2009年11月28日土曜日

エコナビ2009:スマートグリッド 本格導入へ始動

(毎日 11月15日)

鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領が、共同研究に合意した
次世代送電網「スマートグリッド(賢い送電網)」に注目。

ITを駆使し、自然エネルギーの大量供給や家庭での省エネを
可能にする「夢の技術」、オバマ大統領は環境関連産業で
経済を立て直す「グリーンニューディール」の柱。

日本でも実証実験が始まっているが、必要な投資は
6兆円に上るとの試算、本格導入に向けては課題も。

米国では、オバマ大統領が景気対策演説で、
「クリーンエネルギーに重点的に投資する」と宣言、

風力や太陽光などの新エネルギー開発が活発化。
スマートグリッドは、オバマ政権の目玉政策の一つ。
「新技術の集合体」(米エコノミスト)とも形容、
さまざまな業界を巻き込んで実証実験が繰り返されている。

米政府は、総額7872億ドル(約70兆円)の大型景気対策に、
スマートグリッド向け予算130億ドル(約1兆1700億円)を計上。
「100年前の技術が使われ、多大なエネルギーとコストの無駄」、
老朽化した送電網の整備に投資を振り向ける方針。

米政府が、スマートグリッドで狙うのは、
単なる送電網の整備だけではない。

最新の送電網と発電所に、全米の各家庭を結合することで、
省エネ、コスト削減、新たな産業育成と雇用創出を狙っている。

(1)各家庭の家電製品をネットワーク化、
(2)パソコンなどで自宅の電力需要を分刻みで把握、
(3)料金の安い時間帯に電力を購入し、自宅の電池に蓄電、
(4)プラグインハイブリッド車の電池を活用することで
エネルギー効率を高める--など、

近未来の省エネ家庭の中軸をスマートグリッドが担うことを想定。
スマートグリッドに関係する産業界は、電力やIT、家電など幅広く、
経済効果は大きい。
米政府は、米国内企業など計66社の最高経営責任者(CEO)を
集めて会合を開くなど、民間企業の取り組みを後押し。

日本のスマートグリッドは、太陽光発電の拡大に備えた
送配電システムを作る意味が最も大きい。

日本では、停電範囲を最小限に抑える仕組みや大規模工場の
電力需要などを把握するため、既にITが使われ、
送電網の老朽化による停電対策が急務の米国とは、事情が異なる。
太陽光発電を20年に05年比約20倍の2800万キロワット、
30年に約40倍の5300万キロワットに拡大する目標。
実現すれば、国内の原子力発電の設備容量(4800万キロワット)を
しのぐ規模に。

天候条件で、発電量が大きく変わる太陽光発電を、
大量に電力系統に接続すると、電力需給がうまく調整できず、
停電する可能性が。

安定供給には、大型蓄電池を設置して送電量を一定にしたり、
各地の太陽光発電設備の出力調整などが必要で、
スマートグリッドが必須。
経済産業省は、30年までの対策費用として最大6・7兆円がかかる、
との報告、「料金負担や公的支援のあり方を検討すべき」

宮古島など沖縄、鹿児島両県の離島10カ所で、
太陽光や風力発電を既存の送電網に接続したスマートグリッドを構築、
影響や経済性などを調べる3年間の実証実験を開始。
来年、日米共同で、米ニューメキシコ州で太陽光発電や蓄電池、
IT家電などを組み合わせた「スマートグリッドハウス」の実験。

首脳会談では、これらの実験成果を共有することなどに合意。
今後、新技術やシステムの国際標準化で、
日米が世界をリードできるかどうかが注目。
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◇スマートグリッド

情報通信技術を駆使し、各地での自然エネルギーの発電状況や
家庭の消費電力データを把握し、最も効率のいい電力の流れを
制御する仕組み。
省エネ、コスト削減に有効な次世代配電システム。
地域や目的により概念が異なるため、厳密な定義はまだない。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/11/15/20091115ddm008040056000c.html

産婦人科医、論文が減少 勤務厳しく疲弊/研究費も削減 08年、ピークの半分以下

(2009年11月19日 毎日新聞社)

日本の産婦人科医が、国際的な学術誌に投稿し掲載される
論文数が減り続けていることが、
日本産科婦人科学会(日産婦)の調査。
医師不足による医療現場の疲弊に加え、
大学への公的研究費削減も背景。

医療の質の低下を懸念する日産婦は、
専門医の認定条件を見直し、研究業績を重視する方向で検討。

調査は、各国の研究者から引用される影響力の高い
31の英文学術誌を選び、国内在住の日本人研究者が
筆頭著者になっている論文の数を集計。

00年以降は毎年、それ以前は86年以降5年ごとに推移を見た。
86年は34本、91年には101本に急増。
その後も順調に増えたが、01年の224本をピークに減少に。
05年165本、06年130本と減り、08年は98本で
ピーク時の半分以下、91年の水準に戻った。
生殖補助医療分野の論文が増える一方、
ホルモンや婦人科の腫瘍などの減少が目立つ。

産婦人科は近年、医師確保が課題になるなど
厳しい労働環境にある。
医師が診療に追われ、論文のための症例分析や研究に
時間を割けなくなっている。

緊縮財政による研究費削減や、新しい研修医制度で
専門教育が軽視されているという指摘も。

こうした現状を受け、日産婦は専門医の認定要件に
論文執筆を義務付けるなど、研究力をより重視する検討に。

日産婦理事の井上正樹・金沢大教授(婦人科腫瘍学)は、
「医師が研究マインドを持たないと、医学の発展は望めない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/19/111561/

M細胞によるglycoprotein 2を介したFimH+細菌の取り込みにより粘膜免疫応答が始動する

(2009年11月12日 Nature)

M細胞によるglycoprotein 2を介したFimH+細菌の
取り込みにより、粘膜免疫応答が始動する。

粘膜免疫系は、免疫系全体で最も大きな部分を占め、
全リンパ球のおよそ4分の3を含み、病原体から粘膜表面を
防御するため、毎日数グラムの分泌型IgAを産生する。

粘膜免疫応答の誘導には、粘膜表面の抗原は
上皮障壁を越えてパイエル板のような組織だったリンパ構造に
輸送されなければならない。

抗原トランスサイトーシスとよばれるこの作用は、
特殊化した上皮M細胞によって媒介される。
しかし、この抗原の取り込みを推進する分子機構は、
ほとんど知られていなかった。

今回、腸管上皮細胞のうち、M細胞の管腔側細胞膜表面に
特異的に発現しているglycoprotein 2(GP2)が、
粘膜抗原のトランスサイトーシス受容体として働くことを報告。

組み換えGP2タンパク質は、大腸菌(Escherichia coli)や
ネズミチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhimurium)
といった腸内の共生細菌や病原性細菌の一部と、
細菌の外膜の構成成分である1型線毛の認識によって
選択的に結合。

これらの細菌は、M細胞の管腔側細胞膜表面上や
細胞質小胞内において、内在性GP2と共局在を示した。
細菌のFimH、宿主のGP2の欠損により、
1型線毛をもつ細菌のM細胞を介したトランスサイトーシスに
欠陥が生じ、その結果、パイエル板における
抗原特異的免疫応答が減弱。

これらの結果は、GP2が、これまで知られていなかった、
1型線毛を有する細菌に対するM細胞上の
トランスサイトーシス受容体であり、
このような細菌に対する粘膜免疫応答に必要不可欠。

M細胞は、さまざまな感染症に対する経口ワクチンの
標的細胞として有望であると考えられ、
GP2依存的トランスサイトーシス経路は、
粘膜ワクチン開発の新たな標的となるだろう。

[原文]
Uptake through glycoprotein 2 of FimH+ bacteria by M cells initiates mucosal immune response

http://www.m3.com/news/SPECIALTY/2009/11/12/111329/

2009年11月27日金曜日

インタビュー・環境戦略を語る:マイクロソフト・樋口泰行社長

(毎日 11月16日)

パソコン向け基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」シリーズを
手がけるマイクロソフト(MS)。
今年3月、事業活動に伴うCO2排出量を、
12年までに07年比30%以上削減する目標を設定。
企業や個人ユーザーを巻き込んだ取り組みを進めている。
同社の環境戦略を、MS日本法人の樋口泰行社長に聞いた。

--環境負荷低減にどのように取り組んでいるか?

