2008年2月16日土曜日

スポーツ21世紀:新しい波/259 陸上・実業団選手登録/3

(毎日 2月9日)

実業団陸上界では、選手の所属形態の多様化が進む。
仕事をしながら競技を行う形を保つ会社もあるが、
仕事はせず競技に専念するプロ的な形態も増えた。
企業によって、チームのあり方や考え方もさまざま。

男子でアテネ五輪マラソン6位の諏訪利成を擁する日清食品は、
年俸制の契約が基本。
希望者は会社の勤務を経験できるが、大半の選手は陸上に専念。
白水昭興監督は、「会社も勝つことを求めている。
競技に集中できる環境を整えるのは当然」。
競技を続けながら正社員になる制度もあるが、過去に適用者はない。
「将来は、教員や家業などを望む選手も多い」と、選手の意思を尊重。

女子で浅利純子ら2人のマラソン五輪代表を出したダイハツは、
88年に「社員に勇気と夢を与えよう」と創部。
選手は人事、総務などの部署に所属し、
試合や合宿の時以外は午前中に約2時間勤務。
宮脇義広・陸上部事務局長は、「社員としても一人前に育ってほしい。
仕事でも頑張れば、職場からも応援される」と狙いを説明。
引退後も、会社に残って働く選手は多い。

02年に全日本実業団対抗女子駅伝を制した第一生命は、
午前中に本社で勤務する正社員と、競技に専念する契約社員の両方。
正社員で入社して数年後に契約社員に変わった選手も2人。
山下佐知子監督は、「職場でも陸上でも、ある程度自立ができてくれば、
競技に専念させてもいい」と成長に応じた判断。

最近では、入社と同時に社内留学制度で岡山大に入った
女子中長距離の小林祐梨子(豊田自動織機)のような新しいケースも。
実業団選手の定義は、一層見えにくくなっている。

全員が正社員の老舗チーム、旭化成の宗猛監督は、
「実業団の資格にある程度の線引きは必要。
どんな形でも認めたら、実業団という枠組み自体が無意味になる」。

白水監督は、「プロ的な環境作りが進んでいるのに、
今さら堅く考えたら世界の流れからも遅れる」。
議論はされても、なかなか意見の統一は難しい。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

地球と暮らす:/37 緑の地球ネットワーク 植樹ノウハウを中国に

(毎日 2月11日)

中国の環境悪化は、地球温暖化への影響はもちろん、
日本の大気汚染にもつながる重要な問題。
中国人の目をもっと環境に向けさせたい。
NPO法人「緑の地球ネットワーク」は、
中国北部の山西省大同市で植樹活動を続けている。

事務局長の高見邦雄さん(59)らは、92年に初めて現地を訪れた。
北京の知人が、「緑化に熱心な地域。美人の産地でいい酒もある」と
同市渾源県を紹介した。

だが、ここの土壌や気候は木の生育に厳しかった。
現地では、山すそに33万本以上のマツを植える計画があった。
高見さんたちはこれに協力し、日本の会員約200人から資金を集めて
苗木代10万元(当時のレートで約260万円)を寄付。

ところが、マツはほぼ全滅。
アンズの植樹にも協力したが、育たなかった。
現地の土は「黄土」と呼ばれる、黄色味を帯びた細かい土。
養分が少なく、通気性も保水性も悪い。
気温は、冬は氷点下30度、夏は39度。
降水量は年200~600ミリと、日本の4分の1。
大半が6~8月に1時間70ミリもの集中豪雨で降り、木が育つ春は水不足。

94年春、大阪市立大助教授だった立花吉茂さん
(植物学、現緑の地球ネットワーク代表)ら、日本の専門家を現地に招いた。
現地では、水を含ませた黄土に苗木を植え、周辺を踏み固めていた。
立花さんは「これでは根が窒息する」と指摘。
黄土に砂や石炭かすを混ぜ、通気性を高めるよう指導。
現地方式で畑に植えたアンズは、1年後に50本中約15本が枯れたが、
立花方式のアンズはすべて勢いよく育った。
マツの根に共生するキノコの胞子をつけて植え、成長を助ける方法や、
グミ科やマメ科の木をマツと混ぜて植え、病虫害に強い林を作る方法も。

今は、植えた木の6~9割が無事に育つ。
日本から毎年延べ300人前後が現地を訪れ、
1人が100~200本の木を植える。
植樹に協力した木は、昨年度までに約1700万本。
植樹面積は52平方キロを超えた。

当初は、「環境保護など豊かな日本人の言い分だ。
経済成長のためなら、我々は汚染さえ望む」との極論も。
昨年9月、日中合同の省エネ会議で中国の曽培炎副首相は、
「植樹活動を続け、日本から2500人以上を連れて来た」と
高見さんたちに感謝したという。
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◇緑の地球ネットワーク

93年に発足。05年にNPO法人化。
会員は個人約620人と企業や労組約30団体。
事務局は大阪市港区市岡1の4の24住宅情報ビル501。(電話06・6576・6181)

http://mainichi.jp/select/science/news/20080211ddm016040121000c.html

2008年2月15日金曜日

たばこで年間800万人死亡 WHO、2030年までに

(共同通信社 2008年2月8日)

