2009年11月28日土曜日

エコナビ2009:スマートグリッド 本格導入へ始動

(毎日 11月15日)

鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領が、共同研究に合意した
次世代送電網「スマートグリッド(賢い送電網)」に注目。

ITを駆使し、自然エネルギーの大量供給や家庭での省エネを
可能にする「夢の技術」、オバマ大統領は環境関連産業で
経済を立て直す「グリーンニューディール」の柱。

日本でも実証実験が始まっているが、必要な投資は
6兆円に上るとの試算、本格導入に向けては課題も。

米国では、オバマ大統領が景気対策演説で、
「クリーンエネルギーに重点的に投資する」と宣言、

風力や太陽光などの新エネルギー開発が活発化。
スマートグリッドは、オバマ政権の目玉政策の一つ。
「新技術の集合体」(米エコノミスト)とも形容、
さまざまな業界を巻き込んで実証実験が繰り返されている。

米政府は、総額7872億ドル(約70兆円)の大型景気対策に、
スマートグリッド向け予算130億ドル(約1兆1700億円)を計上。
「100年前の技術が使われ、多大なエネルギーとコストの無駄」、
老朽化した送電網の整備に投資を振り向ける方針。

米政府が、スマートグリッドで狙うのは、
単なる送電網の整備だけではない。

最新の送電網と発電所に、全米の各家庭を結合することで、
省エネ、コスト削減、新たな産業育成と雇用創出を狙っている。

(1)各家庭の家電製品をネットワーク化、
(2)パソコンなどで自宅の電力需要を分刻みで把握、
(3)料金の安い時間帯に電力を購入し、自宅の電池に蓄電、
(4)プラグインハイブリッド車の電池を活用することで
エネルギー効率を高める--など、

近未来の省エネ家庭の中軸をスマートグリッドが担うことを想定。
スマートグリッドに関係する産業界は、電力やIT、家電など幅広く、
経済効果は大きい。
米政府は、米国内企業など計66社の最高経営責任者(CEO)を
集めて会合を開くなど、民間企業の取り組みを後押し。

日本のスマートグリッドは、太陽光発電の拡大に備えた
送配電システムを作る意味が最も大きい。

日本では、停電範囲を最小限に抑える仕組みや大規模工場の
電力需要などを把握するため、既にITが使われ、
送電網の老朽化による停電対策が急務の米国とは、事情が異なる。
太陽光発電を20年に05年比約20倍の2800万キロワット、
30年に約40倍の5300万キロワットに拡大する目標。
実現すれば、国内の原子力発電の設備容量(4800万キロワット)を
しのぐ規模に。

天候条件で、発電量が大きく変わる太陽光発電を、
大量に電力系統に接続すると、電力需給がうまく調整できず、
停電する可能性が。

安定供給には、大型蓄電池を設置して送電量を一定にしたり、
各地の太陽光発電設備の出力調整などが必要で、
スマートグリッドが必須。
経済産業省は、30年までの対策費用として最大6・7兆円がかかる、
との報告、「料金負担や公的支援のあり方を検討すべき」

宮古島など沖縄、鹿児島両県の離島10カ所で、
太陽光や風力発電を既存の送電網に接続したスマートグリッドを構築、
影響や経済性などを調べる3年間の実証実験を開始。
来年、日米共同で、米ニューメキシコ州で太陽光発電や蓄電池、
IT家電などを組み合わせた「スマートグリッドハウス」の実験。

首脳会談では、これらの実験成果を共有することなどに合意。
今後、新技術やシステムの国際標準化で、
日米が世界をリードできるかどうかが注目。
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◇スマートグリッド

情報通信技術を駆使し、各地での自然エネルギーの発電状況や
家庭の消費電力データを把握し、最も効率のいい電力の流れを
制御する仕組み。
省エネ、コスト削減に有効な次世代配電システム。
地域や目的により概念が異なるため、厳密な定義はまだない。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/11/15/20091115ddm008040056000c.html

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