(読売 11月17日)
基礎学力の習得に、力を入れる学校が出てきた。
世界遺産「熊野古道」が通る三重県熊野市。
県立木本高校を訪れると、2年生の教室で現代文の授業。
基礎学力の定着のため、同校では6年前から、
国語、数学、英語の3教科を、すべての生徒が必ず履修。
もともとは地域の伝統校。
1994年、普通科に加えて総合学科を新設し、全国で初めて
総合学科を導入した七つの学校の一つ。
選択科目が多い2、3年では、かなり自由度の高い選択を認めた。
「本当に自由に生徒が科目を選べた」と、榎本和能校長(56)。
進学する生徒が多い中、数学や英語などを選択しない生徒が、
総合学科の導入当初から、ごく少数とはいえいた。
就職するから必要ないといった理由。
「教師の間で『これでいいのか』と、徐々に心配が広がっていった」、
当時を知る進路指導主事の山口菊夫教諭(48)。
就職試験に落ちる生徒に、英語などを取っていない者がいた。
総合学科導入から6年後、卒業生の追跡調査をし、
「もっと勉強をしておけばよかった」と考える者がいる。
3教科の必修化は、こうした懸念材料が積み重なった末のこと。
数学と英語では、同じ教科でも生徒の進路に応じて難易度を分け、
使う教科書も変える。
大学を受験しない生徒でも、基礎は身に着けてほしい。
事務職の就職を希望する3年の橋本はるかさん(18)は、
「就職試験でも、3教科は出てくるので勉強は必要」
「就職してから、大学などに入り直すこともある。
そんな時に基礎学力がないと困る。
生きていくためには基礎学力は必要で、
それを教えるのは学校の責任」と榎本校長。
高知県立高知東高校でも、2003年度から全学年で3教科を必修。
同じように、基礎学力を向上させるのが狙い。
学んでおかなければ、将来困る可能性があるのはわかっても、
苦手なままだと意欲はわかない。
生徒が授業を理解できるよう、学校側も骨を折る。
3教科とも習熟度別に分け、20~30人程度の少人数で学ぶ。
同校でも、最初は自由な選択を認めていた。
基礎学力を身に着ける科目を選ぶよう、
個別指導などで促すには限界。
教務主任の小島圭介教諭(46)は、
「進学でも就職でも、基礎学力がないと社会は受け入れてくれない。
基礎の上に、特技を伸ばすようにしないといけない。
難しい勉強でも取り組む習慣がつけば、困難なことに当たっても、
その経験を生かせる」
高校で学ぶ基礎学力は、生徒の将来の基礎へとつながっていく。
◆基礎学力の定着
総合学科の高校で、最も多く指摘されている学習指導面の課題。
近畿地区総合学科高等学校長協会が2007年、
全国の協会加盟の校長を対象にした調査で
学習指導面の課題を聞いたところ、
最多は、38%の学校が挙げた「基礎学力の定着」(複数回答)。
「家庭学習をしないこと」(24%)、「学習意欲の低下」(17%)が続いた。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20091117-OYT8T00289.htm
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