世界保健機関(WHO)は、たばこに関連する世界の死者数が
2030年までに年間800万人に上り、その約80%が発展途上国だけで
占められる恐れがあると警告する報告書を発表。
先進国で喫煙の規制強化などを受け、
たばこ会社が途上国に販路を拡大するためと指摘。
現在、世界で推定約500万人が死亡。

マーガレット・チャン事務局長は、途上国でのたばこ消費拡大は
「病気や死者を増加させ、労働力の減少や医療費の増加につながる」。
たばこ税の引き上げや禁煙支援の拡充、健康被害の警告強化など
6項目の抑制策を提言。
世界の喫煙者は10億人以上。
約3割が中国で、インド、インドネシア、ロシア、米国、日本。

代表的な27カ国の規制の現状も紹介。
日本では、たばこ1箱の値段が約300円なのに比べ、
英国では5ポンド23ペンス(約1090円)と高額。
日本と米国の間では大きな差はなかった。

広告・宣伝に関する13項目の規制についても、
英国は、(1)国内の雑誌、新聞、(2)国内のテレビ、ラジオ、
(3)広告看板・屋外広告-など9項目をクリア。
日本は、「販売促進目的の値下げ」をしていないという項目が認められただけ。
たばこ税に関しては、世界人口の3分の2をカバーする
計70カ国の税収総額のうち、規制のために振り分けられる支出は
0・2%しかないことが判明。規制に充てる支出を拡大するよう求めた。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=67397

加齢を遅らせるには、身体を動かすこと

(WebMD 1月29日)

身体をよく動かすことで、生物学的年齢を10歳若くできるかもしれない。
定期的な運動のアンチエイジング効果の「強力なメッセージである」と、
次のCDCガイドラインを支持:
週5日以上の1回30分以上の中強度の運動(早歩き等)または
週3回以上の1回20分以上の激しい運動(ジョギング等)を行う
Kings College LondonのLynn Cherkasらは、
『Archives of Internal Medicine』に報告。

Cherkasらは、英国の成人の双生児2,400例を対象とした試験を実施。
血液、身体活動、喫煙、病歴に関する調査票への記入。
血液検体を用いて、全血球におけるテロメアの長さを測定。
テロメアは、細胞分裂のたびに少しずつ短くなることから、
加齢のマーカーとなる可能性がある。

年齢、性別、喫煙、BMI(肥満度指数)または社会経済的地位にかかわりなく、
よく身体を動かす人はあまり身体を動かさない人よりも
テロメアが長いことが明らかに。
テロメアの長さの差から、「活動的でない被験者は、
活動的な被験者と比べて生物学的に10年老けていることが示唆」。
しかし、本試験はこのことを証明しているわけではない。
被験者の長期追跡調査は行われず、最も長生きした人が
どのような人であったのかは明らかになっていない。

「運動をする人は、活動的でない人と様々な点で異なる」と、
National Institute on Aging のJack Guralnikは記述。
テロメアの長さの重要性については意見が分かれるが、
「人の最終的な寿命を1つの数字で正しく計測するような、
奇跡のツールではない」。

テロメアは、多くの研究で身体活動と良好な健康状態との関連が示される。
身体活動は、14年長く生きるための4つの方法のうちの1つ。
もっと身体を動かす準備が整ったら、まずは医師の診察を受けるべき。

Cherkas, L. Archives of Internal Medicine, Jan. 28, 2008; vol 168: pp 154-158.
CDC: "Physical Activity: Recommendations."
CDC: "Physical Activity for Everyone: Physical Activity Terms."
Guralnik, J. Archives of Internal Medicine, Jan. 28, 2008; vol 168: pp 131-132.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=67186

Tリンパ球:理研が作り分けを解明 拒絶反応抑制に道

(毎日 2月12日)

体内に入った異物を排除する免疫反応を担う2種類の「Tリンパ球」が
作り分けられる仕組みを、理化学研究所の研究チームが解明。
アレルギーや移植後の拒絶反応を、人為的に抑制する手法の開発に
つながる成果で、米科学誌サイエンスに発表。

Tリンパ球には、異物の侵入情報を他の免疫細胞に伝える「ヘルパーT細胞」と、
異物を直接攻撃する「キラーT細胞」の2種類。
いずれも胸腺で共通の前駆細胞から作られるが、
どう作り分けられているかは謎。
2種のバランスが崩れると、免疫不全やアレルギーなどを引き起こす。

理研の谷内一郎チームリーダー(免疫学)らは、
通常は前駆細胞から「ヘルパー」と「キラー」が2対1の割合でできるのに、
Runx」というたんぱく質を作れないマウスでは、
「キラー」がほとんどなくなることを発見。
Runxが、「ヘルパー」への分化を促す遺伝子に結びついて働きを抑制し、
前駆細胞から「ヘルパー」だけが
作られることのないようにしていることを突き止めた。