◆情報社会の発展に伴う電力消費の増大への対処が
今、大きな課題。
ハードもソフトも、情報を処理する機器はすべて電気で動く。
MSは、サーバー(高性能コンピューター)やパソコン製品の
省電力化につながる技術開発をはじめ、IT業界の範となる
環境対策を積極的に進めなければ。
工夫の余地はたくさんある。

--具体的には?

最新のサーバー向け製品、「ウィンドウズサーバー2008」に、
消費電力を制御する機能を組み込み、
消費電力を常に最適に保てる。
サーバーには、24時間稼働しているものもあれば、
稼働や待機を繰り返すものも。
これを、「仮想化」と呼ばれる技術で統合、
電力を稼働中のサーバーに集中的に割り付ける。
処理能力を高めつつ、全体の消費電力も抑制できる。
(サーバーを多数配備する)データセンターは、
税金や電気代の安さや地震など災害の少なさを基準に設置、
これからは太陽光・風力発電所の近くに置いて、
クリーンエネルギーで運営すれば、より改善の余地がある。

--パソコン用新OS「ウィンドウズ7(セブン)」の環境性能は?

セブンは、パソコンの稼働状況を検知し、
最小限の消費電力に抑える機能を搭載、
前作「ビスタ(SP1)」より消費電力を10%削減。
「人感センサー」を用いれば、パソコンの前にしばらく人がいないと、
自動で休眠状態に。
パッケージ版の包装を、従来のプラスチックから紙に変えた。

--今後の取り組みの方針は?

◆電子メールやウェブ会議など、コミュニケーションツールを提供、
出張や移動で生じるコストとCO2の削減を支援。
法人契約をいただいたパートナー企業へソフトを提供する際、
100万枚以上に上るCDやDVDを配送してきたのを、
インターネットからダウンロードする方式に。
これで、2800本のスギが年間に吸収するCO2の量に
相当する40トン分を削減。
パートナー企業と連携した環境負荷軽減の取り組みをさらに推進。
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◇ひぐち・やすゆき

大阪大卒、80年松下電器産業入社。
日本ヒューレット・パッカード社長、ダイエー社長などを経て、
07年マイクロソフト入社。
08年4月から現職。兵庫県出身。51歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/11/16/20091116ddm008020025000c.html

塩分多めの食事で朝型に変身?

(日経 2009-11-13)

塩分を多めにしたり、炭水化物を少なめにした食事で、
朝が苦手な人も朝型に変身——
そんな期待が持てる研究が進んでいる。
食事の内容をちょっと変えるだけで、
体内時計の進み方を調節できるかもしれない。

「塩分が多めの食事を与えたマウスの体内時計は、
早く進むようになった」
農業・食品産業技術総合研究機構の食品総合研究所で、
食品が体内時計に与える影響を研究している大池秀明研究員。
マウスに、8%の塩分を混ぜた食事を与えると、
腎臓の時計遺伝子が働く時間が、通常の食事と比べ、
2時間程度前にずれた。

体内時計には2種類あり、明るさに左右される脳の時計と、
食事の時間に左右される臓器などの時計。
塩分で早く進むようになったのは、臓器の体内時計。
通常は、朝の食事でスイッチが入り、時計が狂ってくると
睡眠時間がずれ、朝の食事をする気にならないなどの影響。

産業技術総合研究所の大石勝隆・生物時計研究グループ長は、
女子栄養大学と共同で、
炭水化物が少ない食事が体内時計を進める。
マウスに、炭水化物が0.73%しかないエサを14日間与えると、
体内時計の遺伝子が働く時間が4~8時間早まった。
遺伝子が変異し、夜更かしで朝寝坊をするようになった
マウスでも、効果は確認。

塩分が多いえさを与えたマウスは、
腎臓の時計遺伝子Dbpが働く時間が早くなる。

炭水化物が少ない食事は、ケトン体ダイエットとして、
肥満の治療に使われている。
治療を受けた患者に、朝の目覚めが良くなったという人もいて、
人間でも効果が期待。
研究を進めている大石研究グループ長らは、
高脂血症治療薬で体内時計が進むこともつきとめ、
「薬よりも、食事で体内時計のずれを改善できれば」

赤ワインやコーヒーには、塩分などとは逆に、
体内時計を遅らせる働き。
赤ワインに含まれるポリフェノールを加えたマウスの
培養細胞では、体内時計の働きが3時間遅れる。
コーヒーも、マウスに飲ませると、体内時計が遅れ、
コーヒー以外のカフェインを多く含む飲料でも同様。

体内時計がずれ、生活のリズムがくずれると、
不眠だけでなく、糖尿病などの生活習慣病にも悪影響。
日常の食事でとる塩分を増やしたり、コーヒーを飲んだりして
体内時計のずれを調節できれば、
病気の治療がスムースに進められるかも。

こうした研究はまだ始まってまもなく、塩分や赤ワインなどが
体内時計に影響を与える詳しいしくみの解明はこれから。
研究が進めば、いろいろな食事の組み合わせで、
体内時計を進めたり遅らせたりできる可能性。

「みそ汁や焼き魚といった伝統的な日本食は塩分が多めだが、
朝からしゃきっとする効果があるのかもしれない」。
海外に向かう飛行機の機内食で時差ボケを予防したり、
夜型に慣れた受験生が試験前にみそ汁を多めに飲んで
試験当日に備えたり、といったことが常識になる日がくるかも。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec091111.html

北里大教授の海野信也氏 産科再建の鍵はシステム化と連携

(2009年11月18日 じほう)

北里大教授で、日本産科婦人科学会医療改革委員長の
海野信也氏は、産科救急医療の建て直しのキーワードに、
「システム化と連携」を位置付けた。

施設整備や人員確保のための財政措置を行って、
安全に医療を提供できる環境を整え、患者を確実に受け入れられる
各種システムを構築して、国民に安心感を与えることが不可欠。
「病院を戦場ではなく、普通の職場に戻す環境整備が必要」

海野氏は、「産科救急医療の現状と問題点」と題して講演、
諸問題の解決には、妊産婦を「確実に受け入れるシステムを提示し、
国民の安心感につなげる必要がある」

具体的には、周産期医療と救急医療の連携を強化して
母体の救命救急医療体制を整備する、
搬送コーディネーターの配置など周産期救急情報センターの
機能を強化して、受け入れ困難事例の発生を防ぐなど。

NICUの増床を含めて、受け入れがスムーズにいかない
“入り口問題”の解決策に位置付けた。
医療提供側が抱える課題について、
「病院の収益が悪すぎて人員を確保できない」という
現状改善が不可欠、
「医療者の待遇を改善し、人員を増やすことがどうしても必要」
「昨日の事業仕分けで、予算が半分に削られた。
2人で悲しんでいる」。

シンポジウムでは、政府の行政刷新会議が
2010年度予算概算要求の無駄排除のために行う事業仕分けで、
救急・周産期関連予算が半額に。

厚生労働省は、2010年度予算の概算要求で、
「医師確保、救急・周産期対策の補助金等」で574億円を要求。
海野氏は、ワーキンググループの判断を残念がったが、
「仕方ないので、次は診療報酬でなんとか挽回しなければならない」

海野氏は、次期診療改定で厚生労働省政務三役を補佐する
「診療報酬チーム」の1人。
「2人で悲しんでいる」とされた、もう一方の
厚労省医政局指導課救急・周産期医療等対策室長の中山鋼氏は、
「決定を踏まえて、どうしていくか頭を悩ませている」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/18/111424/

2009年11月26日木曜日

インタビュー:元英政府特別顧問、ニコラス・スターン卿

(毎日 11月16日)

地球温暖化による被害と対策の費用対効果を分析した報告書
「スターン・レビュー」で、各国の政策に影響を与えた
元英政府特別顧問、ニコラス・スターン卿(63)。

各国は、ポスト京都議定書の枠組みについて、
国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を
合意期限と約束。
スターン卿は、各国の指導者が約束を守り、温暖化防止に
新しい一歩を踏み出すよう訴えた。
旭硝子財団「ブループラネット賞」受賞。

--COP15の成功とは何か?

50年までに、全世界で90年比50%減、
先進国は同80%以上減、という温室効果ガスの
削減目標に合意すること。
20年までに途上国対策で、1000億ドル以上の資金供与も必要。
先進国は、日本と同じ目標「20年までに90年比25%減」を
掲げてほしい。
数値目標で基本合意がなければ、交渉進展の機運は失われ、
国家間の信頼回復に長い時間がかかる。
各国の指導者が集まり決定すべき時。

--米国は京都議定書に合意後、離脱。歴史は繰り返されるか?

