2009年3月28日土曜日

盛岡、仙台藩合同で造営 駒ケ岳頂上の駒形神社奥宮

(岩手日報 3月27日)

奥州市水沢区の駒形神社(山下明禰宜)は、旧盛岡、仙台両藩に
またがる駒ケ岳(北上市・金ケ崎町、1129メートル)頂上の
同神社奥宮の老朽化を受け、住民ボランティアが人力で資材を
山上に運び、建て替える計画を進めている。

江戸時代は盛岡、仙台藩が交代で建て替えていたが、
藩境を超えて行うのは初めて。
関係者は、ロマンあふれる造営にしたいと張り切る。

駒形神社は、長く山頂に本殿が築かれてきたが明治以降、同区に移設。
山頂の社は、「奥宮」と位置付け。
奥宮は旧盛岡、仙台両藩の藩境線の起点、
江戸期には両藩が約20年おきに交代で建て替えてきた。

現在あるブロック造りの奥宮は、1961年築。
風雪と昨年の大地震による損壊が激しく、神社は早期の建て替えが必要。
造営実行委(高橋照治会長)を結成。

当初はヘリコプターでの資材運搬を考えたが、実行委員で藩境を研究する
佐藤克英さん(67)が、江戸期の史料に基づき木造とし、
人力で資材を山頂に運び上げては-と提案。
旧藩の枠を超え、「荷役登山」参加を募れば、地域の関心も高まると
「両藩合同造営」を決めた。

荷役ボランティア(約150人)は一般に参加を募り、建設費500万円を含む
総事業費1000万円のうち、800万円は地元企業などに寄付を呼び掛け。
8月着工、9月完成を目標に、地域力を結集した造営事業に育てる。

佐藤委員は、「藩境塚については、両藩領民が合同で維持管理していたが、
お宮の合同造営は記録にない」
高橋会長は、「藩境を超えて多くの人の善意を集め、
ロマンあふれるご造営にしたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090327_12

人材投資の重要性 企業は再認識を

(日経 2009-03-16)

東大教授・高橋 伸夫氏
東北大経済学部助教授などを経て98年から現職。
専門は経営学、経営組織論。
著書に「虚妄の成果主義」などがある。51歳。

----近年、企業の人材育成がおろそかになっているのでは?

「バブルが崩壊して以降、ここ10-15年はそういう面はあった。
派遣社員など非正規従業員が増加したのは、
人材育成がおろそかになっていた1つの証拠。
製造業の工場では、若い正社員が非常に少なくなっていた。
同じ経営資源であっても、金は簡単に集まるが、人は育てるのに時間がかかる。
経営者はそれを理解していながら、実行してこなかった。
横並び意識の強い経営者が(コスト対策などのために)、
他社をまねて派遣を使うようになった面も」

----不況の今、人を育てる重要性を見つめ直す好機では?

「IPO(株式新規公開)ブームに見られたように、
もうけたいだけなら人材の育成を考えなくて済む。
ある時代だけを謳歌するこうしたキリギリス型でなく、
ずっと生き延びるアリ型の企業を望むなら、人を育てなければならない

「経営戦略論の分野では、利益の源泉を企業自身に求める流れができた。
企業が持つ人材、歴史、ロケーションなどに利益の源泉があるという
考え方で、リソースベース理論。
それまでは、自社製品の市場シェアなどで戦略を決める考え方が強かった」

----人材が育つシステムとして年功制を支持。

「人が働くのは、仕事が面白いから。
年功制では、最初は未熟で仕事がつらくても、頑張れば面白い仕事ができる
見通しを新入社員が持てる。
『未来』の重みがあり、安心して働けるシステム。
私は、『未来傾斜の原理』と呼んでいる

「単に賃金を増やしても、不満を防止できるだけ。
だから成果主義は間違っている。
必要なのは、人件費にコスト意識を持つことではない。
10年後、20年後の未来を見据えた人材への投資こそ求められている」

----人材への投資とはどんなことか?

「職場の内外での教育は、重要な投資だが、それだけではない。
人が真剣に働くのは、尊敬する人のように自分がなりたいから。
その人の近くで一緒に働かせるのも、会社を成長させる投資になる」

リソースベース理論の源流の1人、ペンローズという学者は、
これを『隠れた投資』と名付けた。
1人で大企業を管理するのは無理で、経営幹部を意味する
マネジメントチームが育てばよい。
これには、仕事を共にする経験が必要であり、
様々な費用は投資でなく、通常の当期費用として計上されている。
視点を変えれば、人が育つ投資には色々あるということ」

----海外企業は世界的規模の人材確保に躍起。

「日本企業が世界から人材を集めるといっても、
現実には日本語が1つの壁になる。
グーグルなど海外のグローバル企業は、英語圏から広く採用できる強み。
日本企業は対抗するなら、日本語ができる優秀な外国人を雇うとか、
日本語を教えてでも、優秀な人材を取り込んでいくという発想をすべき」

「優秀な人やスタープレーヤーばかり集めても、会社は成り立たない。
サポートする人たちがいてこそ、初めて活躍できる。
研究の世界でも、チームとして成立しているところほど研究は進みやすい。
優秀な学生たちによく言うのだが、うらやまれる仕事をする立場になっても、
自分は助けられて成り立っていることを忘れてはいけない

http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/world/world_2nd/wor090316_2.html

県経営品質で最高賞 ソニーEMCS千厩テック

(岩手日報 3月20日)

2008年度県経営品質賞(県経営品質協議会主催)の表彰式が行われ、
ソニーEMCS千厩テック(高田章テックプレジデント、社員580人)が
最高賞の県知事賞を受賞。最高賞の選出は4年ぶり。

表彰式で、県商工労働観光部の広田淳部長が、
1月末までテックプレジデントを務めた柴登美雄氏に表彰盾を手渡した。
柴氏は、「岩手の誇りになれるように発展させていきたい」、
現テックプレジデントの高田氏は、「身の引き締まる思い。
賞に恥じないよう、やっていきたい」と決意を新たにした。

同社は、ソニーの完全子会社・ソニーEMCSの国内拠点の一つ。
高周波無線通信技術や超高密度実装技術など、得意分野を活用した
製品開発、生産に加え、2年前から通信機器製造で養った解析技術を活用、
携帯電話のカスタマーサービスに乗り出している。

品質重視の経営に加え、顧客視点と社員重視の経営を強化。
「千厩って いいよね」をスローガンに、
顧客満足度の高い経営を実践していることが評価。

県経営品質賞は、1995年に創設された日本経営品質賞の地域版として、
2000年に全国で4番目に創設。最高賞は4社目。

http://www.iwate-np.co.jp/economy/e200903/e0903202.html

回想法で高齢者元気に 遠野の介護センター

(岩手日報 3月22日)

遠野市松崎町のとおぬっぷ在宅介護支援センター(金沢重俊理事長)は、
市立博物館で「民話の里・思い出サポーター事業」報告会。
お年寄りの認知症予防などを目的に、昔の思い出などを語り合い、
脳の活性化を促す「回想法」について、
2006年度から3年間の取り組みを紹介、さらなる普及へ意欲を高めた。
関係者ら約50人が出席。

回想法は、主に高齢者を対象とした心理療法の一つで、
米国の精神科医が提唱。
懐かしい思い出を語り合い、ほかの人に聞いてもらうことで、
人生を前向きにとらえ直すことにつながり、
認知症の予防や抑制が期待できる。

同センターソーシャルワーカーの本山潤一郎さん(28)は、
同センターが市や福祉施設、民生委員らと協力して取り組んだ
グループ回想法の事例を報告。

回想法研究の第一人者で、東洋大の野村豊子教授が講演。
同センターのグループ回想法は、高齢者8人が1組となり、
げたや火鉢、漬物たるなどの道具を手に取りながら、
子どものころや青春時代を回想する方法。

本山さんは、「回想で客観的な自分をとらえ直し、
生活が前向きに変化した参加者もいた。
聞き手などのスタッフも、地域の歴史などを知ることができ、
大変勉強になる」などと成果を挙げた。

同市の65歳以上人口は約1万人で、高齢化率は約33%。
1700人が要支援・介護認定者。

野村教授は、「回想は、高齢者にとって壊れにくい『生きがい』。
グループで回想法に取り組むことで、対人関係が広がり、
引きこもり対策にもつながる」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090322_9

2009年3月27日金曜日

自己研さんは家に居ながら 秘訣は「時間固定」

(日経 3月17日)

ラジオ講座やインターネットなどを活用し、自宅に居ながらにして
自己研さんに励む手法を紹介。

英会話教室「English Time!」を経営する川本佐奈恵さん。
専業主婦だった川本さんが、起業家となった原動力が、
NHKラジオの英語講座。

川本さんが英語を学び始めたのは、32歳の時。
何かスキルを身につけようと思ったのがきっかけ。
自由に使えるお金は少ないため、
授業料が高い英会話教室に通うのはあきらめた。
目を付けたのが、月数百円のテキ スト代だけで済むラジオ講座。

なぜ、テレビではなくラジオだったのか?
川本さんは、「語学は目で見るのではなく、耳で聞くもの
映像を見ていると、何となくわかったつもりになってしまう。
講座をテープに録音し、何度も繰り返して聴いた上で、
間の取り方や抑揚、スピードなどを口に出してまねた。
「口の筋肉に、英語の発音方法を覚えさせた」のだ。

川本さんは、「文法は二の次でよい」と説く。
ラジオをまねて口に出していると、場面別に英語を話せるようになる。
その後に文法の勉強をすると、すんなりと理解できる。

次に着手したのは、「ディク テーション(書き取り)」。
ラジオ講座のテキストに掲載されていない世間話のような
やりとりを聴いて文字にする。

正確に書き取るには、文法力が試される。
「カリルアウトゥ」と聞こえても、文字に起こすと「カット・イット・アウ ト」と
書く必要がある。リスニング力も高まる。
カット・イット・アウトの「 ト」のように、「本来聞こえない音が聞こえるようになる」
川本さんは、今でも毎朝ノ ートに書いている。

時事英語を学びたい人には、ポッドキャス トなどを利用して
国際放送を聴くのも有効。
ディクテーションの要領でニュースのヘッドラインを書き取っていると、
政治や経済など専門用語を、英語でどう表現するのかがわかる。

自宅で勉強する際のネックとなるのが、続けることの難しさ。
ラジオ講座はペースメーカーの役割を果たしてくれるが、
多忙な日が続くと、テープを聴くのを後回しにしてしまいがち。

こうならないようにするには、「無理やりにでも時間をつくる」(川本さん)。
朝1時間早起きする、毎週土曜日の午前中は勉強の時間に充てる——。
こうした決まり事を習慣づければ、長続きする可能性が高くなる。
地道にコツコツ努力する姿勢が、在宅学習成功の最大の秘訣。

資格試験予備校の大原学園は、インターネットで講座を提供。
残業が日常化して学校に通う時間がとれない
ビジネスパーソンの支持を集めている。
対象は、公認会計士や税理士対策など19種類の講座。
東京・水道橋の校舎で行 った授業を収録、翌々日に配信。

