2010年2月10日水曜日

慶大院の高橋教授 「変化の時代こそ人材多様性を」

(日経 1月28日)

春闘をめぐる動きが本格化してきた。
厳しい経済情勢下で、雇用維持が大きな争点。
経営環境が大きく転換する中、企業の組織や
人材マネジメントはどう変わっていくのか?
人事組織研究を専門とする
慶応義塾大学大学院の高橋俊介教授に聞いた。

——リーマン・ショック以降、日本企業が置かれた
事業環境をどうみるか?

グローバリズムが、いよいよ本番を迎えた。
米国発の金融危機といった、直接は関係ないと思っていた
問題を契機として突然、日本中で解雇が起きたのは象徴的」

「これまでのように、単にモノをつくって輸出する経済は
限界だと、はっきりした。
輸出型製造業は雇用が不安定。
事業の振幅が大きく、人材の流動性がないと回らない。
業績が悪くなると、一斉に従業員を減らすので、
解雇された人は行き場がなくなってしまう。
輸出型産業に頼る社会構造では、閉塞感はぬぐえない

——企業はどのような対応が必要になるか?

変化の時代には、人材の多様性(ダイバーシティ)が、
ますます重要。
優秀な人材確保のため、ダイバーシティは有効。
女性をリーダーに起用できない会社は、絶対に生き残れない。
企業の社会的責任(CSR)のためだけではなく、
収益を上げるための経営課題と考えるべき」

「ダイバーシティは、性別、国籍に加え、中途採用、雇用形態、
経歴、宗教、性的嗜好などを含む。
価値観の違いがなければ、何の意味もない。
様々な人たちが闊達に話し合うことで、意思決定の質が向上、
創造性も高まる。
企業にとって、次の成長材料を生む源泉となる」

「ダイバーシティを実現するには、費用も時間もかかる。
メリットが出にくいのが生産現場で、逆に出やすいのは
商品企画や顧客サービスなどだが、今後の日本企業にとって
最も重要な機能だと分かるだろう」

——正社員で構成する労働組合が、大半の日本企業では、
多様な働き手の要望が反映されにくい面がある。

まず、経営者と労働者の利益は相反するという前提で、
臨むのはやめるべき。
その年の賃金の話と長期にわたる雇用の話を、
バーターのように議論するのは無意味。
経営者も終身雇用の保証などできないだろうし、
正社員の雇用不安の解消にもならない」

同じ会社で働く人で、希望者はすべて組合に入れて、
経営者と向き合う体制を整えた方がいい。
組合員の事情に合わせて、安心して働けるよう
個々に支援できる仕組みを考えた方が生産的。
人材もとどめられ、企業の強みになっていく」

——ビジネスパーソンはどのような姿勢が求められるか?

組織は、人間観の鏡。
まず、自らが健全でなければ始まらない。
その上で、ダイバーシティがうまく働くようにするため、
自分の考えをきちんと伝えられるようにしたい。
『言わなくても分かるだろう』は通用しない。
分かってもらえるまで、繰り返す努力が大切」

柔軟に学習し、成長し続ける能力を磨く必要。
単に経験を積み上げるのではなく、学んだ成果を生かして
過去を否定し、行動を変えていけるかが問われる」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int100127.html

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