谷内さんは、「今回の発見を応用して人為的に作り分ける技術ができれば、
再生医療や免疫疾患の新たな治療法への応用が期待できる」。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080213k0000m040115000c.html

2008年2月14日木曜日

「日本一」目指し、健康県ちば宣言プロジェクト始動 千葉県庁でセレモニー

(毎日新聞社 2008年2月7日)

県民それぞれの「健康宣言」で健康に対する意識を深めてもらおうと、
「健康県ちば宣言プロジェクト」をスタート。
宣言と実行の積み重ねで、「日本一の健康県ちば」実現が狙い。
事務局の県健康福祉政策課は、「健康づくりの構造改革を目指す」。

県が、「私の健康宣言」(200字以内)を公募。
「早起きする」、「1日1万歩歩く」、「3食しっかり食べる」など、
自分のライフスタイルや健康状態に合った内容で自由に決める。
同課は、「県民の幅広い参加を期待しています」。
寄せられた健康宣言は、「健康県ちば宣言」ホームページで紹介。

プロジェクトに合わせ、ウオーキングドクターのデューク更家さんが
「ちば健康体操」を発案。
デュークさんが参加する体験ウオーキングが船橋市(24日)、
柏市(3月15日)などで予定。

「健康宣言」の応募要項などは、ホームページ(http://www.chiba100.net/)に掲載。
問い合わせは、同課(電話043・223・2608)。

◇押切もえさん出席、県庁でセレモニー

「健康県ちば宣言プロジェクト」スタートセレモニーで、
堂本暁子知事や「健康宣言」応援大使に任命された県出身のモデル、
押切もえさんらが出席した。
堂本知事は、「県民一人一人がどうやって健康になるかを宣言し、
オール千葉で健康作りをしていきましょう」。

堂本知事自身の「健康宣言」は、「毎日6000歩以上歩く」
「週1、2回の筋トレ」、「毎日記録をつける」の三つ。
押切さんは、「健康大使として、皆さんの健康づくりを応援していけたらうれしい。
人が健康でいるためには、地球の健康も考えてあげないといけませんね」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=67337

岩手なるか「五輪選手」育成 競技底上げへスーパーキッズ発掘

(産経新聞 2007.12.8)

岩手県では近年、オリンピック出場選手を輩出していない。
子供たちにとって、あこがれの存在が身近にいるかいないかは、
スポーツをする気持ちに大きく影響。
事態を深刻にとらえた県は、世界大会のメダリストを育てようと、
「スーパーキッズ発掘・育成事業」に。

最近の岩手県のスポーツ事情をみると、
2000年からのオリンピックに、出場した県出身選手が1人もいない。
国民体育大会でも30位後半~40位代を推移し、ここ9年間は東北でも最下位。
このままでは、県内スポーツの地盤沈下は避けられない。

危機感を強めていた県教委は、福岡県がタレント発掘事業を始めたと聞きつけ、
「本県でもやってみよう」とスーパーキッズ事業を発案。
似たような事業は、岡山県、和歌山県、北海道美深町でも始まり、
東北でも宮城、山形、福島各県で動きがある。

岩手県では、平成28年に国体が開かれる。
これまで、自治体の選手育成は国体をにらんでのものが多く、
国体が終わると、競技力が低下するのが常。
スーパーキッズ事業には、タレント発掘のシステムを確立することで、
国体終了後の選手育成も継続できるとの狙い。

事業は、県体育協会が県の委託を受け実施。
プログラムは、作山正美岩手医科大学共通教育センター体育学科教授を
委員長とするプロジェクトチームが作成。
作山教授は、「夢のある企画。ジュニアの育成はスポーツ少年団中心で、
小さいうちから1つの競技に偏る傾向。
他種目の可能性も探りながら、知的能力を開発するとともに、
けがをしない体の作り方、動き方を教えていきたい」。

募集に、1180人が応募。
平藤淳県体協業務課長は、「告知に手間取った割には多かった」。
応募者のうち、1114人がチャレンジ2に挑戦。
チャレンジ3には、218人が臨んだ。
(1)優れた運動能力、(2)育成事業参加の確約
を基準に80人程度に絞り込まれる。
スーパーキッズに選ばれた5年生は今後16カ月間、6年生は4カ月間、
原則毎月1回開かれるスペシャルスクールに参加。

この事業は、選考に漏れた子供たちにも公開。
プログラムは、指導者も見ることができる。
県体協では、地域に戻って指導に役立ててもらえば、
競技力の全体的な底上げに。

1992年アルベールビル冬季五輪のノルディック複合団体金メダリストで、
県体協のスポーツ特別指導員を務めている三ケ田礼一氏(40)も関与。
「第1の目的はトップ選手をつくることだが、そこまでいけない子供でも、
挑戦する気持ちが培われれば、スポーツ以外でも、
自分に合った何かに出合えるチャンスが生まれる」。

地域では、指導者の高齢化などで、
望ましいスポーツ環境を与えることができない状況も。
種目によっては、何校かが一緒になってチームを作り、
中学校大会に出るという事態も。
だれでも、どこでも、均質な指導を受けさせることはできないか。
スーパーキッズ事業は、その環境をつくっていく事業でもある。
県教委では、事業を少なくとも10年間は継続したい。
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■いわてスーパーキッズ発掘・育成事業