いつでも何回でも繰り返して勉強できるのが利点。
講義の再生速度を1.5倍まで上げられるので、
分かりきっている部分をはしょることも可能。
板書内容や授業で使用した資料は、パソコンに取り込んで
自宅のプリンターで印刷できる。

以前は、DVDやカセットテープなどの媒体を使った通信教育だけだったが、
実際の授業が行われてから受講生の手元に届くまでに1カ月近く。
ネット配信ならば、タイムラグを短くでき、法改正や試験の傾向にあわせて
授業内容を変更できる。

サービスを開始した2001年、2000人程度だった年間利用者は、
現在では約8000人に増加。通学生が復習に利用する例も。
大原学園は、「時間を有効に使いたいビジネスパーソンに利用してほしい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090317_2.html

中村 修二 氏(カリフォルニア大学 サンタバーバラ校 教授)

(サイエンスポータル 3月13日)

自分のアイディアを武器に、自分は修士課程まで進んだが、
当時大学に博士課程がなかったので、地元企業に就職した。
就職してからは、何から何まで自分でやらなければならなかったが、
製品ができるまでのストーリーを知ることができたのはいい経験だった。

その後、会社の支援を受けて米国へ1年間留学。
その時に、博士の資格を取得しているかどうかで、
扱いがまったく違うことを思い知った。
自分は博士号を取得していなかったため、実験の手伝いをする
技官としてしか見られなかった。

一般に米国では、博士号取得者は科学者として扱われ、待遇も全然違う。
このことがきっかけで、博士号を取得しようと思い、論文を書き始めた。
米国では博士号取得後、優秀な人はベンチャー企業を自ら立ち上げる。
大企業に就職する人は、むしろ出来ない人というイメージ。
それでも博士号取得者は、その専門性もあわせて評価されるため、待遇は良い。

日本の企業ではどうか?
採用に当たって重要視されることは学歴であり、
就職をしても博士はそれほど優遇されない。
同い年でも、個々に能力に差があるのは当然なのに、
学部卒、修士卒、博士卒で一律に給料が決まり、専門性はまったく見ない。
企業は、新入社員を一から勉強させようと思っているためだ。

そのことは採用試験を見てもわかる。
日本では、筆記試験を課し面接試験の割合が少ない上、
面接で専門性を聞くことはほとんどない。
米国はすべて面接で決め、専門性をきちんと評価する。

米国では、起業しやすい土壌があるのは確かだが、
米国だからといってベンチャーが成功しやすいわけではない。
成功率は1割くらいだろう。

それでも向こうでは、10回やれば1回成功するという感覚があり、
失敗しても何度でも挑戦できる環境にある。
なぜなら失敗しても、起業家は多くはお金を出さないので、
損をするのは投資家だけだからだ。
日本だと何度も挑戦できる環境になく、
1回失敗しただけで起業家が首をくくってしまう。

日米では、アカデミーの体質も違う。
日本ではアカデミーの研究者は、自己の研究室にこもり、
金もうけをしてはいけないという風潮。
米国では、工学部の教授もベンチャーを立ち上げることが推奨。
生きた研究を、大学に持ち込むことが期待されている。
当然、民間企業出身の教授が大半。

日本では、いろいろな差別があることも問題。
特に、教員の定年を設ける年齢差別。
ノーベル賞を同時に受賞した白川英樹博士とヒーガー博士が対照的。
ヒーガー博士は今でも大学で教えているし、会社もいくつか持っている。
しかし、白川博士は定年で退官してしまった。
これでは、せっかくの財産を後継者に伝えることができず、
貴重な財産を活かし切れていないのではないか。

これらの問題の背景には2つの原因。
ひとつは司法制度。
いろいろな差別に対して、日本の司法制度は利益考慮であるため、
必ずしも「個」が尊重されず、より多くの人が利益を得るような
判決が出るようになっている。
企業や国が勝つようなシステムになっているのだ。

米国では個々が尊重されるため、正義を主張して認められれば、
たとえ相手が大企業であろうと勝つことができる。
何人たりとも侵せない、「個」の尊厳を最も大切にしている。

もうひとつは教育制度だ。
米国では、小学校から模擬裁判を体験させたり、
社会で生きるとはどういうことかを教えている。
日本では、ウルトラクイズのような大学受験のための
5教科7科目を教えているだけ。
お金をもうけるということに、実感がともなっていない。
企業は特許を取ってもうけている、という側面があるにもかかわらずだ。

日本では、全員が同じことを同じだけ勉強させられる。
米国では、小学校から科目を選択できるから、
理科が好きな子はその興味を保ったまま大人になることができる。
だから、そのへんのおじさんが科学雑誌を読んでいたりすることも珍しくない。
このような光景は、日本ではまず見られない。

博士の学生には、まずは海外とくに米国へ行くことをお勧めする。
成功者は、海外に5年以上いたという研究結果も。
自分自身も、留学して外から日本を見た経験がその後の自分に影響を与えた。
企業に就職するにしても、勉強の場として一時的に企業へ入るという感覚を持ち、
最終的には自分のアイディアを武器に独立してほしい。

◆中村 修二

1973年愛媛県立大洲高校卒、77年徳島大学工学部電子工学専攻卒、
79年同大学院修士課程修了、日亜化学工業入社、
88-89年米フロリダ大学客員研究員、94年工学博士取得(徳島大学)、
96年日亜化学工業主幹研究員、2000年から現職。
窒化物系材料を使用した発光デバイスの研究開発に先駆的に取り組み、
93年に青色、95年に緑色のPN接合型高輝度発光ダイオードの製品化に
世界で初めて成功。
「負けてたまるか! 青色発光ダイオード開発者の言い分」(朝日新聞出版)
など著書多数。
日亜化学工業相手に、自身の研究成果に基づく特許の所有権と
社が得た利益の対価を求めた訴訟(日亜化学工業が中村氏に
8億4,000万円を支払う東京高裁の和解勧告受け入れで決着)でも知られる。

http://www.scienceportal.jp/highlight/2009/090313.html

黄砂でぜんそく、花粉症悪化?汚染物質原因か

(日本海新聞 2009年03月21日)

黄砂現象の日に、ぜんそくや花粉症特有の症状が重くなる?
2月11日の初飛来以降、鳥取県内で黄砂を観測した日数は9日(20日現在)。
耳鼻咽喉科医院などによると、花粉症の症状を訴える患者が例年より多い。
黄砂とアレルギー症状の因果関係について、研究が進んでいる。

鳥取大学医学部付属病院呼吸器内科の渡部仁成助教(37)は、
「黄砂が飛散した日は、ぜんそく患者が症状悪化を訴える」
3年前から実施している、ぜんそく患者に対する聞き取り調査で判明。

調査結果では、黄砂が飛散すると、患者は息苦しさとせきの回数が増え、
ぜんそくの症状にはない目のかゆみ、鼻水、のどのイガイガ感を訴える。
黄砂と花粉の両方が飛散した場合、悪化を訴える患者数がさらに増えた。

渡部助教は、「黄砂の何がぜんそくを悪化させるかは解明されておらず、
直接原因と言い切るのは難しいが、調査結果では黄砂の発生時期と
症状の悪化が一致する」

黄砂と花粉症や気管支ぜんそくなどのアレルギー症状悪化の研究を
まとめた大分県立看護科学大学の市瀬孝道教授(55)によると、
黄砂の成分の60%を占める二酸化ケイ素が症状悪化に働く。

黄砂には、表面にカビなどの微生物やすすなどの大気汚染物質が付着。
黄砂の表面を焼いて付着物を除去した場合と付着物があるままの場合で
比較したところ、付着物がある方を吸い込んだときに
花粉症の症状がより重くなった。

市瀬教授は、「花粉一個が30~40ミクロンの大きさに対し、
黄砂は4~6ミクロンと非常に小さい。
吸い込んだとき、肺に入りやすいので、マスクを着用して侵入を防いでほしい」

http://www.nnn.co.jp/news/090321/20090321037.html

総合型の地域スポーツクラブ発足へ 矢巾

(岩手日報 3月21日)

矢巾町で初の総合型地域スポーツクラブ「楽々(らら)クラブ矢巾」は、
同町南矢幅の町公民館で設立総会を開く。
町民総合体育館を拠点に、卓球や高齢者教室などサークル活動、
多様な教室や交流会を開催。
幼児から高齢者まで、気軽にスポーツに親しむ環境をつくり、
地域の活性化を目指す。

楽々クラブ矢巾は、町体協(村松正夫会長)が中心、
2007年度から設立準備を進めてきた。
既に活動する卓球、バウンドテニス、エアロビクス、シルバー教室の
4サークルを基礎団体として発足。

09年度はウオーキングや健康体操教室、ソフトボール交流会、
フラダンス教室などを予定。
児童を対象に、正しい走り方の指導や、体力測定会も実施。
運営費は会費などで賄う。

総合型地域スポーツクラブは文科省が進める事業で、
10年までに各市町村に1団体以上の設立を目指す。
住民の自主運営により、地域の実情に合ったスポーツを
幅広い世代が楽しむことを目的。

楽々クラブ矢巾も、設立後は女性スタッフら町民主体の運営。
準備委クラブマネジャーの射守矢加代子さん(45)は、
「ピクニックやハイキングなどレクリエーションも企画し、
運動を始めるきっかけをつくりたい。
5年後の会員は500人が目標」と意欲を示す。

21日は、アルベールビル五輪ノルディック複合団体金メダリストの
三ケ田礼一さんが同公民館で記念公演。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090321_7

みなとまちづくり懇談会 駅周辺のにぎわい語る

(東海新報 3月21日)

「みなとまちづくり懇談会」が、大船渡商工会議所で開かれた。
今年度実施した大船渡駅周辺整備事業などの進ちょくを確認、
客船誘致におけるにぎわい創出のあり方などについて意見を交わした。

市では、国からの「まちづくり交付金事業」を受けて各種整備を進め、
大船渡駅周辺整備では地域住民や民間関係者とのワークショップを重ね、
地域特性を生かしたまちづくりを進めようと懇談会を開催。

室井良雄港湾経済部長は、「さらなるにぎわいの創出や
大船渡らしいまちづくりに向けて取り組んでいきたい。
今年は、5隻の客船が訪れるが、皆さんの意見を受けながら
心のこもったもてなしを進めていきたい」

今年度のまちづくり交付金事業の進ちょく状況について説明。
海の祭典「海フェスタ」に合わせ、同駅周辺7、8カ所に案内表示板を設置。
公衆トイレの設置場所、岸壁や公園、魚市場の位置も分かりやすく示し、
デザインにも配慮。
笹崎公園のトイレ水洗化、加茂公園での災害時に対応したベンチ整備設計など。

大船渡駅の改築について、新年度以降の設計に向け、基本調査を進めた。
新駅舎は、18年度から懇談会を通じて意見をまとめているが、
総二階建て構造、東西を線路上でつなぐ自由通路の整備や
駅舎二階部分の活用方法、エレベーター設置などで検討。

