだろう。
「そう。僕は約束を破ったり、会議に出なかったり、いいかげんなんですが、
放送は18年間、月曜から金曜まで1秒も遅刻せずにやった。
自分がやりたいことだから、苦痛はなかった。
東京だけにいてはこの国は見えないと、週末は講演など理由をつけては
地方を回ったんです。これも、楽しかった」

ただ、心は楽しんでも、体は違った。
「加齢ですね。体が文句を言っても、ペースを崩さなかった。
人はそもそも心身が分裂しているものなんです。
美空ひばりは東京ドームで歌い終わり、ぐじゃっと倒れた。
僕もそういうところ、あると思う」

◇語るたびに自己嫌悪だった

30年間、朝日新聞社で記者、雑誌編集長を務め、キャスターに転身。
活字の世界にない気遣いもあった。

後任キャスター、共同通信社の前編集局長、後藤謙次さんにこう助言した。
「テレビは、軽率で不完全なメディアだから、
家で奥さんと反省会をやるのはやめなさい、とね。
僕は毎晩、自己嫌悪でした。

原稿ってのは、へたくそでも活字になると、まあ自己満足できるでしょ。
でも、テレビは見るたびに自己嫌悪でね。
ボディーランゲージが大きなウエートを占めるし。
『なんであんなことを言ったのか』というのがストレスになってね」
「僕がキャスターを始めたころ、朝日新聞では、テレビは下賤なメディアで
一度さわったら体が腐る、とさえ言われた」。

テレビに移ったのは、新聞に限界を感じていたからだ
「何百万も部数があるから、書いたものが相手に届くと思っていた。
でも、ある時気づいたのは、ほとんど何も届かない。
特に国際報道は、どんなに大変な思いをしても何も届かない。
多くの人に届けるには、テレビが手っ取り早いと気づいたんです」

キャスターとしてどれだけのことを伝えられたのか?

「こうあってほしいと思うことを語ってきたが、
その方向に世の中が進んだことはない」。
語るたびに、どんどん自分が少数派になってゆくと感じた。

それでも自分を突き動かすものがあるとすれば?

「うーん、おせっかいな好奇心ですかね。
でも、この(報道の)仕事って、おせっかいですよね」

◇予約つき人生、今日が大事

がんになり、発見があった。
一つは、患者と有権者が似ていること。
「いくら情報を与えられても、自分で思うほど賢くはなれない」。
結局は他人に言われるままになる。
そして悪い結果が出れば「自分の責任」となる。

「底にあるのは、人間は賢者になれるという壮大なフィクション。
世界経済の影響で酪農家が破産すれば、
『お前の責任』と言われ、フリーターや社会からこぼれる人が叱責される。
でも、弱い患者と同じく、有権者にすべての責任があるわけじゃない」

ごく自然に東洋医学に向かった。
「僕の体は空爆されたイラクみたいなもの。
放射線でがんはほぼ撃退したけど、体中が被爆している。
西洋医学は敵を攻めるばかりだが、東洋医学は、がんを生む体に
ならないようにすることを心がける。それが自分には合っている」。

今は月の半分を奈良の東洋医学専門家、松元密峰さんのもとで過ごす。
放射線医療の後遺症でのどが膨れ上がったとき、はり治療などで救われた。
「がんは面白い病気でね、これくらい個人差があり、
気持ちに左右されるものはない。心臓が急に止まるのと違い、
余命率がどれくらいという、一種予約つきの人生になる。
年数はわからない。ラッキーだと延びるし、短い人もいる」

日々、「ありがたい」と思うことがある。
「倒れるまで、一日、一日なんて、特に考えないで過ごしてきたけど、
先が限られていると思うとね。例えばきょう一日も、とても大事というかね。
うん。お墓には何も持っていけないから、大事なのは、どれくらい、
自分が人生を楽しんだかということ。それが最後の自分の成績表だと」

今は週に1回、立命館大で講義し、
あとは「源氏物語」を猛烈な勢いで読んでいるそうだ。
「入院中にじっくり読んだのは、新渡戸稲造の『武士道』。
古典が面白くてね。それと、仏像や日本画をしみじみと見るというのかな……。
これって、なんだろうと思う。
これから先、見ることはないという、見納めの心理も働いているんでしょうが、
すべてにありがたさを感じる。
そう思いながら味わえる何日かが、あとどのくらい続くか分からないけど。
その日々、月日があるというのは、急に逝くよりいいんじゃないか、なんて思うんです」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=62482

