2008年12月31日水曜日

環境税:肯定派が上回る 大企業調査、91年以来初めて

(毎日 12月28日)

大企業を対象にした環境省の調査で、
企業活動などに伴う二酸化炭素(CO2)排出量に応じて課税する
「環境税」導入に肯定的な企業の割合が、否定的な企業の割合を
91年の調査開始以来初めて上回った。
09年度与党税制改正大綱では環境税導入が見送られたが、
同省は、「地球温暖化対策としての環境税への理解が企業の間に広がってきた」

調査は、上場企業と従業員500人以上の非上場企業など
計6484社を対象に実施。2819社から回答があった(回答率43.5%)。

環境税導入については「賛成」が7%、
「内容次第だがどちらかといえば賛成」が33.6%、
肯定的な回答が4割を超えた。
「反対(11.1%)」、「どちらかと言えば反対(25.8%)」の合計は36.9%、
肯定派が初めて上回った。

税収の使い道は、「温暖化防止対策」61%、
「企業の省エネルギーへの投資」17・8%などで、
環境以外の分野にも使う「一般財源」との回答は4%。

企業の環境への取り組みの意義について、
「企業の社会的責任(CSR)」が82.6%を占め、
「ビジネスチャンス」、「業績を左右する戦略」との回答は
いずれも10%に満たなかった。

http://mainichi.jp/select/science/news/20081229k0000m040058000c.html

大学選び(5)選抜法で異なる指標

(読売 12月27日)

大学選びの指標をどう考えればいいのか。

大学の全入時代を迎え、選抜方法も多様化している。
偏差値による大学選びは揺らいでいないのか。
代々木ゼミナール入試情報センター本部長の坂口幸世さん(55)は、
まず「大学選びは一生の買い物。情報はきちんと取った方がいい」

代ゼミでは、過去に模試を受けた受験生約30万人を対象に、
電話や郵便で一般入試で合格した大学を尋ね、合格ラインを出している。

一般入試の枠が減り、調査書や面接、小論文で決める
AO(アドミッション・オフィス)入試や推薦入試が広がっている。
その点で、「データを示しにくくなったのは事実」とした上で、
「旧帝大や私大のトップ15校では、定員の7割前後が一般入試。確度は高い」
と、有力大学での偏差値活用に自信を見せる。

偏差値が通用しないAO・推薦で、私大に入る人が過半数に。
それだけに「大学は、きちんとAO・推薦の選考基準を示してほしい。
わからないもので落とされては、受験生は納得できない」

近年、AO・推薦とセンター試験の両方で合否を決める大学が増えたことに注目。
来春入試で取り入れる大学数は4分の1。
ペーパーテストで測れる学力以外の能力を見ようと始まった仕組みに
不都合があった、と大学が考えているのがわかる。

「偏差値はあてにならない」というのは、
全国高等学校進路指導協議会事務局長(東京都立晴海総合高校教諭)の
千葉吉裕さん(47)。
合格ラインで示される偏差値は、一般入試での数値。
その定員を減らせば、合格ラインが上がる。

進学組と就職組の双方がいる晴海総合高では、
独立行政法人「労働政策研究・研修機構」のホームページに
掲載されている適性診断を活用。
診断結果をもとに、進学か就職か、進学ならば何を学ぶかを考える。

「大学選びでは、教育力を指標にしたい。
入学させた学生を、どれだけ伸ばしているかを見たい」。
大学が行っている卒業生対象の満足度調査は、参考にしていない。
友だちがたくさんできた、程度で点数が上がってしまうからだ。
「大人数授業が多いのか、個別指導が徹底しているか、
ゼミにも入れない学生がどれだけいるのか……。
大学4年間で多額の教育費がかかるからこそ、慎重に選びたい」

いい大学に入れば将来は安泰――そんな幻想を抱いている保護者も
納得できるデータがほしいと付け加えた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081227-OYT8T00184.htm

総務省が地域活性化プラン発表

(サイエンスポータル 2008年12月22日)

豊かな自然環境を守りながら、活力ある地域社会の形成を目指す
「地域力創造プラン(鳩山プラン)」を総務省が発表。

プランは、「定住自立圏構想の推進」、
地域連携による『自然との共生』の推進」、
条件不利地域の自立・活性化の支援」という3本の柱。

定住自立圏とは、人口5万人程度以上の市を「中心市」とし、
その都市機能と近接する「周辺市町村」の環境、歴史、文化などとが
相互に役割分担し、定住の受け皿を形成することを意味。

地域連携による「自然との共生」では、都市の意欲ある若者たちを、
農産漁村が「地域おこし協力隊員」として受け入れ、
人口減少と高齢化に悩む地方の活性化を図ることを目指す。

都市部の災害防止、水源の涵養、食糧の供給、森林によるCO2の吸収など、
過疎地域を含む農産漁村が都市部を支えている実態を重視し、
都市から地方への移住や都市・地方の交流を促進する取り組みを進める。

定住自立圏構想の実現を目指した取り組みとしては、
既に八戸市など21市19圏域が先行実施団体として選ばれている。
来年度、これら先行実施団体の中心都市と周辺市町村が連携協定を締結し、
同様の取り組みが全国に広がることを目指す。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0812/0812221.html

次代の奥州博士育成 ご当地検定実施のNPO法人

(岩手日報 12月28日)

奥州市水沢区の特定非営利活動法人(NPO法人)
奥州おもしろ学(佐藤秀昭理事長)は、胆江地区出身の人物や
名所をまとめた「奥州おもしろ学ジュニアテキスト」を作った。

同法人が、今年から始めた「ご当地検定」の好評を受け、
小中学生向けに、より易しい内容とした。
来年2月のジュニア検定に向け、出前授業も受け付ける。
関係者は、「子どもたちが地元を学ぶきっかけにしてほしい」と期待。

ジュニアテキストはA4判で、74ページ。
内容は、「一般向けの初級より易しいレベル」(佐藤理事長)で、
世界遺産登録を目指す地元の文化や人物、産業や物産などを幅広く紹介。

同法人は、地域を面白く理解してもらおうと2、10月に検定試験を実施。
市内外から初級、中級部門に延べ約100人が受験。
ジュニア検定の対象は小中学生とし、問題は、テキストを基に出題。
点数に応じて金、銀、銅賞を与え、不合格は設けない。

検定前に佐藤理事長らが、地域の学校や公民館で講義する「出前授業」を予定。
学校や子ども会単位などでの応募を見込むが、
佐藤理事長は「1人、2人でも希望があれば向かいたい」と積極的。

佐藤理事長と佐藤幸男常務理事は、奥州市江刺総合支所と
金ケ崎町役場を訪れ、地域の小中学校にテキスト計120冊を寄贈。
菅原義子市教育長は、「関心と誇りを持ち、
将来的に地元に住むきっかけとなればうれしい」

検定試験は、2月7日午後2時から奥州市水沢区横町のメイプル4階で行う。
申し込みは、1月20日-2月3日の午前10時から正午まで、
メイプル内の奥州寺子屋(0197・34・2100)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081228_9

2008年12月30日火曜日

新しい波/287 武道の必修化/5

(毎日 12月20日)

剣道は、「痛い」「臭い」などの理由で、52%の生徒が「やりたくない」と回答。
宇都宮市立雀宮中で行われた全国学校体育研究大会を前に、
研究班が実施した生徒アンケートの結果。
剣道の研究授業で教えた雀宮中の山田博子教諭は、
「負のイメージが強かった」

山田教諭の授業では、面を着ける際に布製のあごあてを使い、
小手の下には軍手をはめることを生徒に認めている。
「前に使った人の汗が気になる」という理由。
一部には、こうした防具の着用に批判の声もあるが、
山田教諭は、「生徒が抱くハードルを取り除きたかった」

剣道は、他の武道と比べても厳しい礼法を指導。
全日本剣道連盟は、試合で勝った後のガッツポーズや、
特定選手を応援する横断幕の掲示などを禁じている。
全剣連の福本修二専務理事は、
「負けた相手にガッツポーズされた時の思い、横断幕のない選手の気持ち。
その寂しさを『察しろ』ということだ」と話し、
相手に対する思いやりの心が大切であると強調する。

試合後は、両手を床について互いに礼をする。
山田教諭は、「勝者は『自分の力を引き出してくれた』、
敗者は『弱点を教えてくれた』という相手の選手に対する感謝の気持ちを表す。
相手があって分かることだ」と説く。
あごあてや軍手を認めたのも、剣道の心を感じてもらいたかったから。
素直にありがとう、と言えるようになった生徒の心の変化も肌で感じてきた。

剣道の授業に詳しい千葉県袖ケ浦市教委総合教育センターの
軽米満世・教育相談員
は、「剣道を通じて問題の多かった中学が
良い方向へ向かった例もある」と指摘。
全剣連は、75年に「剣道は剣の理法の修練による人間形成の道である」
とした「剣道の理念」をまとめた。
昨年も、「剣道指導の心構え」として礼法を重んずる指導を呼びかけた。
思いやりや感謝の気持ちを大事にする剣道。
12年度から中学1、2年の授業に武道が必修化されるのに伴い、
教育現場では剣道に期待する声もある。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/news/20081220ddm035050007000c.html

求められるノーベル賞の受賞報道とは

(サイエンスポータル 2008年12月26日)

日本人4人のノーベル賞受賞にわいた年だったが、
ノーベル化学賞受賞者の白川英樹氏が、雑誌「科学」1月号の巻頭言で、
ノーベル賞の報道について苦言を呈している。

直接批判されているのは、氏を含め3年連続でノーベル賞受章者が
出たときのメディアの取り上げ方だ。
「とてもまともな報道とは思えなかった」、「興味本位の報道」と指摘。
今年の報道について直接の批判はないが、
「どうしてノーベル賞だけが大騒ぎになるのだろうか」
という疑問を呈している。

「メディアの取材と、研究内容や受賞の本質を突いていない
報道に対する違和感」。
自身の受賞時について、このような感想を述べている。

科学(技術)部を持つ新聞・通信社側からは、
「受賞対象になった業績についても、相応の記事は出している」
という反論も聞かれそうだ。

「なぜノーベル賞だけが大騒ぎになるのか」という指摘と併せて、
アカデミズムとジャーナリズムの間で、大いに議論を交わしてみても
よいのではないだろうか。

白川氏の言うメディアを新聞、通信、放送、雑誌と考えると、
確かにこれらの媒体にとって、ノーベル賞が大きな報道対象になるのは
日本人が受賞したときにほぼ限られる。

外国人が受賞したときは、特別の場合でもなければ、
受賞理由もそれほど詳しくは報じられないだろう。
どういう研究業績に対して賞が授与されたかより、
だれに対して授与されたかが、普通の人のより大きな関心事。

氏は、次のような疑問も投げかけている。
日本学士院賞や恩賜賞の受賞者を伝える報道の扱いが、
日本人のノーベル賞受賞時に比べ、小さいのはなぜか。

これに対しても、メディア側の言い分はありそう。
毎年日本人がもらうことが分かっていて、それも人数も結構多い賞の報道と、
いつ日本人がもらうか予想が難しいノーベル賞のニュース価値が
大きく異なるのは、当然ではないか、と。

ただし、「メディアにはノーベル賞関係だけでなく、
科学・技術関係のより充実した報道をお願いしたい」という
白川氏の要請に、科学ジャーナリズムは何の異論もない。

白川氏も、メディア側にばかり注文を付けているわけではない。
科学者・技術者にも、研究成果を専門外の人たちにも分かりやすく、
研究の意義と成果を語りかける努力を求めている。

例えば、日本学士院賞がどのように決まるのか、といったことは
メディアにきちんと説明されているのだろうか。
賞を出す側も、「これは立派な賞だ」と言うだけでなく、
メディアにも一般の人々にもそう思わせる努力がもっとあってもよいと思う。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0812/0812261.html

大学選び(4)学生から生の体験談

(読売 12月26日)

高校生と大学生が、気軽に進路を語り合える場ができた。

近隣の高校生のたまり場になっている横浜市青少年交流センター。
その隅に、一際にぎやかな十数人の集団があった。
「大学って楽しい?」、「代返って何?替え玉ってこと?」、「彼女できましたか?」

制服姿の高校生が、スナック菓子をつまみながら矢継ぎ早に質問。
「楽しいよ」、「友だちは出来た」。
「毎週40枚、手書きのリポートを課されて徹夜ばかり。
覚悟と目的がないと、大学はきついよ」と助言する学生も。
「大学以外の進路は考えたこともないけれど、何のために行くのだろう」と
高校生たちが次第に物思いにふけり始めた。

そばでやりとりを聞いていた横浜国立大学の望月由起准教授(39)に
笑顔が浮かぶ。
この日は、望月さんが同大で担当する授業「高大連携」の一環で行う実習。
本来は、「入試直前期の過ごし方」で語り合うはずだったのだが……。

高校生が抱く将来への不安の緩和に、大学生の体験を生かせないか。
昨年始まった「高大連携」には、そんな望月さんの思いが込められている。
大学院で臨床心理や教育を学び、約10年間、大手予備校講師をした後、
4年前に同大に着任した。
入試突破に血眼の高校や予備校と、学生集めに躍起の大学を目の当たりに。

授業では、そんな現状の根底にある社会的背景や歴史を説明し、
高校と大学はどのように連携すべきかを、
高校生と向き合いながら考えさせることに重きを置く。

実習の現場として、高校生の利用率が高い交流センターに協力を要請。
教師や親の勧め、偏差値で、何となく選んだ大学になじめず、
退学した学生を数多く見てきた同センターの遠藤夢沙さん(28)も、
「学生が語る様々な大学の姿や将来像を通して、
高校生に色々な選択肢があることを知ってほしい」と期待。

実習は、大学生自身にも進学の意味や目的を振り返らせる好機となっている。
経済的事情で、進学を断念した高校生と出会った工学部3年生(21)は、
「そんな人の存在を考えたこともなかった」と打ち明ける。
対人折衝が苦手で、システムエンジニアを目指していたが、
「人と接するのは面白い」と考え直した。
ふまじめな学生の多さにうんざりしていた工学部2年生(20)は、
受験生時代を思い出し、「まず自分の夢をしっかり見つめよう」と思い直している。

進路指導には、目的地を定めてそこに向かわせる山登りタイプと、
夢を探しながら一緒に筏に乗って川を下るタイプとがある。
「価値観が多様な今の子にふさわしいのは、筏下りではないか」
様々な夢に寄り添える力量が、大学選びにかかわる大人に求められている。

◆ブランドも重視の傾向

今春入学の大学生約6万人へのベネッセコーポレーションの調査では、
進学先を決めた理由は「学びたい授業がある」(57.9%)が1位だったが、
4年前に比べ3.3ポイント減。
2位の「入学の難易度」も数字を下げた。
「知名度」が23.2%で8.5ポイント上がるなど、
ブランド重視の傾向もうかがえた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081226-OYT8T00171.htm

「海山街」三位一体で 知事が沿岸広域6氏と懇談

(東海新報 12月27日)

県政懇談会「岩手フロンティア懇談会」が開かれ、
達増拓也知事と沿岸広域振興圏の6市町の各界代表が、
地域課題や振興策をめぐり活発に意見交換。

出席者は、大船渡市の民宿海楽荘代表・志田豊繁さん、
陸前高田市生出コミュニティ推進協議会事務局長の菅野征一郎さん、
釜石医師会会長の小泉嘉明さん、
釜石市の(株)福島屋代表取締役専務・遊佐俊一さん、
山田町の漁業・菊地和三さん、宮古市の齋徳林業代表・齋藤眞琴さん。
菅原一敏、小野寺有一の両県議、大船渡、釜石、宮古の各地方振興局長が同席。

志田さんは、未利用だったカジキマグロの頭を食材に活用
「頭が捨てられるのはもったいない」と、煮込んで民宿客に出し名物料理に。
温泉も掘り当て、事業拡大中のフロンティア精神について述べた。

菅野さんは、山の荒廃の現状や「間伐材が活用されていないのが残念でならない」
と、山主の業が成り立つように活用を呼びかけた。
医師の小泉さんは、医師不足について
「悪循環の中にあり、コストが問題ならば民間なりとタイアップを考えては」と提言。
遊佐さんは、「カヌーで海から見る三陸の景観は宝
高山植物も生える半島は豊かさを保つものであり、ヤマセも生かすべき」と宝を列挙。

菊地さんは、津波注意報時の出漁中の漁業者の避難誘導で、
県のアドバイスを求めたほか、土壌改良剤となるカキ殻の活用促進を提案。
齋藤さんは、「これからの林業は、環境を売る時代。
炭素取引を、森林にうまく取り入れるシステムを県にお願いしたい」と要望し、
未利用の間伐材を燃料とする薪ストーブの利点を強調し利用促進を提案。

達増知事は、医師不足の問題について
「医療崩壊に拍車をかけないために、県民の医療リテラシーを高め、
お医者さんへのかかり方、救急診療について日本で一番、岩手県民が
それを分かっているというようになれば良く、
県民が地域の医療を支え作るという形に持っていきたい」

知事は、「海と山と街が、三位一体で栄える三陸のいろんなイメージが
広がっていく。県としても、宝を発掘してみんなのものにしていきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

2008年12月29日月曜日

5年で2兆トンの氷が融解、温暖化でペース加速 NASA

(CNN 12月17日)

地球温暖化の影響で、南極とグリーンランド、アラスカの氷が溶けるペースが
早まり、2003年以来、1兆5000億トンから2兆トンもの氷が溶けたとする
観測データを、米航空宇宙局(NASA)が発表。

NASAの科学者スコット・ラスケ氏は、衛星2基を使った新技術で、
氷河と氷床の経年変化を測定。
同僚の科学者ジェイ・ズワリー氏も、別の衛星技術を使って
グリーンランドと北極、南極の氷の量の変化を調べ、
グリーンランドでは世界で年間約0.5ミリの海面上昇を引き起こすペースで
氷が溶けていると指摘。

海面上昇のペースは、15年前に比べて約50%速まっており、
今世紀の終わりまでに、海面は約45―90センチ上昇すると予想。

ズワリー氏は、現在の変化のペースを考えると、
地球環境の変化はますます予測がつかなくなっていて、
「地球温暖化の影響は、農業などわれわれの日常生活の多くの分野に及んでいる」
と警鐘を鳴らしている。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200812170035.html

大学選び(3)教育・研究内容で評価

(読売 12月25日)

出会いの場づくりで、行きたい大学をつかませる。

教室に集まった高校3年生約80人が、真剣な表情で読売新聞社が作った
「大学の実力」調査の冊子の一覧表に見入る。
予備校「早稲田塾」の出願校決定説明会。
講師が、表に記された大学別の学習支援策の見方を説明しながら、
「勉強をサポートできる大学かどうか、必ずチェックを」と呼びかけると、
高校生の目は一層、険しくなった。

早稲田塾は10年以上前から、教育・研究内容による大学選びを提唱。
一昨年から、「高校生と大学の出会いの場の提供」(相川秀希代表)を目的に、
大学と連携し、最先端の研究を体感できる授業も展開。
連携先は、立命館アジア太平洋大など9校に増えた。

「大学の実力」は、新聞を読んだ同塾総合研究所の主任研究員、
倉部史記さん(30)の発案で取り寄せ、東京、神奈川で展開する
15校全校の受講生に配布。

冊子には、倉部さんの「読み解き方」のメモを添えた。
標準修業年限卒業率7割、4年間の退学率1割強と回答した都内の私大には、
「厳しく学生を育てることで、社会から高い評価を得ている大学だということが、
数値からも読み取れる」と説明。
数字だけに頼らず、大学に直接問い合わせるなど、
自分で調べて慎重に志望校を決めるよう勧めている。

倉部さんは2年前まで、「偏差値が低い」とされた都内の私大の職員。
教職員まで劣等感を持つ姿に疑問を持ち、「大学は教育と研究で勝負」と、
自分のブログで意見を発信し続けてきた。
同塾への転職も、高校生に大学の中身を知ってもらいたいと考えた。
「大学選びは、自分の一生を決めることだとわかってほしい」

文京学院大学女子高校は、3年生約360人を対象に、
専修や大妻女子など12大学の教員14人を一堂に集めて模擬授業を行った。
最新の経済理論を解説する政治経済学部の授業や、
中国映画から日中関係の変化を考えるコミュニケーション文化学科の授業など、
大学のふだんの授業が展開、居眠りや私語はない。
「高校と違って難しい。でももっと聞きたい」と、生徒は目を輝かせていた。