意見交換は、客船観光を生かしたまちづくりをテーマに行われた。
客船が大船渡港に入ると、多くの観光客や見物客らでにぎわいが生まれ、
「にぎわいが、港湾から商店街に流れるような方策を」、
「商店のマップをまとめた情報誌を作成しては」といった声。

http://www.tohkaishimpo.com/

2009年3月26日木曜日

1冊のノートで上手に情報整理

(日経 3月18日)

手帳や会議の資料、伝言メモ--
大事な情報を、どこに書いたのかを忘れてしまう。
膨大な情報をどのように管理するのかは、仕事の能率を向上させる上で重要。

「情報は1冊のノートにまとめなさい」を著した
フリーライターの奥野宣之氏の話をもとに秘訣を探ってみた。

「忘れるという前提にたって、メモを取る必要がある」
奥野さんが使っているのが、どこにでもある「100円ノート」。
ノートの大きさはA6サイズ。
会議の記録やセミナーのメモ、買い物リストや日記など、
仕事からプライベートまで、「思ったことをどんどん書き込んでいくことを習慣に
字の大きさや丁寧さを気にせず、様々なジャンルの情報を前から筆記。

カテゴリーにこだわらずに、日付順に記入するのがポイント。
ノートへの記入方法は、極力簡単にする。スピードを重視するため。
日付は六けたで表示。2008年3月10日なら、「080310」。
地名も東京を「TK」、大阪を「OS」、図書館を「TSK」と簡略化。
「自分がわかれば、どのような略し方でも良い」

ページが足りなくなっても、文房具店やコンビニエンスストアなどで
100円前後で買えるので、後のことを心配せずに済む。
ノート1冊にすべてを記載しておくと、
必ずここに情報があるという状態を生み出せる。

書き込んだ情報が、ノートのどのページにあるのかを
探し出せるようにするため、ノートを1冊使い切るごとに索引をつくる。
自宅やオフィスにあるパソコンのワープロソフトで、
いつ記入したのかを意味する六けたの数字を入力、
「会議」、「メモ」、「友達」、「旅行」、「買い物」といった
大まかな内容を示すタグを書く。
会議であれば、「○○商品の販売方法」といったように、
タグの後にテーマを付ける。

わざわざパソコンを使って索引をつくるのは、手間がかかるが、
「分類されていない情報を、過去にさかのぼっていつでも確実に探せるようになる」

手帳の機能もノートに組み込める。
市販の手帳は、年間スケジュールを管理できるが、
「実際には、数カ月先の予定まで持ち歩く必然性はほとんどない」
大半の人は、過去と未来の数カ月前後の日程を携帯するだけで十分。

「エクセル」などパソコンの表計算ソフトを使って、
1カ月分の予定を一目で閲覧できる「スケジュールシート」を作ること。

人によって、曜日や時刻ごとのスペースを
自由に調節できるのが最大の利点。
表裏で2カ月分を印刷すれば、持ち歩く枚数は少なく済む。
ノートの裏表紙など、紙でポケットを作っておけば、
スケジュール表を差し込むことも可能。

市販されている手帳とは異なり、ノートは書式や書き込む方法、
記載内容を自由に変えられる。オーダーメードの記憶媒体。
今の手帳の使い勝手に不満があるのなら、
新年度を機にオリジナルノート作りを始めてみるのもよいかもしれない。

◆自作ノート活用のコツは・・・

奥野さんはどのように自作ノートを作り、活用しているのだろうか?
ノートのほかに持ち歩いているのはペン、付せん、のり、はさみ。
これらのグッズをかばんに入れておけば、
どこにいても空いている時間にノートを「加工」できる。

自作ノートを見ると、領収書や地図がはられていたり、
旅の思い出や読書の感想などが乱雑に書き込んである。
あるページには、カレンダーや、西暦・年号・年齢早見表、
重要な連絡先一覧などが書かれた紙がはられている。

紙の裏には、リング状にした付せんが付いており、
リングの表側の粘着部分が紙とページをつないでいる。
ノートが終わっても、すぐに新しいノートに紙をはり直せる。
万が一財布を忘れたり、落としたりしたときに備え、
ノートのポケットに1000円札を数枚入れている。

ノートを消費する頻度は、2週間に1冊程度。
使用後のノートは、1年前までは自宅の本棚、
それより前は段ボール箱に時系列に並べて保管。
ノートの終了時に索引をつくるための時間は、一冊当たり10-30分程度、
慣れれば時間は短縮していく。

奥野さんのノートは日々進化し、自分なりの新しいやり方を
どんどん取り入れている。
「変なこだわりを持って同じやり方を続けていると、うまくいかない」
「自分のやり方が、その人にとっては1番適している」
自作ノートのコツをアドバイス。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090318.html

カンボジアに善意の校舎 紫波の建設業エルク

(岩手日報 3月18日)

紫波町佐比内の建設業エルク(沢田晴吉社主)は、
全国の同業者と協力しカンボジアに小学校の校舎を寄贈
カンボジアは、子どもの数に対して学校が足りず、
校舎の建設費も確保できず困窮。
住宅建設の研究会で資金を出し合い、NPO法人と共に校舎を建設。
同社は、カンボジアの教育向上へ国際貢献したい考え。

校舎を寄贈したのは、エルクなど全国約20社でつくる
住宅販売業者の研究会「安くていい家をつくる会」
カンボジアで、小中学校建設を進めるNPO法人JHP・学校をつくる会に、
校舎一棟の建設費約600万円を贈り、
エルクは積立金や社員の寄付などで30万円を負担。

カンボジア南東部スバイリエン州のスワイチュルム小の老朽化した
校舎に隣接し、現地の業者が木造平屋約800平方メートルの新校舎を建設。
先月、現地でエルクの沢田社主ら研究会の会員らも出席、贈呈式が行われた。

カンボジアは、旧ポル・ポト政権下の内戦の影響で学校数が極めて不足。
スワイチュルム小は、児童数100人ほど。
沢田社主は、「入学できない貧困層も多く、学校周辺では制服を着ていない
子どもがたくさんいた。仕事の手伝いなどで通学できない児童も」

沢田社主は、「現地の子どもたちは貧しいが、表情はとても明るかった。
教育は、国をつくる基本。
文房具や学用品も不足しており、支援を今後も続けたい」

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090318_8

未来育て:第4部・格差と少子化 特別編 出生率1.78「産み育てやすい町」に学ぶ

(毎日 3月14日)

◇静岡県長泉町の取り組み

医療費助成や保育サービスの格差など、
産み育てようとの思いを阻害する要因を探ってきた「未来育て」
長期にわたって総合的な子育て支援策を実行し、出生率を上昇させた
静岡県長泉町の取り組みから、今求められる政策を考える。

北側に白銀の富士山を望む長泉町は、人口約4万人。
07年の合計特殊出生率(女性が一生に産む子供の平均数)は
全国平均の1・34を大きく上回る1・78。
出生率は、99年から上昇傾向で、
子育てしやすい町として、全国から視察団が訪れる。

町立中央保育園の2階にある子育て支援センター「アップル」。
小雪が舞う中、乳幼児を連れた母親たちが次々とやって来た。
母子が一緒に歌をうたって、ひな祭りを楽しんだ。

就園前の子とその保護者が対象の同センターは、
「ベビーカーを押して通える範囲」という狙いで、町内に3カ所設置。
保育園の併設で保育士が常駐し、参加費は無料。
アップル開設は99年。
今ではどこにでもある施設だが、全国的に見て設置は早い。
子育て世帯が多い横浜市(人口約365万人)でも、
同様の施設は各区に1、2カ所で、同町の充実ぶりが分かる。

1歳半の長男を連れてきた山田愛子さん(35)は、妊娠5カ月。
「つわりがひどくて、子どもの相手ができない時、ここにくれば安心です」
山田さんは、結婚と同時に同町に転入、周りに友人、知人がおらず、
出産直後は心細かった。
自宅近くにある別のセンターや地域のボランティアが開く
遊びの広場のおかげで、子育て仲間と出会うこともできた。

同町の少子化対策は、臨機応変で迅速だ。
例えば学童保育。
07年度末、08年度の希望者を募集した際のこと。
相当数の待機児童が出ることが分かると、すぐさま予備費を投入し、
2カ所にプレハブの施設を建て、4月入所に間に合わせた。
今年4月には、常設の施設に衣替えされる。

乳幼児医療費の助成は、73年に始めた。
全国に先駆け、2歳までの医療費を無料化。
02年には就学前、07年に小学3年修了まで引き上げた。
就学前までの助成が、全市町村の8割に達したのが08年、先見性が分かる。
09年度予算、医療費助成をさらに中学3年まで引き上げ、
小学校を増築して28年ぶりに学級数を増やす予定。

同町は、東海道新幹線や東名高速道路、国道246号など交通網に恵まれ、
多業種の大規模工場があり、雇用の場も多い。
財政的な余裕も生まれ、地方交付税の不交付団体になって25年以上。
子育て世代が定着することで、生産人口が増え、税収が上がり、
それを子ども関連予算に回す、という好循環が働く。

同町の09年度当初予算は約124億5000万円、
子育て支援関連は約40億7905万円で、33%。

秋山勉こども育成課長は、「現町長も前町長も、子育て支援に理解があり、
高齢化率も低かったので、子どもにお金を回すことができた。
国全体が少子化に向かう中、どこまで投資できるか役場でもよく議論に。
しかし、現に子どもの数は増えている」

少子化対策に特効薬はないと言われる。
7年前から同町について調査研究している国立社会保障・人口問題研究所の
佐々井司人口動向研究部第1室長は、「出生率が上がったのは、
雇用機会や交通の便に恵まれたことが大きい。
上昇が長期で続いているのは、子育て支援策の効果

長泉町には、「産み育てやすい町」という評判を聞いて、転入する人も。
同町のような条件をそろえるのは、難しいかもしれない。
町の活性化を図るためにも、若年層の結婚や出生を安定的に維持する
雇用の確保と、地域にふさわしい子育て支援が必要。

◇今こそ正念場、担当相へ権限集中を

内閣府の少子化担当参事官として企画立案に携わった
増田雅暢・上智大教授に少子化対策の経緯と課題を聞いた。

最初の少子化対策「エンゼルプラン」(94年末)は、
今から見れば保育所の拡充など、内容が限定的。
当時、出生率は1・5まで低下していたが、いずれ回復するとの期待もあり、
危機意識は乏しかった。

99年末「新エンゼルプラン」から総合的な計画になり、
次世代育成支援対策推進法や少子化社会対策大綱などができた。
しかし、財政が厳しく、予算確保は難しくなった。
06年、ようやく児童手当を拡充することができた。

少子化対策は対象が限定的で、他の社会保障政策に比べ、予算規模は小さい。
妊婦健診の無料化に1人12万円かけても、
出生数約100万人なら1200億円程度。

団塊ジュニアが30代後半にさしかかった今が、日本の少子化対策にとって
一番重要な時期。
内閣府に少子化担当相を置いても、権限や予算は他省庁が持ち、
思い切った対策を打つのは難しい。
省庁の縦割りをやめ、担当相に権限を集中させるなどの見直しが必要。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/03/14/20090314ddm013100134000c.html

インタビュー・環境戦略を語る:東京電力・清水正孝社長

(毎日 3月16日)

