2010年2月13日土曜日

健康食品との付き合い方:/1 不足栄養素、補う目的で

(毎日 2月9日)

スーパー、薬局、コンビニエンスストアにあふれる
健康食品やサプリメント(栄養補助食品)。
健康志向の高まりで、今や1兆円市場に成長し、
現代人の生活に欠かせなくなってきた。

一方で、種類が増えすぎて何がいいのか迷ったり、
取り方を誤り逆に健康を害してしまう人も。
知っておきたい付き合い方を、4回にわたり紹介。

ビタミンやミネラルといえば、良い栄養素の代表格といったイメージ。
緑黄野菜に多く含まれるベータカロテンやビタミンEは、
細胞の損傷を防ぐとされる抗酸化作用を持つため、
がんの予防を期待して長期間摂取する人も多い。
どれほど効果があるのだろう?

津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長によると、
1980年代以降、ベータカロテンやビタミンA、C、E、
ミネラルのセレンなどを長期間摂取して、
がんの死亡率などが減るかについて、数多くの臨床試験。

衝撃的だったのは、90年代半ばに米国やフィンランドなどで
実施された喫煙者への調査。
ベータカロテンやビタミンEを約5~10年間摂取している群の方が、
全く摂取していない群よりも、肺がんの死亡率が高かった。

その後、ビタミンEなどを長期間摂取した場合の臨床試験が
世界の医学雑誌に70以上公表。
総合的にみると、ベータカロテン、ビタミンA、Eの長期的な補給は
死亡のリスクを上げ、ビタミンCとセレンは上げも下げもしない。

世界の調査結果などを紹介した、
「なぜ、『がん』になるのか?その予防学教えます。」(西村書店)
著した津金さんは、「抗酸化栄養素は、慢性的な栄養不足や
特定の栄養素が欠乏しているケースでは必要だが、
がん予防のために服用するメリットはほとんどない
がん予防に有効で安全なサプリメントは、いまだに見つかっていない。

国によって食生活が異なることから、
必要なサプリメントが違ってくることも知っておきたい。

最近人気のミネラル「セレン」。
人の健康に必須の元素で、ビタミンEと同様に抗酸化作用。
欠乏すると、動脈硬化や精子の減少など。
厚生労働省は、健康維持に必要な目安の1日あたり推奨摂取量を、
成人男性で30ug、女性で25ugと定めている。

セレンは海藻類、卵、カツオやシラス干しなどの
魚、鶏肉などに多く含まれる。
これらをよく食べる日本人は、平均的に1日100ug以上を摂取し、
推奨量を十分に取れている。
海藻類の摂取量が少ないスウェーデン、英国などの
西欧では不足しがち。

セレンを取り過ぎると、疲労、吐き気、呼吸不全などの健康被害。
米食品医薬品局(FDA)は、セレンを多く含むサプリメントを
取っていた23人が脱毛、下痢、関節痛、
筋肉のけいれんなどを起こしたと公表。
梅垣敬三・国立健康・栄養研究所情報センター長は、
「既にセレンを十分に取っている人が、サプリメントとして摂取すると、
過剰摂取になる恐れがある」

サプリメントは、健康に良いものだからと、
つい多めに摂取しがちだが、過剰摂取は禁物。
さまざまなミネラルが配合されたマルチミネラル製品は、
各成分の量に注意して選びたい。

東京都健康安全研究センターが、市販されている
ミネラル補給サプリメントを調べたところ、
クロムを含む30製品のうち19製品で、1日目安摂取量のクロムが
国の1日推奨量(30~49歳女性)を超えていた。
クロムは、糖や脂質の代謝に大切な元素だが、
長期にわたり摂取すると、腎臓障害などが起きる恐れ。

植松洋子・同センター食品化学部副参事研究員は、
「マルチミネラル製品は、配合されているミネラルが
厚労省の推奨量に必ずしも沿ってはいない。
業者は、それぞれの成分量が推奨量の何割に相当するかを
分かりやすく表示してほしい」と、
消費者が過剰摂取しないような表示を求める。

ビタミンやミネラルは体に良い。
たくさん取れば、健康になれるというものではない。
「誰も知らないサプリメントの真実」(朝日新聞出版)を著した
高田明和・浜松医科大名誉教授は、
「高齢者などが不足しがちな栄養素を補うという意味では、
サプリメントは有益。
ビタミンEのようなものを、がんや老化などを防ぐ目的で
長期間取っても、効果はほとんど期待できない。
そうしたことを知ったうえで、活用することが大事」

http://mainichi.jp/life/health/archive/news/2010/02/20100209ddm013100198000c.html

B型、AB型女性は貧血になりにくい 「A」「O」より21%少なく 東大と理研

(2010年2月8日 毎日新聞社)

B型とAB型の女性は、A型とO型の女性に比べて
貧血になりにくい--。

東京大と理化学研究所のチームが実施した、
約1万5000人の遺伝子解析で、こんな体質の違いが明らかに。

肝機能の状態を示すγGTPや痛風につながる尿酸など、
健康診断でおなじみの検査値を左右する体質の違いにかかわる
46の遺伝子型も特定。
8日、科学誌ネイチャー・ジェネティクス(電子版)に掲載。

生活習慣病へのかかりやすさや薬の効き目には、個人差がある。
30億塩基対からなるヒトのDNAには、関連遺伝子の塩基配列の
一部が入れ替わったSNPと呼ばれる場所が、
1000万カ所あるとされ、個人差を生んでいる。

