(日経 2010-01-30)
女心に不況なし……。
化粧品業界で長年いわれてきた「定説」だが、
今回の消費低迷局面では、これが崩れ去ろうとしている。
「景気が悪くなっても、女性はスッピンには戻れない」
(大手化粧品メーカー首脳)というのが定説の根拠。
スッピンやむなしとする女性は希有だろうが、
消費者の厳しい選別眼は化粧品の購買行動にも及んでいる。
「高価格帯(5000円超)と中価格帯(2000~5000円)の
化粧品は、前年実績割れが続いていたが、
低価格帯(2000円以下)も前年を割り始めた」。
花王の尾崎元規社長は、化粧品市場の最近の動向を説明。
中・高価格帯の商品が振るわないのは、
消費者が低価格品にシフトしたためで、
2008年リーマン・ショック以降の傾向。
消費者の受け皿となった低価格品まで落ち込み始めたのは、
「最後まできちんと使い切るなど、消費者が節約志向を
一段と強めている」(尾崎社長)。
クリームや口紅を、指先でかき集めながら化粧をする
女性の姿が目に浮かぶ。
経済産業省によると、国内の月間化粧品出荷額は
09年、11カ月連続で前年実績割れが続く。
定説の通用しない消費者を前に、化粧品メーカー各社は
従来の延長線上ではないテコ入れ策に奔走。
資生堂は、化粧品専門店の抜本改革に着手。
今後3年間で、約3割の売り上げ増や自社講習会への参加などを
条件に、販促費や営業要員を他店より重点投入する新制度を導入。
「今後も、資生堂と一緒に仕事をしたいという店を積極的に支援し、
そうでない店は追い掛けない」と
矢吹隆一・執行役員専門店部長が説明する新制度は、
専門店に対して、資生堂か否かの“踏み絵”を迫る荒療治。
同社は、総額約1730億円を投じて米化粧品メーカーの
ベアエッセンシャル(カリフォルニア州)を買収。
狙いの1つは、ベア社の商品群と販売手法による国内市場の活性化。
ベア社は、天然由来の素材を使った自然派化粧品の品ぞろえが豊富。
テレビやインターネットによる通信販売にもたけている。
日本国内では、消費者の安全志向に合致する自然派化粧品と、
利便性の高いネット通販はともに市場が伸びている。
ベア社の商品群と販売ノウハウを活用すれば、
国内需要を掘り起こせる可能性。
カネボウ化粧品は、親会社の花王と共同で
スーパーやドラッグストアなどの化粧品売り場の営業強化に。
花王グループの店頭支援専門の営業要員が、
花王の店頭を巡回する時、カネボウの売り場もチェック。
カネボウ商品の欠品や販促物の不足などがあれば、
すぐに補充する体制を取る。
両社は、09年度中に協力店舗数を約4000店に増やす計画。
「消費者は、生活防衛意識を高めており、
当面は厳しい状況が続きそう。
10年後半には回復してくるといいのだが……」。
資生堂の前田新造社長の言葉は、“新たな女心”を
つかみ取れるかどうか、期待と不安をない交ぜにした
化粧品業界の心境を物語っている。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/syohi/syo100129.html
0 件のコメント:
コメントを投稿