東京電力が排出するCO2は、国内全体の1割を占める。
CO2削減に貢献するとされる柏崎刈羽原子力発電所が運転停止し、
厳しい状況が続く中、同社は需要者側に力点を置いた
温暖化対策を進めていく。
「低炭素社会」実現に向けた東電の戦略を、清水正孝社長に聞いた。

--温暖化対策にどう取り組むか。

◆日本には、エネルギー資源が乏しいという弱み。
それを克服しながら、低炭素社会を実現するためには、
エネルギーの安定供給と環境保全、経済性の向上を同時に図ること。
エネルギーの供給・需要両面にわたり、
長期的な視点から対策を立てていく必要。
供給面として、当社の電源構成の中で、原子力や、水力といった
再生可能なエネルギーの比率を高め、
需要面では、家庭などで使ってもらうエネルギーを低炭素型に
誘導していくことが、これからの戦略。

--柏崎刈羽原発の停止の影響は大きい。

◆停止に伴う発電量の不足分を火力発電で補っているため、
CO2排出量の増加は年3000万トン程度と試算。
例年の総排出量の3割程度に相当する量。
一日も早く復旧し、稼働に向けて努力するというのが一番大きな経営課題。

--需要面ではどんな戦略があるか。

キーワードは「電化」
一般家庭での「オール電化」戦略に取り組んでいるが、
今後は産業、業務分野でも攻めの営業に。
産業分野をみると、工場など大量の熱を必要とするところでは、蒸気を多用。
「蒸気」に着目し、空気中の熱を効率よく集めるヒートポンプや
IH(電磁誘導加熱)といった高効率な電化技術を導入することで、
「蒸気レス」を目指したい。
この取り組みは、CO2削減効果のほか、生産技術の高度化で、
日本の製造業の競争力向上にも貢献できる。

業務分野は、日本のCO2総排出量の約3割を占め、早急な対策が必要。
燃焼式に比べ、加熱効率が高い電化厨房を
外食チェーンなどの業界で広げている。

--経済産業省が、太陽光発電による余剰電力を電力会社が買い取る
「固定価格買い取り制度」の導入を発表。

◆政府の地球温暖化対策の重要なメニューの一つとして、
積極的に協力する考え。
現実的に、電力会社の負担増加分は電気料金に上乗せされる方針なので、
国の施策として国民に十分説明し、理解を得なければ進まない。
制度を具体化する際、我々の意見も十分織り込んでいく。
==============
◇しみず・まさたか

慶応大経卒、68年東京電力入社。取締役資材部長、常務、副社長を経て、
08年6月から現職。同年5月から日本経団連副会長。
神奈川県出身、64歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/03/16/20090316ddm008020023000c.html

学士力(12)読者の声…学生も教員も変革を

(読売 3月21日)

大学の現状に一般読者は驚き、関係者は教員の意識を問題に。

「学生に元気のある人は少ない。個人的に話を聞いてみると、
悩みや心の葛藤がある人が多い」
埼玉県在住で、36歳の自称“おっさん学生”からメール。
高校卒業後、専門学校を出て、団体職員などとして働いてきたが、
「経済の仕組みをもっと知りたいと思って、一念発起」
学業に悪戦苦闘、休み中はNPO活動に参加、
すでに就職活動も始めている立場。

「学生生活や就職活動に悩んでいる学生がいると思うが、可能性は無限。
出来ることから、少しずつやっていくのがいいと思う」と激励のメッセージも。

一方で、「学習意欲の低い学生、学問に拒絶意識の高い学生が、
なぜ学費を払って進学するのか疑問
」と、高松市の主婦。
「学費を払う親御さんの気持ちになると、ため息しか出ない。
大学以外に何かないのか?
とにかく大学へ行けばいい、という意識を変える必要がある」

入学前教育の記事に対し、「大学とは、自ら学び問う所ではなかったのか。
いつから手取り足取りの勉強の場になったのか。
なぜ、学びの姿勢を小中学生にしっかり教えないのか」といった意見。

大学の体制や教員の意識を問題視する声も。
土持ゲーリー法一・弘前大学教授は、大学の抱える問題の根源に、
単位制度に対する理解の不十分さがあると指摘。

「単位制度は、講義とその倍の時間に当たる予習・復習から成り立っている。
講義のみで単位が与えられている現状はおかしい。
限られたエリート層しか大学に来なかった時代なら、
放置しておいても勉強しただろうが、全入時代はそうはいかない」

米国でも、『大学の責務』とは何かが問い直されている。
『学生を育てるために、どれだけ努力をしているか』という教員側の視点ではなく、
学生にどれだけ力をつけられたか、という学習成果の視点に立った
説明責任が求められている

ゼミの在り方についても、大学人から反響。
「最低限、ゼミで学ぶべきことを統一することはとても大切だが、難しい。
教員は、他からの干渉を何より嫌うからだ。
そのため、大学の教育改革が進まない」とある大学の准教授が嘆く。

「ゼミの中身とともに、どんな仕掛けを持っているかが問われている。
『学士力』が言われ出して数年たつが、学生を成長させるための
現場の変革は進んでいない。
結局、教職員自身を変えていく努力が何よりも必要」と訴える教授。

信州大学の松岡幸司准教授は、
「自分の授業をどのように改善していくか、ということに日々悩んでいる。
授業改善をしていく上で、記事の中の視点や発想が参考に。
問題意識を持つ教員の様々な事例に触れることで、
自分の抱えている問題を解決する糸口が見えてくることが多かった

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090321-OYT8T00249.htm

2009年3月25日水曜日

知って実感、医療の進歩 川井で明治・江戸医学書展

(岩手日報 3月17日)

川井村の旧箱石小校舎を活用した「昭和の学校・箱石校」(照井正勝校長)
で、第4回お父さんのコレクション展「明治・江戸時代の医学書展」が開催。
当時、治療に使用された薬草の辞典や、手術の仕方を図説するなどした
貴重な医学書を展示。
高度医療がなかった時代の東洋医学を、垣間見ることができる。

同校玄関ギャラリーに「本草綱目」52巻・38冊、「原病学通論」1―9巻、
外科各論」1―10巻、「外科正宗」1―4巻などが約100冊並ぶ。
いずれも照井校長の所蔵。

本草綱目のうち、江戸期の「薬草木辞典」は薬用になる植物を絵で紹介、
調合方法や飲み方も説明。
外科正宗では、傷口の縫合手段などが示され、かつての医療が分かる。

照井校長は、「だいたい今と同じような病名があったようだ。
西洋医学が入る前に、医者も相当勉強していたのではないか」

同展は4月9日まで。
5月の大型連休には、音楽イベントなど「春の文化祭」を行い、
戦前・戦後のラジオや蓄音機の展示コーナーを設ける予定。
開校は、毎週火曜日を除き午前10時から午後4時まで。
1階は無料。2階は入場料が中学生以上500円、小学生以下300円。
問い合わせは同校(0193・74・2002)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090317_11

三陸総合運動公園4種公認へ 陸上記録会での活用期待

(東海新報 3月20日)

大船渡市の三陸総合運動公園が、新年度から
日本陸連公認四種陸上競技場として使用できる見通し。
陸連公認技術役員が同公園でトラックの実測調査などを行い、
整備状況が基準を満たしていることを確認。

公認競技場は、陸上競技大会で出た記録が、
公認記録として認定されるために必要なもの。
同公園は、平成10年に第五種公認を受けたが、15年に期限を迎え、
そのまま更新せずに公認が取り消されていた。

気仙内で公認されていた大船渡中学校グラウンドと
県立高田松原野外活動センターグラウンドも、
今年度内に有効期限を迎えたが更新しない方針で、
管内で行われる小中学校通信陸上大会などに向け、
同公園を公認へ切り替える。

日本陸連の公認競技場は、現在五種区分が廃止、
同公園の規格も四種に合わせる必要が生じた。
グラウンド内を平坦にならしたほか、高跳び競技用の礎石造成、
二百㍍トラックのコーステープ設置などの作業が行われた。

検定では、技術役員がグラウンドの状況やコースの長さなど実測調査を実施。
「規格は基準を満たしている。多目的グラウンドだが、
陸上が盛んな地域で多く利用されており、公認が必要」

今後、役員から日本陸連に公認取得への申請がされ、
新年度には正式に四種公認競技場として認可される見通し。

大船渡市陸協の村上悌太郎会長は、
「晴れて公認されれば、子どもたちが競技を続ける上でも大きい」

http://www.tohkaishimpo.com/

カースト変えたIT・グローバル化

(日経 2009-03-12)

◆かつて王家で見た身分制の壁

インドの王家宅にホームステイしたことがある。
インド北部のヒマーチャル・プラデシュ州。
標高3000メートル超の高地にあり、ヒマラヤ山脈に周囲を囲まれた大邸宅。
使用人は十数人いただろうか。
料理や掃除をする人。シーツや靴を洗う人。
それぞれの使用人に、明確な役割分担があったのが印象深かった。

「低いカーストに生まれると、その時点で一生が決まる。
できることがおのずと限られる。
がんばって生きて、生まれ変わった後の次の人生を良くするという
希望を持つしかない」
王家の人は言った。

「インドには、カーストという身分制が根強く残っているな」
日々の生活を見て実感。
もう10年以上も前の話。
その地域では、インターネットが普及していなかった。
王家の人が、「インドは将来、必ず大国になる」と口にしても、
信じようがなかった。あまりにも国が貧しく見えたからだ。

◆転機はコンピューターとの出合い

この10年間で、経済のグローバル化とIT化が一気に加速。
世界が変わり、インドも変わった。

「カーストの身分によって入れるお祭りと、入れないお祭りがあった。
身分が高い人だけのお祭りなんかがありましたよ」
千葉県市川市に住むイシュワラッパ・フナチギリさん(34)。
インド南部の貧しい農村に生まれた。

20年以上前の地方では、カーストによる差別が特に強かった。
「羊飼い」のカーストに属するフナチギリさんは笑い飛ばす。
「いまはカーストを気にしませんけどね」

苦しい生活をおくる父の姿を見て、子どものころから
「新しいことに挑戦しないといけない」と思った。
親族の支援を得て、学校に通った。
人生を変えたくて、勉学に励んだ。
政府の特別な試験に合格し、大学にも入った。
そこでコンピューターに出合った。

インドの当時の首相が、テレビでITの可能性を語っていた。
「自分も新しい技術を勉強したい」と思い立ち、
大学では「コンピューターサイエンス&エンジニアリング」を専攻。
初めてコンピューターに触り、すぐにのめり込んだ。
時には、早朝から深夜までプログラムを勉強。
そして、チャンスがやってきた。

◆「名前より実力」が変化の原動力

5年前、インド南部のシリコンバレーとも呼ばれる「プネ」で、
日本企業に派遣するITエンジニアを募集していることを知った。
日本語も学び、夢の海外勤務が実現。
現在は、インド大手のIT企業の日本法人で働き、
外資系金融機関向けの会計システムをつくっている。

「子どものころは、日本という国さえ知らなかった。
いまはとても楽しく満足していますよ」
ITを武器に成功したインド人は、フナチギリさんだけではない。
世界のあちこちにいるはず。