これも、教育の内容を実体験してからの大学・学部選びで、
昨年から始めた試み。
講師集めには、都内の広告代理店も協力。
「名称だけでは、中身がわからない学部・学科名が増え、
指導教員が苦労している」と、棚橋信雄教頭(55)が事情を打ち明ける。

棚橋教頭は今、現役の学生の声も必要だと考えている。
オープンキャンパス(大学見学会)に出かけた生徒たちが時折拾ってくる
「うちの大学に来ることは勧めないよ」という言葉が忘れられない。

大学の本当の実力を高校生に伝えるにはどうしたらいいか。
現場の悩みは尽きない。

◆多様化に対応した学習支援策

「大学の実力」調査では、高校での学習内容の補習や到達度試験など
学習支援策9項目の実施状況を尋ねた。
最も多かったのは到達度試験で、回答した499校の8割近い378校が実施。
次いで習熟度別クラス編成が多かった。
国公私立の別なく、学生の多様化へ対応した取り組みが浮き彫りに。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081225-OYT8T00231.htm

余暇の運動は非アルコール性脂肪肝炎を予防する

(Medscape 12月12日)

『Hepatology』に報告された一般集団ベースの横断的研究によれば、
余暇の定期的な運動、特に無酸素運動は非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)
の予防に役立つ可能性がある。

Tel Aviv Sourasky Medical Center(イスラエル)のShira Zelber-Sagiらは、
「運動は、一般にNAFLD患者に推奨されている。
NAFLDにおいて、運動が単独でどのような役割を果たすかについては
十分なエビデンスが得られていない。
目的は、運動とNAFLDの相関性を検討すること」

研究対象母集団は、Israeli National Health and Nutrition Surveyに
登録された参加者の一部(375例)。
肝疾患の原因が判明している患者は、研究対象から除外。

腹部超音波検査、レプチン、アディポネクチン、レジスチンなどの生化学的検査、
肝脂肪症のバイオマーカーの非侵襲的測定SteatoTest
(BioPredictive、パリ、フランス)、身体計測、
半定量的な食事頻度質問票および詳細な運動質問票で、測定評価。

参加者349例のうち、52.7%は男性、30.9%は原発性NAFLDに罹患。
NAFLD患者が報告した有酸素運動量、レジスタンス運動量、
その他の種類の運動量は、残りの参加者と比較して少なかった。
何らかの運動またはレジスタンス運動を週1回以上行っている参加者では、
SteatoTest値が有意に低かった。

何らかの運動を週1回以上行っている参加者では、
腹部肥満のリスクが相対的に低い。
性別を補正した条件では、何らかのスポーツおよびレジスタンス運動への参加は、
それぞれNAFLDと負の相関性を示した。
ホメオスタシスモデルに関して補正した条件では、
ほとんどの栄養因子、アディポネクチン、レジスチンは相関性を変化させない。

BMIを、さらに補正した条件でも有意性が保たれたのは、
レジスタンス運動とNAFLDの相関性のみで、
レプチンまたはウエスト周囲径をモデルに追加すると、統計的有意性が消失。

「運動習慣、特に無酸素運動は、NAFLDに予防的役割を果たしている可能性。
この相関性は、腹部肥満率の低下を介するもの」

この研究の限界は、横断的デザインを用いたため、因果関係を推定できなかったこと。
「NAFLD患者のライフスタイル改善に、運動量の全般的増加を含めるべき。
NAFLDに対し、レジスタンス運動が有酸素運動より有用であるか否かは、
さらなる研究が必要である」

Hepatology. 2008;48:1791-1798.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=85617

iPS細胞研究「日本は1勝10敗」…山中・京大教授

(読売 12月25日)

様々な細胞に変化できる「新型万能細胞(iPS細胞)」を作製した
京都大の山中伸弥教授は、2008年の国内と海外のiPS細胞研究の
進み具合を振り返り、「1勝10敗くらいで負けた」。
その上で、「日本の研究者ネットワークの推進が急務」と強調。

科学技術振興機構によると、主な科学誌に08年に掲載された
国別のiPS細胞関連の論文数は、日本の1本、米国が8本、ドイツが1本。

米科学誌サイエンスは、今年の科学研究成果の1位にiPS細胞関係を
選んだが、山中教授は「評価されたのは、米国のハーバード大が
病気の患者の皮膚などからiPS細胞を作製した成果。
政府の素早い研究費の支援を受けたのに、日本の研究者はふがいない」
今年iPS細胞関連に、同省から45億円の研究費が投じられた。

これに対し、「5年後、10年後に革新的な研究が出ればいいのでは。
焦燥感にかられ、競争意識で研究をするのはどうか」と
疑問を投げかける研究者もいた。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081225-OYT1T00621.htm?from=nwla

2008年12月28日日曜日

黄砂・すす…大陸からの越境汚染、共同観測へ 日韓

(朝日 2008年12月23日)

中国などアジア大陸からの黄砂や黒いすすなどの越境汚染に
関心が高まるなか、日韓が共同で来春、飛行機を使った大気観測をする。
アジア大陸と日韓の間の海上を広域に飛んで、上空の大気とともに
流される物質を測り、温暖化への影響も探る国際的な取り組みが実現。

日本は、東京大、国立環境研究所、茨城大、北海道大、
韓国は光州科学技術院、国立環境研究所が参加。

アジア大陸からの西風が強くなる3月下旬から4月半ば、
長崎県から西に向かったあと、ソウルまで北上する空路約1500キロを
高度2千メートルで3往復するほか、いくつかの地点では海上付近から
上空7千メートルまでの鉛直方向も調べる。

搭載する日本の観測機器は、米航空宇宙局(NASA)と共同で、
北極観測にも使った世界最新鋭の機器で、大気中の浮遊粒子の
分布や量、大きさをとらえる。
韓国の観測機器では化学組成を調べて、
どのような物質がどのように運ばれるかを探る。

中国の砂漠で巻き上げられた砂ぼこりが、偏西風に乗って飛来する
黄砂は春先、韓国や日本で問題に。
工場や車の排煙を起源とする硫黄化合物は酸性雨の原因となり、
炭素粒子である黒いすすは太陽の光を吸収するため、
温暖化へ拍車をかける要因とも考えられている。

http://www.asahi.com/science/update/1223/TKY200812230239.html

盛岡農高が最優秀賞 日本の環境守る育成塾

(岩手日報 12月22日)

八幡平市の旧松尾鉱山跡地の緑と水の再生研究を重ねてきた、
盛岡農高森林科学科3年の林業研究班は、
日本の環境を守る若武者育成塾(アサヒビール主催)の最終発表会で、
最優秀賞に輝いた。

発表会は、同校をはじめとする北海道、東北、関東甲信越地区の高校から
選抜された7チーム27人の生徒が参加、
環境問題をテーマにした研究成果を披露した。

同校からは、畑山拓也君、因幡雄太君、佐藤朋也君、佐藤信生君が出場。
旧松尾鉱山跡地に自生するダケカンバ(落葉広葉樹)の酸性中和能力を立証、
量産し、植生活動を行ったことを披露し、市民らの意識調査結果などを発表。

同研究班は、6月に論文形式で同発表会に応募。
書類通過した7チームが、8月に北海道で行われた合宿で、
森林の環境問題に触れ、課題解決能力を高める大切さを学んだ。
佐藤信生君は、「高校生活の集大成を発表し、最高賞をもらうことができうれしい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/kako_kiji.cgi

大学選び(2)退学率公開 刺激に

(読売 12月24日)

教師と生徒は、大学の退学率から何を学び取るのか。

「なんで退学するのかな」
私立武南高校の3年H組の39人が、黒板に張り出された模造紙に
首をかしげていた。「行きたい大学ベスト10」。
青山学院や明治、立教など生徒たちの人気投票で選んだ大学名の下に、
読売新聞の「大学の実力」調査に掲載された退学率が書かれている。

願書提出を控えた12月3日。
「総合的な学習の時間」は、大学進学の意味を見つめ直すことを目的に、
大学中退の問題を取り上げていた。

「大学の名前だけで選んだから?」、「学費がなくなったのかも」、
「勉強が難しい」、「学ぶ意味が見つけられなかった」……。
次々に意見を口にする生徒の姿に、
同校の葛西紘一ガイダンスセンター長(64)は手応えを感じていた。

葛西さんの提案を受け、同校が進路相談を一括する窓口として
同センターを設けたのは20年前。
難関の県立や私立高の“滑り止め”で入学し、負け犬意識を抱えた生徒が
大半を占める現実に、葛西さんは、単なる進学指導ではなく、
入学時からの一貫した支援が必要だと実感。

葛西さん自身、長年夢見ていた新聞記者の職を病気のため1年で失い、
1967年に同校に着任。
「道はどこからでも開ける」と生徒に伝えたかったのだ。

同センターは、さまざまな悩みを抱えた生徒の居場所として定着。
6年前に始まった「総合的な学習の時間」を使って、3年間で計72時間、
進路を考える授業も担当。
生徒に、自分の長所や夢を何度も書かせ、自信を持たせることが軸に。

葛西さんは、進学希望者に、志望校のオープンキャンパス(大学見学会)と
学園祭、普段の大学の様子をのぞくよう指導。
保護者に対しては、入学が決まったら、100万円前後となる
初年度納付金を、現金で子供に見せてほしいと求めている。
進学への覚悟を固め、責任を感じてもらいたいから。

この数年、生徒が変わってきたと感じる。
「なんでこの大学なの」と尋ねると、何度も大学に足を運んで調べた
教育の内容や雰囲気を説明できる生徒が増えている。
進学の重みを学ぶ生徒に、門外不出だった退学率の数字は刺激に。

授業の終盤には、「目的意識を持って進学することが大切」、
「イメージで選んではいけない」と、大半の生徒がまとめていたが、
「退学は必ずしも悪ではない。新たな人生のチャンス」と、
前向きに受けとめる声も。
志望校が退学率を無回答だったことに対し、
「何か隠しているのかも」と不安を訴える生徒も。

葛西さんは、退学率の公開を待っていた。
高校も大学も、入れることだけを考えすぎていないか。
退学者の背景を知りたい。大学と話し合う場がほしい」と訴える。

生徒一人ひとりの人生を見つめた進路指導への模索が続く。

◆欧米では珍しくない退学率公表

読売新聞社の「大学の実力」調査では、
入学から1年間と4年間(医学部などは6年間)の退学率を質問、
499校のうち約9割が数値を答えた。
昨年4月入学者の1年間の退学率は0~13%。
日本では、これまで大学ごとの退学率がまとめて公表されたことは
なかったが、欧米では珍しくない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081224-OYT8T00195.htm

ツムラ ライフサイエンスが入浴法を検証ストレス・疲労の回復には、ぬるめで長めの入浴が効果的

(日経ヘルス 12月25日)

ツムラ ライフサイエンスは、第45回日本臨床生理学会総会において、
入浴で発現する熱ショックタンパク(以下HSP 70)の増加に関する検証と、
健康的な入浴法についての研究結果を発表。

これまでの研究で、マイルドな加温により、人の体内には様々なストレスに
対する生体防御効果、免疫増強効果、疲労の回復効果が得られる物質、
HSP 70が発現することがわかっていた。

今回、入浴とHSP 70の発現との関係性を調べるため、
平均年齢43.8歳の男性11人に対し試験を実施。
42℃ 5分の「熱めで短時間」、40℃ 20分の「ぬるめで長め」の2パターンに分けて
入浴してもらい、HSP 70値や体温の測定、生化学検査を行った。

その結果、「熱めで短時間」の入浴より、「ぬるめで長め」の入浴のほうに、
HSP 70の優位な増加、及び免疫力の指標であるNK活性の有意な増加が確認、
筋肉疲労時に発生する物質クレアチンの低下が見られた。
体温の上昇や入浴後の保温に優れていることがわかった。

「ぬるめで長め」の入浴のほうが、ストレス、疲労回復、免疫増強に
効果的であると報告。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20081225/102989/

2008年12月27日土曜日

漆器加え3商品 平泉ブランド発表

(岩手日報 12月23日)

平泉商工会(千葉庄悦会長)が、全国展開の新商品を売り出すため
取り組んでいる「五感浄土・商品開発ブランド事業」の商品発表会は、
平泉町平泉の平泉レストハウスで開かれた。

平泉文化にちなんだ日本酒、菓子、漆器が披露され、
現代の感覚と地域性あふれる商品が関係者約50人の目を集めた。

新商品は、特別純米酒「骨寺八百年荘園田 延年」、「かわらけせんべい」、
漆の髪留めと小物入れ「JODO Japan 溜ゆい・玉小箱」の3種類。
それぞれ「香る浄土」、「味わう浄土」、「触れる浄土」と題し、
同町と一関市の業者が製造した。

開発を手掛けたブレイントラストアンドカンパニー(仙台市)の
大志田典明社長は、「五感でとらえる浄土を考えた。
『見る』と『聞く』は、景観と舞などの音楽がある。
残りの感覚を商品にした」と狙いを語った。

3商品は、今冬から町内の土産物店などで順次発売。
問い合わせは、同商工会(0191・46・3560)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081223_9

大学選び(1)あふれる情報、読み解く授業

(読売 12月23日)

大学選びのための情報を分析する授業が始まった。

首都圏の大学が送ってきた案内パンフレットを教壇に山積みし、
杉森共和教諭(45)が呼びかけた。「今日は、大学を読み解きましょう」

東京都立葛飾総合高校。
2年生約40人が選択する「現代語表現」の10月下旬のテーマは
情報の読み解き」。
あふれる情報の中から、自分に必要なものを正確につかむ力をつけるとともに、
大学選びにも役立てる一石二鳥を狙った授業。

パンフレットと一緒に配られたのは、読売新聞の「大学の実力」調査のコピー。
授業は、両方の資料で大学のデータを調べることから始まった。
生徒の目はまず、イラストや写真で彩られたパンフレットに吸い寄せられる。
だが、杉森さんからの課題を見て表情が変わった。
「どんな大学で、どんな学生生活になるかをイメージする上で大切なことだよ」

課題は、パンフレットから在籍学生数、4年(医学部などは6年)で
卒業できる割合を示す卒業率や退学率などを調べ出すことだった。
「ないよ?」「そっちも?」

生徒は、パンフレットを手にして不満を口にし始めた。
志望大学のパンフレットを見て、「何も出てない。これじゃ写真集」と言う生徒や、
「大学の実力」のデータに目を通しながら、
「回答してない大学があるのはなぜだろう」と首をかしげる生徒も。

意見が出尽くしたころ、杉森さんは「白いうそ」と黒板に大書した。
「事実と異なる『真っ赤なうそ』に対して、こちらは大切な事実を隠すこと。
『白いうそ』を見極め、発信者の狙いを読み取らないと、
情報に踊らされるだけだよ」
それは、進路選択の岐路に立つ2年生への強烈なメッセージだった。

高校教員となって20年余りたつ今も、進路指導のあり方に違和感がある。
福岡県の進学校で、自分自身が受けた指導と基本は変わらない。
偏差値が高い難関大学に入ることが、安定した人生へのパスポートと、
いまだに唱えているように映る。
昨年4月に開校した葛飾総合高校への転任を希望したのは、
そうした指導を新しい学校で見直したかった。

「大学の実力」を見た時、「読みにくいが、これは使えるな」と直感。
大学は、どのように学生を育てる所かを見極め、
進学するかどうかもじっくりと考えたい。
「一人ひとりの生徒を支え、伸ばす、それが進路指導だ」

翌週の「現代語表現」で、生徒たちはリポートをまとめた。
多くが大学のパンフレットを、「自校の良さを伝えるもの」と受けとめ、
「白いうそを見極めなければ」と結んでいた。
二つの資料を読み比べ、「パンフレットではどんな学校かわからない。
もちろん『大学の実力』だけでも」と、厳しく評定するものも。
大半の生徒は、情報を読み取り、最後は自分の目や耳や足で
確かめることの重要性を自覚。

2年生は、葛飾総合にとって初めての卒業生となる。
それだけに、国分達夫校長(54)は授業を、「まだ不十分」としながらも、
「こうした取り組みをきちんと育て、個に対応した指導を実現したい」と意欲。

生徒の多様化に対応して設けられた総合学科の高校から、
新しい大学選びが始まろうとしている。

◆「大学の実力」調査

偏差値やブランドによらない大学選びのための情報提供をしようと、
読売新聞社が全国の4年制大学を対象に今春行った初の調査。
725校中499校が回答。
卒業率や退学率、補講率、学生による授業評価の実施状況など、
教育力向上への取り組みをテーマに約50項目を質問。

◆入試の多様化 悩む教員

高校の進路指導が難しくなっている。
最大の要因は、大学の多様化。
入試形態だけでなく、4年制だけで400種以上の学部、
1700種以上の学科があり、「グローバルスタディーズ学部」、
「感性デザイン学科」など、教育内容や職業選択にどう結びつくのか
イメージしにくい名前も多い。
生徒の夢や希望も多様化していることも、高校教員を悩ませている。

リクルートが、全国の高校の進路指導主事に行った調査(2006年)によると、
回答した813人のうち91%が、「進路指導は難しい」と答えた。
進路が多様な総合学科高校では、97%に達していた。
困難にしている要因は、「生徒の進路選択・決定能力の不足」が65%で最多。
「入試の多様化」、「生徒の学力低下」など、
生徒や入試環境の変化を挙げる声が目立った。

進路指導の現状についても、
「指導に十分な時間を割けない教員が多い」(56%)といった、
校内体制の不備のほか、能力不足を感じている教員も少なくない。
大学が大きく変化する中、今も「偏差値で輪切りにするしかない」
(首都圏の高校教員)と考える教員が目立つのが実情。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081223-OYT8T00206.htm

酸性雨、目にしみます…各地の銅像に涙のような筋跡

(読売 12月25日)

酸性雨の影響で、屋外の銅像に筋のような跡が残る
「アシッドライン現象」が各地で起きている。

修復作業が作品を破損しかねないとの心配もあり、
管理する側は対応に苦慮している。

九州最大の歓楽街、福岡市・中洲の「福博であい橋」に立つ「三人舞妓」像。
愛らしい表情をした舞妓たちの顔には、
いずれも涙を流したような筋模様が痛々しく残る。

後藤恵之輔・長崎大名誉教授(環境科学)は今年4月以降、
福岡、北九州市や大分県別府市などで、屋外に置かれた銅像の状況を調査。
舞妓像のほか、福岡県の有形文化財に指定されている
「銅造亀山上皇立像」(福岡市博多区)、長崎大文教キャンパスにある
「若人の像」(長崎市)などに、アシッドライン現象が起きたり、
広く変色したりしているのを確認。
商店街のアーケードなど雨にうたれない場所の銅像には、跡はなかった。

後藤名誉教授によると、同現象は、酸性雨によって銅が酸化して
流れ落ちる結果、起きる。

環境省によると、酸性度を示すpHの数値が5・6以下の場合が酸性雨
2002年までの20年間の国内平均値は4・77で、ほぼ横ばい。
後藤名誉教授は、「酸性雨による環境破壊が、市民一人ひとりにとって
身近な問題であることを認識するきっかけにしてほしい」

銅像を管理する側は、簡単には修復などに手を付けられない状態。
舞妓像がある福岡市の公園管理課は、
「芸術作品には、作者の意向が込められている。
塗装などを施せば、作品の印象が大きく変わってしまう恐れもある」

亀山上皇の立像は、2001年に文化財指定。
福岡県教委文化財保護課は、「酸化した表面部分を削り取れば、
逆に銅像がもっと傷んでしまうかも知れず、
単純に修復すればいいというものではない」

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20081225-OYT1T00429.htm

2008年12月26日金曜日

Scienceが選ぶ2008年科学的進歩ベストテン―第1位は「細胞の再プログラミング」

Science 12月19日)

2008年科学的進歩ベストテンの第1位に、
疾患に罹患した患者の細胞を再プログラミングすることにより
細胞株をオーダーメイドで作製するという研究を選出。

細胞株の作製技術は、パーキンソン病やⅠ型糖尿病といった
研究が困難であった疾患機序を解明し、
将来的には治療につなげることを目指し、長きにわたって追求されてきた技術。