◆可能性はあるが、当時とは状況が大きく変化。
オバマ大統領らの指導力に加え、民主党は上下両院で多数党。
COP15後、温暖化対策法案も可決する。

--世界一の排出国になった中国の役割や義務は?

◆中国は、気候変動行動計画を実行に移しつつあり、
低炭素技術で世界のリーダーになろうとしている。
経済回復戦略でグリーン技術に注目、巨額の投資も。
1人当たり排出量は少ない。
先進国のような拘束力のある数値目標を求めるのではなく、
「20年までに(数値目標を)設定すべきだ」などが妥当な着地点。

--経済界には、鳩山政権の25%減達成は「無理だ」との声。

◆ハイブリッド車や断熱素材開発など、削減余地は生み出せる。
排出量取引の活用も可能で、25%は無理ではない。
先頭を歩み続けることで、日本は技術分野の
世界のリーダーたる地位を不動にできる。
高い目標に向かって行動する者ほど、世界経済で優位に立てる。
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◇スターン・レビュー

経済学者のスターン卿が、英財務省の依頼でまとめ、06年発表。
表題は、「気候変動の経済学」。
「温暖化対策を怠れば将来、世界の国内総生産(GDP)は
平均5~10%失われ、対策をとればコストはGDPの1%で済む」
「対応の遅れは高くつく。
今後10~20年間の対策が弱ければ、目標は手が届かなくなる」、
国際社会が一致し早く行動を起こすよう求めた。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/11/16/20091116ddm016040017000c.html

小国デンマークからの産業革命・上

(日経 2009-11-16)

飛行機が高度を下げ、着陸態勢になると、
機内の窓から沿岸に建つ風車が目に。
来訪者に挨拶するかのように、ゆっくりと羽根を回す姿は、
現在のデンマークを象徴する風景。

国土面積は、日本のおよそ10分の1(グリーンランドを除く)。
狭い国土に、約320万キロワットの出力の風力発電機が運転。

デンマークで使う電気エネルギーの20%が、風力発電。
人口550万人、風力発電産業の従事者は約3万人。
風力発電機は、デンマークの輸出額の7%を占め、
最大の輸出工業品。

小国の風力産業を支えたのが、国を挙げて築いた開発体制。
その知見を求め、世界各地の風力発電機メーカーが
首都コペンハーゲンに集まってくる。
「この前は、中国の風力発電機会社が来ていた。
ブレード(羽根)の素材として、竹を使う実験を一緒にした」。
デンマーク工科大学(DTU)の大学院生は、
ここが最新技術の発信拠点とばかりに誇らしげ。
構内の風力発電機の試験場には、中国やインドなど
世界各地から大手メーカーが訪れ、ブレード強度などの実験。

風力発電機技術の世界的な拠点となったDTUだが、
1954年開設当初は、原子力の研究拠点。
1980年代、原子力利用に反発する声が高まり、
1985年、国が原発開発の方針を転換。
DTUは、次なる自前のエネルギー源として、
デンマークの農家が古くから使っていた風車に可能性を。

この戦略が当たった。
デンマークの方針転換から1年後の86年、
チェルノブイリで原発事故が発生。
原発の利用拡大を懸念する声は、欧州全体に。
デンマークは、国内で大型風力発電機の開発を急ピッチで進め、
国内市場をテコに、国内メーカーを育成。
原発に変わりうる新たなエネルギー源として、
風力発電機の市場は90年代後半に欧州で急拡大。

デンマーク最大手のヴェスタスは、世界シェアトップに。
欧州が中心だった風力発電の市場で、デンマーク企業は
存在感を示し続けてきた。

市場が世界規模に拡大、限界も浮かび上がっている。
海外市場が、年30~40%増の爆発的な伸びを示すなか、
独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)など、
巨大資本が参入、競争は激化。
資本力の乏しいヴェスタスのシェアは、少しずつ低下。
GEの追い上げの前に、もはや風前の灯火。

デンマーク風力発電協会によると、昨秋の金融危機の影響など、
2年の間に風力発電機産業の雇用が2000人程度失われた。
デンマーク投資庁のオーレ・フリジスメンソン・ディレクターは、
「再生可能エネルギー源が、1つじゃダメ。風力だけなんてナンセンス」
風力を補うエネルギー産業として、バイオマス(生物資源)。

飛行機から見えた風力発電機の左に目を移すと、
煙をモクモクと吹き出している大型発電所が2つ。
1つは、石炭を使った発電所、もう1つは燃料の7割に
木質ペレットを使うバイオマス中心の発電所。
発電能力が50万キロワットを超える大型発電所、
排熱も暖房など向けエネルギーとして使うことで、
エネルギー使用効率は80%を超える。

木質ペレットは国内だけでなく、バルト諸国やドイツ、
スウェーデンからも集める。
「バイオマスを中心にすえた大型発電所は、世界でもまだ少ない。
より燃料を減らすため、運転の効率改善を進めている」
(運転するDONGエナジーの担当者)。

11月、バイオマスから液体燃料などを作る大規模工場も立ち上がる。
先端技術を実用化し、新たな産業につながるノウハウを蓄積。

バイオマスと風力を組みあわせ、2025年、電力消費の半分を
再生可能エネルギーでまかなう計画。
デンマークは、日量約30万バレル産出する北海油田を持つ「産油国」。
自国の化石燃料の使用が減るほど、原油を輸出に回せる。
生産した原油のおよそ半分は、オランダなど周辺国に販売。

デンマークの化石燃料の輸出額は、年間50億ユーロ(約7000億円)。
自らは自然エネルギーを可能な限り使い、価格が高騰する
化石燃料を、可能な限り海外に売って外貨を稼ぐ。
穏やかに回る風車に象徴される環境アピールのその裏に、
したたかなそろばん勘定も、またある。

「低CO2モデルに早く転換した国が、繁栄を得ることができる」
気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で議長を務める
コニー・ヘデゴー大臣。
彼女の肩書きは、気候変動相と省略されることが多いが、
兼任するエネルギー相としての発言として聞くと、
また違った意味合いに。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan091112.html

大量飲酒への対応必要 自殺予防で政府白書

(2009年11月17日 共同通信社)

政府は、「2009年版自殺対策白書」を決定。
自殺予防のための基礎調査結果を掲載し、
「働き盛りの中高年男性の自殺予防には、
うつ病対策だけでは不十分で、
大量飲酒などアルコール問題への対応が必要」と提言。


自殺の現状について、警察庁が既に発表した統計などを再掲。
自殺者数は、08年まで11年間連続で3万人超。

調査では、アルコール問題を抱えた自殺既遂者の特徴として、
(1)仕事を持つ40~50代の男性が多い、
(2)「最後の行動」に及ぶ際、飲酒している者が少なくなく、
酩酊によって判断力の低下や衝動性が強まった可能性、
(3)死亡前1年以内にアルコールで健康や仕事に支障を来した-など。

08年前半、硫化水素ガスを発生させた自殺が多数発生した
事態を受け、報道とのかかわりを調査。
同年4、5月の自殺者数の増加と新聞やテレビでの露出は比例。
インターネットのサイト上に書かれた硫化水素の発生方法が
急速に広まったのは、報道が要因との観点から調査。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/17/111331/

2009年11月25日水曜日

温暖化の影響アジアの沿岸都市で深刻

(サイエンスポータル 2009年11月13日)

世界自然保護基金(WWF)が、
アジア太平洋経済協力会議(APEC)にあわせて報告書
「アジアの巨大都市を襲う気候変動」を公表。

報告書は、アジアの沿岸地域や河川のデルタ地帯に位置する
11の大都市を取り上げ、気候変動による影響の大きさを示す。
各国の指導者たちに、危機感を持ってもらう狙い、
各都市の気候変動に対する脆弱性を、
10段階でランク付けしているのが目を引く。

最も弱いとされたのは、バングラデシュのダッカで、レベル9。
洪水や渇水による直接の環境被害に加え、
社会資本の貧弱さによる社会経済的な被害、
適応能力のいずれも最低、最低ランクに近いと評価。