日本で人材派遣業を営むインド人経営者は、
ITの世界では、名前よりも実力が評価される。
インドの古い身分制を壊す原動力になった。
グローバル化の進展が重なり、世界の様々な場所でインド人が働いている。
人材を実力ベースで正当に評価できる」

インドの社会学を専門とする福永正明・岐阜女子大学客員教授は、
「インドの人々に差別意識がなお残るのは事実。
だが、低いカーストの人でも外資系企業などで自由に働ける。
カースト制の存在が外からは見えにくくなっており、
身分の問題はないと振る舞うことが可能だ」
グローバル化やIT化が、インドの古い制度や慣習さえも塗り替えつつある。

http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/world/world_2nd/wor090312.html

理系白書’09:挑戦のとき/6 宇宙航空研究開発機構研究員・宮下幸長さん

(毎日 3月15日)

「大変名誉な偉業が達成された」
地球電磁気・地球惑星圏学会の会員用掲示板に、こんな内容が紹介。
オーロラ発生時に宇宙で起きている現象を、宮下さんが明らかにし、
評価されたことを指す。

論文は、この分野で最も権威ある米地球物理学会誌(JGR)に発表。
掲載日(1月22日)の翌週から3週連続で、
宇宙科学部門のダウンロード件数1位を達成。
同部門の研究者は国内に数百人いるが、トップも3週連続も日本人初。
上出洋介・京都大特任教授は、「3週連続1位は外国人でも聞いたことがない」

オーロラは、宇宙からやって来る電子が高度100~400キロの大気と
衝突して光る現象。
真夜中に突然光り、空全体が明るくなった後、西へ東へ、極方向へと
乱舞するものは「オーロラ嵐」と呼ばれ、
発見した赤祖父俊一・米アラスカ大名誉教授が64年に命名。

オーロラ嵐の源の電子はいつ、どこで供給されるのか?
観測は難しく、半世紀近く論争が続いてきた。

地球を囲む磁気圏は、彗星のようにたなびいている。
宮下さんは、日本の科学衛星「ジオテイル」を含む3基が
地表から2万~20万キロを飛行し、とらえた電場や磁場などのデータを解析。
米国の衛星「ポーラー」などが撮影した画像と合わせ、
3787件のオーロラ嵐を3年かけて調べた。

その結果、(1)オーロラ嵐の発生2分前、高度9万6000~12万キロで
地球の磁力線がつなぎ変わる「磁気再結合」が起きる
(2)ほぼ同時に、高度4万~6万キロで電流が激減する
「磁気双極子化」が始まる
(3)二つの現象で、磁気圏に蓄えられたエネルギーが放出され、
電子が毎秒1000キロで地球に向かう
(4)電子が地球大気と衝突し、オーロラ嵐が発生する--と解明。
長年の謎に、一つの答えを示した。

小学生のとき、湯川秀樹博士の伝記で「発見の面白さ」を知り、
京都大に進んだ。
研究室めぐりでオーロラ研究を知り、「何となく関心を持った」と飛び込んだ。
膨大なデータを扱う地道な作業だが、「コツコツ型の性格に合った」

大学院2年で最初の論文を発表、その後も毎年、一流誌に成果を出す。
自宅でもクラシック音楽を聴きながら、深夜までデータを眺める。
熱中ぶりに、妻(29)から「家では研究を忘れてほしい」と言われるほど。

オーロラ嵐の発生時の出力は、大型発電所1000基分の100万メガワット、
その影響で停電も起こる。
04年、フィンランドで初めてオーロラを見た。
「壮大な自然の姿に迫る」と意気込む。
==============
◇みやした・ゆきなが

横浜市出身。理学博士。02年京都大大学院博士課程修了。
旧・宇宙科学研究所研究員、名古屋大太陽地球環境研究所研究員を経て、
06年から現職。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/03/15/20090315ddm016040031000c.html

クローズアップ2009:温室効果ガス削減、日本の中期目標 6案並び検討迷走

(毎日 3月16日)

2020年までの温室効果ガス削減目標を話し合う
「中期目標検討委員会」(座長・福井俊彦前日銀総裁)は、
いくつかの選択肢を示す方向で、議論が進んでいる。
麻生太郎首相は、6月までに目標を決めると明言。
六つの案は、90年比で7%増から25%減まで幅広く、着地点は見えない。
遅れる決定は、温暖化対策の国際交渉をリードしたい日本の思惑に暗い影

「世界に通用すると同時に、実行が可能なこと」
中期目標について、麻生首相はこんな条件を挙げる。
産業界と環境団体の意見の隔たりは大きく、条件を満たすことは簡単ではない。

選択肢のうち、最も厳しい「温室効果ガスの排出量を、90年比の25%削減」
国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が、
「温暖化の影響を最小限に抑えるには、
先進国で25~40%削減が必要」との指摘に対応。

実現には高いハードルがある。
国立環境研究所の試算では、一般家庭1770万戸に太陽光パネルを設置し、
電気自動車など次世代自動車が新車販売の約8割を占めることが必要。
環境省などによると、05年現在の太陽光パネル設置世帯は約32万戸、
次世代自動車の割合も2%以下。

電力会社で組織する電気事業連合会は、
「太陽光パネルを設置できる住宅は、新築を含め約2000万戸。
9割近い住宅への設置が必要、強制的な措置がないと困難」
日本自動車工業会も、「20年までの次世代自動車への切り替えは限定的」

「90年比6%増」は、現在の省エネ努力を続けるだけの場合に相当。
この案は、「国際的な批判を浴びる」との声が強い。
最新の省エネ技術が最大限導入された場合の「4%減」案は、
「努力できるぎりぎりの数字」(電力会社)として有力候補の一つ。
IPCCの指摘からすれば、「世界に通用する」案とは言えない。

福田康夫前首相は昨年6月、「50年までに60~80%削減」という
長期目標を表明、行動計画が閣議決定。
厳しい中期目標にしないと、長期目標の達成もおぼつかない。

◇ポスト京都枠組み交渉、主導権争いで出遅れ

中期目標は、京都議定書の期限が切れる13年以降の温暖化対策の
国際的枠組みを決める交渉の焦点の一つ。
各国は、12月に開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議
(COP15)での合意を目指す。
自国に有利な決着を狙う交渉の主導権争いが本格化する中、
日本は出遅れ感が否めない。

EU(欧州連合)は昨年、域内全体の排出量を90年比20%減とする
中期目標に合意。
「先進国全体で30%減」など、積極的な提案。
途上国は、「地球温暖化を招いた先進国」が率先して、
「25~40%減」の厳しい目標を持つよう求めている。

世界自然保護基金日本委員会は、温暖化の影響を受けやすい
小島嶼国などから、「25~40%減でさえ不十分」との声。
日本の選択肢に「40%」がない点に、
「世界をリードする意欲が欠落していると見られかねない」と批判。
90年比増加の案を検討していることだけでも、国際交渉の妨げに。

EU議長国、チェコのブルシーク環境相は、
「IPCCが『25~40%』という数値を先進国に突きつけた今、
いくつかのシナリオを議論している時間があるのか。
EUは、拘束力のある目標を示した。
他の先進国も同じようにしないと、途上国に責任ある貢献を頼んでも、
『責任はそちら(先進国)にある』と言われかねない」

ブッシュ政権時代、温暖化対策に後ろ向きだった米国。
オバマ大統領は、「90年比プラスマイナス0%」に相当する中期目標を提案、
環境・エネルギー政策で景気回復と雇用創出を目指す
「グリーンニューディール」を掲げる。
太陽光など再生可能エネルギーの拡大が柱で、温暖化対策と共通点が多い。

環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は、
「再生可能エネルギー分野は、産業としても世界の主流になりつつある。
日本のように導入に後ろ向きだと、産業の成長の芽をつぶしてしまいかねない」
==============
◇中期目標

温室効果ガスの2020年ごろまでの排出削減目標。
日本の目標は、「中期目標検討委員会」が示した選択肢を基に、
地球温暖化問題に関する懇談会」(座長・奥田碩トヨタ自動車相談役)で協議、
国民の意見も募った上で政府が決める。
13年以降の国際的な温暖化対策の枠組みでは、
先進各国に削減目標を割り当てるが、日本の目標と一致するとは限らない。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/03/16/20090316ddm003040087000c.html

2009年3月24日火曜日

スポーツ21世紀:新しい波/295 市民マラソン熱/3

(毎日 3月14日)

柔らかい光が差し込むカピオラニ公園に、42・195キロを走りきった
ランナーたちが次々とゴール。
昨年12月14日のホノルル・マラソン。
そろいのランニングシャツ姿、「TEAMコニカミノルタ」も30人全員が完走。
複写機、プリンターなどOA機器大手として知られる持ち株会社
「コニカミノルタホールディングス」が公募して結成。

同社は、06年3月末のカメラ事業撤退で、消費者と直接接触する機会を
失った事情から、新たな社会貢献の手だてを模索。
同社の陸上競技部は、元日の全日本実業団対抗駅伝で01年以降、
3連覇を含んで優勝6回を誇る強豪。
「陸上のノウハウを社会に還元できないか」との発想、
06年に「ランニング・プロジェクト」がスタート。

ホノルルを走るランナーの公募は、08年で3回目。
毎年春以降に参加者を募り、意欲などを参考に数十人を選出。
10月、東京都内で行う参加者の合同トレーニングでは、
陸上競技部の現役選手、コーチが指導。
現地にも選手が同行し、直前の調整をアドバイス。

陸上競技部の練習拠点がある東京・多摩地域で、
市民向けのランニング教室を開催。
「ランニング・プロジェクト」のホームページでは、
初心者から3時間台を目指す層まで、3段階に分けて練習メニューを掲載、
ランナー向けの食事などの情報も提供。
ブームを受け、アクセスは月に10万ページビュー、開設当初の3倍に。

同社広報・ブランド推進部の松崎倫明課長代理は、
「ランニングには性別、年齢差を問わず、どの層にも訴えかけられる特性。
食事や健康、美しさへの欲求など、すそ野も広い」
その可能性の大きさに驚く。
陸上競技部の磯松大輔コーチ(35)は、「イベントと合宿予定日が重なるなど、
最初は抵抗もあった。教えることで、選手が学べる面も。
日本一の肩書があってこその役目だから、いいプレッシャーになる」

選手が挑む国内の主要大会では、ランニング教室参加者ら
市民が加わる自主的な応援も増えた。
市民とのかかわりは、選手にも相乗効果を生んでいるようだ。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

グーグルとGE 対極の人材確保術

(日経 2009-03-16)

◆世界各地から年77万人の履歴書

世界的な人材争奪戦が激しさを増す中、
優良企業はどのように人材を確保しているのか?
「人的資本」の充実に向けて、それぞれの手法に磨きをかける
グローバル企業の姿が浮かび上がってきた。

インターネット検索サービス最大手の米グーグル。
米フォーチュン誌によると、同社に届く採用希望の履歴書は、
年間77万7000人分に上る。
「世界中から頭のいい人を発掘。
ただ、家庭の事情などで米本社に来たくない人もいる。
我々は、世界各地にオフィスを設けて人材確保に努めている」