副編集長(deputy news editor)Robert Coontzは、
「Scienceの記者および編集者は、2008年の最大の科学的躍進を
選出するにあたり、宇宙の仕組みに関する重大な疑問への解答となる研究や、
今後の発見への道を拓く研究を探索。
第1位に選出された細胞の再プログラミングは、
生物学の新分野を一夜にして切り開き、
生命を救う医学的進歩という希望の光をもたらした」

2008年の科学的進歩に選出された他9件を以下に紹介。
第2位の「太陽系以外の惑星の直接検出」以外、順不同。

太陽系外惑星―百聞は一見にしかず:
主星のまぶしい光から、惑星のほの暗い光を識別する特殊な望遠鏡技術を用いて、
太陽以外の恒星を周回する複数の惑星を直接観測することに初めて成功。

がん遺伝子のリストが拡大:
最も致死率の高い2つのがんである膵臓がんや膠芽腫を含む
種々のがん細胞の遺伝子配列が決定されたことにより、
細胞分裂の抑制を取り除いて、細胞をがん発症へと導く突然変異が多数検出。

不思議な新素材:
高温超伝導体は、超高温かつ電気抵抗がゼロの状態で電気を伝導する素材。
2008年、銅酸化物ではなく鉄化合物から成る第2の高温超伝導体が発見。

活動中の蛋白質を観察する:
蛋白質がターゲットに結合して細胞の代謝状態を変え、
組織の特性にも関与するという驚くべき観察結果が得られた。

必要に応じた再生可能エネルギー:
風力や太陽エネルギーといった常時利用可能ではないエネルギー源から
生産した余剰電力を、産業規模で備蓄する有望な新しいツールが発見。
比較的容易に入手可能なコバルト・リン触媒は、電気を利用して水を分解し、
水素を発生させる。
その後、水素が燃料電池に貯蔵され電力生産が再び可能に。

胚の映像:
2008年、胚が発生する際の細胞の動きを先例がないほど詳細にわたって
観察することに成功。ゼブラフィッシュの胚を構成する約16,000個の
細胞の様子を、発生開始から24時間追跡する映像が記録・分析。

「良い」脂肪が解明される:
「良い」褐色脂肪を変化させ、「悪い」白色脂肪を燃焼して、
身体の熱を産出して筋肉に送り込むこと、また、その逆も可能であることが発見。
本研究は、肥満治療への新しいアプローチを提示。

世界の重量を計算する:
可視宇宙のほとんどすべての粒子とその相互作用を明らかにする
(正確には、どれほどの陽子質量および中性子質量をもっているかを予測する)
標準モデルを証明する演算に成功。

より速く、より低コストでゲノムの塩基配列を決定する:
ヒトのゲノム配列決定に用いた最初の方法に比べ、かなり高速で低コストの
さまざまな配列決定技術により、体毛の長いマンモスからヒトのがん患者まで
多種のゲノム配列が相次いで報告。

"Breakthough of the Year" by Science News staff in Washington, D.C.

http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi?_issue=139#582

さんさ縁に学生交流 シンガポールの李さん

(岩手日報 12月23日)

シンガポールの南洋理工大2年・日本愛好会の
李国豪(リーコーハオ)さん(22)は、盛岡市に滞在し、
同市の大学生らと交流を深めた。

11月上旬の日本・シンガポール青少年観光交流促進事業で、
シンガポールを訪れた盛岡さんさ踊りと北上鬼剣舞の訪問団の受け入れ窓口を
担当したことがきっかけ。

李さんは、観光課の志賀達哉課長と懇談。
「大学間の国際交流をしてみたい」、
「今度盛岡さんさ踊りがシンガポールにきたら、みんなで習いたい」などと伝えた。

志賀課長は、「岩手を広く紹介していただければ、いろいろ交流できる。
さんさ踊りをシンガポールでも広めてほしい」と答えた。
2人はプレゼントを交換し、握手を交わした。

李さんは、大学のプログラムで日本の工場などの視察研修を終えた後、
1人で盛岡市を訪れ、盛岡さんさ踊りのメンバーと再会を喜んだ。
安比高原では、生まれて初めてスキーを楽しんだ。

盛岡さんさ踊りのメンバーは、李さんの歓迎会を開いた。
盛岡観光コンベンション協会の高橋賢一事務局長は、
「帰国したら、盛岡の良さをPRしてほしい」と観光パンフレットやはしを贈った。

李さんは、シンガポール人の生活風景を映像で紹介。
「岩手山や空がとてもきれいで印象的だ。
今後、両国の学生がホームステイし合うような交流につなげたい」と望んでいた。

歓迎会に参加した県立大短期大学部国際文化学科2年の浅沼さや香さんは、
「話を聞いて、多様な文化を知ることができた」。
岩手大教育学部1年の畠山歩さんは、
「さんさ踊りが受け入れてもらえたように感じた。また行きたい」

盛岡さんさ踊りと北上鬼剣舞の訪問団は、
11月5日から4日間シンガポールに滞在し、
踊りや意見交換などで地元学生と交流した。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081223_7

運動処方は中年女性の運動量を増やす

(Medscape 12月12日)

運動処方は、40-74歳の女性の運動量を増やし生活の質を向上させる、
というランダム化対照試験の結果が『BMJ』オンライン速報版で報告。

オタゴ大学(ニュージーランド、ウェリントン)のBeverley Lawton氏らは、
「医療専門家が、患者に運動のアドバイスを書いた処方箋を渡す
『運動処方』療法は以前から行われており、様々な面で成功を収めている。

野外運動処方(green prescription)プログラムは、
ニュージーランドのプライマリケアで広く実施され、
プライマリケアにおいて12カ月間の運動量が比較的少ない
(週5日以上、30分間の推奨された運動を行っていない)40-79歳の成人の
運動量と生活の質を有意に改善。
野外運動処方療法は、費用効率が高く、運動処方群の運動量は
対照群に比べて10%も増加した」。

目的は、中等度の運動を週5日以上、30分間行っていない40-74歳の
比較的運動量の少ない女性を対象に、
2年間プライマリケアで運動処方プログラムを実施し、その有効性を評価すること。
対象女性1089例は、ニュージーランドのウェリントンにある
17のプライマリケア施設で、ランダムに運動処方群か対照群に割り付けられた。

運動処方群は、看護師が指導する簡単な運動を行った。
6カ月間は追跡のため来院し、毎月の電話サポートは9カ月間受ける。
対照群は、通常のケアを受けた。

主要評価項目は、試験開始前、12カ月後、24カ月後に評価した運動量、
副次評価項目は生活の質(Medical Outcomes Study 36-Item
Short-Form Health Survey)、体重、胴囲、血圧、空腹時血清脂質濃度、
糖化ヘモグロビン(ヘモグロビンA1c)、血糖、インスリン、身体的健康。

参加者の平均年齢は58.9 ± 7歳。
試験開始の時点で、中等度以上の運動を週150分行っている参加者は
運動処方群で10%、対照群で11%。
12カ月、24カ月後の在籍率はそれぞれ93%、89%。
12カ月後、週150分の中等度以上の運動を達成した参加者の割合は
それぞれ43%、30%に増加、24カ月後では39.3%、32.8%になった。

対照群と比べて、運動処方群は36-Item Short-Form Health Surveyの
身体機能スコア、精神健康スコアが大きく改善、
日常役割機能スコアは低かった。両群間の臨床アウトカムに有意差はない。

運動処方群は、転倒、負傷の記録回数が多かった。
「運動処方プログラムは、運動量と生活の質を2年間向上させたが、

転倒と負傷も増加した。
この結果は、大規模な運動不足対策の一環として
運動処方プログラムを行うことの裏付けとなる」

同試験の限界として、参加者が盲検化されていなかったこと、
対照群の運動量も改善したこと、
臨床的アウトカムの有意差を検出するには症例数が少なすぎたこと。
主要評価項目、有害事象の評価方法として自己報告形式をとったため、
思い出しバイアスの可能性もある。

「プライマリケアで、運動量の少ない成人集団の運動不足を10%改善すれば、
健康にかなりの影響がある。
運動不足と肥満は、修正可能な危険因子であり、
これらを集団レベルで改善するには法律の制定、公衆衛生メディアの宣伝、
環境の変化、食事および運動プログラムなどの多角的な対策が必要」

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(イギリス)のSteve Iliffe氏らは、
「運動の健康増進効果はとても大きいので、自分でできる最も重要な療法」。
しかし、転倒のリスクを減らす必要性があると注意。

「特に動かそうとしている筋肉の強さとバランスが不十分なままで運動を増やすと、
一般に転倒しやすくなり、リスクを減らすことはできない。
早足のウォーキングなど一般的な運動の奨励は、
転倒リスクの上昇につながることがある(転倒したことがある人で特に)。
次期の研究開発では、このリスクへの対処方法を検討する必要」。

BMJ. Published online December 12, 2008.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=85294

2008年12月25日木曜日

地域が支える学校(15)教科・部活人事に意見

(読売 12月20日)

人事について意見が言える規定は、どう運用されているのか。

事例1:校長はその年で定年だったが、副校長はまだ1年目。
校長の学校運営協議会での評価は高い。
要望を出して、定年を延長してもらった。

地域住民が学校運営に参画するコミュニティスクールの大きな特徴は、
人事について意見が言えること。
協議会は、新年度の校長の人事構想について説明を受ける。

事例2:クラスが学級崩壊状態になっている教員がいた。
校長がどう指導し、他の教師がどうサポートしてきたか、
協議会は校長から説明を受けた。
結果的に、教員は自ら異動希望を出して転任した。
こうした場合、学校側の詳しい説明によって、うわさの独り歩きが避けられた。

東京都杉並区の場合、協議会からはこれまで、
「部活指導のできる先生を」、
「読解力向上のため、国語の指導力のある先生がほしい」、
「今後も生活指導に力を入れたい。あの先生に残ってほしい」といった要望。
今のところ、実現率は高い。
「用務員の評判がいい。続けて雇って」と求めた例も。

事例3:地域との連携をより進めるため、校長の提案を受け、協議会長名で、
社会教育主事の経験者か長期社会体験研修を積んだ人を要望。
実際に配置された社会教育主事経験者は、経験を前向きに生かそうとしている。
山口県の小学校の例。

一方で、「協議会から要望は色々出たが、いずれも実現はしていない」
と答える教育委員会もある。
指定校が増えれば、実現率は低くなる。
要望に沿えない場合、人事権を持つ都道府県教委が理由を説明する責任も。

教育委員会や学校単位で定める規則で、
人事に意見が言える点をあいまいにする教委もある。
当初、教員を異動させられる制度という点ばかりに学校関係者の注目が及び、
制度の根幹があいまいになっているのは不幸なことだ。

国際シンポジウム「地域住民や保護者が参画する学校運営の在り方」で、
日本のコミュニティスクールのモデルの一つとなった英国や、
米国、韓国の教育関係者と、日本のコミュニティスクール関係者が意見交換。

基調講演で、玉川大学教職大学院の小松郁夫教授は、
日本の制度は、教委主導型、校長支援型、ボランティア型が多いとした上で、
今後、学校運営協議会が<辛口の友人>としての役割を果たしていくべき。

「コミュニティスクール」の原型は、世界恐慌後の米国での
地域復興と人づくりにあった。
英国の教育関係者は、「学校理事会の理事(日本なら学校運営協議会の委員)
と校長の信頼関係が大切」と強調。
韓国の教育関係者は、「校長のリーダーシップは最も重要だ」

地域が学校にかかわる流れは、世界の潮流だ。
他国の事情も参考にしたい。

◆「人事の意見反映」70%

日本大学の佐藤晴雄教授らによる昨秋の調査では、
コミュニティスクール185校のうち、人事に関する意見を出した学校は33校。
うち、約70%は意見が反映された人事。
要望の中身は、教員を特定しない一般的要望が73%、
他校の特定教員がほしい36%、自校の特定教員を転出させないでほしい27%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081220-OYT8T00190.htm

天皇陛下、ハゼ研究で成果…国際遺伝学雑誌に論文掲載へ

(読売 12月23日)

ハゼの一種、キヌバリについて、太平洋側と日本海側に生息するものが
別種であることが、天皇陛下を中心とした研究で裏付けられ、
31日付オランダの国際遺伝学雑誌「GENE」に論文が掲載。

これまで同一種とされてきたが、研究では陛下も標本採取に加わり、
12ページにわたる英語の論文を一部執筆。

論文によると、キヌバリは全国の磯場に広く分布しているが、
日本海側の個体は体の黒い線が細く、7本あるのに対し、
太平洋側の個体は太くて線が6本という形態的相違がある。
このため陛下は、1980年代から「別種なのでは」と疑問を持たれていた。

2001年から、秋篠宮さまらも加わって、DNA解析を用いた共同研究に着手。
この結果、明確な遺伝的差異が確認され、やはりハゼの一種である
チャガラも、太平洋側と日本海側では別種の可能性が高い。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081222-OYT1T00807.htm

病床の子にサンタ楽団

(読売新聞 2008年12月24日)

病室から出られない患者たちに音楽のプレゼントをと、
クリスマスを前にした23日、東大病院で、医師らによるコンサートが開かれた。
白衣からサンタクロース姿に着替えた楽団員が、院内を移動しながらの演奏。
室内に鳴り響いた思わぬ贈り物に、
病床の子供たちは目を輝かせて聞き入った。

演奏したのは、麻酔科医の斎藤勇一郎さん(42)ら
医大生時代、学生室内合奏団長を務めていた斎藤さんは、
仲間との病院内でのバイオリン演奏に、
患者が涙を流して喜んでくれたのをきっかけに、活動を開始。
医師となってからも、毎年のように、患者らに演奏を披露。

1992年、東大病院に入ってからは、次第に他の医師らも加わり、
毎年10人以上による楽団に成長した。
手術などで多忙なことから、全体練習はわずかな時間だけ。
それでも斎藤さんらは、「人工呼吸器をつけていたり、白血病やがんの
治療による免疫力の低下で部屋を出ることすらできない子供たちに、
クリスマスを楽しんでもらいたい」と、各自で練習を積んできた。

コンサートはこの日、午後5時半にスタート。
午後9時の消灯時間まで、汗だくになりながら病室をまわり、
「きよしこの夜」などを披露。
子供たちは食事のはしを止めて聞き入り、拍手を送っていた。

斎藤さんは、「病気と闘う子供たちをみて、自分たちが元気づけられている。
これからも続けていきたい」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85507

健康医療福祉都市構想 「人間回復」を目指した街づくりへ

(じほう 2008年12月17日)

回復期リハビリテーション施設を軸とした「健康医療福祉都市構想」が、
全国の地方都市から関心を集めている。
回復期リハを受ける患者が生活しやすい都市環境とは、
超高齢化社会に適した都市構想でもある。
近い将来、モデル都市が実現すれば、全国化やアジア進出への期待も。

「健康医療福祉都市構想」は、
脳神経外科医で回復期リハ施設の機能強化を提唱する
酒向正春医師(初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長)が、
2003年から発信してきた都市構想。

脳卒中後の回復期リハや維持期の患者が、治療を受けながらも人間らしく、
健やかに生活できる環境をつくることがテーマ。
全国の地方都市からの関心を集め、一部では具体化に向けた検討が進んでいる。

構想は、酒向氏のヨーロッパでの留学経験から生まれた。
ヨーロッパでは、障害を持つ人や脳卒中などの後遺症を持つ人も、
都市の中心街に出てきて当たり前に生活を送り、元気に活躍している。
都市計画そのものが、「人間」を中心に構築されているため、
「人間らしく生きる」ことを可能とした。

近代以降の日本の都市では、生産性や効率性が優先されたため、
健常者の視点からしか都市計画が検討されてこなかった。
回復期リハ施設から元気に退院しても、後遺症や障害も持った人が
安心・安全に外出し社会活動を行えるような環境がない。
外出は、デイサービス・デイケアなどの施設や病院までの
往復に制限されてしまうのが現状。

「健康医療福祉都市構想」は、全国のどこにでもある30万-70万人の
住民を抱える地方都市を想定。
地方都市の中心市街には、老舗のデパートやショッピングエリアが点在し、
それらを結ぶ通り道が活気のあるショッピング街を形成。

回復期リハ施設から老舗デパートやショッピングエリアまで
バリアフリー化した「ヘルシーロード」があれば、
安心・安全な日常生活に必要な活動ができるというのが構想の根幹。
「ヘルシーロードを歩いてデパートで買い物することは良いリハビリになり、
自宅退院の目安になる。
ヘルシーロードは、人間回復のシンボルとなるだろう」

回復期リハの需要やさらなる人口高齢化によって、
健康医療福祉都市は全国の50-100都市に広がり、
日本に続いて超高齢化時代に突入するアジアにも
受け入れられるのではないか、と酒向氏は期待。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85127

歯学教育の改善・充実に向け、これまでの論点を整理  文科省

(WIC REPORT 厚生政策情報センター 2008年12月17日)

歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議(第6回12/15)

歯学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議で、配布された資料。
これまでの論点整理が行われた。

この会議における主な意見には、
「志望倍率の低迷は、入学時の基本的資質の低下につながっているかの問題」
「臨床実習のカリキュラムではなく、臨床能力の質の担保について議論が必要」など。
歯学教育についてはこれまで、
「臨床実習の時間数の減少と卒業時の臨床能力の格差が生じているのではないか」
「18歳人口の減少等から、入学者の資質の低下や格差が生じていないか」
などといった視点から検討を行ってきた。

論点の整理では、
(1)歯科医師となる者の臨床能力の向上
(2)臨床能力を育成する歯学教育の充実
(3)未来の歯科医療を拓く研究者の養成
(4)質の高い教育体制の確立-が取りまとめられている。

今後は、モデル・コア・カリキュラム、共用試験、国家試験、
臨床研修の間の整合性の確保のために、
文科省と厚生労働省が連携し検討を行う必要があるのではないか。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85169

2008年12月24日水曜日

特集:期待高まる太陽光発電 温暖化対策に不可欠--福田ビジョンで注目

(毎日 12月17日)

地球環境問題が大きな議題となった「北海道洞爺湖サミット」の
議長を務めた福田康夫前首相が打ち出した「福田ビジョン」。
2050年までに二酸化炭素(CO2)の排出量を最大で80%削減するという
意欲的な温暖化対策だが、目を引いたのが太陽光発電の普及・促進

05年度に打ち切った国の個人向け補助金を復活させ、
3~5年後には発電システムの価格を半額にし、
30年には現在の40倍の導入量にする目標を設定。
次世代エネルギーとして、低炭素社会への移行に欠かせない
太陽光発電の現状について、特集する。

◇膨大な光エネルギー 有害物質出ず、どこでも可能

巨大な風車で発電する風力や、発電時に水しか出さない燃料電池の
原料となる水素など、さまざまな種類がある次世代エネルギー。
その中で、太陽光発電が優位に立つのは電気の得やすさ。
変換するエネルギーは、太陽から地球に降り注いでいる光エネルギー。
その量は、人類が必要としているそれの数十倍という膨大。

発電時に、CO2などの温室効果ガスや有害物質を出さないばかりでなく、
光が届くところならどこでも発電可能で、都市部から山間部や海上など
場所を選ばないメリットがある。

太陽光発電に使う太陽電池は動力などを使わず、光エネルギーを直接、
電気エネルギーに変えることから理論上のエネルギーロスは少なく、
設備もコンパクトで寿命も長い。
発電量も太陽電池を増減するだけで、比較的自由に設定できる。
現在、普及が進んでいるのは、05年に日本を抜いて世界一の発電量と
なったドイツなど先進国が多いが、
今後は社会資本の整備が進んでいない新興国の普及も期待。

国内でも、関西電力(大阪市)などが堺市に建設を計画している
2万8000キロワットもの巨大な発電施設から、
卓上用の電子計算機までさまざまな用途に用いられている。

一般的な太陽電池の仕組みは、電気的な性質の異なる半導体を
合わせたもので、光エネルギーを受けると、マイナスの電気が
一方のシリコンに、プラスの電気がもう一方のシリコンに集まり、
そこで起きた電流を電気エネルギーとして取り出す。
太陽光発電の弱点であるエネルギーの変換効率も、
発明当初の数%から20%以上に向上。