県内小学校で行われている「新体力テスト」で、
総合評価A・B段階の5~6年生が申し込み
チャレンジ1
▽20メートル走・反復横跳び・立ち幅跳び・垂直跳び・両手大型ボール投げ(前・後)
チャンレンジ2
▽立ち三段跳び・ジグザグ走・4方向ステップ、保護者を加えての面談
チャレンジ3をへて発掘したスーパーキッズと保護者に対し、
プロジェクトチームが作成した能力開発プログラムを実施。

http://sankei.jp.msn.com/region/tohoku/iwate/071208/iwt0712080242000-n1.htm

市町村・医師との連携体制構築を動機づけ支援は面接前準備が重要

(Japan Medicine 1月30日)

4月から特定健診・保健指導がスタート。
高齢化の進展に伴い、伸び続ける医療費を適正化のため、
生活習慣病の発症を未然に食い止めることが求められる。
自覚症状が少ないだけに、生活習慣を改善させることも難しい。
効率的に高い効果を上げることのできる保健指導を確立することが、
制度の理念を達成する鍵。

厚生労働省健康局総務課の剱物祐子保健指導専門官に話を聞いた。

―特定保健指導に求められることについて教えてください。

剱物氏 今までの健診は早期発見が中心だが、
特定健診・保健指導の目的は、対象者を明確化し、重篤な心血管疾患への
進展を防止、生活習慣病予防に関する効果を出すこと。
保健指導を実施する際のシステムを、しっかり構築する。
保健指導を行う人、費用、評価システム、どこに委託するか―など
各段階での取り組みが重要。

保健指導の質は、厚生労働科学研究費の生活習慣病対策総合研究事業で、
「保健指導の質の評価ガイド」開発を行う。
項目は、保健指導の内容、施設の基準、人員、運用、基本方針、
マニュアル、監査体制などを網羅。

―特定保健指導を行う上で留意すべき点について。

剱物氏 積極的支援群などリスクの高い人に対し、
保健指導だけでは、効果をあげるのが難しい。
従来、集団の評価を行った上で、個人の保健指導を行ってきた。
集団によって、理解力や健康への興味が異なり、保健指導の方法も変わる。
集団と個人の両面からのアプローチを組み合わせた保健指導が必要。
プロセスを最初の段階から詳細に検討し、次の保健指導に生かす。
「リバウンド」を耳にするが、保健指導の時だけ効果が出てもダメで、
専門職の手を離れた後も効果を持続させることが重要。
長期的な目で生活習慣病の発症リスクが高い集団全体を評価し、
保健指導を進めていくことが必要。
プライマリケア医の先生では、訪れる患者さんを1つの集団として考える。
地域によって、「塩分が多い」、「運動施設が少ない」、
「農作業に従事していて、季節の差がある」などの特徴が。
各市町村で集団に向けた広報や患者教育などを行うことも重要。

―問題ないとされた「情報提供」群については、どのような保健指導を行うのか。

剱物氏 情報提供は、特定保健指導には位置付けられないが、非常に重要。
特定健診の結果や質問票など、生活習慣の問題点はある程度分かる。
得られた情報を基にアプローチすることで、
動機づけ支援や積極的支援が必要にならないよう指導。
地域や集団の特性、就業形態なども盛り込んで情報提供してほしい。
若い人にはできるだけ積極的に情報提供を行ってほしい。
早めに行動を変えることが、将来を改善していくことにつながる。

―「動機づけ支援」群に対しては、どうでしょうか。

剱物氏 動機づけ支援は、原則1回の支援。
初回面接を最低20分行い、行動変容のための動機づけを行う。
6カ月後に保健指導の効果を評価。
長期間指導の場合、動機づけ支援は最初の面接だけで決まる。
面接前の準備が非常に重要。
健診結果や質問票のほか、情報が入手できるなら積極的に求めてほしい。
医療保険者が企業であれば、産業医の方からストレスなどの情報を入手する。
事後評価を、保健指導に携わるチームで行うことも重要。

―「積極的支援」群についてはどうでしょうか。

剱物氏 基本的な考え方は、動機づけ支援と同様。
積極的支援は、3カ月以上継続的に支援を行い、6カ月後に評価。
支援方法や時間によりポイントが規定、180ポイント以上の支援を実施。
食生活や運動など組み合わせた指導。
運動指導担当者研修を受けた者など、他職種の人材を活用し保健指導を行う。

―初回面接の事前準備で、医師や保健師と医療保険者との連携も重要。

剱物氏 経年的に前年度の面接の記録など、データを集積し、
自然と連携できるようなシステムを構築してほしい。
市や町の特徴についてのデータを持っているのは市町村。
ぜひ、市町村との連携を活用してほしい。
島根県の安来市では、医師会・患者会・保健所との連携体制を構築し、
患者登録管理やハイリスク者への対策、啓発活動など総合的な糖尿病対策。
その結果、糖尿病の医療費の伸びを抑制したという例も。
地域に連携体制が構築されていなければ、地域の医師会や診療所と
市町村との連携体制を構築してほしい。