グーグル日本法人の徳生健太郎・製品開発企画本部長(40)。
世界的規模で人材獲得に乗り出すグローバル企業の狙いは、
「多様性」や「異質性」にある。

米半導体大手のクアルコムも、多様なアイデアを吸い上げるため、
毎年38カ国から750人の研修生(インターン)を受け入れ。

◆年間1000億円投じ人材育成

グーグルが「外」から新しい才能を次々と招き入れる代表格なら、
「内」に抱える人材を徹底的に鍛えて強さを維持してきたのが
米ゼネラル・エレクトリック(GE)。

年間の研修費用は、約1000億円。
米ビジネスウィーク誌によると、新人1人当たり約300万円(2007年)の
教育費をかける。

ニューヨーク州ハドソン川上流の町クロットンビル。
シカが寝そべる広大な敷地に建つ、
ジャック・ウェルチ・リーダーシップ開発研究所はGEの人材研修の総本山。
幹部候補が、定期的に1-3週間の合宿にのぞむ。
ジェフリー・イメルト最高経営責任者(CEO、52)も月に1度は顔を出し、
「帝王学」を伝授。

施設には、研修参加者にドリンクを無料提供するバー「ホワイトハウス」がある。
夕方になると、研修生らがビールを片手に議論し、交流を深める。
社員が経営陣と言葉を交わす貴重な場。

「突っ立っていないで、イメルトに話しかけてこい」
クロットンビルの研修に参加した元GE中堅幹部で、
今はベンチャー企業役員の花城真之氏(37)は、
先輩社員にこう背中を押されたことを覚えている。
好奇心、情熱、責任、チームワーク、工夫----
研修で教えるのはこれらGEイズム。

◆業績悪化に対応、教育システム改革

「人材は面白い経営資源」
日本GEの八木洋介取締役シニアHR(人的資源)マネジャーは、
社員のやる気次第で、アウトプット(生産高)が強烈に違ってくる。
やる気のある人とない人の差は、5-10%程度の話ではない。
何倍もの開きが出る」
GEが年間1000億円も人的資本に投資するのは、
それに見合うだけのリターンがある。

景気悪化の荒波はGEも直撃。
2月下旬、GEは世界大恐慌後の1938年以来、約70年ぶりの減配を発表。
「我が社の弱点は何か?」
研修体制も俎上に上り、最も業務成績の良い社員150人を分析、
問題点を洗い出した。
浮かび上がったのは、「想像力」の欠如。

分析結果を受け、クロットンビルの研修を、
個人重視からチーム重視に切り替えた。
これまでは、各部の最も優秀な人を集めて研修していたが、
各部署のチームを丸ごと集め、ブレーンストーミングさせる手法に転換。

人材の世界最適調達を続けるグーグル。
伝統の教育システムを改革し続けるGE。
手法は違っても、人的資本の強みを最大限に引き出そうという意識は共通。

http://netplus.nikkei.co.jp/nikkei/news/world/world_2nd/wor090316.html

どこまで減らす(中)省エネ技術 中印に伝授

(読売 3月18日)

赤茶けた鉄さび色のプラントが林立する住友金属工業鹿島製鉄所(鹿嶋市)。
中国鋼鉄工業協会の視察団31人が、最新の排ガス処理施設を
食い入るように見つめていた。
「製品あたりのエネルギー消費は」、「排ガスの監視方法は」。

通訳に休む間も与えず、日本側の担当者を囲み、矢継ぎ早に質問を浴びせた。
立ち会っていた神戸製鋼所鉄鋼部門技術総括部の下里比佐志さん(48)は、
ノウハウを吸収しようとする熱気を感じた。

日中の鉄鋼業界が相互に訪問し、技術交流を始めたのは2005年。
今回が4度目だ。
中国の狙いは、競争力強化につながる排ガスの熱回収などの省エネ技術や
大気汚染対策、資源リサイクルなどの環境技術。

国際競争にさらされる日本の鉄鋼業界が、
ライバル国に技術を公開する理由は、
京都議定書に続く枠組み作りの国際交渉をにらんだ戦略。

中国は、1997年から10年間で粗鋼生産量を5倍に増やし、
今や世界の3分の1を生産する世界一の鉄鋼大国。
日本鉄鋼連盟によると、中国の鉄鋼部門だけで日本の総排出量の
約8割にあたる10億トン以上のCO2を出すとみられる。
鉄鋼生産が急増する中国やインドは、京都議定書で削減義務を負わない。

下里さんは、「議定書の削減目標に向けた努力はする。
しかし、ポスト京都の枠組みでは、鉄鋼部門で世界共通のエネルギー効率の
基準をつくり、公平な条件で勝負したい」と訴える。

温暖化対策を目的に、米の呼びかけで始まった技術移転活動で、
下里さんは07年末から、中国とインドの製鉄所を相次いで訪問、
1か所に3日間ずつかんづめで「省エネ診断」。

製鉄所の省エネの専門家としてキャリアを積んできた下里さんは、
「石油危機以来、30年以上省エネばかりやってきた日本からみれば、
中印が削減できる幅は大きい。世界規模の削減を近道で実現したい」

交流事業の責任者の一人、新日鉄環境部の岡崎照夫さん(55)は、
「途上国は、温暖化対策としてよりも競争力強化の手段として、
省エネに関心がある」

鉄鋼業界の削減目標達成のため、途上国での排出削減分を買う交渉に
世界を飛び回り、日本の置かれた不利な立場を痛感。
中国企業から、「日本で削減する方が高くつくのだから」と
法外な値段を示され、憤然と席を立ったことも。

岡崎さんは、「発展し続ける中国やインドを巻き込むしかない。
われわれが技術を通じた交流を重ねるのは、
削減を促す仕組み作りにつなげたいからだ」と明かす。

その言葉には、先進国が厳しい削減を課せられるだけに終われば、
日本の産業の国際競争力は失われてしまう、との危機感。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20090318-OYT8T00378.htm

リスク高いが志高い研究に新推進制度

(サイエンスポータル 2009年3月18日)

個人の創造性にかける競争的研究資金制度「さきがけ」に、
新たな「大挑戦型」が新設、
科学技術振興機構が2009年度の募集要領を発表。

「さきがけ」は、国の戦略目標に沿った研究領域に合った研究課題を公募し、
研究総括がテーマ選定の責任を持つという点では、
他の戦略的創造研究推進事業と同じだが、
選ばれた研究者が個人の責任で研究を実施できるのが特徴。
研究者の発想がより重視されることから、独創的な研究成果が期待。

この特徴を生かし、さらに挑戦的な研究を推進することを狙い、
「さきがけ大挑戦型」が設けられた。
「実現の可能性の観点からは明確な見通しが得がたいが、
成功した場合には飛躍的、画期的な成果が期待できる研究(ハイリスク研究)を
積極的に採択する」

具体的な課題選出手順は、「太陽光と光電変換機能」など
新年度の「さきがけ」新規領域として定められた研究領域に沿った課題を
公募した中から、大挑戦型にふさわしいと研究総括が推薦し、
さらなる審査を経て選定する。

研究者は、研究の進み具合によって最大2倍程度までの研究費増額が
認められる一方、研究の進捗や進展の見通しによっては、
1年で終了することもあれば、最長で5年目の年度末まで延長されるという
厳しい評価も受ける。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0903/0903181.html

学士力(11)欧州大学協会(EUA) スーソック事務次長に聞く

(読売 3月20日)

欧州では、学生も改革を担い、プラス思考の評価が後押しする。

欧州の高等教育に共通の枠組みを作るボローニャ宣言の推進機関、
欧州大学協会(EUA)のアンドレー・スーソック事務次長は、
欧州の大学教育の質向上に、学生自身も大きな役割を果たしてきた。

「フランスでは、学生が副学長を務める大学が珍しくない。
ポーランドやイタリアでも、学生の自治会が大学の理事会に参加」
教職員と対等の構成員として、理事会にも参加させる風潮は、
1968年の5月革命以降、顕著になった。

「学生に権限と責任を持たせることで、学習環境づくりが進み、
授業により積極的に参加する雰囲気ができる。
受け身の授業より、実のある学びとなるのは自明だろう」と効用を強調。

リーダーシップや交渉術など、社会人になってから役立つ技術を、
大学経営への参画を通して身に着けることができるという利点。

スロベニアでは、学生の組合が奨学金サービスを開始。
欧州学生連合はボローニャ宣言以来、2年ごとに進展状況を確認し、
意見を表明してきた。学生の活躍は、欧州全体に広がっている。

EUAへの加盟には、日本円に換算すると約32万円、
評価を1回受けるには400万円以上かかるが、
ボローニャ宣言に29か国が署名した9年前には
500だった加盟校は、800まで増えた。

「他の大学のコピーをしていれば、すむ時代ではない。
良いも悪いも全部さらけ出し、大学同士で学び合うことが
質保証につながることなのだと理解」

EUAの評価プログラムは、<対話>を最も重視。
「学内外の関係者が改善に向けて対話する――
それがあるべき大学評価の姿だ。
多様性を認めながら強みを引き出すには、対話が不可欠だ」

大学が用意する自己評価は、約20ページ分。
日本と比べて、はるかに少ないと言っていい。
それを大学関係者らで構成する評価チームが査読した上で、調査に入る。
最終的に出すのは、「大学強化案」だ。
「自分たちの大学に比べ、この点が優れている。
もっとここを伸ばした方がいい」といったプラス思考の評価。
それに向けて、関係者の徹底的な対話が積み上げられる。

「評価疲れ」
日本の大学関係者の間には、そんな言葉がある。
日本の大学には、学校教育法に基づく認証評価機関の評価が
義務づけられ、大学としての適合・不適合を見定める評価が下される。
「膨大な準備作業に比べ、大学が得るものが少ない」
EUAのプログラムには、アジアの大学も関心を示し始めている。

小手先だけの授業改善では、学生を伸ばせる大学には変われない。
大学の評価方法も、再考する必要はないだろうか。
欧州の取り組みは、そのことを示している。

◆アンドレー・スーソック

EUAで高等教育機関の評価制度開発担当。
米カリフォルニア大バークレー校、スタンフォード大などで教べん。

◆5月革命

パリ大学の学生運動が、リセ(高等中学校)や地方へ飛び火し、
フランス各地で警官隊と衝突を引き起こした。
学生への支持は、当時のド・ゴール政権への不満を持つ労働者階級にも広がり、
欧州史上最大と言われる200万人規模のストライキに発展。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090320-OYT8T00294.htm

2009年3月23日月曜日

ドーム施設整備を留保 国体主会場選定まで

(岩手日報 3月18日)

県議会2月定例会は、予算特別委員会(関根敏伸委員長)を再開。
教育委員会、企業局を審査。
2016年開催予定の2巡目岩手国体の主会場選定に関連し、
法貴敬教育長は「(主会場地が決まるまでは)県営運動公園内に
整備予定のドーム型屋内練習施設と、同公園内の陸上競技場を
第2種競技場に改修する予算執行を留保する」
県によると、国体の主会場は5月下旬にも決定する見通し。