◇広がる公的助成 国の実施時期は未定、都道府県は独自に

普及の障害となっているものに、システム全体の価格がある。
一般的な住宅に設置される3キロワットの太陽光発電システムの総額は
250万円ほどで、耐用年数は20年以上。
地域や設置場所によって差はあるが、おおむね年間3500キロワットの
発電量が見込める。
平均的な世帯の消費電力は賄え、余った電力は契約する電力会社に
売ることができるなどの金銭的なメリットもあるが、
償却するには耐用年数と同程度かかるとされ、安価とは言い切れない。

そのため、公的な助成制度を活用するのが賢い購入方法
経済産業省が公表している住宅用太陽光発電システムへの
補助金の総額は90億円。
一定の要件を満たすと、1キロワットあたり7万円の補助金が得られ、
約3万5000戸が対象になる見通し。

国の制度の実施時期は未定だが、都道府県では独自に
補助金を実施しているところもある。
100万キロワット相当の太陽エネルギーの利用拡大を掲げている
東京都では住宅用について、09年度から2年間、3キロワットで
30万円程度と、国よりも多い補助金を支給。
太陽光発電を含む太陽エネルギー利用機器を、4万世帯に導入する方針。

福島県(1キロワットあたり最大3万円)や和歌山県(同2万5000円)、
佐賀県(同1万5000円)なども、住宅向けの補助金制度を設けている。
市町村では、広島県呉市が97年度、長野市が99年度、北海道帯広市が
00年度から補助金を支給するなど、全国309の自治体に広がっている。

現在、太陽光発電で余った電気を電力会社に売る契約をしている件数は、
42万8000件あまりで、助成制度の充実などでさらに増えることが予想。

◇幼稚園・保育園、教材に
◇環境負荷軽い、太陽電池使用 「そらべあ基金」が贈る


現在、太陽電池で主力となっているのは、シリコンを使った商品。
最初に実用化されたのも、シリコンの単結晶で作ったもので、
性能や信頼性に優れている。
原料であるケイ素は、自然界に大量にあるところも
他の次世代エネルギーと比べても優位な点。
一方で、製造段階で珪砂などの原料からケイ素を取り出すには、
大量のエネルギーが必要で、価格が高くなるのが課題。

独自の太陽電池を開発しているホンダソルテック(熊本県大津町)は、
シリコンを使わず、製造時にも環境にやさしい太陽電池を商品化。
「CIGS薄膜太陽電池」と呼ばれ、CIGSは銅(copper)、
インジウム(indium)、ガリウム(gallium)、セレン(Selenium)の略で、
四つの化合物を原料に発電層を薄い膜状の半導体にした。
07年10月に一般住宅向けの販売を始め、今年10月からは
大容量発電が可能な公共・産業用向けにも販売を開始。

発電層の厚さは従来型の80分の1程度で、
製造時のエネルギーは1年弱で相殺される計算。
製造時のエネルギーの回収に必要な時間を、
「エネルギーペイバックタイム」と呼ばれ、太陽電池は従来型でも2年程度。
それがさらに短縮され、製造時も環境への負荷が軽減。

次代を担う子供たちへの環境教育の一環として、
この最も進んだ太陽電池を使った太陽光発電システムを
「そらべあ発電所」として、幼稚園や保育園に贈ろうというプロジェクトがある。
地球温暖化防止のため、グリーン電力の普及啓発などを行っている
NPO法人「そらべあ基金」が手掛ける「そらべあスマイルプロジェクト」。

ホッキョクグマ兄弟のキャラクター「そらべあ」をシンボルに、
活動している同基金。
今年は、ソニーが乾電池の売り上げの一部などを充てて、
全国3カ所の幼稚園・保育園に3キロワットの「CIGS薄膜太陽電池」を使った
「そらべあ発電所」が設置。
設置園の一つである東江幼稚園の浅井正信園長は、
「設置した棟の電気はほぼ賄っている。
発電量がひと目で分かる画面を、園児に見せるなど環境教育にも活用」。
==============
☆住宅用太陽光発電システムの助成制度(抜粋)☆

福島県    1キロワットあたり最大3万円(上限4キロワット)
東京都    3キロワットで30万円程度(09年度から)
和歌山県   1キロワットあたり2万5000円(上限5キロワット)
佐賀県    同1万5000円(同4キロワット)
帯広市    設置費用の2分の1(同15万円)
長野市    1キロワットあたり3万円(同20万円)
松山市    同8万円(同5キロワット)など
呉市      同2万円(同4キロワット)
鹿児島市   同4万5000円(同3キロワット)

http://mainichi.jp/select/science/news/20081217ddm010040113000c.html

乗客の「頭の中」を調べテロ防止 空港警備の最前線

(CNN 12月7日)

空港の金属探知機ゲートの前に順番待ちの長い列が続く光景は、
やがて過去のものとなるかもしれない。
乗客が機内に持ち込む手荷物などをチェックする代わりに、
最新技術で心理状態を把握し、テロを防止しようとする技術の開発が進んでいる。

金属探知を重視する現行のシステムには限界があり、
非金属の武器や化学薬品を使ったテロ、力づくのハイジャックなどを
防止することはできない。
こうした認識に基づく保安検査の技術開発で、最先端を行っているのは、
テロなどの脅威を常に感じてきた中東の小国、イスラエル。

「金属探知機より速くて効率が良く、乗客の負担も小さい」とされる新技術を、
数社の企業が提案している。

WeCUテクノロジーが取り組んでいるのは、潜在意識に働き掛ける
サブリミナル画像と、生体センサーの技術を組み合わせた手法。

たとえば、空港で乗客が目にする自動発券機の画面や出発便の電光掲示板に、
国際テロ組織アルカイダの最高指導者オサマ・ビンラディン容疑者の姿や、
「イスラム聖戦」を意味するアラブ語などの画像を瞬間的に表示させ、
サブリミナル効果によって起きる反応をセンサーでチェックする、といった仕組み。

テロなどをたくらむ人物は、画像の刺激で体温や脈拍、呼吸などに
無意識の変化を示すと考えられる。
さらに、上を歩くだけで生体測定ができる「スマートカーペット」、
椅子に座った人の詳細なデータを採取する「スマートシート」などの開発も。
米国土安全保障省からの助成金も受け、2010年の実用化を目指している。

同国のもうひとつのハイテク企業ネメシスコが注目しているのは、音声の分析。
ストレスがあると、声の周波数に変化が起きるとの説に基づき、
「正常な声」と「危険な声」を識別するシステムを開発。
すでに、モスクワのドモデドボ国際空港などでの試験運用に成功。

http://www.cnn.co.jp/fringe/CNN200812070016.html

地域が支える学校(14)読者の声…かかわる大人も成長

(読売 12月19日)

地域が学校にかかわる制度に、読者も期待を寄せる。

「地域にしろ、家族にしろ、人とのつながりが薄くなったという点で、深刻な状況。
学校を核にして、人とのつながりが、少しでも広がればいい

地域住民らが学校運営に参画するコミュニティスクールに、
こんな期待をするのは、東京都内に住む佐々木菜穂子さん(46)。
中野区立沼袋小学校で、春から産休代替教員を務めている。
「地域がとてもアットホーム」という、学校の学芸会の様子をメールで詳しく紹介。

公立学校の教師には異動がある。
地域との関係を築いても、異動になれば一からのスタート。
沼袋小の地域では、「メンバー交代も、新しい風として受け止め、活動が継続」。
秋の学芸会も、担任の半数が初めての経験だったが、
事前の衣装あわせに、多数の保護者が来校するなど、
学校を支える地域の力で120%の力が出せた。

10年以上、都内で教員を務めた後、歌を歌いながら体を動かす
プログラムの普及活動を続けてきた。
幼稚園児からお年寄りまで、世代を超えて交流することが多いだけに、
学校と地域の関係が客観的に見える。

「学校にかかわる活動は、かかわった大人にも成長のチャンスを与える。
学校は子供だけでなく、地域の学びの場となる」、
「学校を支える活動を、子育て中の元気な30代の人たちにがんばってほしい」
佐々木さんは、そんなメッセージも寄せた。

東京都日野市立東光寺小学校の地域関係者からは、
「来年、コミュニティスクールに名乗りをあげます」と連絡。
この秋、校庭の芝生化が完成し、その管理も地域がかかわっている。
校長も、地域の支える制度への大きな期待を口にした。

学校を支える組織である「地域支援本部」ができたという、
大阪府内の学校のPTA会長からは、「地域をつなげることが難しい。
そんな地域でも、学校と手を結ぶことができた例を知りたい」という声。

近隣の小中学校の「ミニ集会」に毎年参加しているという千葉県の男性から、
「地域との連携をテーマに掲げる学校が多いが、
学校が地域に何を求めているのかわからない」と苦言。
「学校側から、どんな困ったことがあるのか、具体的な説明や協力要請がない。
教育関係の仕事の経験はないが、案件次第では意見が出せるのに」

学校の情報発信の重要性がわかるファクス。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081219-OYT8T00250.htm

肥満関連遺伝子変異が食物選択に影響を与える可能性

(Medscape 12月10日)

肥満関連(fat mass and obesity-associated)遺伝子FTOの変異は、
エネルギー消費量ではなく、エネルギー摂取量および高エネルギー食嗜好に
関連しているという、スコットランドの小児を対象とした研究が発表。

FTOの変異体rs9939609のA対立遺伝子を有する小児は、
有しない小児と比較して、体重に関係なく、試験食時のカロリー摂取量が多かった。
『New England Journal of Medicine』12月11日号に掲載。

摂食量は、このA対立遺伝子を有する小児と有しない小児でほぼ同等。
ダンディー大学(スコットランド)Ninewells病院・医学部
(Ninewells Hospital and Medical School)生物医学研究所薬理ゲノミクス教授の
Colin Palmerは、2型糖尿病リスク関連遺伝子のゲノムレベル解析に貢献。

体格指数(BMI)に影響を及ぼすことで、糖尿病のリスクを増加させる
共通のFTO変異体を同定。
今回、rs9939609のA対立遺伝子がエネルギー収支に
どのように影響を及ぼすかを検討。

4-10歳のスコットランドの小児(2726例)を対象、
rs9939609の遺伝子型を特定した:A対立遺伝子がホモ接合体(AA)14%、
ヘテロ接合体(AT)49%、T対立遺伝子がホモ接合体(TT)37% 。
平均体重は、TT群26.99kg、AT群27.16kg、AA群28.07kgと、
遺伝子型群間で有意差。
BMIも、TT群17.09、AT群17.17、AA群17.58と、群間で有意差。

A対立遺伝子を有する小児は、この対立遺伝子を有しない小児と比較し、
安静時エネルギー消費量、総エネルギー消費量が多い。
「肥満者のほうが、安静時代謝が高いというのは道理に合わない。
一般に、肥満者の継続的な高カロリー摂取が原因である」

肥満者はあまり活動的ではなく、新陳代謝が遅いという固定観念について、
Palmer博士は、「「新陳代謝の遅い人」という表現型を見出すため、
体重と比較してエネルギー消費量が少ない人を探した。

これまでに見つけた遺伝子は、「新陳代謝の遅い人」という表現型に関連しない」
A対立遺伝子とカロリー摂取量の関連が判明。
試験食の約1.5時間前に、小児は、水250mL(対照群、0kJ)、
オレンジドリンク+マフィン(低エネルギー群、783kJ)、
オレンジドリンク+マフィン(高エネルギー群、1628kJ)を摂取。
その後の試験食時、各小児が摂取した食事の量および内容を評価。
小児76例が、このプロトコル×3回を終了。

解析の結果、rs9939609のA対立遺伝子は、
試験食時のエネルギー摂取量高値に関連。
データを年齢で補正し、0kJおよび783kJ摂取後の試験食時に、
A対立遺伝子(AAまたはAT)を有する小児は、T対立遺伝子が
ホモ接合体(TT)である小児よりも、カロリー摂取量が多かった。

1628kJ摂取後にも同じ傾向が認められたが、有意差は認められなかった。
3つの食前条件すべてについて、A対立遺伝子の有無にかかわらず、
小児が摂取した試験食の総重量に有意差は認められなかった。

「FTO遺伝子は、摂食行動を改善することで肥満を調節し、
カロリー制限の重要性を強調し、一部の人が、他の人と比較して、
高エネルギー食を好む理由を説明している。
これは、栄養バランスのとれた正しい食事を選択するための指針を
与えうる、特にリスクの高い集団を定義している」。

コロンビア大学小児科・内科教授、Naomi Berrie 糖尿病センター
(Naomi Berrie Diabetes Center)共同ディレクターであるRudolph Leibelは、
「体重調節の分子生理学に関する研究の結果を考えると、
(基礎エネルギー消費量の減少ではなく)過剰摂取が肥満の主なメカニズムである」

「肥満成人のエネルギー消費量は、非肥満者のエネルギー消費量から
予測される値と同等である。
肥満者は、痩せた人と比較し、代謝体重が多く、絶対エネルギー消費量が多い。
遺伝学を理解していれば、肥満のリスクをかなり正確に予測できる
(親に助言を与える以外に、解決手段があるわけではない)。
これらの遺伝子および他の遺伝子が、体重に影響を及ぼすメカニズムが
分かっていれば、分子が薬剤や他の方法による介入の標的となる」

Palmer博士は、「FTO遺伝子の蛋白産物が酵素であるという事実は、
その活性を増強または阻害する薬剤を開発することができる。
減量を助けるための新規治療法となる可能性がある」

出典 N Engl J Med. 2008;359(24):2558–2566, 2603–2604.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=85180

2008年12月23日火曜日

がん:発がん抑制分子「有効」 予防新薬に道 筑波大、マウスで実証

(毎日 12月18日)

がんが発症するのを未然に防ぐ仕組みを、
渋谷彰筑波大教授らの研究チームが解明。
がんにかかりにくい体質にする薬の開発につながる。
22日付の米科学誌に掲載。

健康な人でも、毎日約3000個のがん細胞が発生しているが、
がんにならないのは免疫の効果との学説がある。

研究チームは、「キラーT細胞」などの免疫細胞の表面にできる分子
「DNAM1」が、がん細胞上の別の分子と結合する性質に注目。

DNAM1のないマウスを作り、線維肉腫などを起こす発がん物質を接種した。
DNAM1なしのマウス十数匹は、約5カ月後にすべて線維肉腫を発症したが、
同じように発がん物質を接種した通常マウスで、
約5カ月後に発症していたのは、ほぼ半分。

DNAM1が、がん細胞を殺す上で重要な役割を担うことは
実験で推測されていたが、生物でその作用があるのかは不明。
渋谷教授は、「DNAM1の働きを高めることで、
がん治療だけでなく予防にもつながるのでは」

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/12/18/20081218ddm002040133000c.html

第4期介護保険計画策定へ 予想上回る高齢化率

(東海新報 12月21日)

大船渡市は、来年度から3カ年を期間とする第四期介護保険事業計画、
高齢者福祉計画の策定を進めている。
これまでの予想を上回るぺースで高齢化が進行し、
26年度の同市高齢化率は33・7%と推計、保険料負担の増加も予想。
住民説明会で、介護全般に関する不安や悩みが寄せられた。

両計画は、明るく活力のある高齢社会の実現に向け、
高齢者福祉と介護を一体化させた形での策定を目指す。
介護保険計画は3年ごとに策定、21~23年度までは第四期となる。

26年度までの総人口、高齢者人口、介護保険認定率、被保険者数などを推計。
21~23年度までの介護サービス利用者や給付費などの推計、
保険料割合を検討。

全国的にも全人口における高齢者の割合や、介護される高齢者が急増。
60歳以上の家族が介護する割合も50%超、「老老介護」が進んでいる。

大船渡市の65歳以上高齢者は、1万242人、
全人口に占める高齢化率は29・8%(今年9月)。
第三期の計画値よりも上回り、急速な高齢化進行を裏付け。

26年度における市内高齢者は約1万1100人、高齢化率33・7%と推計。
65歳以上の介護保険「一号被保険者」と、40~64歳「二号被保険者」が、
同年ごろにはほぼ同じ割合になることも予想。

介護保険認定者数は、19年度1838人、認定率15・1%。
26年度には2280人、全高齢者のうち約17%が認定。

来年度以降の介護保険料は現在積算中だが、
第一号保険料、介護給付費の総額ともに3年間で10%超の伸びが予想。
第三期計画での大船渡市の一号保険料は、月額3570円が基準、
市民税の課税状況などで六段階に区分。
県平均では、3686円。

大船渡地区公民館では、「高齢者が高齢者の面倒をみている状態。
すぐにサービスを利用したいが、書類記入が多くて大変」、
「地域住民や民生委員であっても、介護認定を受けるよう勧めるのは難しい」など、
介護に関する幅広い悩みが話題。

市では、今後の策定に向け、市議会議員らから意見、要望を聞いたあと、
「ささえあい長寿推進協議会」を開催。
今後3年間で整備する施設や保険料などを総合的に協議。

http://www.tohkaishimpo.com/

IOC:東京招致の熱意なし?HPへの投書、日本は1件

(毎日 12月11日)

五輪の将来像を討議する来年10月の五輪コングレス(コペンハーゲン)
へ向けて、国際オリンピック委員会(IOC)がネット上で
一般から意見を募ったホームページ(HP)に、
日本からの投書が1件しかないことが分かった。

猪谷千春IOC副会長は、「16年夏季五輪の東京への招致を目指す国として、
あまりにも寂しい数字」と危機感を募らせている。

このHPには、これまでに世界中から約700件の意見が寄せられている。
16年五輪で東京と招致を争うシカゴ、リオデジャネイロ、マドリードの
各都市を抱える国別では、米国が119件、ブラジルが18件、
スペインが14件を投書。

使用言語が、英語とフランス語という壁はあるが、
猪谷副会長は「日本人の五輪への熱意が足りない表れとも受け取られかねない。
日本からも積極的に参加してほしい」と訴えた。

HPは、最初に簡単な登録をすれば、
来年2月末まで誰でも意見を書き込める。
http://www.2009congress.olympic.org

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081211k0000e050009000c.html

2008年12月22日月曜日

みんなのニュース:ユニクロのネット戦略 広がるブログパーツ「UNIQLOCK」

(毎日 12月16日)

衣料品販売のユニクロが、ネットで展開しているブログパーツ広告
「UNIQLOCK」が、今年のカンヌ国際広告祭グランプリなど
世界三大広告賞をすべて受賞するなど話題。

ユニクロの服を着た女性が、軽快な音楽に合わせて踊る動画とデジタル時計が
5秒ごとに交互に表示されるもので、ユニクロの社名はどこにもない。
一般ユーザーが、自由にダウンロードして自分のブログに張れるため、
世界89カ国で約5万7000のブログが利用し、
ユニクロの情報を無償で発信する新しいスタイルの広告。

プロジェクトリーダーの勝部健太郎さんによると、
人気の秘密は「機能性」、「コンテンツ化」にある。

ブログパーツは、ブログやSNSのページ内に埋め込む部品で、
カレンダーや時計、企業広告などがある。
ブログの機能や見た目を向上させるため、開設者自身が設置し、
通常は企業と契約したり、設置を依頼されることはない。

ユニクロは、フェイスブック、マイスペースなど、世界の主なSNS4つと、
グーグルの検索画面を自分用に編集する「iGoogle」に対応。

「UNIQLOCK」は、07年6月から配信を始め、現在4種類ある。
動画は、4人の女性が「あやとり」や手を使った「影絵遊び」のような
動きを使った風変わりなダンスを踊っているもの。

世界各国で使ってもらうため、音楽とダンスと時計という
言葉を使わないコミュニケーションをコンセプトに。
動画200カットと10種類以上の音楽がランダムに組み合わされ、
いつも違う映像が流れていると感じるように演出。

狙い通り、「次は何か気になって、1時間も見続けてしまった」との声が
利用者から寄せられている。
勝部さんは、「ブログパーツは、コンテンツとしてのおもしろさと機能性がないと
利用者は飽きる。年末に企業が配るカレンダーをほしいと思うように、
ユーティリティー(機能、操作性を向上させるソフト)として
張り付けたくなるものを考えて時計にした」。

目標は、海外での認知度を高めること。
同社は、世界6カ国に店舗があり、09年には仏・パリに旗艦店を
開店する予定だが、ブランド名の浸透は「まだまだ」(勝部さん)。
「UNIQLOCK」を使うブロガーが増えれば、
ユニクロが自社のPRに使えるサイトがその分だけ増える。