2007年12月9日日曜日

理系白書’07:第3部・科学者の倫理とは/5 始まる規範教育

(毎日 11月25日)

「これで、皆さんは晴れて研究の申請ができる。
ぜひ、社会から信頼される研究をしてほしい」。

東京大で開かれた研究倫理セミナーにて、
医学部倫理委員長を務める赤林朗・大学院医学系研究科教授が呼びかけた。
セミナーでは、「専門職の倫理とは」との総論から、
各種指針、臨床試験の審査体制、手続きなど実践的な内容が説明。

03年から、医学部での臨床研究に携わるすべての医師や研究者に受講が義務化。
2年間有効の受講証が発行され、受講証がないと研究申請できない。
同大大学院修士課程の根本努さんは、
「自分の研究を倫理という視点から見ることで、気付かなかった点も発見できた」。

臨床研究には、倫理面からのチェックが欠かせない。
だが、その仕組みを理解し、倫理的な判断ができる人材は限られる。

赤林教授は04年、東大に医療倫理人材養成ユニットを設立
「どんな研究でも、人に応用する段階はくる。
身体上のリスク、個人情報の取り扱いなど問題は多い。
倫理委員会がきちんと働かないと、医療は先に進まない」。

実験室で最先端の研究に挑む研究者と、倫理問題を検討する研究者を
隔てる「垣根」が、生命科学分野での研究倫理の醸成をさまたげているのでは?
そんな疑問を抱いた双方の立場の研究者が、声明文を発表。

「社会との共生を実現し研究を進めるには、
倫理的・法的・社会的観点など多面的な視点からの検討と配慮が不可欠。
自然科学と人文・社会科学が協働し、さまざまな立場の人と研究者が
協働する共通のプラットフォームを構築すべきだ」

科学技術振興機構社会技術研究開発センターが、
9人の研究者(生物学、脳機能研究、科学コミュニケーションなど)に
呼びかけ、声明が策定。

取りまとめ役の札野順・金沢工業大科学技術応用倫理研究所長は、
「自然科学の研究現場は多忙で、倫理を考える余裕がない。
一方、倫理の研究者は現場を知らない。
両者が同じ土俵で語り、問題を抽出し、解決へ導く取り組みが必要。
英国では科学者育成の初期から、倫理への配慮を学ばせている。
日本も人材育成に倫理面を取り入れ、その人材が活躍できる場を整備すべき」。

科学の発展は、私たちの暮らしを豊かにした一方、
最先端の科学は市民の手を離れ「ブラックボックス化」。
命に直接かかわる生命科学や医療の進歩は、社会の価値観をも揺るがす。
研究者には社会と向き合い、自らを律する規範も求められている。
そのような研究者を育てる取り組みは、緒に就いたばかり。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/11/25/20071125ddm016040068000c.html

アルツハイマー:アミロイド斑の関連物質発見 福島医大

(毎日 12月8日)

アルツハイマー病の原因とされるアミロイド斑(老人斑)を
生じさせる「βセクレターゼ」の活性が、
脳細胞から分泌される「シアロ糖たんぱく質」と関連していることを、
福島県立医科大の橋本康弘教授(生化学)らが発表。
シアロ糖たんぱく質が、アルツハイマー病の早期発見の目安になると期待。

アミロイド斑は、神経毒性の「Aβペプチド」が沈着して生じる。
沈着を引き起こす「βセクレターゼ」の活性度測定が、
アルツハイマー病診断につながることは分かっていた。

しかし、βセクレターゼの活性度の測定は困難。

研究チームは、βセクレターゼが活性化すると、
シアロ糖たんぱく質も増えることをマウス実験で確認。
将来、脳せきずい液でシアロ糖たんぱく質の増加量を測定し、
診断に応用できるという。
βセクレターゼの活性化を防げば、アルツハイマー病の予防につながる。

橋本教授は、「早期発見により、アルツハイマー病の進行を
遅らせることができる。将来的には早期診断と特効薬で、
アルツハイマー病が治るようになるのではないか」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20071208k0000m040093000c.html