理研ゲノム医科学研究センターの鎌谷直之・副センター長らは、
高性能計算機を使い、10種類の病気の患者1万4700人の
遺伝子データを調べて解析、46のSNPがγGTPや尿酸のほか、
赤血球、白血球、血小板など代表的な血液検査項目の値に
影響することを新たに突き止めた。

赤血球のデータと血液型の関係を見てみると、
B型とAB型の女性は、A型とO型の女性に比べ、
貧血の患者数が21%少なかった。

B型かAB型になる遺伝子上にSNPがある人は、
血色素量(Hb、ヘモグロビン)が増え、貧血を減らすと考えられた。

チームの松田浩一・東京大医科学研究所准教授は、
「健康診断では、各項目に標準値があるが、
本来は遺伝的な個性を考慮して、個々人の標準値を決めるべきで、
それが今回裏付けられた」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/2/8/115672/

2010年2月12日金曜日

仕事に役立つロジカルシンキング(4) 問題解決への手順

(日経 1月27日)

今回から4回、問題解決を行う際のポイントについて。
ビジネスシーンは、問題解決の連続としてとらえられる。
売り上げが目標に達しない、顧客からクレームを受ける、
プロジェクトが進まない——。

これらの問題を解決していくのが、私たちの仕事の大部分。
目に見える課題に直面していなかったとしても、
私たちは現状をよりよくするための方策を考えている。

さらに売り上げを拡大するにはどうすればよいのか、
顧客満足をさらに高めたい、
プロジェクトをより効果的に進めたい、といったこと。
これらも一種の問題解決。

心がけたいのは、いきなり答えを考えようとするのではなく、
段階を踏んで解決策を導こうとする姿勢。

問題解決は、次の3つの段階に。
まず、解決すべき問題を明確にする段階
何に取り組むべきなのかを具体的に示す。

次に、問題を分析する段階。
なぜこうなったのかを掘り下げ、問題の構造をつかんでいく。

最後に、解決策を立案。
段階を踏むことによるメリットは2つ。
ひとつは、事前に問題の構造を分析するため、
本質的な解決策に迫れる点。
いきなり解決策を考えてしまうと、対症療法にとどまってしまいがち。

もうひとつは、おかしいと感じたら前の段階に立ち戻れる点。
すぐに修正できる。
段階を踏まずに解決策を出してしまうと、
成果が得られなかった場合、ゼロからやり直さなければならない。

最初の「解決すべき問題を明確にする」段階。
ここでは、問題は何かをとらえることが重要。

私たちは、「問題は何か」と問われると、
目についた悪い状況を思い浮かべがち。
自分の周囲で起きている問題は何か考えてみる。

「思うように仕事がはかどらない」、「報告が遅い」、
「必要な情報が共有されない」、「部下が思うように動かない」。
こうした状況のどれもが問題だと感じてしまう。

このようなとらえ方をしてしまうと、問題の本質を見失ってしまう。
どれから対応すればよいか分からなくなり、
結局、目についた順に場当たり的に対処することに。

ロジカルシンキングでは、
問題を「あるべき姿と現状とのギャップ」と定義。

悪そうな状況でも、あるべき姿と大きなギャップがなければ、
それは問題とは言えず、逆に一見悪くなさそうな状況でも、
あるべき姿と大きなギャップがあれば問題。

先ほど挙げたような状況において、あるべき姿を
「生産的に業務をこなしている」としていれば、
そのための情報や人員のスキル不足が問題に。

あるべき姿は、単に現状の好ましい状態を指すだけではない。
将来目指す姿と設定することも。

「5年後にシェアナンバーワン達成」をあるべき姿とすると、
それに達するために欠けているものを問題として設定。

あるべき姿の設定次第で、問題のとらえ方が変わる。
ここが問題の把握で重要なポイント。
問題は誰かから与えられるものではなく、
自分で見つけ出すもの。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz100126.html

トクヤマの中原茂明会長 「セメント、国内需要減少の突破口は?」

(日経 1月27日)

セメントの国内需要低迷に、歯止めがかからない。
ピーク時、8000万トンあった内需も、2010年度には半減の
4000万トンになる可能性すら現実味を帯びつつある。
今後の見通しと打開策について、
トクヤマの中原茂明会長に聞いた。

——セメント協会の統計では、09年11月時点で、
国内販売量が30カ月連続で前年を下回った。

「一言でまとめるなら、『弱り目にたたり目』。
ピーク時から右肩下がりに。
民主党政権の方針で、公共投資も前年割れは確実に。
住宅、工場建設の民間需要も大きな望みがない。
世界では、新興国での需要拡大が続くが、
国内では『衰退期』に入ったと言っても過言ではない」

——どこまで減少するのか?

「欧米の指標が参考に。
1人当たりのセメント消費量に人口を掛けた数字で考えると、
1人あたり300~400kg。
社会インフラ整備が整った成熟社会では、この水準が続く。
この計算では、日本も4000万トンあたりでおさまるかも」

——需要低迷をどう打開するのか?