出演者のオーディション風景を、動画共有サイト「YouTube」で
公開するなど、話題作りもした。
「ブロガーが使いたくなるようなアクセサリーを開発して、
世界中のブログサイトを、ユニクロの情報発信メディアにしたい」。

しかし、「UNIQLOCK」には社名の記載はない。
勝部さんは「映像をみた人が、『そういえば、Tシャツが欲しかったんだっけ』と
思い出すような、生活の中で自然に目に入ってくるような情報提供をしたい」

http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081216mog00m040031000c.html

末崎町麟祥寺「おかげさま献金」 ズッシリ、善意の重み

(東海新報 12月21日)

大船渡市の麟祥寺(金哲道住職)花園会(佐々木聖勇会長)は、
檀家の家々が一年間貯めた「おかげさま献金」を一堂に集め、
硬貨や寄贈されたタオルを仕分ける作業を行った。

おかげさま献金は、三十年近く続いている檀家の募金活動。
瓶などに貯められた硬貨を金種ごとに選別する作業が行われ、
十人ほどが集まった。作業を終えるまでに、三時間ほどを要する。

花園会の佐々木会長は、たくさんの寄付金を前にし、
「不況のさなかですが、今年は例年より千円札が多く入っているようです」と
善男善女への感謝を示した。

集まった献金は、例年通り日本赤十字社、市社会福祉協議会に寄付する。
花園会は今年の九月、赤十字社から長年の功績をたたえられ、
感謝状である金色有功賞が贈られている。

http://www.tohkaishimpo.com/

東京五輪招致:国民世論の盛り上げが必要…招致委など説明

(毎日 12月16日)

2016年五輪開催地に立候補している東京都の招致委員会と
契約している外国人コンサルタントが、
招致を成功させるためのポイントなどを説明。

アドバイザーとして契約しているのは、14年ソチ冬季五輪の招致を
成功させたジョン・ティブス氏(英国)とザルツブルグで招致活動に携わった
ゲノルト・ライトナー氏(オーストリア)。

ティブス氏は、「北京五輪の日本での視聴率は40%を超え、
五輪に対する情熱がある」と、国民世論の盛り上げが必要との認識を強調。
金融危機による世界同時不況について、ライトナー氏は
「東京の計画はコンパクトであり、経済不況の中で財政的な強みを
見せていかなければならない」

開催地を決める来年10月の国際オリンピック委員会総会で、
招致演説に立つ候補として、ティブス氏は個人的な見解とことわったうえで
「石原(慎太郎)都知事にはカリスマ性があり、英語もフランス語も話せるので、
ステージに上がって頂ければ」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/news/20081217k0000m050052000c.html

2008年12月21日日曜日

世界遺産暫定リスト決定 御所野含む縄文遺跡群

(岩手日報 12月16日)

政府は、本県の御所野遺跡(一戸町)を含む縄文遺跡群を
「北海道・北東北の縄文遺跡群」から、
「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」に名称変更し、
国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出する世界遺産の
登録候補一覧表「暫定リスト」に追加登載することを正式に決めた。

今後、文化庁と関係自治体は、構成資産の範囲拡大に向けた検討に入る。
外務省で開かれた世界遺産条約関係省庁連絡会議で決まった。

文化審議会世界文化遺産特別委員会は9月、
「縄文遺跡群」について「暫定リスト登載が適当」と判断した際、
主題を北海道・北東北に絞らず、
「落葉広葉樹林帯が広く展開する地域・年代に拡大」するよう注文。
名称も、それにふさわしく改めるよう求めていた。

今後は、推薦書作成に向けて
▽北海道・北東北以外への対象拡大
▽代表的な遺跡の厳選
▽復元的整備手法の国際的合意形成
▽保存管理計画策定―などが課題。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081216_2

玄沢生誕250年、功績永遠に 式典などの記録集発刊

(岩手日報 12月17日)

大槻玄沢生誕250周年没後180周年記念事業実行委(遠藤輝夫会長)は、
9月24日に実施した記念式典の内容や関係者の寄稿文などを掲載した
記録集「学問の花ひらく-大槻玄沢と門人たち」を発刊。
A4判、44ページ。

一関市大手町の一関文化センターを会場に、市民や研究者ら約150人が
出席して開催された式典や行事の写真、国立豊田高専の幸田正孝元教授の
「作州津山・宇田川家からみた大槻玄沢」と題した記念講演要旨などを載せた。

大会では、玄沢の門人の子孫らがそれぞれの思いをステージで発表。
記録集では、7人が「わが祖先を語る」というテーマで寄稿。

玄沢は1757(宝暦7)年、一関生まれ。
一関藩医建部家で医学を学び、江戸に出て杉田玄白、前野良沢に師事。
蘭学の入門書や西洋医学の本を翻訳するなどした。

50部ほど残部があり、1冊500円(送料200円)で配布。
問い合わせは、鈴木幸彦事務局長(019・647・0606)、
事務局の小野寺仁さん(0191・21・3631)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20081217_7

16年五輪招致:東京が全体計画…マラソンに周回コース

(毎日 12月18日)

2016年五輪開催地に立候補している東京の招致委員会は、
来年2月に国際オリンピック委員会に提出する
競技会場などの全体計画を決めた。

男女マラソンのコースで、途中に10キロの周回コースを3周するなど、
新たな計画が盛り込まれた。

マラソンは国立競技場をスタートし、晴海に新設の五輪スタジアムを
ゴールとする42.195キロのコースで実施し、
どの地区に周回コースを設けるか検討中。

国際陸連の提案に沿うもので、係員の配置などで運営が効率化され、
沿道の観客が選手を何度も見られる利点。
来年の世界選手権(ベルリン)でも、周回コースが採用。

自転車競技のトラックレースを東京ドームで開催する予定にしていたが、
民間商業施設と五輪スポンサーとの関係が懸念され、
大井ふ頭中央海浜公園に仮設の競技場を建設。
辰巳の森海浜公園に仮設予定だった水泳場は、一部が常設。

当初予定での施設整備費は3249億円だったが、
招致委では計画変更後も同程度にとどめたいとしている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20081219k0000m050081000c.html

2008年12月20日土曜日

肺炎 国内の死因第4位で9割は高齢者。予防法は?

(毎日新聞社 2008年12月16日)

インフルエンザが流行する季節は、肺炎も多発。
肺炎が原因で亡くなる人はがん、心疾患、脳血管疾患に次ぎ、4番目に多い。
肺炎で死亡する人の9割以上は65歳以上。
高齢者をかかえる家族は、肺炎にならない予防策を取ることが大切。

◎耐性菌出現で注目

肺炎を起こしている主な原因菌は、緑膿菌や肺炎球菌など。
緑膿菌は、院内感染も起こす。
肺炎球菌は、鼻の奥にすむ「常在菌」で、体の免疫力が低下すると
発熱やせき、たんなどを伴う肺炎になり、死亡する場合も。

インフルエンザに感染していると、
肺炎球菌が気管支などに侵入しやすくなり、症状はより重くなる。
肺炎球菌による肺炎の治療では、ペニシリン系の抗生物質を使うが、
最近は薬が効きにくい耐性菌が現れてきた。

注目されているのが、ワクチン接種。
毒性をなくした肺炎球菌の一部を注射し、体に抗体をつくらせて重症化を防ぐ。
日本では、88年に承認。
米国では65歳以上の約6割が接種しているが、日本では5%程度と低い。
ワクチン接種した人はしない人に比べ、死亡率は約7割も下がる。
複十字病院の工藤翔二院長は、
「65歳以上の高齢者は、ワクチン接種をした方がよい」。
インフルエンザや肺炎治療に詳しい松本慶蔵・長崎大名誉教授は、
「ワクチン接種は、インフルエンザになったときの重症化を抑える効果もある」

肺炎球菌ワクチンの効果は、1回の接種で5年程度持続。
米国では2回の接種が認められているが、
日本では安全性や有効性を裏付けるデータが少ないとして、
厚生労働省は1回しか認めていない。
工藤さんは、「接種して5年以上たったら、2回目の接種をした方がより効果的」
国に2回目の接種の必要性を訴えている。

◎欧米では小児用も

肺炎球菌は、肺炎だけでなく、中耳炎や髄膜炎などの原因に。
免疫力の弱い4~5歳以下では、血液に入った肺炎球菌が脳や脊髄を
覆う髄膜に侵入して炎症を起こす髄膜炎の原因にも。
日本神経感染症学会によると、日本では年間約1000人の子どもが
髄膜炎にかかっていると推定。

欧米では、子ども専用ワクチンが認められている。
2歳未満の専用ワクチンを開発した米製薬企業「ワイス」は昨年9月、
厚労省に使用申請したが、まだ承認されていない。
普段から、うがいや運動、日光浴などで体の免疫を強くしておくことが必要。

◎自治体が助成の動き

ここ数年、全国の自治体が住民に接種を促す動き。
スイカの産地で知られる長野県波田町(人口約1万5000人)は、
04年から05年の冬、インフルエンザと肺炎を併発した高齢者が急増し、
町の病院に収容できないほどの事態に。

06年6月から、75歳以上を対象にワクチン接種への助成を始めた。
通常の接種料金は6000円だが、2000円を補助し、自己負担は4000円。
半分近い高齢者が接種を受けた。
その結果、06年6月以前は、全死亡者のうち肺炎死亡が11-17%、
助成後の07年は約6%、今年は約4%と、肺炎死亡率は大幅に減った。

清水幹夫・波田総合病院救急総合診療科長は、
「肺炎で入院すると、1カ月間の入院費用は1人あたり約86万円もかかる。
ワクチン接種で高齢者の入院患者は大きく減った」と経済的効果。

全国のワクチン接種の平均的な費用は、8000円前後。
東京都渋谷区のように、75歳以上は全額補助の例も。

万有製薬は、治療法やワクチン接種の病院紹介などを解説する
「肺炎球菌感染症コールセンター」(月~金曜9-17時、0120・66・8910)
を来年3月末まで開設。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85024

延命遺伝子特定 老化疾患など応用にも期待 京大大学院グループ

(毎日新聞社 2008年12月15日)

断食の繰り返しなど、断続的な飢餓状態がもたらす動物の老化抑制や
延命作用について、京都大大学院の研究グループが
線虫を使った実験で原因となる遺伝子を見つけた。

この遺伝子は人間にもあり、延命のほか老化に伴う疾患の抑制へ
応用が期待。
英科学誌「ネイチャー」電子版に発表。

断食を繰り返すと寿命が延びることは、マウスでの実験で知られている。
生命科学研究科の西田栄介教授(細胞生物学)らは
研究に適した線虫を使い、どの遺伝子が作用しているか実験。

餌となる大腸菌を2日おきにしか与えない場合、
平均寿命(約25日)が1・5倍に延び、量を減らしただけでも
約1・15倍になることを確認。
エネルギーや栄養の状況を感知して細胞に伝える役割を持つ
遺伝子7、8個を調べ、「Rheb」(レブ)と呼ばれる遺伝子の働きを止めると、
断続的な飢餓による寿命延長が起こらないことを突き止めた。

長寿に関連する遺伝子としては、既に「DAF-16」の存在が知られている。
RhebはDAF-16を活性化する、寿命延長の鍵を握る遺伝子。
西田教授は、「飢餓を感知するメカニズムを解明できれば、
飢餓状態を引き起こさなくても、寿命を延ばすことができるのではないか」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85010

2008年12月19日金曜日

麻痺した筋の皮質ニューロンによる直接制御

(nature 2008年12月4日号Vol.456 No7222 / P.639-642)

麻痺した筋の皮質ニューロンによる直接制御
脊髄損傷による麻痺の治療法として、
脳からの制御信号を人工的な接続によって、
損傷部周辺へ伝送する方法が考えられる。

こうした信号が、筋の電気的刺激の制御に使われれば、
麻痺した四肢の随意運動を復活させられる可能性がある。

従来の実験では、実際の運動または仮想的な運動に関連する
運動皮質の活動を用いて、コンピューター画面のカーソルや
ロボット腕を動かすことや、麻痺した筋を機能的な電気刺激で
動かすことに、それぞれ別個に成功。

本論文では、サル(ブタオザル;Macaca nemestrina)が、
運動皮質中のニューロンの活動を使って筋を直接刺激することができ、
一時的に麻痺させた腕に目標到達運動を復活させたことを報告。

重要なのは、ニューロンがどのような運動と関連していたのかには関係なく、
この機能的刺激の制御が可能だったことで、
この知見によって、脳-機械インターフェースの制御信号源の選択肢は
大きく広がることになる。

サルは、この皮質細胞から筋への人工的接続を使って
手首を両方向に回転させることを覚え、
ニューロン-筋の複数対を同時に制御できるようになった。
皮質活動から筋刺激へのこのような直接的変換は、
自律的な電子回路で行うことも可能であり、
かなり自然に近い神経プロテーゼができそうである。

今回の結果は、皮質細胞と筋との人工的な直接接続によって、
分断された生理的経路を補償し、麻痺した四肢の運動の随意制御に
成功した最初の実例となる。

[原文]Direct control of paralysed muscles by cortical neurons

Chet T. Moritz1, Steve I. Perlmutter1 & Eberhard E. Fetz11.Department of Physiology & Biophysics and Washington National Primate Research Center, University of Washington, Seattle, Washington 98195, USA

A potential treatment for paralysis resulting from spinal cord injury is to route control signals from the brain around the injury by artificial connections. Such signals could then control electrical stimulation of muscles, thereby restoring volitional movement to paralysed limbs1, 2, 3. In previously separate experiments, activity of motor cortex neurons related to actual or imagined movements has been used to control computer cursors and robotic arms4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, and paralysed muscles have been activated by functional electrical stimulation11, 12, 13. Here we show that Macaca nemestrina monkeys can directly control stimulation of muscles using the activity of neurons in the motor cortex, thereby restoring goal-directed movements to a transiently paralysed arm. Moreover, neurons could control functional stimulation equally well regardless of any previous association to movement, a finding that considerably expands the source of control signals for brain-machine interfaces. Monkeys learned to use these artificial connections from cortical cells to muscles to generate bidirectional wrist torques, and controlled multiple neuron-muscle pairs simultaneously. Such direct transforms from cortical activity to muscle stimulation could be implemented by autonomous electronic circuitry, creating a relatively natural neuroprosthesis. These results are the first demonstration that direct artificial connections between cortical cells and muscles can compensate for interrupted physiological pathways and restore volitional control of movement to paralysed limbs.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200812/nature/7222/01.html

新たな研究が夜勤に光を当てる

(WebMD 12月5日)

夜勤時の集中力を高め、さらに勤務時間外によりよく眠るための
一つの方策を、ある新しい研究が発表。

ラッシュ大学医療センターの研究者らが、夜間勤務に関する実験において、
被験者を真夜中に5回、15分間ずつ明るい光にさらさせたところ、
即座にではないものの、しばらく後の集中力が高まった。

研究者の1人Charmane Eastmanは、役立ったのは光だけではない。
光に暴露した人は、帰宅時に色調の暗いサングラスをかけ、
午前8時半に就寝した。
被験者群は1回目と2回目の夜勤後、
暗い寝室で午前8時半から午後3時半まで睡眠をとった。
3回目以降の夜勤後は、午前8時半から午後1時半まで睡眠をとり、
2日間の週末休暇には午前3時から正午まで睡眠をとった。

一方、同じ実験の対照群は光に当たらなかった。
サングラスは与えられたが、薄暗い程度で暗いサングラスではなかった。
睡眠は無制限とし、好きなだけ外光に当たった。
合計24名の実験参加者は、週休2日で午後11時から午前7時まで勤務に。

Eastman博士とMark Smith研究員は、
実験参加者の体内時計を正常に近づけるためこの研究を実施。
その結果、明るい光、暗いサングラス、強制的な睡眠時間が
夜勤者の集中力を高め、不調感を和らげるのに効果的であることを見出した。

Eastman博士は、「仕事場や休憩室に明るい場所を設置する」ことによって、
実際の夜勤者の気分が良くなり、意識も明晰になる可能性がある。
サングラスも重要で、サングラスは青色光の大半を遮る。
朝の青色光が、体内時計を実際の時刻に合わせて調節する働き。
屋外で青色光をあびると、体は朝であると認識する。
夜勤者は、勤務時間帯へ体内時計を適応させることができない。
我々は体内時計に夜を昼間、昼間を夜だと思わせている」。

被験者は、休日には午前3時に寝るよう指示。
これは、体内時計を段階的にリセットし、
夜に睡眠をとる正常な感覚を取り戻すため。
夜勤者は、窓越しに光が入る中でも目を瞑ることができると考えていても、
「真っ暗な」部屋で眠るべき。

この実験中、被験者群の部屋の窓は黒いプラスチック板で覆われた。
これらの措置により、「体内時計のリセット」に成功したかを確認するため、
被験者の唾液中の化学物質を測定した。

「夜勤者は、電話の線を抜き、家のベルを鳴らさないよう張り紙をし、
仕事の終りにあまり多くのコーヒーを飲まないこと。
アルコールは、寝付きを良くするが、効果は徐々に薄れ、やがて目が覚める。
早過ぎる目覚めは、最大の問題」。

夜勤者は、休日には遅い時間に起床し、正午前に起きない方がよい。
実験群の夜勤者は、長時間のコンピュータ課題で成績を上げることができたが、
対照群はできなかった。

『Sleep』に発表された同研究は、
夜勤者に効果的であった光療法、サングラス、厳密な睡眠スケジュールが
「概日周期の緩衝帯(compromise circadian phase position)」を作り、
休日に十分な夜間睡眠をとり、夜勤の効率と集中力を向上させる。

「この研究成果は、夜勤時の集中力を高め、昼間の睡眠を長くし、
夜働いて昼間に寝る、というスケジュールに体の生理反応を適応させなくてもよい」
「定期的に光と闇に暴露することで、生理的適応を図れば、
夜勤の効率を昼間のレベルに十分戻せる」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=84909

地域が支える学校(13)住民の授業診断 定着

(読売 12月18日)

コミュニティスクール指定第1号の小学校はどうなったか。

体育館の後ろ半分が大人で埋め尽くされた。
東京都足立区立五反野小学校の土曜参観には、
保護者や地域住民ら約590人が、子供たちの学習の様子を見ようと
学校を訪れた。在籍児童数を上回る数。

同小では2002年から、朝の15分間、音読や漢字ドリルなどで
基礎学力の向上を図る「パワーアップタイム」を設けている。
その成果を見せる論語や詩の音読、全校児童による合唱など、
元気いっぱいの発表が続いた。
この日の参観は、保護者や地域住民が、授業診断をする場にも。

04年11月、全国で最初にコミュニティスクールに指定された同小は、
その2年前から文部科学省の研究校として、
新しい学校運営のあり方を考えてきた。
その一環で、地域住民らが参画して学校運営の方針を決める
学校運営協議会を、私立学校のように最も権限の強い印象がある
学校理事会と呼んできた。

「学校で何をやっているかを広く見てもらう。
学校を理解してもらってこそ、地域住民は学校運営に力を貸してくれる」と
2代目理事長の鴨下甚治さん(69)。

研究校になった02年から続く「パワーアップタイム」は、
五反野小の象徴とも言える。
理事会が目指す学校像として、基礎学力の向上を望んだ結果、始まった。
03年には、理事会の意向も聞いた上で就任した校長が1年で交代。

後任の三原徹さん(60)は、通信教育大手のベネッセコーポレーション出身。
三原さんは4年間校長を務め、地域や保護者による授業診断を
定着させた上で、副校長として支えた土肥和久さん(49)に後を託した。

1年での校長交代は当時、東京の学校関係者に、
「五反野ショック」という言葉で語られた。
新しくできるコミュニティスクールは、校長を交代させることもできると解釈。

当時の校長と理事会には、基礎学力向上を優先するか、
総合的な学力の向上か、といった学力観の違いが見られたのは確か。
理事会は、02年の時点で民間出身校長を望んでいた。
人事権を持つ都教委が一時、小学校への民間出身校長起用を渋ったことが、
1年で校長が代わる遠因に。

