2008年12月15日月曜日

地域が支える学校(9)班で助け合い 協同学習

(読売 12月12日)

学校再生につながる授業がある。

岡山市立岡輝中学校の理科室で、2年生が男女4人のグループごとに、
水を電気分解する実験。
ある班が、水素に火を近づけた時、水かさが増したことに気づくと、
吉岡真二郎教諭(42)が全員に話しかけた。

「水が増えたと言う班があるけど、みんな見てた?」。
別の班から「確かに増えた」と声が上がる。
「どうしてだろう。みんな考えてみて」。
その言葉を合図に、生徒たちがグループで意見交換する。

1人の女子生徒が発表のために立ち上がると、
教諭は生徒と生徒の間にかがんで姿を隠す。
意見は、教室の全員に伝えてほしいからだ。
吉岡教諭は、「先生は、生徒の意見を別の生徒に橋渡しする役。
生徒が人とのつながりを感じる授業が理想

岡輝中が昨年度から始めた協同学習の授業。
グループ単位で助け合いながら課題をこなす。
生徒も発言しやすいし、友人に教えることで教える本人の理解が深まる。
森谷正孝校長(59)は、生徒が自然に「教えて」と口にできる
「やわらかい人間関係」を、作ることが大切だと考えている。

岡山市には、複数の学校による地域協働学校という独自の制度がある。
地域住民らが学校運営に参画するコミュニティスクールは通常、
個々に指定するが、岡輝中では、小学校2校と幼稚園・保育園3園も
加わった協議会で、学校運営の方針を話し合う。

協同学習の実施は、その協議会の場で森谷校長が提案。
委員からは、「学習面で学校を変えようという話は今までなかった。
地域も応援するので、ぜひ成功させてほしい」と賛同を得た。

地域全体での活動にこだわる背景には、「荒れた学校」の再生がある。
かつて、同中では授業について行けない生徒が机に伏せたり、
教室を出て行ったりする姿があった。
不登校の生徒は、1割を超えていた。
一人親家庭の割合が高いなど、生活環境が厳しい生徒も少なくない。
子供たちの学力保証には、幼少期から、学校、家庭、地域が
連携を密にする体制が不可欠。

導入から1年半。
同中で、授業中に教室を出て行く生徒はいなくなった。
「生徒の居場所が教室の中に出来てきた」と森谷校長は手応えを感じている。
今年度からは、小学校でも協同学習が始まった。

教員の多くが、「生徒の表情が変わった」と口をそろえる。
「友達の考え方は参考になるし、伝えるために一生懸命理解しようとする」と
2年生の女子生徒(13)が協同学習を評価。

同中では地域の人に学校を見てもらうため、
1人の教員が年2回は公開授業を実施。
保護者には、「入試に対応できるのか」という声もあるが、
今後は、保護者が参加する協同学習も企画、学習成果をまとめ、
保護者に説明することも始める。

地域が関心を持ち、地域と共に歩む学校の姿が形になってきた。

◆地域協働学校

中学校区単位で、学校の運営方針を話し合う学校運営協議会を作る
岡山市独自の組織。
協議会の委員には、町内会の役員や民生委員、学校園長らが入る。
岡輝中学校区をモデルに2005年度から始め、
現在は市内37中学校のうち、10中学校で実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081212-OYT8T00195.htm

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