次に脆弱な都市(レベル8)は、インドネシア・ジャカルタと
フィリピン・マニラ。
ジャカルタは、暴風雨、海面上昇、洪水や渇水による環境被害と
適応能力の不足は、いずれもダッカよりややまし。
人口過密による社会経済的被害が、最低ランクの10。
マニラは、社会経済的被害こそジャカルタ、ダッカより小さいが、
暴風雨と洪水・渇水の被害がいずれも最悪の10。

レベル7が、インド・コルカタとカンボジア・プノンペン。
6が、ベトナム・ホーチミンと中国・上海、5がタイ・バンコク、
4が香港、マレーシア・クアラルンプール、シンガポールの順。

気候変動による影響が、沿岸部に集中している人口過密な
大都市で深刻になるという予測は初めてではないが、
WWFの報告書は貧しいために適応能力を欠く国が多い
アジア地域の大都市が、特に脆弱であることにあらためて警告。

気候変動による環境影響として、報告書が重視した
暴風雨、海面上昇、洪水や渇水について、
日本の大都市もひとごとではない。
文部科学省、気象庁、環境省が合同で公表した報告書
「日本の気候変動とその影響」は、
全世界で追加的な温暖化対策を講じない場合、
日本は世界平均を上回る気温上昇が予測、その被害額が
今世紀末に年間約17兆円に上るという予測。
年間17兆円という被害額のほとんどは、河川の洪水と高潮による被害。

APECで、気候変動対策がどの程度、具体的に話し合われるか
分からないが、日本を含めアジア共通の最優先課題であることは明白。

http://scienceportal.jp/news/review/0911/0911131.html

理系白書’09:挑戦のとき/18 山形大准教授・中山健一さん

(毎日 11月17日)

◇新たな有機トランジスタ--中山健一さん(37)

あらゆる電子回路の心臓部に使われ、
「産業のコメ」と呼ばれる半導体。
現在は硬いシリコン製だが、樹脂のような有機化合物で作れば、
折り曲げられるディスプレーや太陽電池なども夢ではない。
企業も巻き込んで競争が激化。
中でも、トランジスタは電気信号を増幅したり、
スイッチの役割を果たす重要な半導体素子の一つ。

中山さんは、新しい原理で作動する有機トランジスタを考案。
有機トランジスタは実用化を目指し、さまざまな工夫が試み。
主流は、今のシリコン製と同じ原理を使い、薄膜の面内に
電流を流す横型タイプ。
電極間の距離を短くするほど、高性能なトランジスタを作れるが、
横型方式の製造には大規模な設備が必要でコスト高に。

中山さんは05年、単純に薄膜と電極を重ねるだけで、
薄膜の厚み方向に電流を流す縦型方式の
有機トランジスタができることを発見。

膜の厚さは、ナノメートル(100万分の1ミリ)単位で制御、
比較的簡便に製造できる上、発光する有機トランジスタなど
新たな機能も実現できた。

「流行に乗るより、他人と違う仕事がしたかった。
動作したのは、材料の選択と膜の厚みの組み合わせが
偶然、よかったから。
動作原理もまだ完全には分かっていないが、
実用化できる可能性は秘めている」

小さいころから「なぜ?」という質問を、よく親にしていた。
小学5年のとき、光と電波が同じもの(電磁波)だと知って感動し、
理科に興味を持った。
高校時代、色鮮やかな試薬を使う化学の実験にひかれ、
応用化学科に進学。
「台車を転がしたりする高校の物理実験は地味で、好きではなかった」

配属されたのは、物理の理論を使ってエレクトロニクスを
研究していた研究室。
「そこで勉強するうち、理論として一本に集約していく
物理の美しさに気づいた」

有機エレクトロニクスの分野では、化学を学んだ材料系研究者と、
物理を基礎とした電子工学系の研究者が、
同じ土俵で議論することも多い。
「異なる背景の研究者が競争しながら、
より本質的なものを追求するのが面白い」

「よくも悪くも、(論文などで)自分の名前で仕事が残るのが研究者。
『これが私の仕事です』と、胸を張って言えるのがやりがいだ

「折り曲げられるディスプレーが、本当に必要とされるのか
どうかは分からない。
今の人々が気づいていないような使い方、市場を開拓し、
本当に世の中の役に立つものを作っていきたい」と中山さん。

視線は研究だけでなく、社会への出口も見すえている。
=============
◇なかやま・けんいち

神戸市出身。00年、大阪大大学院工学研究科修了。
大阪大助手を経て06年8月から現職。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/11/17/20091117ddm016040124000c.html

体温調節で眠気を防ぐ「冷たい食事」「運動避ける」「怒らない」

(日経 11月14日)

大事な会議中についウトウトしてしまった人は多いのでは。
生理現象とはいえ、急に襲ってくる眠気は仕事の効率を妨げる。
眠気をうまくコントロールする手段はないか?

まず、次の質問を考えてみよう。
午後に重要な会議がある日の昼食。
残業続きで寝不足気味だけに、会議中に眠気を催すような
メニューは避けたい。
カレーうどん、ざるそばだったら、どちらを選んだ方がよいか?

スリープクリニック調布の遠藤拓郎院長は、
「カレーうどんは避けた方がよい」
同じめん類なのに何が違うのだろうか?

カレーうどんに限らず、温かい汁物は体温を一時的に上げる効果。
カレーに含まれる香辛料は、体温を高める働き。
人間は、体温が低下すると眠気を感じやすくなる。
人間の体には、体温を一定に保とうとする機能。
カレーうどんを食べて体温が上がれば、その後に体温は下がる。
会議の時間に、強い眠気が生じてしまう。

眠気を抑えるには、体温が急激に上昇する食事を避けた方がよい。
カレーうどんに限らず、チゲ鍋やトムヤムクンなども、
会議前には食べない方がよさそう。

体温に影響を与えるのは、食事だけではない。
オフィスの温度も重要な要因。
暖房が必要以上に利いていると、体温も上がり、眠気のもとに。
よく冷えた缶コーヒーを手のひらで包むなど、
体温を上げないようにする工夫。

直前に激しい運動をしてしまうのも、眠気を引き起こす。
待ち合わせの時間に遅れそうになり、駅からあわてて走った経験は
誰にでもあるだろう。
間に合ったと思って応接室のソファに座ったら、
眠気に襲われたことはないだろうか。
運動によって上がった体温が、元に戻るために起きる現象。

感情的になって部下をしかりつけた後も要注意。
怒ると、体温が上がりかねない。

午後の会議で舟をこがないようにするには、
(1)昼食で冷たいメニューを選ぶ、
(2)運動を避ける、
(3)怒らない——の3つがポイント。

眠気を抑えるには、日光の力を借りるのも手。
昼休みなど、近くの公園などに出かけて陽光を浴びると、
「体内のホルモンが働いて、頭がすっきりしやすくなる」
(横浜市のみなとみらいクリニックの田中俊一理事長)。

それでも、眠気を感じてしまった場合は?
田中さんは、「生理的な眠気への対処法は寝るしかない」。
いったん仕事の手を休めて仮眠を取ったほうが、
その後の仕事の効率は高まる。
仮眠の取りすぎには注意が必要。
「30分以上休むと、起きた後にも脳がなかなか目覚めない」。
仮眠を取る場合、最大でも15分にとどめた方がよさそう。

仕事中に襲う眠気は、夜の睡眠が十分でないことの表れ。
残業が相次ぎ、帰宅が深夜になることが多い
日本のビジネスパーソンの睡眠時間は、世界的に見ても短い。
フィリップスが、日米独など5カ国の管理職を対象に行った
睡眠調査で、「睡眠時間が6時間以下」と答えた人の比率が、
日本では55%、米国やドイツ(34%)に比べて圧倒的に多かった。

1日にどれくらい寝れば、十分な休息が得られるかは
個人によって差がある。
「休暇など、どれくらい寝れば眠気がなく起きられるか
確認するのがよい」(東京医科大学の井上雄一教授)

眠気の原因が単なる寝不足でなく、
睡眠時無呼吸症候群といった病気の場合も。
睡眠の質が悪いため、いくら寝ても昼間に眠くなってしまう。
「昼間の眠気があまりに続く場合、睡眠外来がある医院で
アドバイスをもらった方が安全」(田中さん)。