需要の開拓を進めなければ、先は見えない。
例えば、道路舗装。
日本では大半がアスファルト、米国では9割がコンクリートを使用。
コンクリートは、狭くて混雑する日本の道路では
舗装に時間がかかると敬遠、一度敷設すると維持がしやすく、
滑りがいいので、車の燃費向上にも役立つ効果」

「高度成長期に建設したビルや橋げたなど、社会インフラの
老朽化に対する建築物の維持補修などへの対策も重要。
生産の過剰設備が多いのは、並の解決策ではないが、
セメント生産が日本から消えて無くなる訳ではない」

——この数年は大きな再編がない。

大きな理由は、産業廃棄物をセメントの原燃料に
投入することが可能になったこと。
1トンのセメントを生産するのに、400kg超の産業廃棄物を
主に有償で受け入れている。
その引き取り価格が高いほど、セメントの生産コストの
引き下げにつながってきた。
化学メーカーも、ソーダ灰など副産物をセメント原料に
投入することが可能で、各社はしのいでこられた」

セメントのJIS規格を満たす品質を確保するには、
産業廃棄物の投入も限界点に達しつつある。
セメント減産で供給過剰が続けば、安売り合戦の生存競争が
始まることにつながりかねず、危機感を持っている」

——どう対応する?

「1つのアイデアだが、セメントメーカー複数社で、
産業廃棄物をまとめて処理する新会社を作るというのは。
生産設備の過剰は、各社で減らす努力を続ける一方、
自社だけで産業廃棄物を丸抱えすることはしなくなる。
化学メーカーのソーダ灰の有効活用も、可能になる」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100126.html

2010年2月11日木曜日

骨から脂肪へ路線変更 細胞作製に新手法 再生医療で利用も、京都大

(2010年2月1日 共同通信社)

幹細胞が、骨の細胞へ成長している途中で、
成長を妨げる遺伝子を導入し、
骨ではなく脂肪の細胞にする実験に成功したと、
田畑泰彦・京都大教授(生体組織工学)らが明らかに。

再生医療には、新型万能細胞「iPS細胞」などの利用が期待、
田畑教授らの方法は、治療に使うなど目的の細胞を作る
新たな方法となる可能性がある。

遺伝子の"運び屋"には、効率は良いが、毒性や免疫反応が
懸念されるウイルスではなく、細胞が普段栄養として取り込む
糖を利用し、比較的安全性が高い方法。

田畑教授らは、ラット骨髄から「間葉系幹細胞」を採取して実験。
幹細胞は、「TAZ」というタンパク質の影響を受け、
脂肪になるのが抑制され、骨になるよう促されやすい。

TAZを作る遺伝子の働きを妨げるため、
「RNA干渉」という方法を利用。

幹細胞に、「siRNA」遺伝子を導入すると、
細胞内でTAZの合成が約1週間、阻害。
約2週間後、脂肪細胞に特有の酵素が検出され、
細胞の中に脂肪の塊ができているのを確認。
siRNAは、細胞に取り込まれやすいよう改良した
糖類に載せて導入。

田畑教授によると、人間の体内の間葉系幹細胞は、
骨や脂肪のほか、筋肉、軟骨などになる能力があるが、
骨髄から取った幹細胞は骨になりやすいといった傾向。

田畑教授は、「路線変更をさせる方法を応用すると、
取りやすい場所にある幹細胞から、目的の細胞を効率よく
作ることができる可能性がある

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/2/1/115285/

仕事に役立つロジカルシンキング(3) MECEで「モレなくダブリなく」把握

(日経 1月19日)

ロジカルシンキングの基本的な思考技術の1つ、
MECEとは、Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive

「あるものの重なりをなくし、全体としてモレのない集合体にする」、
「モレなく、かつダブりのない」状態を意味。

会社の社員を、MECEに分けてみる。
性別や入社年度別などの分け方が思い浮かぶ。
このように分けると、MECEを実現できる。

こうした考え方は、問題解決や説得など幅広い場面で効果を発揮。
前回紹介した「枠組み」という手法は、考えようとしていることの全体を、
MECEに分けたもの。
モレやダブりがあるようでは、考えの全体像を把握したとはいえない。

問題解決の場面でも考えてみる。
不良在庫が多いという問題を解決したい時、
どんな不良在庫が多いか調べないと、効果的な解決策に至らない。
調べる時、モレがあったら、重要なポイントを見落とす恐れ。

逆にダブりがあったら、効率よく不良在庫を調べられない。
MECEという考え方を活用していけば、
問題を効果的・効率的に把握できる。

説得でも同様。
相手の知りたいことが分からない、つまりモレのある状態で
説得しようとしても、相手がその内容に納得することはない。
内容がダブっているような説明も、説得力に欠ける。
ダブった部分に注意が引き寄せられ、
相手が誤った理解をしてしまう恐れがある。

MECEは、問題解決や説得を行っていく上で基礎となる考え方。
MECEを実現する際のポイントとして、
考えられる要素をくりぬいていくのではなく、
一定の観点で全体を切っていく点。

くりぬきながら分けようとすると、モレが発生したりダブりが生じたり。
ある観点で切っていけば、分け方が的確であれば、
モレやダブりが生じることはない。

アパレルメーカーの売り上げを、
MECEに分ける場面で考えてみる。
「インナー」、「アウター」、「ニット」、「アクセサリー」など、
思いついた要素でくりぬいていくと、どうなるか。