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200801/series-m.html

2008年2月13日水曜日

新しい分光計測装置の開発で、ホタルの発光の効率を測定

(nature Asia-Pacific)

東京大学物性研究所先端分光研究部門
秋山英文准教授、安東頼子研究員

ホタルの発光は、発光物質ルシフェリンが酵素ルシフェラーゼやマグネシウム、
ATPなどの補因子の助けにより酸化され、反応エネルギーを光として放出。
定説となっているデータは、1959年にSeligerとMcElroyによって計測、
ホタルの発光の量子収率(量子効率)は88±25%。
これは、ルシフェリンの酸化反応が100回行われると88回光るというもので、
発光の世界では驚異的に高い。

この定説を追試したのは、東京大学物性研究所の秋山英文准教授ら。
生物、化学発光の絶対発光量を、定量的に計測できる分光計測装置を開発、
北米産ホタルの発光の量子収率は、41.0±7.4%と定説を覆す結果に

秋山准教授の専門は半導体で、ガリウム(Ga)と砒素(As)を材料とする、
断面寸法14 nm×6 nmの世界で最も細い量子細線半導体レーザーを開発。
量子細線は、電子を閉じ込めて移動方向を制限する量子井戸を重ねて
電子を2次元方向で閉じ込めた構造で、
半導体レーザーの発振性能を改善できると期待。

秋山准教授は、微小空間における微量の光に関し、発光の絶対量を計測する
技術を10年ほど前から研究。「光ファイバーのような導線がある光や
ビーム状に進むレーザーの定量計測はできるが、いろいろな方向に
放射散乱する微弱光の方向と強さを計測する方法がない」。

産業技術総合研究所の近江谷克裕博士(現・北海道大学医学研究科教授)から、
生物発光の分野でも弱い光の強さの基準がないことを知った。
安東頼子研究員が、近江谷教授やアトー株式会社とともに、
ホタルの光をひとつのターゲットとする分光計測装置の共同開発を始める。
ルシフェリンの2つの光学異性体D体とL体のうち、
ホタル生物発光に関与できるのはD体のみで、
ラセミ化(D体とL体が入れ替わり、等量化する現象)は勘案されず、
SeligerとMcElroyの88%という数値は訂正が必要。

2005年、新しい分光計測装置が完成。
発光物質を入れた溶液から、放射される光量を校正する方法を開発し、
分光した光の全量を発光光子数として絶対単位で評価し、量子収率を計算。
ルミノールを計測し、量子収率1.2%という定説と同じ数値を確認。
安定した数値を出すには条件を整え、何度も実験を繰り返した。
「溶液に泡があるとうまくいかないなど、測定してみてわかることが多い」。

ホタルの計測では、溶液のpHの違いによる発光の違いも。
ホタルの発光物質は、アルカリ性溶液中では緑色、
酸性溶液中では赤く光ることを、SeligerとMcElroyが報告、
これまでは緑と赤の発光が入れ替わると考えられてきた。
安東研究員らの研究から、赤の光はアルカリ性溶液中でも出ており、
溶液のpHによって変わるのは緑の光だけである可能性が高い。

同じホタルの仲間であるヒカリコメツキムシやテツゾウムシを調べる予定。
ヒカリコメツキムシは緑、テツゾウムシは赤の発光が強く、
反応酵素ルシフェラーゼに違いがある。

秋山准教授は、「絶対発光量の測定で、わからなかった事実が明らかになり、
共通の光の量の単位を用いて定量的に話せるベースにも。
分子イメージングの蛍光物質の明るさは、この製品は○フォトンというように、
技術的な基準にもなる。今後はこの装置を市販品として完成させると同時に、
どんな分野で使えるかという例を示していきたい。
世界のいろいろな分野で使い、改良して、分光計測のスタンダードにできれば」。

光は通信、記録、医療の診断などさまざまな分野で電気に替わって
使われるようになり、今後もその傾向は強まると予想。
光を測る新しい技術の今後に注目したい。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=75

DNAを区切る「壁」発見 遺伝子の機能解明を加速

(共同通信社 2008年1月31日)

人間のDNAに、遺伝子と遺伝子の間を区切る「壁」の役割をする場所が
約1万3000カ所存在、遺伝子をブロック分けしていることを、
白髭克彦東京工業大教授らチームがネイチャー電子版に発表。

遺伝子がどのように連携して機能するかの解明につながる成果で、
遺伝子治療の成績向上なども期待。
遺伝子には、生命活動に必要なタンパク質をつくる情報が記録。
人間の遺伝子は2万数千個とされ、これらが独立して秩序正しく働くためには、
遺伝子間の相互干渉を防ぐ壁が必要、その存在が予想。

研究チームは、リング状の構造を持ち、穴の部分にDNAを通して束ねる
役割を持つ「コヒーシン」と呼ばれるタンパク質に着目。
コヒーシンがDNAのどこにくっついているかを、人の細胞で網羅的に解析。

その結果、コヒーシンは遺伝子と遺伝子の間を区切るように存在。
コヒーシンを働かなくすると、本来働かないはずの遺伝子が働きだし、
このタンパク質が壁の役割をしていると判断。

区切られた各ブロックには遺伝子が1~30個程度含まれ、
ブロックごとに機能を担っているとみられる。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=66920

2008年2月12日火曜日

生殖細胞の存在が、性分化に深く関与していた!