フィリップスの管理職を対象とした睡眠調査では、
睡眠不足による仕事への影響を危惧しながらも、
職場では相談しようとしない日本人管理職の特徴が。
睡眠不足による悪影響として、73%の日本人の管理職が「仕事」。
5カ国の平均でも「仕事」は61%、「家族関係」34%、「趣味」22%、
「友人関係」19%などへの回答も多い。
日本人管理職では、それぞれ17%、6%、7%しかなく、
仕事への影響を懸念する回答が突出。

睡眠不足について相談する対象は、日本人管理職では
夫婦以外にほとんど広がらない。
睡眠状態に関する話し相手として、ドイツでは「職場の同僚」43%、
米国では「上司」14%。
日本では同僚4%、上司はゼロ。

睡眠不足の仕事への影響について、職場での理解が進んでいない。
睡眠トラブルの陰に、景気低迷の影響も。
景気悪化による睡眠不足はあると思うかとの問いに、
日本の管理職は52%が「ある」。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz091113.html

県内「志願者減」の懸念 教員養成6年制

(岩手日報 11月17日)

教育改革を進める鳩山政権は、早ければ2012年から、
教員養成を従来の4年制から修士課程2年を含む6年制に。
教育実習は、現行2~4週間から1年(30単位)に延長。

本県では、少子化に伴い教員採用は狭き門となっており、
「6年間勉強しても、就職が保証されるわけではない」と
志願者の減少を心配する声も。
大学院の整備は、「人も金も必要」と新制度の実現を危ぶむ
大学関係者も少なくない。

民主党は、マニフェスト(政権公約)で、
「教員の質と数の充実」を打ち出していた。
その具体策の一つが、6年制。

受け皿として、現在全国に24校ある教職大学院を活用。
同大学院の定員は、計1300人足らず。
公立小中高で、毎年約2万人の教員採用者数に遠く及ばない。

岩手大教員養成機構長の塚野弘明教育学部教授は、
「教職大学院を設置するためには、教職経験を持つ
実務家教員の確保など、予算の裏付けや時間が必要に。
大学は、運営交付金の減額やそれに伴う教員の削減を
余儀なくされてきたので、受け皿の整備には難題が多い」

県内の10年度の教員採用試験は、受験者1777人に対し、
合格者が137人で倍率は13倍。
少子化に伴う学校の統廃合などで、高倍率が続いている。

岩手大教育学部3年佐藤清香さん=一関一高出身=は、
「経済的に親に迷惑をかけることになるので、
学生にとって6年制は厳しい。
今は修士を終えても、県内では簡単に教職に就けない。
こうした状況を改善しないと、志願者は減るのでは」

岩教組の豊巻浩也委員長は、「若くて一人前じゃなくても、
先生は子どもと接して育っていく。
現場が育てるという考えからしても、2年間学んで
先生の完成品をつくるという政策には賛同しかねる」と
6年制には慎重な姿勢。

文科省は、教育実習の期間延長に加え、
教員免許更新制度の廃止などの方針を示している。
塚野教授は、「これまでの教員養成カリキュラムは、
『理論と実践の融合』などに課題。
学校現場は、学級崩壊やモンスターペアレント、多忙化など
年々大変になっており、大学の養成と現場での育成が
うまく連携するような制度を望みたい」

◆教職大学院とは

より高い専門性を教員に求める社会の要望に応えるため、
文部科学省の中央教育審議会が設置を提言、2008年開設。
修業年限は2年で、45単位以上を修得すると教職修士の学位。
実習重視の狙いもあり、「専任教員の3割以上は、
5年以上の実務の経験を有する者(実務家教員)」などの設置基準。
東北では、宮城教育大と山形大が設置。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091117_16

2009年11月24日火曜日

総合学科高校(5)就職組も基礎学力磨く

(読売 11月17日)

基礎学力の習得に、力を入れる学校が出てきた。

世界遺産「熊野古道」が通る三重県熊野市。
県立木本高校を訪れると、2年生の教室で現代文の授業。
基礎学力の定着のため、同校では6年前から、
国語、数学、英語の3教科を、すべての生徒が必ず履修。

もともとは地域の伝統校。
1994年、普通科に加えて総合学科を新設し、全国で初めて
総合学科を導入した七つの学校の一つ。
選択科目が多い2、3年では、かなり自由度の高い選択を認めた。
「本当に自由に生徒が科目を選べた」と、榎本和能校長(56)。

進学する生徒が多い中、数学や英語などを選択しない生徒が、
総合学科の導入当初から、ごく少数とはいえいた。
就職するから必要ないといった理由。
「教師の間で『これでいいのか』と、徐々に心配が広がっていった」、
当時を知る進路指導主事の山口菊夫教諭(48)。

就職試験に落ちる生徒に、英語などを取っていない者がいた。
総合学科導入から6年後、卒業生の追跡調査をし、
「もっと勉強をしておけばよかった」と考える者がいる。
3教科の必修化は、こうした懸念材料が積み重なった末のこと。

数学と英語では、同じ教科でも生徒の進路に応じて難易度を分け、
使う教科書も変える。
大学を受験しない生徒でも、基礎は身に着けてほしい。
事務職の就職を希望する3年の橋本はるかさん(18)は、
「就職試験でも、3教科は出てくるので勉強は必要」

「就職してから、大学などに入り直すこともある。
そんな時に基礎学力がないと困る。
生きていくためには基礎学力は必要で、
それを教えるのは学校の責任」と榎本校長。

高知県立高知東高校でも、2003年度から全学年で3教科を必修。
同じように、基礎学力を向上させるのが狙い。

学んでおかなければ、将来困る可能性があるのはわかっても、
苦手なままだと意欲はわかない。
生徒が授業を理解できるよう、学校側も骨を折る。
3教科とも習熟度別に分け、20~30人程度の少人数で学ぶ。

同校でも、最初は自由な選択を認めていた。
基礎学力を身に着ける科目を選ぶよう、
個別指導などで促すには限界。

教務主任の小島圭介教諭(46)は、
「進学でも就職でも、基礎学力がないと社会は受け入れてくれない。
基礎の上に、特技を伸ばすようにしないといけない。
難しい勉強でも取り組む習慣がつけば、困難なことに当たっても、
その経験を生かせる」

高校で学ぶ基礎学力は、生徒の将来の基礎へとつながっていく。

◆基礎学力の定着

総合学科の高校で、最も多く指摘されている学習指導面の課題。
近畿地区総合学科高等学校長協会が2007年、
全国の協会加盟の校長を対象にした調査で
学習指導面の課題を聞いたところ、
最多は、38%の学校が挙げた「基礎学力の定着」(複数回答)。
「家庭学習をしないこと」(24%)、「学習意欲の低下」(17%)が続いた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091117-OYT8T00289.htm

地方大学をイノベーションの核に 新プログラム発足

(サイエンスポータル 2009年11月17日)

地域・大学、卓越研究者チーム、イノベーション創出を
キーワードとする科学技術振興機構の新プログラムがスタート、
信州大学と山形大学が最初の拠点に採択。

新プログラムは、内外で抜きんでた評価を得ている
研究者を抱える地方大学で、内外から3人の卓越した
研究者を招くめどのある大学が採択条件。
年2億2,000万円の委託費(間接経費を含む)を5年間、
科学技術振興機構(JST)が支出、地域は大学、自治体、企業が連携、
JSTの委託費(直接費)の2分の1を支出することが求められる。

5年間のプロジェクト終了後、5年で企業化が見込める
テーマであることも条件となり、中核研究者は十分こたえられる
独創的で、企業化の明確な目標を持ち得る研究実績と能力を
有することが求められる。

プログラム初年度に採択された信州大学の中核研究者、
遠藤守信・工学部教授兼カーボン科学研究所長は、
ナノカーボンをベースに新たに異種原子などを導入した研究で
内外に知られる。
米国、メキシコなどから3人の卓越研究者を招聘してチームを結成、
企業とも連携し、高性能エネルギー貯蔵デバイスや超高機能複合材を
はじめとした「エキゾチックナノカーボン」研究を推進、
新地域産業の創出も目指す。

山形大学の中核研究者、城戸淳二・大学院理工学研究科教授は、
有機エレクトロニクスの研究業績で内外に知られる。
有機太陽電池分野、有機トランジスタ分野の卓越した研究者を
国内外より招聘し、有機エレクトロニクス分野全体をカバーする
国際的研究拠点を形成、「大面積」、「フレキシブル」、「安価」という
有機エレクトロニクスの長所を活用した製品の実用化と、
山形県への関連産業の集積を目指す。

