(読売 1月30日)
全学年で郷土芸能を学んでいる。
「天狐」と呼ばれるキツネの面をつけた4人の児童が
体育館に散らばり、緩急をつけながら前後左右に練り歩く。
狩りで、獲物を探す様を表現した舞。
後方では、5人の児童が小太鼓や大太鼓、鉦で、
「屋台」というお囃子を奏でる。
舞、楽器とも、いくつかのグループに分かれ、1曲終わると
次のグループに交代。
一通り終わると、「戻る時もかがんでいないと、キツネらしくない」、
「途中から、たたくのが速くなった」などと、
グループごとに反省点を話し合った。
東京都あきる野市の市立一の谷小学校で、
郷土芸能を学ぶ4年生の授業。
「郷土を愛する心の育成」を目標に、音楽や総合学習の時間を活用、
全学年で地元・引田地区に伝わる郷土芸能の体験学習を実践。
1~4年まで、葛西囃子の流れをくみ、明治初期に伝えられた
引田囃子を学ぶが、学年が上がるにつれ、内容は難しくなる。
1年生は、円柱形のオイル缶など、口に粘着テープを張ったものを
太鼓代わりにし、手でたたいて、「にんば」という曲のリズムを体感。
2年は、その曲を楽器で練習。
3年では、そこにおかめ・ひょっとこの舞が加わる。
4年生が演奏する「屋台」は、「にんば」よりもリズムが複雑。
5、6年生が体験するのは、400年以上前に伝えられたという
鹿島流獅子舞で、授業では、段ボールで作った獅子頭を
かぶって、児童が舞う。
全学年で、郷土芸能を授業に取り入れたのは、2000年度から。
郷土芸能に関心を持つ音楽科の女性教員が、
個人的に地元の保存会に教わったことがきっかけ。
教員が入れ替わっても、無理なく指導できるようにと、
指導用のテキストも作成。
お囃子のリズムを解説したページでは、「テケ天ツク テレツク」
などと、縦に書かれた文字の左右に大小の点を打つなどし、
たたくタイミングや強弱を表現。
学校の力だけで、本格的に伝統芸能を教えるのは厳しい。
お囃子、獅子舞とも、地域の保存会の会員が
ボランティアで参加。
「礼儀を守り、道具を大事に扱う。
技術の前に、学ぶ心構えを子どもたちに教えている」と
引田囃子保存会の飛沢俊夫会長(63)。
郷土芸能教育は、同保存会にとって朗報。
それまで、後継者不足で「存続の危機」にあったが、
今は授業で興味を持った児童が毎年入会。
卒業後も継続して参加する中高生、大学生もいる。
4年生の授業で、小太鼓をたたいていた男子の1人も、
保存会の会員。
「この町が好き。大人になっても続けたい」
地域と学校が一体となり、郷土愛が育まれる。
◆郷土を愛する心の育成
森首相(当時)の私的諮問機関、教育改革国民会議が
2000年12月の最終報告で、教育基本法の見直しの
取り組みには、「家庭、郷土、国家などの視点が必要」と言及。
06年12月の教育基本法改正で、教育の目標を定めた第2条に、
「我が国と郷土を愛する」との文言が盛り込まれた。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100130-OYT8T00277.htm
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