(nature Asia-Pacific)

自然科学研究機構 基礎生物学研究所 生殖遺伝学研究室 田中 実 准教授

人間の社会では、「男性」か「女性」かが、単に生物学的に区別され、
役割としても明確に差別化されがち。
生物全般を見渡すと、性が不確定で揺らいでいるものも多い。
カメやワニは温度で雌雄が決まり、クマノミは体の大きさで性が変化する。
田中実准教授は、メダカでは、外見の性が「生殖細胞の有無」に
左右されることを明らかにした。

東アジアに広く生息するメダカは、体長3センチほどの淡水魚で、
流れのゆるい小川や水路などに生息。
飼育が簡単、発生過程を観察しやすい、温度変化に強いといった点から、
日本では独自のメダカ研究が進み、
東京大学の武田洋幸教授らのグループが全ゲノムの解読に成功。

メダカの性染色体は、ほ乳類と同じXとYからなり、XYがオス、XXがメスになる。
田中准教授は、脊椎動物を構成する細胞の性がどのように決まり、
生殖腺の性(精巣か卵巣か)や個体の性が最終的に決まるのかを研究。
「メダカは体のつくりが単純で細胞数も少ないが、
性分化に関わる遺伝子や基本的な機構がほ乳類と共通し、使えると思った」。

田中准教授は、2001年に、メダカの生殖細胞を可視化する技術を開発し、
その位置を生きたまま追跡する方法を見いだした。
生殖細胞は、生殖腺の他の細胞が分化するよりもかなり前に出現し、
生殖腺が形成されるべき位置に移動。

「生殖細胞の移動に関わりのある遺伝子(cxcr4)」の機能を抑制し、
生殖細胞が生殖腺にたどり着けないようにして、
オスになるか、メスになるかを、大学院生の黒川紘美さんと調べた。
メダカには、生殖細胞で特異的に発現する遺伝子に
蛍光タンパク質遺伝子を導入して、生殖細胞だけが光るように細工。
「生殖細胞のない空の生殖腺をもつメダカは、
性染色体レベルの性にかかわらず(XY のオス型、XXのメス型であろうと)、
外見がオスの形態になることがわかった」。

生殖腺はどうかというと、生殖細胞をもたないメダカは、
性染色体がXY であろうと、XXであろうと、
オスとメスの中間型の構造をもつ生殖腺に分化した。
「これまでは、生殖細胞がなくても、オス型の場合は精巣様の構造を、
メス型の場合は卵巣様の構造をもつとされていたが、そうではなかった。
中間型の生殖腺は、遺伝子発現レベルではオス型」。

生殖細胞をもたないメダカの性行動は、オス型のようにみえた。
性成熟期にみせる第二次性徴も、オス型を示した。
メダカも、性成熟期を迎えると性ステロイドホルモンが作られ、
第二次性徴が引き起こされ、ヒレの形に性差があらわれる。
「性染色体ではオス型も、メス型も、
生殖細胞のないメダカの第二次性徴は、すべてオス型を示した」。

今回の成果は、「性染色体によって性が決まる動物でも、
体細胞は雄型、生殖細胞は雌型と、細胞固有の性を示すことがわかった。
個体が自身の性を決定する際、細胞がもつ相反する性を、
いずれか一方へと制御することが重要ではないか」という、
性分化の新しい概念を打ち出すことになった。

「魚類などにみられる性転換は、体細胞と生殖細胞の性の制御機構を
変えることでおきるのかもしれない。
性現象のおもしろさは、『ゆらぎ』にある。
決まってしまわないことが、ある生物にとっては重要。
『ゆらぎ』の基盤が、ヒトなどのほ乳類にもあるのか?
性の原理を追究していきたい」。

メダカによるこうした基礎研究が、ヒトの性分化異常や性同一障害などの
解明にも生かされることを期待したい。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=72

生活習慣病の発症予防で高まる医師の役割

(Japan Medicine 1月30日)

「特定健診・保健指導」が4月からスタート。
すべての医療保険者に対し、40~75歳未満の被保険者および被扶養者を
対象に、内臓脂肪型肥満に着目した健診と保健指導の実施を義務付け。
従来の健診制度で検証が不十分だった事後指導を強化し、
運動や食事療法を軸とした生活指導を徹底することで、
生活習慣病・心筋梗塞・脳卒中などの発症を抑制することが狙い。
同時に、医療費適正化につなげることも大きな目的。
制度開始を目前に控えた保険者側と医療機関側の取り組みを紹介。