「ボトムスに入るものがない」(モレがある)、
「ニット製のアウターはどこに入るのか」(ダブりがある)など、
モレやダブりが生じる可能性。

これを「1000円未満」、「1000~5000円」、「5000円超」と
商品価格帯という一定の観点で切るように分ければ、
モレやダブりは生じない。

MECEに分けるといっても、様々な方法が。
アパレルメーカーの売り上げについて、顧客の性別や年代別、
商品の価格帯別、購入時間帯別など、
MECEに分ける観点を挙げれば切りがない。

重要なのは、どの観点で分けるとよいのかといった
正解を探すことではなく、こうした様々な観点をもって見ていく。
何となく状況を見たり、目についたものだけ重点的に
分析するのではなく、多様な観点でMECEに分け、
客観的に状況をとらえていく姿勢が問題の本質をつかんだり、
説得のポイントをクリアにしたりすることにつながる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz100119.html

2010年2月10日水曜日

「女心に不況なし」も今は昔?

(日経 2010-01-30)

女心に不況なし……。
化粧品業界で長年いわれてきた「定説」だが、
今回の消費低迷局面では、これが崩れ去ろうとしている。

「景気が悪くなっても、女性はスッピンには戻れない」
(大手化粧品メーカー首脳)というのが定説の根拠。
スッピンやむなしとする女性は希有だろうが、
消費者の厳しい選別眼は化粧品の購買行動にも及んでいる。

「高価格帯(5000円超)と中価格帯(2000~5000円)の
化粧品は、前年実績割れが続いていたが、
低価格帯(2000円以下)も前年を割り始めた」。
花王の尾崎元規社長は、化粧品市場の最近の動向を説明。

中・高価格帯の商品が振るわないのは、
消費者が低価格品にシフトしたためで、
2008年リーマン・ショック以降の傾向。

消費者の受け皿となった低価格品まで落ち込み始めたのは、
「最後まできちんと使い切るなど、消費者が節約志向を
一段と強めている」(尾崎社長)。

クリームや口紅を、指先でかき集めながら化粧をする
女性の姿が目に浮かぶ。

経済産業省によると、国内の月間化粧品出荷額は
09年、11カ月連続で前年実績割れが続く。
定説の通用しない消費者を前に、化粧品メーカー各社は
従来の延長線上ではないテコ入れ策に奔走。

資生堂は、化粧品専門店の抜本改革に着手。
今後3年間で、約3割の売り上げ増や自社講習会への参加などを
条件に、販促費や営業要員を他店より重点投入する新制度を導入。

「今後も、資生堂と一緒に仕事をしたいという店を積極的に支援し、
そうでない店は追い掛けない」と
矢吹隆一・執行役員専門店部長が説明する新制度は、
専門店に対して、資生堂か否かの“踏み絵”を迫る荒療治。

同社は、総額約1730億円を投じて米化粧品メーカーの
ベアエッセンシャル(カリフォルニア州)を買収。
狙いの1つは、ベア社の商品群と販売手法による国内市場の活性化。

ベア社は、天然由来の素材を使った自然派化粧品の品ぞろえが豊富。
テレビやインターネットによる通信販売にもたけている。
日本国内では、消費者の安全志向に合致する自然派化粧品と、
利便性の高いネット通販はともに市場が伸びている。
ベア社の商品群と販売ノウハウを活用すれば、
国内需要を掘り起こせる可能性。

カネボウ化粧品は、親会社の花王と共同で
スーパーやドラッグストアなどの化粧品売り場の営業強化に。

花王グループの店頭支援専門の営業要員が、
花王の店頭を巡回する時、カネボウの売り場もチェック。
カネボウ商品の欠品や販促物の不足などがあれば、
すぐに補充する体制を取る。

両社は、09年度中に協力店舗数を約4000店に増やす計画。
「消費者は、生活防衛意識を高めており、
当面は厳しい状況が続きそう。
10年後半には回復してくるといいのだが……」。

資生堂の前田新造社長の言葉は、“新たな女心”を
つかみ取れるかどうか、期待と不安をない交ぜにした
化粧品業界の心境を物語っている。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo100129.html

慶大院の高橋教授 「変化の時代こそ人材多様性を」

(日経 1月28日)

春闘をめぐる動きが本格化してきた。
厳しい経済情勢下で、雇用維持が大きな争点。
経営環境が大きく転換する中、企業の組織や
人材マネジメントはどう変わっていくのか?
人事組織研究を専門とする
慶応義塾大学大学院の高橋俊介教授に聞いた。

——リーマン・ショック以降、日本企業が置かれた
事業環境をどうみるか?

グローバリズムが、いよいよ本番を迎えた。
米国発の金融危機といった、直接は関係ないと思っていた
問題を契機として突然、日本中で解雇が起きたのは象徴的」

「これまでのように、単にモノをつくって輸出する経済は
限界だと、はっきりした。
輸出型製造業は雇用が不安定。
事業の振幅が大きく、人材の流動性がないと回らない。
業績が悪くなると、一斉に従業員を減らすので、
解雇された人は行き場がなくなってしまう。
輸出型産業に頼る社会構造では、閉塞感はぬぐえない

——企業はどのような対応が必要になるか?