現校長の土肥さんと理事会とは、三原さん同様、良好な関係が続いている。
学校理事会長名で4月に出した「保護者の方へのお願い」は、その真骨頂。

「教育は、学校のみで完結するものではない」として、
「礼儀やあいさつは、親が指導するのが基本」など家庭が守るべき
マナー、モラル、ルール6項目を示した。
この「お願い」に対して、9割の保護者から「確認書」を提出。
地域が学校を支える形が整いつつある。

◆五反野小の「マ(マナー)モ(モラル)ル(ルール)」を守る
〈1〉登校時間を守る
〈2〉忘れ物がないよう親がチェック
〈3〉礼儀やあいさつは親の指導が基本
〈4〉基礎学習定着の宿題は家庭でやる
〈5〉子どもの話だけを信じて学校に文句を言う前に状況判断をする
〈6〉PTA活動などに積極的に参加し、保護者としての責任を果たす
※表現は一部省略、変更。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081218-OYT8T00251.htm

環境配慮の都市づくりへ協力を…日本がスウェーデンに提案へ

(読売 12月12日)

ポーランド・ポズナニで開催中の気候変動枠組み条約第14回締約国会議
(COP14)に参加している斉藤環境相は、
温暖化対策の先進国・スウェーデンのカールグレン環境相と会談し、
環境に優しい都市づくりで協力関係を築くことを提案。

来年には、日本で両国の先進自治体の担当者や専門家を集めた
会議を開き、都市間交流を促して環境配慮型の都市づくりを進めたい考え。
事務レベルの折衝では、スウェーデン側も前向きな姿勢を見せている。

スウェーデンでは、首都ストックホルムが、電気自動車などの低公害車以外に
「渋滞税」をかける制度を導入。

太陽光や風力発電による地域冷暖房システムを整備し、
廃棄物焼却場の熱エネルギーも利用している
南部のマルメ市のような先進都市もある。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20081212-OYT1T00441.htm

2008年12月18日木曜日

学校保健統計調査:児童・生徒、肥満減る

(毎日新聞社 2008年12月12日)

肥満の児童・生徒の割合が減少に転じたことが、
文部科学省の08年度学校保健統計調査で分かった。

小学校高学年から高校の各学年で、肥満と判定された割合は
10%前後だったが、多くの学年で2年前の調査より1ポイント前後減。
文科省は、「規則正しい食生活が家庭に浸透したため」とみているが、
栄養状態の悪化などが背景にある可能性も「否定できない」としており、
より詳しい分析を進める。

調査は4~6月、幼稚園と小中高校の計7755校を抽出し、
約70万人の発育状態と約332万人の健康状態を調べた。

標準体重より2割以上重い肥満の生徒は、中3男子が10・0%で、
現在の方法で集計を始めた06年度より1・2ポイント減った。

▽高3女子8・6%(06年度比1・1ポイント減)
▽中3女子8・5%(0・7ポイント減)
▽小6男子11・2%(0・6ポイント減)--など各学年で減少。

05年度までは、医学的に算出した標準体重ではなく、
平均体重より2割以上重い場合を肥満と定義していたが、
肥満の割合は増加傾向が続いていた。

一方、視力1・0未満と0・3未満の幼稚園児と小中学生の割合が
いずれも、視力を調査対象に加えた79年度以降で最高となった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84873

革新創薬加速へバイオ戦略 遺伝子組み換え研究も推進

(共同通信社 2008年12月12日)

生命科学分野関連の閣僚や有識者でつくる
「BT(バイオテクノロジー)戦略推進官民会議」は、
新型万能細胞「iPS細胞」などを活用した革新的医薬品の速やかな開発など、
日本の今後5年程度のバイオテクノロジー強化策を掲げた指針
「ドリームBTジャパン」をまとめた。
2002年に策定された「BT戦略大綱」の更新版。

深刻化した食料、エネルギー問題などの解決策として
遺伝子組み換え作物研究の推進も盛り込んだ。
ただ「社会的受容が不可欠」として、そのための行動計画を今後、
作業部会で策定することになった。

官民会議座長の本庶佑・総合科学技術会議議員は、
「遺伝子組み換え技術への国民の理解を深めないと、
日本の科学技術や社会生活に悪影響が出かねない」

強化策は11項目。
研究基盤強化のための関連予算の拡充や、知的財産の専門家育成、
国民の健康志向の高まりに応える「高付加価値食品」の開発も挙げた。
食料と競合せず、効率的に生産できるバイオ燃料の技術開発なども進める。

官民会議は科学技術担当、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、
環境の各相と18人の有識者で構成する。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84883

地域が支える学校(12)遊びも学びも人材提供

(読売 12月17日)

多様な遊びや学びを、地域が用意する学校がある。

カーペット敷きの多目的室「にじいろひろば」で、
何人かの男児がベーゴマに夢中だった。
その1人に、「あの子は去年、コマのひもがなかなか巻けず、
泣きながらがんばって、できるようになった。今の子も、やる時はやるね」と
講師の鈴木光太郎さん(79)が感心。

東京都小平市立第四小学校で、地域住民らが、放課後や週末に
様々な遊びや学びの場を用意する「放課後子ども教室」の一つ。
インターネットや卓球教室、焼き芋づくりなども行われた。
「にじいろ」のメニューは月替わりで、紙飛行機、折り紙、百人一首など、
昔ながらの遊びが楽しめる。

こういった場が年間200日近く開講し、
予定は、学校のホームページで逐次、紹介。
ウェブでの情報発信も、ネット教室の講師がかかわっており、充実。

四小は、今年度からは、学校運営に地域住民らが参画する
コミュニティスクールに正式に指定。昨年度から研究校だった。
運営方針を話し合う学校経営協議会(法律では学校運営協議会)の会長は、
「子ども教室」の実行委員長でもある民生児童委員の下村咲子さん(60)。
「子ども教室」がすでに5年目を迎えるなど、以前から、
地域が学校に積極的にかかわってきた伝統がある。

同小では、地域の人材を学校とつなぐ、協議会とは別組織の
「コーディネート部会」が、学習面でも大きな役割を果たすようになってきた。
教員の代表3人、各クラスの保護者と、地域代表が2人。
その1人が下村さん。

例えば、総合的学習の時間で取り組む、学校近くの玉川上水の学習には、
企画段階から地域住民らがかかわるようになっている。
「どんな学校にしたいという地域の願いを、はっきりと伝えられるのが、
コミュニティスクールの利点です」

6年生が、約1週間後の地元のまつりに出店するバザーの準備をしていた。
提供してもらう商品を受け取るために、
地元の店などを回り、商品の値付けもした。
このバザーも、地域の学習としてコーディネーターが間に入っている。
「地域全体で大事にしてもらっていることがよくわかる」と
6年の学年主任、山崎一樹教諭(29)。

放課後の子供たちが過ごす場となる「放課後子ども教室」は、
文部科学省が推進。
学校運営協議会を支える組織となりそうな学校支援地域本部事業も、
同省の事業として今年度から始まっている。

「地域が教育を支える点では、バラバラに取り組むのではなく、
全部ひっくるめて考える必要がある」と
小平市で四小のような仕組みの整備をしてきた前教育長の坂井康宣さん。
従来の学校教育と社会教育の枠を超えた地域教育という
考え方が広まろうとしている。
地域教育を広げるには、それを支える人材の発掘と、
学校との橋渡し役の育成が欠かせない。

◆地域教育

東京都では、学校教育と社会教育の枠を超えて、
両者をつなげる新しい教育活動ととらえ、その推進のため、
都教育委員会に今年度から地域教育支援部も作っている。
都生涯学習審議会は今月、地域教育の担い手育成のための方策や
行政の役割について答申をまとめた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081217-OYT8T00224.htm

スポーツ21世紀:新しい波/286 武道の必修化/4

(毎日 12月13日)

千葉大教育学部付属中学では、以前から2年生全員が
男女とも柔道を履修。
2012年からは全国の中学(1、2年生)で武道が必修化。
その動きを先取りした取り組み。

柔道の授業は、年間13時間程度。
その1時間目の講義で、柔道の本質とは何かを教える。

テーマは、「嘉納治五郎の生涯」、「カラー柔道着導入の経緯」、
「一本を目指す精神」など。
指導する保健体育科の渡辺冬花教諭(40)は、
女子柔道の強豪・埼玉大の出身で、教員になってからも
ずっと柔道の魅力を伝えたいと思い続けてきた。

嘉納治五郎の生涯では、「精力善用」、「自他共栄」という
柔道の創始者が残した言葉を紹介。
精神と力を正しく用いれば、体が小さくても相手の力を利用して技を掛けられる。
力の強い者が偉いのではなく、弱い者も共に栄えるという思想。
カラー柔道着の導入では、テレビ映りを意識した国際柔道界のビジネス改革と、
抵抗した日本柔道界との考えの違いを説く。
一本を目指す精神では、自分が体得した最高の技を出し切る大切さを教える。

「柔道は、この100年で世界に急速に広まった。
でも、日本が大切にしてきた精神が失われた側面も。そんな話をします」

実技では、まず受け身を体験させ、投げた側にも「相手がけがをしないよう、
投げ終わっても引き手を離してはだめ」と指導。
渡辺教諭は大学時代、大事な大会を控えた練習中に左鎖骨を骨折。
つらい経験だったが、投げた相手も泣いていた。
その顔が今も忘れられない。

「受け身は、負け方の練習です。
そんなことを最初にする競技は他にない。
負けた側は自分を守り、勝った側は相手を思いやる。
ともに相手がいなくては、柔道はできない。それは社会そのものです

勝負を競う面白さだけでなく、武道に宿る精神性も教える。
競技化した世界の柔道と、人間教育も重視する日本の柔道。
渡辺教諭は「どうバランスを取るか、どの先生も悩むのでは」

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

2008年12月17日水曜日

地域が支える学校(11)校長が先頭に立とう

(読売 12月16日)

早大ラグビー部監督 中竹竜二さんに聞く

校長の力量が問われる時代だ」と、中竹竜二さんは見る。
「学校を支える地域の支援体制が整ってきた。
校長がリーダーシップを発揮しないと、支援する人は動かず、文句も出る。
校長のリーダーシップの有無が、はっきり見えてしまう

早稲田大学ラグビー部監督の中竹さんは、地域住民らが学校運営に
参画するコミュニティスクールの一つ、東京都杉並区立三谷小学校で、
学校の運営方針を話し合う学校運営協議会の会長。

「校長は、どんな学校にしていくかを明確に語れる必要がある。
自分とはどういう校長かを、一言できっぱりと表現できるくらいであってほしい」
「今の学校が抱える様々な課題を、1人では解決できない。
これからの学校経営には、先生たちに、リーダーを支える
フォロワーシップも必要です

ラグビー部の寮は、三谷小と目と鼻の先。
前校長が、清宮克幸前監督に「学校評議員」就任を要請したことが、
中竹さんと小学校をつなぐきっかけになった。
「お前、教育に興味があるだろう」と、清宮さんから
後輩の中竹さんにお鉢が回った。

当時は、大手政策研究機関の三菱総合研究所で、
文部科学省や教育委員会の依頼を受けた調査の仕事をしていたほか、
杉並区の新しいカリキュラム作りの支援にも携わっていた。

「学校評議員」は、個人的に学校長に意見を述べる立場。
学校評価にかかわる場合も多い。
しかし、評議員として自己紹介をする場で、「制度が意味をなしていない。
現場を知らない人が評価などできるわけがないし、
知らない人の意見を聞いてはダメだ」と20分以上もしゃべった。
研究所での企業の評価は、大がかりなものだ。
学校評価の軽さとの落差を痛感していた。
その直言ぶりが逆に、前校長の心をとらえた。

コミュニティスクール指定から4年目。
「地域が学校を支えることが、三谷小に限らず、当たり前になってきた。
だからこそ、学校運営協議会制度をしっかり押さえることが重要」

授業支援などの活動をするのが、協議会委員の役割ではない。
学校運営の基本方針や人事など重要事項に、意見を述べるのが本来の仕事。
「我々は実動部隊ではない。諮問機関だと思っている」

それを意識しながら、1年目は自ら汗を流した。
子供たちの挨拶プロジェクト、学校の図書の充実、ホームページ作りなどの
情報発信に、他の委員にも動いてもらった。

教員も巻き込んで一緒に活動をしてこそ、コミュニケーションも強まり、
互いの信頼も得られる。
最初から、教員の人事や評価に口出しをしようとしても無理」。
3年目に考え出したのは、ほめたたえる評価。
教員も、地域の人も、子供たちも、協議会として表彰する場を作ること。

しかし、「制度がなくても、地域の人が学校を支え、校長がリーダーシップを
発揮するようにならないとおかしい。
最終的には、学校運営協議会の積極的な解散が目標です」。

それは、現状の学校教育への危機感の裏返しの言葉に聞こえた。

◆なかたけ・りゅうじ
福岡県出身。2006年、三菱総合研究所を退職して、
早大ラグビー部監督に就任。2年目の昨シーズン、大学選手権を制した。35歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081216-OYT8T00217.htm

「男の生きがい」ストレスに勝つ?脳卒中の死亡率減

(朝日 2008年12月11日)

生きがいを感じて暮らしている男性は、精神的ストレスがあっても、
脳卒中で亡くなるリスクが大幅に低い。

秋田大が、県民を対象にした調査でこんな傾向が出た。
ストレスは、脳卒中などで亡くなるリスクを高めるといわれるが、
「生きがい効果」はそのリスクを上回るのかも知れない。
文部科学省がかかわる研究班調査の一環。

88年、秋田県大森町(現横手市)の40~74歳の住民を対象に、
健康状態をチェック。
同時に、「生きがいをもって生活しているか」、
「ストレスが多いと思うか」などと質問し、約1600人を03年まで追跡。
男女249人が亡くなった。

生きがいが「非常にある」、「ある」と答えた男性355人では、58人が死亡。
うち4人が脳卒中。
これに対し、「普通」、「はっきり言えない」と答えた男性477人、114人が死亡。
19人が脳卒中。

小泉恵医師(循環器内科)らが、年齢や血圧、喫煙歴などの影響を除いて
解析したところ、生きがいがある男性の死亡リスクは、
それ以外の男性より38%低かった。
脳卒中で亡くなるリスクは、72%も低い。
心臓病やがんによる死亡では差がなかった。

生きがいの有無とは別に、ストレスが多いと答えた人が2割ほどいたが、
ストレスの影響を考慮しても、死亡リスクを減らす効果があった。

生きがいの有無が、なぜ死亡率の差に影響するのか、
理由はわかっていない。
女性では、差がはっきりしなかった。

研究の中心だった本橋豊教授(公衆衛生学)は、
自殺率が全国でも高い秋田県で予防事業に携わっている。
「『生きがい』を通して、自殺を防ごうという取り組みは、
結果的に住民の健康水準全体を高めることにつながるかも知れない。
都市部でも、同じような傾向が出るか確かめたい」

http://www.asahi.com/science/update/1211/TKY200812110132.html

麺の材料に適したコメの新品種誕生

(サイエンスポータル 2008年12月11日)

国産のコメより、粘りが少ない新品種を育成することに、
農業・食品産業技術総合研究機構の中央農業総合研究センター
北陸研究センターが成功。

カロリーベースで40%と先進国中、著しく低い食料自給率を上げる一手段として、
米粉利用の拡大に期待が高まっている。
大きな問題点として、コシヒカリなど味のよい国産米は
麺にすると表面の粘りが強く麺離れが悪いという欠点。

粘りを強くしている原因は、国産米にアミロースがあまり含まれていない。
北陸研究センターは、国産品種の「キヌヒカリ」に
インド原産の在来種「Surjamukhi」の持つ高アミロース性を導入することで、
新品種「越のかおり」を育成

「越のかおり」は、タンパク含有率は約6%と「コシヒカリ」と
ほとんど変わらないが、アミロースをコシヒカリに比べ
ほぼ倍に近い33.1%含み、粘り気はぐっと落ちる。
2004年から06年にかけての栽培で、収量性は、
標準的な標肥区では「コシヒカリ」よりやや落ちるが、
施肥が多い場合では「コシヒカリ」並であることが確かめられた。

北陸研究センターと、株式会社自然芋そば、上越市、
えちご上越農業協同組合は、共同で「越のかおり」の製麺適性を検討し、
自然芋そば社から「越のかおり」を原料とする米麺の販売を開始。
「麺はコシが強く、切れにくく、コメ本来の味が活かされている」と
北陸研究センターは言っている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0812/0812111.html

モノかめば脳の働き活発に

(サイエンスポータル 2008年12月12日)

ものをかむと脳の働きが活発になることを、
自然科学研究機構・生理学研究所の研究チームが
脳波を使った実験で確認。

外国人スポーツ選手たちがプレー中、ガムをかむ行為に
合理的な理由があること裏付けた研究結果。

生理学研究所の柿木隆介教授、坂本貴和子研究員は、
P300という脳波反応を利用して、ものをかむことの効果を調べた。

P300は、何らかの刺激が与えられてから300ミリ秒(0.3秒)後に
脳波に出現する反応。
脳が活性化すると反応時間が短くなることが知られ、
臨床医学では認知症など病気の早期診断にも使われている。

健康な人に5分間、無味・無臭のチューインガムをかんでもらい、
直後に音刺激を用いてP300を測定、同時にボタン押しによる反応時間も測定。
この結果、反応時間とP300反応が出現するまでの時間が短くなり、
この運動を繰り返せば繰り返すほど、その効果は顕著。

一方、ものをかむ行為と比較するため、顎の運動はするが
実際にはものをかまない行為と顎とは関係ない指の運動(タッピング)を
したときにも同様な測定をしたが、いずれも反応はむしろ遅くなり、
P300反応出現の時間も遅くなった。
繰り返せば繰り返すほど、遅くなる傾向がはっきりした。

「メジャーリーガーが試合中にガムをかむことや、
車の運転中にガムかみを行うことによる、脳の覚醒効果の根拠が、
生理学的に証明された。
ただし、かむことで“頭が良くなる”という説の裏付けではない」

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0812/0812121.html

2008年12月16日火曜日

奮闘する葛巻 地域医療の危機 揺れる県立病院再編案/5止

(毎日新聞社 2008年12月8日)

「これまで通り、医師を派遣していただける」
葛巻町立国保葛巻病院の鳩岡修事務局長は、
出張先の盛岡市からホッとした表情で帰ってきた。

同病院は、常勤医2人と医師3人の診療応援を得て、78病床を切り盛り。
岩手医大から派遣されている医師が定年を迎え、引き続き診療応援を要請。

同病院は、県立病院のある自治体とは異なり、町自身が経営し、
医師確保にも汗を流さなくてはならない。
医師の診療応援を担当する県立中央病院地域医療支援部長の
望月泉副院長は、「葛巻町長からは幾度も依頼を受けたが、
(紫波地域診療センターのある)紫波町長は顔を見たこともない。
県にお任せだったのでは」と温度差。

葛巻病院は、01年度に不良債権額が約2億2700万円まで膨れ上がり、
5年間の病院事業経営健全化計画を策定。
▽母子センター休止
▽給食、ボイラーなどの外部委託
▽薬の院外処方
▽退職後の不補充による職員削減--などを実行し、
06年度までに不良債権を解消。
鳩岡事務局長は、「可能な限りコストは下げた。ほとんど策は残っていない」

事務の電子化を進め、複数の診療科を利用する患者のカルテを一本化。
延べ患者数を抑えることで、1日の平均患者数を基準より引き下げ、
交付税算定上の「不採算地区」に。
年間5000万円程度の地方交付税を積み増した。

このような努力もあり、収支は改善。
医業収益に対する人件費の割合は07年度70%に抑え、
自治体病院の目安6割に近づけた。
町の一般会計から繰り入れた後の純損益も、05年度からの3年間は
年638万-3720万円とわずかだが、黒字を計上。

しかし、病床稼働率は同じ3年間で77・5%から59・5%に減少。
一般病床の1人あたり平均在院日数も25・9日(06年)と、
県医療局の平均16・6日(同、療養病床含む)に比べ回転率が悪く、
経営上好ましい数字ではない。
「高度専門医療の病院から患者を紹介されることはあっても、
ここから紹介できるところはない」(鳩岡事務局長)。

効率が良くなくても、長期療養をする町内の老人にも
ベッドを用意しなくてはならない、という考え。
薬は、長期の投与分を処方。
処方するだけの患者や1人あたりの通院回数を増やした方が収入は伸びるが、
それでは医師の事務量が増え、医師確保につながらない。