産学連携が十分な成果を挙げていないという指摘ととともに、
旧帝大を中心とするごく少数の大学に研究費と人材が
集中していることの弊害を懸念する声。

JSTの新プログラムは、産学連携による地域の
産業育成・活性化に加え、
特定分野に強い地方大学を増やしていくことで、
日本全体の大学のレベルアップやイノベーション創出能力を高める。

http://scienceportal.jp/news/daily/0911/0911171.html

長英は一流の知識人 水沢で没後160年記念シンポ

(岩手日報 11月16日)

奥州市水沢区出身の江戸時代の蘭学者高野長英の
没後160年を記念するシンポジウム「高野長英を大いに語る」は、
奥州市水沢区の市文化会館で開かれた。

研究者、作家らがパネル討論、幕府の追っ手を逃れながら、
国と民衆の将来を憂い学問に命をささげた長英の情熱について。
実行委(委員長・相原正明市長)が主催、約200人が聴講。

平塚均高野長英顕彰会長の進行で、野村正雄元東大教授、
作家の高橋克彦さん、長英に関する著書がある千田捷熙さん、
佐久間賢市教委歴史遺産課長がパネル討論。
長崎遊学から幕政批判を展開するまでをテーマに、長英像を語った。

長英が師事したオランダ人医師シーボルトとの関係について、
高橋さんは「長英は一流の知識人で、シーボルトと同じ目で
日本を見ることができた」と指摘。
「シーボルトは、外国人として日本での行動が制限されていたが、
長英を『窓』に日本を知った」と紹介。

長英は、郷里水沢を捨て幕府に追われながらも、蘭学を追究。
千田さんは、「背景には、民を飢えや疫病から救いたいとの熱意。
西洋の知をかみ砕き、国難に対処したいという情熱があった」。
佐久間課長は、「郷里では、自分の知識を活用できそうにないと考えた」。

高橋さんは、「当時の時代と政治が長英を必要としなかった。
つらい時代だった。
今こそ長英のような見識と意志、行動力を備えた人が
求められているのではないか

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20091116_11

プロ野球・千葉ロッテマリーンズの西岡剛選手(25)が…

(2009年11月17日 毎日新聞社)

プロ野球・千葉ロッテマリーンズの西岡剛選手(25)が、
白血病患者を支援するため、今季の安打1本につき1万円を、
NPO法人「全国骨髄バンク推進連絡協議会」へ寄付。

首位打者と、200万円以上の寄付を目標に掲げ、
「闘病する方々を勇気づけたい」との思いを込めて打席に。
最終的に、パ・リーグタイ記録の先頭打者本塁打8本を含む
118本のヒットを放った。

「病気と闘っている人のために、何らかの形で
自分にできることはないかと、ずっと前から考えていた」という西岡選手。
「お口の恋人、ロッテ」の主将らしく、
口だけではなく有言実行だった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/11/17/111326/

2009年11月23日月曜日

総合学科高校(4)進路指導 きめ細かく

(読売 11月14日)

多様な進路希望に応える総合学科で、
キャリア・アドバイザーの存在は大きい。

4年前、総合学科高校へと衣替えした県立福岡講倫館高校
進路相談室に、3年の女子生徒(17)が入ってきた。

生徒の志望は、「ディスク・ジョッキー(DJ)」。
ライブで音楽をかけ、作曲も手がけるDJを夢見る。
もともとは進学希望。
得意の数学で国立大学に入り、「音響設計」を学ぶ計画。

1年の頃から相談に乗ってくれた末松徳昭教諭(51)に、
進路変更を打ち明けた。
「大学で1番を取れる訳じゃない。
DJの世界で、自分の個性を出したい」

末松教諭は聞き役に回り、DJになるための道筋を
生徒に描かせている。
他の教諭とあまり会話をしないという女子生徒は、
「末松先生と話すのが面白い」と笑顔を見せた。

「普通科だったら、『変わっている子』で切られてしまう。
力が発揮できる場所を自分で見つけて、納得するまで考える。
そのように導くのが、総合学科の方向性」と末松教諭。

同校のスローガンは、「生徒の選択力」。
制服のネクタイやリボンの色から、修学旅行先まで、
学校生活の多くは生徒の判断で決まる。
科目を選んで組む時間割も、進学組か就職組かによって十人十色。

末松教諭のような「キャリア・スタッフ」は、校内に11人。
空いた時間で、小論文の添削や面接指導にあたるなど、
指導に駆け回っている。

「ある面だけの色をそろえようとすると、ほかの面の色が
バラバラになるルービックキューブのようなもの。
普通科だと、大学の合格という数字で成果は見えるが、
総合学科では、すぐには見えにくい」
教務主任の小山潤教諭(46)は、進路指導の難しさを、そう表現。

進路指導のノウハウを民間に求めるところも。
鳥取県教育委員会は、2003年度から、企業の総務や
人事の経験者を、キャリア・アドバイザーとして採用
県内17の高校に配置。
不況で新卒者に対する求人数が伸び悩む中、民間出身者に
求人開拓や面接指導を委ね、就職の道を開く狙い。

大手電機メーカーの元回路設計者。
総務のほか、経理や海外駐在の経験もある岡野宗民さん(61)は、
総合学科高校の県立青谷高校のアドバイザーに。
じっくりと生徒と話し合って希望を決め、外を歩いて
採用してくれそうな企業を見つけるのが主な仕事。

家庭の経済事情や、興味関心の変化など、
進学・就職を切り替える子もいる。
岡野さんは、「総合学科では、科目を自由に選べる反面、
目的を見失って3年になっても進路が定まらないと、
必要な科目が取れずに選択肢が狭まることもある。
そういった生徒の軌道修正が自分たちの役割

労力のかかる進路指導だが、生徒と向き合う時間は濃密。
総合学科ならではと言えるのかもしれない。

◆キャリア・アドバイザー

進路指導にとどまらず、職業観や勤労観を伝える支援相談員。
国立教育政策研究所の調査によると、
専任のアドバイザーを置いている総合学科の高校は、
回答のあった197校のうち22校(11.2%)。
教師が兼務するところが多く、
「進路のベクトルが一つではないので、時間的な余裕がない」などの声。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091114-OYT8T00273.htm

コエンザイムQ10で老人性難聴予防?東大などメカ解明

(読売 11月14日)

年を取るにつれて耳が遠くなる「老人性難聴」は、
耳の奥の「内耳」にある感覚器の細胞が、
遺伝子の働きで死滅して起きることを、
東京大などがマウスの実験で明らか、米科学アカデミー紀要に発表。

抗酸化物質で遺伝子の働きを抑えると、発症しない。
哺乳類の耳の仕組みは共通し、人の難聴予防につながると期待。

染谷慎一・東大特任助教らは、
損傷を受けた細胞を自殺に導く、Bakという遺伝子に着目。

マウスのBakを働かないようにすると、人間の50歳に相当する
生後15か月でも、聴力がほとんど低下しないことを確認。

Bakの働きを抑えられるか調べるため、
17種類の抗酸化物質を餌に混ぜてマウスに与えたところ、
栄養補助食品(サプリメント)として市販されている
コエンザイムQ10など、3種類が難聴予防に効果。

人間の成人にとって、1日20ミリ・グラムにあたる量の
コエンザイムQ10を、生後4か月からマウスに与え続けると、
生後15か月で、同じ月齢のマウスが45デシベル以上の音しか
聞き取れないのに対し、12デシベルの小さい音を聞き取れる。

Proc Natl Acad Sci U S A. 2009 Nov 17;106(46):19432-7.
Age-related hearing loss in C57BL/6J mice is mediated by Bak-dependent mitochondrial apoptosis.
Someya S, Xu J, Kondo K, Ding D, Salvi RJ, Yamasoba T, Rabinovitch PS, Weindruch R, Leeuwenburgh C, Tanokura M, Prolla TA.

