2008年12月15日月曜日

母親の愛に応える免疫系

(Science 12月5日)

母親の愛に応える免疫系
Immunity: Learning to Love Your Mother

妊娠している女性では、母体の細胞が胎児の体内に入るが、
胎児の免疫系は、後年獲得される体外からの異物を攻撃する
免疫系とは異なり、母体由来の細胞に対して攻撃せずに
免疫寛容を獲得することを学習していることが報告。

この免疫寛容は、少なくとも成人期初期まで持続することから、
臓器移植を必要とする患者が、母親に由来する組織に類似した
組織に対して免疫寛容を示す理由が説明できるかもしれない。

これまで、発達中の胎児の免疫系が異物に対して、
非常に高い免疫寛容を持っていることに気づいていた。
しかし、ヒト胎児の免疫系にそれ以上のことはほとんどわかっていない。
マウスを使った研究は、これまでいくつか行われてきたが、
マウスとヒトの免疫系の発達速度は異なるため、
両者の子宮内での異物に対する反応にはかなりの違いがある。

Jeff Moldらは、ヒトの組織を研究して、驚くほど多量の母体由来の細胞が
胎児のリンパ節内に侵入していることを報告。
そこでは、侵入した細胞が一群の制御性T細胞を誘導して
母体由来細胞に対する胎児の免疫反応を抑制。
マウスの免疫系とは対照的に、ヒト胎児のT細胞は、
母体由来抗原の刺激に反応してみごとに制御性T細胞になる傾向。

誕生後、これらの制御性T細胞は母体由来細胞に対する免疫反応を
抑制し続けることができると報告。

"Maternal Alloantigens Promote the Development of Tolerogenic Fetal Regulatory T Cells In Utero,"

by J.E. Mold; T.D Burt; M.O. Muench; K.P. Beckerman; M.P. Busch; T.H. Lee; D.F. Nixon; J.M. McCune

at University of California, San Fransico in San Francisco, CA; J. Michaelsson at Karolinska Institutet in Stockholm, Sweeden; K.P. Beckerman at Albert Einstein College of Medicine in Bronx, NY.

http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi#574

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