●特定健診分析 40歳開始では効果減

小売り事業所などが加入するデパート健康保険組合が、
被保険者・被扶養者の健診結果を分析したところ、
40歳代前半を境目に、受診勧奨の割合が保健指導を超える。

40歳以上を対象にした保健指導では開始時期が遅すぎ、
職種や労働環境によって、期待する効果が見込めない可能性が示唆。

BMIが25以下でも、生活習慣病の危険因子を抱えているケースが多い。
同健保には、デパート、スーパー、ドラッグストアなど359事業所が加入(06年)。
従業員100人未満の中小規模事業所が、全体の52.8%。
被保険者10万59人、被扶養者5万7896人で、
40歳以上の特定健診対象者数は、5万7896人、1万1514人。

06年度生活習慣病健診・人間ドック健診の受診結果によると、
脂質異常がずばぬけて多いのが特徴。
35歳以上の受診者で、血液脂質がC判定(要観察)以上は、45%。
97年度で30%を超え、増加傾向が続く。

同健保では、06年度健診結果を基に、保健指導レベルの把握を試みた。
40歳以上のレベル階層化を、BMI25以上・喫煙率50%で試算したところ、
「積極的支援」7.2%、「動機づけ支援」2.8%。
情報提供レベルとBMI25未満を含めた「その他」60.7%。
「受診勧奨」29.2%。

年齢階層別にみた保健指導と受診勧奨の対象者の割合は、
43~45歳を境に入れ替わり、受診勧奨対象の方が高い。
BMI25以上の被保険者の血圧判定値に限定したところ、
40~44歳の階層で受診勧奨の割合が上回った。
レセプト(06年10月分)からみた生活習慣病関連疾患の占める割合では、
循環器系疾患の割合が30歳代から増え続ける。
同健保の冨山紀代美保健師は、「40歳からの保健指導では遅い」。

循環器系に何らかの問題を抱える割合が高いことや、
若い年代から検査数値が悪化し受診勧奨につながっている状態について、
猿山淳子統括保健師は、加入事業者特有の勤務形態との関係を指摘。
被保険者の仕事内容は、主に営業や販売で、
勤務時間が不規則なため夕食時間が遅くなるケースも。
勤務終了後に医療機関に受診することや、運動を継続することも難しい。
猿山氏は、脂質異常などが深刻化している状況について、
「仕事柄が健診結果によく出ている」。

また、特定健診・保健指導のモデル事業を実施したところ、
対象者の半数以上が受診勧奨という結果。
中堅スーパーの193人を対象に、モデル事業を実施。
健診結果から保健指導レベルを階層化したところ、
「積極的支援」4%、「動機付け支援」3%、「情報提供」1%、
受診勧奨対象は55%に。

●BMI25未満のリスク保持者がポイント

06年度健診結果に基づいた階層化からは、
BMI25未満でもハイリスクを抱える被保険者が多数いることも判明。
喫煙率50%で試算したデータでは、追加リスク2個以上の
「積極的支援」に位置付けられる割合が全体の21.8%。
追加リスク1個の「動機付け支援」は12.5%。

猿山氏は、「やせている人も指導していくことがポイントで、一番大きな問題」
BMIや腹囲の計測だけで対象を絞るのは不十分。
仮に、これらの群のBMIが25以上になれば、
受診勧奨レベルに入ってくる被保険者が増加してくるとみており、
今後は改善策に力を入れていく考え。

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200801/series1.html?Mg=69b5c78169708cb63617f57ca384a355&Eml=12b55b931cb52b4152963c77864c5aec&F=h&portalId=mailmag

2008年2月11日月曜日

2本鎖が免疫強化のかぎ DNAワクチンで大阪大

(共同通信社 2008年2月7日)

病原体の遺伝子断片を使う次世代ワクチンの「DNAワクチン」に、
従来考えられていたのと異なる仕組みで免疫を強化する働きがあることを、
大阪大の審良静男教授らのチームがマウス実験で突き止め、
英科学誌ネイチャーに発表。

塩基配列にかかわらずDNAの2本鎖そのものが、
病原体を攻撃する白血球を活性化。
「安全で効果の高いワクチン開発に役立ちそうだ」。

DNAワクチンは、病原体の遺伝子断片を体内で働かせて、
攻撃の目印となる抗原を事前につくっておく手法
エイズやインフルエンザ予防などに広く研究。

これまでは、特定の配列を持つ1本鎖DNAが受容体にくっつき、
免疫が高まると考えられていた。
今回、2本鎖DNAが細胞内に入るとTBK1という物質が働き、
白血球を活性化するのを新たに確認。
この免疫作用は、1本鎖DNAの場合より強かった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=67341

血清中ビタミンE濃度低値は高齢者の体力低下につながる

(Medscape 1月22日)

地域社会に居住する高齢者において、
栄養不良の指標である血清中ビタミンE濃度低値は、
その後の体力低下に関連することを示す研究結果が報告。

コーネル大学のBenedetta Bartaliらは、
「高齢者の自立を維持することは公衆衛生の優先事項であり、
機能障害プロセスを予防、遅延には、
身体機能低下に関与する因子の特定が必要。
栄養不良が、高齢者の身体機能低下に有害作用を及ぼすかは不明。
本研究の目的は、特定の微量栄養素の低濃度がその後の身体機能低下に
関連するかどうかを明らかにすること」。