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20091114-OYT1T00926.htm

原発まともに動いていたら温室効果ガス90年比3.1%減

(サイエンスポータル 2009年11月12日)

国立環境研究所は、2008年度の温室効果ガス排出量が
基準年(1990年、代替フロンは95年)の排出量に比べ、
1.9%増えているとの速報値を発表。
原子力発電所の稼働状況が、長期停止の影響を
受けていない98年当時と仮定して、90年比で3.1%減少。

速報値によると、08年度のCO2を初めとする
温室効果ガスの排出量は、12億8,600万トン(CO2換算)。
前年に比べ、6.2%減少。
この理由について、国立環境研究所は、金融危機の影響による
08年度後半の急激な景気後退でエネルギー需要が減少、
石油や石炭の使用に伴うCO2排出が減ったこと。

まだ1990年に比べ、1.9%の上昇に。
京都議定書で定められた日本の目標は、90年比6%減、
減少どころか逆に排出増となっているが、
原子力発電所がまともに動きさえすれば、
3.1%の排出量削減も可能。

京都議定書では、温室効果ガス(C02、メタン、一酸化二窒素、
代替フロン等3ガス)の排出量削減目標を、
1990年排出量比で定めている。
代替フロン等3ガスについて、95年を基準年。

08年度の排出量では、全排出量の約95%をCO2が占めた。
内訳を見ると、工場など産業部門がC02排出量の35%、
最大の排出源が、90年比では13.0%減。
CO2排出の19%を占める商業・サービス・事業所などの
「業務その他部門」は、90年比で41.3%増、
14%を占める家庭部門も90年比34.7%増と、
削減目標達成の足の引っ張り役に。

速報値は、各種統計で08年度の数字が公表されていない
ものについては、前年の数字を代用してまとめ、
2010年4月に報告予定の確定値とずれが生じる可能性。

http://scienceportal.jp/news/daily/0911/0911121.html

サッカーW杯で育つ「兄弟」

(日経 2009-11-17)

2010年、サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会。
80年のW杯の歴史で、初めてアフリカ大陸で
金色のトロフィーが競われる。

この世界的なイベントを心待ちにするのが、アディダスとプーマ
プロスポーツの頂点であるサッカーは、グローバル化の象徴。
ドイツの片田舎で生まれ育った「兄弟」会社は、
W杯にもまれ、たくましさを増していく。

「アディダスとプーマがサッカーで対決」。
今年、ドイツのメディアは両社の社員による試合の実施を報じた。
プーマが支援する世界規模の平和イベント「ピース・ワン・デー」の一環。
約60年の歴史がある両社は、交流がなく、これが“和解”と映った。

ドイツ南部ニュルンベルク近郊のヘルツォーゲンアウラッハ。
ルドルフとアドルフのダスラー兄弟は、1920年代に
スポーツシューズのメーカーを起業。

靴職人の父の伝統を受け継ぎ、当初の工房は母の洗濯部屋。
顔が利く兄ルドルフと職人肌の弟アドルフは、
五輪などを足がかりに社業を拡大。

第2次世界大戦後、ルドルフはプーマ、アドルフはアディダス設立。
小さな町で、2人の創業経営者が対面することはなく、
妻子を含めて家族同士の交流もなくなった。

ナチスの党大会が開かれたニュルンベルクとその周辺は、
終戦後、連合国によるニュルンベルク裁判が行われ、
責任追及も厳しかった土地柄。

創業家メンバーらを丹念に取材した女性ジャーナリストは、
そんな時代を映した2つの家族の仲たがいが、
兄弟がたもとを分かつ原因に。

2人が故人となり、家業として五輪や欧州サッカーの
有力チーム・選手を争奪する時代は、80年代の経営不振で終止符。
スポーツビジネスのすそ野は広がり、サッカー用品で世界シェアの
4割近くを抑えるというアディダスに、ブランドの「ピューマ」が
襲いかかるようにプーマが挑んでいる構図。

前回のW杯ドイツ大会は、まさに前哨戦。
アディダスはドイツ、日本など6チームにユニホームを供給。
プーマは12チームに供給、中でもアフリカから出場した
全5チームに供給する熱の入れよう。
結果は、プーマのイタリアが優勝。アディダスはフランスが準優勝、
ドイツが3位で、1本取られた形。

国際サッカー連盟(FIFA)とのパイプを生かすアディダスは、
W杯のパートナーとして試合球なども供給。
その地位も、未来永劫続くとは限らない。

スポーツ用品世界首位の米ナイキも、本腰。
特にアディダスは、ドイツ大会後、
この強敵に煮え湯を飲まされ続けている。

ナイキは、94年の米国大会時からサッカーに本格参戦。
ブラジル、オランダなど強豪を味方に。
ドイツ大会後、イングランド代表が身につけるアンブロを傘下に。
長年、アディダスと組んできたフランスのサッカー協会を取り込み、
ドイツ代表のスポンサーの地位も脅かした。

54年スイス大会では、代表チームのシューズをアドルフが
自ら調整、「ベルンの奇跡」といわれた初優勝に貢献。
2回の優勝も、アディダスの「3本線」のユニホームでドイツは戦った。

選手たちの足元には、ナイキのシューズも。
協会も、伝統だけでは高額のオファーを示すナイキからは
ドイツ代表を守れない。
アディダスは、契約金を引き上げ、協会との関係をつなぎとめた経緯。

もはや後発とは言わせないナイキの攻勢。
南アや次回大会の開催地となるブラジルといった、
より広い市場を巡る競争。
これからの厳しい戦いに勝ち残るため、アディダスとプーマも
これまでと違う次元の経営を求められるのは必至。

米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)からアディダスに転じた
ヘルベルト・ハイナー社長は、ウインタースポーツの低迷を
見越して、スキー用品のサロモンを売却
06年、米リーボックを傘下に収め、ナイキのおひざ元で
メジャーリーグやNBAのスポンサーに名乗りを上げた。

プーマは、フランスのPPR傘下に飛び込む。
30歳で経営の立て直しを任されたヨッヘン・ツァイツ社長は、
ファッション性の高さを再生の基軸に置く。
プーマの店舗・売り場は、ドイツの町でもおしゃれなスポットに
生まれ変わった。
グッチなど、高級ブランドを擁するPPRの目に留まるのも当然。

こうした試みの成果はすぐには見えてこない。
サッカー欧州選手権と北京五輪に沸いた08年は、
秋から金融危機と世界的な消費低迷に襲われた。
今年7~9月期のアディダスとプーマの最終利益は、2ケタ減。
アディダスは構造改革を決め、人員削減やコストの
抜本的な見直しに乗り出している。

ドイツの直営店で売られているドイツ代表のユニホームも、
「メード・イン・ジャーマニー」ではない。
中国やベトナムなどに広がった生産拠点で作られ、
もう一段のコスト低減の余地がある。
欧州を一歩出れば、北米やアジアでは、より顧客に近づく
販売網の構築も求められる。

アディダスは、日本代表の新ユニホームを発表。
開催国の南ア、アルゼンチンなど新興市場の「広告塔」も
出場が決まっている。
プーマが、中期的視野で育ててきたアフリカ戦略も真価が問われる。
同族で築いたビジネスモデルを深化させ、さらに成長できるか?
その試金石となる南ア大会のカウントダウンまで、あとわずか。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon091116.html

2009年11月22日日曜日

総合学科高校(3)発想変え「工業」学ぶ

(読売 11月12日)

総合学科で学ぶ工業は、専門学科で学ぶ工業とどう違うか?

「値段は3000円を切りたい」、
「いや、それは厳しいよ」
東京都立葛飾総合高校の生徒5人が、
地元企業の「カナック企画」の社員と社内で議論。

地域と連携して、ものづくりの楽しさを学ぶ同校の選択授業
「地域とものづくり」。
4人は女子生徒で、同社と一緒にオリジナルのUSBメモリーを企画。
デザインは、女子生徒が考案したピアノの鍵盤模様のものを採用、
この日は、価格や売り出し方などを話し合った。

「高校に来てから、宝石のデザインに興味を持った。
その専門学校に進むつもり」と渡辺悠里さん(17)。

同校は2年前、普通科と工業科が統合して開校。
工業は、総合学科の六つの分野の一つに変わった。

「工業高校の時代と比べ、授業の時間は短く、深くもできない」と、
前身の工業高校から勤める石塚正紀教諭(38)。
総合学科は、1年でほとんどが必修科目のため、
工業を学べるのは2、3年。
3年間で専門性を磨く工業高校とは大きく異なる。

確かに専門性は薄れるが、総合学科は、専門学科とは別の学科。
発想を変えた」と、国分達夫校長(55)。
開校前、中学生約2000人にアンケートを取り、
工業系は人気がなく、生徒集めに苦労することが見込まれた。