柳村岩見氏(自民クラブ)の質問に答えた。
法貴教育長は、「競技場を選定する国体準備委員会は、
陸上競技をどこでやるかまだ決めていない。
結論が出るまでは、予算執行を留保させていただく」と答弁。

県教委は、09年度一般会計当初予算案に、県営運動公園内に
ドーム型屋内練習施設整備の地質調査費など1200万円を計上。
陸上競技場は、国体の陸上競技が開催可能な第1種公認を見送り、
第2種競技場として改修する費用約1億9000万円を盛り込んだ。

盛岡広域の市町村長らは、県営運動公園陸上競技場を第1種公認として整備し、
国体主会場として選定するよう求める要望書を県に提出。

法貴教育長の答弁は、「見切り発車的」にドーム施設などの整備に
着手することで、盛岡広域の反発は強まると判断。
法貴教育長は、県営運動公園陸上競技場を第1種公認として整備する場合、
盛岡市や雫石町が応分の負担をする方針を表明していることについて、
「いくら出すと言っても、それは決定したものではない。
まずは盛岡市の意向を確認する」と述べるにとどめた。

県国体推進課によると、主会場となる開閉会式会場は、
今月30日の国体準備委員会の常任委員会で選定の検討状況を報告。
4月中旬の候補施設視察などを経て、5月下旬の同常任委員会で決定。
県営運動公園のほか、北上市の北上総合運動公園が有力候補地。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090318_4

学士力(10)学生発案 授業つくる

(読売 3月19日)

欧州には、学生自身がつくる授業が半分を占める大学がある。

荒涼とした原野にたたずむデンマークのロスキレ大学
首都コペンハーゲンから西へ20キロほど離れた小都市、ロスキレ市。
2月初旬、約70人の学生の熱気があふれる教室で、
2年生の男子学生(23)が2人の教員に向かって
「心理学に取り組みたい。何とかしてほしい」と必死に訴えていた。
「学生発案型授業」の一場面。

デンマークの学部教育課程は3年間。入学後2年間を「基礎教養」。
1972年、「教育実験大学」として設立されたロスキレ大学が、
2年間で最も力を注ぐのが学生発案型授業。

学生自身が意見を出し合って授業のテーマを決め、
テーマに沿って教職員の指導を受けながら1学期間、
グループに分かれて討論、発表、論文作成を重ね、授業をつくる。

男子学生は将来、本格的に学びたい心理学への思いを語ったが、
他の学生の反応はよくなかった。
教員も、「焦点を絞りなさい」、「学習計画を具体的に明示しなさい」などと助言。
学生は考え込みながら、討論したグループの中に戻っていった。

同じ時間、一般的な講義形式の授業が行われていた別の講義室をのぞくと、
30人ほどの学生しかいないのに、
後方では、教員の目を盗んで携帯電話をいじる姿が目立った。

そんな光景も見せながら、前学長のヘンリク・ヤンセンさん(64)は、
「時代に合わせて大学は変わらなくてはいけない。
今の学生には発案型がふさわしい」
長年、授業改革を進めてきた人物。

発案型授業は、大学の設立当初から始まった。
今では約250ある科目の半分を占めるまで広がり、
社会の変化に適応したカリキュラム作りとして、欧州の他国からも注目。

「目標は、国境を越えた雇用の可能性を広げること。
そのためには多角的な視点と、幅広い教養が不可欠。
発案型授業は、その育成に最適だ」

デンマークでは高校卒業後、3年程度働いてから大学に入るのが一般的で、
入試はなく、高校時代の成績で振り分けられる。
同大では、2年間は学生寮での生活が課され、多様な背景を持つ学生たちが、
教室や寮内で絶えず刺激し合う。
授業以外の学習時間も、1週間で40~50時間にも及ぶ。

発案型授業は、教職員の負担を重くする。
発表や討論の様子に気を配り、学問的に深まるよう助言し、
学外への実地調査にも連れ出す。
最終的に、学生1人に1時間近くかけて口頭試問をする。
職員も学生の相談窓口になり、教員との面談調整など
学生の秘書役まで担当する。

かつて教職員からの不満も聞こえてきたが、「今はない」とヤンセンさん。
外国の企業や研究所への就職も、着実に増えているからだ。

同大の学生は、1人二つの学位取得も目指す。
「単に『科学を知っている』人材より、『科学を哲学できる』人材の方が
雇用される可能性は高い。専門一つでは国際社会での競争力はない」

キャンパスの中央に、不思議な石碑が立っていた。
厚い土台の上に2本の柱がそびえ、突端には抽象的な形。
「広い教養と、二つの専門、既成の概念にとらわれない学びの成果」
小さな大学が、その成果を世界に誇れる日は遠くないかもしれない。
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中央教育審議会は、昨年末の答申で、
学生が身につけるべき「学士力」の参考指針を示した。
欧州の考え方は、国内の大学にも参考になるはず。
そうした観点から、先月、名城大の池田輝政副学長らに同行、
注目度の高い改革に取り組む国や大学を訪ねた。
2回にわたって報告する。

◆「単位互換」国境越え質保証

欧州の大学改革が、日本でも注目を集めている。
国境を越えた学位認定や単位互換など、
欧州内の高等教育に共通の枠組みを作るボローニャ宣言が、
目標達成年を来年に控えているからだ。

宣言の署名国は、改革状況を話し合う度に、
一つの物差しに合わせるのではなく、個々の国情や大学の個性を
認め合いながら一定の共通性、普遍性を持たせる
「比較可能な質の保証」を確認。

日本は戦後、米国をモデルに新制大学を設計し、
近年の教育改革でも模範としてきた。
大学設置基準で昨春、義務化された教育力の向上への取り組み(FD)でも、
米国の手法をまねようとした大学は少なくないが、
改革の手詰まり感から新たなモデルが必要。

◆ボローニャ宣言

1999年、欧州29か国の教育大臣の署名で採択。
高等教育での国際競争力向上が狙い。
2010年までに、学部課程と大学院課程に分けること、
比較可能な学位制度の導入、単位互換制度の確立、質保証のための
協力推進など、六つの課題達成に努めるよう署名国に求めている。
現参加国は、欧州周辺諸国も含めて46。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090319-OYT8T00269.htm

どこまで減らす(上)モデル分析 裏方の挑戦

(読売 3月17日)

温室効果ガスの排出を極限まで減らした暮らしとは、どんなものなのか?
「自然の力をうまく取り入れた快適な生活です」
横浜市の金子雅人さん(60)は言う。

金子さんが住むのは、上下水道を除くエネルギーの97%を、
太陽光や風力などの自然エネルギーでまかなう実験住宅。

技術者として32年務めた三菱重工業と関連会社が作った。
販売に向けた実験に協力し、先月から妻、子ども2人と暮らす。
地下室には、まな板のような白いプラスチックの蓄熱板が60枚ぶらさがる。
冬場は、屋根の太陽光発電パネルの下から取り入れた暖気を昼間蓄え、
夜間に室内に循環させる。

妻の佳子さん(61)は、「朝台所に下りてきても、寒くないんです」
夏場は、地中の冷気を蓄え、室内の冷房に使う。
建設費は、一般住宅の3割増し程度を見込む。

日本は、2020年までに何%の温室効果ガス削減を目指すのか?
政府は6月までに決めるとしている。
政府の中期目標検討委員会の事務局・内閣官房の日下一正参与は、
「中期目標は、政府が決めれば自動的に達成できる訳ではない。
国民や経済界が、生活様式の見直しを含め、全員野球で取り組む必要がある」

日本の場合、ガスの約9割はエネルギーの生産や消費に伴って出るCO2。
委員会では、省エネ技術の普及でエネルギー消費やCO2排出量が
どのくらい減るのかを試算する排出モデルと呼ばれるプログラムを使い、
国立環境研究所(国環研)など5研究機関が分析を進める。

ハイブリッド車などの次世代自動車が、新車に占める割合を
81%(06年度1・7%)にし、住宅用の太陽光発電装置を
1770万戸(07年度末約40万戸)に――。
委員会の資料「1990年比で約25%減らすための対策」は、
国環研の増井利彦さん(38)らがはじきだした。

モデル分析を行う研究者は、モデラーと呼ばれる。
増井さんは阪大大学院時代、国環研モデルの生みの親である
森田恒幸氏(2003年9月死去)の指導を受け、
温暖化政策を科学の面から支える仕事の面白さにふれた。
「将来の社会の姿を、科学的に予測できるのはモデルだけ」と胸を張る。

京都議定書を採択した1997年の京都会議(COP3)。
日本は、実質2・5%削減の政府案を掲げてのぞんだ。
政府関係者は、「想定していた削減可能量を超えた6%削減目標を、
最後はのんだ。まさに日本政府にとってトラウマ」と振り返る。
2007年度の排出量は、8・7%増。達成困難との声も出る。

展開の見通せない国際交渉や予測困難な経済動向に伴う排出量の変化。
中期目標づくりの裏方、モデラーたちの真価も問われる。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/kankyo/20090317-OYT8T00570.htm

免疫記憶の維持担う酵素解明

(サイエンスポータル 2009年3月12日)

一度体内に侵入した抗原を、ずっと覚えている生体防御の仕組みに
欠かせない免疫記憶機能の担い手が、
「ホスホリパーゼCγ2(PLCγ2)」と呼ばれるリン脂質分解酵素であることを、
理化学研究所の研究チームが突き止めた。

同研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの
黒崎知博・分化制御研究グループディレクターと疋田正喜・上級研究員
(現・京都大学医学研究科)らが着目したのは、Bリンパ球の働きに
欠かせないことが知られている酵素であるPLCγ2をつくるPLCγ2遺伝子

Bリンパ球は、体内に侵入してきた異物(抗原)を認識して、
それらを排除するためのタンパク質である抗体を作りだす役目。
Bリンパ球が、抗原と出合って活性化したとき、
PLCγ2遺伝子だけが機能しなくなるようなノックアウトマウスを開発、
ウイルスなど抗原の代わりになるタンパクを投与して、
PLCγ2の役割を詳しく調べた。

この結果、2度目に抗原を投与するとそれに反応して増えるはずの抗体は、
通常のマウスに比べ最大10分の1しか産生されず、
抗体を作るBリンパ球も最大20分の1に激減。

最初の免疫で、免疫記憶を正常に形成した後、
PLCγ2遺伝子を機能しなくさせることができるノックアウトマウスも開発し、
同じ解析をしたところ、最初の免疫応答の際に生成し記憶機能を持った
Bリンパ球は、PLCγ2遺伝子の機能喪失後に約6分の1に減少。

これらの結果から、リン脂質分解酵素「PLCγ2」が免疫記憶の形成に加え、
維持にも不可欠であることが分かり、
今後、高性能なワクチンや免疫賦活剤の開発への応用が期待される。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0903/0903131.html

2009年3月22日日曜日

アルコールの影響:高齢者と若齢者の比較

(2009年3月17日 WebMD)

社交上の飲酒は高齢者に対して、一緒に飲酒している若齢者よりも
大きな害を与えているようである。
高齢者は、アルコールがどのような影響を与えているのか理解している
可能性も低いことを、新規研究は示している。