変化の時代には、人材の多様性(ダイバーシティ)が、
ますます重要。
優秀な人材確保のため、ダイバーシティは有効。
女性をリーダーに起用できない会社は、絶対に生き残れない。
企業の社会的責任(CSR)のためだけではなく、
収益を上げるための経営課題と考えるべき」

「ダイバーシティは、性別、国籍に加え、中途採用、雇用形態、
経歴、宗教、性的嗜好などを含む。
価値観の違いがなければ、何の意味もない。
様々な人たちが闊達に話し合うことで、意思決定の質が向上、
創造性も高まる。
企業にとって、次の成長材料を生む源泉となる」

「ダイバーシティを実現するには、費用も時間もかかる。
メリットが出にくいのが生産現場で、逆に出やすいのは
商品企画や顧客サービスなどだが、今後の日本企業にとって
最も重要な機能だと分かるだろう」

——正社員で構成する労働組合が、大半の日本企業では、
多様な働き手の要望が反映されにくい面がある。

まず、経営者と労働者の利益は相反するという前提で、
臨むのはやめるべき。
その年の賃金の話と長期にわたる雇用の話を、
バーターのように議論するのは無意味。
経営者も終身雇用の保証などできないだろうし、
正社員の雇用不安の解消にもならない」

同じ会社で働く人で、希望者はすべて組合に入れて、
経営者と向き合う体制を整えた方がいい。
組合員の事情に合わせて、安心して働けるよう
個々に支援できる仕組みを考えた方が生産的。
人材もとどめられ、企業の強みになっていく」

——ビジネスパーソンはどのような姿勢が求められるか?

組織は、人間観の鏡。
まず、自らが健全でなければ始まらない。
その上で、ダイバーシティがうまく働くようにするため、
自分の考えをきちんと伝えられるようにしたい。
『言わなくても分かるだろう』は通用しない。
分かってもらえるまで、繰り返す努力が大切」

柔軟に学習し、成長し続ける能力を磨く必要。
単に経験を積み上げるのではなく、学んだ成果を生かして
過去を否定し、行動を変えていけるかが問われる」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100127.html

2010年2月9日火曜日

脳内の酵素、神経分化促す 名古屋大、仕組み解明に光

(2010年2月1日 共同通信社)

神経のもとになる幹細胞は、脳内の「NLK」という
リン酸化酵素の働きによって神経細胞に分化することを、
名古屋大の伊藤素行・特任准教授らが千葉大、九州大との
共同研究で突き止め、1日付「Nature Cell Biology」電子版に発表。

謎の多い神経幹細胞の分化の仕組み解明に役立つ発見。
将来は脳梗塞や、パーキンソン病など神経機能の低下によって
起こる病気の治療に役立つ可能性がある。

NLKが、神経の形成にかかわりがあることは既に分かっており、
伊藤氏らは今回、培養細胞を使った試験管内の実験で
より詳細な働きを分析。

神経幹細胞は、「Notch」というタンパク質の働きで、
一部を未分化のまま維持しながら段階的に分化し、
感覚神経や運動神経などを形成するが、
NLKはこのタンパク質の働きを阻害し、
幹細胞の分化を促していることが判明。

NLKの機能を失わせると、分化しない幹細胞を維持できた。
神経細胞は、一度傷つくと修復が非常に難しいため、
NLKを使って神経幹細胞の分化を制御できれば、
再生医療への応用が期待できる。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/2/1/115283/

電子のプロが農学ビジネスを変える

(日経 2010-01-29)

遠い昔から、川の流れが人の生活を大きく変えてきたように、
電子の流れが生物の働きを変えることが、
農学系の研究者らによって明らか。

生物体内の「電子回路」を人工的に変えると、
それまで以上のパワーを発揮したり、見たこともない反応を
起こして、化学物質を合成できたりする。
化石燃料に頼らない、自然と共生するものづくりが実現。
新たな産業を生み出す可能性も高い。

2009年10月、「e—バイオの幕開け」と題する公開セミナー。
主催は、農学系研究者中心で旗揚げしたばかりの
「e—バイオ研究会」。
「e」は、電子の略号。
メンバーはたった5人、農学に電子工学の視点を盛り込む
新しい試みに期待し、セミナーには農学と近い食品関連だけでなく、
旭硝子や昭和電工、大手ゼネコンの鹿島や大成建設など
企業を中心に100人近くが集まった。

e—バイオ研究会の発足メンバー
東京大学・石井正治准教授 「有機化合物や薬剤の生産」
京都大学・加納健司教授 「化学エネルギーの電気エネルギーへの変換」
京都大学・小川順教授 「微生物複合酵素系を活用するものづくり」
宮崎大学・林雅弘准教授 「光と微細藻類を使うものづくり」
電力中央研究所・松本伯夫主任研究員
 「電気エネルギーの生命エネルギーへの変換」

研究会の中心人物は、京都大学の加納健司教授。
全国の農学系の中でも、数少ない電気化学の研究室を受け持ち、
電子工学に最も距離が近い。
生物の電子機能を使う研究に、長年取り組んできた。
2001年、ソニーと共同で酵素を使ってブドウ糖などを分解して
発電するバイオ電池の開発を続けている。
「これまでは、酵素の働きをそのまま使っていた。
今後は、酵素にもっと働いてもらう」

細胞膜を構成するリン脂質で作るカプセル状の
微粒子(リポソーム)に、酵素をとじ込めて並べる研究を計画。
電池反応は、いくつもの化学反応が連鎖して起こる。
それぞれの反応を媒介する触媒は違い、バラバラの場所に。
これらをリポソーム内に詰め込んで、リポソームを並べれば、
電池反応の効率が格段に向上。
「電子回路で言えば、集積化だ」と加納教授。

他には、細胞表面を覆う天然のコンデンサー、細胞膜に注目。
神経も細胞の一種。
加納教授の計算では、情報を伝達する時、
厚さ約6nmの細胞膜の内外に、約120ミリボルトの電位差が生じる。
呼吸や光合成では、電位差は300ミリボルト。
一見小さい値に思えるが、厚さを2cmに拡張すれば、
100万ボルトの電位差に。
「この電位差を拝借して、何かに利用できないものかと考えている」

東京大学の石井正治准教授は、茨城大学の西原宏史准教授、
ダイセル化学工業と、細胞の中の電子回路を大改造して、
有機化合物や薬剤の生産を目指している。
西原准教授の研究室では、すでに成果が出始めている。

土壌中に生息する水素細菌に、本来持たない酵素を導入、
新しい電子の流れを生み出し、高純度のアルコールを作る
実験に成功。
東大の石井准教授は、大腸菌を使った同様の研究を開始。

生物の体を電子の流れで改造する研究は、
まだ農学研究者によって始まったばかり。
ここに優れた電子回路や機器を開発してきた
電子のプロが加われば、e—バイオは大きな利益をもたらす
新しいe—ビジネスに発展するかもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec100128.html

2010年2月8日月曜日

和文化を知る(8)お囃子学び 地域と一体

(読売 1月30日)

全学年で郷土芸能を学んでいる。

「天狐」と呼ばれるキツネの面をつけた4人の児童が
体育館に散らばり、緩急をつけながら前後左右に練り歩く。
狩りで、獲物を探す様を表現した舞。
後方では、5人の児童が小太鼓や大太鼓、鉦で、
「屋台」というお囃子を奏でる。

舞、楽器とも、いくつかのグループに分かれ、1曲終わると
次のグループに交代。
一通り終わると、「戻る時もかがんでいないと、キツネらしくない」、
「途中から、たたくのが速くなった」などと、
グループごとに反省点を話し合った。

東京都あきる野市の市立一の谷小学校で、
郷土芸能を学ぶ4年生の授業。
「郷土を愛する心の育成」を目標に、音楽や総合学習の時間を活用、
全学年で地元・引田地区に伝わる郷土芸能の体験学習を実践。

1~4年まで、葛西囃子の流れをくみ、明治初期に伝えられた
引田囃子を学ぶが、学年が上がるにつれ、内容は難しくなる。

1年生は、円柱形のオイル缶など、口に粘着テープを張ったものを
太鼓代わりにし、手でたたいて、「にんば」という曲のリズムを体感。
2年は、その曲を楽器で練習。
3年では、そこにおかめ・ひょっとこの舞が加わる。

4年生が演奏する「屋台」は、「にんば」よりもリズムが複雑。
5、6年生が体験するのは、400年以上前に伝えられたという
鹿島流獅子舞で、授業では、段ボールで作った獅子頭を
かぶって、児童が舞う。

全学年で、郷土芸能を授業に取り入れたのは、2000年度から。
郷土芸能に関心を持つ音楽科の女性教員が、
個人的に地元の保存会に教わったことがきっかけ。

教員が入れ替わっても、無理なく指導できるようにと、
指導用のテキストも作成。
お囃子のリズムを解説したページでは、「テケ天ツク テレツク」
などと、縦に書かれた文字の左右に大小の点を打つなどし、
たたくタイミングや強弱を表現。

学校の力だけで、本格的に伝統芸能を教えるのは厳しい。
お囃子、獅子舞とも、地域の保存会の会員が
ボランティアで参加。

「礼儀を守り、道具を大事に扱う。
技術の前に、学ぶ心構えを子どもたちに教えている」と
引田囃子保存会の飛沢俊夫会長(63)。

郷土芸能教育は、同保存会にとって朗報。
それまで、後継者不足で「存続の危機」にあったが、
今は授業で興味を持った児童が毎年入会。
卒業後も継続して参加する中高生、大学生もいる。

4年生の授業で、小太鼓をたたいていた男子の1人も、
保存会の会員。
「この町が好き。大人になっても続けたい」
地域と学校が一体となり、郷土愛が育まれる。

◆郷土を愛する心の育成

森首相(当時)の私的諮問機関、教育改革国民会議が
2000年12月の最終報告で、教育基本法の見直しの
取り組みには、「家庭、郷土、国家などの視点が必要」と言及。
06年12月の教育基本法改正で、教育の目標を定めた第2条に、
「我が国と郷土を愛する」との文言が盛り込まれた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100130-OYT8T00277.htm

岩崎博士に学ぶ研究者の気概

(日経 2010-01-22)

「垂直磁気記録方式」を開発した岩崎俊一・東北大学名誉教授が、
2010年の日本国際賞を受賞。

磁気記録の大容量化に道を開く同方式を、1977年に提唱、
最初の製品は05年に登場。
28年もの歳月をかけたイノベーションは、
岩崎名誉教授の気概なくして起きえなかった。

国際科学技術財団が開いた日本国際賞の受賞者発表に、
83歳の岩崎名誉教授が元気な姿を見せた。
「この上ない名誉」と表彰を喜びつつ、磁気記録が膨大な情報を
後世に伝える「IT時代のロゼッタストーンの役割を果たす」と、
自身の成果の意義を明快に解説。

磁石のN極とS極の向きの違いを、デジタル情報に置き換える
磁気記録は、ピアノ線を使う1次元記録に始まり、
磁気テープを使う2次元(水平磁気記録方式)へと発展。

今から50年前、音楽録音用のメタルテープを開発した
岩崎名誉教授は、「もっと記録密度を高くするには、
どうすればよいだろうか」を考え始めた。

たどり着いた方法が、磁石のN−S極を
3次元に並べる垂直磁気記録。

提唱から2年後の79年、コバルトとクロムの薄い蒸着膜を使って、
垂直磁気記録が可能なことを検証し、その実用化を目指して
研究開発を続けた。

途中、同方式を採用したフロッピーディスクの事業化の失敗や、
水平磁気記録方式の性能向上などがあり、
多くの研究成果が市場に出る前に迎える壁、“死の谷”に陥った。

米国では、垂直磁気記録装置の商品化を目指して
ベンチャー企業が出現、市場を開拓できなかった。
水平磁気記録方式の装置で、市場を握る大手コンピューターメーカーが、
徹底的に抵抗したとも。

それでも、岩崎名誉教授はくじけなかった。
日本国際賞の審査に当たった前田正史・東京大学教授は、
「この道一筋。執念を感じた」

77年 岩崎東北大教授が垂直磁気記録方式を提唱
80年代前半 垂直磁気記録媒体、読み取り用ヘッドの研究が盛ん
82年 米国で垂直磁気記録の商品化を目指し、
    バーティマグ社やセンストア社などが設立
89年 第1回垂直磁気記録国際会議
95年 東北大などMR(磁気抵抗)ヘッドによる
    垂直磁気記録方式を提案。
    その後GMR(巨大磁気抵抗)ヘッドに引き継がれる。
00年 東北大と日立製作所が実用的な垂直磁気記録システムを発表
05年 東芝が世界初の垂直磁気記録方式の装置を商品化
10年 新たに発売される磁気記録装置の方式がすべて垂直磁気記録に

研究開発を継続し、実用化にこぎ着けた原動力は何か?
岩崎名誉教授は、2つの要因をあげた。
1つは、「発明者としての責任」、
もう1つは、「私の執念を引き継いだ弟子たちのがんばり」

垂直磁気記録方式を提唱した当時、岩崎名誉教授は、
現在のような情報社会の到来は予測できなかった。
大容量の磁気記録が必要になる、との確信は揺らがなかった。

メタルテープの開発、垂直磁気記録方式の提唱と続け、
実用化を途中で投げ出すことは信念に反し、できなかった。

そんな思いを直接学んだ卒業生が、日立製作所や東芝、
富士通などに入社、商品化に向けて奮闘した。
岩崎名誉教授は、最初の基本原理の成果だけを特許出願し、
その後の開発成果は、企業が特許を取得できるように
権利化を主張しなかった。
今でいう「オープンイノベーション」を先駆けた。
「教育者としても実績を残せたと思う」と岩崎名誉教授。

海軍兵学校を経て、東北大に進んだ岩崎名誉教授は、
「古い人間ですから」と断りながら、研究史を振り返った。
世界の経済社会の進展や、技術の高度化・専門化など、
当時と現在を単純に比較できない。

技術開発という人間活動を支える気概は、
大いに学ぶべきところがある。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec100120.html

2010年2月7日日曜日

和文化を知る(7)近所の「師範」が教師役

(読売 1月28日)

地域をあげて、和文化教育を実践している。

「豊かな心」の育成を目標に、静岡県島田市では昨年度から、
市立の全小・中学校がそれぞれテーマを決めて、
和文化教育を実践。

研究指定校の一つ、市立島田第二中学校では、
2年の11月から3年の10月まで、木曜午後の総合学習の時間を
すべて「和文化学習」の時間にあてている。
生徒は、「日本舞踊」、「琴・三味線」、「詩吟・尺八」、「陶芸」、
「お茶」、「剣の心」、「紙」、「筆」の8講座から一つを選択、
1年間、継続して学ぶ。

尺八、詩吟など、教員だけでは教えられない5講座には、
地域の人材を活用。
現在、山田流の琴の師範ら14人が外部講師として授業を支える。

華やかな雰囲気に包まれていたのは、武道場。
日本舞踊を学ぶ女子14人が、扇を手に舞っていた。
2室ある音楽室では、琴・三味線を選択する32人が、
琴と三味線に分かれて練習。

琴を学ぶのは、すべて女子。
床に座り、1本ずつ自分で調弦し、ほぼ楽譜に頼らず曲を演奏。
隣の部屋では、男子も参加し、三味線を合奏。
音程をはずす生徒もいたが、最後まで手を止めず、
目は真剣そのもの。

昨年秋、和文化学習の講座を終えた3年生は、
次のように感想を述べている。
「練習するほど感覚がつかめ、充実感があった」、
「集中してものを作る楽しさを知った」、
「和文化は気を和ませ、落ち着かせてくれる」

出足は順調。
「1年間続けて、生徒に落ち着きが出た。
内気な生徒が、人前で動じなくなる効果もあった」と
大谷秀夫校長(60)。

同じく研究指定校の市立島田第三小学校が、
重点的に取り組むのは、「美しいしぐさ・ことば」の習得。
呼吸を意識しながら丁寧にお辞儀をする「三息の礼」を、
全校で実践。
職員室に入る時、必ずクラスや氏名を名乗り、
出る時もきちんとあいさつをするよう指導。

6年生の道徳では、江戸時代の思いやりの所作
「江戸しぐさ」を学習。
授業を参考に、独自の「三小しぐさ」を作ろうとの声
児童から上がり、何かあった時に相手を気遣って声をかける
「おこころ言葉」などを考えた。

これを受け、高学年の委員会活動の一つとして
今年度新設された「わごころ委員会」は、
三小しぐさを校内に広めていくことに決定。
委員会の会合では、下級生に実演してみせるため、
「ごめんなさい」、「こちらこそ」と、うっかりぶつかった時に
声をかけあう練習をした。

授業では、1年生に俳句創作、4年生に落語の実演など。
13あるクラブ活動は、「焼き物」、「大正琴」など、
すべて和文化がテーマ。

同市の和文化教育には、学校と地域の交流を促進する狙い。
クラブ活動も、地域の人たちがボランティアとして支えている。
和文化が、町の代名詞になる日は近いかもしれない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100128-OYT8T00263.htm

イタリア、知られざる西欧の“中国”

(日経 2010-01-28)

米グーグルが、中国サイトの検索サービスにかけていた
自主検閲をやめると宣言、米中政府間の非難合戦に発展し、
「インターネットの自由」の問題に改めて注目。

ヒラリー・クリントン国務長官は、「ネットの自由」を世界的に
広めていくことを、米外交政策の重要課題と位置付けると宣言。
中国、北朝鮮、ベトナム、サウジアラビア、チュニジア、
ウズベキスタンなどを名指し、そこで実施されている検閲や
特定サイト・サービスの利用制限、ネット上での言論・発言を
理由にした市民の逮捕・拘束などの行為を非難。

これらは、そもそも非民主主義国家か、表向き民主主義でも
言論統制で長期政権を維持している国々で、
欧米的人権意識を浸透させるにはあまりに道のりが遠い。

もっと容易にネットの自由拡大に取り組めそうな国が、
G7(主要7カ国)の中にあることは、あまり知られていない。
芸術の国イタリアである。

同国は、2005年からテロ防止のため、公衆無線LANの
基地局運営業者とネットカフェの運営業者を免許制とし、
警察への登録を義務付ける法律を施行。

業者は、利用者個人のID情報と利用記録を保管し、
警察の求めに応じて提出を義務付け。
つまり、利用者も実質的に登録制なのだ。
法律は、09年に1度期限を迎え、同国国会は期限を更新。

匿名性の確保は、言論の自由の大事な要素の1つ。
個々人のネットの利用記録を政府が入手できる体制では、
政権に反対する勢力や人権活動家などが、
いつネット記録を政治的に悪用されるか不安。
こんな国が、G7に混ざっているとは驚き。

今、同国で議論が盛り上がっているのが、
ネット接続業者(ISP)とウェブサイトに、自社を通じて表示された
コンテンツの監視を義務付け、法的問題について責任を
負わせる規制案の是非。

規制が実施されると、著作権侵害映像などの投稿の賠償責任を
ISPと投稿サイトが負うことになり、一般利用者が自由にコンテンツを
投稿する、UGC(利用者発コンテンツ)を表示する動画投稿サイトや
ブログ、SNS(交流サイト)などの運営が難しくなる。

規制案は、国会審議が必要な法律案ではなく、
政省令案として議論、大統領の承認があれば発効する。
国会が、2月上旬までに政府に意見書を提出、
各界関係者からヒアリングを続けている。

規制の実施で最も影響を受けそうなのが、世界最大の
動画共有サイト「ユーチューブ」を傘下に持つ米グーグル。

1分で、20時間分に及ぶ動画が世界中から投稿される
ユーチューブが、すべてを事前チェックするのは不可能。
規制が実施されれば、イタリアからの撤退を余儀なくされる可能性。

イタリアは、グーグルにとって、中国以上に鬼門。
メディア王のベルルスコーニ首相が経営するメディア複合企業、
メディアセット社から著作権侵害で、5億ユーロの損害賠償を
求める訴訟を昨年末に起こされた。

同国検察は、障害を持つ子供を他の子供がいじめている光景を
映した投稿動画を表示したとして、グーグル幹部4人個人を
刑事訴追、09年2月から裁判が続いている。

苦情を受け、動画はすぐに削除したが、
そもそも表示したこと自体が違法というのが検察の主張。
企業活動が問題なのに、個人が刑事訴追されたことも、
ショックを与えた。

ウェブ上のUGCに対するウェブサイトやISPの責任は、
世界各地で微妙な問題。

編集責任をもたず、ただ投稿を表示する装置(サイトや通信網)を
運営する企業は、コンテンツには責任を負わないというのが、
国際的な判例の傾向。
イタリアでの裁判の行方次第では、国際常識が変わりかねないと、
世界のネット企業に注目。

新たな省令や刑事裁判の結果、世界的にISPやウェブサイトの
責任が拡大する方向に動けば、クリントン氏が打ち出した
ネットの自由の拡大、情報流通の自由などの政治課題の推進は
いっそう困難。

中国での人権状況の改善も、政権の外交戦略上重要だが、
「自由世界」の中の課題にも、ぜひ取り組んでもらいたい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt100127.html