2008年12月18日木曜日

スポーツ21世紀:新しい波/286 武道の必修化/4

(毎日 12月13日)

千葉大教育学部付属中学では、以前から2年生全員が
男女とも柔道を履修。
2012年からは全国の中学(1、2年生)で武道が必修化。
その動きを先取りした取り組み。

柔道の授業は、年間13時間程度。
その1時間目の講義で、柔道の本質とは何かを教える。

テーマは、「嘉納治五郎の生涯」、「カラー柔道着導入の経緯」、
「一本を目指す精神」など。
指導する保健体育科の渡辺冬花教諭(40)は、
女子柔道の強豪・埼玉大の出身で、教員になってからも
ずっと柔道の魅力を伝えたいと思い続けてきた。

嘉納治五郎の生涯では、「精力善用」、「自他共栄」という
柔道の創始者が残した言葉を紹介。
精神と力を正しく用いれば、体が小さくても相手の力を利用して技を掛けられる。
力の強い者が偉いのではなく、弱い者も共に栄えるという思想。
カラー柔道着の導入では、テレビ映りを意識した国際柔道界のビジネス改革と、
抵抗した日本柔道界との考えの違いを説く。
一本を目指す精神では、自分が体得した最高の技を出し切る大切さを教える。

「柔道は、この100年で世界に急速に広まった。
でも、日本が大切にしてきた精神が失われた側面も。そんな話をします」

実技では、まず受け身を体験させ、投げた側にも「相手がけがをしないよう、
投げ終わっても引き手を離してはだめ」と指導。
渡辺教諭は大学時代、大事な大会を控えた練習中に左鎖骨を骨折。
つらい経験だったが、投げた相手も泣いていた。
その顔が今も忘れられない。

「受け身は、負け方の練習です。
そんなことを最初にする競技は他にない。
負けた側は自分を守り、勝った側は相手を思いやる。
ともに相手がいなくては、柔道はできない。それは社会そのものです

勝負を競う面白さだけでなく、武道に宿る精神性も教える。
競技化した世界の柔道と、人間教育も重視する日本の柔道。
渡辺教諭は「どうバランスを取るか、どの先生も悩むのでは」

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

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