2009年11月27日金曜日

塩分多めの食事で朝型に変身?

(日経 2009-11-13)

塩分を多めにしたり、炭水化物を少なめにした食事で、
朝が苦手な人も朝型に変身——
そんな期待が持てる研究が進んでいる。
食事の内容をちょっと変えるだけで、
体内時計の進み方を調節できるかもしれない。

「塩分が多めの食事を与えたマウスの体内時計は、
早く進むようになった」
農業・食品産業技術総合研究機構の食品総合研究所で、
食品が体内時計に与える影響を研究している大池秀明研究員。
マウスに、8%の塩分を混ぜた食事を与えると、
腎臓の時計遺伝子が働く時間が、通常の食事と比べ、
2時間程度前にずれた。

体内時計には2種類あり、明るさに左右される脳の時計と、
食事の時間に左右される臓器などの時計。
塩分で早く進むようになったのは、臓器の体内時計。
通常は、朝の食事でスイッチが入り、時計が狂ってくると
睡眠時間がずれ、朝の食事をする気にならないなどの影響。

産業技術総合研究所の大石勝隆・生物時計研究グループ長は、
女子栄養大学と共同で、
炭水化物が少ない食事が体内時計を進める。
マウスに、炭水化物が0.73%しかないエサを14日間与えると、
体内時計の遺伝子が働く時間が4~8時間早まった。
遺伝子が変異し、夜更かしで朝寝坊をするようになった
マウスでも、効果は確認。

塩分が多いえさを与えたマウスは、
腎臓の時計遺伝子Dbpが働く時間が早くなる。

炭水化物が少ない食事は、ケトン体ダイエットとして、
肥満の治療に使われている。
治療を受けた患者に、朝の目覚めが良くなったという人もいて、
人間でも効果が期待。
研究を進めている大石研究グループ長らは、
高脂血症治療薬で体内時計が進むこともつきとめ、
「薬よりも、食事で体内時計のずれを改善できれば」

赤ワインやコーヒーには、塩分などとは逆に、
体内時計を遅らせる働き。
赤ワインに含まれるポリフェノールを加えたマウスの
培養細胞では、体内時計の働きが3時間遅れる。
コーヒーも、マウスに飲ませると、体内時計が遅れ、
コーヒー以外のカフェインを多く含む飲料でも同様。

体内時計がずれ、生活のリズムがくずれると、
不眠だけでなく、糖尿病などの生活習慣病にも悪影響。
日常の食事でとる塩分を増やしたり、コーヒーを飲んだりして
体内時計のずれを調節できれば、
病気の治療がスムースに進められるかも。

こうした研究はまだ始まってまもなく、塩分や赤ワインなどが
体内時計に影響を与える詳しいしくみの解明はこれから。
研究が進めば、いろいろな食事の組み合わせで、
体内時計を進めたり遅らせたりできる可能性。

「みそ汁や焼き魚といった伝統的な日本食は塩分が多めだが、
朝からしゃきっとする効果があるのかもしれない」。
海外に向かう飛行機の機内食で時差ボケを予防したり、
夜型に慣れた受験生が試験前にみそ汁を多めに飲んで
試験当日に備えたり、といったことが常識になる日がくるかも。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec091111.html

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