中小企業が多い土地柄。
区や企業、商工会議所などを訪ねた結果、新たに設けたのが
「地域とものづくり」や「デザイン」などの科目。
工作機械を使う仕事が減っていること、デザインは
就職に生かせるとの意見。

授業自体では、生徒に考えさせる内容を多くするようにした。
工業高校での実習は4時間、今は2時間と短い。
加工作業をするにしても、どんな用具を使うかなど自分で考えさせる。

「ものづくりの楽しさを知ってもらい、大学などで深めてもらう。
その動機付けをすることが役割」
国分校長は、総合学科で教える工業をそう考えている。

総合学科では専門性を高められないため、
学科として独立させる学校も。
大分県立日出暘谷高校では2013年度、総合学科の系列から、
工業の授業を、単独の「工業科」として独立させる予定。

「2年から学ぶのでは、どうしても駆け足に。
余裕を持って、3年かけて学ぶのがふさわしい姿」と、
工業系の授業を担当する安東健次教諭(50)。
町内に工業高校はなく、近くに大きな工場があることも理由。

発想を変えて新たな役割を目指すか、専門性を高めていくか。
各地で事情を踏まえつつ、ふさわしいあり方を確立しようとしている。

◆専門学科

工業や農業、商業などの専門教育を主に行う学科。
文部科学省の学校基本調査によると、主な専門学科の生徒数の
割合(本科)は工業科が8%、商業科が6.7%、農業科が2.6%。
普通科は72.3%、総合学科が5%。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091112-OYT8T00263.htm

蘇寧電器の孫総裁「ヨドバシ、ビックに注目」

(日経 11月13日)

中国家電量販店最大手の蘇寧電器集団(南京市)が、
日中で攻勢をかけている。
日本では家電量販店、ラオックスの筆頭株主となり、
日本市場進出を果たした。
中国では傘下の上場企業、蘇寧電器が店舗を大幅に増やす計画。
日中の家電市場で着実に存在感を強くしている
孫為民総裁に、今後の戦略について聞いた。

——中国の家電市場は急拡大。今後の出店計画は?

「今後10年は年200店増やし、2020年に中国国内で
3000店を目指す。
中国の主要3000都市のうち、蘇寧の店があるのは300都市。
未出店の都市は、人口規模や所得が十分でなく、
まだ我々の物流拠点もカバーできないが、今後は広げる余地がある」

「中国以外では、今年筆頭株主になったラオックスに加え、
年末までに香港の企業とも資本提携する計画。
香港と日本を地盤に、世界での発展を考えたい

——ラオックスとの提携の進ちょくは?

ラオックスが、2年かけて赤字から脱け出すのが目標。
この2、3カ月、不採算店を閉め、組織も改めた。
中国で、ラオックス単独の店をつくる考えはないが、
蘇寧の既存店で日本の商品を売りたい。
今、中国市場に合う日本の商品を選んでいるところ」

「日本の商品を中国で売るだけでなく、
日本で家電や関連部品を設計し、中国で委託・加工する
自主企画(プライベートブランド=PB)の製品を開発、
日中で同時に売る考え」

——PBを扱う狙いは?

「中国でも、家電の販売競争は激しく、メーカーから同じものを
仕入れて競争をしても、利潤が上がらない。
PBならばコストも減らせるし、製品も差別化できる。
有名ブランドの特定型番を独占的に扱い、消費者に
受け入れられる価格で、粗利も高めに設定できる」

PBでは、日米の大手メーカーと協力する。
日本では、複数の大手企業とお互いの意向を確認。
ラオックスとの提携で、メーカー首脳陣との話し合いもスムーズ。
数年間は売上高の5~8%、将来は15~20%を目指す」

——世界の家電販売市場はどう変わると見るか?

成熟した先進国は、新しい市場を開拓する発展モデルを探る必要。
新興国の市場は、国内外から新しい投資を呼び込んで伸びる。
今の中国がまさにそう。
家電だけでなく、百貨店もスーパーも外国の企業が参入」

「中国の小売店は、展示などをメーカーに任せることが多かったが、
我々の新店は、商品選びから売り場づくりまで店の自主性を高めた。
日米の量販店に学んだ手法を取り入れた」

——ヤマダ電機が中国に出店する。

「中国市場はとても広く、全土をカバーするチェーンは少ない。
そこに参入するのは商機。
我々は、既に出店競争や、有力な取引先をどれだけ確保するか、
といった競争に直面。
ヤマダが来ようが来なかろうが、既につかんだ市場を
どれだけ今後も維持できるかに尽きる」

——日本の家電量販店で関心のあることは?

我々が注目するのは、ヤマダやコジマよりも
ヨドバシカメラやビックカメラの経営モデル。
研究すべきところが色々ある。
特にヨドバシは、世界中の家電量販業界で最も強みのある企業」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int091111.html

けせん環境フォーラム開催 身近な行動に理解

(東海新報 11月15日)

フォーラムは、「地球温暖化を防ぐためにできること」、
大船渡湾水環境保全計画推進協議会、
三陸町地域の美しい水環境をつくり守る協議会、
気仙川流域基本計画推進協議会、けせん菜の花エコネット、
県大船渡地方振興局が主催。
環境保全活動への参加を促進しようと企画。

マルチスペースでの開会行事では、三陸町地域の
美しい水環境をつくり守る協議会の中嶋久吉会長が、
環境は自分たちが守り、育てるという共通認識に立てば、
解決の方向へ進んでいくだろう。
地域の皆さんが理解を深めてほしい」
振興局の高橋克雅局長も、環境意識の向上に期待を寄せた。

「未来に残したい気仙の風景」写真コンクールの表彰式が開催、
昨年に続き最優秀賞を獲得した村上廣一さん
(大船渡市、人と自然部門)、各入賞者に賞状などが贈られた。
節電に取り組んだ成果を競った
エコ・チャレンジ入賞者・団体への表彰も行われた。

岩手日報社の鹿糠敏和大船渡支局長が、
「南極=地球の環境センサー」と題し、
昨年にかけて南極観測隊に同行した経験を交えながら講演。

すみた森の案内人の佐々木義郎代表、
㈱マイヤの新沼敏宏販売部統括マネージャー代理、
陸前高田市地域女性団体協議会の村上末子会長、
甫嶺小学校の五、六年生児童による活動発表も。

アトリエでは、家族連れらが気仙の植物を使った
リースづくりに挑戦。
会議室では、ナタネ油のけんちん汁やシカ肉の缶詰などの試食、
訪れた市民らは環境保護に向けた幅広い取り組みや
アイデアに理解を深めていた。

http://www.tohkaishimpo.com/

米で「禁煙ワクチン」の治験開始、抗体でニコチンを阻止

(CNN 11月10日)

米国で、たばこをやめたい人のための「禁煙ワクチン」が開発、
国立衛生研究所の薬物乱用研究所(NIDA)から
1000万ドル(約9億円)の助成を受け、
このほど最終段階の治験が始まった。

禁煙ワクチン「ニックバックス」を製造しているのは、
米医薬品メーカーのナビ・バイオファーマシューティカルズ。
たばこを吸って快感が得られるのは、脳がニコチンに刺激される。
ワクチンを投与すると、喫煙者の血中のニコチン分子に抗体が結合、
大きくなったニコチン分子は脳に到達できなくなる。

その結果、神経伝達物質のドーパミンが放出されなくなり、
快感を感じなくなるという仕組み。
脳に到達するニコチンの量が徐々に減れば、
たばこを吸いたいと思わなくなり、禁煙に成功する確率が高まる。

米国がん協会の統計によると、米国の喫煙者4400万人のうち、
70%がたばこをやめたいと考え、毎年約40%が禁煙に挑戦するが、
禁煙を続けられるのは4―7%止まり。

過去の臨床試験では、ニックバックスを利用した被験者の
30―35%が長期にわたる禁煙に成功、副作用はほとんどない。

今回の治験は、約1000人を対象、
効果や副作用を調べて一般的な療法と比較、
安全性に問題がないかどうかを検証。
結果は、2011年9月までに出る見通し、
これを受けて米食品医薬局(FDA)に承認を申請。

国立衛生研究所幹部のフランシス・コリンズ氏は、
ニコチン中毒による死者は、米国だけで年間50万人、
禁煙を成功させるための効果的な療法を見つけるのは、
極めて困難だった。
今回の抗ニコチンワクチンの治験で、
この問題の解決に向け、大きな希望が持てる」

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200911100024.html