2008年12月16日火曜日

奮闘する葛巻 地域医療の危機 揺れる県立病院再編案/5止

(毎日新聞社 2008年12月8日)

「これまで通り、医師を派遣していただける」
葛巻町立国保葛巻病院の鳩岡修事務局長は、
出張先の盛岡市からホッとした表情で帰ってきた。

同病院は、常勤医2人と医師3人の診療応援を得て、78病床を切り盛り。
岩手医大から派遣されている医師が定年を迎え、引き続き診療応援を要請。

同病院は、県立病院のある自治体とは異なり、町自身が経営し、
医師確保にも汗を流さなくてはならない。
医師の診療応援を担当する県立中央病院地域医療支援部長の
望月泉副院長は、「葛巻町長からは幾度も依頼を受けたが、
(紫波地域診療センターのある)紫波町長は顔を見たこともない。
県にお任せだったのでは」と温度差。

葛巻病院は、01年度に不良債権額が約2億2700万円まで膨れ上がり、
5年間の病院事業経営健全化計画を策定。
▽母子センター休止
▽給食、ボイラーなどの外部委託
▽薬の院外処方
▽退職後の不補充による職員削減--などを実行し、
06年度までに不良債権を解消。
鳩岡事務局長は、「可能な限りコストは下げた。ほとんど策は残っていない」

事務の電子化を進め、複数の診療科を利用する患者のカルテを一本化。
延べ患者数を抑えることで、1日の平均患者数を基準より引き下げ、
交付税算定上の「不採算地区」に。
年間5000万円程度の地方交付税を積み増した。

このような努力もあり、収支は改善。
医業収益に対する人件費の割合は07年度70%に抑え、
自治体病院の目安6割に近づけた。
町の一般会計から繰り入れた後の純損益も、05年度からの3年間は
年638万-3720万円とわずかだが、黒字を計上。

しかし、病床稼働率は同じ3年間で77・5%から59・5%に減少。
一般病床の1人あたり平均在院日数も25・9日(06年)と、
県医療局の平均16・6日(同、療養病床含む)に比べ回転率が悪く、
経営上好ましい数字ではない。
「高度専門医療の病院から患者を紹介されることはあっても、
ここから紹介できるところはない」(鳩岡事務局長)。

効率が良くなくても、長期療養をする町内の老人にも
ベッドを用意しなくてはならない、という考え。
薬は、長期の投与分を処方。
処方するだけの患者や1人あたりの通院回数を増やした方が収入は伸びるが、
それでは医師の事務量が増え、医師確保につながらない。

一方、県医療局の新経営計画案。
07年度98・8%だった経常収支比率は、13年度に101・6%に、
病床稼働率は79・1%から84・1%に伸ばすなど、
経営改善に向けた数値目標が躍る。

無床化後の施設活用について、岩渕良昭・保健福祉部長は、
県議会の一般質問に「民間移管は可能だ」と答弁するなど、
早くも計画策定後の運営形態に注目が集まる。

鳩岡事務局長は、民間移管やサービスカットの前に公立でもできることはある。
町が他の事業と医療、どちらを優先するのか。
病院も町づくりの一つ。
町が行うことで自由度はあるし、町民の誇りにもなったんじゃないかな」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84580

0 件のコメント: