2010年2月13日土曜日

健康食品との付き合い方:/1 不足栄養素、補う目的で

(毎日 2月9日)

スーパー、薬局、コンビニエンスストアにあふれる
健康食品やサプリメント(栄養補助食品)。
健康志向の高まりで、今や1兆円市場に成長し、
現代人の生活に欠かせなくなってきた。

一方で、種類が増えすぎて何がいいのか迷ったり、
取り方を誤り逆に健康を害してしまう人も。
知っておきたい付き合い方を、4回にわたり紹介。

ビタミンやミネラルといえば、良い栄養素の代表格といったイメージ。
緑黄野菜に多く含まれるベータカロテンやビタミンEは、
細胞の損傷を防ぐとされる抗酸化作用を持つため、
がんの予防を期待して長期間摂取する人も多い。
どれほど効果があるのだろう?

津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長によると、
1980年代以降、ベータカロテンやビタミンA、C、E、
ミネラルのセレンなどを長期間摂取して、
がんの死亡率などが減るかについて、数多くの臨床試験。

衝撃的だったのは、90年代半ばに米国やフィンランドなどで
実施された喫煙者への調査。
ベータカロテンやビタミンEを約5~10年間摂取している群の方が、
全く摂取していない群よりも、肺がんの死亡率が高かった。

その後、ビタミンEなどを長期間摂取した場合の臨床試験が
世界の医学雑誌に70以上公表。
総合的にみると、ベータカロテン、ビタミンA、Eの長期的な補給は
死亡のリスクを上げ、ビタミンCとセレンは上げも下げもしない。

世界の調査結果などを紹介した、
「なぜ、『がん』になるのか?その予防学教えます。」(西村書店)
著した津金さんは、「抗酸化栄養素は、慢性的な栄養不足や
特定の栄養素が欠乏しているケースでは必要だが、
がん予防のために服用するメリットはほとんどない
がん予防に有効で安全なサプリメントは、いまだに見つかっていない。

国によって食生活が異なることから、
必要なサプリメントが違ってくることも知っておきたい。

最近人気のミネラル「セレン」。
人の健康に必須の元素で、ビタミンEと同様に抗酸化作用。
欠乏すると、動脈硬化や精子の減少など。
厚生労働省は、健康維持に必要な目安の1日あたり推奨摂取量を、
成人男性で30ug、女性で25ugと定めている。

セレンは海藻類、卵、カツオやシラス干しなどの
魚、鶏肉などに多く含まれる。
これらをよく食べる日本人は、平均的に1日100ug以上を摂取し、
推奨量を十分に取れている。
海藻類の摂取量が少ないスウェーデン、英国などの
西欧では不足しがち。

セレンを取り過ぎると、疲労、吐き気、呼吸不全などの健康被害。
米食品医薬品局(FDA)は、セレンを多く含むサプリメントを
取っていた23人が脱毛、下痢、関節痛、
筋肉のけいれんなどを起こしたと公表。
梅垣敬三・国立健康・栄養研究所情報センター長は、
「既にセレンを十分に取っている人が、サプリメントとして摂取すると、
過剰摂取になる恐れがある」

サプリメントは、健康に良いものだからと、
つい多めに摂取しがちだが、過剰摂取は禁物。
さまざまなミネラルが配合されたマルチミネラル製品は、
各成分の量に注意して選びたい。

東京都健康安全研究センターが、市販されている
ミネラル補給サプリメントを調べたところ、
クロムを含む30製品のうち19製品で、1日目安摂取量のクロムが
国の1日推奨量(30~49歳女性)を超えていた。
クロムは、糖や脂質の代謝に大切な元素だが、
長期にわたり摂取すると、腎臓障害などが起きる恐れ。

植松洋子・同センター食品化学部副参事研究員は、
「マルチミネラル製品は、配合されているミネラルが
厚労省の推奨量に必ずしも沿ってはいない。
業者は、それぞれの成分量が推奨量の何割に相当するかを
分かりやすく表示してほしい」と、
消費者が過剰摂取しないような表示を求める。

ビタミンやミネラルは体に良い。
たくさん取れば、健康になれるというものではない。
「誰も知らないサプリメントの真実」(朝日新聞出版)を著した
高田明和・浜松医科大名誉教授は、
「高齢者などが不足しがちな栄養素を補うという意味では、
サプリメントは有益。
ビタミンEのようなものを、がんや老化などを防ぐ目的で
長期間取っても、効果はほとんど期待できない。
そうしたことを知ったうえで、活用することが大事」

http://mainichi.jp/life/health/archive/news/2010/02/20100209ddm013100198000c.html

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