一方、県医療局の新経営計画案。
07年度98・8%だった経常収支比率は、13年度に101・6%に、
病床稼働率は79・1%から84・1%に伸ばすなど、
経営改善に向けた数値目標が躍る。

無床化後の施設活用について、岩渕良昭・保健福祉部長は、
県議会の一般質問に「民間移管は可能だ」と答弁するなど、
早くも計画策定後の運営形態に注目が集まる。

鳩岡事務局長は、民間移管やサービスカットの前に公立でもできることはある。
町が他の事業と医療、どちらを優先するのか。
病院も町づくりの一つ。
町が行うことで自由度はあるし、町民の誇りにもなったんじゃないかな」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84580

犬も「公平」重んじる ただしご褒美もらえればOK

(CNN 12月13日)

犬も人間と同じように、公平を重んじるらしいという研究結果を、
ウィーン大学の研究チームが米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表。
研究チームは、「犬のストレスを避けるためには、
平等な扱いを心がけた方がいい」とアドバイス。

実験は、同大の研究所で飼育している犬のうち29頭を使い、
2頭を1組にして並ばせて「お手」をさせた。
1頭だけにご褒美の餌を与え、もう1頭には何も与えなかった場合、
餌をもらえなかった方は以後お手をしなくなり、
そっぽを向いてしまうことも。

2頭とも餌を与えた場合や、1頭のみで実験して餌を与えなかった場合は、
反応に変化はなかった。

同じような反応は霊長類でも報告されているが、
犬は霊長類と違ってご褒美の内容にはこだわらないらしいことも分かった。
もらえる餌がソーセージでもパンでも、犬の反応は変わらなかった。

霊長類の場合、ご褒美の内容が不公平だと判断すると、
餌を拒絶することもあるが、犬は拒否はしなかった。

犬にとって大切なのは、ご褒美をもらえるかどうかであって、
好みは二の次になるのだろうと推測。
不公平なご褒美は拒否するという代償は好まないようだと解説。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200812130001.html

乳酸菌研究発表会 免疫力アップなど高まる期待

(毎日新聞社 2008年12月11日)

人の腸内には、約500種に及ぶ細菌類がいる。
その中で「善玉菌」の代表格とされ、注目度の高い「乳酸菌」の
最新の研究成果などを報告する「乳酸菌研究発表会」(信和薬品・主催)。
乳酸菌は腸内での「働き」で脚光を集め、広く健康飲料などで使われているが、
発表会では「人が摂取する乳酸菌は生菌である必要はあるのか」など、
最先端の研究成果が披露。

◆特別講演「バイオジェニックスの時代へ」--東京大学名誉教授・光岡知足さん

私は、1997年に「バイオジェニックス」を提唱。
それまでは、腸内の細菌叢(フローラ=群生)によって
体に良い効果をもたらす「プロバイオティックス」と、
腸内の有用菌の増殖や活性化を促す「プレバイオティックス」という
考え方が一般的。
この二つが、細菌・微生物や食品関係の研究者に広く受け入れられていた。

バイオジェニックスは、「腸内細菌叢の助けを借りる」、「細菌叢を介して」
という発想は取らない。
整腸作用やコレステロール低下作用などの生体調節・防御、疾病予防・回復などに
「ダイレクトに働く」という着眼に立つもの。

1908年、免疫の先駆的な研究でノーベル生理学医学賞を受賞したのが
ロシア生まれのメチニコフ博士
彼は、ブルガリアに長寿者が多いという事実に着目、
乳酸菌をたっぷり含むヨーグルトの「長命効果」を示唆したことは有名。
乳酸菌・飲料の研究では、「生きた菌」こそが有用という考え方が根強く、
プロバイオティックスは「生きた細菌・微生物」に限定した方向で
研究・開発が進められている。

私はそうは考えなかった。
菌が生きているか死んでいるかは関係なく、さまざまな働きは
菌体成分そのものに由来する。
この点、実はメチニコフも「死んだ菌でもいい(働きがある)」と書き残している。

生後すぐの乳児の腸は無菌状態だが、1日過ぎると大腸菌や「善玉菌」の
代表・ビフィズス菌が出現し、ビフィズス菌が優勢になって腸内を安定。
ビフィズス菌には腐敗菌などを抑え、腸の活動を活発化させる働きがあり、
同時に、乳酸を作る力もあるので関心が集まった。

例えば、生きた乳酸菌を含む飲料と変わらない人気を持つ殺菌乳製品では、
乳酸菌は生きていない。
乳製品は必ずしも、乳酸菌の生死に制約されていないのが実情。
死んだ菌の方が、腸内の免疫機能を高める力が強いという見解も。

食品の機能には、生存のため栄養を補給すること、味覚を楽しむことなど。
しかし、90年代に入って、栄養や味覚以外の目的を掲げた
「機能性食品」が登場し、脚光を浴びることに。
この流れの中から、腸内のバランス改善を図るプロバイオティックスや、
腸内細菌叢の調節や強化を狙うプレバイオティックスに注目。

私たちのバイオジェニックスには、前二者にはない機能、働きが期待。
いま多くの研究が進められているが、目標になっているのは例えば、
腸内の免疫機能の強化、発がん性物質の吸着、生活習慣病の予防など。
現代生活はストレスが多く、ストレスはアドレナリンを多く出して、
交感神経を刺激する。
その結果、免疫力が弱まる。
バイオジェニックスは、こうした分野でも力を発揮するだろう。

機能がプラスに働くのに必要な菌の量はどれほどか、
安全性の問題はクリアできているか、なども大きな課題。

◆ナノ型ラブレ菌の可能性--
NPO法人日本サプリメント臨床研究会代表理事・長谷川秀夫さん

私たちは、植物性乳酸菌の一種、ラブレ菌の「ナノ化」(極小化)に成功。
その概要を報告し、併せてその意義について説明したい。

ラブレ菌は、財団法人・京都パストゥール研究所
(現ルイ・パストゥール医学研究センター)の故岸田綱太郎博士が、
京都の酸茎漬から分離・発見した乳酸菌。

体に侵入したウイルスが細胞を刺激すると「産生」され、
ウイルスの増殖を抑えるのが体内の「インターフェロン」で、
ラブレ菌には、インターフェロンαの「産生能」を高める働きがある。
リンパ球の免疫に携わる細胞の活動を活性化する働きがある。

ラブレ菌の粒子の大きさが8-10ミクロンを超えると、免疫力が弱まる。
体内のインターフェロンαも、このラブレ菌が小さいほど、
その産生能が高まっていくことが判明。

私たちは、ラブレ菌の表面がプラスに荷電していることに着目、
菌体を1ミクロン以下に小さくすることに成功。
ラブレ菌には、凝集する傾向があるので
「ナノ化」のための技術は容易ではなかったが、
培養・加工工程をある特定の条件に調整することで実現。

この結果、新型のラブレ菌は数ミクロンの従来菌に比べ、
インターフェロンαの産生能を5・6倍に高めることができた。

光岡、菅両博士が指摘されたように、このナノ型ラブレ菌の働きは、
生きていても死んでいても同程度であることも分かってきた。

私たちのラブレ菌を巡る研究は、乳酸菌加工品として結実してきたが、
今後は、より高機能のナノ型ラブレ菌を用いた機能性食品の追求の一方、
医学・薬学の世界も視野に入れた活動を心掛けていきたい。

◆複雑な腸内作用を追って--NPO法人日本サプリメント臨床研究会理事・菅辰彦さん

ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は、消化器内で出る胃酸や胆汁で死ぬ。
私が研究を続けてきた乳酸菌飲料は、特殊な、胃酸や胆汁では死なない
乳酸菌が基になっている。

乳酸菌は、食物を「腐敗」から「発酵」へと移行させる働きを持ち、
整腸効果もそこに由来。
腸内で増殖し、多くの量の有機酸を出すことで有害菌の増殖を抑え、
腸内を正常化して、腸管の動きを活発化させる、と言われてきた。

乳酸菌が腸内で生き続け、増殖するという証拠はいまだに報告されていない。
乳酸菌飲料を飲むことで、乳酸菌が増殖するのなら、
ある日1本を飲めば、後は自然に乳酸菌が増えるのを待てばいいことに。
実際、2-6歳の幼児に乳酸菌飲料を飲ませて便を調べると、
乳酸菌の70%は生きていなかった。

小腸を食物が通過するのは3時間ほどなので、
乳酸菌が増える時間的な余裕はない。
大腸内では、1000倍にも及ぶビフィズス菌などとの栄養の取り合いに
乳酸菌が勝てる余地はない。

(1)生きた乳酸菌を腸内に入れても増殖しない
(2)生菌にも死菌にも整腸効果がある
(3)生菌の中に混ざっている死菌が整腸効果に寄与している可能性が高い、
ことなどが推測。
……………………………………………………………………………
◇光岡知足さん(みつおか・ともたり)
1958年東大大学院修了。同農学部教授を経て名誉教授。
フラクトオリゴ糖の腸内フローラ改善効果を発表。
バイオジェニックス連絡協議会特別顧問。農学博士。
専攻は細菌分類学、微生物生態学。
2003年安藤百福賞大賞、07年メチニコフ賞。
78年刊行の「腸内細菌の話」(岩波新書)はロングセラー。
……………………………………………………………………………
◇長谷川秀夫さん(はせがわ・ひでお)
1988年京大大学院修了。バイオジェニックス連絡協議会議長、
明海大歯学部客員准教授、理化学研究所客員研究員などを兼務。薬学博士。
2001年和漢医薬学会奨励賞、03年韓国薬学大賞。
……………………………………………………………………………
◇菅辰彦さん(かん・たつひこ)
バイオジェニックス連絡協議会議員を兼務。農学博士。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84805

地域が支える学校(10)祖父母の力授業に深み

(読売 12月13日)

祖父母の団体が授業を支援する学校がある。

京都府京丹波町の町立丹波ひかり小学校で、2年生の生活科の授業には、
保護者とともにかっぽう着やエプロン姿の年配女性3人が加わった。
同小に通う孫がいる祖父母らで作るGTAのメンバー

子供たちが畑で自ら育てた大豆を石臼ですりつぶし、きな粉にする。
「ゆっくり回しや」、「指挟まれないようにな」。
3人が子供たちにやさしく声をかけて一緒に石臼を回すと、
「きな粉のにおいがする」と子供たちから歓声が上がった。
2人の孫を通わせる田端康江さん(65)は、
「何十年も前に少しやったことがある程度だったが、交流が楽しい」と笑顔。
大豆を使ったみそ造りでも、GTAの力を借りることに。

GTAの誕生は、同小が2006年、地域住民らが学校運営に参画する
コミュニティスクールに指定されたのがきっかけ。
以前から年1回の祖父母参観はあったが、
祖父母の持つ知恵や技能を授業に生かせないかと考えた。

全児童を通じて手紙で協力を呼びかけると、
「紙細工ができる」、「昔のおもちゃなら作れる」と応じる人が出てきた。
祖父母参観では、百人一首やわらび餅作りなど6分野で先生役に。
「元気をもらえたし、先生の苦労も分かった。できる範囲で協力していきたい」。
参観後に出た意見が、同年10月のGTA発足につながった。

メンバーは現在23人。
裁縫や農作業などで教員の支援をしたり、戦争体験を話したり。
学校が呼びかけると、メンバー同士や得意な知り合いに声をかけて仲間を集める。
「教員も知らない、幅広い知識や技を持っている。体
験者から学ぶことで深みが出る」と担当の堀下みゆき教諭(47)。

2000年に2校の統合でできた同小は、敷地内に地域住民が利用できる
「地域交流センター」を設けるなど、地域への開放を意識して作られた。
住宅地とは離れた高台の上にある上、不審者対策もあって、
開放が思うように進んでいなかった。

指定をきっかけに、子供や孫がいない地域住民の団体約30人による
「みのり会」も誕生。
組織を作ることで、活動が単発ではなく、継続的になっている。
朝の本の読み聞かせ活動などもあり、校内には
祖父母や地域住民の姿が毎日見られる。
授業で知り合った子供たちから「今度はいつ来る?」と、
町の中で声をかけられる場面も。

「活動を通じて、『学校のために何かやってやろう』という気持ちが
住民の中に出てきたと感じる。
前と比べて、地域と学校のつながりは深まっている」。
学校運営の方針を話し合う学校運営協議会の山崎博会長(75)は
目を細める。
法貴雅男校長(55)も、「より学校を理解してもらえる。
地域に見られることで、学校側も緊張感が生まれる」。
開かれた学校作りが着実に歩みを進めている。

◆GTA

「G」はグランドファザー・グランドマザーを意味し、PTAにならって名付けた。
孫が通っていれば、誰でも自由に参加できる。
鳥取県南部町立会見小でも、同様の名称で、
祖父母の団体が児童の学習を支援。
同小では、入学時に希望を聞いて入会してもらう。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081213-OYT8T00213.htm

夢や空想まで映像化?脳血流パターンから画像再現に成功

(読売 12月11日)

人が見た文字や図形を脳から読み取り、画像化する技術を、
国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)などが開発。
11日付の米科学誌ニューロンに発表。

将来、睡眠中の夢や、頭の中で空想した内容などを、
映像にできる可能性がある。
人が目で見たものは、網膜で電気信号に変換され、
大脳の視覚野で映像化される。

同研究所の神谷之康・神経情報学研究室長らは、
100個のマス目に白と黒のモザイク模様が並ぶ画像400枚を被験者に見せ、
脳の活動(血流の変化)を、機能的磁気共鳴画像(fMRI)という装置で計測。

そのデータをコンピューターで分析し、脳の血流変化のパターンから、
見たマス目が白だったか黒だったかを類推する技術を編み出した。

この方法を用いて、アルファベットや図形を見せた人の脳から読み取った
情報を基に、元の文字や図形を再現することに成功。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081211-OYT1T00018.htm

2008年12月15日月曜日

母親の愛に応える免疫系

(Science 12月5日)

母親の愛に応える免疫系
Immunity: Learning to Love Your Mother

妊娠している女性では、母体の細胞が胎児の体内に入るが、
胎児の免疫系は、後年獲得される体外からの異物を攻撃する
免疫系とは異なり、母体由来の細胞に対して攻撃せずに
免疫寛容を獲得することを学習していることが報告。

この免疫寛容は、少なくとも成人期初期まで持続することから、
臓器移植を必要とする患者が、母親に由来する組織に類似した
組織に対して免疫寛容を示す理由が説明できるかもしれない。

これまで、発達中の胎児の免疫系が異物に対して、
非常に高い免疫寛容を持っていることに気づいていた。
しかし、ヒト胎児の免疫系にそれ以上のことはほとんどわかっていない。
マウスを使った研究は、これまでいくつか行われてきたが、
マウスとヒトの免疫系の発達速度は異なるため、
両者の子宮内での異物に対する反応にはかなりの違いがある。

Jeff Moldらは、ヒトの組織を研究して、驚くほど多量の母体由来の細胞が
胎児のリンパ節内に侵入していることを報告。
そこでは、侵入した細胞が一群の制御性T細胞を誘導して
母体由来細胞に対する胎児の免疫反応を抑制。
マウスの免疫系とは対照的に、ヒト胎児のT細胞は、
母体由来抗原の刺激に反応してみごとに制御性T細胞になる傾向。

誕生後、これらの制御性T細胞は母体由来細胞に対する免疫反応を
抑制し続けることができると報告。

"Maternal Alloantigens Promote the Development of Tolerogenic Fetal Regulatory T Cells In Utero,"

by J.E. Mold; T.D Burt; M.O. Muench; K.P. Beckerman; M.P. Busch; T.H. Lee; D.F. Nixon; J.M. McCune

at University of California, San Fransico in San Francisco, CA; J. Michaelsson at Karolinska Institutet in Stockholm, Sweeden; K.P. Beckerman at Albert Einstein College of Medicine in Bronx, NY.

http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi#574

30年使用可能な人工関節開発へ ナカシマメディカルと阪大など16機関

(じほう 2008年12月8日)

現在の人工関節よりも耐用年数が長く、生体融合性に優れ、
患者1人1人の関節にフィットした「パーソナライズド人工関節」の
提供に向けて、産学連携の研究が動き出した。

革新的技術の開発を目指し、政府が今年度創設した
「先端医療開発特区」(スーパー特区)の1つに先月、
ナカシマメディカルと大阪大、岡山大、京都大、名古屋大、
産業技術総合研究所(産総研)など16機関42人で取り組む
人工関節のテーマが採択。

2012年度までに、基盤技術の開発、生産技術、臨床研究などを行い、
30年以上の使用に耐え得る人工関節を世に送り出したい考え。

65歳以上高齢者の約5人に1人が、運動器障害を持つといわれる中で、
人工関節の市場は増大傾向に。
関節の悪い部分を削って取り換える治療法で用いられる
人工関節の一般的な耐用年数は約15年。

患者の多くは60歳前後で導入するため、平均寿命が延びた昨今、
より長期にわたって人工関節を使用するとすれば、
導入時期を遅らせるか、入れ替え手術を実施しなければならなくなる。
国内整形外科インプラント市場の約9割は、海外メーカー製品が独占。
シェアは10年前から大きく変わらず、輸入に頼っている。

こうした状況を、日本発の技術で解決しようという取り組みが加速。
ナカシマメディカル(ナカシマプロペラから11月に分社化)と
阪大・岡大・京大・名大・産総研など16機関のチームは共同で、
13年前から「人工関節の機能高度化研究会」を結成。
個々の患者に融合する人工関節を作成し、
耐用年数を現在の15年から30年以上に延ばす研究に取り組んできた。

しかし、研究成果の実用化をめぐり制度面の障害が存在。
基盤技術の治験や承認申請に、多くの時間がかかってしまう点。
実際、重点テーマの1つである人工関節の摩耗を防ぐ技術は、
申請から10年がたつが製造承認待ちの状態で、
昨年、一足先に欧米企業が米国市場で製品化。

政府が、再生医療医薬品・医療機器の研究開発を促進するため、
今年度創設したスーパー特区の公募がスタート。
スーパー特区は、硬直的な研究資金の弾力的な運用を認め、
厚生労働省など規制当局と開発段階から意見交換や相談を行うことで、
革新的技術の開発に弾みをつけることを目指す。
研究期間は、12年度までの5年間。

同研究会の代表者であるナカシマメディカル常務取締役の藏本孝一氏は、
スーパー特区に応募した動機について、
「優先審査といい、治験段階からの相談制度といい、
われわれの研究会が求めているものにぴったりと思った」
同研究会が中心となり9月に応募し、11月18日に採択されたことが発表。

◆5つの基盤技術で耐用年数30年以上に

人工関節には、3つの問題点が存在していると藏本氏は指摘。
<1>人工関節製品の形状の中から、患者の関節形状により近いものを
選んで使用するため、人工関節がフィットしない患者が存在
<2>骨と人工関節がなじまない
<3>人工関節の軟骨部分であるポリエチレンが徐々にすり減る-の3つ。

問題を解決するため、同チームは5つの基盤技術をもとに、
生体融合性に優れた人工関節の開発を行っている。

その1つである「ビタミンE添加UHMWPE」は、
人工関節で避けることのできなかったポリエチレンの摩耗を、
ビタミンEの抗酸化作用を利用して防ぐ技術。
京都大の富田直秀氏とナカシマメディカルで開発。

チタン合金「Ti-15Zr-4Nb-4Ta」(チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル)は、
産総研の岡崎義光氏らを中心に開発している新技術。
従来の人工関節のチタン合金中には、生体への悪影響が懸念される
アルミニウムやバナジウムが含まれていたが、これを取り除こうとしている。

力学的な知見から、強力な骨が形成されるように人工関節表面の
穴の方向を制御する「異方性孔構造」技術(大阪大・中野貴由氏ら)
骨の形成速度を速めるための人工関節表面構造の処理技術
「GRAPE Technology」(岡山大・尾坂明義氏ら)も。

「Bioactive Bone Cement」と呼ばれる特殊なセメント(名古屋大・大槻主税氏ら)
の開発も行っている。
従来のセメントでは、骨と人工関節部分が5-10年でゆるんでしまっていたが、
これを強力に接着させる新技術。

