2009年11月23日月曜日

総合学科高校(4)進路指導 きめ細かく

(読売 11月14日)

多様な進路希望に応える総合学科で、
キャリア・アドバイザーの存在は大きい。

4年前、総合学科高校へと衣替えした県立福岡講倫館高校
進路相談室に、3年の女子生徒(17)が入ってきた。

生徒の志望は、「ディスク・ジョッキー(DJ)」。
ライブで音楽をかけ、作曲も手がけるDJを夢見る。
もともとは進学希望。
得意の数学で国立大学に入り、「音響設計」を学ぶ計画。

1年の頃から相談に乗ってくれた末松徳昭教諭(51)に、
進路変更を打ち明けた。
「大学で1番を取れる訳じゃない。
DJの世界で、自分の個性を出したい」

末松教諭は聞き役に回り、DJになるための道筋を
生徒に描かせている。
他の教諭とあまり会話をしないという女子生徒は、
「末松先生と話すのが面白い」と笑顔を見せた。

「普通科だったら、『変わっている子』で切られてしまう。
力が発揮できる場所を自分で見つけて、納得するまで考える。
そのように導くのが、総合学科の方向性」と末松教諭。

同校のスローガンは、「生徒の選択力」。
制服のネクタイやリボンの色から、修学旅行先まで、
学校生活の多くは生徒の判断で決まる。
科目を選んで組む時間割も、進学組か就職組かによって十人十色。

末松教諭のような「キャリア・スタッフ」は、校内に11人。
空いた時間で、小論文の添削や面接指導にあたるなど、
指導に駆け回っている。

「ある面だけの色をそろえようとすると、ほかの面の色が
バラバラになるルービックキューブのようなもの。
普通科だと、大学の合格という数字で成果は見えるが、
総合学科では、すぐには見えにくい」
教務主任の小山潤教諭(46)は、進路指導の難しさを、そう表現。

進路指導のノウハウを民間に求めるところも。
鳥取県教育委員会は、2003年度から、企業の総務や
人事の経験者を、キャリア・アドバイザーとして採用
県内17の高校に配置。
不況で新卒者に対する求人数が伸び悩む中、民間出身者に
求人開拓や面接指導を委ね、就職の道を開く狙い。

大手電機メーカーの元回路設計者。
総務のほか、経理や海外駐在の経験もある岡野宗民さん(61)は、
総合学科高校の県立青谷高校のアドバイザーに。
じっくりと生徒と話し合って希望を決め、外を歩いて
採用してくれそうな企業を見つけるのが主な仕事。

家庭の経済事情や、興味関心の変化など、
進学・就職を切り替える子もいる。
岡野さんは、「総合学科では、科目を自由に選べる反面、
目的を見失って3年になっても進路が定まらないと、
必要な科目が取れずに選択肢が狭まることもある。
そういった生徒の軌道修正が自分たちの役割

労力のかかる進路指導だが、生徒と向き合う時間は濃密。
総合学科ならではと言えるのかもしれない。

◆キャリア・アドバイザー

進路指導にとどまらず、職業観や勤労観を伝える支援相談員。
国立教育政策研究所の調査によると、
専任のアドバイザーを置いている総合学科の高校は、
回答のあった197校のうち22校(11.2%)。
教師が兼務するところが多く、
「進路のベクトルが一つではないので、時間的な余裕がない」などの声。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091114-OYT8T00273.htm

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