(毎日新聞社 2008年12月6日)
県立中央病院のレジデント(後期研修医)の桜庭伸悟さん(30)は、
タクシーに乗り込むなり、眠りに落ちた。
医師が不足している国保葛巻病院(葛巻町)で、
当直を務める診療応援に向かう途中。
中央病院で、診療応援の割り振りを担当する地域医療支援部長の
望月泉副院長は、「居酒屋タクシーならぬ、『毛布』タクシーです」
桜庭さんは、研修医になって5年目。
医師5人のチームで、20-25人程度の入院患者に対応。
平日は、毎朝7時に出勤。
午前8-9時は回診し、看護師らに指示。
同9時半には手術が始まり、終わるのは午後2時ごろ。
2件目の手術があれば、病床が消灯する午後9時を過ぎることも。
カルテ作成や標本整理などを済ませると、帰宅は翌日午前0時近い。
週1回は、中央病院で当直。
月1、2回の診療応援にも行く。
1回あたり、当直と翌日午前の外来診察をこなすのが一般的。
「基幹病院ではないので、救急患者も軽症がほとんど。
中央病院の当直に比べれば楽ですよ」と語るが、
午後中央病院に戻れば、手術が待っている。
診療応援があっても、受け持つ入院患者のカルテ作成など
日常の業務量は変わらない。
達増拓也知事は、県立病院などの無床化を柱にした新経営計画案について、
「医師が辞め、その分残る医師の負担が増している。
病院を集約して、勤務医の負担を減らすのが目的」
しかし、実際は全国平均を下回るとは言え、
人口10万人あたりの医師数は増えている。
県全体では、86年の144・0人(全国157・3人)から
06年の186・8人(同217・5人)に増加。
県立病院も、常勤医は減っているが、97年545人から07年613人増。
研修医の確保に努めた結果だ。
全国自治体病院協議会県支部長の菅野千治・県立宮古病院長は、
「内陸と沿岸部の病院間で、医師の負担が偏っている」と問題点を指摘。
県立の中核・基幹病院に運ばれた救急患者は、07年度延べ13万3047人。
医師1人あたり、県全体の318・3人に対し、
最多の大船渡病院は562・8人。
在籍医師や重症患者が多い中央病院の185・9人は別にしても、
2番目の花巻厚生病院230・7人の約2・4倍。
他の県立病院や市町村立の医療機関に派遣される診療応援も負担に。
沿岸部など常勤医が不足する病院・地域診療センターへの派遣で、
県立病院全体では、06年度5108件から07年度5729件増。
1人しかいない九戸地域診療センターの常勤医は昨年度以降、
体調不良のため入院患者の診療に専念。
外来や夜間・休日の当直は、基幹病院や岩手医大から派遣を求めた。
07年度の二戸病院の診療応援は、前年度比35・1%増の831件増。
中央病院の望月副院長は、県の言う無床診療所化による
中核・基幹病院の医師負担軽減について、
「次々に来る診療応援の依頼を断り続けているのが現状。
仮に無床化しても、業務量は変わらないでしょう」と否定的。
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◇中核・基幹病院の診療応援回数
06年度 07年度
中央 2233 2238
大船渡 265 413
釜石 152 301
花巻
厚生 116 131
宮古 365 256
胆沢 326 577
磐井 682 681
久慈 84 102
北上 103 79
二戸 615 831
計 4941 5609
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84493
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