『Journal of Studies on Alcohol and Drugs』で発表された研究では、
50 - 74歳の高齢被験者42例と25 - 35歳の若齢被験者26例について調査。
被験者は全員、社交上の飲酒者であり、非喫煙者。

各年齢群の一部には、中程度の量のアルコール飲料を飲ませ、
他の被験者にはプラセボとしてノンアルコール飲料を飲ませた。
被験者らは、それらを飲んでから25分後と75分後に試験を受けた。

試験では、文字と数字を順番に線で結ぶことを要求。
視覚と運動の協調、計画性、1つの課題から次の課題に移る能力を
評価することを目的。
被験者らは、自分がどのくらい酔っていると感じたか、
アルコールのせいで試験の成績がどのくらい悪くなったと思うかについても評価。

呼気中の最高アルコール濃度は、高齢飲酒者群と若齢飲酒者群で同様、
高齢飲酒群は試験を完了するのに若齢被験者よりも長い時間を要した。
年齢による成績の差は、非飲酒者においては発生しなかった。
ノンアルコール飲料を飲んだ高齢被験者と若齢被験者の間に差はなかった。

「もし車に乗っていてブレーキを踏む必要があるとしたら、
5秒というのは大きな差である」と、
フロリダ大学マックナイト脳研究所の精神医学、Sara Nixon教授。
「それは、事故を起こすか事故を起こさないかの違いとなる可能性がある」

高齢の飲酒者は、アルコール摂取の25分後の試験で、
自分の能力が低下していることを理解している可能性が低い。
高齢の飲酒者が、実際にはそうではないにもかかわらず
運転をしても大丈夫だと考える可能性があり、危険なことである。
アルコール摂取の75分後の試験では、高齢飲酒者は高齢非飲酒者と
同様の試験の成績であったが、より大きな能力低下を示した。

Nixon博士は、「夕食でアルコールを飲むなら、すぐに席を立ったりせず、
くつろいでデザートを食べなさい。しばらくの間運転をしてはならない

高齢者のアルコール摂取は、大きな公衆衛生上の問題になる可能性が高い。
55歳以上の成人の半数以上が、社交上の飲酒をしている。
高齢者が人口に占める割合も、今後数十年間で急増する。
2030年までに、米国民の5人に1人は65歳以上。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/3/17/93812/

環境ISOは無駄なのか

(日経 2009-03-09)

環境管理の国際規格である「ISO14001」が、1996年にスタートして12年。
国内の認証取得組織数は、3万件近く。
多くの企業の審査をしてきたが、CO2削減成果につながっている例は少ない。
環境ISOは、脱炭素社会の実現に役に立たないのだろうか?

「ISOを取得した企業で、経営に役立てているのは2割もない」
多くの企業では、ISO14001がお飾りに。
製薬会社の環境担当者から、内部監査機能があるISO14001認証を取得したが、
「環境リスクマネジメントのために、グローバルな環境監査をしたい」
という希望を聞き、驚いた。
ISOの環境マネジメントシステム(EMS)が機能すると見られていなかった。

ISO14001は、自主的な取り組みなので、認証取得という目的達成後は
無理に努力しないというのは、一種の合理的な経営判断かも。
ISOの仕組みは、マネジメントサイクルやチェック機能などよくでき、
うまく使えば環境パフォーマンスの向上に。
取得に相当な費用と時間をかけながら、ISOを生かしきれないなら、
結果的に大きなムダ。

CO2削減の目標設定を挙げよう。
2006年JAB環境マネジメントシステム運用状況調査報告書によると、
ISO14001取得組織(回答1142組織)のうち、
86.2%はCO2排出抑制活動を実施。

総量や原単位を何%削減すると掲げるだけの企業も多く、
どのくらいが実際に効果を上げているかは疑問がある。

ISOの強みは、しつこい管理の仕組みにある。
目標を言いっぱなしにせず、進ちょくを管理するだけでなく、
内部監査や外部の認証機関によりチェックする。
問題があれば、仕組み上の根本原因を探しだして、改善する。
類似の問題点を検討し、発見した問題を「しゃぶりつくす」ように徹底的に生かす。

この強みを生かすには、設定の根拠や、取り組み努力との因果関係を
明確にする必要。

絶対量の削減か、絶対量を売上高などの事業活動の量で割った原単位の削減を
目標に設定すると、売り上げ動向により達成度が左右。
削減目標が達成できなくても、「売り上げが増えて、稼働率が上がったから」、
「夏が暑くて空調の負荷が大きかった」といったように、
気温など他の要因による説明がされ、原因の追求が不十分に。
結局、次の改善策に結びつかず、対応策として目標を緩くする方向に。

具体的な節約量を目標とすべき。
実際の削減総量や原単位がどうなろうと、手段・努力をきちんと実行して
結果を出したかどうかが反映されやすい。
細かい事例を積み上げて目標を作ることも重要。

400ワットの水銀灯の無駄な点灯を外すなど、年間延べ1000時間削減すれば、
400キロワット時の節電となり、1キロワットあたりCO2排出係数が
500グラムとすると、CO2削減量は200キログラム。

ある企業は、年間70万円を節約し、CO2量も削減。
積み上げ計算をすると、達成できなかった場合、
原因を追究して粘り強く改善できる。
ISOの真骨頂を生かしやすい。

簡単なことを言っているようだが、こういう計算をしている企業はまれ。
大概は最初からあきらめ、空調の温度を何度に固定するとか、
機械の動きの無駄をなくす、といった手法に走る。
これだと大ざっぱな計算しかできず、削減率目標を決めてあとは頑張ろう、
ということになってしまう。

どこに改善余地があるかを追究し、要因分析ができる管理体制が
整備できれば、ビジネスの効率化だけではなく、まだ達成企業が少ない
「事業活動そのものを、環境配慮型に転換する活動(資源循環型事業など)」
にも取り組める。
社会全体の環境負荷を減らす「省ビジネス」などのチャンスも、
見つかるかもしれない。
CO2削減は、各企業が取り組まなければいけないこと。
せっかくのISO取得を、成果に結びつける重要性は今後高まる。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090305.html

IOC、欧州放送連と決裂 五輪も有料テレビ視聴へ

(朝日 2009年3月17日)

国際オリンピック委員会(IOC)と、50年以上にわたって五輪テレビ放送に
携わってきた欧州放送連合(EBU)の蜜月時代が終わった。
より高額の放送権料を求め、IOCが有料視聴テレビを
新たなパートナーとすることをためらわない姿勢を打ち出した。

IOCはこれまで、欧州での放送権については
各国の公共放送の連合体であるEBUと一括交渉。
2010年バンクーバー冬季五輪、12年ロンドン五輪の2大会を合わせた
放送権料は、7億4600万ドル(約739億円)にまで高騰。

14年ソチ冬季五輪と16年夏季五輪の2大会の放送権交渉では、
10億ドル(約990億円)確保を目指し、IOCとEBUは折り合わなかった。

IOCは、EBUとの決別を宣言する形で、イタリアとトルコについては
有料視聴を原則とするテレビ局への放送権売却を決めた。
大きな市場を持つ英国、フランス、ドイツ、スペインの4カ国を除く
約40カ国の放送権については、フランスの新興メディアグループへの
一括売却を決めた。

今回の契約には、「夏季五輪は200時間、冬季五輪は100時間の無料放送」
が盛り込まれている。

欧州での放送権交渉の責任者、IOCのバッハ副会長(ドイツ)は、
今回の決定について「開、閉会式や重要な種目の決勝については、
無料視聴の契約となっている。その点、従来の方針に変わりはない」
と強調するが、多くの競技・種目で有料視聴が
一般化していく流れができたといえる。

世界的にテレビ産業のビジネスモデルが変質する中、
IOCの新姿勢が欧州以外の地域に今後、どのように広がるのか注目。

http://www.asahi.com/sports/spo/KYD200903170003.html

学士力(9)桜美林大学教授 諸星 裕さんに聞く

(読売 3月18日)

大学経営のプロの目に、日本の大学はどう映るか。

「個々の大学が、ミッション(役割や使命)をはっきりさせること。
ミッションがしっかりしていないから、偏差値という一本軸で選ぶことに」

全入時代を迎えた日本の大学に、いま何が一番必要か?
大学院で大学経営のプロを育てる桜美林大学教授、諸星裕さんに問うと、
こんな答えが返ってきた。

中央教育審議会が、学部教育で身につけるべき「学士力」の参考指針を
示したが、「共通試験の導入まで考えているとしたら大間違い」とクギを刺す。

近年、教育力で高い評価を受ける国際基督教大学(ICU)出身。
米ミネソタ州の州立大で教授、学部長代行、秋田校学長を務め、
米国で大学評価委員をした経験も持つ。
手腕を買われ、桜美林では副学長として改革を手がけた。
現在、他の複数の大学の改革にも助言者としてかかわる。

国情は違っても、日本の大学が米国の後を追うと確信。
「終身雇用の崩壊など、社会が米国を追い続けている。
大学だけが例外ということはあり得ない。
米国型社会は、大学にいつごろ、どういう形で行くかを
個々の学生が決める社会になる

高校を出てすぐに入学、4年で卒業というコースが普通でなくなれば、
自分を伸ばしてくれる大学かどうかが、より大事になる。
日本では無名でも、米国には「世界のどこにも負けない最高の教育をする」と
宣言して、有力大の大学院に多数の学生を送る大学も。

日本で入学後の伸びしろが大きい例として、金沢工業大学を挙げ、
「入学前の学力を考慮すれば、学生の力を引き上げるのは
金沢工大と東京工大どちらが難しいか。
それが社会に理解されれば、大学の評価は変わる。
偏差値で大学を選ぶなんて愚の骨頂」

全入時代の学部教育は基本的に教養教育で、
専門は大学院で学ぶことになる。
「パンキョウ(一般教養)と軽く言われた時代と違う。
大学の将来を考えれば、教養教育にエースをぶつけるべき

大学選びでは、ミスマッチを防ぐため、入学後の進路変更で
どれだけ融通が利くかがポイント。

学生に授業評価の意味を自覚させているか?
評価結果を教員にきちんと伝えているか?
GPA(各科目の評定の平均値)制度を厳格に運用しているか?
その結果を受けた学生に奮起を促す方策は?
カリキュラムの体系化は図られているか?
諸星さんに言わせれば、日本の大学がやるべきことは山ほどある。

「科目名が同じ犯罪学であっても、教員が変われば加害者学が
被害者学になる例も珍しくない。
カリキュラムが体系立っていないと、設立時の審査では通らない
カリキュラムがまかり通ってしまう

大学を評価する認証評価機関が、そのチェックの役割まで果たせるか?
「確かに日本的風土では難しいが、
『こんなはずじゃなかった』という受益者の声が高まれば、大学は変わるはず」

「そもそも、大学は人脈を作る所だと言って、
学生を遊ばせておくだけの余裕が、日本の社会にありますか」と繰り返した。
昨今の経済情勢を考えれば、このひと言は重い。

◆もろほし・ゆたか

1998年から桜美林大教授。
著書「消える大学 残る大学」(集英社)で、日本の大学の進むべき道を示した。
テレビのコメンテーターとしても活躍中。62歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090318-OYT8T00369.htm