(毎日新聞社 2008年12月16日)
インフルエンザが流行する季節は、肺炎も多発。
肺炎が原因で亡くなる人はがん、心疾患、脳血管疾患に次ぎ、4番目に多い。
肺炎で死亡する人の9割以上は65歳以上。
高齢者をかかえる家族は、肺炎にならない予防策を取ることが大切。
◎耐性菌出現で注目
肺炎を起こしている主な原因菌は、緑膿菌や肺炎球菌など。
緑膿菌は、院内感染も起こす。
肺炎球菌は、鼻の奥にすむ「常在菌」で、体の免疫力が低下すると
発熱やせき、たんなどを伴う肺炎になり、死亡する場合も。
インフルエンザに感染していると、
肺炎球菌が気管支などに侵入しやすくなり、症状はより重くなる。
肺炎球菌による肺炎の治療では、ペニシリン系の抗生物質を使うが、
最近は薬が効きにくい耐性菌が現れてきた。
注目されているのが、ワクチン接種。
毒性をなくした肺炎球菌の一部を注射し、体に抗体をつくらせて重症化を防ぐ。
日本では、88年に承認。
米国では65歳以上の約6割が接種しているが、日本では5%程度と低い。
ワクチン接種した人はしない人に比べ、死亡率は約7割も下がる。
複十字病院の工藤翔二院長は、
「65歳以上の高齢者は、ワクチン接種をした方がよい」。
インフルエンザや肺炎治療に詳しい松本慶蔵・長崎大名誉教授は、
「ワクチン接種は、インフルエンザになったときの重症化を抑える効果もある」
肺炎球菌ワクチンの効果は、1回の接種で5年程度持続。
米国では2回の接種が認められているが、
日本では安全性や有効性を裏付けるデータが少ないとして、
厚生労働省は1回しか認めていない。
工藤さんは、「接種して5年以上たったら、2回目の接種をした方がより効果的」
国に2回目の接種の必要性を訴えている。
◎欧米では小児用も
肺炎球菌は、肺炎だけでなく、中耳炎や髄膜炎などの原因に。
免疫力の弱い4~5歳以下では、血液に入った肺炎球菌が脳や脊髄を
覆う髄膜に侵入して炎症を起こす髄膜炎の原因にも。
日本神経感染症学会によると、日本では年間約1000人の子どもが
髄膜炎にかかっていると推定。
欧米では、子ども専用ワクチンが認められている。
2歳未満の専用ワクチンを開発した米製薬企業「ワイス」は昨年9月、
厚労省に使用申請したが、まだ承認されていない。
普段から、うがいや運動、日光浴などで体の免疫を強くしておくことが必要。
◎自治体が助成の動き
ここ数年、全国の自治体が住民に接種を促す動き。
スイカの産地で知られる長野県波田町(人口約1万5000人)は、
04年から05年の冬、インフルエンザと肺炎を併発した高齢者が急増し、
町の病院に収容できないほどの事態に。
06年6月から、75歳以上を対象にワクチン接種への助成を始めた。
通常の接種料金は6000円だが、2000円を補助し、自己負担は4000円。
半分近い高齢者が接種を受けた。
その結果、06年6月以前は、全死亡者のうち肺炎死亡が11-17%、
助成後の07年は約6%、今年は約4%と、肺炎死亡率は大幅に減った。
清水幹夫・波田総合病院救急総合診療科長は、
「肺炎で入院すると、1カ月間の入院費用は1人あたり約86万円もかかる。
ワクチン接種で高齢者の入院患者は大きく減った」と経済的効果。
全国のワクチン接種の平均的な費用は、8000円前後。
東京都渋谷区のように、75歳以上は全額補助の例も。
万有製薬は、治療法やワクチン接種の病院紹介などを解説する
「肺炎球菌感染症コールセンター」(月~金曜9-17時、0120・66・8910)
を来年3月末まで開設。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85024
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