◆患者にフィットした人工関節の作成技術も開発

プロジェクトは、厚生労働省などと開発段階で相談し、
優先審査制度も利用することによって、5つの基盤技術の確認申請から治験、
製造承認を早期に取得したい考え。

次の段階として、基盤技術をもとに人工関節の生産ラインの開発、
生物学的安全性の評価、機械的特性評価、臨床評価を行って、
生産システムの運用の承認をとるまで5年間のロードマップを作成。

大阪大の村瀬剛らのグループは、患者の関節形状や動きなども加味し、
患者にフィットする人工関節の作成技術を開発。
09年度中をめどに、CTなど医用画像を利用した
「パーソナライズド人工関節」作成技術の開発を目指す。

10年度以降は、開発された人工関節を効率よく製造し、
販売する体制づくりをナカシマメディカルが検討。
人工関節は、千葉大・岡山大・大阪大などの施設で臨床評価される予定。

取締役の土居憲司氏は、「時間もコストもかかるが、
患者さんのことを考えた場合、パーソナライズド人工関節の開発に
取り組むメリットは大きい」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84534

医師配置に格差 地域医療の危機 揺れる県立病院再編案/4

(毎日新聞社 2008年12月7日)

県立久慈病院に勤める看護師、小野寺るり子さんは今秋、
腹痛で運ばれてきた20歳代の女性患者を思い出すと、今でも肝を冷やす。
「女性が助かったのは、たまたまだったんです」

小野寺さんが当直の夜、腹痛を訴える女性が運ばれてきた。
子宮外妊娠が判明。
産科医を呼び出し、手術が始まった。麻酔をするのは、当直の外科医。

久慈病院は06年、1人しかいない常勤の麻酔科医が異動して不在に。
県医療局労働組合久慈支部によると、
外科医ら麻酔を行うことができる医師が代役を務め、
全身麻酔を要する手術は行わないようにしている。

子宮外妊娠の女性が手術した夜、もし麻酔のできる医師がいなければ、
救命救急センターがある別の基幹病院に搬送しなければならない可能性も。
最寄りの県立二戸病院に行くにしても、
救急車の手配や手術の準備などで2時間近く必要。
「搬送したら、間に合わなかったかもしれない」。

同支部長で、主任看護師の韮山弘子さんは、
「たった1人の常勤医を、年中無休でこき使っていたようなもの」
当時30歳代だった麻酔科医は、通常の手術に加え、
救急患者が搬送されれば呼び出される。

県立釜石病院にも、定期的に診療応援。
週1回、岩手医大に麻酔科医を派遣してもらったが、
抜本的な解決につながらなかった。

県防災消防年報や久慈病院の調査によると、
久慈地方(久慈市、洋野町、野田村、普代村)の救急出動は、
05年1457件から07年1594件と増える傾向だが、
久慈病院の1日平均救急取り扱い件数は、
05年度37・5件から07年度35・6件に減少。

同支部は、「麻酔科医不在の久慈病院を敬遠し、
重症者は盛岡市や青森県八戸市の病院に搬送しているのかもしれない」

麻酔科医などの専門医の不足は、久慈病院に限った問題ではない。
国は83年以降、「将来の医師過剰」を理由に医学部の定員を削減。
04年現在、人口10万人あたりの医師数は200人で、
経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均310人を大きく下回る。
医療が高度になり、診療科が細分化したことも拍車をかけた。

医療法で定められている必要医師数の充足率(08年)で見ると、
県医療局全体の平均は134・0%。
県央・県南部の基幹病院は205・8-141・0%と上回っているのに対し、
県北・沿岸部は98・4~126・9%と下回り、内陸部との格差が際立つ。

こうした現状に県医療局は、新経営計画で、
「各病院の役割・機能を踏まえ、医師の配置を設定する」とうたうが、
県立中央病院の望月泉副院長は、
「計画通り無床化しても、医師は勤務が厳しい基幹病院に戻らず、
(個人)開業するのでは」と首をかしげる。

県医療局の根子忠美・経営改革監は、
「来年度の人員配置は未定。
新経営計画の策定後、来年4月に向けて詰めていく」
新経営計画を進めると、地域の救急、専門医療を担うとされる
基幹病院の役割は果たせるのか、肝心の医師の配置は不透明なまま。
……………………………………………………………………………
◇医療法による医師充足率(研修医除く 県医療局まとめ)
病院名   充足率(%)
中央     205.8
花巻厚生  147.1
北上     163.0
胆沢     141.0
磐井     188.0
大船渡    119.5
釜石      98.4
宮古     126.9
久慈     124.6
二戸     111.6
医療局平均 134.0

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84515

地域が支える学校(9)班で助け合い 協同学習

(読売 12月12日)

学校再生につながる授業がある。

岡山市立岡輝中学校の理科室で、2年生が男女4人のグループごとに、
水を電気分解する実験。
ある班が、水素に火を近づけた時、水かさが増したことに気づくと、
吉岡真二郎教諭(42)が全員に話しかけた。

「水が増えたと言う班があるけど、みんな見てた?」。
別の班から「確かに増えた」と声が上がる。
「どうしてだろう。みんな考えてみて」。
その言葉を合図に、生徒たちがグループで意見交換する。

1人の女子生徒が発表のために立ち上がると、
教諭は生徒と生徒の間にかがんで姿を隠す。
意見は、教室の全員に伝えてほしいからだ。
吉岡教諭は、「先生は、生徒の意見を別の生徒に橋渡しする役。
生徒が人とのつながりを感じる授業が理想

岡輝中が昨年度から始めた協同学習の授業。
グループ単位で助け合いながら課題をこなす。
生徒も発言しやすいし、友人に教えることで教える本人の理解が深まる。
森谷正孝校長(59)は、生徒が自然に「教えて」と口にできる
「やわらかい人間関係」を、作ることが大切だと考えている。

岡山市には、複数の学校による地域協働学校という独自の制度がある。
地域住民らが学校運営に参画するコミュニティスクールは通常、
個々に指定するが、岡輝中では、小学校2校と幼稚園・保育園3園も
加わった協議会で、学校運営の方針を話し合う。

協同学習の実施は、その協議会の場で森谷校長が提案。
委員からは、「学習面で学校を変えようという話は今までなかった。
地域も応援するので、ぜひ成功させてほしい」と賛同を得た。

地域全体での活動にこだわる背景には、「荒れた学校」の再生がある。
かつて、同中では授業について行けない生徒が机に伏せたり、
教室を出て行ったりする姿があった。
不登校の生徒は、1割を超えていた。
一人親家庭の割合が高いなど、生活環境が厳しい生徒も少なくない。
子供たちの学力保証には、幼少期から、学校、家庭、地域が
連携を密にする体制が不可欠。

導入から1年半。
同中で、授業中に教室を出て行く生徒はいなくなった。
「生徒の居場所が教室の中に出来てきた」と森谷校長は手応えを感じている。
今年度からは、小学校でも協同学習が始まった。

教員の多くが、「生徒の表情が変わった」と口をそろえる。
「友達の考え方は参考になるし、伝えるために一生懸命理解しようとする」と
2年生の女子生徒(13)が協同学習を評価。

同中では地域の人に学校を見てもらうため、
1人の教員が年2回は公開授業を実施。
保護者には、「入試に対応できるのか」という声もあるが、
今後は、保護者が参加する協同学習も企画、学習成果をまとめ、
保護者に説明することも始める。

地域が関心を持ち、地域と共に歩む学校の姿が形になってきた。

◆地域協働学校

中学校区単位で、学校の運営方針を話し合う学校運営協議会を作る
岡山市独自の組織。
協議会の委員には、町内会の役員や民生委員、学校園長らが入る。
岡輝中学校区をモデルに2005年度から始め、
現在は市内37中学校のうち、10中学校で実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081212-OYT8T00195.htm

日本は世界を向いているか

(サイエンスポータル 2008年12月9日)

米科学誌「サイエンス」11月21号の論説欄に、
「世界に向けた日本へ」という黒川清・政策研究大学院大学教授の
記事が載っている。

黒川氏は、「今日のグローバル競争においては、型破りな才能を持つ、
進取の気性に富んだ人材が求められ」、
さらに「いずれの国にとっても、科学、技術、イノベーションへの投資は、
国の経済成長にとって極めて重要」であることを強調。

人材、リーダーの育成に、大学が重要な役割を担うことを指摘し、
政府が科学教育・研究に対する支援を行っても、
「将来を担うべき学生の可能性を十分に伸ばしきれていない」

日本の大学の現状に厳しい目を向けている。
「世界の最も有望な学生を引き寄せるばかりでなく、
トップレベルの人材を教授に、さらには学部長、学長、総長などの
ポストに招聘している」海外の主要大学の動きを挙げて、
大学が世界に門戸を開くことの重要性に言及、
トップに外部から人を招くことが依然として例外的でしかない
日本の大学に警鐘を鳴らした。

「日本とアフリカの大学・研究機関の教員、学生が参加する
二国間共同研究プロジェクト」と、
「主要大学30校を対象に、全学生の少なくとも1割を今後5年以内に
海外へ交換留学させることを目標とする交流プログラム」が
2009年度予算案に盛り込まれていることに期待を表明し、
これらが承認されないと日本が
「150年前、ペリー提督が日本の扉を世界に開いた以前の時代に
戻るのではないかと心配だ」と結んでいる。

黒川氏は、日本学術会議会長、内閣特別顧問を歴任し、
この間、日本が国際化を急ぐ必要性を一貫して主張。

今回の論説の中でも、日本の国立大学約80校中、
女性の学長がお茶の水女子大学だけにしかいないことや、
海外へ留学する学生の数が米国だけを見ても、
ここ数年で46,000人から35,000人に急減しているといったデータを示し、
日本社会にはびこる「島国精神に満ちた、階層的タテ構造の
男性優位な社会システム」を批判。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0812/0812091.html

2008年12月14日日曜日

新型インフル瞬時に検出 診断3-5分、重症度も 空港検疫に威力発揮 滋賀の大学とメーカー

(共同通信社 2008年12月9日)

猛毒の新型インフルエンザウイルスなどを瞬時に検出し、
診断時間を従来の20分から3-5分へと大幅に短縮できる検査法を、
長浜バイオ大などの共同研究チームが研究開発し、
バイオ機器メーカーと実用化に乗り出した。

ウイルス表面の抗体に結合し、光を発する特殊なタンパク質を
「標識」として利用。
判定時間が短く、重症度も分かるため、
海外からの旅行客が多数入国する成田空港など
国際空港の検疫チェックでは特に威力を発揮できる。
1年後の実用化を目指す。

厚生労働省結核感染症課は、
「素早くできる高感度の検査法の開発は歓迎だ。
専門的な検証は必要だが、新しい手法で注目できる」

現在の検査法は、試薬を塗った棒にのどの粘液を付け、
試薬が反応して変色、ウイルスの有無を確認できるまで20分ほどかかる。

研究チームによると、新開発の検査法では、レーザー光線を当てると
瞬時に蛍光を発するタンパク質を、ウイルス表面の抗体に結合する形に。
これを入れた溶液に、のどの粘液を混ぜてレーザーを照射すると、
感染していればウイルスに付着したタンパク質が発光し、
3-5分以内にウイルスの有無を診断できる。
ウイルスの数も測定できるため、重症度も分かる。
既に従来型のインフルエンザで臨床試験を実施、効果を確認。

同大の長谷川慎講師は、「ウイルスの抗体があれば、
『標識』は容易に作ることができるし、従来の検査法より感度は100倍。
病原体の種類ごとに『標識』を作り出せば、
はしかや食中毒、ピロリ菌でも応用できる」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84626

朝バナナ・ダイエット 過剰な健康志向、市場振り回す 追跡2008

(毎日新聞社 2008年12月7日)

この秋、バナナが全国の店頭から消えた。
スーパーの開店と同時に買い占める客が殺到、
昼前には売り切れる店が相次いだ。
騒ぎは1カ月で収束したが、
納豆やココア、寒天などに減量効果があるとして品薄になったのも最近のこと。
「日本人は、ダイエットに固執して食べ物をえり好みする傾向が強い」。

◇メディアがブーム加速

今回のバナナ騒ぎを振り返ってみよう。
10月初旬、名古屋市「松坂屋ストア」。
開店と同時に、10人以上の女性客がバナナ売り場へと走り出した。
普段は1房しか買わない女性も、3-4房を買い物カゴへと放り込む。
昼までには、売り場からすべてのバナナが消え去り、
果物売り場にぽっかりと穴が開いた。
こんな光景が、1カ月以上も続いた。

同店の林雅道店長は、「毎日食べていたというお客様から、
『買いたいのに買えない。迷惑だ』という苦情も。
納豆ダイエットの時よりすごかった」

ブームの下地は、インターネットにあった。
国内最大級のソーシャルネットワーキングサービス「mixi」に、
朝食を水とバナナだけにする朝バナナダイエットを語り合う
コミュニティが登場したのは、06年7月のこと。

この方法でのダイエット本が出版され、ミクシィでの参加者も増加。
派生したコミュニティは、今でも2万5000人が登録、
朝バナナの実践と、ダイエットの進行を報告し合っている。
朝バナナの関連本4冊は、11月上旬までに計90万部を売り上げる
ベストセラーにもなっている。

9月、テレビが店頭からバナナが消えるほどのブームに押し上げた。
日本テレビの人気情報番組で6-8月に3回、取り上げられたのを機に、
ネット外でも認知度がアップ。

9月中旬には、TBS系情報番組でタレントの体験談として、
「約1カ月半の朝バナナダイエットで、7キロの減量に成功した」と紹介。
スーパーに客が殺到、1、2日でたちまちバナナ不足に。

バナナ輸入量で国内首位のドールは、
テレビで朝バナナダイエットが紹介された6月以降、ブームを予想して、
輸入量を前年比約3割増やして対応。
バナナなど農産物は、年間生産量が限られているため、
日本の輸入量を増やすため、アジア各国から少しずつ融通してもらう必要。
それでも、各小売店で売り切れが続出、市場価格も押し上げた。

愛知県知多市のスーパー「タツミ」では、通常380円で売られていた
約15本のバナナが付いた房が、一時は700円近くまで上がった。
それでも飛ぶように売れ、1週間前から予約を取って対応。
1房に4-5本のバナナが付いた商品は、仕入れることもできなくなった。
同店で働く女性は、「あれほどあったバナナが、こんなに売れるなんてねえ」。

バナナがいつも通りに買えるようになったのは、10月下旬。
ブームは収束したが、値段は一部で高止まりしたまま。
名古屋市消費流通課によると、同市中央卸売市場における11月下旬の
バナナ1キロ当たりの卸売価格は、昨年同期より35円高い174円。
9月のテレビ放送後、一時は200円近くにまで急上昇。
平年なら120-130円台に値が落ちる夏場も、
今年はブームのハシリで150円台後半-160円台を推移。

★さまざまな食品登場

日本では毎年、ダイエット食品ブームが起きていると言っても過言ではない。
その歴史は、30年以上前にさかのぼる。

1975年前後に流行した紅茶キノコ
旧ソ連の家庭で伝統的に飲まれていた飲料、
簡単に台所で栽培できることから大ブレーク。
効能として、▽血庄が下がった、▽胃腸が丈夫になった、
▽肝機能が元に戻った、▽自然にやせた--などがあるともてはやされたが、
医学的には根拠がない。

フィリピンのトロピカルフルーツだった「ナタデココ」が、
ダイエット食品としてもてはやされたのは93年。
翌94年には岐阜県を震源とする「野菜スープ健康法」がブレーク。

バナナダイエットは、85年にもブームになり、今年で2回目。
同様にココア(96年、07年)も2回のブーム。
インターネットでは、過去に流行した粉ミルク(84年)、ゆで卵(88年)、
黒酢(00年)などが依然としてダイエット食品として紹介、
テレビ番組などをきっかけにブームが再燃する可能性がある。

★日本の特殊性指摘

ブームによって、消費者が一斉に特定食品を買い集める構造をどう見るか?
群馬大の高橋久仁子教授(栄養学)は、
「特に最近のブームは、過剰な食料供給と健康志向を背景に、
消費者がテレビの情報に飛びついている」

07年に流行した納豆ダイエットでは、メタボリック症候群への関心が
高まったことで、中年男性までもがスーパーに走った。
情報番組で、バナナを3回も取り上げた日本テレビ総合広報部は、
毎日新聞の取材に書面で、「健康情報については、視聴者の関心も高く、
健康維持と予防を目的として、テーマを選び制作。
『バナナダイエット』に関しても、その観点から選んだテーマ」などと回答。

◆自信のなさ?

高橋教授は、「欧米では、総合的に体にいい健康食品がブームになるのに対し、
日本ではダイエット一辺倒なブームが発生しやすい」と特殊性を指摘。
日本人は、欧米人ほど肥満は少ないことは、統計的に裏付け。

世界保健機構の05年の統計では、
日本で肥満とされるBMIが25以上の女性の割合が、
アメリカ(72・6%)やイギリス(61・9%)では6割を超え、
日本(18・1%)は極端に少ない。
それでも、ダイエットに対し、特に女性が強いこだわりをみせている。

宮城大の樋口貞三教授(食品産業政策)は、
「美の追究というより、日本女性の自信のなさがブームにつながっているのでは」

◆都合よく解釈

キャベツダイエットを提唱したことがある
吉田俊秀・京都市立病院糖尿病代謝内科部長は、
「情報が独り歩きして、キャベツだけ食べればやせる、と誤解されるのは迷惑」

吉田部長が提唱した正しいキャベツダイエットは、
食前にキャベツを6分の1玉食べることで、胃に満腹感を与え、
全体の食事量を減らす。
キャベツに飽きたら、キュウリやトマトを加える。
繊維質で、ビタミンCが体によく、満腹感も得られるものをとり、
食べ過ぎを防ぐ手法で、そもそもは肥満の人のために考えられた。

吉田部長は、「ダイエットの方法は、太った原因や、減らす必要がある
体重によっても違い、百人百様だ。
特定の食品を食べ続けるだけで、やせるはずがない」

大事なのは、「正しい生活と、バランスの取れた食事や適度な運動」
取材を通じて実感したのは、こんな当たり前のことこそ、
健康的なダイエットにつながるということ。

◇効果不明だが規則正しい生活で体調改善

効果があるのかどうかを実際に試してみよう、ということで、
健康診断で、メタボリックシンドローム
(内臓脂肪症候群、腹囲男性85センチ、女性90センチ以上)に迫る勢いの
木村文彦記者(37)が、脱メタボに向けて、朝バナナダイエットに取り組んだ。

初日のウエストは82センチ、体重70キロ、体脂肪率は25・1%。
起床し、コップに常温の水とバナナ1本を用意。
一口ぐらいのバナナを、よくかんでから飲み込み、水を飲んだ。
食後は、意外と満腹感があり、「これならいけるかも」と思ったが、
空腹感が襲ってきて、ヨーグルトを食べて耐えた。約1時間運動もした。
夕食は、午後8時までに済まそうと心掛けたが難しく、10時までに済ませた。

3、4日経過し、朝1本のバナナとコップ1杯の水も慣れた。
お通じがよくなった気がしてきた。
2週間後、ウエストは83センチ、体重は68・4キロ、体脂肪率は23・8%。
ダイエット効果は不明だが、朝食を取ることで昼、夕食の量が減った気がする。
規則正しい生活をすれば、体調もよくなるということを実感。

◆バナナと日本人

日本に紹介されたのは16世紀、ポルトガルの宣教師が織田信長に
献上したのが最初と言われる。
1903年、台湾から正式に輸入が始まった。
「風邪を引いた時だけ食べられる」と言われる高級滋養食品だったが、
1963年に輸入が自由化され、エクアドル産やフィリピン産の流入が急増。
総務省の家計調査では、04年に1世帯当たりの果物の年間購入数量が
初めてミカンを抜いて1位になった。
今では「日本人が一番口にする果物」に。
……………………………………………………………………………
◇ダイエット効果がある、として流行した主な食品
   (年代はブームのピーク時)
1975年 紅茶キノコ
  85年 バナナ
  88年 ゆで卵
  92年 リンゴ
  99年 唐辛子
  00年 キノコ、おから、黒酢
  02年 低インシュリン食品、ビール酵母
  03年 アミノ酸
  04年 にがり
  05年 寒天
  06年 キャベツ、杜仲茶
  07年 納豆、ココア
  08年 朝バナナ
 (03年以降、コンニャク、豆腐、豆乳、バナナ酢などがはやった)

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84518