トスカーナ州(イタリア)の住民登録(population registry)から
ランダムに選択した65歳以上の居住者698名の縦断的研究のデータを解析。
1998~2000年のベースライン評価を行い、
2001~2003年まで3年間の追跡評価を実施。

3年間における身体機能の低下は、Short Physical Performance Battery
(簡易身体能力バッテリー)スコアの1点以上の低下と定義。
対照群の各栄養素の4分位数の上位3階級に対する最低階級のオッズ比を計算。
結果の妥当性の確認には、2つの追加の補完的分析法が用いられた。
Short Physical Performance Batteryスコアの平均低下は、1.1点。

予想される交絡因子の補正したロジスティック回帰分析に基づけば、
ビタミンE濃度低値はその後の身体機能低下と有意に関連。
αトコフェロール4分位数の最低階級と身体機能スコアの1点以上の低下との
関連性に関するオッズ比は、1.62。

予想される交絡因子およびShort Physical Performance Batteryの
ベースラインスコアについて補正したところ、
連続尺度として解析したビタミンEを用いた一般線形モデルにおいては、
ビタミンEのベースライン濃度は追跡調査時点の
Short Physical Performance Batteryスコアと有意に関連。

身体機能低下の最も強力な予測因子は、
年齢81歳以上および(70-80歳の被験者では)ビタミンE。
身体機能低下の発生率は、それぞれ84%および60%。

「これらの結果から、地域社会に居住する高齢者において、
ビタミンEの血清濃度低値はその後の身体機能低下に関連することを
示す経験的エビデンスが得られた」。

研究の限界として、追跡不能によるバイアス、
イタリア人の一般集団に基づいた標本で一般化可能性が限られること、
ビタミンEは二変量分析では身体機能低下と関連したものの、
補正した分析では関連が認められなかったこと、
6種類の微量栄養素濃度を検討したため結果が偽陽性であった可能性、
多数の予想される交絡因子について補正が不十分であった可能性。

「疫学的研究で得られた知見では、因果関係は確立できないものの、
低ビタミンE濃度が身体機能低下に関与しているという根拠は得られた。
ビタミンE濃度の低い高齢者において、
ビタミンEの至適濃度が機能低下および機能障害の発生を抑制するかを
明らかにするためには、臨床試験を行う必要がある」。

JAMA. 2008;299:308-315.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=66738

2008年2月10日日曜日

トウモロコシに含まれるプロビタミンAを増加させる方法

(Science 2008年1月18日)

通常よりビタミンAを多く含むトウモロコシを育てることにより、
サハラ以南のアフリカやトウモロコシを主食としている地域で、
数百万人もの子供の健康状態が改善される可能性がある。
Carlos Harjesらによると、毎年4千万人の子供がビタミンA欠乏が原因の
眼病に罹患し、1億4千万~2億5千万人の健康に被害がもたらされている。

Harjesらは、ヒト体内でビタミンAに変化する前駆体化合物をかなり多く含む
天然のトウモロコシ種について報告。
世界で最も多く栽培され、消費されている黄色いトウモロコシ種には、
このような化合物のひとつ、βカロチンがあまり含まれていないが、
さらに色の濃い他のトウモロコシ種には多く含まれている。

lcyE遺伝子に起きた自然の変異が、
βカロチンやプロビタミンAの産生にどのように影響を与えているのかを明らかにした。
lcyE 遺伝子に、この変異を持つ種を育てることで、
遺伝子操作の必要もなく、発展途上国でプロビタミンAを多く含有する
トウモロコシを生産することができるであろう。

Science 18 January 2008:Vol. 319. no. 5861, pp. 330 - 333
Natural Genetic Variation in Lycopene Epsilon Cyclase Tapped for Maize Biofortification
Carlos E. Harjes,1* Torbert R. Rocheford,2 Ling Bai,3 Thomas P. Brutnell,3 Catherine Bermudez Kandianis,2 Stephen G. Sowinski,4 Ann E. Stapleton,5 Ratnakar Vallabhaneni,6,7 Mark Williams,4 Eleanore T. Wurtzel,6,7 Jianbing Yan,8 Edward S. Buckler1,9,10

Dietary vitamin A deficiency causes eye disease in 40 million children each year and places 140 to 250 million at risk for health disorders. Many children in sub-Saharan Africa subsist on maize-based diets. Maize displays considerable natural variation for carotenoid composition, including vitamin A precursors -carotene, β-carotene, and β-cryptoxanthin. Through association analysis, linkage mapping, expression analysis, and mutagenesis, we show that variation at the lycopene epsilon cyclase (lcyE) locus alters flux down -carotene versus β-carotene branches of the carotenoid pathway. Four natural lcyE polymorphisms explained 58% of the variation in these two branches and a threefold difference in provitamin A compounds. Selection of favorable lcyE alleles with inexpensive molecular markers will now enable developing-country breeders to more effectively produce maize grain with higher provitamin A levels.

http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi?_issue=91#388